(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ネットワークシステムおよび光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
H04L 69/08 20220101AFI20230526BHJP
【FI】
H04L69/08
(21)【出願番号】P 2020114537
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517121630
【氏名又は名称】APRESIA Systems株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絢也
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 秀亮
(72)【発明者】
【氏名】藤木 明良
【審査官】佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-034978(JP,A)
【文献】中国実用新案第203522787(CN,U)
【文献】特開2008-271545(JP,A)
【文献】特開2016-032131(JP,A)
【文献】特開2002-261705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0169785(US,A1)
【文献】(株)インプレス 標準技術編集部,改訂版 10ギガビットEthernet教科書 初版 10 GIGABIT ETHERNET TEXTBOOK,第1版,日本,株式会社インプレス ネットビジネスカンパニー 井芹,2005年04月11日,pp. 209-239,
図6-5、
図6-21、表6-2、表6-8
【文献】APRESIA イーサネットスイッチ アプレシアシリーズ総合カタログ,APRESIA Systems 株式会社,2022年12月,p. 55,https://www.apresia.jp/products/catalog/docs/202301_apresia_catalog.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
H04L 41/00-101/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TS-1000規格の対応装置である下位装置と、
ポートを有し、前記TS-1000規格の非対応装置である上位装置と、
前記上位装置の前記ポートに装着して使用され、光ファイバを介して前記下位装置に接続される光トランシーバと、
を備えるネットワークシステムであって、
前記光トランシーバは、
前記光ファイバに接続される光コネクタと、
前記上位装置の前記ポートに接続される電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置との間で用いられる前記TS-1000規格に基づく保守フレームと、前記上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格に基づくOAM(Operations, Administration, Maintenance)フレームとを相互に変換するフレーム変換回路と、
を有し、
前記上位装置は、前記下位装置との間でループ試験を実行するループ試験実行部を有し、
前記ループ試験実行部は、前記ループ試験の開始要求を表す前記OAMフレームである開始要求OAMフレームを前記下位装置へ送信したのち、前記TS-1000規格で規定されるループ試験時間内に、前記ループ試験の終了要求を表す前記OAMフレームである終了要求OAMフレームを前記下位装置へ送信する、
ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1記載のネットワークシステムにおいて、
前記フレーム変換回路は、
前記開始要求OAMフレームを、前記ループ試験の開始要求を表す前記保守フレームである開始要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の開始応答を表す前記保守フレームである開始応答保守フレームを、前記ループ試験の開始応答を表す前記OAMフレームである開始応答OAMフレームに変換し、
前記終了要求OAMフレームを、前記ループ試験の終了要求を表す前記保守フレームである終了要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の終了応答を表す前記保守フレームである終了応答保守フレームを、前記ループ試験の終了応答を表す前記OAMフレームである終了応答OAMフレームに変換する、
ネットワークシステム。
【請求項3】
TS-1000規格の対応装置である下位装置と、
ポートを有し、前記TS-1000規格の非対応装置である上位装置と、
前記上位装置の前記ポートに装着して使用され、光ファイバを介して前記下位装置に接続される光トランシーバと、
を備えるネットワークシステムであって、
前記光トランシーバは、
前記光ファイバに接続される光コネクタと、
前記上位装置の前記ポートに接続される電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置との間で用いられる前記TS-1000規格に基づく保守フレームと、前記上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格に基づくOAM(Operations, Administration, Maintenance)フレームとを相互に変換するフレーム変換回路と、
を有し、
前記上位装置は、前記下位装置との間でループ試験を実行するループ試験実行部を有し、
前記ループ試験実行部は、
前記TS-1000規格で規定されるループ試験時間を反映した所定の時間が設定されるタイマ部と、
ループ試験の開始要求を表す前記OAMフレームである第1の開始要求OAMフレームを生成し、前記ループ試験の開始時に前記ループ試験の開始要求を表す前記OAMフレームである第2の開始要求OAMフレームを送信してから、前記ループ試験の終了時に前記ループ試験の終了要求を表す前記OAMフレームである終了要求OAMフレームを送信するまでの期間で、前記第1の開始要求OAMフレームを前記タイマ部に基づく時間間隔で前記下位装置へ送信するフレーム割り込み部と、
を有する、
ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項3記載のネットワークシステムにおいて、
前記フレーム変換回路は、
前記第1の開始要求OAMフレームおよび前記第2の開始要求OAMフレームを、前記ループ試験の開始要求を表す前記保守フレームである開始要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の開始応答を表す前記保守フレームである開始応答保守フレームを、前記ループ試験の開始応答を表す前記OAMフレームである開始応答OAMフレームに変換し、
前記終了要求OAMフレームを、前記ループ試験の終了要求を表す前記保守フレームである終了要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の終了応答を表す前記保守フレームである終了応答保守フレームを、前記ループ試験の終了応答を表す前記OAMフレームである終了応答OAMフレームに変換する、
ネットワークシステム。
【請求項5】
請求項3記載のネットワークシステムにおいて、
前記タイマ部に設定される前記所定の時間は、2秒以下である、
ネットワークシステム。
【請求項6】
下位装置に光ファイバを介して接続可能な光コネクタと、
上位装置のポートに接続可能な電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置との間で用いられるTS-1000規格に基づく保守フレームと、前記上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格に基づくOAM(Operations, Administration, Maintenance)フレームとを相互に変換するフレーム変換回路と、
前記TS-1000規格で規定されるループ試験時間を反映した所定の時間が設定されるタイマ回路と、
ループ試験の開始要求を表す前記保守フレームである第1の開始要求保守フレームを生成し、前記ループ試験の開始要求を表す前記OAMフレームである開始要求OAMフレームを受信してから、前記ループ試験の終了要求を表す前記OAMフレームである終了要求OAMフレームを受信するまでの期間で、前記第1の開始要求保守フレームを前記タイマ回路に基づく時間間隔で前記下位装置へ送信するフレーム割り込み回路と、
を有する、
光トランシーバ。
【請求項7】
請求項6記載の光トランシーバにおいて、
前記フレーム変換回路は、
前記開始要求OAMフレームを、前記ループ試験の開始要求を表す前記保守フレームである第2の開始要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の開始応答を表す前記保守フレームである開始応答保守フレームを、前記ループ試験の開始応答を表す前記OAMフレームである開始応答OAMフレームに変換し、
前記終了要求OAMフレームを、前記ループ試験の終了要求を表す前記保守フレームである終了要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の終了応答を表す前記保守フレームである終了応答保守フレームを、前記ループ試験の終了応答を表す前記OAMフレームである終了応答OAMフレームに変換する、
光トランシーバ。
【請求項8】
請求項7記載の光トランシーバにおいて、
前記開始応答保守フレームが、前記第1の開始要求保守フレームに応じたフレームか、前記第2の開始要求保守フレームに応じたフレームかを判別し、前記第1の開始要求保守フレームに応じたフレームである場合には当該フレームを破棄するフレーム識別回路を有する、
光トランシーバ。
【請求項9】
請求項6記載の光トランシーバにおいて、
前記タイマ回路に設定される前記所定の時間は、2秒以下である、
光トランシーバ。
【請求項10】
TS-1000規格の対応装置である下位装置と、
ポートを有し、前記TS-1000規格の非対応装置である上位装置と、
前記上位装置の前記ポートに装着して使用され、光ファイバを介して前記下位装置に接続される光トランシーバと、
を備えるネットワークシステムであって、
前記光トランシーバは、
前記光ファイバに接続される光コネクタと、
前記上位装置の前記ポートに接続される電気コネクタと、
受信した電気信号を光信号に変換して前記光コネクタへ送信し、前記光コネクタからの光信号を電気信号に変換して前記電気コネクタ側へ送信する光信号インタフェースと、
前記光信号インタフェースと前記電気コネクタとの間に設けられ、前記下位装置との間で用いられる前記TS-1000規格に基づく保守フレームと、前記上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格に基づくOAM(Operations, Administration, Maintenance)フレームとを相互に変換するフレーム変換回路と、
前記TS-1000規格で規定されるループ試験時間を反映した所定の時間が設定されるタイマ回路と、
ループ試験の開始要求を表す前記保守フレームである第1の開始要求保守フレームを生成し、前記ループ試験の開始要求を表す前記OAMフレームである開始要求OAMフレームを受信してから、前記ループ試験の終了要求を表す前記OAMフレームである終了要求OAMフレームを受信するまでの期間で、前記第1の開始要求保守フレームを前記タイマ回路に基づく時間間隔で前記下位装置へ送信するフレーム割り込み回路と、
を有する、
ネットワークシステム。
【請求項11】
請求項10記載のネットワークシステムにおいて、
前記フレーム変換回路は、
前記開始要求OAMフレームを、前記ループ試験の開始要求を表す前記保守フレームである第2の開始要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の開始応答を表す前記保守フレームである開始応答保守フレームを、前記ループ試験の開始応答を表す前記OAMフレームである開始応答OAMフレームに変換し、
前記終了要求OAMフレームを、前記ループ試験の終了要求を表す前記保守フレームである終了要求保守フレームに変換し、
前記ループ試験の終了応答を表す前記保守フレームである終了応答保守フレームを、前記ループ試験の終了応答を表す前記OAMフレームである終了応答OAMフレームに変換する、
ネットワークシステム。
【請求項12】
請求項11記載のネットワークシステムにおいて、
前記光トランシーバは、前記開始応答保守フレームが、前記第1の開始要求保守フレームに応じたフレームか、前記第2の開始要求保守フレームに応じたフレームかを判別し、前記第1の開始要求保守フレームに応じたフレームである場合には当該フレームを破棄するフレーム識別回路を有する、
ネットワークシステム。
【請求項13】
請求項10記載のネットワークシステムにおいて、
前記タイマ回路に設定される前記所定の時間は、2秒以下である、
ネットワークシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステムおよび光トランシーバに関し、例えば、TTC(Telecommunication Technology Committee) TS-1000規格に基づく保守管理機能の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、保守フレームを用いて上流から下流へ順次接続される複数のメディアコンバータを保守する方式が示される。最上流のメディアコンバータは、カウンタの初期値を格納した保守フレームを下流へ送信し、下流の各メディアコンバータは、上流から受信した保守フレームを、カウンタの計数値を更新しながら順次下流へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
100Mbpsの光通信規格として、TS-1000規格が知られている。TS-1000規格は、古くから存在している規格であり、現在においても、TS-1000規格に対応する各装置を設置したネットワークシステムが多く存在している。具体例として、下位ネットワーク内に下位装置(100Mbpsのメディアコンバータ等)を設置し、上位ネットワーク内に、当該下位装置を収容する上位装置(100Mbpsのスイッチ装置等)を設置したような構成が挙げられる。下位装置と既存の上位装置との間では、通常、TS-1000規格で定められる保守フレームを用いて、ループ試験や障害情報の通知といった保守管理が行われている。
【0005】
一方、例えば、上位ネットワークでは、既存の上位装置(100Mbpsのスイッチ装置等)が、より高性能な新たな上位装置(1Gbps以上のスイッチ装置等)に入れ替えられる場合がある。この場合、新たな上位装置は、IEEE 802.3ah規格の保守管理機能には対応するが、TS-1000規格の保守管理機能には非対応である場合が多い。そこで、このような場合であっても保守管理を実現するため、参考文献(特願2019-156067号)に示されるような光トランシーバを用いることが考えられる。当該光トランシーバは、新たな上位装置が対応するIEEE 802.3ah規格と、下位装置が対応するTS-1000規格とを相互に変換することができる。
【0006】
しかし、このような光トランシーバを用いた際に、保守管理機能の一つであるループ試験を正常に行えない可能性があった。具体的には、TS-1000規格ではループ試験時間の上限が規定されているが、IEEE 802.3ah規格ではループ試験時間の上限は特に規定されていない。その結果、例えば、上位装置でループ試験時間が継続している間に、下位装置がループ試験時間の上限に達してしまい、その後のループ試験が正常に行えない恐れがあった。
【0007】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、IEEE 802.3ah規格に対応する上位装置と、TS-1000規格に対応する下位装置との間で、ループ試験を正常に行わせることが可能なネットワークシステムおよび光トランシーバを提供することにある。
【0008】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0010】
一実施の形態によるネットワークシステムは、TS-1000規格の対応装置である下位装置と、ポートを有し、TS-1000規格の非対応装置である上位装置と、上位装置のポートに装着して使用され、光ファイバを介して下位装置に接続される光トランシーバと、を備える。光トランシーバは、光ファイバに接続される光コネクタと、上位装置のポートに接続される電気コネクタと、光信号インタフェースと、フレーム変換回路と、を有する。光信号インタフェースは、受信した電気信号を光信号に変換して光コネクタへ送信し、光コネクタからの光信号を電気信号に変換して電気コネクタ側へ送信する。フレーム変換回路は、光信号インタフェースと電気コネクタとの間に設けられ、下位装置との間で用いられるTS-1000規格に基づく保守フレームと、上位装置との間で用いられるIEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレームとを相互に変換する。上位装置は、下位装置との間でループ試験を実行するループ試験実行部を有する。ループ試験実行部は、ループ試験の開始要求を表すOAMフレームである開始要求OAMフレームを下位装置へ送信したのち、TS-1000規格で規定されるループ試験時間内に、ループ試験の終了要求を表すOAMフレームである終了要求OAMフレームを下位装置へ送信する。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、IEEE 802.3ah規格に対応する上位装置と、TS-1000規格に対応する下位装置との間で、ループ試験を正常に行わせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1によるネットワークシステムの構成例を示す概略図である。
【
図2】(a)は、TS-1000規格に基づく保守フレームの構成例を示す概略図であり、(b)は、IEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレーム(EFM)の構成例を示す概略図である。
【
図3】
図1における光トランシーバの概略構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図3におけるフレーム処理回路の模式的な構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図4におけるフレーム変換回路の一部の処理内容の一例を説明する図である。
【
図6】
図1のネットワークシステムにおいて、ループ試験時の動作例を示すシーケンス図である。
【
図7】
図4のフレーム処理回路において、ループ試験時の処理内容の一例を示すフロー図である。
【
図8】本発明の実施の形態2によるネットワークシステムにおいて、
図1の上位装置の構成例を示す概略図である。
【
図9】
図8におけるループ試験実行部の構成例を示す概略図である。
【
図10】
図8および
図9の上位装置を含んだネットワークシステムにおいて、ループ試験時の動作例を示すシーケンス図である。
【
図11】
図8の上位装置を含んだネットワークシステムにおいて、ループ試験時の
図10とは異なる動作例を示すシーケンス図である。
【
図12】
図1のネットワークシステムにおいて、ループ試験時の前提となる動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
(実施の形態1)
《ネットワークシステムの概略》
図1は、本発明の実施の形態1によるネットワークシステムの構成例を示す概略図である。
図1に示すネットワークシステムは、上位ネットワーク10と、複数の下位ネットワーク11[1]~11[n]とを有する。上位ネットワーク10と下位ネットワーク11[1]~11[n]のそれぞれとは、光ファイバ12で接続される。上位ネットワーク10は、複数の上位装置15を含んだ通信キャリア用のネットワーク等である。下位ネットワークは、下位装置17やユーザ端末18を含んだユーザ(法人等)用のネットワーク等である。
【0015】
上位装置15は、例えば、1Gbps以上の通信速度に対応するレイヤ2(L2)スイッチ装置、レイヤ3(L3)スイッチ装置、または、メディアコンバータ等である。上位装置15は、単数または複数のポートPTを備える。ポートPTは、例えば、1000BASE-X規格に対応するSFP(Small Form factor Pluggable)ポート等である。ここで、上位装置15の複数のポートPTには、適宜、光トランシーバ16[1]~16[n]が装着される。
【0016】
光トランシーバ16[1]~16[n](符号16で総称する)は、例えば、SFPトランシーバ(SFPモジュール)等である。光トランシーバ16は、上位装置15のポート(SFPポート)PTに接続される電気コネクタ(図示せず)と、光ファイバ12に接続され、光ファイバ12を介して下位装置17に接続される光コネクタCNoとを備える。光コネクタCNoは、例えば、LCコネクタ等である。
【0017】
下位装置17は、例えば、メディアコンバータ等であり、光ファイバ12を介して光トランシーバ16(ひいては上位装置15)に接続される。下位装置17は、100Mbpsの光通信規格であるTS-1000規格の対応装置である。ユーザ端末18は、例えば、イーサネット(登録商標)ケーブル19を介して下位装置17に接続され、下位装置17を介して光トランシーバ16(ひいては上位装置15)に接続される。なお、ユーザ端末18と下位装置17との間には、適宜、L2スイッチ装置、L3スイッチ装置等が設置されてもよい。
【0018】
ここで、上位装置15が、例えば、TS-1000規格の対応装置である100Mbpsのスイッチ装置等である場合を想定する。この場合、上位装置15と下位装置17との間では、TS-1000規格に基づく保守フレームを用いて、ループ試験や障害情報の通知やといった保守管理を行うことができる。しかし、上位装置15を、例えば、1Gbps以上のスイッチ装置といった、より高性能な新たな上位装置15に入れ替えた場合、新たな上位装置15は、TS-1000規格に非対応である場合が多い。
【0019】
一方、新たな上位装置15は、通常、TS-1000規格のような専用の保守フレームではなく、一般的なイーサネットフレームを用いた保守管理機能を備える。このような保守管理機能は、イーサネットOAM(Operations, Administration, Maintenance)と呼ばれる。イーサネットOAMの仕様は、IEEE 802.3ah規格(EFM(Ethernet in First Mile)とも呼ばれる)等で規定される。当該規格に基づくと、規格上で定められるOAMフレーム(EFM)を用いて主にポイント・ツー・ポイントでの通信状態を管理することができる。
【0020】
光トランシーバ16は、このようなIEEE 802.3ah規格に対応する新たな上位装置15と、TS-1000規格に対応する下位装置17との間での保守管理を可能にするためのものである。具体的には、光トランシーバ16は、IEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレーム(EFM)と、TS-1000規格に基づく保守フレームとを相互に変換する。
【0021】
《フレーム構造》
図2(a)は、TS-1000規格に基づく保守フレームの構成例を示す概略図であり、
図2(b)は、IEEE 802.3ah規格に基づくOAMフレーム(EFM)の構成例を示す概略図である。
図2(a)に示す保守フレームFRSは、12バイトのフレームであり、1バイトのプリアンブル(PRE)22と、2バイトの制御情報23と、2バイトの状態情報24と、6バイトの管理情報25と、1バイトのCRC(Cyclic Redundancy Check)26とを備える。概略的には、制御情報23は、命令や要求内容等を表し、状態情報24は、電源障害やリンク障害といった障害情報等を表す。管理情報25は、ベンダコードおよびベンダ毎のモデル番号を表す。
【0022】
図2(b)に示すOAMフレームFREは、イーサネットフレームの一種であり、ヘッダ30と、ペイロード(EFMデータ)31と、4バイトのFCS(Frame Check Sequence)32とを備える。ヘッダ30は、8バイトのプリアンブル(PRE)33と、6バイトの宛先MAC(Media Access Control)アドレス(DMAC)34と、6バイトの送信元MACアドレス(SMAC)35と、2バイトのタイプ(TYP)36とを備える。
【0023】
ペイロード(EFMデータ)31は、46バイト以上であり、1バイトのサブタイプ40と、2バイトのフラグ41と、1バイトのコード42と、42バイト以上のデータ(パディングデータ含む)43とを備える。概略的には、フラグ41は、障害情報等を表し、コード42は、命令や要求内容等を表す。データ43は、コード42の内容毎に定められる単数または複数のTLV(Type Length Value)44[1]~44[n]を含む。
【0024】
ここで、OAMフレームFREでは、IEEE 802.3ah規格に基づき、宛先MACアドレス(DMAC)34は、マルチキャストアドレスである“Ox0180C2000002”に定められる。また、タイプ(TYP)36は、スロープロトコルを表す“Ox8809”に定められ、サブタイプ40は、OAMフレームであることを表す“Ox03”に定められる。
【0025】
《光トランシーバの概略》
図3は、
図1における光トランシーバの概略構成例を示すブロック図である。
図3に示す光トランシーバ16は、光コネクタCNoと、電気コネクタCNeと、光信号インタフェース(I/F)48と、アナログフロントエンド(AFE)回路47と、ロジック回路46と、電気信号インタフェース45と、CPU(Central Processing Unit)49とを備える。
図1で述べたように、光コネクタCNoは、光ファイバ12に接続されるLCコネクタ等であり、光ファイバ12を介して下位装置17に接続可能となっている。また、電気コネクタCNeは、上位装置15のポート(例えばSFPポート)PTに接続可能(言い換えれば、着脱可能)となっている。
【0026】
光信号インタフェース48は、レーザダイオードLDと、フォトダイオードPDとを備える。レーザダイオードLDは、受信した電気信号を光信号に変換して光コネクタCNoへ送信する。フォトダイオードPDは、光コネクタCNoからの光信号を電気信号に変換して電気コネクタCNe側へ送信する。アナログフロントエンド回路47は、ロジック回路46と、光信号インタフェース48との間に設けられ、ドライバ55と、ポストアンプ56とを備える。ドライバ55は、ロジック回路46からの電気信号に基づいてレーザダイオードLDを駆動する。ポストアンプ56は、フォトダイオードPDからの電気信号を増幅してロジック回路46へ送信する。
【0027】
ロジック回路46は、AFE回路47と、電気信号インタフェース45との間に設けられ、フレーム処理回路53を備える。フレーム処理回路53は、主に、下位装置17との間(すなわち光コネクタCNo側)で用いられる保守フレームFRS(
図2(a))と、上位装置15との間(すなわち電気コネクタCNe側)で用いられるOAMフレームFRE(
図2(b))とを相互に変換する。
【0028】
電気信号インタフェース45は、ロジック回路46と電気コネクタCNeとの間に設けられ、速度変換回路51を備える。速度変換回路51は、例えば、SGMII(Serial Gigabit Media Independent Interface)等であり、電気コネクタCNeの通信速度とロジック回路46の通信速度とを相互に変換する。具体的には、速度変換回路51は、例えば、電気コネクタCNeからの1.25Gbpsのフレームを125Mbpsに変換してロジック回路46へ送信し、ロジック回路46からの125Mbpsのフレームを1.25Gbpsに変換して電気コネクタCNeへ送信する。CPU49は、所定の管理/制御プログラムに基づいて、光トランシーバ16全体を管理/制御する。
【0029】
図3において、アナログフロントエンド回路47は、IC(Integrated Circuit)等で構成され、光信号インタフェース48は、OSA(Optical SubAssembly)等で構成される。ロジック回路46は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成される。電気信号インタフェース45は、ロジック回路46を構成するFPGAまたはASIC内に実装されるか、または、別のASIC等で構成される。なお、各部の実装形態は、勿論、これに限定されず、例えば、ロジック回路46をソフトウェア処理で実装するなど、適宜変更可能である。
【0030】
《フレーム処理回路の詳細》
図4は、
図3におけるフレーム処理回路の模式的な構成例を示すブロック図である。
図4に示すフレーム処理回路53は、フレームバッファ60a,60bと、フレーム識別回路61と、フレーム変換回路62と、フレーム割り込み回路63と、タイマ回路64とを備える。この内、フレーム割り込み回路63およびタイマ回路64の詳細については後述する。
【0031】
フレームバッファ60aは、例えば、125MHzのクロック信号に同期して動作し、電気コネクタCNe側との間でOAMフレームFREや、その他のイーサネットフレームを含む各種フレームのシリアル受信またはシリアル送信を行う。フレームバッファ60bは、例えば、125MHzのクロック信号に同期して動作し、光コネクタCNo側との間で保守フレームFRSやイーサネットフレームを含む各種フレームのシリアル受信またはシリアル送信を行う。
【0032】
フレーム識別回路61は、フレームバッファ60a,60bで受信したフレームがOAMフレームFREまたは保守フレームFRSであるか否かを識別する。フレーム識別回路61は、受信したフレームがOAMフレームFREまたは保守フレームFRSである場合には、フレーム変換回路62へ変換命令を送信する。フレーム変換回路62は、当該変換命令に応じて、保守フレームとOAMフレームFREとを相互に変換する。
【0033】
具体例として、フレームバッファ60aが電気コネクタCNe側からの各種フレームをシリアル受信した場合を想定する。フレーム識別回路61は、例えば、受信したフレームの宛先MACアドレス(DMAC)34、タイプ(TYP)36およびサブタイプ40の値に基づいて、受信したフレームがOAMフレームFREであるかOAMフレームFREを除くイーサネットフレームであるかを識別する。
【0034】
フレーム識別回路61は、受信したフレームがOAMフレームFREである場合には、フレーム変換回路62へ変換命令を送信する。一方、フレーム識別回路61は、受信したフレームがOAMフレームFREを除くイーサネットフレームである場合には、フレームバッファ60a内のイーサネットフレームをそのままフレームバッファ60b(ひいては光コネクタCNo側)へ送信する。
【0035】
フレーム変換回路62は、フレーム識別回路61からの変換命令に応じて、予め定められた対応関係に基づいて、OAMフレームFREを保守フレームFRSに変換する。具体的には、フレーム変換回路62は、フレームバッファ60b内に、
図2(a)に示したようなフォーマットの保守フレームFRSを生成する。この際に、フレーム変換回路62は、管理情報25を予め定めた所定の値に定める。
【0036】
また、フレーム変換回路62は、所定の対応関係に基づいて、制御情報23および状態情報24を、OAMフレームFRE内のペイロード(EFMデータ)31(具体的には、フラグ41、コード42およびデータ43)に対応する値に定める。フレームバッファ60bは、このようにして生成された保守フレームFRSを、125Mbpsの通信速度で光コネクタCNo側へシリアル送信する。
【0037】
次に、フレームバッファ60bが光コネクタCNo側からの各種フレームをシリアル受信した場合を想定する。フレーム識別回路61は、例えば、受信したフレームのプリアンブル(PRE)22の長さが1バイトであるか否かに基づいて、受信したフレームが保守フレームFRSであるかイーサネットフレームであるかを識別する。保守フレームFRSでは、制御情報23の最初のビットが“0”に定められ、これによって“1010…”のプリアンブル(PRE)22の終点を識別可能となっている。また、フレーム識別回路61は、例えば、制御情報23のビット[4:7](C4-C7)が“0000”の固定値であることや、受信したフレームが12バイトであることに基づいて、受信したフレームが保守フレームFRSであることを認識してもよい。
【0038】
フレーム識別回路61は、受信したフレームが保守フレームFRSである場合には、フレーム変換回路62へ変換命令を送信する。一方、フレーム識別回路61は、受信したフレームがイーサネットフレームである場合には、フレームバッファ60b内のイーサネットフレームをそのままフレームバッファ60a(ひいては電気コネクタCNe側)へ送信する。
【0039】
フレーム変換回路62は、フレーム識別回路61からの変換命令に応じて、予め定められた対応関係に基づいて、保守フレームFRSをOAMフレームFREに変換する。具体的には、フレーム変換回路62は、フレームバッファ60a内に、
図2(b)に示したようなフォーマットのOAMフレームFREを生成する。この際に、フレーム変換回路62は、ヘッダ30内の宛先MACアドレス(DMAC)34およびタイプ(TYP)36と、ペイロード(EFMデータ)31内のサブタイプ40とを、
図2(b)に示したような値に定める。
【0040】
また、フレーム変換回路62は、例えば、光トランシーバ16に予め設定されているMACアドレスの値を用いて、ヘッダ30内の送信元MACアドレス(SMAC)35を定める。フレーム変換回路62は、保守フレームFRS内の管理情報25の値を、OAMフレームFREのTLV44[1]~44[n]の中のOUI(Organizationally Unique Identifier)に変換する。さらに、フレーム変換回路62は、所定の対応関係に基づいて、ペイロード(EFMデータ)31を、保守フレームFRS内の制御情報23および状態情報24に対応する値に定める。フレームバッファ60aは、このようにして生成されたOAMフレームFREを、125Mbpsの通信速度で電気コネクタCNe側へシリアル送信する。
【0041】
なお、ここでは、説明の便宜上、光コネクタCNo側から電気コネクタCNe側へのフレーム変換と、その逆方向のフレーム変換とで共通のフレームバッファ60a,60bを用いる構成を示した。ただし、詳細には、各方向に対してそれぞれフレームバッファ60a,60bが設けられるような構成であってもよい。
【0042】
《フレーム変換回路の詳細》
図5は、
図4におけるフレーム変換回路の一部の処理内容の一例を説明する図である。フレーム変換回路62は、前述したように、OAMフレームFREと保守フレームFRSとを相互に変換する。その一つとして、フレーム変換回路62は、
図5に示されるような対応関係をメモリや論理ゲート等で予め保持することで、ループ試験に伴うOAMフレームFREと保守フレームFRSとを相互に変換する。
【0043】
図5において、OAMフレームFREでは、コード42をループ試験制御(“Ox04”)に定めることでループ試験に伴う各種命令を発行することができる。具体的には、コード42を“Ox04”に定めると共に、コード42に続くデータ43内で開始/終了の種別を定めることで、ループ試験の開始要求、終了要求を発行することができる。また、コード42をインフォメーション(“Ox00”)に定め、コード42に続くデータ43内にループ試験状態であるか否かの情報を格納することで、ループ試験の開始応答、終了応答を発行することができる。一方、保守フレームFRSでは、制御情報23の値を組み合わせることで、ループ試験の開始要求、終了要求、開始応答、終了応答を発行することができる。
【0044】
《ループ試験(前提)の詳細および問題点》
図12は、
図1のネットワークシステムにおいて、ループ試験時の前提となる動作例を示すシーケンス図である。IEEE 802.3ah規格およびTS-1000規格共に、ループ試験の基本的なシーケンスは同じである。まず、ステップS101において、上位装置15は下位装置17へ開始要求を送信し、下位装置17は上位装置15へ開始応答を返信する。これにより、上位装置15および下位装置17は、共に、ループ試験状態となる。
【0045】
続いて、ステップS102において、ループ試験状態の上位装置15は、下位装置17へ、所定のテスト用データを含んだイーサネットフレームであるテストフレームFR[1]を送信する。ループ試験状態の下位装置17は、上位装置15からのテストフレームFR[1]を、そのまま上位装置15へループバックする。上位装置15は、テストフレームFR[1]が正しくループバックされたか否かに基づいて、通信経路の異常有無を判定する。また、上位装置15は、通常、n個のテストフレームFR[1]~FR[n]を順次送信することで、同様にして、異常有無を判定する。
【0046】
その後、ステップS103において、上位装置15は下位装置17へ終了要求を送信し、下位装置17は上位装置15へ終了応答を返信する。これにより、上位装置15および下位装置17は、共に、ループ試験状態を解除する。また、このようなループ試験の際に、光トランシーバ16は、次のような動作を行う。
【0047】
まず、ステップS101において、上位装置15は、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)を、光トランシーバ16を介して下位装置17へ送信する。開始要求OAMフレームFRE(SRQ)は、
図5で述べたように、ループ試験の開始要求を表すOAMフレームFREである。ここで、光トランシーバ16(具体的にはフレーム変換回路62)は、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)を、開始要求保守フレーム(第2の開始要求保守フレーム)FRS(SRQ)に変換する。開始要求保守フレームFRS(SRQ)は、
図5で述べたように、ループ試験の開始要求を表す保守フレームFRSである。
【0048】
開始要求保守フレームFRS(SRQ)を受信した下位装置17は、上位装置15へ、開始応答保守フレームFRS(SRS)を送信する。開始応答保守フレームFRS(SRS)は、
図5で述べたように、ループ試験の開始応答を表す保守フレームFRSである。上位装置15は、開始応答保守フレームFRS(SRS)を光トランシーバ16を介して受信する。この際に、光トランシーバ16(具体的にはフレーム変換回路62)は、開始応答保守フレームFRS(SRS)を、開始応答OAMフレームFRE(SRS)に変換する。開始応答OAMフレームFRE(SRS)は、
図5で述べたように、ループ試験の開始応答を表すOAMフレームFREである。
【0049】
また、ステップS103において、上位装置15は、終了要求OAMフレームFRE(ERQ)を、光トランシーバ16を介して下位装置17へ送信する。終了要求OAMフレームFRE(ERQ)は、
図5で述べたように、ループ試験の終了要求を表すOAMフレームFREである。ここで、光トランシーバ16(具体的にはフレーム変換回路62)は、終了要求OAMフレームFRE(ERQ)を、終了要求保守フレームFRS(ERQ)に変換する。終了要求保守フレームFRS(ERQ)は、
図5で述べたように、ループ試験の終了要求を表す保守フレームFRSである。
【0050】
終了要求保守フレームFRS(ERQ)を受信した下位装置17は、上位装置15へ、終了応答保守フレームFRS(ERS)を送信する。終了応答保守フレームFRS(ERS)は、
図5で述べたように、ループ試験の終了応答を表す保守フレームFRSである。上位装置15は、終了応答保守フレームFRS(ERS)を光トランシーバ16を介して受信する。この際に、光トランシーバ16(具体的にはフレーム変換回路62)は、終了応答保守フレームFRS(ERS)を、終了応答OAMフレームFRE(ERS)に変換する。終了応答OAMフレームFRE(ERS)は、
図5で述べたように、ループ試験の終了応答を表すOAMフレームFREである。
【0051】
以上のようなループ試験において、IEEE 802.3ah規格では、ループ試験時間(ループ試験状態の継続時間)は、特に規定されない。一方、TS-1000規格では、
図12に示されるように、タイマ(T2)を用いたループ試験時間の上限値が規定される。例えば、下位装置17は、開始応答保守フレームFRS(SRS)を送信した際にタイマ(T2)を起動し、タイマ(T2)がタイムアウトすると、ループ試験状態を解除する。
【0052】
これにより、タイマ(T2)がタイムアウトした以降、テストフレームは、ループバックされなくなる。その結果、ループ試験を正常に行うことが困難となる。なお、タイマ(T2)の上限値は、例えば、2秒である。また、上位装置15は、2秒よりも十分に長いループ試験時間(例えば、5秒程度等)でループ試験を行う場合が多い。
【0053】
《ループ試験(実施の形態1)の詳細》
図6は、
図1のネットワークシステムにおいて、ループ試験時の動作例を示すシーケンス図である。
図12で述べたような問題点を解決するため、
図4に示したようなフレーム割り込み回路63と、タイマ回路64とが設けられる。タイマ回路64は、例えば、起動されたのち停止されるまでの期間でカウントを繰り返す巡回式のものである。タイマ回路64には、TS-1000規格で規定されるループ試験時間を反映した所定の時間(T1)が設定される。所定の時間は、例えば、2秒以下である。
【0054】
フレーム割り込み回路63は、ループ試験の開始要求を表す保守フレームFRSである開始要求保守フレーム(第1の開始要求保守フレーム)FRS(SRQd)を生成する。そして、フレーム割り込み回路63は、例えば、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)を受信してから、終了要求OAMフレームFRE(ERQ)を受信するまでの期間で、開始要求保守フレームFRS(SRQd)を、タイマ回路64に基づく時間間隔(T1)で下位装置17へ送信する。
【0055】
図6のシーケンスでは、
図12に示したシーケンスに、ステップS201の処理が加わっている。この例では、
図4のフレーム識別回路61は、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)を識別し、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)を受信した時点でタイマ回路64を起動する。フレーム割り込み回路63は、タイマ回路64が満了する毎に、フレームバッファ60b内に開始要求保守フレームFRS(SRQd)を生成し、下位装置17へ送信する(ステップS201)。
【0056】
なお、この際には、例えば、フレームバッファ60b内で開始要求保守フレームFRS(SRQd)とテストフレームとの競合が生じ得る。この場合、フレームバッファ60bは、開始要求保守フレームFRS(SRQd)の優先度が高いものとして、テストフレームよりも先に開始要求保守フレームFRS(SRQd)を送信する。また、フレーム識別回路61は、終了要求OAMフレームFRE(ERQ)を受信した時点で、タイマ回路64を停止する。
【0057】
TS-1000規格では、開始要求保守フレームFRS(SRQd)を受信した際に、タイマ(T2)を再起動することが規定されている。このため、ステップS201の処理を用いることで、
図12に示したようなタイマ(T2)のタイムアウトを防止できる。その結果、ループ試験を正常に行うことが可能になる。なお、フレーム識別回路61は、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)や終了要求OAMフレームFRE(ERQ)の代わりに、開始応答保守フレームFRS(SRS)や終了応答保守フレームFRS(ERS)に応じてタイマ回路64の起動/停止を制御してもよい。
【0058】
図7は、
図4のフレーム処理回路において、ループ試験時の処理内容の一例を示すフロー図である。
図7において、フレーム識別回路61は、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)または開始応答保守フレームFRS(SRS)に基づいて、ループ試験の開始を認識する(ステップS301)。これに応じて、フレーム識別回路61は、タイマ回路64を起動する(ステップS302)。
【0059】
その後、フレーム処理回路53は、ステップS307でループ試験の終了を認識するまでの期間で、ステップS303~S306の処理を繰り返し実行する。ステップS303において、フレーム割り込み回路63は、タイマ回路64が満了したか否かを判定する。タイマ回路64が満了していない場合、ステップS305への移行が行われる。一方、タイマ回路64が満了した場合、フレーム割り込み回路63は、開始要求保守フレームFRS(SRQd)を生成し、それを下位装置17へ送信したのち、ステップS305へ移行する(ステップS304)。なお、タイマ回路64は、満了したのち、再度、カウント動作を開始する。
【0060】
ステップS305において、フレーム識別回路61は、開始応答保守フレームFRS(SRS)を受信したか否かを判定する。フレーム識別回路61は、開始応答保守フレームFRS(SRS)を受信した場合、それを破棄してステップS307へ移行する(ステップS306)。一方、開始応答保守フレームFRS(SRS)を受信していない場合、そのままステップS307への移行が行われる。
【0061】
すなわち、下位装置17は、
図6に示されるように、ループ試験の開始時における開始要求保守フレーム(第2の開始要求保守フレーム)FRS(SRQ)に応じて開始応答保守フレームFRS(SRS)を送信する。これに加えて、下位装置17は、
図6では省略されているが、詳細には、フレーム割り込み回路63からの開始要求保守フレーム(第1の開始要求保守フレーム)FRS(SRQd)に応じて開始応答保守フレームFRS(SRS)を送信する。
【0062】
そこで、ステップS305において、フレーム識別回路61は、受信した開始応答保守フレームFRS(SRS)が、第2の開始要求保守フレームFRS(SRQ)に応じたフレームか、第1の開始要求保守フレームFRS(SRQd)に応じたフレームかを判別する。そして、ステップS306において、フレーム識別回路61は、受信した開始応答保守フレームFRS(SRS)が第1の開始要求保守フレームFRS(SRQd)に応じたフレームである場合には、当該フレームを破棄する。
【0063】
これにより、光トランシーバ16は、上位装置15へ、本来不必要な開始応答OAMフレームFRE(SRS)を送信せずに済む。なお、具体的な方式の一例として、フレーム識別回路61は、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)に応じた開始応答保守フレームFRS(SRS)を受信した時点でフラグをセットし、終了要求OAMフレームFRE(ERQ)を受信した時点でフラグをリセットすればよい。そして、フレーム識別回路61は、フラグがセットされている間に受信した開始応答保守フレームFRS(SRS)を破棄すればよい。
【0064】
ステップS307において、フレーム識別回路61は、終了要求OAMフレームFRE(ERQ)または終了応答保守フレームFRS(ERS)に基づいて、ループ試験の終了を認識する。これに応じて、フレーム識別回路61は、タイマ回路64を停止する(ステップS308)。
【0065】
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の方式を用いることで、代表的には、IEEE 802.3ah規格に対応する上位装置15と、TS-1000規格に対応する下位装置17との間で、ループ試験を正常に行わせることが可能になる。この際には、上位装置15および下位装置17に対して、特に、何等かの変更を加える必要はなく、単に、上位装置15に光トランシーバ16を装着することで、このような効果が得られる。また、例えば、既存の下位装置17をIEEE 802.3ah規格に対応する新たな下位装置17に入れ替えるような必要性も生じず、下位装置16の入れ替えコスト等を低減できる。
【0066】
(実施の形態2)
《上位装置の概略》
前述した実施の形態1では、
図12で述べたような問題を光トランシーバ16によって解決したが、実施の形態2では、上位装置によって解決する。このため、実施の形態2では、光トランシーバ16に、
図4に示したフレーム割り込み回路63およびタイマ回路64を設ける必要はない。
【0067】
図8は、本発明の実施の形態2によるネットワークシステムにおいて、
図1の上位装置の構成例を示す概略図である。ここでは、
図1の上位装置15がOSI参照モデルのレイヤ2(L2)の処理を行うスイッチ装置である場合を例とする。
図8の上位装置15aは、単数または複数のポート(例えばSFPポート)PT[0]~PT[n]と、フレームインタフェース80と、中継処理回路81と、FDB(Forwarding DataBase)82と、管理部83とを備える。管理部83は、詳細は後述するが、下位装置17との間でループ試験を実行するループ試験実行部85を備える。
【0068】
フレームインタフェース80は、ポートPT[0]~PT[n]で受信したフレームを中継処理回路81または管理部83へ送信し、中継処理回路81または管理部83からのフレームを宛先ポートとなる所定のポートPT[0]~PT[n]へ送信する。この際に、フレームインタフェース80は、ポートPT[0]~PT[n]で受信したフレームがイーサネットフレームであるか否かを判別し、イーサネットフレームでない場合には、受信したフレームを破棄する。
【0069】
中継処理回路81は、ポートPT[0]~PT[n]でイーサネットフレームを受信した場合に、当該受信フレームの送信元MACアドレス(SMAC)35を、受信ポートの識別子に対応付けてFDB82に学習する。また、中継処理回路81は、当該受信フレームの宛先MACアドレス(DMAC)34を検索キーとしてFDB82を検索することで宛先ポートを取得する。そして、中継処理回路81は、当該受信フレームを、フレームインタフェース80を介して宛先ポートへ中継する。
【0070】
なお、
図8において、フレームインタフェース80は、ASIC等で構成される。中継処理回路81は、FPGAまたはASIC等で構成され、FDB82は、CAM(Content Addressable Memory)等で構成される。管理部83は、CPUを用いたプログラム処理等で構成される。ただし、各部の実装形態は、勿論、これに限定されず、適宜、ハードウェアまたはソフトウェアあるいはその組合せを用いたものであればよい。
【0071】
《上位装置の詳細[方式1]》
図9は、
図8におけるループ試験実行部の構成例を示す概略図である。
図10は、
図8および
図9の上位装置を含んだネットワークシステムにおいて、ループ試験時の動作例を示すシーケンス図である。
図9に示すループ試験実行部85は、フレーム割り込み部90と、タイマ部91とを備える。タイマ部91には、
図4のタイマ回路64の場合と同様に、TS-1000規格で規定されるループ試験時間を反映した所定の時間(例えば、2秒以下)が設定される。一方、フレーム割り込み部90は、
図4のフレーム割り込み回路63とほぼ同様のものである。
【0072】
ただし、フレーム割り込み部90は、フレーム割り込み回路63と異なり、ループ試験の開始要求を表すOAMフレームFREである開始要求OAMフレーム(第1の開始要求OAMフレーム)FRE(SRQd)を生成する。そして、フレーム割り込み部90は、ループ試験の開始時に開始要求OAMフレーム(第2の開始要求OAMフレーム)FRE(SRQ)を送信してから、ループ試験の終了時に終了要求OAMフレームFRE(ERQ)を送信するまでの期間で、第1の開始要求OAMフレームFRE(SRQd)をタイマ部91に基づく時間間隔で送信する。
【0073】
図10には、
図6の場合とほぼ同様のシーケンスが示される。ただし、
図6のステップS201の代わりに、
図10のステップS202が設けられる。ステップS202において、上位装置15のフレーム割り込み部90は、開始要求OAMフレーム(第1の開始要求OAMフレーム)FRE(SRQd)を、タイマ部91に基づく時間間隔(T1)で送信する。光トランシーバ16は、当該開始要求OAMフレームFRE(SRQd)を開始要求保守フレームFRS(SRQ)に変換して、下位装置17へ送信する。これにより、
図6の場合と同様に、下位装置17のタイマ(T2)を、タイムアウトする前に再起動させることができる。
【0074】
《上位装置の詳細[方式2]》
図11は、
図8の上位装置を含んだネットワークシステムにおいて、ループ試験時の
図10とは異なる動作例を示すシーケンス図である。
図11の例では、ループ試験実行部85は、ループ試験の開始要求の送信、テストフレームの送信、ループ試験の終了要求の送信からなるループ試験を2回行っている(ステップS101a~S103aおよびステップS101b~S103b)。この際に、ループ試験実行部85は、各ループ試験を、下位装置17のタイマ(T2)がタイムアウトしない程度の短い時間内に行う。
【0075】
具体的には、ループ試験実行部85は、例えば、開始要求OAMフレームFRE(SRQ)を下位装置17へ送信したのち(ステップS101a)、TS-1000規格で規定されるループ試験時間内(例えば、2秒以内)に、終了要求OAMフレームFRE(ERQ)を下位装置17へ送信すればよい(ステップS103a)。これにより、上位装置15は、下位装置17のタイマ(T2)がタイムアウトする前にループ試験を終了することができる。
【0076】
《実施の形態2の主要な効果》
以上、実施の形態2の方式を用いることでも、実施の形態1の場合と同様に、代表的には、IEEE 802.3ah規格に対応する上位装置15と、TS-1000規格に対応する下位装置17との間で、ループ試験を正常に行わせることが可能になる。また、
図11の方式を用いると、仮に、下位装置17が開始要求に応じてタイマ(T2)を再起動する機能を備えない場合であっても対応できる。ただし、実施の形態2の方式では、上位装置15aに対する若干の変更(例えば、ソフトウェアの変更)が必要とされ得るため、この観点では、実施の形態1の方式が有益となる。
【0077】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 上位ネットワーク
11 下位ネットワーク
12 光ファイバ
15,15a 上位装置
16 光トランシーバ
17 下位装置
18 ユーザ端末
19 イーサネットケーブル
22,33 プリアンブル
23 制御情報
24 状態情報
25 管理情報
26 CRC
30 ヘッダ
31 ペイロード(EFMデータ)
32 FCS
34 宛先MACアドレス
35 送信元MACアドレス
36 タイプ
40 サブタイプ
41 フラグ
42 コード
43 データ
44 TLV
45 電気信号インタフェース
46 ロジック回路
47 アナログフロントエンド回路
48 光信号インタフェース
49 CPU
51 速度変換回路
53 フレーム処理回路
55 ドライバ
56 ポストアンプ
60a,60b フレームバッファ
61 フレーム識別回路
62 フレーム変換回路
63 フレーム割り込み回路
64 タイマ回路
80 フレームインタフェース
81 中継処理回路
82 FDB
83 管理部
85 ループ試験実行部
90 フレーム割り込み部
91 タイマ部
CNe 電気コネクタ
CNo 光コネクタ
FRE OAMフレーム
FRE(SRQ) 開始要求OAMフレーム
FRE(SRS) 開始応答OAMフレーム
FRE(ERQ) 終了要求OAMフレーム
FRE(ERS) 終了応答OAMフレーム
FRS 保守フレーム
FRS(SRQ) 開始要求保守フレーム
FRS(SRS) 開始応答保守フレーム
FRS(ERQ) 終了要求保守フレーム
FRS(ERS) 終了応答保守フレーム
LD レーザダイオード
PD フォトダイオード
PT ポート