(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】大面積スケーラブル高共振ワイヤレス電力コイル
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20230526BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20230526BHJP
H02J 50/12 20160101ALN20230526BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F27/28 K
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2019551317
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(86)【国際出願番号】 US2018022662
(87)【国際公開番号】W WO2018170282
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-02
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511243668
【氏名又は名称】エフィシエント パワー コンヴァーション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】デ ローイ,マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ユアンヂェ
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523814(JP,A)
【文献】特表2011-504289(JP,A)
【文献】特表2014-515888(JP,A)
【文献】特表2009-508331(JP,A)
【文献】特表2015-508940(JP,A)
【文献】特開平09-098014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0285318(US,A1)
【文献】国際公開第2017/030001(WO,A1)
【文献】特表2010-527226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0118806(US,A1)
【文献】国際公開第2016/069185(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 27/28
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス電力システムのためのアンテナであって、
複数のビアを有する第1の基板と、
少なくとも3つの
オーバーラップする円形
のシングルターンループのパターンを形成するよう前記第1の基板で巻回される単一の連続的なコイルと、を含み、
前記コイルの前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループの各
シングルターンループの中心は、前記
単一の連続的なコイルの前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループが互いに
オーバーラップし、互いに電磁的に減結合させられて、前記コイルのインダクタンスを減少させ
、単一の均一な磁場を作るように、前記コイルの前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループの他の
シングルターンループの中心に対して等距離にあ
り、
前記単一の連続的なコイルの前記シングルターンループは、前記コイルが連続的であり、それ自体を越えることなく、前記コイルの如何なるセグメントも繰り返されないように、前記コイルが前記第1の基板の前記ビアを通過する巻線経路を有する、
アンテナ。
【請求項2】
前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループの直径は、実質的に同じである、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループの中心の間の距離は、前記少なくとも3つの円形ループの
直径の約0.766倍である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループの中心の間の距離は、前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループのループを互いに減結合するのに必要とされる距離と実質的に同じである、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記単一の連続的なコイルは、前記パターンを形成するために、前記第1の基板の両側で巻回される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記第1の基板の一方の側で巻回される前記単一の連続的なコイルは、前記ビアを通じて、前記第1の基板の反対の側で巻回される前記単一の連続的なコイルに接続される、請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記第1の基板の両側の前記パターンは、少なくとも部分的に、互いにオーバーラップし合う、請求項5に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記単一の連続的なコイルは、前記パターンの第1の部分を形成するよう水平に巻回され、前記第1の部分の下方に前記パターンの第2の部分を形成するよう水平に巻回され、
前記パターンの前記第1の部分は、1つの方向に流れる電流の経路を形成し、前記パターンの前記第2の部分は、反対の方向に流れる電流の経路を形成する、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記単一の連続的なコイルに結合されるコンデンサを更に含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項10】
第2の基板と、
前記第1の基板の前記単一の連続的なコイルの前記少なくとも3つの円形
のシングルターンループのパターンと実質的に同じパターンを形成するよう前記第2の基板で巻回される単一の連続的なコイルとを更に含み、
前記第1の基板の前記単一の連続的なコイル及び前記第2の基板の前記単一の連続的なコイルは、直列又は並列に接続される、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記第1及び第2の基板の前記コイルに連結され、前記第1及び第2の基板の前記コイルの間に配置される、コンデンサを更に含む、請求項10に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、前記第1及び第2の基板の前記コイルによって形成される前記
シングルターンループを減結合するよう、少なくとも部分的にオーバーラップする、請求項10に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、それぞれ、接続ポイントを含み、
前記第1の基板で巻回される前記単一の連続的なコイル及び前記第2の基板で巻回される前記単一の連続的なコイルは、前記接続ポイントを通じて接続され、
前記第1の基板の前記接続ポイントに入る前記コイルの端及び前記第2の基板の前記接続ポイントに入る前記コイルの端は、同じ電流を反対方向に運んで磁束を相殺するよう、実質的にオーバーラップする、
請求項10に記載のアンテナ。
【請求項14】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、それぞれ、接続ポイントを含み、
前記単一の連続的なコイルのうちの第1のコイルは、前記少なくとも3つの円形ループの前記パターンを形成するよう、前記第1の基板の両側で巻回され、
前記単一の連続的なコイルのうちの第2のコイルは、前記少なくとも3つの円形ループの前記パターンを形成するよう、前記第2の基板の両側で巻回され、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、前記接続ポイントを通じて物理的に接続される、
請求項10に記載のアンテナ。
【請求項15】
前記単一の連続的なコイルは、平行なコイルの少なくとも2つのストランドを含む、請求項1に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス充電のためのコイル構造(coil structure)に関し、より具体的には、互いに減結合されるが、単一構造の一部として接続される、複数のシングルターンコイル(単一巻きコイル)(single turn coil)を備える、高共振ワイヤレス電力コイル構造(highly resonant wireless power coil structure)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高共振電磁誘導を用いる(「エネルギ伝送システム(energy transfer systems)」とも呼ぶ)ワイヤレス送電システム(wireless power transmission systems)において多くの進展がある。一般的に、そのようなシステムは、電源及び送信コイル(transmitting
coil)並びに給電されるべきデバイス(即ち、負荷(load))に接続される受信コイル(receiving
coil)を含む。ワイヤレス送電システムのアーキテクチャは、エネルギをソースから負荷に伝達するために使用される高周波交流磁場を生成するコイルの使用に集中している。電源は、電圧及び電流の形態のエネルギを送信コイルに送達し、送信コイルは、印加電圧及び電流が変化するに応じて変化する磁場を送信コイルの周りに作る。電磁波が、送信コイルから、自由空間を通じて、負荷に結合された受信コイルに移動する。電磁波が受信コイルを通過すると、受信コイルが捕捉するエネルギに比例する電流が、受信コイル内に誘導される。
【0003】
ワイヤレス送電システムのための1つの従来的なコイルレイアウトは、基本的な螺旋ループ(spiral loop)である。
図1は、基本的な螺旋ループコイルを示している。基本的な螺旋ループコイルにおいて、コイルのインダクタンスLは、N
2に比例し、ここで、Nは、コイルの巻数(number of turns)である。この種類のコイルは、典型的には、20W未満の、より小さな低電力システム(low power systems)で使用される。
【0004】
別の従来的なコイルレイアウトは、基本的なインターリーブされた (交互配置された)(interleaved)螺旋ループである。
図2は、2つのインターリーブされたループ巻線(loop windings)を含む、基本的なインターリーブされた螺旋ループコイルを示いている。一方の巻線は、1つの連続線(continuous line)として示されている。他方の巻線は、ダッシュ(dashes)として示されている。この図及び他の図では、互いに別個の巻線を識別するために、連続線、破線(dashed line)及び点線(dotted line)が示されている。破線及び点線は、巻線自体が破線状又は点線状に物理的に形成されることを示さない。
【0005】
図2では、高インダクタンスのために、2つの巻線を直列に構成することができ、或いは低インダクタンスのために、2つの巻線を並列に構成することができる。この種のループコイルは、典型的には、ワイヤレス送電(即ち、電源側)で使用される。
図2に示す鏡像パターンは、電荷表面(コイルからの特定の距離)で略均一な磁場を提供する。この種のループコイルは、中電力用途(最大70Wシステム)のために使用される。コイルの物理的サイズは、約12インチ平方に制限される。
【0006】
別の従来的なコイルレイアウトは、シングルターンループ(単一巻きループ)(single turn loop)である。
図3は、各シングルターンループコイルが同じ直径を有する2つのシングルターンループコイルをオーバーラップ構成において示している。2つのループコイルは、同じ直径を有してよい。
図3に示すように、中心距離(2つのコイルの中心間の距離)がコイル直径の0.766倍であるとき、2つのループは分離される。即ち、それらは互いに影響し合うことができない。別の言い方をすれば、相互インダクタンスはゼロに近づく。結合(coupling)は、約-95dB(S12、S21)程度の低さであることができる。換言すると、
図3の左側ループがアンテナ1であり、
図3の右側ループがアンテナ2であり、アンテナ1に1W(0dB)が送達されると、アンテナ2で受け取る電力量は、-95dBであり、その逆も同様である。ループが同じ直径を有することは必要でない。
【0007】
2つの減結合されたループが直列に接続されるならば、インダクタンスは、いずれのループ内の電流の方向に関係なく、ループのインダクタンスの合計である。各ループ内の電流の方向が同じであるならば、(ページに出入りする)磁場は同じである。これはワイヤレス電力伝送に有用である。何故ならば、各ループは、電力伝送のために必要とされる磁場の一部を生成するからである。有限要素解析ソフトウェアを利用することによって
図3のコイルの正確な中心距離を決定することができる。
【0008】
別の従来的なコイルレイアウトは、3つの減結合されたシングルターンループである。
図4は、基本的には2つのループから3つのループへの
図3に示す構成の拡張である、3つの減結合されたシングルターンループを示している。3つのループの完全な減結合(decoupling)は、ループ間の距離に依存する。同じ直径のループは、ループを減結合するためにループ間の距離を見出すことをより容易にするが、ループを減結合するために同じサイズのループは必要とされない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、減結合されたループが単一の(連続的な)コイルに併合され、複数のループコイルがクラスタ内に構成されることができるという点において、従来技術の拡張である。
【0010】
本発明は、互いに減結合された複数のターン(巻き)又はループの単一のコイルを提示することによって、大きな表面積に亘って使用するのに適した、スケーラブルな(拡大縮小可能な)高共振ワイヤレス電力構造(scalable high resonant wireless power structure)を提供する。
【0011】
本発明の他の構成及び利点は、添付の図面と併せて以下の記述を読むときに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【0013】
【
図2】2つのインターリーブされたループ巻線を含む基本的なインターリーブされた螺旋ループコイルを示している。
【0014】
【
図3】各シングルターンループコイルが同じ直径を有する2つのシングルターンループコイルをオーバーラップ構成において示している。
【0015】
【
図4】各シングルターンループが同じ直径を有する3つのシングルターンループをオーバーラップ構成において示している。
【0016】
【
図5】本発明のある実施形態に従った、3つの減結合ループを備える単一のコイルを示している。
【0017】
【
図6】本発明のある実施形態に従った、複数の減結合ループを備える単一のコイルを示している。
【0018】
【
図7】本発明のある実施形態に従った、コイルクラスタに形成された複数のループを示している。
【0019】
【
図8】本発明のある実施形態に従った、より大きな面積の単一の巻線を形成するよう直列に接続された2つのコイルクラスタを示している。
【0020】
【
図9】本発明のある実施形態に従った、並列又は直列に接続されてよいオーバーラップしたコイルクラスタを示している。
【0021】
【
図10】ループがどのようにオーバーラップさせられることができ、減結合させられることができるかと同様に、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタがどのようにオーバーラップさせられてよく、減結合させられてよいかを示している。
【0022】
【
図11】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタを形成する巻線方法を示している。
【0023】
【
図12】本発明に従ったクラスタの直列又は並列接続を可能にするコイルクラスタ設計を示している。
【0024】
【
図13】等価面積ワイヤレス電力コイルのための磁場磁束の比較-本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタ構造に対する従来的な巻線構造を示している。
【0025】
【
図14】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタのPCB上に形成されたコイル巻線経路を示している。
【0026】
【
図15】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタのPCBの頂面でのコイル巻線経路を示している。
【0027】
【
図16】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタのPCBの底面でのコイル巻線経路を示している。
【0028】
【
図17】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタのPCB内に形成されたビア場所を示している。
【0029】
【
図18】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタ上の共振同調コンデンサの配置を示している。
【0030】
【
図19】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタのPCBにある凹部領域の配置を示している。
【0031】
【
図20】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタの接続ポイントを示している。
【0032】
【
図21】本発明のある実施形態に従った互いに水平に(並んで)接続されたコイルクラスタを示している。
【0033】
【
図22】本発明のある実施形態に従った互いに垂直に(上下に)接続されたコイルクラスタを示している。
【0034】
【
図23】本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタの導体経路のストランドを示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の詳細な記述では、特定の実施形態を参照する。これらの実施形態は、当業者がそれらを実施するのを可能にするように十分に詳細に記載されている。他の実施形態が利用されてよいこと、並びに様々な構造的、論理的及び電気的変更が行われてよいことが理解されるべきである。その上、特定の実施形態がエネルギ伝送システムに関連して記載されるが、本明細書に記載する構成は他の種類の回路にも概ね適用可能であることが理解されるべきである。
【0036】
図5は、本発明のある実施形態に従った、3つの減結合された(切り離された)(decoupled)ループを備える単一のコイルを示している。3つのループは、単一のループのインダクタンスの3倍のインダクタンスを備える単一のコイルに結び付けられる(combined)。全てのループが円形であり、同じ直径を有するならば、ループの中心は、互いに減結合するために、直径の約0.766倍の距離で離間しなければならない。
【0037】
図6は、本発明のある実施形態に従った、複数の減結合されたループを備える単一のコイルを示している。
図6の実施形態において、複数のコイルから形成されたループ(左側)は、複数のループの単一のコイル(右側)に結び付けられる。ループが複数のコイル(左側)から形成されるとき、例えば、ダッシュ(dashes)で例示されたループ又はドット(dots)で例示されたループのような幾つかのループを互いに完全に減結合することは、もはや可能でない。ダッシュ1として示すループ、ドット2として示すループ、及び
図6の左側の中央ループ3は、互いから減結合される。しかしながら、ダッシュ1として示すループの各々のループの間、及びドット2として示すループの各々のループの間には、結合がある。複数のコイルを複数のループ(右側)の単一のコイルに結び付けることによって、結び付けられたループは、同じ領域に設計された螺旋コイルと比較して低いインダクタンスを備えるコイルに結び付く。右側にある小さなループの各々は、単に一連のコンデンサを追加することによって、個別に同調されることができる。これはループのインピーダンスを低下させ、隣接しないループを減結合するのに役立つ。更に、それは固体金属異物のような外部要因に起因する離調(detuning)(仮想インピーダンスシフト)に対する免性(immunity)を高める。
【0038】
ループの減結合により、直列に接続される小さなループ(右側)の組み合わせから生じるインダクタンスは、均等なサイズの巻線コイル(winding coil)(左側)と比較して比較的低い。低誘導コイルは、仮想インピーダンス変動に対する環境のより低い影響の故に、ワイヤレス電力伝送(wireless power transfer)において有利である。簡単に言えば、ループが小さければ小さいほど環境要因に対する免性はより高い。
【0039】
図7は、本発明のある実施形態に従った、コイルクラスタに形成された複数のループを示している。
図7のコイルクラスタは、PCB上の複数ループの単一のコイル10を使用して形成される。単一のコイル10は、複数の円形ループのパターンを形成するようにPCB上で巻かれる。複数の円形ループは、直列に接続されている。コイルクラスタは、複数の円形ループのそのパターンを維持するために設けられ、ループは、x方向及びy方向の両方において、各々の隣接するループから等距離にある。これは、コイルクラスタが他のコイルクラスタと減結合されるよう、コイルクラスタがオーバーラップしているときにコイルループのパターンが維持されることを可能にする。これは接続されたコイルクラスタの各々の隣接するループが互いに減結合されることも可能にする。
【0040】
図8は、本発明のある実施形態に従った単一の巻線を形成するために直列に接続された2つのコイルクラスタ11、12を示している。コイルクラスタ間の相互接続は、ドット(点)として示されている。コイルを例示するために使用したダッシュ及びドットに関して上述したように、
図8のドットは、コイル11a、12aの間の相互接続の場所を単に示すために使用されている。ドットは、ドットに物理的に分割されたコイル経路を用いて相互接続が行われることを示さない。各コイルクラスタ11、12は、PCB、即ち、PCBa、PCBb上の単一のコイル11a、12aを使用して形成される。この実施形態において、2つのコイルクラスタ11、12のPCBは、接続されたコイル11a、12aのループが、各ループがその隣接するループに対して等距離にあるパターンを維持することができるように、部分的にオーバーラップ(a)する。
【0041】
同調のために使用される共役インピーダンスに整合するよう、コンデンサが、接続されたコイル11a、12aに結合されてよい。コンデンサは、ドットとして示すコイル11a、12aの間の相互接続上に配置されてよい。代替的に又は追加的に、コンデンサを各コイルクラスタから電気的に等距離の場所に配置して、接続されたコイルクラスタの電圧バランス(voltage balance)及び電界均一性(field uniformity)を高めてよい。
【0042】
図9は、本発明のある実施形態に従った、オーバーラップしたコイルクラスタを示している。
図9の実施形態において、2つのコイルクラスタ11、12は、殆ど完全にオーバーラップしている。各クラスタのコイルは、並列又は直列に接続されてよい。各コイルクラスタは、異なるパターンのループを有してよい。しかしながら、同じパターンのループを利用してコイルクラスタの設計を単純化してよい。
【0043】
図10は、本発明のある実施形態に従った、ループをどのようにオーバーラップさせ且つ減結合させることができるかに類似する、本発明のコイルクラスタをどのようにオーバーラップさせ且つ減結合させることができるかを示している。コイルクラスタが減結合されるためには、クラスタの磁場は、各ループが行うのと同様の方法において互いに完全に相殺し合う必要がある。これは
図10に示すようなコイルクラスタのオーバーラップを必要とすることがある。磁場のクラスタ中心は、コイルクラスタ11、12の間の場所及び距離、並びにコイルクラスタがどれぐらいオーバーラップするbべきかを決定する。磁場の中心がどこに位置するかを決定するために、磁場解析ツールが必要なことがある。
【0044】
図11は、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタの巻線経路を示している。
図11において、ダッシュ13として示されるコイルは、PCBの一方の側に巻かれており、連続線14を用いて例示されるコイルは、PCBの反対側に巻かれている。
図11のコイル13及びコイル14は、PCB内に形成される複数のビアを介して互いに接続されている。
図11において、ビアは、コイル13及びコイル14上の灰色のドット15として示されている。
図11に示すように、「ペン(pen)」を持ち上げることなく、コイル巻線全体をトレースする(追跡する)ことができる。更に、単一のセグメントを繰り返すことなくコイル全体をトレースすることができるよう、コイル全体をPCBに巻いてよい。
【0045】
当業者は、
図11の実施形態が多くの変形を有することを容易に認識するであろう。例えば、2層のプリント回路基板又はフレキシブルな等価物を用いてコイルクラスタを設計することができる。そのような構成では、単一のコイルをPCBの頂面又はPCBの頂層に巻いて、
図11にドットとして例示するパターンを形成する。
図11の連続線を使用して例示するパターンを形成するために、単一コイルは、底面PCB又は底層PCBまで更に延びる。当業者は、本発明のある実施形態に従った巻線経路が、多くの経路を辿って、同一の最終結果をもたらし得ることを容易に認識するであろう。
【0046】
図12は、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタの直列又は並列接続を可能にするコイルクラスタ設計を示している。同じコイルレイアウト(例えば、実質的に類似又は同じコイルレイアウトパターンを備えるコイルクラスタ)を利用することによって、
図12の実施形態は、製品構成要素変形総数(product component variation count)の削減を可能にする。
【0047】
図12において、2つのコイルクラスタ11、12は、2つのコイルクラスタのパターンを組み合わせてより大きなサイズの同一のパターンを形成することができるよう、部分的にオーバーラップすることによって(c)、並んで配置される。オーバーラップするコイルクラスタ11、12の左側で分解図において示す円形領域20は、2つのコイルクラスタ11、12のコイル11a、12aがどのように直列に接続されているかを例示している。
図11と同様に、ダッシュ25として示すコイルは、PCBの一方の側に巻かれたコイルを反映している一方で、連続線26を用いて示すコイルは、PCBの他方の側に巻かれたコイルを反映している。
【0048】
図12の実施形態において、領域20のコイル25は、左側コイルクラスタ11に巻かれたコイル、特に左側コイルクラスタのPCBの頂面に巻かれたコイルの一部である。この実施形態において、左側コイルクラスタ11は、左側コイルクラスタ11のオーバーラップ部分(c)が右側コイルクラスタ12の上方に配置されるように、右側コイルクラスタ12とオーバーラップしている。領域20のコイル26は、右側コイルクラスタ12のPCBの底面に巻かれたコイルの一部である。従って、領域20のコイル26は、左側コイルクラスタ11のPCBの底面に位置付けられたコイルである。
【0049】
両方のコイルクラスタ11、12の各々は、コイルがPCBを貫通して、PCBの両側で巻かれるか或いはPCBの他方の側で巻かれたコイルと接続するための経路を提供する、複数のビアを含む。ビアは、オーバーラップするコイルクラスタ11、12の左側に示された、コイルトレース上の灰色ドットとして印されている。領域20内に例示するように、左側コイルクラスタ11のコイル25は、右側コイルクラスタ12のコイルと接続するよう、ビア21に入る。ビア21に入るコイル25の端は、棘形状(barb shaped)である。同様に、右側コイルクラスタ12の底面で巻かれたコイルの一部である左側コイルクラスタ11の底面からビア22に入るコイル26は、棘形状の端を有する。領域20のコイルの棘形状の端は、磁束相殺を保証する矢印形状を形成して、元の電流経路をそのままにし、接続されたコイルクラスタの磁場均一性を維持する。
【0050】
ビア21に入るコイル25及びビア22に入るコイル26は、物理的に接続され、接続ポイントを理想的な巻線経路から移動させる空間を占める。磁束が様々なPCB、基板、及び/又はループの各々にある接続ポイントに出入りする電流を相殺することによって、接続ポイントをその理想的な経路から離れる方向に移動させることの影響を低減することができる。磁束相殺は、同じ電流を運ぶが反対方向に流れる導体を実質的にオーバーラップさせることによって達成される。
図12に示す棘形状の端は、磁束を相殺する。接続ポイントは、コイル電流経路23を継続する最後のクラスタ接続のための接続ポイントとしての機能も果たす。
【0051】
図12の円形領域30は、2つの完全にオーバーラップするコイルクラスタのコイルが並列に接続されてよい領域を反映している。再び、当業者は、この手順が多くの変形を有することを認識するであろう。それはコイルに給電する増幅器への接続ポイントとしての機能も果たす。
【0052】
図13は、均等なサイズのワイヤレス電力コイルのための断面磁場磁束の比較を示しており、従来的な巻線構造が左側に示されており、本発明のある実施形態のコイルクラスタ構造が右側に示されている。例示のように、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタ構造は、従来的な巻線構造を備える従来的な電力コイルよりも短い磁場放射パターンを有する。
【0053】
本発明のある実施形態によれば、有利には以下のようになる。
- ループを小さく作ることができる。ループの直径は、ワイヤレス電力距離(コイルから充電面までの距離)に変換される。小さなループ直径により、短い伝送距離(transmission distance)が可能である。
- 本発明のある実施形態のコイルループ構造は、大きな表面積に亘ってスケーラブル(拡大縮小可能)(scalable)である。
- 本発明のある実施形態の電力コイルは、ポリイミドベースのフレキシブル回路(flexible circuit)のような(ループ直径の関数としての曲げ半径に制限がある)曲げ回路(flex circuits)にすることができる。
- 直列コンデンサを追加することによって各々の個別のループを独立して同調することができる。これはループのインピーダンスを低下させ、隣接しないループを減結合するのに役立つ。更に、それは異種固体金属物体のような環境因子に起因する離調(仮想インピーダンスシフト)に対する免性を増加させる。
- 多重同調又は非同調コイルクラスタを並列に接続することができる。
- 本発明のある実施形態の電力コイルは、従来的なワイヤレス電力コイルが典型的に受ける仮想コイルインピーダンスにおける大きな変動を招き得る環境動作条件に対して極めて免性がある。コイルサイズが大きければ大きいほど、コイルは、固体金属物体のような環境要因の影響をより受けやすく、インダクタンスの大きな変化を示す可能性がより高い。比較的小さなループ直径及びより短い伝送距離の故に、本発明のある実施形態が固体金属の影響を受ける可能性はより低い。
- 本発明のある実施形態の電力コイルは、ワイヤレス電力伝送のための磁場の大きさの距離(magnetic field magnitude distance)を有意に減少させる。これは比吸収率(SAR)が懸念事項となる高出力大面積設計に有用である。
- 本発明のある実施形態のコイルループ構造を送信器(ソース)及び受信器(デバイス)の両方に使用することができる。
【0054】
本発明のある実施形態に従った電力ループコイルと磁気共鳴映像法(MRI)コイルとの間の最も有意な相違は、以下の通りである。
- MRIループは特異(singular)である。即ち、1つの受信器について1つのループである。
- 複数の特異ループを含むMRIループは、送信器として使用されてもよい。これは伝送電力送電要件を有意に減少させる。反対に、本発明のある実施形態は、単一のコイルからの複数のループを有し、伝送電力を増加させることがある。
- MRIループは、非限定的に、円形、楕円形、正方形、四角形を含む、様々なパターンを有してよい。MRIループは、複数のターン(巻き)(turn)を有さない。
- MRIループは、通常、決して直列又は並列に接続されない。これは磁場を分散させることを目標とするワイヤレス電力システムにとって鍵となる構成である。本発明では、複数のループを互いに接続して、より大きな、より均一な分布磁場(distributed field)を生成する。
- MRIシステムは、受信器又は送信器のいずれかを用いた非常に低いインピーダンス負荷を利用して、ループ、特に互いに隣接していないループ(例えば、
図6の緑色又は青色ループ)を更に減結合する。ワイヤレス電力システムは、負荷及び環境条件が変化するときの大きなインピーダンス変動に適合するように特別に設計される。本発明のある実施形態に従ったループを備えるワイヤレス電力システムは、負荷及び環境条件の変動に対するより高い許容度を有し、画像を再構成するために最高品質の情報を求めるMRIシステムの厳密な減結合要件を有さない。
【0055】
図14は、本発明のある実施形態、即ち、ジグザグ巻線方法に従ってPCB上に形成されたコイル巻線経路を示している。
図14の矢印は、ある時点での
図14のコイルパターンの形成のための巻線経路の方向を反映している。ジグザグ巻線方法に従って形成されたコイルパターンは、より明確な電磁場を有し、それは、ひいては、コイルクラスタが、電場に起因する最小限の共通モード結合で、互いに適切に接続されることを可能にする。
【0056】
図15及び
図16は、それぞれ、
図14に例示するジグザグ方法に従ってPCBの頂面及び底面で巻かれたコイルの巻線経路を示している。
図15において、ルーピングパターン(looping pattern)は、入口矢印31で始まり、出口矢印32で終わり、「ペン(pen)」を持ち上げることなく、或いは
図16と組み合わせにおいてトレースされるときに同じ場所の上で2度描くことなく、ループパターンを描くことができる。同様に、
図16において、ルーピングパターンは、入口矢印41で始まり、出口矢印42で終わる。
図22~
図24において後に議論するように、入口矢印31、41及び出口矢印32、42は、
図15及び
図16のコイルクラスタに直列又は並列に接続されてよい、別のコイルクラスタとの接続ポイントとしての機能を果たしてもよい。
【0057】
図15のPCBの頂面にあるルーピングパターンは、少なくとも部分的に、
図16のPCBの底面にあるルーピングパターンとオーバーラップする。
図17は、本発明のある実施形態に従った
図15及び
図16のPCB内に形成されたビアの場所を示している。
図15のPCBの頂面にあるコイル及び
図16のPCBの底面にあるコイルは、
図17にドットとして示すループの各々のループの交差場所にあるビアを通じて接続される。ビアは、PCBの両側で巻かれたコイルを相互接続し、コイルルーピング設計の連続性を保証する。
【0058】
図15、
図16、及び
図17において、ビアは、ペンを持ち上げることなく、ペンが
図15のPCBの頂面及び
図16のPCBの底面にあるパターンをトレースするのを可能にするように、戦略的に配置される。互いにオーバーラップし合うパターンをPCBの両側に形成することによって、PCBの銅含有量は2倍になる。これはパターンの抵抗を減少させる。
【0059】
更に、
図15及び
図16の巻線パターンを用いるならば、コイル上の様々な場所に亘る電圧は低く維持され、それは電場発生(E-field generation)を低く維持する。これは、隔離されたオーバーラップするタイルがそれらの電位に適合することを必要とする大きな面積を作るときに、重要である。加えて、これは、ひいては、電場均一性及び電場発生を向上させ、コイルクラスタに亘って同調を分散させることを容易にする。
【0060】
図18は、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタ上のコンデンサの配置を示している。この実施形態では、コンデンサが、例えば、コイルクラスタの頂面又は底面を同調させるために、コイルクラスタの一方の側に配置されてよい。
図18のコンデンサ61~64は、巻線経路に沿って電磁均等ポイントの付近に配置されて、等しいコンデンサ値を保証し、コイルに亘る電圧差を減少させ、望ましくない電磁放射を減少させる。
図18のコンデンサは、コイルクラスタの電圧の位相を変化させる。例えば、電圧は、それが巻線経路に沿って移動するにつれて増加する。コンデンサは、その電圧を負の値に反転(フリップ)させ、次の巻線経路は、電圧を再び増加させるように働く。このようにして、コイル又は磁場全体の実効電圧が低減される。
【0061】
コンデンサによってカバーされる各領域は、四角形71~74によって印されている。
図18において、
図18のコイルクラスタに接続されたコイルクラスタがない場合、コイルクラスタの頂面にあるコンデンサ63、64は省略されてよい。
【0062】
図19は、本発明のある実施形態に従ったPCBにある凹部領域の配置を示している。凹部領域81~84は、
図19のコイルクラスタに接続された別のコイルクラスタのコンデンサを隠して(pocket)、平坦なレイアウトを達成する。コイルクラスタは、x方向及び/又はy方向において
図19のコイルクラスタに接続されてよい。
【0063】
図20は、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタの接続ポイントを示している。
図20において、コイルクラスタへの接続ポイント51~54は、コイルクラスタの左側、底側、右側、頂側に設けられている。接続ポイント51~54は、x方向又はy方向のいずれかでコイルクラスタを直列に接続するために使用される。接続されるべき隣接するコイルがない場合、その対応する接続は、電流経路の連続性を保証するために、効果的に閉じられる(短絡させられる)必要がある。同じことが使用されない同調キャパシタ場所に当て嵌まる。
【0064】
図21は、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタの水平タイル接続(horizontal tile connection)の詳細を示している。
図21において、コイルクラスタ81及びコイルクラスタ82は、部分的にオーバーラップし、互いに水平に接続している。ドットで印されたコイルクラスタ81の部分は、ダッシュで印されたコイルクラスタ82の部分に水平に接続され、電流は、接続ポイント85、86を水平に通過する。コイルクラスタ81、82の直列接続は、コイルクラスタ81、82のパターンと同一のパターンを備えるより大きなサイズのコイルクラスタを形成する。
【0065】
図22は、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタの垂直タイル接続(vertical tile connection)の詳細を示している。
図22において、コイルクラスタ91及びコイルクラスタ92は、部分的にオーバーラップし、互いに垂直に接続している。ダッシュで印されたコイルクラスタ91の部分は、ドットで印されたコイルクラスタ92の部分に垂直に接続され、電流は、接続ポイント95、96を垂直に通過する。コイルクラスタを、
図21に示すように、並んで水平に、そして、
図22に示すように、上下(top-bottom)に垂直に接続して、個々のコイルクラスタと同一のループパターンを備えるより大きなサイズのコイルクラスタを形成することができる。より大きなサイズのコイルクラスタのコイルパターンを含むより小さなループにより、電場均一性がより容易に達成される。
【0066】
図23は、本発明のある実施形態に従ったコイルクラスタを形成するためにPCB上で巻かれたコイルのストランド(strands)を示している。
図23では、層当たり3つのストランドを使用してコイルクラスタの単一の導体経路(コイル)を形成している。導体経路がPCBの両側に形成される場合、3つの並んだストランドは、PCBの頂側及び底側の両方で使用されてよい。複数のストランドでは、コイルクラスタの有効導体経路は、単一のストランド導体経路よりも広い。何故ならば、導体内の近接効果(proximity effects)が低減されるからである。より広い導体経路は、導体と交差するより多くの磁束線で磁場パターンを変化させ、それにより、渦電流発生を増加させ、損失を減少させる。
【0067】
導体経路を形成するストランドは、平行に効果的に接続される。本発明のある実施形態に従った導体経路は、2軸に、即ち、垂直方向及び水平方向に分割されることがある。複数の「ストランド」構成の実施形態は、高周波損失を低減する。
【0068】
上述の記述及び図面は、本明細書に記載する構成及び利点を達成する本発明の特定の実施形態の単なる例示であると考えられるべきである。本発明に対する修正及び置換を行うことができる。従って、本明細書に記載する本発明の実施形態は、前述の記述及び図面によって限定されるものと考えられてならない。