(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】歯科矯正計画策定システム
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
A61C7/08
(21)【出願番号】P 2019532706
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(86)【国際出願番号】 US2017057375
(87)【国際公開番号】W WO2018118200
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-08-20
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519093160
【氏名又は名称】ウラブ・システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ファーフェン
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528748(JP,A)
【文献】特開2013-081785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0201450(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0086890(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0229878(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0215176(US,A1)
【文献】特表2008-532563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のアライナを製作するための方法であって、
コンピュータが、
対象者の歯列の走査された歯科用模型を受け取ることと、
前記対象者の歯列のうちの1つ以上の歯を整位するための複数の漸進的移動を有する治療計画を決定することと、各々が所定の直径を有する1つ以上の3次元の影響範囲が、前記1つ以上の歯のそれぞれの歯模型に割り当てられて安全エンベロープを形成し、歯模型が歯移動経路に沿って移動する際に各歯模型間の近接距離を設定することと、
前記複数の漸進的移動の第1のサブセットに関連する1つ以上のアライナを製作することと、
を
実行する、方法。
【請求項2】
所定の期間の後、前記1つ以上の歯の前記整位を監視するために、前記対象者の歯列
の次の走査された歯科用模型を受け取ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の漸進的移動の第2のサブセットに関連する1つ以上の更なるアライナを製作することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象者に非アライナ矯正手法
を提供することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象者から前記治療計画に関連する入力を受け取ることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記走査された歯科用模型を受け取ることは、前記対象者の前記歯列のデジタル画像を受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療計画を決定することは、
前記歯科用模型内の1つ以上の歯にラベルを適用することと、
前記歯科用模型内の前記1つ以上の歯及び歯肉の外側に沿ってローリングボールプロセスをシミュレートすることと、
前記ローリングボールプロセスの経路又は軌道に基づき、前記1つ以上の歯及び前記歯肉のそれぞれの間に境界を決定することと、
前記歯科用模型内の前記1つ以上の歯及び前記歯肉のそれぞれに硬質領域又は軟質領域を割り当てることと、
治療計画の策定において、不正咬合を矯正するために、前記歯科用模型内の前記1つ以上の歯の位置を移動させることと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ラベルを適用することは、前記歯科用模型内の前記1つ以上の歯に前記ラベルを適用する際に、ユーザインタフェースを介してユーザから入力を受け取ることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ローリングボールプロセスをシミュレートすることは、前記ローリングボールの経路の変化を検出することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記境界を決定することは、歯冠/歯肉マージンを決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記境界を決定することは、隣接する歯の間の境界を、前記歯間の投影された前記ローリングボールの軌道に基づき決定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記硬質領域又は前記軟質領域を割り当てることは、前記硬質領域を前記1つ以上の歯に、前記軟質領域を前記歯肉に割り当てることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記位置を移動させることは、ユーザ定義の可動ウィジェットを1つ以上の歯に適用することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記可動ウィジェットは、近心/遠心、舌側/顔面側、又は垂直操作用のウィジェットを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上のアライナを製作することは、前記1つ以上のアライナを3D印刷することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記治療計画を決定することは、
歯移動管理者モジュールによって、前記不正咬合を矯正するために、前記歯科用模型内における複数のデジタル歯模型の移動を決定することと、
衝突管理者モジュールによって、前記歯模型のそれぞれに前記影響範囲を割り当てることと、
前記対象者の各歯の実際の状態を監視することと、
歯管理者モジュールによって、前記各歯の前記実際の状態を各前記歯模型の予想状態と比較することと、
逸脱が検出された場合、前記実際の状態と前記予想状態との比較に基づき前記1つ以上の歯の前記移動を調整することと、
を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記移動を決定することは、前記歯模型のそれぞれの歯移動計画が単独で実行されることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記移動計画が単独で実行されることは、前記複数の歯模型による前記治療計画の開始が同時にトリガーされることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記移動を決定することは、初期ウェイポイントから目的ウェイポイントの間に1つ以上のウェイポイントを割り当てることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記実際の状態を比較することは、前記1つ以上のウェイポイントのそれぞれにおいて前記実際の状態を前記予想状態と定期的に比較することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記移動を調整することは、前記逸脱が検出された場合に、前記歯模型の1つ以上に新たなウェイポイントを割り当てることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記移動を調整することは、前記1つ以上の歯の前記移動の速度又は経路を調整することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記移動を調整することは、骨格と軟組織の相互関係に基づき調整することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記影響範囲を割り当てることは、前記歯模型のそれぞれの周囲に1~3mmの空間を割り当てることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記影響範囲を割り当てることは、前記歯模型間の衝突を監視することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記歯模型の1つ以上がその移動を変更して前記衝突を回避するように、隣接する前記歯模型に衝突警告を伝えることを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上のアライナを製作することは、
前記歯列の表面の少なくとも一部に合致する格子構造を有するフリーフォーム構造を生成することであって、前記格子構造は、前記フリーフォーム構造が少なくとも部分的に透明であるように複数の開放空間を画定する、ことと、
口腔内装具が形成されるように、前記格子構造内又は前記格子構造上にコーティングを含浸させること又は被覆することによって前記格子構造を製造することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
1つ以上の追加のフリーフォーム構造を生成することと、1つ以上の追加の口腔内装具を形成するために前記1つ以上の追加のフリーフォーム構造を更に製造することと、を更に含み、前記1つ以上の追加の口腔内装具のそれぞれは、前記歯列内の不正咬合を矯正するように構成されている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記フリーフォーム構造を生成することは、歯を移動するのに必要な力を決定することと、前記歯の近傍の前記フリーフォーム構造の厚さを修正することと、を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記力を決定することは、前記歯の近傍の前記フリーフォーム構造の応カ点を確認するためにシミュレーションを実施することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記フリーフォーム構造を生成することは、互いに均一な複数の開放空間を画定する前記格子構造を有することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記フリーフォーム構造を生成することは、互いに異なる複数の開放空間を画定する前記格子構造を有することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記フリーフォーム構造を生成することは、前記格子構造の厚さを変化させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記格子構造を製造することは、前記コーティングの厚さを変化させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記格子構造を製造することは、前記口腔内装具上に1つ以上の特徴を画定することを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記1つ以上のアライナを製作することは、
前記歯列の外部表面に対応する支持構造を製作することと、
1つ以上の口腔内装具の内部が前記歯列に一致するように、前記支持構造の外部表面上に前記1つ以上の口腔内装具を形成することと、
前記1つ以上の口腔内装具の前記内部から前記支持構造を除去することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上の口腔内装具を形成することは、不正咬合を矯正するために前記対象者の1つ以上の歯を移動させるように構成された前記1つ以上の口腔内装具を順に形成することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記支持構造を製作することは、第1の材料から前記支持構造を製作することと、前記第1の材料とは異なる第2の材料から前記1つ以上の口腔内装具を形成することと、を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記1つ以上の口腔内装具を前記支持構造から取り外すことができるように、前記第1の材料は前記第2の材料からの分離を容易にする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1つ以上の口腔内装具を形成することは、前記口腔内装具上に1つ以上の歯科用アタッチメントを形成することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記1つ以上の口腔内装具を形成することは、前記口腔内装具の1つ以上の部分の厚さを増加して前記1つ以上の部分を強化することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記1つ以上の口腔内装具を形成することは、前記歯列の咬合エリアに接触するように構成されている前記口腔内装具の領域に沿って相対的に薄い層を形成することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上の口腔内装具を形成することは、1つ以上の歯を所定の位置に押すための力を与えるために、前記口腔内装具の咬合鼓形歯間空隙又は側面領域上に相対的に厚い層を形成することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記1つ以上の口腔内装具を形成することは、変化する厚さを有する前記1つ以上の口腔内装具を印刷することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記1つ以上の口腔内装具を形成することは、前記口腔内装具の少なくとも一部に透明ポリマーを含浸させること又は透明ポリマーで被覆することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記1つ以上のアライナを製作することは、
前記対象者の歯列を複製した型をトリミングするための経路を決定するために前記模型上のルールベース切削ループ経路を計算することと、
前記模型の複雑さを低減するために前記模型上の前記切削ループからドレープ壁を適用することと、
前記型をトリミングするために前記型に対する切削器具の位置を決定することと、
前記ドレープ壁及び前記切削器具の位置に基づきコンピュータ数値制御コードを生成することと、
前記生成したコンピュータ数値制御コードに基づき前記型を製作することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記ルールベース切削ループ経路を計算することは、前記模型上の対応する界面領域に、第1の位置と、前記第1の位置に対向する第2の位置とを特定することと、前記第1の位置と前記第2の位置との間にトリムラインを延ばすことと、を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ドレープ壁を適用することは、前記トリムラインを特定することと、前記トリムラインより下の体積をベース領域に交換することと、を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ドレープ壁を適用することは、前記型上に形成される口腔内装具が伸びるのを避けるために、前記ドレープ壁の高さを制限することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記型を製作することは、前記型をプラットフォームに固定することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記型及び前記プラットフォームを1つ以上のステージ上に固定することを更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記型を前記切削器具に対して回転させることを更に含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記切削器具を前記型に対して回転させることを更に含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記型を製作することは、前記型の基部に、前記型からの口腔内装具の取り外しを容易にするためのツールを受け入れるための開口部又は穴を配置することを更に含む、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ化された歯科矯正の方法及び装置に関する。より具体的には、本発明は、歯科矯正治療を計画策定し、3次元(3D)印刷プロセスを使用してリテーナ及びアライナなどの1つ以上の歯科装具を製作するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正は、歯の不規則性、不均衡な顔面骨関係、又はこの両方によって生じ得る不正咬合の研究及び治療に関する歯科学の専門分野である。歯科矯正では、骨リモデリング並びに顔面の発育の制御及び修正による歯の変位によって不正咬合を治療する。
【0003】
このプロセスは、従来、静的機械的力を用いて骨リモデリングを生じさせ、それにより歯を移動可能にすることによって実施されてきた。この手法では、ブラケットを備えるアーチワイヤインターフェースを有するブレースが各歯に取り付けられる。歯は、アーチワイヤを介して加えられる圧力に、それらの位置を移動させることにより応答するため、ワイヤは更なる圧力を加えるために再度締められる。不正咬合を治療するためのこの広く受け入れられている手法は完了に平均約24か月かかり、いくつかの異なる分類の臨床上の不正咬合を治療するために使用される。ブレースによる治療は患者にとって不快である及び/又は痛みを伴うということで複雑となり、また歯科矯正装具は美的でないと認識されており、これらは全て使用に対する著しい抵抗を生じさせる。更に、力が強すぎると歯根吸収が生じるだけでなくより痛みを伴うので、力を増加することによって治療時間を短縮することはできない。24か月の平均治療時間は非常に長いため利用は更に減少する。事実、ある推定では、歯科矯正を行うことを選択するのはこのような治療から利することができる患者の半数未満である。
【0004】
Keslingは、1945年に、ブレースの取り外し(バンド撤去)後の歯科矯正の仕上げの最終段階に改良を加える方法として歯保定装具を考案した。ポジショナは、基本的な治療が完了した患者の理想的なワックスセットアップ上で製作した一体型の柔軟なゴム装具である。Keslingは、また、治療が進むにつれて、このセットアップでの上における移動により製作した一連のポジショナによって特定の主要な歯移動も実施できると予想した。しかしながら、この考えは、3次元の(3D)走査が出現し、Align Technologies、OrthoClear、ClearAligner及びClearCorrectを含む企業がコンピュータを使用し、デバイスが透明なことによる審美性の大幅な改善をもたらすまで実用化されなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の個々の歯のトリミング模型では、歯肉形状は失われ、模造歯肉は、多くの場合、技術者によって再形成されて再現される。したがって、まず歯肉形状が正確でない場合があり、経時的に変化する歯肉のアニメーションは物理的模型の欠如により模型化が更に困難となる。このような不正確なモデリングが原因で、得られるアライナは不整合になり、大きすぎる又は小さすぎるデバイスがもたらされ、患者の不快感につながる。
【0006】
別の課題は、参照としての実際の歯肉がないため、いくつかのいわゆるモデル化された治療を実際には実施できず、潜在的エラーが生じることであり、例えば、歯移動は誤ってモデル化された歯肉内で起こり得るが、歯移動は、実際には患者の実際の歯肉外で行われる場合がある。
【0007】
トリミング並びに穴充填並びに個々の歯及び歯肉模型の作成の別の課題は、2つの歯の実際の境界を画定できる情報がほとんどないことである。そのようなトリミング及び充填モデルは、境界面を、それらが任意の場合でも強制的に画定させる。
【0008】
どのような境界面が画定されるかに応じて、移動は制限又は緩和され得る。これはいくらかの実際の移動が実施され得ることを意味する。しかし、そのような不正確さのせいで、モデリングソフトウェアは、模型が互いに衝突することにより正確にモデル化することができない。このことは、実際の治療結果において、歯の間に間隙が作成される原因となる場合があり、最終的な改良が更に必要になり、コストと患者の不満が増加する。その一方で、モデル化された移動が緩和される場合、ソフトウェアは実際には物理的に不可能な移動を可能にする場合があり、これによりモデル化されたデバイスが歯を互いに押し、移動できなくする場合がある。このことにより、アライナのプラスチックシェルが時として、シェルが不快な量の力を加えるほどに伸びる場合もあり、患者が痛みを生じる可能性がある。
【0009】
トリミング及び穴充填の別の課題は、実際の歯のような形状を充填することであり、下部において、下線は、モデル化された境界面のように見え、このような模型は実際の歯のように見えるが、このような鋭い境界はより深い添窩を生じさせる。この深い添窩のせいで、プラスチックシェルを有して印刷され、熱形成されると、印刷後の模型からのプラスチックシェルの取り外しが困難になる。これを補償するために、斜端オブジェクトを典型的には作成してクレビスを充填するが、不正確さとコストは増加する。
【0010】
トリミング及び穴充填の別の課題は、模型サイズが大きすぎてユーザと製造業者との間で通信できないため、模型サイズの低減が必要であるが、結果的に模型の細部が損なわれることである。これらの不正確さによって専門家を誤った方に導く可能性があり、例えば、完全な複合模型は2つの隣接する歯間に間隙を示さないが、低減された模型ではこの間隙を示す場合がある。
【0011】
これらの3D走査及びコンピュータ化された計画策定による治療は煩雑であり且つ時間がかかる。したがって、患者の歯科矯正治療の計画策定のための効率的且つコスト効果的な手順に対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
患者を、その歯列に関する1つ以上の状況を矯正するための治療において、患者の歯列をデジタル走査する工程、治療を計画する工程、及び/又は1つ以上の歯の位置を矯正するためのアライナなどの治療デバイスを任意選択的に製作する工程は、提供者のオフィスで直接実施されてもよい。
【0013】
本明細書に記載されるような、対象者を治療するための1つの方法は、概して、対象者の歯列の走査された歯科用模型を受け取ることと、対象者の歯列のうちの1つ以上の歯を整位するための複数の漸進的移動を有する治療計画を決定することと、複数の漸進的移動の第1のサブセットに関連する1つ以上のアライナを製作することと、を含んでもよい。
【0014】
1つの変更形態では、これには、所定の期間の後、1つ以上の歯の整位を監視するために、対象者の歯列を再評価することを更に含んでもよい。
【0015】
別の変更形態では、これには、複数の漸進的移動の第2のサブセットに関連する1つ以上の更なるアライナを製作することを更に含んでもよい。
【0016】
別の変更形態では、これには、1つ以上の歯を非アライナ矯正手法によって治療することを更に含んでもよい。
【0017】
別の変更形態では、これには、対象者から治療計画に関連する入力を受け取ることを更に含んでもよい。
【0018】
別の変更形態では、治療計画を決定することは、歯科用模型内の1つ以上の歯にラベルを適用することと、歯科用模型内の1つ以上の歯及び歯肉の外側に沿ってローリングボールプロセス(rolling ball process)をシミュレートすることと、ローリングボールプロセスの経路又は軌道に基づき、1つ以上の歯及び歯肉のそれぞれの間に境界を決定することと、歯科用模型内の1つ以上の歯及び歯肉のそれぞれに硬質領域又は軟質領域を割り当てることと、治療計画の策定において、不正咬合を矯正するために、歯科用模型内の1つ以上の歯の位置を移動させることと、を更に含んでもよい。
【0019】
別の変更形態では、治療計画を決定することは、歯移動管理者モジュールによって、不正咬合を矯正するために、歯科用模型内における複数のデジタル歯模型の移動を決定することと、衝突管理者モジュールによって、各歯模型間の近接距離を設定するために、歯模型のそれぞれに影響範囲を割り当てることと、対象者の各歯の実際の状態を監視することと、歯管理者モジュールによって、各歯の実際の状態を各歯模型の予想状態と比較することと、逸脱が検出された場合、実際の状態と予想状態との比較に基づき1つ以上の歯の移動を調整することと、を更に含んでもよい。
【0020】
別の変更形態では、1つ以上のアライナを製作することは、歯列の表面の少なくとも一部に合致する格子構造を有するフリーフォーム構造を生成することであって、格子構造は、フリーフォーム構造が少なくとも部分的に透明であるように複数の開放空間を画定する、ことと、口腔内装具が形成されるように、格子構造内又は格子構造上にコーティングを含浸させること又は被覆することによって格子構造を製造することと、を更に含んでもよい。
【0021】
別の変更形態では、1つ以上のアライナを製作することは、歯列の外部表面に対応する支持構造を製作することと、1つ以上の口腔内装具の内部が歯列に一致するように、支持構造の外部表面上に1つ以上の口腔内装具を形成することと、1つ以上の口腔内装具の内部から支持構造を除去することと、を更に含んでもよい。
【0022】
別の変更形態では、1つ以上のアライナを製作することは、患者の歯列を複製した型をトリミングするための経路を決定するために模型上のルールベース切削ループ経路(rule-based cutting loop path)を計算することと、模型の複雑さを低減するために模型上の切削ループからドレープ壁を適用することと、型をトリミングするために型に対する切削器具の位置を決定することと、ドレープ壁及び切削器具の位置に基づきコンピュータ数値制御コードを生成することと、生成したコンピュータ数値制御コードに基づき型を製作することと、を更に含んでもよい。
【0023】
不正咬合を矯正するために歯を治療するためのシステム及び方法が開示される。これは、一連のラベルをデジタル歯科用模型に適用することと、1つの歯を隣接する歯から隔てる歯の境界を特定するためのローリングボールプロセスを適用することとによって実現されてもよい。ローリングボールプロセスはまた、歯冠/歯肉マージンを決定するために使用されてもよい。ユーザは更に、歯科用模型に、硬質領域(硬質領域は、その形状を変化することができないという基準を有する)及び軟質領域(軟質領域は、付着した硬質領域によって変形することができるという基準を有する)を示す領域を割り当ててもよい。歯科用模型にラベルが付され、画定されると、ユーザは、その後、ラベルが付され、画定された1つの歯又は複数の歯を互いに移動させ、任意の不正咬合を矯正するための治療計画を生成してもよい。治療計画が承認されると、最終的に1つの歯又は複数の歯を所望の位置に移動させるために患者が連続して装着するための一連の3D印刷される歯科装具又はアライナが製作されてもよい。
【0024】
不正咬合を矯正するための治療を計画するための1つの方法は、概して、対象者の歯列の走査された歯科用模型を受け取ることと、その後、歯科用模型内の1つ以上の歯にラベルを適用することと、を含んでもよい。ローリングボールプロセスは、ローリングボールプロセスの経路又は軌道に基づき、1つ以上の歯及び歯肉のそれぞれの間に境界を決定するために、歯科用模型内の1つ以上の歯及び歯肉の外側に沿ってシミュレートされてもよい。硬質領域又は軟質領域は、歯科用模型内の1つ以上の歯及び歯肉のそれぞれに割り当てられてもよく、治療計画の策定において、歯科用模型内の1つ以上の歯の位置は、不正咬合を矯正するためにユーザによって移動されてもよい。承認されると(例えば、患者及び/又はユーザによって)、1つ以上のプロテーゼ又はアライナは、治療計画に従い1つ以上の歯を移動させるように製作されてもよい。
【0025】
治療計画の策定において1つ以上の歯の位置を移動させることは、概して、歯科用模型から新たな歯科用模型をモーフィングすることを含む。記載されるように,1つ以上のプロテーゼ又はアライナは、例えば、のプロセス全体が、対象者による歯科医院の1度の訪問で実施され得るように、1つ以上のアライナを3D印刷することにより製作されてもよい。
【0026】
不正咬合を矯正するための治療を計画するための別の例では、方法は、概して、デジタル歯科用模型を作成するために対象者の歯列を直接走査することと、ユーザに、歯科用模型内の1つ以上の歯にラベルを適用させることと、を含んでもよい。ローリングボールプロセスの経路又は軌道に基づき、1つ以上の歯及び歯肉のそれぞれの間に境界を決定するために、シミュレートしたボールを歯科用模型内の1つ以上の歯及び歯肉の外側に沿ってデジタル的に転がしてもよい。硬質領域は、1つ以上の歯のそれぞれに割り当ててもよく、軟質領域は同様に、歯科用模型内の歯肉に割り当ててもよい。その後、治療計画の策定において、不正咬合を矯正するために歯科用模型内の1つ以上の歯の位置を移動させてもよい。
【0027】
記載されるように、治療計画が承認されると(例えば、患者及び/又はユーザによって)、治療計画に従い1つ以上の歯を移動させるための1つ以上のプロテーゼ又はアライナが製作されてもよく、のプロセス全体は、対象者による歯科医院の1度の訪問で実施されてもよい。
【0028】
システムの利点には、以下の1つ以上を含み得る。システムは、1つのステージから次のステージへの特定の移動を可能にすることによって、各ステージにおける治療専門家による厳密な制御を可能にする。一例では、いくつかの状況においては、いくつかの歯模型を治療専門家が決定したとおりに詳細に計画された状態で動作させるように、個々の歯模型の移動及び動作を同期させることが望ましい。歯模型がランダムに、独立して移動する場合、この詳細に計画された移動を有することは、通常、手動制御では不可能である。本制御方法及び/又はシステムは、いくつかの歯模型の移動で使用するために、及び同期された歯移動を提供するために理想的である。そのような方法は、少なくともいくつかの用途においては、歯間のあらゆる衝突を回避するために、及びまた、単なるランダム移動の出現を回避するために、非スウォーミング(non-swarming)であってもよい。むしろ、詳細に計画された歯模型の群での歯移動中、歯模型はそれぞれ、骨構造及び軟組織の変化などの環境条件に対して安全に応答することが望ましい。
【0029】
システムはまた、複数の生物学的オブジェクト(歯模型)の歯移動を制御するために提供される。システムは、複数の歯模型を含み、そのそれぞれは、その移動を制御するコンピュータコードを含む。システムはまた、歯の管理者モジュールを実行するプロセッサ、及び歯模型のそれぞれの異なる歯移動計画を記録するためのメモリを有する歯移動制御システム(TMCS:tooth movement control system)を含む。実際には、歯移動計画は歯模型のそれぞれのメモリに記憶される(例えば、各歯模型の異なる歯移動計画)。その後、歯移動操作中、局所制御モジュールのそれぞれは、歯模型のメモリに記憶された歯移動計画を実行するように歯模型を独立制御する。
【0030】
いくつかの場合では、歯模型のそれぞれの局所制御モジュールは、歯模型の現在位置を歯移動計画と定期的に比較するように動作し、比較に基づき、歯模型の制御を修正する。これらの場合においては、制御の修正には、歯移動速度を変更すること、又は歯移動計画において歯模型の新たなウェイポイントを目標として選択することを含んでもよい。他の場合では、歯模型のそれぞれのローカルコントロールは、歯模型の周囲の安全エンベロープ内にある別の歯模型を検出し、これに応答して、検出した歯模型に衝突警告メッセージを通信し、検出した歯模型にその経路を変更させ、安全エンベロープから出すように動作してもよい。いくつかの特定の実施形態において、歯模型は歯であり、歯模型のそれぞれの局所制御モジュールは、歯のピッチ及びロールを検出するように動作し、ピッチ又はロールが既定の最大値を超えると、歯の動作を安全動作モードに切り換える。
【0031】
本明細書は、歯移動制御方法についても教示する。この制御方法では、最初の工程は、複数の歯の各歯に固有の歯移動計画を受け取ることであってもよい。次の工程は、歯移動計画を実行するために歯を同時に操作することを伴ってもよい。方法は、第1の歯が、第1の歯の近位の既定の空間内の第2の歯を検出する通信チャネルを歯の対間に設けることを更に含む。方法はまた、第1の歯によって、第1の歯と第2の歯との間の通信チャネル上で第2の歯にメッセージを送信し、衝突を回避するために第2の歯の位置を変更することを含む。
【0032】
方法のいくつかの実施形態では、歯移動計画は、各歯の複数のウェイポイントを含んでもよい。そのような実施形態では、方法は、歯移動計画を実行するために歯を操作する間、現在位置とウェイポイントのうちの1つとの比較に基づき、歯のうちの1つの歯移動速度又は経路を調整することを更に含んでもよい。歯移動計画は、各ウェイポイントに対する経過時間を更に含んでもよく、したがって、歯移動速度又は経路の調整は、歯の1つの経過時間が超過したときに実施されてもよい。
【0033】
方法のいくつかの実施形態では、歯移動は、異なる移動メトリクスに分解され、例えば、歯移動は、傾斜、長軸周りの回転、身体移動等に分解され得る。人工知能ネットワーク、通常、ニューラルネットワークが構築され、異なるニューロン及び重みを有するそのようなネットワークは調整することができ、治療済みの症例がそのようなニューラルネットワークの学習セットである。各症例を入力し、ネットワークが治療結果をより予測できるようにするためにネットワークの重みを調整することによって、新たな症例が生じたときに、設計された移動をネットワークに通過させてもよく、理想的且つより予測可能な移動設計が実現される。より多くのトレーニングケースが提供されるほど、よりロバストなネットワークを実現することができる。
【0034】
一実施形態では、各歯は、グループとして、以下の1つ以上の目標又は目的に合致するルールを実行する。
1.AndrewsのSix Keys To Occlusion(咬合への6つの鍵)の遵守、
2.歯根は0.5mm/月を超えて移動させることはできない、
3.U字形又はV字形に一致させる、
4.咬合を開放する、
5.歯間削合を行わない、
6.インプラント歯の移動は避ける、
7.ユニットとして一緒に移動させる歯のサブグループを画定する。
【0035】
システムは、1つのステージから次のステージへの特定の移動を可能にすることによって各ステージにおける治療専門家による厳密な制御を可能にする。一例では、いくつかの状況においては、歯模型を治療専門家が決定したとおりに詳細に計画された状態で動作させるために歯模型の移動及び動作を同期させることが望ましく、これは歯模型がランダムに独立して移動する場合、手動制御では不可能である。
【0036】
本制御方法及び/又はシステムは、いくつかの歯模型の移動で使用するために、及び同期された歯移動を提供するために理想的であり得る。衝突を回避すること、及びまた、(少なくともいくつかの用途においては)歯模型の単なるランダム移動の出現を回避することが望ましいことから、そのような方法は、非スウォーミングである。むしろ、詳細に計画された歯模型の群での歯移動中、歯模型はそれぞれ、骨構造及び軟組織の変化などの環境条件に対して安全に応答することが望ましい。
【0037】
ここで、口腔内装具又はアライナを含むフリーフォーム構造の製作について述べると、口腔内装具を製作するための1つの方法は、概して、対象者の歯列の3次元表現を捕捉することと、歯列の表面の少なくとも一部に合致する格子構造を有するフリーフォーム構造を生成することであって、格子構造は、フリーフォーム構造が少なくとも部分的に透明であるように複数の開放空間を画定する、ことと、を含んでもよい。格子構造は、その後、口腔内装具が形成されるように、格子構造内又は格子構造上にコーティングを含浸させること又は被覆することによって製造されてもよい。
【0038】
各次の口腔内装具が対象者の1つ以上の歯の移動を与えるように構成され、任意の不正咬合を矯正するために対象者が装着することを目的とする1つ以上の口腔内装具が、したがって、製造されてもよい。
【0039】
概して、口腔内装具は、対象者の歯列の表面の少なくとも一部に合致するように構成された格子構造を含んでもよく、格子構造は、フリーフォーム構造が少なくとも部分的に透明であるように複数の開放空間を画定する。格子構造内又は格子構造上にコーティングを含浸又は被覆させてもよく、少なくとも1つの歯のアタッチメント構造が格子構造の一部として形成されてもよく、歯のアタッチメント構造は、移動させる1つ以上の歯の近傍に位置する。
【0040】
システムは、少なくとも部分的に付加製造によって作製された、身体部分の表面に適合するフリーフォーム構造を提供する。フリーフォーム構造は、格子構造を含む基本構造と、基本構造上に設けられたコーティング材料とを含んでもよい。格子構造は、コーティング材料を含浸させてもよく及び/又はコーティング材料によって囲まれてもよく、コーティング材料は、例えば、高分子又はセラミック材料及び金属を含んでもよい。更に、コーティング材料は、異なる厚さの異なる領域又は材料に組み込まれた他の特徴を含んでもよい。ポリマーは、いくつかの異なるタイプ、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリアミド、又はこれらのブレンド等を含んでもよい。別の実施形態では、格子構造は、発泡固体を含浸させてもよい及び/又は発泡固体によって囲まれてもよい。
【0041】
特定の実施形態では、格子構造は、例えば、1~20mmのサイズを有する複数の単位セルによって画定されてもよい。他の実施形態では、格子構造は、異なる寸法及び/又は異なる構造密度のセルを有する異なる単位セル形状が設けられていてもよい。他の実施形態では、格子構造は、互いに移動可能に接続されており、構造に組み込まれた少なくとも2つの別個の格子構造部分から構成されていてもよい。
【0042】
特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、1つ以上の外部センサ及び/若しくは内部センサ(例えば圧力センサ及び/又は温度センサ)並びに/又は1つ以上の外部マーカ及び/若しくは内部マーカ(例えば、位置マーカ)を更に含んでもよい。そのようなマーカは、現在の歯移動を決定するために外部から読み取ることができ、必要であれば、医師が今後の移動調整を決定するのを補助する。
【0043】
特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、外部に及び/又は内部に配置された、様々な化学物質又は薬物、例えば、歯のホワイトニング材料、糖尿病患者にゆっくりと経口送達され得るインスリン等などの1つ以上の薬剤を更に含んでもよい。そのような化学物質、薬物、又は医薬品はまた、歯肉及び/又は腱を緩め、より速く歯を移動させること、創傷治療等を可能にするために組み込まれ得る。
【0044】
特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、1つ以上の外部ロケータ及び/又は内部ロケータを更に含んでもよく、そのようなデバイスが不適切な場所に置かれると、ユーザがモバイルコンピュータを使用してその位置を検出し、デバイスを見つけることができる。ロケータは、任意の数のデバイス、例えば、磁石、無線近接検出器、光近接検出器等を含み得る。
【0045】
フリーフォーム構造はまた更に、いくつかの異なる構成を用いる構造の異なる領域に異なる剛性値を有するように構成され得る。
【0046】
一態様では、歯列などの対象者の身体部分の3次元表現を捕捉し、除去可能な内部支持構造を作製することによって1つ以上の口腔内装具を製作するためのシステム及び方法が開示される。口腔内装具の1つ以上は、1つ以上の対応する支持構造上で直接製作されてもよい。口腔内装具が完成すると、内部支持構造は除去、歯列の不正咬合を矯正するために1つ以上の歯の上に適合する歯科装具が残ってもよい。
【0047】
口腔内装具を製作するための1つの方法は、概して、対象者の歯列の3次元表現を捕捉することと、歯列の外部表面に対応する支持構造を製作することと、1つ以上の口腔内装具の内部が歯列に一致するように、支持構造の外部表面上に1つ以上の口腔内装具を形成することと、1つ以上の口腔内装具の内部から支持構造を除去することと、を含んでもよい。
【0048】
不正咬合を矯正するために対象者の1つ以上の歯を移動させるように構成された1つ以上の口腔内装具が順に形成されてもよい。更に、支持構造は、第1の材料から製作されてもよく、1つ以上の口腔内装具は、第1の材料とは異なる第2の材料から製作されてもよい。
【0049】
概して、口腔内装具アセンブリは、対象者の歯列の外部表面に対応する外部表面を有する支持構造を含んでもよく、支持構造は、第1の材料から製作され、口腔内装具は、形成される口腔内装具の内部が対象者の歯列に合致するように、支持構造の外部表面上に3D印刷により形成され、口腔内装具は第1の材料とは異なる第2の材料から製作される。
【0050】
支持構造は、概して、口腔内装具を歯列上に配置可能であるように、形成された口腔内装具の内部から除去可能である。更に、複数の口腔内装具が形成されてもよく、不正咬合を矯正するために対象者の1つ以上の歯を移動させるように構成された各口腔内装具は順に形成される。したがって、各口腔内装具は、複数の対応する支持構造上に形成されてもよい。
【0051】
本発明による構造は、構造の異なる部分に異なる剛性を有することができ、少なくとも部分的に付加製造によって作製されている場合でも透明にすることができる。本発明によるフリーフォーム構造は更に、単一部品として作製することができ、内部センサ又は外部センサを更に含んでもよい。
【0052】
歯のデジタル模型を受け取り、切削ループ経路を決定し、内部歯列弓曲線及び外部歯列弓曲線を有する歯型の簡略化された歯基部を生成するために切削ループにドレープ壁を適用することによって歯型及び口腔内装具を切削及びトリミングするためのシステム及び方法が開示される。口腔内装具は、歯型上で形成されてもよく、カッターが、内部歯列弓曲線及び外部歯列弓曲線を横切る単一掃引運動を用いて適用されてもよい。
【0053】
システムは、歯模型を切削及びトリミングするための簡単な手法を可能にする。システムは、1つのステージから次のステージへの特定の移動を可能にすることによって、各ステージにおける治療専門家による厳密な制御を可能にする。システムは、ドレープ壁簡略化(drape wall simplification)によってアライナを迅速且つ効率的に形成することができる。CNC機械は、歯移動の多くのステージに対する各シェルを特別仕様のデバイスとして製造することができる。型は、必要であれば、低コストの2D切削機械を使用して切削/トリミングされ得る。加えて、得られる口腔内装具(アライナ、シェル等)は、ポジ型から最小限の力で取り外すことができ、過度の取り出し力によるシェルの破損のリスクが低下する。
【0054】
概して、口腔内装具を形成する方法の一実施形態は、患者の歯列のデジタル模型を受け取ることと、患者の歯列を複製した型をトリミングするための経路を決定するために模型上のルールベース切削ループ経路を計算することと、模型の複雑さを低減するために模型上の切削ループからドレープ壁を適用することと、型をトリミングするために型に対する切削器具の位置を決定することと、ドレープ壁及び切削器具の位置に基づきコンピュータ数値制御コードを生成することと、生成したコンピュータ数値制御コードに基づき型を製作することと、を含んでもよい。
【0055】
口腔内装具を形成する方法の別の実施形態は、概して、患者の歯列のデジタル模型を受け取ることと、患者の歯列を複製した型をトリミングするための経路を決定するために模型上のルールベース切削ループ経路を計算することと、模型の複雑さを低減するために模型上の切削ループからドレープ壁を適用することと、模型の基部の所定の高さを決定することと、模型のコンピュータ数値制御コードを生成することと、生成したコンピュータ数値制御コードに基づき型を製作することと、を含んでもよい。
【0056】
以下の、本発明の特定の実施形態の図の説明は本質的に単なる例示であり、本教示、それらの用途又は使用の限定を意図するものではない。対応する参照番号は、図面全体を通して、同様の又は対応する部品及び特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1A】患者の歯列を走査し、治療を計画し、その後、患者の治療を行うための1つ以上のアライナを製作するための例示的なプロセスを示す。
【
図1B】最初の治療計画がいかにして再評価され得るか、及び更なる治療計画策定の際に更なる治療オプションがいかにして生成され、考慮され得るかを示す流れ図の例を示す。
【
図2A】歯模型製作システムの1つの例示的な方法の流れ図を示す。
【
図2B】結果が最初の治療計画から逸脱したときに治療プロセスを調整するための別の例示的な方法を示す。
【
図3A】模型ファイルの作成において治療プロセスを計画するための1つの例示的なプロセスを示す。
【
図3B】目的の歯の上に表示されたウィジェットを移動させることによりデジタル操作される歯の様々な図を示す。
【
図3C】目的の歯の上に表示されたウィジェットを移動させることによりデジタル操作される歯の様々な図を示す。
【
図3D】目的の歯の上に表示されたウィジェットを移動させることによりデジタル操作される歯の様々な図を示す。
【
図4】治療プロセスの計画における1つの例示的なラベリングシステムを示す。
【
図5】治療計画策定時に歯の境界を検出するためのローリング又はドロッピングボール法を示す。
【
図6A】ローリング又はドロッピングボールが歯のクレビスにどのように追従するかを示す。
【
図6B】ボールの軌道経路をいかに使用して隣接する歯の間のマージン線を見出すことができるかを示す。
【
図6C】マージンの画定後に、歯科用模型全体をいかにして2つの部分に分離し、歯の境界又は形状を検出することができるかを示す。
【
図7】歯及び歯肉を相互接続系としてモデル化するために使用され得る例示的なばね質量モデルを示す。
【
図8】治療計画が患者に対していかにして実施され得るかの例を示す。
【
図9】本明細書中に記載される歯移動制御技術を実施するのに有用な複数の歯模型システムの機能ブロック図である。
【
図10】歯模型などの2つ以上の移動物体に対する歯移動管理又は歯移動制御の提供において使用するためのシステムの機能概略又はブロック図である。
【
図11A】格子構造を用いて歯科装具を製作するための例示的なプロセスを示す。
【
図11B】格子構造を用いて、異なる材料厚さを有する歯科装具を製作するための例示的なプロセスを示す。
【
図12A】3D印刷プロセスで使用され得る、格子構造を用いた、歯科装具の下半分と上半分とに形成された基本構造の例の斜視図を示す。
【
図12B】格子構造の開口部の例示的な詳細図を示す。
【
図12C】いくつかの網状層を有する格子構造の例示的な端部図を示す。
【
図12D】コーティング材料のみを含む領域を有する格子構造の例示的な端部図を示す。
【
図12E】表面から形成された延長部などの特徴を有する格子構造及びコーティングの詳細斜視図を示す。
【
図12F】異なる単位セル形状を有する異なる領域を有する格子構造及びコーティングの詳細斜視図を示す。
【
図12G】異なる厚さで形成された異なる領域を有する格子構造及びコーティングの詳細斜視図を示す。
【
図12H】片側にコーティングを有する領域を有する格子構造の例示的な端部図を示す。
【
図12I】少なくとも1つの組み込まれた更なる構成要素を有するアライナの斜視図を示す。
【
図12J】ヒンジ又は他の可動機構が格子に沿って組み込まれた格子構造の例示的な端部図を示す。
【
図12K】組み込まれた1つ以上の(内部)チャネルを有するアライナの斜視図を示す。
【
図13】弾性材料を受け入れるための相対的に厚い材料部分を有するように機械加工された領域を有するアライナの一部分の斜視詳細図を示す。
【
図14】
図14Aおよび図14Bは、相対的に硬質の格子構造、及び歯科装具又はリテーナとして使用するための1つ以上の特徴を有するフリーフォーム歯科装具構造の変形形態を示す。
【
図14C】1つ以上の特定の歯に付着するように製作された吸着特徴の部分断面図を示す。
【
図14D】患者による摂食又は発話を容易にするように構成された領域を有するアライナの一部分の斜視図を示す。
【
図14E】異なる摩擦の異なる領域を有するように製作された異なる部分を有するアライナの一部分の斜視図を示す。
【
図14F】微粒子コーティングを有するアライナの一部分の斜視図を示す。
【
図15A】歯科装具を形成するのに適した格子構造の例の様々な図を示す。
【
図15B】歯科装具を形成するのに適した格子構造の例の様々な図を示す。
【
図15C】歯科装具を形成するのに適した格子構造の例の様々な図を示す。
【
図15D】歯科装具を形成するのに適した格子構造の例の様々な図を示す。
【
図16】構造内に配置された支持物を有する例示的な3D印刷された歯科構造を示す。
【
図17A】内層及び外層を有する3D印刷された歯科構造の様々な実施形態の側断面図を示す。
【
図17B】内層及び外層を有する3D印刷された歯科構造の様々な実施形態の側断面図を示す。
【
図18】内部に画定されたポケットを有する3D印刷された歯科構造の別の実施形態を示す。
【
図19】2つの歯部分の間に配置されたボール状材料を有する更に別の実施形態を示す。
【
図20】金属ワイヤを支持するためのスロットを中に有する例示的な模型を示す。
【
図21】3D印刷された口腔内装具の厚さを調整するための例示的なプロセスを示す。
【
図22】物理的シミュレーションに基づき口腔内装具の厚さを決定するための例示的なプロセスを示す。
【
図23】口腔内装具を製作するための例示的なプロセスを示す。
【
図24】口腔内装具のデジタル模型上の対向するドット間にトリムラインを画定する例示的なプロセスの側面図を示す。
【
図25】口腔内装具のデジタル模型上の対向するドット間にトリムラインを画定する例示的なプロセスの側面図を示す。
【
図26】製造を容易にするために1つ以上のスロットを有して形成された口腔内装具の頂面図を示す。
【
図27】製造のために基部に取り付けられた口腔内装具の側面図を示す。
【
図28】口腔内装具の側面図、並びに装具のトリミングを容易にするために装具を並進及び/又は回転させることができる方向のいくつかを示す。
【
図29】口腔内装具をトリミングするために使用してもよい切削デバイスの頂面図、及び切削デバイスが調整され得る方向のいくつかを示す。
【
図30】口腔内装具及び製造用の切削デバイスの頂面図を示す。
【
図31】治療のために基部に固定された口腔内装具の側面図を示す。
【
図32】口腔内装具用の物理的な型をレーザ切削するための例示的なプロセスを示す。
【
図33】口腔内装具の調整を容易にするためのツール用キャビティを有して形成された口腔内装具の側面図を示す。
【
図34】空気又はガスの流れによる装具の取り外しを容易にするために形成された領域を有する別の口腔内装具の側面図を示す。
【
図35】口腔内装具の取り外しを容易にするための例示的なプロセスを示す。
【
図36】楔形取り外し部材による取り外しを容易にするために形成されたキャビティを有する別の口腔内装具の側面図を示す。
【
図37】楔形取り外し部材による口腔内装具の取り外しを容易にするための例示的なプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、特定の実施形態に関して記載されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲のみによって限定される。特許請求の範囲内のあらゆる参照符号はその範囲を限定するものと解釈されるものではない。
【0059】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別段の明確な指示のない限り、単数形及び複数形両方の支持物を含む。
【0060】
用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、本明細書で使用する場合、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含む(containing)」、「含む(contains)」と同意語であり、包含的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない部材、要素又は方法工程を排除するものではない。用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、列挙した部材、要素又は方法工程を参照する場合、前記列挙した部材、要素又は方法工程「からなる」(consist of)」実施形態も含む。
【0061】
更に、明細書及び特許請求の範囲における第1の(first)、第2の(second)、第3の(third)等の用語は、類似の要素間を区別するために使用され、別段の指示のない限り、連続的な又は時系列の順序を必ずしも説明するものではない。このように使用される用語は適切な状況下で交換可能であり、本明細書中に記載される本発明の実施形態は本明細書に記載される又は示される以外の順序で動作可能であることは理解されたい。
【0062】
用語「約(about)」は、パラメータ、量、時間経過等などの測定可能な値を参照する際に本明細書で使用する場合、規定値の及び規定値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を、そのような変動が、開示される発明において実施するのに適切である限り、含むようになっている。修飾語「約(about)」が参照する値自体もまた、具体的に、及び好ましくは開示されると理解されたい。
【0063】
終点による数値範囲の列挙は、各々の範囲内の包含される全ての数及び分数並びに列挙した終点を含む。
【0064】
本明細書に引用される全ての文書は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
特に定義されない限り、技術的及び科学的用語を含む本発明の開示において使用される全ての用語は、本発明が属する技術の当業者により一般に理解される意味を有する。明細書で使用される用語の定義は、更なる案内によって、本発明の教示をより良く理解するために含まれる。本明細書中に使用される用語又は定義は、単に本発明の理解を助けるために提供される。
【0066】
本明細書全体を通して、「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特徴が、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じた様々な場所における文言「一実施形態において(in one embodiment)」又は「一実施形態において(in an embodiment)」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではなく、可能性がある(but may)。更に、本開示から当業者には明らかなように、1つ以上の実施形態において、特定の特徴、構造、又は特徴は任意の適切な手法で組み合わせてもよい。更に、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態はいくつかの特徴を含むものの、他の実施形態に含まれる他の特徴は含まないが、当業者には理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内であり、異なる実施形態を成す。例えば、以下の特許請求の範囲では、請求されるいずれの実施形態もあらゆる組み合わせで使用することができる。
【0067】
患者の歯列に関する1つ以上の状況を矯正するための患者の治療において、患者の歯列をデジタル走査する工程、治療を計画する工程、及び/又は1つ以上の歯の位置を矯正するためのアライナなどの治療デバイスを任意選択的に製作する工程は、提供者のオフィスで直接実施されてもよい。
【0068】
図1Aの例示的なプロセスに示すように、患者の歯列を走査する工程10は、本明細書で更に詳細に記載されるように、いくつかの異なるプロセスを使用して実施されてもよい。得られた患者の歯列のデジタル画像によって、本明細書中に記載されるプロセスのいずれかを使用し、任意の1つ以上の歯の位置、不整列、不正咬合等を矯正するための治療計画策定18が実施されてもよい。従来の治療計画策定では、通常、患者の歯列の初期位置から始まる全ての治療計画を作成し、歯列の段階的なアライメント矯正に基づき治療を構築する。この段階的なアライメント矯正は、その後、治療プロセス全体を通して使用するための、最初のアライナから始まり最終アライナで終わるアライナの全アレイを作成するために使用される。
【0069】
しかしながら、本明細書中に記載される治療計画策定18及び製作プロセス20は、可変治療経路で実施されてもよい。即ち、最初の治療計画策定18は患者の歯列の初期位置に基づき得るものの、後に続く治療の段階的プロセスは可変であり、最終治療工程は予め決定されない。むしろ、歯列のアライメントは、再評価のために、及び場合によっては1つ以上の中間治療工程のための新たな走査及びアライナのために患者が医師の事務所を再訪することのある(再訪することのない)中間工程において決定される。このようにして、患者が医師を訪問する度に更なるアライナ又は他の治療プロセスを作成してもよい。したがって、治療プロセス全体は治療が進むにつれて作成されるため、治療開始時に予め決定される全治療シーケンスではなくむしろ反復プロセスとしての治療計画策定18及び製作プロセス20になる。
【0070】
一例が、最初の治療計画策定30がいかにして実施され得るか、及び患者が使用するための1つ以上の最初のアライナがいかにして製作され得るかを示す
図1Bの流れ図に示される。最初の治療の後、患者は評価32されてもよく、更なる治療計画策定の際に、更なる治療オプション34が生成又は考慮されてもよい。評価32に基づき、様々な治療オプションが考慮され、患者は、例えば所定の時間の後、再評価36,38されてもよい。評価は所望の位置への患者の1つの歯又は複数の歯の移動の進展又は進展の不足に基づき医師が形成してもよい。加えて、医師が生理学的データのみならず、患者により提供される協力も考慮できるように、患者はまた、医師と協力して自身の評価、考え等を提供してもよい。
【0071】
どの治療オプションを進めるかに応じて、更なる治療オプション40,46が考慮され、その対応する結果が、再度、どの治療オプションを進めたかに応じて再評価42,44,48,50されてもよい。評価に応じて、必要であれば、患者に治療オプション52,54,56,58が再度提供されてもよく、プロセスは所望の結果が達成されるまで所定の間隔で継続されてもよい。治療プロセスは治療全体の最初から最後まで予め決定されず、治療オプションは変化し得ることから、アライナは一度にわずかだけ製作してもよい。このことは医師に、予め製作したアライナの全アレイを未使用にすることなく治療を途中で変更するための柔軟性も提供する。
【0072】
図1Aに戻ると、製作プロセス20それ自体を様々な方法によって達成してもよい。一例では、部分的に矯正した患者の歯列の模型は、例えば3D印刷型22によってポジ型として形成されてもよく、対応するアライナ(単数又は複数)をポジ型の上に熱形成24してもよい。別の例では、1つ以上のアライナは、例えば、直接3D印刷26で直接形成されてもよい。いずれの場合も、得られる1つ以上のアライナ28は、患者が使用するために形成されてもよい。
【0073】
歯列の走査
治療計画策定を容易にするための患者の歯列のデジタル模型を取得は、いくつかの異なる手法で行われてもよい。患者は自身の歯列を別の場所で走査し、治療提供者に転送させてもよい、又は自身の歯列を治療提供者の場所で直接走査させてもよい。いずれの場合も、患者の歯列は任意の数の適切な走査デバイスによってデジタル走査されてもよい。例えば、患者は、自身の歯列(歯、軟組織、又はこの両方を含む)をMRIスキャナ、X線機械、口腔内スキャナ等によって走査されてもよい。得られる走査画像は、コンピュータシステムに保存又はアップロードし、任意の1つ以上の歯の位置、不整列、不正咬合等を矯正するための治療計画策定のために使用され得る歯のデジタル画像を生成するために使用してもよい。あるいは、患者の歯列は、後にポジ型を作成するために使用され得る印象を取得するために模型作成されてもよい。患者の歯列を示す得られたポジ型は、その後、対応するデジタル画像を取得するために走査されてもよい。
【0074】
治療計画策定
治療計画策定プロセスは、患者の歯列の走査された歯科用模型を受け取り、分析した後に実施されてもよい。走査された歯科用模型は、連続的な歯移動を行うのに使用するための1つ以上のポジショナを製作するために容易に実施され得る治療計画の策定を可能にするように適宜処理されてもよい。
【0075】
図2Aは、患者の不正咬合を矯正するための治療計画策定において使用してもよい例示的な全体的な歯模型製作プロセスを示す。示されるプロセスは、例えば、下歯列弓及び/若しくは上歯列弓CADファイル、口腔内写真、X線、又は3DCTスキャン等の形態の患者の歯科記録をまず取得110することを伴ってもよい。下歯列弓及び/又は上歯列弓CADファイルは、例えば、患者の歯列の下印象及び上印象を取ること、X線等などのいくつかの異なる方法によって作成してもよい。
【0076】
歯科記録が取得されると、1つ以上のコンピューティングデバイスによる登録のために下歯列弓と上歯列弓の関係がインポート又は計算112されてもよく、可撓性歯科解剖学的模型が、患者が治療される場所、例えば歯科医院の近傍にローカルに位置する又は患者の場所からリモートに位置する1つ以上のプロセッサによって自動作成114されてもよい。歯科解剖学的模型がデジタルで作成され、適合すること及び歯列弓模型を期待どおりに開閉することができることが確認されると、1つ以上の可能な治療が患者のチェアサイドでリアルタイムで作成116されてもよく、1つ以上の治療オプションがチェアサイドで患者に示される及び/又は検討され118てもよく、ここで、場合によっては治療計画を必要に応じて変更するための治療オプションのシミュレーションもまた示されてもよい及び/又は検討されてもよい。治療オプションのシミュレーションは任意の数の電子的な表示方法を使用して患者に対し表示されてもよい。
【0077】
患者と治療オプションを検討後、治療計画(任意の変更を伴う)を使用して、製作機械類(例えば、3D印刷機械、熱形成、レーザ焼結等)のための製造ファイルを生成120してもよい。得られる1つ以上のポジショナは患者の近傍でローカルに(例えば、歯科医院、診療所、近傍の施設等)製作してもよいため、患者が使用するための1つ以上の得られるポジショナは、ローカルで製作し、患者が1つ以上のポジショナを同一訪問時に試す122ことを可能にしてもよい。
【0078】
このような治療計画は、以下の1つ以上を含む、従来の計画策定及び治療計画に勝る特定の利点を有し得る。
・正確な治療が即座に策定され、患者とリアルタイムで検討され得る、
・医師は、作成が容易な治療計画オプションを完全に制御する、
・実の歯肉模型製作が実施され得る、
・1つ以上のポジショナをローカルで製作し、患者が同一訪問時に試すことができる、
・1つ以上のポジショナと併せて、例えば、間接ボンディングブラケット、ゴムバンド、フック、リテーナ等の他の治療方法を組み込むことが容易である。
【0079】
図2Aで示し、記載したように、患者のために治療計画が策定され、実施された場合でも、歯移動の実際の進行状況は治療計画に一致しない可能性がある、又は実際の進行状況は治療計画から逸脱し始める場合がある。この変動性のために、必ずしも全てのポジショナ又はアライナが治療の開始時に製作され得るわけではなく、その代わり、ポジショナは、後の治療用の新たなポジショナのセットが製作され得る、患者が医師を次回訪問するまでの予め設定された使用段階(例えば6週間毎)で製作されてもよい。
図2Bは、実際の治療中に患者の進行状況による任意の変化又は逸脱に従い治療計画を調整してもよいこの段階的な治療計画策定の例を示す。更に、段階的な治療計画策定プロセスの実施は、医師が製作したポジショナに加えて又はその代わりに、不正咬合を矯正するための他のデバイス又は方法(例えば、ブラケット、ワイヤ等)を用いることも可能にする。
【0080】
上述のように、患者の歯列は、患者の歯列の3次元(3D)表現を捕捉130するために走査あるいは記録されてもよく、任意の不正咬合を矯正するための1つ以上の歯科装具を形成134するための最初の治療計画が決定132されてもよい。治療プロセス全体の歯科装具を製作するよりもむしろ、患者の次の訪問まで患者が使用する段階的な数の装具を最初に製作してもよい。医師は、当初策定された治療計画に従い、次の訪問時に患者の歯移動の進行状況を評価136してもよい。患者の歯移動の進行状況が治療計画と異なるかどうかを決定138するにあたり、医師は、治療計画を患者の実際の歯移動と比較し、これらが互いに関連しているかどうかを決定してもよい。このような比較は、いくつかの手法で、例えば、医師により視覚的に行われてもよい、又は患者の歯列を再度走査し、捕捉された治療済み歯列の3D表現を治療計画とデジタルで比較してもよい。
【0081】
システムが実際の歯移動の進行状況が治療計画と異ならないと決定した場合、変更なく治療計画に従い歯移動を継続140してもよく、次の訪問まで患者が使用するための更なる数のポジショナを製作してもよい。次の訪問及びその後の訪問が元の治療計画に従って進むという前提で、治療が完了し、不正咬合が矯正されるまでポジショナの追加セットを製作してもよい。
【0082】
しかしながら、評価のうちのいずれか1つの際に、医師が、実際の歯移動が治療計画と異なると決定した場合、医師は、システムによって逸脱の警告142を受けてもよい。その後、新たに製作したポジショナが患者の歯列へのより良好な適合を提供し、逸脱の矯正に応答するように逸脱を矯正するために、治療計画は、歯科装具又はポジショナの次のセットのためにシステムにより自動的に調整144されてもよい。後の訪問時に、変更した治療計画による歯移動が評価136され、歯移動が変更した治療計画と異なるかどうかを決定138してもよく、逸脱が検出されない場合、治療は継続されてもよいが、逸脱が検出された場合、医師は逸脱の警告を受けてもよく、変更した治療計画は、それに応じて再度調整されてもよい。このプロセスは、検出された歯移動が治療計画に従っていると思われるまで継続されてもよい。
【0083】
システムは、特定の歯の任意の逸脱について医師に通知するようにプログラムされているため、医師は、患者がポジショナの装着に不適合であるかどうか、及び/又は何らかの問題がある歯移動があり、後に医師が治療の継続に関して見解を示すことができるかどうか、又は特に問題がある歯に他のデバイス若しくは方法、例えば従来のブレースを用いてもよいかどうかを決定することができる。治療計画(任意の後に続く治療計画として)は任意の数の方法及び/又はデバイスにわたって他者と共有されてもよい。
【0084】
図3の流れ図に示すように、下歯列弓と上歯列弓との間の関係のインポート又は計算112において、下歯列弓及び/又は上歯列弓のデジタル模型が例えばコンピュータにロード150されてもよい。加えて、歯科解剖学的模型の作成114の一部として、下歯列弓と上歯列弓との間の咬合採得材がバーチャル咬合器にセットされ、取り付けられ152てもよく、ユーザは、その後、不正咬合を矯正するために、歯のIDを対象領域にドラッグし、ドロップ154してもよい。歯冠と歯肉との間のマージンをデジタル模型製作する際、プロセスは、「硬質」及び「軟質」として指定される領域を割り当て156てもよく、条件は、「硬質」指定を有する領域はその形状を変化することができず、「軟質」指定を有する領域は付着した「硬質」領域によって変形することができると設定される。
【0085】
加えて、領域の移動及び制御を容易にするために、任意の数の可動ウィジェットが様々な領域又は位置に画定158されてもよい。例えば、プロセスは、近心/遠心、舌側/顔面側、垂直等の、可動ウィジェットの画定を可能にしてもよい。更に、治療計画の策定において、ユーザは、ウィジェットを制御し、モーフィングさせた新模型を計算160することができてもよい。治療計画が完成すると、計画は、ポジショナの1つ以上の製造で使用するための、又は後の熱形成用の型を製造するための、例えば、3Dプリンタ対応可能な模型ファイルにエクスポート162されてもよい。
【0086】
これら可動ウィジェットは、治療計画の策定において模型の操作を容易にするビューベースウィジェットであってもよい。模型が特定のビューで表示される場合、表示される操作ウィジェットは、表示された特定のビューでのみ模型操作を可能にするようにプログラムされてもよい。例えば、
図3Bは、治療計画策定のために、移動させる対象の歯Tの上に可動ウィジェット164が表示されている舌側/顔面側ビューを示す。例えば画面又はモニタ上に対象の歯Tを表示させた状態で、移動ウィジェット164を特定の歯Tの上に又はこれを覆って表示させてもよい。ウィジェット164によって提供される移動により、歯Tのデジタル模型を様々な並進運動及び/又は回転運動で移動させてもよい。
図3Cは、垂直/頂点ビューで示される歯Tが、歯Tをデジタル操作するための可動ウィジェット164’を、歯Tの上にどのように表示させることができるかを示し、
図3Dは、治療計画策定のために可動ウィジェット164’’が同様に表示されている歯Tの近心/遠心ビューを示す。
【0087】
付加的に及び/又は任意選択的に、各歯は、その天然色、又は別の色、例えば、黄色若しくは赤色のいずれかで表示し、提案された対応する移動が困難である若しくは実現の見込みがないことを医師に示し、別の治療を模索することを医師に案内してもよい。
【0088】
治療計画策定のために患者の歯列の走査画像を用意する際、デジタル模型に初めにラベルが付されてもよい。例えば、
図4は、走査された歯列模型170が見えるラベリングシステムの例を示す。いくつかのラベル172、この例では、合計16個のラベル(歯列弓に応じて、例えば、1~16個又は17~32個)をまず模型170のそばに配置し、例えば、特定の歯にラベルをドラッグし、ドロップすることによってユーザが目的の歯にラベルを割り当てることを可能にしてもよい。この例では、ラベルがドラッグされる間、ラベルは見えるままであってもよいが、特定の歯にドロップされることにより割り当てられた後、歯はラベルが付されたことを示すように変化してもよい。例えば、歯は、今ではラベルが付されていることを示すように、例えば、未割り当ての歯を示すための赤色から、歯にラベルが付されたことを示すための白色に色を変化させてもよい。
【0089】
治療計画策定を容易にするにあたり、上述のように、可動ウィジェットはデジタル模型上に画定158され、適宜、制御160されてもよい。
図4に示すように、円として示される中心頂点174が模型170に沿って画定され得る可動ウィジェットの1つの例が示される。選択された頂点に関連するメッシュが単一連結領域を形成し、リストを読む手法を提供すべきである。中心頂点174は中心として示され、第2の頂点176は、間に画定される第1のアーム178が歯面の外側に、舌側から頬側方向に直接向くことができるように、中心頂点174に対して画定されてもよい。第3の頂点180は、間に画定される第2のアーム182が歯の中心に沿って近心から遠心方向に向くように、中心頂点174に対して画定されてもよい。第1のアーム178及び第2のアーム182は互いに垂直である必要はない。可動ウィジェットは、ラベルが付された歯(ゆえに、模型内で移動させることができる歯)のみに適用されてもよく、アーム178,182の方向及びそれらの起点を読み、方向付けるための手法を提供してもよい。可動ウィジェットは、使用されていないとき、ユーザから見えないように隠されてもよい。
【0090】
歯にラベルが付され、小さなメッシュのセットが特定されると、ドロップボールアルゴリズム(drop ball algorithm)を使用して、歯肉マージン及び歯マージンを検出してもよい。
図5は、ローリング又はドロッピングボール194をシミュレートして歯190及び歯肉192の境界を検出することによって、患者の走査した歯列から歯の境界又は形状をデジタルで検出及び特定する例示的なプロセスを示す。ボール194は、例えば歯冠における高エネルギー状態196から、例えば歯の下部における低い静止状態198に転がるようにシミュレートされてもよい。ボール194’が経線を下って転がると、歯と歯肉との間のマージン領域に、屈曲が変化する、先端が上を向いたバンプ200がある。これらの領域及び正確な曲率変化を見ることにより、マージン線を検出することができる。この方法は、咬合歯マージン及び歯肉マージンも検出することができる。
【0091】
しかしながら、2つの隣接する歯間のサイドマージンを検出するために、記載したように、ローリングボールアルゴリズムは歯の既知のマージン線をたどるように使用され得るが、隣接する歯の間において、歯の境界は外挿されてもよい。例えば、
図6Aは、ローリングボール194が隣接する歯212,214の輪郭をたどるように転がされ得る例を示す。歯の間の領域218は、ボール194が一般に到達不能であり得るが、ボールは歯のクレビス216を自然にたどる。したがって、歯212と歯214との間でローリングボール194がたどるであろう外挿された軌道経路220,222を使用して、ボール194が間の領域218に到達できなくても、
図6Bに示されるように、隣接する歯212,214の間のマージン線を見出すことができる。
【0092】
図6Cに示すように、模型上でマージンが画定されると、歯科用模型全体は2つの部分、即ち、硬歯冠表面及び軟歯肉表面に分離されてもよい。一実施形態では、「硬」表面224,226は、一体部品で移動し、移動中にその形状を維持する硬質表面と考えてよい。「軟」表面228,230は「硬」表面224,226に付着してもよく、硬表面224,226の移動に基づき変形してもよい。このような移動によって歯科用模型の全体的なトポロジー構造は変化しないため、完成した模型はデフォルトで水密であり、3Dプリンタ要件に適合する。
【0093】
これは、模型をトリミングし、その後、水密にするためにキャップを嵌める(穴充填)必要がある従来の分離模型と個々の歯模型から逸脱する。走査される歯形状の複雑さによって、このようなトリム及び穴充填は非常に複雑なプロセスとなる。
【0094】
図7は、歯移動の決定において歯科用模型に適用されてもよい例示的なばね質量モデル240を示す。いくつかの状況において、いくつかの歯模型を治療専門家が決定したとおりに詳細に計画された状態で動作させるために、個々の歯模型の移動及び動作を同期させることが一般に望ましい。歯模型がランダムに、独立して移動する場合、この詳細に計画された移動を有することは、通常、手動制御では不可能である。本制御方法及び/又はシステムは、いくつかの歯模型の移動で使用するために、及び同期された歯移動を提供するために理想的である。そのような方法は、少なくともいくつかの用途においては、歯間のあらゆる衝突を回避するために、及びまた、単なるランダム移動の出現を回避するために、非スウォーミングであってもよい。むしろ、詳細に計画された歯模型の群での歯移動中、歯模型はそれぞれ、骨構造及び軟組織の変化などの環境条件に対して安全に応答することが望ましい。
【0095】
ばね質量モデル240は硬表面に直接取り付けられるように拘束されてもよく、モデル240は伸張又は圧縮され得る。任意の数のアルゴリズムを使用して、その形状、例えば、ばね質量モデルを計算することができ、ばね質量モデル240の1つの実施形態において、2つのノードは、ばね及びダンパの並列回路によって連結された質点としてモデル化されてもよい。この手法において、物体は、フックの法則のある変化形に従う理想的な無重量弾性ばねによって連結された質点(ノード)のセットとしてモデル化される。これらノードは、物体の表面の2次元多角形メッシュ表現のエッジ、又は物体の内部構造をモデル化するノード及びエッジの3次元ネットワーク(又は更には、例えば、ロープ又はヘアストランドがシミュレートされる場合はリンクの1次元系)のいずれかから導出されてもよい。ノード間に更なるばねを加えることができる、又は所望の効果を達成するようにばねの力の法則を変更することができる。歯科用模型をばね質量モデル240として拘束することで、いくつかの歯模型を詳細に計画された状態で動作させるように、個々の歯模型の移動及び動作を同期させるのに役立つ。
【0096】
ばねによって加えられる力及び任意の外力(接触、重力等による)を含む質点にニュートンの第2法則を当てはめると、ノードの運動に対する微分方程式の系が与えられ、これは通常の微分方程式を解くための標準的な数値スキームによって解かれる。3次元ばね質量格子のレンダリングは、多くの場合、レンダリングされたメッシュが格子に組み込まれ、メッシュが発展する際に格子の形状に合うように歪められるフリーフォーム変形を使用して行われる。全ての質点がゼロに等しいと想定すると、弾性格子挙動に対するいくつかの技術的課題の解決を目的とする伸張格子方法を得ることができる。
【0097】
モデル240を計算するための別の手法は、有限要素解析(FEA)モデルを使用することであり、このモデルでは、モデルの「軟」部分がより小さなFEA要素、例えば、四面体又は立方体要素に分離され、要素表面のいくつかはFEA解析におけるいわゆる境界条件である「硬」部分に取り付けられてもよく、「軟」部分(歯肉部分)には歯肉部分に合致するヤング率などの様々な材料特性が割り当てられてもよい。硬部分は移動するが、境界条件は変化してもよく、したがって、全ての要素はその隣り合う要素へのその接続に基づき大きなマトリックスを形成してもよい。そのようなマトリックスを解くことにより、それぞれ個々の要素形状及び位置を計算し、治療中の計算された歯肉変形を得てもよい。
【0098】
一実施形態では、物体は、互いに適合する多数の中実要素に分解することによって3次元弾性連続体としてモデル化されてもよく、材料のモデルを解き、各要素の応力及び歪みを決定してもよい。要素は典型的には四面体であり、ノードは四面体の頂点である(2次元多角形がどのようにして三角形へと三角形化され得るかと同様に、多角形メッシュによって囲まれる3次元領域を四面体へと四面体化する)。歪み(材料の点の、それらの静止状態からの局部変形を測定)は歪みテンソルによって定量してもよい。応力(材料に作用する全方向の単位面積当たりの局部力を測定)は、コーシー応力テンソルによって定量してもよい。現在の局部歪みを前提とすると、局部応力は、フックの法則の一般化形式によって計算することができる。要素ノードの運動方程式は、各要素の応力場を組み込み、これをニュートンの第2法則によってノードの加速度に関連付けることにより得られ得る。
【0099】
拘束面が、変形の総エネルギーが最小になる形状をとる(石鹸の泡に類似する)ことが求められる変分原理及び表面物理学によって誘導されるエネルギー最小化法を使用することができる。表面のエネルギーをその局部変形の観点から表すことで(エネルギーは伸張及び屈曲の組み合わせによる)、表面の局部力はエネルギーを位置に関して微分することにより与えられ、標準的な手法で解くことができる運動方程式を得る。
【0100】
モデルをその本来の形状にするためにペナルティ力(penalty forces)又は拘束条件がモデルに適用される(例えば、材料は形状記憶を有するかのように挙動する)シェイプマッチングを使用することができる。運動量を保存するために、物体の回転を、例えば極分解によって適切に推定しなければならない。有限要素シミュレーションに近似させるために、シェイプマッチングを3次元格子に適用することができ、複数のシェイプマッチング拘束条件が混合される。
【0101】
変形はまた、拘束条件によって連結された複数の剛体のネットワークを使用して軟体の運動をモデル化し、例えば、マトリックスパレットスキニングを使用してレンダリングのための表面メッシュを生成する、従来の剛体物理演算エンジンによって処理され得る。これはHavok Destructionにおいて変形可能なオブジェクトに対して使用される手法である。
【0102】
本明細書中に記載されるプロセス、コンピュータ可読媒体、及びシステムは、
図8に示すようなコンピュータシステム250などの様々なタイプのハードウェアで実施されてもよい。このようなコンピュータシステム250は、情報を伝達するためのバス又は他の通信機構と、情報を処理するためにバスに接続されたプロセッサとを含んでもよい。コンピュータシステム250は、バスに接続された、ランダムアクセスメモリ又は他の動的ストレージデバイスなどのメインメモリを有してもよい。メインメモリは、命令及び一時可変を記憶するために使用してもよい。コンピュータシステム250は、また、バスに接続された、静的情報及び命令を記憶するための読み出し専用メモリ又は他の静的ストレージデバイスを含んでもよい。
【0103】
コンピュータシステム250は、また、CRT又はLCDモニタ254などのディスプレイに接続されていてもよい。入力デバイス256もまた、コンピュータシステム250に接続されていてもよい。これら入力デバイス256は、ユーザ258が使用するためのマウス、トラックボール、カーソル方向キー等を含んでもよい。本明細書中に記載されるコンピュータシステム250は、コンピュータ252、ディスプレイ254、スキャナ/3Dプリンタ260、及び/又は入力デバイス256を含み得るが、これらに限定されない。各コンピュータシステム250は、1つ以上の物理的コンピュータ又はコンピュータシステム又はその一部を使用して実装されてもよい。コンピュータシステム250によって実行される命令は、また、コンピュータ可読媒体から読み出されてもよい。コンピュータ可読媒体は、CD、DVD、光又は磁気ディスク、レーザディスク、搬送波、又はコンピュータシステム250によって可読の任意の他の媒体であってもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサによって実行されるソフトウェア命令の代わりに又はこれと併せて、有線接続回路が使用されてもよい。
【0104】
明らかとなるように、本明細書中に開示される特定の実施形態の特徴及び特性を異なる手法で組み合わせ、更なる実施形態を形成してもよく、これらは全て本開示の範囲内にある。
【0105】
本明細書で使用される、とりわけ、「~できる(can)」、「~できる(could)」、「可能性がある(might)」、「~してもよい(may)」、「例えば(e.g.)等などの条件語は、使用される文脈内で具体的に明示されない限り又は解釈されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素及び/又は状態を含み、他の実施形態がそれらを含まないことを伝えることを目的とする。したがって、このような条件語は、1つ以上の実施形態に特徴、要素及び/又は状態が多少なりとも必要であること、又は考案者による入力若しくは指示を有して又は有さずに、これら特徴、要素及び/又は状態が含まれる、又は任意の特定の実施形態において実施されるかどうかを決定するための論理を1つ以上の実施形態が必ず含むことを意味することを一般に意図するものではない。
【0106】
本明細書中に記載される及び/又は添付の図に示される流れ図内の任意のプロセス記述、要素、又はブロックは、プロセス内の特定の論理機能又はステップを実施するための1つ以上の実行可能命令を含むモジュール、セグメント、又はコードの一部を場合によっては示すものと理解すべきである。当業者には理解されるように、要素又は機能が、付随する機能に応じて実質的に同時又は逆の順序を含む、示される又は記載される順序から逸脱した順序で削除され、実行され得る代替的実装形態は、本明細書中に記載される実施形態の範囲内に含まれる。
【0107】
本明細書中に記載される全ての方法及びプロセスは、本明細書中に記載されるコンピュータシステムなどの1つ以上の汎用コンピュータ又はプロセッサによって実行されるソフトウェアコードモジュールに組み込まれてもよく、これにより完全に自動化されてもよい。コードモジュールは任意の種類のコンピュータ可読媒体又は他のコンピュータストレージデバイスに記憶されてもよい。その代わりに、方法のいくつか又は全ては、専門コンピュータハードウェアに組み込まれてもよい。
【0108】
本明細書に記載されている実施形態に多くの変更及び修正を施してもよく、その要素は、とりわけ許容可能な例であると理解されるべきであることは強調されたい。そのような全ての修正及び変更は、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されるものである。
【0109】
個々の歯及び組織のモデル化のためのプロセスのほかに、1から32の番号が付された歯模型の群を制御するのに使用するための更なる制御方法及びシステム(又はそのような制御方法/システムを組み込んだ複数の歯模型システム)がある。即ち、方法は、不正咬合を矯正するための治療のための歯の移動の計画策定において、歯のグループを群(例えば、集合的に移動する鳥の群れのように)として治療する。
【0110】
簡潔には、制御方法は、近傍の歯模型との通信を基に衝突を安全に回避するように歯移動経路を調整するために各歯模型上に設けられるオンボード又は局所制御モジュールを含む、適応論理とともにマルチキャスティング技術を有する階層ベースの監視制御を使用する。記載されている口腔内における複数の歯模型の制御の結果は群挙動であり、群挙動では、歯模型が、完全に独立もせず完全に中央制御もされない移動によって、同期した状態で移動するものと思われる。
【0111】
治療計画策定における制御方法は、歯模型の移動を制御するための、歯移動管理者モジュール312と、衝突管理者モジュール314と、歯管理者モジュール316とを含むいくつかの構成要素を全般的に有するシステム310において実施されてもよい。制御方法/システム310のこれら構成要素又は態様はコンピュータシステム318と通信し、これについては以下に記載し、
図9に示す。
【0112】
図9は、歯移動を安全且つ繰り返し可能な手法で制御するために使用されてもよい歯コントローラ/コンピュータ又は歯移動制御システム(TMCS:teeth movement control system)310を示す。システム310は、患者の歯320のデジタル歯模型があるコンピュータシステム318(1つ以上のプロセッサを含む)と通信する歯移動管理者モジュール312を含む。示されるように、コンピュータシステム318上のデジタル歯模型は、歯間模型又は歯の通信用に構成されており、本明細書で説明するように、この相互通信によって、既定の歯移動経路上に概ね留まりつつも衝突を回避するために、特定の歯322,324が重複する移動経路内にあるかどうかを決定することによって、歯320がその経路を安全に変更して不正咬合を矯正することが可能になる。
【0113】
実行時、歯移動管理者312は、コンピュータシステム318に、性能及び品質を監視及び維持し、また、移動する歯の安全性を監視するためのコマンドを送信するようにプログラムされている。歯移動管理者312は更に、停止時間中、例えば非実行時にコンピュータシステム318に歯移動要件をアップロードするようにプログラムされている。
【0114】
第2のモジュール、衝突管理者モジュール314は、コンピュータシステム318と相互作用し、移動する歯間の衝突を処理するようにプログラムされていてもよい。衝突管理者314は、以下の論理、即ち、(a)各歯模型の「影響範囲」を計算する、例えば、衝突イベントをトリガーするための各歯模型間の近接距離を決定し、歯模型がこの、特定の歯模型の周りの影響範囲に入った場合、衝突イベントがトリガーされる、(b)最近傍アルゴリズムによって、潜在的経路重複が発生するかどうかを決定する、及び(c)オペレータに対し、コンピュータシステム318上に設けられたユーザインタフェース(例えば、モニタデバイスを通じて)上で、任意の2つの歯間に潜在的経路重複が発生することを示す、を実行するようにプログラムされていてもよい。衝突モジュール314は、例えば、コンピュータシステム318内のメモリに歯移動経路を記憶してもよい。
【0115】
別のモジュールは、各歯320の予想状態及び実際の状態を監視するようにプログラムされた歯管理者モジュール316を含む。例えば、モジュール316は、例えば歯324の現在位置又は移動速度を、歯移動経路、又は治療アニメーションなどによる、歯模型の詳細に計画された及び/若しくは時間同期された移動によって定義され得るその予想状態と比較してもよい。この監視に基づき、歯管理者モジュール316は、以下の優先順位、即ち、定位(例えば、別の歯模型又は歯に対する歯模型の位置);環境(例えば、骨条件等を調整する);安全性(例えば、歯模型又は他の歯模型が予想どおりに動作していない場合、歯模型を安全位置又は動作モードに戻す);性能表示(例えば、表示ニーズを満たすように位置、速度、又は他の動作パラメータを調整する);歯の状態;及びオペレータの確信/性能ニーズ、を用いるなどの調整を行ってもよい。
【0116】
上記のように、歯管理者モジュール316、衝突モジュール314、及び歯移動管理者312は、群型制御を行うように共に機能するように構成されている。使用時、歯間模型の通信は、集中/歯移動制御のみに依存するよりもむしろ、歯模型のそれぞれの間に作動データが階層的に流れること又は広がることを可能にする。換言すると、歯管理者モジュール316は、歯移動管理者モジュール312によって提供される歯移動経路を提供すること、及び/又は衝突管理者モジュール314によって提供される、予想状態と実際の状態との比較に基づき(又は安全性の理由のため)リアルタイム調整を行うことなどによって、歯模型/歯の移動を制御するように機能する集中制御又は中央論理のレベルを提供する。歯模型間通信に関しては、以下に留意すると有用となり得る:(a)いくつかのユニットは歯管理者316と対話するマスターノードとして示され得る、及び(b)マスターノードは、歯内移動計算情報又はコマンドを残りの歯模型に送信するように動作し得る。
【0117】
個々の歯模型の移動及び模型の制御はスウォームベースではないが、これは一部、スウォーミングベース歯模型は互いに衝突する場合があること又は元来安全性が不足している場合があることが理由である。システム310は、デジタル歯模型は、個々の歯模型間において同期した移動を行う群として移動することになるため、ランダムな移動を回避するように設計されている。しかしながら、局所制御モジュールによって処理及び生成される歯模型間通信によって、システム310内において歯移動経路の交差が許容される際の方向転換及び隣り合う歯の存在/移動など、環境条件に各歯模型が安全に応答することを可能にする。換言すると、オンボード論理は、歯移動経路上に全般的に留まろうとしながらも、衝突を回避するように歯移動を制御するよう機能する。
【0118】
図10は、全般的に、不正咬合を矯正するための歯の群移動をシミュレートすることによって、同期された歯移動を提供するよう歯模型を管理又は制御するのに使用するための全般的システム(又は歯移動管理制御システム)330を示す。示されるように、不正咬合を矯正するために1つ以上の歯を移動させるための治療計画がまず策定332されてもよい。システムは、オフラインアクティビティを実施するために使用される構成要素と、オンラインアクティビティを実施するために使用される構成要素とを含んでもよい。オフラインアクティビティは、特定の効果を達成する又はタスクを実行するために、複数の歯模型の治療コンセプト又は詳細に計画された移動を設計又は選択することを含んでもよい。歯移動のコンセプト(例えば、メモリ等に記憶されたデジタルデータ)は、コンピュータシステム318又は他のデバイスによって処理されてもよい。
【0119】
使用される各歯は、本明細書に記載されるように、1つ以上の歯の移動を歯の群(鳥の群れなど)としてシミュレート334するために、粒子としてモデル化されてもよい。したがって、各デジタル化された歯模型は、コンピュータシステム318によって、既定の直径を有する3次元球などの3次元空間を各歯模型の周りに画定するように構成されてもよい。この3次元球は、個々の歯模型間の衝突のリスクを低減するための、歯模型又は飛行物体用の安全エンベロープを画定するために使用されてもよい。例えば、歯模型のそれぞれは、歯模型がそれらの歯移動経路に沿って移動する際、2つ以上の歯模型が、それらの安全エンベロープの交差又は重なりを禁じられている場合、互いに衝突するのを回避するように、システム318によって作成されてもよく、作成及び詳細に計画されてもよい。
【0120】
複数の歯模型のための作成された歯移動計画は、その後、各歯模型毎のファイルを典型的に含むこの「治療説明」による処理のために、コンピュータシステム318又は他のデバイスのメモリにエクスポートされる。これらファイルのそれぞれは、例えば、ディスプレイ上で医師及び/又は患者に歯の移動を示す336ために、詳細に計画されたタスクのアニメーション又は実行の最中に経時的に得られる各歯模型の実世界座標を生成するように処理される。この処理は、各歯模型の個々の歯移動計画を作成し、歯移動計画のこのような処理又は生成は、モデル化されたアニメーションを特定のロジスティック要件に基づき処理することを含んでもよい。例えば、これら要件は、例えば、歯の空間がシミュレーションと同じサイズ及び形状である、必要に応じて修正されてもよく、同じでなければ、修正は歯模型の1つ以上の実世界座標を変更又は設定するのに有用であり得る。
【0121】
治療計画が承認338されると、治療計画を使用し、1つ以上の歯科装具又はポジショナを、例えば3D印刷を使用して、治療計画策定の場所でローカルに製作340してもよい。
【0122】
治療計画を作成するために個々の歯模型の移動のシミュレーションを歯の群として計画策定334するにあたり、歯模型は本明細書中に記載されるTMCS310を使用して操作してもよい。ロジスティック要件はまた、指定場所(venue)に対する真の歯移動を設定することと、治療プロセスの開始及び終了時、又は安全オーバーライド(例えば、「停止」)が与えられたときなどに各歯が安全に配置され得る安全又は「ホーム」ポイントを追加することとを含んでもよい。治療計画策定管理構成要素は、歯のアクションがスクリプト(例えば、データファイル)、リアルタイムコンピュータメッセージ及び/又はハードウェアトリガーのいずれかによって歯管理構成要素に送られる場合、中央治療計画コントローラのコマンドを翻訳する構成要素であると考えてもよい。
【0123】
歯移動計画は上述のようにTMCS310に提供され、システムは、この例では歯の形態で示されるいくつかの歯模型を更に含む。歯は、とりわけ、1つのセットが例えば2つの臼歯を含むように示され、1つのセットが1つの臼歯を含み、1つのセットが犬歯を含むグループ又はセットにまとめられてもよい。これらセットは、アニメーション又は歯移動経路の少なくとも一部分にわたって、特定の表示又はタスクを実施するように共に動作又は機能してもよい。
【0124】
他の場合では、歯の全てが、群として移動する、あるいはその移動が時間同期される及び/若しくは歯移動計画によって詳細に計画される大きなセットの一部とみなされてもよい。グループ内の歯は、それらの歯移動計画を修正して衝突を回避するために、及び/又は隣接する歯と通信してそれに移動するように命令するあるいはその歯移動計画/移動を変更して衝突を回避するために、それらの存在を決定し、それらの近接を決定し、必要な場合、歯移動計画を処理し、隣接位置及びその他の環境データを決定するように、その近傍の又は隣接する歯と通信することができる。
【0125】
歯移動前、オペレータはTMCSを使用して各歯模型上に歯移動計画をロードする。歯移動シーケンスの間、TMCS及びその歯管理者モジュール316は、歯模型に予めロードしておいた歯移動計画を実行するように機能する。歯の治療中、TMCSは安全性を能動的に監視し、医師はTMCSユーザアクションを開始することができる。しかしより典型的には、TMCSは、歯模型のそれぞれによって提供される各歯模型によって提供される遠隔測定データを処理することによって群内の全ての歯模型の動作を監視する。いくつかの実施形態では、歯管理者モジュール316は、現在実施されている歯移動計画に従い、各歯模型の実際の状態を歯模型のその特定の時間に予想状態と比較するソフトウェア/論理を有する。
【0126】
オペレータの入力時に歯管理者モジュール/TMCSによって「ゴー」又はスタート信号が発せられた後、TMCSは各歯模型のローカル制御ソフトウェア/ハードウェアとともに、予めロードされていた歯移動計画/表示を安全に実施するように機能する。上記のように、制御方法及びシステムは、集中制御(例えば、表示/歯移動に基づくタスクの最中、安全性又は他の理由によるマニュアルオーバーライドを可能にするための)をスマート歯模型と組み合わせ、歯模型の群タイプの移動をより効果的に提供する。換言すると、歯模型にはそれぞれ、それらの安全窓(又は例えば、衝突を回避するために他の歯模型は通常通らない1~3mm等の球などの、各歯模型を取り囲む安全動作エンベロープ)内又はこれに接近する予期せぬ別の歯模型の存在に応答しようとしながらも、それらが経時的に(例えば、アニメーション期間の間)実施する特定の歯移動計画が与えられてもよい。
【0127】
動作中、TMCSを使用して、歯模型のそれぞれが、それらの格納された歯移動計画を初期開始点(例えば、各歯模型は異なる開始点に配置されてもよい)から開始して、始めるようにトリガーする。場合によっては、歯模型が「ゴー」を受け取った後、各歯模型はその局所制御モジュール(又は他のソフトウェア/プログラミング)を使用して歯移動計画に追従しようとするが、時間拘束条件はない。換言すると、歯移動計画は、歯模型の一連のポイント又はウェイポイントを定義してもよい。これら実施形態では、歯模型は相対的に流体の状態で制御され、特定の時間量内に特定の移動を達成することには関連付けられず、例えば、歯移動計画はゴーの信号を受け取った後に歯模型が特定の時間に特定の位置にあることを必要としないため、計画策定の柔軟性を可能にする。
【0128】
いくつかの実施では、歯移動計画は各歯模型が予め設定された、一定の歯移動速度で移動することを想定して構築されてもよい。この歯移動速度は各歯模型に対して単独で設定されてもよく、又は歯模型のそれぞれにおいて同じ(又は比較的狭い範囲内)であってもよい。しかし他の場合では、局所制御モジュールは、歯移動速度を患者の口腔内の条件に合うように調整するように適合されてもよい。骨硬度は、局所制御モジュール及び/又は(計画された移動よりもむしろ)実際の歯移動を検出するための光センサにより歯模型において決定されてもよく、TMCSによって歯模型のそれぞれに提供されてもよい。場合によっては、各歯模型がその速度を通常調整するように群制御が好ましく、例えば、各歯模型は、同期された、非ランダムな移動を有するように見えるように同様の方向に移動しつつも同様の歯移動速度で進む。
【0129】
いくつかの実施形態では、各歯模型は独立して動作し、自身の歯移動計画に追従し続けようとしてもよい。各歯移動計画は、各歯模型が異なる開始点又はホームで始まり、その第1のウェイポイントに向かって移動するという点で異なってもよい。この目的のために、各歯模型は、必要に応じて、その現在の3次元位置を、歯肉線より上のその現在の高さとともに決定するように備えられている。局所制御モジュールはこの現在位置データを使用して、必要であれば、その現在の方向を決定若しくは修正する、又はその歯移動計画における次のウェイポイントへと引き続き移動するように進む。これには、ウェイポイントにおける所望の高さに到達するためにその経路及びまたその角度を変更することを伴ってもよい。
【0130】
オペレータは、その歯模型のより良好な制御を提供するために、多くの歯模型のうちの特定の1つを手動でオーバーライドするように対策を講じてもよい。例えば、TMCS310の歯制御モジュールは、歯模型の予想位置をその実際の位置(その遠隔測定又は他のデータにおけるバックエンドチャネルを介して提供される)と比較するように動作してもよい。歯模型が経路から外れている傾向がある、又はその次のウェイポイントに到達するのに許容される許容差の範囲外にあるという警告がグラフィカルユーザインタフェース(GUI)で提供されてもよい。
【0131】
例えば、GUIは、適切に動作し、配置された歯模型を第1の色(例えば、緑色)で、安全な量だけ経路から外れた又は所定の位置から逸脱した歯模型を第2の色(例えば、黄色)で、安全エンベロープの外にある歯模型を第3の色(例えば、赤色)で示してもよい。赤色/安全でない歯模型は、それらを安全な動作モードに入れる(例えば、ホームに戻す)ように自動的に又は手動で処理されてもよい。所望の条件の外で動作する黄色の歯模型は、歯模型をそれらの歯移動経路に戻そうとするために、歯模型を所望のウェイポイントにより迅速に移動させるために速度、方向、迎角等を手動で変更することなどによって手動操作してもよい。手動操作の完了後、制御は、歯模型の、そのメモリに記憶された歯移動計画に基づくローカル制御のために、TMCSから局所制御モジュールに戻ってもよい。TMCSは、口の状態が低下しても表示品質(例えば、歯移動性能)を維持するように、衝突課題を評価し、衝突回避コマンドを実行するように構成されていてもよい。
【0132】
他の実施形態では、歯模型の局所制御モジュールは、歯移動中、環境条件(歯痛又は一時的な歯肉不快感、少なくとも一時的な経路外れなど)により良く応答するように、歯移動計画を調整するように機能してもよい。例えば、歯移動計画は、歯移動計画における、開始時間(ファイルによってTMCSから歯模型に「ゴー」が合図されたとき)に対する、そのウェイポイントのそれぞれに到達するための時間を提供してもよい。一実施形態では、歯模型が次の歯模型までの距離及びその現在の推定到着時間を決定することを必要とする場合がある。到着時間が予め設定した/目標到着時間近辺の窓内にない場合、局所制御モジュールは、歯の回転速度を増加することなどによって歯模型の歯移動速度を増加するように機能してもよい。同様に、歯模型があまりにも早く移動している場合、歯模型の局所制御モジュールは歯移動速度を遅らせるように機能してもよい。このようにして、歯模型の移動は、群制御を提供するようにより良く同期された状態に維持され得る。
【0133】
しかし、他の場合では、歯移動計画が、開始/ゴー時間に対して各ウェイポイントにある時間を定義することにより、歯又は他の歯模型の局所制御モジュールは、既定の時間窓以内にウェイポイントに到達したかどうかを決定するように機能する。到達しなかった場合(例えば、歯模型は時間「X」にウェイポイントに到達しなかったことに加え、許容可能な遅れがあった)、局所制御モジュールは、次のウェイポイントを省き、口内のウェイポイントに直接移動するように歯模型を誘導することによって歯移動計画を修正するように機能してもよい。
【0134】
例えば、歯移動計画は、ウェイポイントA~Zを含んでもよい。局所制御モジュールがウェイポイントCの既定の時間窓が達成されなかったと決定した場合、局所制御モジュールは歯移動計画からウェイポイントDを省いてもよく又は除いてもよく、ウェイポイントEに向かう方向/経路(例えば、直線又は他の既定の経路)を歯模型にとらせてもよい。このようにして、歯模型がそれらの歯移動計画(例えば、表示/ディスプレイを実行する又は歯に対してタスクを実行する時間に一致し得る既定の時間内にウェイポイントのセットを通過する又はそれに近接するように定義する)において後れを取った場合に「追いつく」ことを可能にしながらも歯の移動速度は維持される(例えば、全ての歯模型が同じ速度で移動する)。
【0135】
動作の安全性及び監視に関し、各歯模型は、地理的領域の外周部(及び場合によっては内部領域)又は境界を画定するジオフェンスの定義を記憶してもよい。歯模型の局所制御モジュールは、歯移動中の歯模型の決定された現在位置を比較し、この位置をジオフェンスと比較する。この境界が交差している(又は予め設定したジオフェンスからの距離内などに近づいている)場合、局所制御モジュールは、歯模型をジオフェンス境界内に即座に戻すように機能してもよい。他の場合では、歯模型は安全動作モードに切り換えられてもよく、これにより歯模型をホーム位置に戻してもよい。
【0136】
更に、安全な歯模型操作に関し、歯移動制御のいくつかの実施形態は、TMCSの介入に依存することなく衝突を回避するために歯模型が歯模型間(又は歯間)通信を有するように構成することを伴ってもよい。各歯模型はその局所制御モジュールを使用し、別の歯模型が歯模型から、1~3mm等以内の球などの既定の距離内に入ったときに検知するように継続的に動作してもよい。そのような状態を検知した第1の歯模型(又は結合している場合は両歯模型)は衝突警告メッセージを生成し、このメッセージを問題の/近傍の歯模型に送信し、その経路又は現在位置を、第1の歯模型の歯の空間から出るように変更する。例えば、そのような衝突警告メッセージを受け取った歯模型は、そのメモリに回避的アクションを記憶し、このアクション(予め設定した角度右又は左に傾くなどの一定の移動)を開始してもよい。回避は予め設定した時間にわたって行われてもよく、その後、歯模型はその歯移動計画(例えば、その新たな現在位置から次のウェイポイントまでの経路を再計算する等)に従うように戻ってもよい。
【0137】
別の例では、歯模型局所制御モジュールは歯模型の現在の向きを監視し、向きが許容範囲外である(例えば、歯の傾き又は回転が320度等を超える)場合、又は身体移動が大きすぎる場合、局所制御モジュールはまた、(動作の問題を修正しようとする前又は後に)歯模型を安全動作モードにするように機能してもよい。
【0138】
本発明は特定の程度の詳細を伴って記載し、図示してきたが、本開示は単なる例として行ったものであり、当業者には、以下で請求するように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく部品の組み合わせ及び配置の多くの変更を用いることができることは理解されよう。
【0139】
明らかとなるように、本明細書中に開示される特定の実施形態の特徴及び特性を異なる手法で組み合わせ、更なる実施形態を形成してもよく、これらは全て本開示の範囲内にある。
【0140】
1つ以上のアライナの製作
本明細書中に記載されるシステムは、3次元(3D)印刷プロセスを使用したリテーナ及びアライナなどの歯科装具の製作に関連する。装具は、格子構造として知られる小さなセルを用いた複雑な形状を有する中空形状を有するように形成されてもよい。トポロジー最適化を使用して、固体格子構造と滑らかな移行材料体積との効率的な混合を補助することができる。格子性能は、張力、圧縮、剪断、ねじれ及び疲労寿命下で研究され得る。
【0141】
身体部分の表面の少なくとも一部、例えば、外輪郭に適合するフリーフォーム格子構造が本明細書に提供される。具体的には、記載される実施形態は、フリーフォーム格子構造を利用して、1つ以上の不正咬合を矯正するために患者の歯列の外部表面上に置く又は配置するように設計された装具を形成又は製作してもよい。フリーフォーム構造は付加製造法によって少なくとも部分的に製作され、格子構造を含む基本構造を用いる。格子構造は規定の硬さを有するフリーフォーム構造を確実なものとすることができる及び/又はこれに寄与することができ、格子構造はまた、格子構造上に与えられ得るコーティング材料による歯列の最適な被覆を確実とすることができる。格子構造はコーティング材料によって少なくとも部分的に被覆されている、コーティング材料を含浸させている及び/又はコーティング材料によって囲まれている。更に、格子構造の実施形態は構造の透明性に寄与することができる。
【0142】
用語「フリーフォーム格子構造」は、本明細書で使用する場合、不規則及び/又は非対称な流動形状若しくは輪郭を有する、より具体的には1つ以上の身体部分の輪郭の少なくとも一部に適合する構造を意味する。したがって、特定の実施形態では、フリーフォーム構造はフリーフォーム表面であってもよい。フリーフォーム表面は、3次元の幾何学的空間内に含まれる(本質的に)2次元形状を意味する。実際、本明細書に詳述するように、そのような表面は限られた厚さを有するという点で本質的に2次元とみなされ得るが、それでもなお、ある程度は様々な厚さを有してもよい。この表面は特定の形状を模すように厳密に設定された格子構造を含むため、3次元構造を形成する。
【0143】
典型的には、フリーフォーム構造又は表面は、平面、円柱、及び円錐表面などの通常の表面とは異なり、対応する径方向寸法の欠如を特徴とする。フリーフォーム表面は当業者には周知であり、エンジニアリング設計規則に広く用いられている。典型的には、非一様有理Bスプライン(NURBS:non-uniform rational B-spline)数学的手法を用いて表面形態を記述するが、ゴーデンサーフェス(Gorden surface)又はクーンズサーフェスなどの他の方法はある。フリーフォーム表面の形態は、多項方程式の観点ではなく、それらの極、度、及びパッチ(スプライン曲線のセグメント)の数によって特徴付けられ、定義される。フリーフォーム表面はまた、3D表面を近似するために三角形が用いられる場合、三角表面と定義することができる。三角表面は、CAD設計に習熟した者には周知の標準三角パッチ言語(STL:Standard Triangulation Language)ファイルで使用される。フリーフォーム構造は内部に硬質基本構造が存在することで身体部分の表面に適合し、構造にそのフリーフォーム特性を与える。
【0144】
格子構造及び/又はこれらを含むフリーフォーム構造について述べる場合の用語「硬質」は、本明細書では、限定された可撓性の程度を示す構造を意味し、より具体的には、この硬さは、構造が、使用前、使用中、及び使用後に3次元空間内に既定の形状を形成し且つ保持し、この全体形状がそれに印加される圧力に機械的に及び/又は物理的に耐えるようにする。特定の実施形態では、構造はその機械的完全性を実質的に失うことなくして手動でも機械でも折り返すことができない。想定される構造の形状の全体的な硬さにもかかわらず、構造の比剛性は格子構造の構造及び/又は材料によって決定され得る。実際、格子構造及び/又はフリーフォーム構造は、3次元空間内でそれらの全体形状を維持しつつも、取り扱いのためにいくらかの(局所)可撓性を有してもよいと想定される。本明細書に詳述されるように、(局所)変化は、格子構造のパターンの性質、格子構造の厚さ、及び材料の性質によって起こり得る。更に、以下に詳述されるように、本明細書で想定されるフリーフォーム構造が(例えば、ヒンジによって又はコーティング材料の領域によって)相互接続された別個の部分(例えば、不連続格子構造)を含む場合、形状の硬さは格子構造を含む領域のそれぞれに限定される場合がある。
【0145】
概して、本明細書で想定される方法は歯科装具製作プロセスのためのものであり、製作プロセスは、フリーフォーム構造によって被覆される歯に装着される装具を設計することと、型を製造することと、型内に(1つ以上の)格子構造を設けることと、フリーフォーム構造を形成するように型内にコーティング材料を付与することと、を含む。フリーフォーム構造は患者専用である、即ち、特定の患者、例えば動物又はヒトの解剖学的構造若しくは歯列に特に適合するように作製されている。
図11Aは、対象者の身体部分の3D表現を捕捉410することによって歯科装具を製作するための全体的な例示的方法を全般的に示す。この例では、これには、1つ以上の不正咬合を矯正するために、患者の歯列の表面、例えば外輪郭の3D表現を捕捉することを伴ってもよい。この目的のため、対象者を、3Dスキャナ、例えばハンドヘルド型レーザスキャナを使用して走査してもよく、収集されたデータは、その後、対象者の身体部分のデジタル3次元モデルを構築するために使用することができる。あるいは、患者専用画像は、技術者又は医療関係者が対象者又はその一部を走査することによって提供され得る。そのような画像は、その後、対象者若しくはその一部の3次元表現として使用され得る、又は対象者若しくはその一部の3次元表現に変換され得る。走査画像を操作し、例えばクリーンアップする更なる工程が想定されてもよい。
【0146】
捕捉された3D表現を用いて、身体部分、例えば、歯列の表面の少なくとも一部に適合する格子構造で概ね構成されるフリーフォーム構造を生成412してもよい。構造が前記身体部分の少なくとも一部に対して本質的に相補的であり、格子構造を含む又は格子構造からなるように、フリーフォーム構造を前記身体部分の前記3次元表現に基づき設計する。格子構造において、対象者の形状、フリーフォーム構造の必要な剛性等に応じて1つ以上のタイプ及び/又はサイズの単位セルが選択されてもよい。身体部分の異なる位置に適合させるためにフリーフォーム構造内に異なる格子構造が設計されてもよい。異なる格子構造には、単一部品を形成するためにそれらを接続することができる及び/又は共にデジタル混合することができる又は基本構造内のビームによって接続することができるように、例えば、ヒンジ又は他の可動機構が設けられてもよい。
【0147】
この工程はまた、例えば、マスクのポジプリント上に、異なる性質、異なるセルサイズ及び/若しくは開口部を必要とし得る表面を画定することと、必要な形状を持つセルを生成し、必要に応じて、画定された表面上に、前記表面を覆うようにそれらをパターニングすることと、別個のセルパターンを単一固体部品に組み合わせることと、を含む、格子構造を設計するのに必要な工程を含んでもよい。格子構造を設計する際の格子構造の要件は当業者には自明であろうことに留意されたい。したがって、当業者であれば、自身の経験から得られるデータ、並びにFEモデル及び/又はCFDモデルなどの数値モデリングシステムによるデータを使用するであろう。
【0148】
フリーフォーム格子構造は、その後、例えば、付加製造法によって実際に製造414されてもよい。特定の実施形態では、これには、基本構造上にコーティング材料を付与することを含んでもよく、コーティング材料は好ましくはポリマーである。これら異なる工程は、同じ場所で又は同じ者によって実施される必要はない。実際、典型的には、フリーフォーム構造の設計、製造、及びコーティングは、異なる場所で異なる者によって実施されてもよい。更に、上に列挙した工程の間に更なる工程を実施してもよいと想定される。フリーフォーム基本構造のコーティング又は含浸において、格子構造にポリマーなどの特定の材料を含浸させ、それによってフリーフォーム構造を生成してもよい。これには、歯科装具に高分子材料又は他の材料を添加すること、格子構造に含浸させた材料を硬化すること、歯科装具を分解することなどの工程を含んでもよい。
【0149】
フリーフォーム構造の製造後、構造は、例えば、フリーフォーム構造のクリーンアップ及び仕上げを含むいくつかのポストプロセス工程を経てもよい。更に、本明細書に記載されるような硬質フリーフォーム構造の形成の他の用途としては、また、治療的、化粧品、及び保護的用途の用途が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0150】
1つの特定用途においては、本明細書中に記載されるフリーフォーム構造の使用は、火傷などの損傷した皮膚表面のケア及び治療に使用されてもよい。更なる実施形態では、本明細書中に記載されるフリーフロム(free-from)構造の使用は、無傷の皮膚表面のケア、保護、及び治療に使用されてもよい。更なる特定の実施形態によれば、本明細書に記載されるようなフリーフォーム構造の使用は、化粧品のために使用されてもよい。更なる実施形態では、本明細書に記載されるようなフリーフォーム構造の使用は、皮膚に治療薬を送達するために使用されてもよい。他の特定の実施形態では、構造は、コーティング材料に組み込まれ得る1種以上の治療用組成物を更に含む。更に別の実施形態では、本明細書中に記載される構造の使用は、例えば、身体部分を置換するための補綴デバイスとして使用されてもよく、フリーフォーム構造は、欠損した身体部分と同一となるように作製されてもよい。
【0151】
図11Bは、
図11Aで上述したものと同様の格子構造を有する歯科装具を製作するための別の全体的な例示的プロセスを示す。この例では、3D表現が捕捉410されると、1つの歯又は複数の歯を移動させるのに必要な力の量が決定されてもよく、有限要素解析を用いて、関連する力によって特定の1つの歯又は複数の歯を移動させるのに必要なアライナ材料の適切な厚さを決定410Aしてもよい。このようにして、特定の不正咬合を矯正するのに必要な特定の力に応じた方向性強度(差動矯正力)を有する口腔内装具を作成するために、あまり力を必要とすることのない領域は相対的に薄い領域を有するように製作され、1つの歯又は複数の歯を移動させるのにより大きな量の力を必要とし得る装具の領域は相対的に厚い材料の領域を有するように製作され得る、異なる材料厚さを有する1つ以上の口腔内装具を製作してもよい。モデル化した歯列(又はアライナ)にシミュレーションを実施し、様々なアライナ厚さに対する応力点の扱いを確認410Bしてもよい。
【0152】
その後、前述のように、身体部分、例えば、歯列の表面の少なくとも一部に適合する格子構造で概ね構成されるフリーフォーム構造を生成412してもよく、フリーフォーム格子構造は、その後、例えば、付加製造法によって実際に製造414されてもよい。しかしながら、以下で更に詳述されるように、1つ以上の口腔内装具は、口腔内装具の方向性強度(差動矯正力)に適応するために、相対的に厚くした及び/又は薄くした材料の領域を有するように製作してもよい。
【0153】
図12は、(上歯列及び下歯列の)2つの部品422を有する例示的な口腔内装具420の斜視図を示す。示されるように、口腔内装具420は、最終口腔内装具を製造するためのプロセスで使用され得る格子構造424を全般的に含む。プロセスにおいて、格子構造424はまず、不正咬合を矯正するために製作される口腔内装具に近似する形状に3D印刷されてもよく、格子構造は歯科装具426,426’内に配置されてもよい。その後、形成された格子構造424を含む歯科装具426,426’に含浸材料428、例えば、ポリマー又は本明細書中に記載される他の材料が充填されてもよい。含浸材料428の硬化後、歯科装具の半片426,426’は取り外され、コーティングされた口腔内装具420を得る。
【0154】
格子構造424全体をコーティングしても含浸材料428によって含浸させてもよいが、格子構造424の一部のみをコーティングしてもよく、又は格子構造424の特定表面をコーティングし、他の部分を露出させたままにしてもよい。
図12に示す口腔内装具420に関するこれら実施形態の変更形態を以下で更に詳細に記載する。
【0155】
理解され得るように、変化する及び/又は増加する厚さを持つ3D印刷された漸進的アライナの手法は特定の利点を有する。例えば、厚さの漸進的増加率は、工業製品として入手可能なシートプラスチックの標準的厚さに依存しない場合がある。3D印刷プロセスの最適な厚さが設定され得る。矯正歯科医などの医師は、歯が急速に発育している青年期の患者に比べてゆっくりと整復されることが知られている成人患者に対しては、例えば0.040、0.060、及び0.080インチの厚さシーケンスに例えば限定するよりもむしろ、例えば、0.040、0.053、及び0.066インチの厚さなどのシーケンスを選択し得る。
【0156】
より薄い材料から形成されたアライナが、より厚い材料から形成された同様に構成したアライナに比べて全般的に低い矯正力を生成するという概念を前提とすると、アライナは、より高い力が必要な領域が厚く、より低い力が必要な領域が薄くなるように3D印刷され得ることになる。まずデフォルト厚さを有し、次いで、可変厚さの領域を有するアライナを生成する余地を有することは、医師が多くの困難な日常の課題に対処するのに有利に活用され得る。例えば、任意の不正咬合は、他の歯に比べるとその所望の完了位置から離れた歯を含む。更に、いくつかの歯は他の歯よりも小さく、歯のサイズは、歯移動を開始するのに必要な絶対力閾値に対応する。その他の歯は、皮質と歯槽骨支持との間の境界に歯の根が近接していることを含む多くの要因によってより動かしづらいものと思われ得る。更に他の歯は、他の歯よりも矯正的に回転させる、角を成す、又は直立させるのが単により困難である。更に他の歯及び歯のグループは、開いた空間を閉じるために比較的広い範囲にわたって可能な限り急速に身体的に移動させる必要があり得る。少なくともそのような理由において、より大きな歯、又は所望の目的地から離れた歯、又は動かしづらい歯を含む領域周囲のアライナ厚さ、ゆえに、力レベルを調整するオプションによって、選択された歯が、小さな、ほぼ理想的には配置された歯よりも高い力を受けることを可能にする。
【0157】
歯科装具のフリーフォーム格子構造は、少なくとも部分的に付加製造(AM:additive manufacturing)によって製作され得る。より具体的には、少なくとも基本構造は格子構造を用いた付加製造によって製作してもよい。概して、AMは、オブジェクトの3Dコンピュータ支援設計(CAD)データを典型的には使用してオブジェクトの有形モデルを製作するのに使用される技術の一群を含んでもよい。例えば、ステレオリソグラフィ、選択的レーザ焼結法、熱溶解積層法、箔ベース技術等の多数のAM技術が利用可能である。選択的レーザ焼結法は、高出力レーザ又は別の集中熱源を使用して、プラスチック、金属、又はセラミック粉末の小粒子を、形成される3Dオブジェクトを表現する質量へと焼結又は溶接する。熱溶解積層法及び関連技術は、通常、加熱による固体材料から液体状態への一時的な遷移を利用する。とりわけ、参照によりその全体があらゆる目的において本明細書に援用される米国特許第5,141,680号明細書に記載されるように、材料は制御された手法で押出ノズル内を進められ、必要な場所に堆積される。箔ベース技術は、例えば、接着又は光重合又は他の技術の使用によってコーティングを互いに固定し、その後、これらコーティングからオブジェクトを切削する、又はオブジェクトを重合する。このような技術は、参照によりその全体があらゆる目的において本明細書に援用される、米国特許第5,192,539号明細書に記載されている。
【0158】
典型的には、AM法は、形成される3Dオブジェクトのデジタル表現から始まる。一般に、デジタル表現は一連の断面層にスライスされ、一連の断面層はオーバレイされ、全体としてオブジェクトを形成することができる。AM装置はこのデータを使用して、オブジェクトを層毎に構築する。3Dオブジェクトの層データを表す断面データは、コンピュータシステム並びにコンピュータ支援設計及び製造(CAD/CAM)ソフトウェアを使用して生成してもよい。
【0159】
したがって、格子構造を含む基本構造は、付加製造に適合し、フリーフォーム構造内の格子構造を含む領域の剛体形状又はフリーフォーム構造全体に十分な剛性を与えることができる任意の材料で作製してもよい。適切な材料としては、例えば、ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、PC-ABS、ポリアミド、ガラス又は金属粒子などの添加剤を含むポリアミド、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
格子構造それ自体は、例えば、3D印刷された格子のオープンフレームワークを有する剛構造から構成されてもよい。格子構造は、複数の格子セル、例えば、数十、数千、数十万等の格子セルを含んでもよい。歯列の3Dモデルが提供されると、プロセスは3Dモデルの格子バージョンを印刷するためにSTLファイルを生成し、必要な場合は支持構造を作成してもよい。システムは、格子を配置し、最適化する前に、材料が装具のどこに必要であるか、どこに必要ないかを特定する。
【0161】
システムは歯の格子を2段階で最適化してもよい。第1に、システムはトポロジー最適化を適用し、中間密度を有するより多くの多孔質材料の存在を可能にする。第2に、多孔質ゾーンは、変化する材料体積を有する明確な格子構造に変換される。第2の段階において、格子セルの寸法は最適化される。この結果は、固体部分に加えて変化する材料体積を有する格子ゾーンを有する構造である。システムは、例えば、製品開発プロセスにおいて初期に行われる設計選択に影響を及ぼす可能性のある剛性対体積比に関して材料密度と部品性能との間の関係の釣り合いをとる。気孔率はバイオメディカルインプラントの機能要件として特に重要となり得る。格子ゾーンは、単なる剛性以上のものが要求される製品開発の成功にとって重要であり得る。システムは、座屈挙動、熱性能、動特性、及び他の側面を考慮することができ、これらは全て最適化することができる。ユーザは最適化プロセスの結果に基づき材料密度を操作し、強対弱、又は中実対ボイド対格子設計を比較してもよい。設計者はまず、物体を画定し、その後、最適化解析を実施し、設計を通知する。
【0162】
3D印刷が使用され得るが、格子はまた、規則的なパターンで接触する、交差する、又は重なるストリップ、バー、ガーダ、ビーム等で作製することができる。ストリップ、バー、ガーダ、ビーム等は直線形状を有してもよいが、曲線形状も有してよい。格子は長手方向のビーム等で必ずしも作製されず、例えば、とりわけ相互接続された球、角錐等を含んでもよい。
【0163】
格子構造は典型的には、
図12Aに示すような規則的な繰り返しパターンを含むフレームワークであり、パターンは特定の単位セルによって画定され得る。単位セルは、パターンの最も単純な繰り返し単位である。したがって、格子構造424は、複数の単位セルによって画定される。単位セル形状は必要とする剛性に依存してもよく、例えば、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系、正方晶系、菱面体晶系、六方晶系、又は立方晶系であり得る。典型的には、格子構造の単位セルは、例えば、1~8000mm3、又は好ましくは8~3375mm3、又はより好ましくは64~3375mm3、又は最も好ましくは64~1728mm3の範囲の体積を有する。単位セルサイズは、材料選択及び単位セル形状などの他の要因とともに、フリーフォーム構造の硬さ(剛性)及び透明性を決定してもよい。単位セルが大きいほど一般に硬さは減少し、透明性は増加するが、単位セルが小さいほど硬さは典型的には増加し、透明性は低下する。特定の剛性を持つ領域を提供するために、単位セル形状及び/又は単位セルサイズの局所変化が生じ得る。したがって、格子424は、1つ以上の繰り返し単位セルと1つ以上の固有の単位セルとを含んでもよい。格子構造424の安定性を確保するために、ストリップ、バー、ガーダ、ビーム等は、例えば、0.1mm以上の厚さ又は直径を有してもよい。特定の実施形態では、ストリップ、バー、ガーダ、ビーム等は、好ましくは、例えば、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1mm、1.5mm、2mm、3mm、5mm以上の厚さ又は直径を有してもよい。格子構造424の主な機能は、フリーフォーム構造の特定の剛性を確保することである。格子構造424はオープンフレームワークであるため、更に、透明性を強化又は確保してもよい。格子構造424は、好ましくは、例えば、網又はグリッドの形態及び/若しくは外観を有する網状構造であると考えられ得るが、他の実施形態を使用してもよい。
【0164】
格子構造の剛性は、単位セル形状、単位セル寸法、及びフレームワーク432のストリップ、バー、ガーダ、ビーム等の寸法に依存する構造密度などの要因に依存する。別の要因は、
図12Bの例示的な詳細図に示すようなストリップ等の間の距離S、又は換言すると、格子構造の開口部の寸法である。実際、格子構造はオープンフレームワークであり、したがって、開口部434を含む。特定の実施形態では、格子構造の開口部サイズSは、例えば、1~20mm、2~15mm、又は4~15mmである。好適な実施形態では、開口部サイズは、例えば、4~12mmである。開口部のサイズは単位セル434のサイズに等しくてもよく又はこれより小さくてもよく、他の実施形態では、開口部はサイズが均一であってもよく、又はサイズが任意であってもよい。更に別の代替形態では、格子の異なる領域は、サイズが均一ではあるが、他の領域とは異なる開口部を有してもよい。
【0165】
特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、
図12Cの例示的端部図に示すように、1つ以上の相互接続された網状層を有する格子構造を含んでもよい。例えば、格子構造は、1つ、2つ、3つ以上の網状層438を含んでもよく、構造は、格子構造内に、異なる、少なくとも部分的に重ね合わされた及び/又は相互接続された層436,436’,436’’を含む。格子構造によって提供される剛性の程度は、格子構造内に設けられる網状層の数とともに増加し得る。更なる特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、1つより多い格子構造を含んでもよい。示される例は、異なる実施形態の単なる例示である。
【0166】
特定の用途においては、格子構造は、本明細書で上述したような開口部又は単位セルよりも大きなサイズを有する1つ以上の穴を更に含んでもよい。加えて又はあるいは、構造内の開口部、又は取り扱いのための領域、例えばタブ若しくは隆起、及び/又は無支持のコーティング材料の領域が形成されるように、格子構造はフリーフォーム構造の形状全体にわたって延びなくてもよい。そのような用途の例は、眼、口及び/又は鼻穴の位置に穴が設けられた顔面用マスクである。典型的には、これら後者の穴には、コーティング材料も充填されない。
【0167】
同様に、特定の実施形態では、隣接する材料を含浸させる及び/又は隣接する材料によって囲まれる開口部のサイズは、例えば、1~20mmの範囲であってもよい。本明細書に記載されるような格子構造内の穴(フリーフォーム構造内の穴に対応する)はまた、典型的には、単位セルよりも大きなサイズを有する。したがって、特定の実施形態では、単位セルサイズは、例えば、1~20mmの範囲である。
【0168】
特定の実施形態によれば、
図12Dの端部図に示すように、想定されるフリーフォーム構造は、コーティング材料431のみを含む領域433を含んでもよい。これはフリーフォーム構造の極端な可撓性が望まれる分野において関心が持たれる可能性がある。
【0169】
特定の実施形態では、想定されるフリーフォーム構造は、格子構造に加えて、
図12Eの詳細斜視図に示すように、格子構造を含まないが均一表面である1つ以上の限定された領域を含む基本構造を含んでもよい。典型的には、これらは、対称な形状(例えば、矩形、半円等)を有する格子構造からの延長部435を形成する。しかしながら、このような領域は、典型的には、基本構造全体の、例えば50%未満、又は特に例えば30%未満、又は最も特には例えば20%未満を含む。典型的には、これらは構造を取り扱うための(手動タブ)及び/又はアタッチメント構造(クリップ、弾性紐等)を配置するための領域として使用される。特定の実施形態では、基本構造は、格子構造のみを本質的に含んでもよい。
【0170】
歯科装具構造は、異なる剛性を持つ特定の領域(追加の力を与えるため臼歯などに)を有すると有利であり得る。これは、
図12Fの例示的な詳細斜視図に示すように、局所的に異なる単位セル形状、異なる単位セル寸法及び/又は異なる密度及び/又は格子構造の異なる厚さ(網状層の数を増加することによる)を有する格子構造を設けることによって実現され得る。したがって、特定の実施形態では、格子構造に、異なる単位セル形状、異なる単位セル寸法、異なる格子構造厚さ及び/又は異なる密度437,439が与えられる。加えて又はあるいは、本明細書に記載されるように、コーティング材料の厚さもまた、
図12Gに示すように、異なってもよい。したがって、特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、第1の厚さの領域441及び第2の厚さの領域443を有する異なる厚さを有する。更なる特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、同じ体積及び外形寸法を保持しつつも異なる剛性を有する領域を有してもよい。
【0171】
フリーフォーム構造の特定の実施形態では、基本構造又は格子構造は、格子構造を製造に使用される材料とは異なるコーティング材料で部分的に被覆され得る。特定の実施形態では、格子構造は、
図12Hの例示的な詳細端部図に示すように、コーティング材料に少なくとも部分的に埋め込まれている又はコーティング材料によって囲まれている(及び任意選択的に、コーティング材料を含浸させている)。更なる実施形態では、コーティング材料は、格子構造436の1つ又は両方の表面上に与えられる。特定の実施形態では、フリーフォーム構造内の基本構造及び/又は格子構造の特定の表面領域のみにコーティング材料が与えられる一方、一部は露出445させてもよい。特定の実施形態では、基本構造及び/又は格子構造の少なくとも1つの表面は、少なくとも50%、特に少なくとも80%にわたってコーティング431されていてもよい。更なる実施形態では、格子構造を有する基本構造の全ての領域が、少なくとも1つの側において、コーティング材料で完全にコーティングされている。更なる特定の実施形態では、基本構造は、取り扱いのために設けられたタブを除いて、コーティング材料に完全に埋め込まれている。
【0172】
更なる実施形態では、フリーフォーム構造は、コーティングされた格子構造に加え、基本構造及び/又は格子構造によって支持されないコーティング材料の領域を含む。
【0173】
したがって、特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、異なるテクスチャ又は組成物を有する少なくとも2つの材料を含んでもよい。他の実施形態では、フリーフォーム構造は、複合構造、例えば、少なくとも2つの別個の組成物及び/又は材料で構成された構造を含んでもよい。
【0174】
コーティング材料は、高分子材料、セラミック材料及び/又は金属であってもよい。特定の実施形態では、コーティング材料は高分子材料である。適切なポリマーとしては、シリコーン、天然若しくは合成ゴム又はラテックス、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエポキシド、アラミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル、又はこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、高分子材料は、シリコーン、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリアミド、又はこれらのブレンドを含む。
【0175】
特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、1つより多いコーティング材料、又は異なるコーティング材料の組み合わせを含む。
【0176】
特定の実施形態では、コーティング材料はシリコーンである。シリコーンは、典型的には不活性であり、フリーフォーム構造のクリーニングを容易にする。
【0177】
特定の実施形態では、コーティング材料は光学的に透明な高分子材料である。用語「光学的に透明」とは、本明細書で使用する場合、厚さ5mmを有するこの材料の層を、肉眼の目視検査に基づき、見通すことができるという意味である。好ましくは、そのような層は、入射する可視光(波長400~760nmの電磁放射線)の少なくとも70%を散乱させずに透過させる性質を有する。可視光の透過、ゆえに、透明性は、当業者には周知のように、紫外可視分光光度計を使用して測定することができる。透明材料は、フリーフォーム構造が創傷治療のために使用される場合特に有用である(以下を参照)。ポリマーは、1つのタイプのモノマー、オリゴマー若しくはプレポリマー及び任意選択的に、他の添加剤から誘導されてもよく、又はモノマー、オリゴマー、プレポリマー、及び任意選択的に、他の添加剤の混合物から誘導されてもよい。任意の添加剤は、発泡剤及び/又は発泡剤を生成可能な1種以上の化合物を含んでもよい。発泡剤は、典型的には、発泡体の製造に使用される。
【0178】
したがって、特定の実施形態では、コーティング材料はフリーフォーム構造内に、発泡体、好ましくは、発泡固体(foamed solid)の形態で存在する。したがって、特定の実施形態では、格子構造は発泡固体で被覆されている。発泡材料は固体材料に比べて特定の利点を有する。発泡材料は、密度がより低く、必要とする材料がより少なく、固体材料よりも良好な絶縁特性を有する。発泡固体はまた、優れた衝撃エネルギー吸収材料であるため、保護用要素であるフリーフォーム構造の製造に特に有用である(以下を参照)。発泡固体は、高分子材料、セラミック材料、又は金属を含んでもよい。好ましくは、発泡固体は1種以上の高分子材料を含む。
【0179】
発泡体は、連続気泡構造発泡体(網状発泡体としても知られる)又は独立気泡発泡体であってもよい。連続気泡構造発泡体は、互いに連結され、相対的に軟質の相互接続されたネットワークを形成する細孔を含む。独立気泡発泡体は、相互接続された細孔を有さず、連続気泡構造発泡体よりも一般に高密度且つ高強度である。特定の実施形態では、発泡体は、例えば、高密度スキン及び低密度コアを有するタイプの発泡体である、「セルフスキンフォーム」としても知られる「インテグラルスキンフォーム」である。
【0180】
したがって、特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、高分子材料又は本明細書に記載されるような他の材料によって少なくとも部分的にコーティングされた格子構造を含む基本構造を含んでもよい。いくつかの用途においては、コーティング層の厚さ及びコーティングの層厚さの均一性は必須ではない。しかしながら、特定の用途においては、調整された層厚さを有するコーティング材料の層をフリーフォーム構造の1つ以上の位置に与え、例えば、身体部分上におけるフリーフォーム構造の適合の柔軟性を増加すると有用であり得る。
【0181】
本明細書で想定されるフリーフォーム構造の基本構造は、別個のライナー又は他の要素を必要としない単一の硬質フリーフォーム部品として作製され得る。それとは別に、フリーフォーム構造に、センサ、ストラップ、又は構造を身体上の所定の位置に維持するための他の特徴、又は
図12Iに示すような、構造の使用に関連して関心を持たれ得る、構造内に若しくは構造に沿って内蔵される任意の他の特徴などの更なる構成要素447を更に設けることができると想定される。内蔵されてもよいセンサの様々な例については、本明細書に更に詳細に記載する。
【0182】
特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、単一硬質格子構造(任意選択的に、異なる相互接続された網状材料層を含む)を含む。しかしながら、このような構造は、多くの場合、限られた可撓性しか与えず、フリーフォーム構造を装着している人又は動物に不快感を生じさせる可能性がある。互いに対して移動することができるフリーフォーム構造が2つ以上の別個の硬質格子構造を含めば可撓性の増加を得ることができる。これら2つ以上の格子構造は、得られるフリーフォーム構造がなお単一部品として作製される又は設けられるように、その後、上述のように、ある材料によって囲まれる。フリーフォーム構造の形状の硬さは各格子構造によって局所的に確保され、配置中の更なる可撓性は、格子構造の互いの(限定された)移動があることによって確保される。実際、これら実施形態では、コーティング材料及び/又はより限定された格子構造)は、典型的には、格子構造を互いに付着したままにする。
【0183】
特定の実施形態では、格子構造は部分的に又は完全に重なっている。しかしながら、特定の実施形態では、異なる格子構造は重なっていない。更なる特定の実施形態では、格子構造は、
図12Jの詳細端部図に示すように、例えば、ヒンジ又は他の可動機構449,449’によって互いに移動可能に接続されている。特定の実施形態では、接続は格子材料によって確保される。更なる特定の実施形態では、格子構造は、格子構造の延長部を形成する1つ以上のビームによって相互接続されていてもよい。更なる実施形態では、格子構造は、コーティング材料によってフリーフォーム構造内にまとめられる。そのようなフリーフォーム構造の例は、マスクの残部に対して動くことができる顎構造を有する顔面用マスクである。したがって、特定の実施形態では、格子構造は、互いに移動可能に接続された少なくとも2つの別個の格子構造を含み、示されるように、格子構造はフリーフォーム構造に組み込まれている。
【0184】
フリーフォーム構造は、本明細書に記載されるように、創傷治療に使用されてもよい。最適な治癒のために、フリーフォーム構造は、創傷部位、又は創傷部位の特定の位置に均一な接触及び/又は圧力を与える。格子構造は、本発明によるフリーフォーム構造に圧力センサを組み込むことを容易にする。センサは外部センサであり得るが、また、内部センサであってもよい。実際、格子構造は、上述のように、格子構造にポリマー若しくは他の材料を含浸させる及び/又は格子構造をポリマー若しくは他の材料で囲む前に、様々なセンサを正確な位置に取り付けることができるように設計され得る。
【0185】
加えて又はあるいは、フリーフォーム構造は、
図12Iに上述したような、温度センサ、水分センサ、光センサ、ひずみゲージ、加速度計、ジャイロスコープ、GPSセンサ、ステップカウンタ等などの1つ以上の他のセンサを含んでもよい。加速度計、ジャイロスコープ、GPSセンサ及び/又はステップカウンタは、例えば、アクティビティモニタとして使用されてもよい。温度センサ、水分センサ、ひずみゲージ及び/又は光センサは、創傷治療中の治癒プロセスを監視するために使用されてもよい。具体的には、参照によりその全体があらゆる目的において本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0015591号明細書で説明されるように、光センサは、コラーゲン線維構造を決定するために使用されてもよい。
【0186】
したがって、特定の実施形態では、フリーフォーム構造は、1つ以上の外部センサ及び/又は内部センサを更に含む。特定の実施形態では、フリーフォーム構造は1つ以上の内部センサを含む。特定の実施形態では、フリーフォーム構造は1つ以上の圧力センサ及び/又は温度センサを含む。
【0187】
当業者であれば、センサに加えて、関連する電源、及び/又は配線、無線送信機、赤外線送信機等などの、センサから受信デバイスに信号を送信するための手段もフリーフォーム構造に組み込んでよいことは理解するであろう。
【0188】
特定の実施形態では、少なくとも1つのセンサは、微小電子機械システム(MEMS)技術、例えば、機械システムと超小型電子機器とを統合する技術、を含んでもよい。MEMS技術に基づくセンサはMEMSセンサとも呼ばれ、そのようなセンサは小型且つ軽量であり、消費する電力が相対的に小さい。適切なMEMSセンサの非限定的な例は、STMicroelectronicsによるSTTS751温度センサ及びLIS302DL加速度計である。
【0189】
図12Kに示すように、格子構造はまた、フリーフォーム構造に1つ以上の(内部)チャネル451を設けることを可能にする。これらチャネルは、下にある皮膚、組織又は歯の治療薬を送達するために使用されてもよい。チャネルはまた、加熱流体又は冷却流体などの流体を循環させるために使用されてもよい。
【0190】
歯科矯正治療の1つの概念は、歯に向けられる矯正力を各歯の理想的な力レベル要件に従い厳密に調整することが求められる「差動矯正力」として周知である。差動矯正力アプローチは、必要とされる理想的な力レベルのみを提供することを目的とした校正済みのばねに基づくハードウェアによって支持される。差動矯正力アプローチの概念をアライナ製作の教えに進展させることで、慎重に制御された可変厚さを呈するCNC機械加工されたアライナによって歯毎の差動矯正力の目的を達成できることは理解できる。歯を取り囲む区画は、技術者が各歯のニーズに基づきCAD/CAMレベルで設定した壁厚を有し得る。3D印刷されたアライナは、無制限の一連の領域を有することができ、そのそれぞれは、その内部表面と外部表面との間に固有のオフセット厚を有する。
【0191】
そのようなデバイスを取り付ける前に、医師は、治療途中の症例の経過を評価してもよく、例えば、特に、所望の歯の応答が遅れている問題のある領域、又は特定の歯が治療力に応答して頑なに移動していない例を記録してもよい。3D印刷された構造は、戦略的に配置され、アライナの構造を有して3D印刷されることを意図した小さなデバイスの群を含み得る。このようなデバイスは、「アライナ補助物」と呼ばれる。
図13は、機械加工され、より厚い材料により弾性材料444を受け入れることを可能にした3D印刷された領域442を示す、アライナ440の一部分の詳細図である。関心が持たれる他の3D印刷された形状はディボット又は圧点であり、とりわけ、併用治療のためにアライナ上に開口部/窓を形成すること、例えば、アライナ上に弾性バンド用のフックを形成することである。アライナ補助物は、矯正を強化するためにアライナの矯正力を増幅及び集中させる位置に取り付けられてもよい。例えば、アライナの歯を含む区画の壁に所定の直径の穴を開けた後、鋲として知られる補助物を取り付けることができる。穴の直径は、アライナ上に直接印刷されてもよい鋲の軸部の直径よりもわずかに小さくてもよい。矯正歯科医はそのような累進的サイズの鋲及び他の補助デバイスを商用的に利用可能であり、それらを使用してアライナの歯位置矯正力を増加させ且つ延ばす。
【0192】
バンプも使用され、バンプに隣接するアライナの構造の領域内に局所的に貯蔵されたエネルギーを集中させるように機能し得る。内向きに突出するバンプによって、歯面から離れた領域におけるアライナ材料の外向きの曲げを生じさせる。このように構成することで、バンプは貯蔵されたエネルギーをより広い領域から集め、そのエネルギーを歯の機械的に最も有利な点に衝突させることで、矯正力を最も効率的に集中させる。
図14A及び
図14Bの側面図に示すように、弾性フック特徴450は、アライナの構造のさもなければ特徴のない領域に直接3D印刷することができる。弾性フックはまた、治療中必要に応じて、アライナの区分された部分の間(又はアライナと歯に固定的に取り付けられた他の構造との間)に引張力を与える、歯科矯正弾性材料のためのアンカー点として使用されてもよい。
【0193】
フック特徴450とは別に、
図14Cの部分断面図に示すように、1つ以上の特定の歯Tに付着させるために、吸着特徴452などの他の特徴が製作されてもよい。このようにして、アライナは、1つ以上の特定の歯に集中する、有向力454を作用させてもよい。
【0194】
更に別の実施形態では、
図14Dの斜視図に示すように、アライナの咬合面は、患者による摂食又は発話を容易にするように画定される領域を有するように製作されてもよい。そのような特徴は、薄くされ、平らな表面456に作られた、又は摂食を容易にするための任意の数の突起458を有して作られた咬合領域を含んでもよい。
【0195】
加えて、アライナの異なる部分は、
図14Eの斜視図に示すように、異なる摩擦を持つ異なる領域460を有するように製作されてもよい。そのような異なる領域は、例えば、アライナ材料の断裂を防ぐために縁部に沿って形成されてもよい。
【0196】
3D印刷された歯科装具上に、微粒子コーティングなどの更なるアタッチメントを形成することができる。微粒子コーティング462は、
図14Fの斜視図に示すように、格子が3D印刷された装具の歯係合面上に、例えば、融合、焼結等の任意の便利な手法で形成されてもよい。コーティングを構成する粒子は、球形又は不規則形状を含む任意の便利な形状であってもよく、金属(合金を含む)、セラミック、ポリマー、又は材料の混合物で構築されていてもよい。歯係合面に付着させる微粒子コーティングは、表面上で互いに離間した離散粒子の形態、又は共に結合されて相互接続された細孔のネットワークを生成する粒子の層若しくは複数層の形態をとってもよい。微粒子コーティングは、流体結合樹脂が容易に流れ、浸透することができる多孔質界面を提供する。樹脂が固体形態に硬化すると、硬化された樹脂と微粒子コーティングとの間に機械的インターロックが達成される。いくつかの状況下において、例えば、ポリカルボキシレートセメント又はグラスアイオノマーセメントをステンレス鋼及び他の金属基材並びにセラミック基材とともに使用することにより、この機械的結合に加え、化学結合が実現され得る。
【0197】
内部に延びる複数の相互接続された細孔を有する多孔質構造を構成する一体接合された粒子のコーティングにおいて、粒子は、通常、約-100メッシュであり、好ましくは、3つのサイズ範囲、例えば、-100+325メッシュ(約50~約200マイクロメートル)、-325+500メッシュ(約20~約50マイクロメートル)、及び-500メッシュ(約20マイクロメートル未満)のうちの1つに限定される異なる粒度の粒子の混合物である。多孔質構造中の粒子のサイズは、粒子間の細孔の細孔径を決定する。流体樹脂結合剤にはより小さなサイズの細孔が好ましく、より粘性の高いセメント質の結合剤にはより大きなサイズの細孔が好ましい。粒度の選択もまた、コーティングの気孔率を約10~約50体積%の範囲内に制御するために使用される。
【0198】
歯とブラケットの接合部の樹脂及びコーティング中にいかなる破損も起こらないように、基材とコーティングとの複合材には適切な構造的強度が必要である。この状態を実現するために、コーティング、コーティングと基材との間の界面、及び基材それ自体の構造的強度は少なくとも8MPaである。
【0199】
図15A~
図15Dは、本明細書中に記載される実施形態のいずれかにおいて用いてもよい別の格子構造の分解図を示す。格子構造は開放面を有し、積層され、2つ以上の相互接続された網状層、又は1つのみの層若しくは2つを超える層を含む構造であるとも考えられ得る。
【0200】
図15Aは、三角形のセルパターンを有する格子構造470、及び別の又は圧縮された構成470’に再構成された構造470の例の第1及び第2の斜視図を示す。
図15Bは、多角形セルパターンを有する格子構造472、及び別の又は圧縮された構成472’に再構成された構造472の例の第1及び第2の斜視図を示す。
図15Cは、菱形セルパターンを有する格子構造474、及び別の又は圧縮された構成474’に再構成された構造474の例の第1及び第2の斜視図を示す。
図15Dは、連結した菱形セルパターンを有する格子構造476の斜視図を示す。
【0201】
3D印刷プロセス中、複雑な形状が構築されることを考えると、形成される口腔内装具を中間構造によって支持することが必要な場合がある。そのような中間構造は、一時的に使用され、その後、形成されている口腔内装具から取り外され、分離され、あるいは係脱されてもよい。
【0202】
図16は、装具510内に配置された仮設支持構造514を有する例示的な3D印刷された歯科装具510の側断面図を示す。典型的には、歯科装具510は、1日518時間超約1か月にわたって患者の口腔内にあるように設計されている。耐久性は別として、歯科装具510のシェルは薄いことが望ましく、典型的には、約0.5mmの厚さを有する。複数の歯又は1つの歯を覆うためのそのようなシェル又は歯部分を3D印刷することができるように、
図16の構造は、支持構造514上に形成される装具510を構造的に支持する又は支えるために内部支持構造514を用いてもよい。口腔内装具510の咬合面512は複雑な解剖学的構造(又は地形)を有し得るため、製造プロセス中に接続表面516上に形成される咬合面512が口腔内装具510を十分に支持するように、支持構造514の接続表面516は咬合面512の鏡像となるように形成されてもよい。
【0203】
装具510の形成が完了すると、支持構造514は、装具510によって画定される開口部518から容易に除去されてもよい。したがって、一実施形態では、装具510からの支持物514の除去を可能にするために、支持構造514の幅は装具510の開口部518と同様であってもよい。装具510は、いくつかの異なるタイプのポリマー、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリアミド、又はこれらのブレンド等から製作してもよく、支持構造514は、装具510と同じ、類似の、又は異なる材料から製作してもよい。支持構造514を装具510の材料とは異なる材料から製作すると、完成の際に装具510からの支持構造514の分離及び除去を容易にすることができる。
【0204】
製作中、装具510の真下に配置される支持構造514を有することのほかに、他の実施形態は、
図17A及び
図17Bの部分側断面図に示すように、1つ以上の層として形成される支持構造を含んでもよい。
図17Aは、内部コア層522が、歯列の輪郭に追従するように構成及び成形される第1の材料で(例えば、3D印刷により)形成されてもよい、製作中の、口腔内装具520の一実施形態を示す。内部コア層522が製作された状態で、内部装具層524が内部コア層522の内部表面上に印刷されてもよく、外部装具層526が内部コア層522の外部表面上に印刷されてもよい。したがって、内部装具層524の製作をサイズに合わせるために、内部コア層522は歯列に対してわずかに大きなサイズになるように形成されてもよい。内部装具層524及び外部装具層526は、所望の口腔内装具520を形成するために逐次的又は同時的のいずれかで内部コア層522上に印刷されてもよい。その後、内部コア層522を、融解、洗浄、又はそうでなければ、例えば化学物質により溶解させ、無傷の内部装具層524及び外部装具層526を有する完成口腔内装具520を残してもよい。
【0205】
別の実施形態では、
図17Bは、口腔内装具528が、内部コア層532と外部コア層534との間に形成される装具層530によって製作され得る構成の側断面図を示す。装具層530をサイズに合うように製作するために、内部コア層532は歯列に対してわずかに小さなサイズになるように形成されてもよい。内部コア層532及び外部コア層534によって支持されている間に装具層530が製作されると、内部コア層532及び外部コア層534は両方とも除去され、あるいは溶解され、装具層530が残ってもよい。
【0206】
更に別の実施形態では、口腔内装具は、患者の治療において更なる柔軟性を与えるための突起、突出部、又は他の形状などの様々な特徴を有して製作されてもよい。
図18は、デバイスの側部に沿って形成された、例えば、ポケット又はキャビティ542上に配置され得る弾性材料などのアタッチメントを受け入れるためのポケット又はキャビティ542を有する、印刷された口腔内装具540の1つの例の側断面図を示す。この例では、支持構造は、示されるように、対応するポケット又はキャビティ542を口腔内装具540から突出させる特徴又は突起544を含み得る。特定の特徴は、将来の組み立てのために、更なる治療オプションを提供し、口腔内装具の有効性を向上させるために3D印刷され得る。他の実施形態では、支持構造は任意の追加の特徴なしに形成されてもよいが、特徴又は突起544は、口腔内装具540上に対応するポケット又はキャビティ542を選択的に形成するために、支持構造の選択された領域に接着あるいは固定されてもよい。特徴又は突起は、任意選択的に、例えば、非等方性の摩擦を1つの方向において可能にするように設計されてもよく、これによりデバイスが歯をより適切に把持し、その設計された位置に移動させるのを補助する。
【0207】
更に別の実施形態では、特徴又は突起は、その代わりに、追加の力を与えるために又は歯移動を容易にするために口腔内装具に組み込まれてもよい。1つの例は、2つの隣接する歯554,556間に口腔内装具(明確にするために図示せず)によって配置された突起550(例えば、高分子又は金属ボール)を示す
図19の頂面図に示される。突起550は、装具から延び、1つの歯又は複数の歯の特定領域に接触し、例えば、隣接する歯554,556間の分離運動を容易にする口腔内装具の一部として製作されてもよい。1つの突起550を示すが、このような突起又は複数の突起を口腔内装具内で使用してもよい。
【0208】
突起のほかに、口腔内装具560はまた、いくつかのチャネル、溝、又は更なるデバイスの使用を支持する特徴を画定してもよい。対象者の歯562の上に配置され、口腔内装具560内に画定される、内部にワイヤ568を支持するためのスロット564,566を更に有する例示的な口腔内装具560が
図20の頂面図に示される。口腔内装具560には、不正咬合を矯正するための口腔内装具560によって与えられる矯正力を補足するため、並びに材料強度を高め、例えば、歯列弓の拡大の際に材料の弛緩を防ぐための、例えば、ワイヤ、フック、ゴムバンド等を受け入れるスロット564,566が構成され、印刷されてもよい。ワイヤ568は、説明のために口腔内装具560のスロット564,566内に固定された状態で示されるが、スロット位置の別の変更形態、又は他の特徴若しくは要素の組み込みもまた使用してよい。
【0209】
別の実施形態では、正確な歯肉模型製作のために、口腔内装具のシェルは、患者を傷つけることなく歯肉領域を覆うように延ばすことができる又は厚くすることができる。このような延びた領域は、特に、短いプラスチックシェルが必要とされる強度を提供できないおそれがあるときに例えばプラスチックのシェルを強化することができる。
【0210】
図21は、3D印刷された口腔内装具の厚さを調整するための例示的なプロセスを示す。対象者の歯列が走査され、電子的に変換されると、上歯列弓及び下歯列弓模型が、プログラマブルプロセッサを有するコンピュータシステムのメモリにロード570されてもよい。咬合採得材がセットされ、得られたデジタル模型をバーチャル咬合器に取り付け572てもよい。システムは、所定の厚さを有する初期シェル模型を生成574するようにプログラムされてもよく、口腔内装具の部分が厚いほど相対的に高強度の領域が提供される。医師は、上で
図19に示した突起550などの特徴を組み込むことができる、及び/又はスロット564,566などの追加の特徴若しくは任意の他の特徴を口腔内装具の模型に更に組み込むことができる。システムは、その後、咬合器を作動させ、上歯列弓模型と下歯列弓模型との間の咬合のシミュレーションを実施576し、上歯列弓シェルと下歯列弓シェルとの間のあらゆる重なりを計算578するようにプログラムされてもよい。口腔内装具のシェル模型上に発生するあらゆる応力もまた、決定されてよい。
【0211】
システムは、その後、模型内のシェル材料をトリミング除去することによって任意の重なりを除去580してもよく、任意の孤立した島状又は半島状部分もその後除去582してよい。得られた3Dモデルは、その後、歯科装具又はシェルを製作するために3Dプリンタにエクスポート584されてもよい。
【0212】
図22は、物理的シミュレーションに基づき口腔内装具の厚さを決定するための別の例示的なプロセスを示す。このプロセスでは、上記のように、下歯列弓及び上歯列弓のデジタル模型はコンピュータシステムのメモリにロード590されてもよい。歯列弓及び/又は歯列の新たな所望の構成がシステムに入力されてもよく、システムは、1つの歯又は複数の歯に生じることが必要な移動を計算592してもよい。システムは、その後、初期シェル形状の解析モデルを生成594してもよい。システムは、更に、解析モデルを実行し、必要とされ得る又は所望され得る厚さ及び潜在的補助構成要素又は部品を含むシェル形状を最適化596してもよい。解析3Dモデルは、最良の患者快適性及び樹脂コスト最小化のために更に最適化598されてもよく、結果は、その後、口腔内装具又はシェルを製作するために3Dプリンタに提供600されてもよい。
【0213】
一般に、従来の口腔内装具を形成する圧力成形されたプラスチックシェルは固有の欠点を有する。プラスチックシェルは、治療中に使用する際に患者の咬合に影響がないように、患者の歯列の咬合エリアに接触する装具の領域に相対的に薄い層(例えば、装具の他の領域よりも薄い)を有すると理想的である。その一方で、咬合鼓形歯間空隙又は側面領域は、不正咬合を矯正するために1つの歯又は複数の歯をその指定された位置に押すための十分な力を提供するために相対的により厚いと理想的である。これら咬合鼓形歯間空隙領域は、口腔内装具の形成プロセス中により薄く伸ばされることがある。口腔内装具の形成において、本明細書中に記載されるシステムは、患者の咬合に影響する口腔内装具の領域を決定してもよく、装具を、特定の領域がより薄くなるように構成してもよく、又は更には、いくらかの材料を装具から完全に除去して穴を形成してもよい。
【0214】
身体部分の表面の少なくとも一部、例えば、外輪郭に適合するフリーフォーム格子構造が、口腔内装具を形成するために使用されてもよい。具体的には、記載される実施形態は、フリーフォーム格子構造を利用して、1つ以上の不正咬合を矯正するために患者の歯列の外部表面上に置く又は配置するように設計された装具を形成又は製作してもよい。フリーフォーム構造は付加製造法によって少なくとも部分的に製作され、格子構造を含む基本構造を用いる。格子構造は規定の硬さを有するフリーフォーム構造を確実なものとすることができる及び/又はこれに寄与することができ、格子構造はまた、格子構造上に与えられ得るコーティング材料による歯列の最適な被覆を確実とすることができる。格子構造はコーティング材料によって少なくとも部分的に被覆されている、コーティング材料を含浸させている及び/又はコーティング材料によって囲まれている。更に、格子構造の実施形態は構造の透明性に寄与することができる。
【0215】
用語「フリーフォーム格子構造」は、本明細書で使用する場合、不規則及び/又は非対称な流動形状若しくは輪郭を有する、より具体的には1つ以上の身体部分の輪郭の少なくとも一部に適合する構造を意味する。したがって、特定の実施形態では、フリーフォーム構造はフリーフォーム表面であってもよい。フリーフォーム表面は、3次元の幾何学的空間内に含まれる(本質的に)2次元形状を意味する。実際、本明細書に詳述するように、そのような表面は限られた厚さを有するという点で本質的に2次元とみなされ得るが、それでもなお、ある程度は様々な厚さを有してもよい。この表面は特定の形状を模すように厳密に設定された格子構造を含むため、3次元構造を形成する。
【0216】
典型的には、フリーフォーム構造又は表面は、平面、円柱、及び円錐表面などの通常の表面とは異なり、対応する径方向寸法の欠如を特徴とする。フリーフォーム表面は当業者には周知であり、エンジニアリング設計規則に広く用いられている。典型的には、非一様有理Bスプライン数学的手法を用いて表面形態を記述するが、ゴーデンサーフェス又はクーンズサーフェスなどの他の方法はある。フリーフォーム表面の形態は、多項方程式の観点ではなく、それらの極、度、及びパッチ(スプライン曲線のセグメント)の数によって特徴付けられ、定義される。フリーフォーム表面はまた、3D表面を近似するために三角形が用いられる場合、三角表面と定義することができる。三角表面は、CAD設計に習熟した者には周知の標準三角パッチ言語ファイルで使用される。フリーフォーム構造は内部に硬質基本構造が存在することで身体部分の表面に適合し、構造にそのフリーフォーム特性を与える。
【0217】
格子構造及び/又はこれらを含むフリーフォーム構造について述べる場合の用語「硬質」は、本明細書では、限定された可撓性の程度を示す構造を意味し、より具体的には、この硬さは、構造が、使用前、使用中、及び使用後に3次元空間内に既定の形状を形成し且つ保持し、この全体形状がそれに印加される圧力に機械的に及び/又は物理的に耐えることを確実とする。特定の実施形態では、構造はその機械的完全性を実質的に失うことなくして手動でも機械でも折り返すことができない。想定される構造の形状の全体的な硬さにもかかわらず、構造の比剛性は格子構造の構造及び/又は材料によって決定され得る。実際、格子構造及び/又はフリーフォーム構造は、3次元空間内でそれらの全体形状を維持しつつも、取り扱いのためにいくらかの(局所)可撓性を有してもよいと想定される。本明細書に詳述されるように、(局所)変化は、格子構造のパターンの性質、格子構造の厚さ、及び材料の性質によって起こり得る。更に、本明細書で想定されるフリーフォーム構造が(例えば、ヒンジによって又はコーティング材料の領域によって)相互接続された別個の部分(例えば、不連続格子構造)を含む場合、形状の硬さは格子構造を含む領域のそれぞれに限定される場合がある。
【0218】
歯科装具製作プロセスの説明は、参照によりその全体があらゆる目的において本明細書に援用される2015年10月7日に出願された米国特許仮出願第62/238,514号明細書に更に詳細に記載され得る。
【0219】
概して、製作プロセスは、フリーフォーム構造によって被覆される歯に装着される装具を設計することと、型を製造することと、型内に(1つ以上の)格子構造を設けることと、フリーフォーム構造を形成するように型内にコーティング材料を付与することと、を含む。フリーフォーム構造は患者専用である、即ち、特定の患者、例えば動物又はヒトの解剖学的構造若しくは歯列に特に適合するように作製されている。口腔内装具の製作において、1つ以上の不正咬合を矯正するための患者の歯列の表面、例えば外輪郭の3D表現は、3Dスキャナ、例えばハンドヘルド型レーザスキャナにより捕捉されてもよく、収集されたデータは、その後、対象者の身体部分のデジタル3次元モデルを構築するために使用することができる。あるいは、患者専用画像が、技術者又は医療関係者が対象者又はその一部を走査することによって提供され得る。そのような画像は、その後、対象者若しくはその一部の3次元表現として使用され得る、又は対象者若しくはその一部の3次元表現に変換され得る。走査画像を操作し、例えばクリーンアップする更なる工程が想定されてもよい。
【0220】
患者の歯列の不正咬合を治療するために使用される口腔又は歯科装具の製作において、口腔内装具は、まず、例えば、熱形成又は3次元(3D)印刷技術によって形成されてもよい。形成されると、口腔内装具は、余剰材料をトリミングして患者への良好な適合を確実とするために更なる処理を必要とする場合がある。しかしながら、この余剰物のトリミングは、通常、装具の形成後に別の工程を必要とする時間のかかるプロセスである。
【0221】
一実施形態では、口腔内装具の形成及び切削は、自動プロセスで、1つの機械により実施されてもよい。概して、患者の走査した歯列が歯列の1つ以上の型を作成するために使用されてもよく、後に続く各型が、歯列の不正咬合を矯正するために1つ以上の歯の矯正経路に後に追従するように構成されている。1つ以上の型のそれぞれは、対応する口腔内装具を型上に熱形成又は3D印刷するための型として使用されてもよい。得られる口腔内装具は、不正咬合を矯正するために歯列を移動させるために順に使用されてもよい。
【0222】
図23は、コンピュータ化又はコンピュータ数値制御(CNC)を用いて口腔内装具を製作するための例示的なプロセスを示す。典型的なCNCシステム及びエンドトゥエンド構成要素設計は、コンピュータ支援設計(CAD)及びコンピュータ支援製造(CAM)歯科用ソフトウェアを用いて高度に自動化されている。プロセスは、対象者の歯列の下歯列弓及び上歯列弓のデジタル模型を、プロセッサを有するコンピュータシステムにロード710することによって開始する。これには、1つ以上の不正咬合を矯正するために、患者の歯列の表面、例えば外輪郭の3D表現を捕捉することを伴ってもよい。この目的のため、対象者を、3Dスキャナ、例えばハンドヘルド型レーザスキャナを使用して走査してもよく、収集されたデータは、その後、対象者の身体部分のデジタル3次元モデルを構築するために使用することができる。あるいは、患者専用画像が、技術者又は医療関係者が対象者又はその一部を走査することによって提供され得る。そのような画像は、その後、対象者若しくはその一部の3次元表現として使用され得る、又は対象者若しくはその一部の3次元表現に変換され得る。
【0223】
対象者の歯列のデジタル模型をコンピュータシステムにロードすると、プロセスは、その後、口腔内装具が製作される型をトリミングするためにCNC機械が追従し得る経路を決定するために、デジタル模型上のルールベース切削ループ経路を計算712する。切削ループ経路が決定されると、プロセスは、その後、切削ループ経路から型模型の底部に向かって(例えば、歯に接触する装具の部分から離れる方、及び歯肉に向かって延びる装具の部分に向かう方)デジタル的に延びるドレープ壁を適用することによって模型の複雑さを低減714させてもよい(以下で更に詳述されるように)。ドレープ壁は、除去又はトリミングされるため無視することができる口腔内装具の領域を画定することで機能する。
【0224】
デジタル模型は、その後、実際のトリミング手順中に適用され得る(基準面に対する)切刃傾斜角及び刃高さを計算716するために、その中心の周りで基準面に対して回転させてもよい。この情報を用いて、CNC機械に送信されるコードを、用いられるステージ構成に基づき生成718してもよい。処理手順で使用される物理的モールドベースはトリミングされてもよく、1つ以上のアンカー特徴が、口腔内装具720をモールドベースに固定するために使用されてもよい保持用ジグを固定するためにモールドベースに組み込まれていてもよい。完成したデジタル模型は、その後、口腔内装具、又は口腔内装具が形成され得る型を印刷するために、例えば、3Dプリンタ対応可能な模型としてエクスポート722されてもよい。
【0225】
図24及び
図25は、一例として歯730及び歯肉732を示す患者の歯列のデジタル模型の一部分の側面図を示す。上記
図23に示すようなルールベース切削ループ経路の計算712において、患者の歯列の走査画像を処理し、歯と歯肉732との間の界面領域を特定してもよい。1つ以上のマーカ734,736を模型上のこれら界面領域に、マーカ734,736が模型上で互いに対向するように、デジタル的に配置してもよい。トリムライン742が歯と歯肉との間の境界線をたどるように、境界又はトリムライン742が、マーカ734,736間に延びるようにその後画定されてもよい。模型上にトリムライン742が特定されると、互いに平行且つ例えば互いに均一に離間した一連のドロップライン738,740が、トリムライン742から始まり、トリムライン742から離れる方に且つ歯列から離れる方に直線経路で延びるように形成されてもよい。トリムライン742の下に、即ち、歯列から離れる方に又はその反対側にドロップライン738,740によって形成されるこのベース領域744は、型から除去される領域として特定及び区別されてもよい。
【0226】
ベース領域744を含む型の高さによって口腔内装具を形成する材料が過度に伸びないようにするために、システムは、(トリムライン742及び装具730に対する)最下点を決定するために使用されてもよく、これは、型全体を、この特定された最下点の真上までトリミングするためである。一実施形態では、トリミングは、特定された最下点の上方に所定のマージン、例えば2mmを有して行われてもよい。ベース領域壁はまた、ベース領域744の幅が、トリムライン742に隣接する大きな幅から、トリムライン742から離れた相対的に小さな幅にテーパするように、ベース領域壁の高さに基づきわずかにテーパさせることができる。歯列(又は矯正された歯列)から形成された、結果として得られる型は、ベース領域744が所定のマージン、例えば2mmの最小高さを有する
図25の側面図に示される。
【0227】
型がベース領域744を有して形成されると、型は更に処理されてもよい。形成された型750の底面図が
図26に示され、更なる処理手順中に型750を所定の位置に固定するためのツール又はアンカーを挿入することができるスロット752,754が型750の表面756に形成されている。
図27は、例えば、その界面表面756に沿って固定され、スロット752,754によりプラットフォーム760の表面762に固定された、製作済みの型750の側面図を示す。
図28は、口腔アライナを圧力成形するための物理的な型750を保持するプラットフォーム760が上下逆に、即ち、示されるように、型750が反転位置に保持されるように配置され得る1つの構成を示す。プラットフォーム760はステージ768上に固定又は固設されてもよく、ステージ768は、プラットフォーム760及び型750を、
図28に示すように、ステージ768及びプラットフォーム760によって画定される平面内において垂直方向764(上/下)に又は直線的766に移動させ、型750の切削又はトリミングプロセスを容易にするように作動されてもよい。ステージ768は、また、ステージ768が、
図29に示すように、型750の中心軸線772と同一直線上にあるように整列され得る軸線を中心に回転するように、プラットフォーム760及び型750を、ステージ768によって画定される平面内において回転770させるように作動されてもよい。
【0228】
別の構成では、型750及びステージ768に対して並進及び/又は回転させることができる刃に対してステージ768を配置してもよい。システムは、各運動ステージパラメータを計算してもよく、型750が回転可能に移動している間、刃を使用し、必要に応じて、型750を切削又はトリミングしてもよい。これには、上述のように、模型750をその中心の周りで回転させること、及び刃の傾斜角及び刃高さを計算する716ことを伴ってもよい。
【0229】
更に別の構成には、刃の位置は変化しないままで、ステージ768によって型750が回転、傾斜及び/又は並進するように、ステージ768及び型750を固定刃に対して移動させることを伴ってもよい。システムは、その後、型750を予め指定された切削経路においてトリミングするように、異なるツールを調整する。この又は任意の他の変更形態では、刃は、機械的な刃又はレーザ切削ツールを含むことができ、ソフトウェアを使用し、ソースを後ろ及び力で(back and force)より容易に移動させるための、又は型750の指定の位置に焦点を合わせ、切削するようにその出力を減衰させるためのレーザ焦点を計算してもよい。
【0230】
型を処理するための1つの実装形態において、
図30は、ステージ上に配置され、固定切刃780に対して回転させた型750の頂面図を示す。型750は、下にあるプラットフォーム及びステージに固定され、プラットフォームの平面内において、ステージによって画定される回転軸線に一致し得るその中心軸線772の周りで方向770に回転させてもよい。刃先782を有する切刃780は、本明細書に記載されるように、型750が回転する際にトリミングするために、型750に対する所定の高さ及び角度で、型に対して配置されてもよい。
【0231】
この変更形態では、複雑な3D切削曲線を生成する代わりに、システムは単純に、任意選択的にウォーターマーク切削平面を設定することによる2D平坦曲線を使用する。この利点は、型を切削するために数値的なコントローラが必要ないことである。その代わりに、示されるように、型750を単に手で配置し、押して切刃780を通過させる又は切刃780を越えるように、(例えば、手動又は自動で)回転させることができる。この動作は、木板を真直又は直線運動よりもむしろ円運動で切削することに類似し得る。
【0232】
この構成の別の利点は、例えば、口腔内装具を熱形成するとき、口腔内装具を形成する材料を型上に配置後、挟むために使用され得る別個の取付具を利用できることである。口腔内装具が熱形成される材料は、製作に使用される場合、直接固定され、型それ自体における更に別の取付具の必要性を排除してもよい。1つの実装形態では、ベース表面への投影によって生成された水平シルエットラインによって形成される平坦曲線に沿って切削するために使用され得る2次元(2D)レーザ切削ツールを使用する。
【0233】
図31は、型750上での熱形成後、プラットフォーム760上にプラスチックシェル型792とともに型750が配置される一実施形態の側面図を示す。型750、プラットフォーム760、及びシェル型792のアセンブリ全体は、型750及びシェル型792を固定するための1つ以上の締結プレート794,796を両側に備える締結取付具を有する平底取付具基部790の上に載置される。取付具アセンブリは、シェル型792をトリミングなどの更なる処理のために固定するために使用されてもよい。処理が完了すると、締結プレート794,796は開放されてもよく、シェル型792及び/又は型750は取付具基部790から取り外されてもよい。
【0234】
物理的な型がレーザ切削によって加工される場合、別の実施形態では、
図32の流れ図に示される工程が実施されてもよい。初めに、上述のように、下歯列弓及び上歯列弓のデジタル模型がシステムにロード800されてもよい。システムは、その後、上述のように、2D切削システムのルールベース切削ループ経路を計算802してもよい。また、上述したように、模型の複雑さは切削ループからドレープ壁を適用することによって低減804され得る。プロセスでは、境界を画定するために型に刻印され得るウォーターマークより上でモールドベースをトリミング806する。レーザカッタのために、システムは、垂直投影を用いて2Dレーザ切削経路を生成808し、影の境界を切削経路として決定810してもよい。システムは、その後、製作のために3Dプリンタ模型をエクスポート812してもよい。このプロセスを、対応する口腔内装具の1つ以上を製作するために使用される各後の型に対して繰り返してもよい。
【0235】
型がどのようにトリミングされるか、又は口腔内装具が型上でどのように加工されるかに関わらず、型を把持するための特徴が全くないことで、型からのシェル(アライナ又は口腔内装具)の分離及び剥離は一般に困難となり得る。これに対処するために、1つ以上の穴又はキャビティ822が、型820内の様々な位置に、及び任意選択的に、
図33の端部図に示すように、型の垂直方向に対して角度826で開けられてもよいあるいは画定されてもよい。穴又はキャビティ822の傾きは、型820上に形成された口腔内装具828を剥離し取り外すための反力を与えるために、内部に配置され得るツール824の挿入を可能にする。
【0236】
型830の底部を通って、型の上部の近傍、即ち、患者の歯列の模型が位置する場所に延びる穴又はキャビティ832を有するように形成された型830の端部図を示す別の実施形態が
図34の端部図に示される。型の薄層834は、穴832の上に延び、本明細書に記載されるように、口腔内装具828がその上で製作されてもよい表面を提供してもよい。しかしながら、口腔内装具828の製作が完了し、適切にトリミングされると、適切な寸法のツール836の先端838が開口部832内に挿入され、型830の薄層834を通して押され、口腔内装具828が型830から付勢されて剥離し得るように、口腔内装具の内部表面に接触してもよい。あるいは、ツール836は、詳細
図Dによって示されるように、先端838が開口部832内の、層834の近傍に配置され得るように、送風機を含んでもよく、この場合、先端838を通して導入された空気の噴流が層834を突き抜け、口腔内装具828を付勢し、型830から剥離してもよい。
【0237】
型、口腔内装具の製作中、又は型から口腔内装具を剥離中、型830がその強度を維持するようにするために、型830は、任意選択的に、型830の表面下にハニカム、メッシュ、又は他の多孔質特徴を含むように製作されてもよい。構造的強度の付加がハニカム又はメッシュによって与えられることによって、層834は破壊又は穿孔され、それでもなお空気の通過を可能にしてもよいが、型830は、型830の表面上でのシェル形成によって生成される圧力に耐えるほどの構造的弾力性を有してもよい。
【0238】
図35は、上述のように、型上で製作された口腔内装具を取り外すための流れ図を示す。前述のように、下歯列弓及び上歯列弓のデジタル模型は、コンピュータシステムにロード840されてもよい。システムは、その後、模型に沿った、ツール挿入のための適切な領域を特定842してもよい。そのような領域は、歯列模型から離れた場所に、型上での口腔内装具の製作の妨げにならないように配置されてもよい。システムは、挿入により貫通穴を画定することによって模型をトリミング844してもよく、貫通穴を強化するために、システムは、製作されるときに模型に強度を与えるものの、それでもなおメッシュ又はハニカムによって画定される開口部に空気を通すために、歯列がモデル化される場所に隣接する穴の領域をメッシュ又はハニカム構成として形成することによって穴領域をその後再構築846してもよい。模型は、ツールの挿入を可能にするための及び/又は型から口腔内装具を取り外す最中の型の固定を可能にするための受け入れ取付具を組み込んでもよい848。模型が完成すると、3Dプリンタ対応可能な模型がエクスポート850されてもよい。
【0239】
図36は、製作済みの口腔内装具の型からの取り外しを容易にするための更に別の例示的実施形態を型860の端部図において示す。型860は、底部(例えば、歯列を複製する型の部分とは反対側)から上部(例えば、咬合面などの歯列を複製する型の部分)に向かって型860内に延びる開口部又はチャネル862を画定するように形成されてもよい。この実施形態では、テーパした構造864が、型860上で形成される口腔内装具872の一部となるように形成されてもよい。テーパした構造864は、開口部又はチャネル862内において口腔内装具872から離れる方に大きな直径の構造へとテーパするテーパした表面866を有して形成される間、口腔内装具の内部表面に付着したままであってもよい。
【0240】
テーパした構造864は形成されると、製作及び加工中に型860上の口腔内装具を固定するのに役立つコルク状の構造を呈してもよい。口腔内装具872が完成し、型860から剥離し、取り外す用意ができると、テーパした構造864が、示されるように方向868において開口部又はチャネル862から完全に取り出されるまで、ツールが開口部又はチャネル862内に、示されるような方向870に挿入され、テーパした構造864の底面を軽く押し、型860からの口腔内装具872の剥離を促すために使用されてもよい。口腔内装具872が完全に取り外されると、テーパした構造864も口腔内装具872から取り外されてよい。
【0241】
図37は、上述のように、テーパした構造864を用いて型上で製作された口腔内装具を取り外すための流れ図を示す。前述のように、下歯列弓及び上歯列弓のデジタル模型は、コンピュータシステムにロード880されてもよい。システムは、その後、模型に沿った、ツール挿入のための適切な領域を特定882してもよい。そのような領域は、歯列模型から離れた場所に、型上での口腔内装具の製作の妨げにならないように配置されてもよい。システムは、挿入により貫通穴を画定することによって模型をトリミング884してもよく、貫通穴を強化するために、システムは、テーパした構造864(例えば、反転コルク型構造)を形成すること又は挿入することによって穴領域をその後再構築886してもよい。模型は、ツールの挿入を可能にする及び/又は型から口腔内装具を取り外す最中の型の固定を可能にするための受け入れ取付具を組み込んでもよい888。模型が完成すると、3Dプリンタ対応可能な模型がエクスポート890されてもよい。
【0242】
本明細書中に記載されるシステム又は方法は、部分的に又は全体的に、本明細書に記載されるような方法によってソフトウェアプログラムを実行する1つ以上のプロセッサを有するコンピュータシステム又はマシンによって実施されてもよい。ソフトウェアプログラムは、サーバ、ドメインサーバ、インターネットサーバ、イントラネットサーバ、及びセカンダリサーバ、ホストサーバ、分散サーバ、又は他のそのようなコンピュータ若しくはプロセッサ上のネットワーキングハードウェアなど他の変更形態などのコンピュータシステム上で実行されてもよい。プロセッサは、サーバ、クライアント、ネットワークインフラ、モバイルコンピューティングプラットフォーム、固定コンピューティングプラットフォーム、又は他のコンピューティングプラットフォームの一部であってもよい。プロセッサは、格納されたプログラムコード又はプログラム命令の実行を直接的又は間接的に容易にし得るプログラム命令、コード、バイナリ命令等を実行することが可能な任意の種類の計算又は処理デバイスであってもよい。加えて、本出願に記載されるような方法の実行に必要な他のデバイスは、コンピュータシステム又はサーバに関連するインフラの一部であると考えてよい。
【0243】
本明細書中に記載されるシステム又は方法は、部分的に又は全体的に、ネットワークインフラによって実施されてもよい。ネットワークインフラは、コンピューティングデバイス、サーバ、ルータ、ハブ、ファイアウォール、クライアント、無線通信デバイス、パーソナルコンピュータ、通信デバイス、ルーティングデバイス、並びに他のアクティブデバイス及びパッシブデバイス、当該技術分野で周知のモジュール又は構成要素などの要素を含んでもよい。ネットワークインフラと関連するコンピューティング又は非コンピューティングデバイスは、他の構成要素のほかに、フラッシュメモリ、バッファ、スタック、RAM、ROM等などのストレージ媒体を含んでもよい。本明細書及び別の場所に記載されるプロセス、方法、プログラムコード、及び命令は、1つ以上のネットワークインフラの要素によって実行されてもよい。
【0244】
図面全体にわたる流れ図、動作図、及び他の図を含む本明細書に記載及び図示される要素は、要素間の論理的境界を示唆する。しかしながら、ソフトウェア又はハードウェア工学の手法によれば、図示される要素及びその機能は、格納されたプログラム命令を実行することが可能なプロセッサを有するコンピュータ実行可能媒体によって機械上で実施されてもよく、全てのそのような実施は、本文書の範囲内であってもよい。したがって、前述の図面及び記載は開示される方法の機能的態様を説明するが、これら機能的態様を実施するためのソフトウェアの特定の構成は、明示的に記載されない限り又は状況から明白でない限り、これら記載から推測されるべきではない。同様に、上で特定及び記載した様々な工程は変更してもよく、工程の順序は本明細書中に開示される技術の特定の用途に適合されてもよいことは理解されよう。全てのそのような変更形態及び修正形態は本文書の範囲内にあることが意図される。したがって、様々な工程の順序の表示又は記載は、特定の用途によって要求されない限り又は明示的に記載されない限り、あるいは状況から明白でない限り、これら工程の特定順序の実行を必要とすると解釈されるべきではない。
【0245】
したがって、一態様では、上述の各方法及びこれらの組み合わせは、1つ以上のコンピューティングデバイス上で実行すると、その工程を実施するコンピュータ実行可能コードにおいて具現化されてもよい。別の態様では、方法は、その工程を実施するシステムにおいて具現化されてもよく、デバイス全体にいくつかの手法で分配されてもよく、又は機能の全てが専用の、スタンドアローンデバイス、又は他のハードウェアに統合されてもよい。このような順列及び組み合わせは全て、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0246】
上述のデバイス及び方法の用途は歯科用途に限定されず、任意の数の更なる治療用途を含んでもよい。更に、そのようなデバイス及び方法は、体内の他の治療部位に適用されてもよい。本発明を実施するための上述のアセンブリ及び方法の修正形態、実施可能な異なる変更形態間の組み合わせ、並びに当業者に自明の本発明の態様の変更形態は、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。