(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】流水路点検装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/954 20060101AFI20230526BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
G01N21/954 A
G01B11/00 C
(21)【出願番号】P 2020004287
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】角田 恵
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 旭
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-218907(JP,A)
【文献】特開2002-357563(JP,A)
【文献】特開2005-037212(JP,A)
【文献】特開平02-150734(JP,A)
【文献】特開2007-010346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水路内の水面に浮上する装置本体を前記流水路に沿って流下させながら、前記流水路の内側壁面の状態を点検する流水路点検装置であって、
前記装置本体は、
前記装置本体
の側方を
前記流水路の内側壁面に近接させる方向に推進力を
前記装置本体に付与する壁面近接用スラスタと、
前記装置本体の側方に突出するように設けられ、前記流水路の内側壁面を流下方向に沿って転動するガイドローラと、前記流水路の内側壁面を撮影するカメラとを備えていることを特徴とする流水路点検装置。
【請求項2】
前記装置本体は、前記流水路の下流側から上流側へ向けて推進力を
前記装置本体に付与する方向姿勢用スラスタを備えている請求項1に記載の流水路点検装置。
【請求項3】
前記装置本体に前方レーザおよび後方レーザを流下方向に沿って配設し、前記前方レーザと
前記後方レーザとの離間距離に基づいて前記カメラの撮影距離を割り出すことにより、
前記装置本体の流下位置を特定可能とした請求項1又は2に記載の流水路点検装置。
【請求項4】
前記ガイドローラは、前記装置本体の一方側の側方に突出するように設けられた第一ガイドローラと、前記装置本体の他方側の側方に突出するように設けられた第二ガイドローラとを備えている請求項1~3のいずれか1項に記載の流水路点検装置。
【請求項5】
前記ガイドローラは、前記流水路内の前記水面よりも上方に設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の流水路点検装置。
【請求項6】
前記ガイドローラは、突出方向に対して後退可能である請求項1~5のいずれか1項に記載の流水路点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷設された導水路トンネルなどの流水路の内部点検に使用される流水路点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水力発電所に敷設された導水路トンネルの内部点検は、概ね数年に一回の頻度で行われる。その際、水力発電所での発電を停止し、導水路トンネルを抜水した後、作業員が導水路トンネル内を歩いて点検しているのが現状である。
【0003】
導水路トンネル内での作業員による内部点検では、導水路トンネルを抜水するため、発電停止に伴う溢水電力量が大きい。作業員は導水路トンネル内を長距離歩くことになり、長時間の作業になることから、作業員にかかる負担が大きい。
【0004】
この問題を解消するため、導水路トンネルを抜水することなく、導水路トンネルの内部点検を作業員が歩くことなく実施することができる流水路点検装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の流水路点検装置は、流水路内の水面に浮上する船体と、船体に水平面で回転自在に保持された回転体ベースと、回転体ベースを回転させる回転用モータと、回転体ベースに搭載された撮影用カメラと、流水路の壁面までの距離を測定する距離測定装置とを具備するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の流水路点検装置では、距離測定装置の測定結果に基づいて回転用モータを制御して回転体ベースの姿勢を一定に制御する。これにより、回転体ベース上で一定方向に向けられた撮影用カメラで、流水路の壁面を撮影することでもって流水路の内部点検を行っている。
【0008】
しかしながら、この流水路点検装置では、撮影用カメラが一定方向に向くように回転体ベースを水平面で回転させることにより回転体ベースの姿勢を一定に制御することから、回転体ベースの姿勢制御が複雑となる。
【0009】
また、回転体ベースが保持された船体が流水路内を自然に流下することから、流水路内で流下方向に向かって左右方向に移動する。この時も、回転体ベースの姿勢制御により撮影用カメラは一定方向に向くが、船体が流水路の左右壁面に近づいたり遠ざかったりして船体の流下方向が安定しない。
【0010】
このように、流水路の左右壁面からの距離が一定でないと、船体が流水路の左右方向にふらつきながら流下することになる。その結果、撮影用カメラで捉えられた画像が安定せず、鮮明な画像が得難くなる。このように、不鮮明な画像であると、正確な内部点検を行うことが困難となる。
【0011】
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、流水路を抜水することなく、流水路の内部点検を作業員が歩くことなく実施することができ、流水路内での流下方向を安定化させて鮮明な画像を確保し得る流水路点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、流水路内の水面に浮上する装置本体を流水路に沿って流下させながら、流水路の内側壁面の状態を点検する流水路点検装置である。これにより、流水路を抜水することなく、流水路の内部点検を作業員が歩くことなく実施することができる。
【0013】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明に係る流水路点検装置の装置本体は、装置本体を流水路の内側壁面に近接させる方向に推進力を装置本体に付与する壁面近接用スラスタと、流水路の内側壁面を流下方向に沿って転動するガイドローラと、流水路の内側壁面を撮影するカメラとを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明では、壁面近接用スラスタにより、装置本体を流水路の内側壁面に近接させる方向に推進力を装置本体に付与することで、装置本体を流水路の内側壁面に沿って流下させることができる。
【0015】
この時、ガイドローラが流水路の内側壁面を流下方向に沿って転動することで、装置本体の流下方向を安定化させることができる。その結果、カメラで撮影した画像から流水路の内側壁面の状態を鮮明に捉えることができる。
【0016】
本発明における流水路点検装置の装置本体は、流水路の下流側から上流側へ向けて推進力を装置本体に付与する方向姿勢用スラスタを備えていることが望ましい。
【0017】
このような構成を採用すれば、方向姿勢用スラスタにより、流水路の下流側から上流側へ向けて推進力を装置本体に付与することで、推進力がブレーキ力となって装置本体が水面で回転することを抑制でき、装置本体をスムーズに流下させることができる。
【0018】
本発明において、装置本体に前方レーザおよび後方レーザを流下方向に沿って配設し、前方レーザと後方レーザとの離間距離に基づいてカメラの撮影距離を割り出すことにより、装置本体の流下位置を特定可能とした構成が望ましい。
【0019】
このような構成を採用すれば、前方レーザと後方レーザとの離間距離に基づいてカメラの撮影距離を割り出すことにより、装置本体の流下位置を特定することができ、カメラで撮像した画像から流水路の内側壁面の状態を解析する際に有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、壁面近接用スラスタおよびガイドローラにより、装置本体を流水路の内側壁面に沿って流下させることができ、装置本体の流下方向を安定化させることができる。これにより、カメラで撮影した画像から流水路の内側壁面の状態を鮮明に捉えることができる。
【0021】
その結果、流水路を抜水することなく、流水路の内部点検を作業員が歩くことなく実施することができ、流水路内での流下方向を安定化させて鮮明な画像を確保することで適正な内部点検を実施することができ、点検品質の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態における流水路点検装置の主要部を示し、
図3の矢印Aから見た正面図である。
【
図4】
図1の流水路点検装置の使用状態を示す正面図である。
【
図5】
図2の流水路点検装置の使用状態を示す平面図である。
【
図6】
図3の流水路点検装置の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る流水路点検装置の実施形態を図面に基づいて以下に詳述する。
【0024】
以下の実施形態では、流水路点検装置により内部点検する対象構築物である流水路として、例えば水力発電所に敷設された導水路トンネルを例示するが、導水路トンネル以外の他の流水路についても適用可能である。
【0025】
図1~
図3は流水路点検装置の主要部を示し、
図4~
図6は流水路点検装置の使用状態を示す。実施形態の流水路点検装置は、
図4~
図6に示すように、導水路トンネル1内の水面2に浮上する装置本体11を導水路トンネル1の内側壁面3に沿って流下させながら、導水路トンネル1の内側壁面3の状態を点検するものである。
【0026】
流水路点検装置を使用することにより、導水路トンネル1を抜水することなく、水力発電所での発電中に、通水中の導水路トンネル1を作業員が歩くことなく内部点検することができる。その結果、溢水電力量を低減することができ、作業時間を短縮することで、作業員にかかる負担も軽減することができる。
【0027】
装置本体11は、
図1~
図3に示すように、導水路トンネル1内の水面2に浮上させるために軽量化が必要であることから、例えばアルミニウム製の枠状フレーム12で構成されている。
【0028】
装置本体11には、構成要素である壁面近接用スラスタ13、方向姿勢用スラスタ14、ガイドローラ15、カメラ16~20、前方レーザ21、後方レーザ22、電源23および録画器24が搭載されている。各構成要素は、図示しない取り付け部材によって枠状フレーム12に固定されている。
【0029】
なお、装置本体11の前部には、複数枚の立板25を配置している。この立板25により、導水路トンネル1の内側壁面3に設けられた手すりなどの障害物が、装置本体11の流下時、装置本体11の前部で枠状フレーム12内に嵌まり込むことを阻止できる。
【0030】
ここで、各立板25を斜めに配置することにより、隣接する立板25間に隙間を設けている。この隙間により、導水路トンネル1内を流下する上で水が流れ易くなる。
【0031】
壁面近接用スラスタ13は、スクリュー構造により、装置本体11を導水路トンネル1の内側壁面3に近接させる方向に推進力を装置本体11に付与するもので、装置本体11が流下方向に長いので、装置本体11の前方および後方に位置する枠状フレーム12の二箇所に取り付けられている。
【0032】
方向姿勢用スラスタ14は、スクリュー構造により、導水路トンネル1の下流側から上流側へ向けて推進力を装置本体11に付与するもので、装置本体11の後方に位置する枠状フレーム12の一箇所に取り付けられている。
【0033】
ガイドローラ15は、導水路トンネル1の内側壁面3を流下方向に沿って転動するもので、装置本体11の上部左右で前方および後方に位置する枠状フレーム12の四箇所に回転自在に取り付けられている。
【0034】
ガイドローラ15は、枠状フレーム12の側方に突出するように取り付けられている。ガイドローラ15は、導水路トンネル1の内側壁面3に当接した時に内側壁面3の凹凸を吸収できるように、突出方向に対して後退可能な構造(例えば、ばね構造)を備えている(
図2の鎖線参照)。
【0035】
ガイドローラ15は、導水路トンネル1の一方側(
図4および
図5の左側)の点検時に内側壁面3を転動する二つのガイドローラ15(
図1および
図2の左側)と、導水路トンネル1の他方側(
図4および
図5の右側)の点検時に内側壁面3を転動する二つのガイドローラ15(
図1および
図2の右側)とで構成されている。
【0036】
カメラ16~20(例えば、ハイビジョンカメラ)は、導水路トンネル1の内側壁面3を撮影するもので、二台の気中カメラ16,17と三台の水中カメラ18~20とで構成され〔
図1および
図3の喫水線(水面2)参照〕、装置本体11の後部で枠状フレーム12の所定位置に取り付けられている。
【0037】
上方を向く気中カメラ16と、斜め上方を向く気中カメラ17とが枠状フレーム12の上部に取り付けられている。また、側方を向く水中カメラ18が枠状フレーム12の中央部に取り付けられ、下方を向く水中カメラ19と、斜め下方を向く水中カメラ20とが枠状フレーム12の下部に取り付けられている。
【0038】
これら気中カメラ16,17および水中カメラ18~20は、内部点検時の使用状況(導水路トンネル1の大きさなど)に応じて、撮影エリアE1~E5(
図4参照)が最適な状態となるように、取り付け角度が調整可能となっている。
【0039】
気中カメラ16,17および水中カメラ18~20は、導水路トンネル1の内側壁面3と干渉しないように、枠状フレーム12の内側に配置されている。通常、導水路トンネル1の内部は暗いので、気中カメラ16,17および水中カメラ18~20には、照明用のLEDライト(図示せず)が付設されている。
【0040】
この実施形態では、二台の気中カメラ16,17と三台の水中カメラ18~20としているが、気中カメラ16,17および水中カメラ18~20の数については、導水路トンネル1の大きさなどの条件により任意に設定することができる。
【0041】
前方レーザ21および後方レーザ22は、装置本体11の上部で後方に位置する枠状フレーム12の二箇所に流下方向に沿って配設されている(
図3参照)。前方レーザ21および後方レーザ22は、上方に向けて照射可能なように配置されている。
【0042】
この流水路点検装置では、
図6に示すように、前方レーザ21と後方レーザ22との離間距離Xに基づいて気中カメラ16の撮影距離Wを割り出すことにより、装置本体11の流下位置を特定することができるようになっている。
【0043】
電源23および録画器24は、円筒形状の密閉容器を有し、装置本体11の中央に位置する枠状フレーム12に並べて取り付けられている。電源23は、密閉容器にバッテリ等を収容する。また、録画器24は、密閉容器にハードディスク等を収容する。
【0044】
装置本体11に並べて取り付けられた電源23および録画器24は、密閉容器を使用していることから浮き機能を発揮し、装置本体11を導水路トンネル1の水面2に浮上させる上で有効である。
【0045】
以上の構成からなる流水路点検装置の動作例、つまり、導水路トンネル1の内側壁面3を内部点検する流水路点検装置の使用例を図面に基づいて以下に詳述する。
【0046】
図4~
図6では、導水路トンネル1の一方側(
図4および
図5の左側)の内側壁面3を内部点検する場合を例示するが、導水路トンネル1の他方側(
図4および
図5の右側)の内側壁面3を内部点検する場合も同様である。
図5および
図6に付された白抜き矢印は、導水路トンネル1内での水の流れ方向を示す。
【0047】
まず、装置本体11を導水路トンネル1の一方側(
図4および
図5の左側)の水面2に浮上させた状態で導水路トンネル1に沿って流下させる。この時、電源23のバッテリにより、壁面近接用スラスタ13、方向姿勢用スラスタ14、気中カメラ16,17、水中カメラ18~20、前方レーザ21および後方レーザ22を駆動する。
【0048】
壁面近接用スラスタ13により、装置本体11を導水路トンネル1の内側壁面3に近接させる方向に推進力を装置本体11に付与する。これにより、装置本体11を導水路トンネル1の内側壁面3に沿って流下させる。導水路トンネル1の一方側に位置するガイドローラ15は、導水路トンネル1の内側壁面3を流下方向に沿って転動する。
【0049】
この時、継ぎ目や凹凸などの障害物が内側壁面3にあっても、壁面近接用スラスタ13の推進力により装置本体11を内側壁面3に向けて速やかに軌道修正することで、装置本体11が壁面近接位置に復帰する。これにより、装置本体11の流下方向を安定化させることができる。
【0050】
また、内側壁面3に継ぎ目や凹凸があっても、ガイドローラ15は、側方への突出方向に対して後退可能な構造を備えていることから、内側壁面3に当接した状態で後退することにより、内側壁面3の凹凸状態を吸収するので、装置本体11の流下方向を安定化させる上で有効である。
【0051】
このようにして、装置本体11が導水路トンネル1の内側壁面3に沿って流下する際、気中カメラ16,17および水中カメラ18~20により、導水路トンネル1の点検対象物である内側壁面3を近距離で撮影する。
【0052】
つまり、気中カメラ16,17で上方の撮影エリアE1および斜め上方の撮影エリアE2内の内側壁面3を撮影すると共に、水中カメラ18~20で側方の撮影エリアE3、下方の撮影エリアE4および斜め下方の撮影エリアE5内の内側壁面3を撮影する。
【0053】
気中カメラ16,17および水中カメラ18~20により近距離で撮影した画像から導水路トンネル1の内側壁面3の状態、つまり、ひび割れ等の劣化の有無を鮮明に捉えることができる。
【0054】
これら画像データは、録画器24のハードディスクに記録される。このハードディスクに記録された画像データに基づいて、撮影画像の合成などの適宜のデジタル処理でもって画像解析が行われる。
【0055】
以上のようにして、この実施形態の流水路点検装置を使用することにより、導水路トンネル1内での流下方向を安定化させて鮮明な画像を確保することで適正な内部点検を実施することができ、点検品質の向上が図れる。
【0056】
一方、装置本体11が導水路トンネル1の内側壁面3に沿って流下する際、方向姿勢用スラスタ14により、導水路トンネル1の下流側から上流側へ向けて推進力を装置本体11に付与する。
【0057】
これにより、方向姿勢用スラスタ14の推進力がブレーキ力(上流側へ引っ張られる力)となって装置本体11が水面2で回転することを抑制でき、姿勢の安定化が図れて装置本体11をスムーズに流下させることができる。
【0058】
ここで、装置本体11が導水路トンネル1の内側壁面3に沿って流下する際、装置本体11の前後に配設された前方レーザ21と後方レーザ22により、レーザ光を導水路トンネル1の内側壁面3に向けて上方照射する。
【0059】
図6に示すように、前方レーザ21と後方レーザ22との離間距離Xに基づいて気中カメラ16の撮影距離Wを割り出すことにより、装置本体11の流下位置を特定することができる。
【0060】
つまり、移動前の位置(図中実線位置)では、気中カメラ16により、撮影エリアE1(
図4参照)の画像S1が得られ、この画像S1中に前方レーザ21と後方レーザ22による照射点P,Qが映し込まれる。
【0061】
また、移動後の位置(図中鎖線位置)では、同じ気中カメラ16により、撮影エリアE1(
図4参照)の画像S2が得られ、この画像S2中に前方レーザ21と後方レーザ22による照射点P,Qが映し込まれる。
【0062】
前方レーザ21と後方レーザ22との離間距離Xが既定値であることから、移動前における気中カメラ16の画像S1の距離L1と、移動後における気中カメラ16の画像S2の距離L2とを、前方レーザ21と後方レーザ22との離間距離Xに対する比率から算出する。
【0063】
気中カメラ16から内側壁面3までの距離は、装置本体11が水面2に浮上していることや内側壁面3の凹凸および傾斜により、移動の前後で変動する。これに対して、前方レーザ21と後方レーザ22との離間距離Xは移動の前後で一定であるため、移動前における画像S1の距離L1と移動後における画像S2の距離L2とが一致することはない。
【0064】
次に、移動前における気中カメラ16の画像S1の距離L1と、移動後における気中カメラ16の画像S2の距離L2とを加算した上で、移動前における気中カメラ16の画像S1と移動後における気中カメラ16の画像S2との重合部分ΔSの補正値ΔLを減算することにより、気中カメラ16の撮影距離W(=L1+L2-ΔL)を割り出す。
【0065】
以上のようにして、前方レーザ21と後方レーザ22との離間距離Xに基づいて気中カメラ16の撮影距離Wを割り出すことにより、装置本体11の流下位置(例えば、導水路トンネル1の内側壁面3における劣化箇所の位置)を特定することができる。
【0066】
気中カメラ16,17および水中カメラ18~20により、流水路点検装置の投入地点から連続的に撮影した画像に基づいて、導水路トンネル1の内側壁面3の状態を解析する際、流水路点検装置の投入地点から現在地点までの流下距離を認知することができる点で有効である。
【0067】
以上で説明した流下位置の特定では、上方を向く気中カメラ16を使用した場合を例示したが、斜め上方を向く気中カメラ17や、側方を向く水中カメラ18、斜め下方を向く水中カメラ20および下方を向く水中カメラ19を使用することも可能である。
【0068】
その場合、使用する気中カメラ17や水中カメラ18~20の撮影エリア内に、前方レーザ21および後方レーザ22による照射点P,Qが映し込まれるように、前方レーザ21および後方レーザ22を配置する必要がある。
【0069】
以上のようにして、導水路トンネル1の一方側(
図4および
図5の左側)の内側壁面3を内部点検した後、導水路トンネル1の他方側(
図4および
図5の右側)の内側壁面3を内部点検することになる。
【0070】
その場合、壁面近接用スラスタ13、方向姿勢用スラスタ14、気中カメラ16,17、水中カメラ18~20の各構成要素は、装置本体11において、導水路トンネル1の一方側を内部点検する場合と左右対称な位置に取り付け直すことになる。
【0071】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0072】
1 流水路(導水路トンネル)
2 水面
3 内側壁面
11 装置本体
13 壁面近接用スラスタ
14 方向姿勢用スラスタ
15 ガイドローラ
16,17 カメラ(気中カメラ)
18~20 カメラ(水中カメラ)
21 前方レーザ
22 後方レーザ