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特許7285829近赤外発光蛍光体、蛍光体混合物、発光素子、および発光装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】近赤外発光蛍光体、蛍光体混合物、発光素子、および発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/80 20060101AFI20230526BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20230526BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20230526BHJP
   C09K 11/63 20060101ALI20230526BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20230526BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20230526BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230526BHJP
【FI】
C09K11/80
C09K11/08 J
C09K11/59
C09K11/63
C09K11/64
C09K11/79
H01L33/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020515480
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2019017206
(87)【国際公開番号】W WO2019208562
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2018082591
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207089
【氏名又は名称】大電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】丹野 裕明
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104446430(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103820859(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108998026(CN,A)
【文献】特開2014-094996(JP,A)
【文献】特表2013-533359(JP,A)
【文献】特開平05-156246(JP,A)
【文献】特開2008-174621(JP,A)
【文献】Crystal Growth & Design,2012年,Vol. 12,pp. 4752-4757
【文献】Applied Optics,2014年,Vol. 53, No. 5,pp. 907-914
【文献】Journal of the American Ceramic Society,2017年,Vol. 100,pp. 4033-4044
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00- 11/89
H01L 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Y,Lu)3-x-y Ga 12:(Cr,(Yb,Nd))(0.05<x<0.3、0≦y<0.3、(Y,Lu)は少なくともYを含み(Yb,Nd)はYb及びNdを共に含む。但し、y=0のときはLu含み、y≠0のときはLu含まない。)で表されることを特徴とする
近赤外線発光蛍光体。
【請求項2】
請求項1に記載の近赤外線発光蛍光体において、
y=0であることを特徴とする
近赤外線発光蛍光体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の近赤外線発光蛍光体を含む蛍光体混合物であって、
Al12:Ce蛍光体、CaAlSiN蛍光体、SrCaAlSiN蛍光体、ScBO:Cr蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体、(Lu, Y, Ga)3Al512:Ce蛍光体、La3Si611:Ce蛍光体、α-サイアロン蛍光体から成る群から選択される1種以上を含み、少なくともYAl12:Ce蛍光体を含むことを特徴とする
蛍光体混合物。
【請求項4】
請求項3に記載の蛍光体混合物において、
ScBO:Cr蛍光体および/または(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体を含むことを特徴とする
蛍光体混合物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の蛍光体混合物において、
CaAlSiN蛍光体、SrCaAlSiN蛍光体、および(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体から成る群から選択される少なくともいずれかを含むことを特徴とする 蛍光体混合物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれかに記載の蛍光体混合物において、
重量比率で、YAl12:Ce蛍光体:前記近赤外線発光蛍光体が、1:1~1:10であることを特徴とする
蛍光体混合物。
【請求項7】
請求項4または5に記載の蛍光体混合物において、
重量比率で、YAl12:Ce蛍光体:(ScBO:Cr蛍光体および/または(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体)が、1:1~1:10であることを特徴とする
蛍光体混合物。
【請求項8】
請求項5に記載の蛍光体混合物において、
重量比率で、YAl12:Ce蛍光体:(CaAlSiN蛍光体および/またはSrCaAlSiN蛍光体)が、1:0.1~1:1であることを特徴とする
蛍光体混合物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の近赤外線発光蛍光体または請求項3~8のいずれかに記載の蛍光体混合物を備えることを特徴とする
発光素子。
【請求項10】
請求項1または2に記載の近赤外線発光蛍光体または請求項3~8のいずれかに記載の蛍光体混合物を備えることを特徴とする
発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線の波長領域で発光する蛍光体に関し、特に発光特性に優れた近赤外線発光蛍光体およびそれを使用した蛍光体混合物、発光素子、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光体は、優れた発光特性を有すると共に、非常に省エネルギーで発光することから、環境面においても注目されている材料である。特に、近年の省電力に対する社会ニーズの増大に伴って、蛍光体の優れた省エネルギー性を活かして、既存のランプに対する代替ニーズが高い。近赤外光は生体への光透過性が高く、非破壊計測への応用が期待されている。また近赤外広帯域光源は多変量解析に適し、成分分析などへの応用が期待されている。特に広帯域な発光分布を有する光源にはLEDのようなシャープな発光の組み合わせより蛍光体のようなブロードな発光スペクトルを組み合わせる光源が強く望まれているところである。
【0003】
このようなランプを実現するためには、発光特性に優れた各種波長領域の蛍光体が必要であるが、とりわけ、近赤外線の波長領域で発光する蛍光体(近赤外線発光蛍光体)については、他の波長領域の蛍光体と比べて発光特性が十分とは言えず、さらに発光特性に優れたものが求められている。
【0004】
従来の近赤外線発光蛍光体としては、InBO3:Cr、Y3Al5O12:Cr、Y3Ga5O12:Cr、Gd3Al5O12:Cr、Gd3Ga5O12:Crなどのクロム賦活蛍光体が知られており、これらの蛍光体に含まれるクロム元素の濃度を変化させても254nm励起強度は変化しなかったことが報告されている(非特許文献1参照)。
【0005】
特に、上記のY3Al5O12:Crのクロム元素のモル配合比率については、Cr=0.0005~0.008としたものや(特許文献1参照)、Cr=0.33~2%(すなわち0.0033~0.02)としたものや(特許文献2参照)、Cr=0.0005~0.05としたものが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平07-286171号公報
【文献】米国特許第5202777号
【文献】特開平06-73376号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】第32回照明学会全国大会講演論文集(平成11年度)47頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の近赤外線発光蛍光体は、他の発光色と比べて発光強度が十分なものとは言えず、より優れた発光強度のものが要求されている。特に広帯域で発光するランプとしての用途では、蛍光体に対してハイパワーおよび持続稼動が高水準で要求されており、強い発光強度が必要とされている。
【0009】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、優れた発光強度を発揮する新しいタイプの近赤外線発光蛍光体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、クロム賦活蛍光体に関して、クロム元素の配合割合について従来には無い所定の範囲で構成された蛍光体が、ピーク的に高い近赤外線を発光することを見出し、本発明を導き出した。さらに、当該蛍光体と他のある種の蛍光体を含む蛍光体混合物が、広い範囲の近赤外線領域にわたってブロードな発光をすることも見出し、本発明を導き出した。
【0011】
かくして、本願に開示する近赤外線発光蛍光体は、一般式(Y,Lu,Gd)3-x-y(Ga,Al,Sc)12:(Cr,(Yb,Nd))(0.05<x<0.3、0≦y<0.3)で表される。また、本願に開示する蛍光体混合物は、当該近赤外線発光蛍光体を含む蛍光体混合物であって、YAl12:Ce蛍光体、CaAlSiN蛍光体、SrCaAlSiN蛍光体、ScBO:Cr蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体、(Lu, Y, Gd)Al12:Ce蛍光体、LaSi11:Ce蛍光体、α-サイアロン蛍光体から成る群から選択される少なくともYAl12:Ce蛍光体を含むものである。また、本願に開示する発光素子は、当該近赤外線発光蛍光体または当該蛍光体混合物を備えるものである。また、本願に開示する発光装置は、当該近赤外線発光蛍光体または当該蛍光体混合物を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1の蛍光体のX線回折パターンである。
図2】本発明の実施例1の蛍光体から得られた発光特性である。
図3】本発明の実施例2の蛍光体から得られた発光特性である。
図4】本発明の実施例3の蛍光体のX線回折パターンである。
図5】本発明の実施例3の蛍光体から得られた発光特性である。
図6】本発明の実施例4の蛍光体のX線回折パターンである。
図7】本発明の実施例5の蛍光体のX線回折パターンである。
図8】本発明の実施例5の蛍光体から得られた発光特性である。
図9】本発明の実施例6の蛍光体のX線回折パターンである。
図10】本発明の実施例6の蛍光体から得られた発光特性である。
図11】本発明の実施例7の蛍光体のX線回折パターンである。
図12】本発明の実施例7の蛍光体から得られた発光特性である。
図13】本発明の実施例7の蛍光体から得られた発光特性である。
図14】本発明の実施例7の蛍光体から得られた発光特性である。
図15】本発明の実施例7の蛍光体から得られた発光特性である。
図16】本発明の実施例7の蛍光体から得られた発光特性である。
図17】本発明の実施例8の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
図18】本発明の実施例8の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
図19】本発明の実施例9の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
図20】本発明の実施例9の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
図21】本発明の実施例9の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
図22】本発明の実施例9の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
図23】本発明の実施例10の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
図24】本発明の実施例10の蛍光体混合物から得られた発光特性である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る近赤外線発光蛍光体は、一般式(Y,Lu,Gd)3-x-y(Ga,Al,Sc)12:(Cr,(Yb,Nd))(0.05<x<0.3、0≦y<0.3)で表されるものである。結晶構造としては、ガーネット構造を有する。イッテルビウム(Yb)やネオジム(Nd)は必ずしも必須元素ではないが、イッテルビウム(Yb)やネオジム(Nd)を加えることでさらに1000nm領域での発光も得られるという優れた効果を奏する(後述の実施例参照)。当該1000nm領域の発光については、特に、太陽電池関連技術において、太陽電池の効率向上が可能となる光源として、当該1000nm領域の発光強度が高い光源が従来から求められている。このことから、本発明に係る近赤外線発光蛍光体は、このようにイッテルビウム(Yb)やネオジム(Nd)を加えることによって得られる当該1000nm領域の発光強度が高い発光を太陽電池に利用することによって、太陽電池の効率性を大幅に向上させることが可能となる。すなわち、本発明に係る近赤外線発光蛍光体は、その幅広い用途の一つとして、太陽電池の光源としても利用可能なものであり、優れた効果を発揮することができる。
【0014】
このようなことから、本発明に係る近赤外線発光蛍光体は、イッテルビウム(Yb)やネオジム(Nd)を含まない場合も対象であり、その場合の一般式は、上記一般式においてy=0とした場合に該当し、一般式(Y, Lu, Gd)3-x(Ga, Al, Sc)12:Cr(0.05<x<0.3)で表されるものである。結晶構造としては、同じく、ガーネット構造を有する。
【0015】
励起源としては、近赤外線領域よりも短波長であれば特に限定されないが、好ましくは、波長200nm~380nmの紫外線領域や、波長380~450nmの紫色可視光や、波長450~495 nmの青色可視光を用いることである。このことから、例えば、紫外線発光蛍光体や、青色発光蛍光体を励起源として利用することができる。
【0016】
本発明に係る近赤外線発光蛍光体は、この励起源からの照射によって、波長550nm~950nmに発光ピークを有する演色性の高い発光スペクトルを示す橙色可視光~赤色可視光~近赤外線が発光される。なお、本発明の近赤外線発光蛍光体は、上記の波長550nm~950nmに発光ピークを有することから、本発明の近赤外線発光蛍光体で定義される近赤外線とは、近赤外線(750nm~1400nm)を主体とする波長領域を意味するものであり、橙色可視光および赤色可視光も含むものである。
【0017】
このように、本発明に係る近赤外線発光蛍光体は、橙色可視光および赤色可視光も含む近赤外線(750nm~1400nm)を高い発光強度で発光するものであり、発光素子、発光装置などに利用することができる。
【0018】
このような本発明に係る発光装置の一態様としては、本発明に係る近赤外線発光蛍光体と、近紫外光を発光する発光素子を含んで構成することができる。本発明に係る近赤外線発光蛍光体が、近紫外光を発光する発光素子から近紫外線を照射されることによって、効率的に近赤外線を発光する装置を構成することができる。また、他の公知の蛍光体と組み合わせることによって、太陽光に近い白色光源としての白色光発光装置に利用することもできる。
【0019】
さらに、本発明者は、本発明に係る近赤外線発光蛍光体を、他の特定の蛍光体と混合することによって、よりブロードな(フラットな)近赤外線発光が実現されることを確認している。例えば、本発明に係る近赤外線発光蛍光体と、YAl12:Ce蛍光体と、CaAlSiN蛍光体と、ScBO:Cr蛍光体との混合物としての蛍光体混合物を構成することによって、よりブロードな(フラットな)近赤外線発光が実現される(後述の実施例参照)。
【0020】
このように従来では得られなかった優れた近赤外線発光を生じるメカニズムは未だ詳細には解明されていないが、本発明に係る近赤外線発光蛍光体の各構成元素が最適なバランスで配合されていることによって、結晶性が高められ、優れた発光特性が発揮されるという結晶構造が形成されているものと推察される。
【0021】
このような本発明に係る近赤外線発光蛍光体の好適な一態様としては、一般式Y3-xGa12 : Cr、(Y, Lu)3-xGa12 : Cr(例えば、Y2.9-zLuGa12 : Cr0.1(zは、0≦z≦2.9))、Y3-xScGa12 : Cr、Lu3-xGa12 : Cr、Gd3-xGa12 : Cr、Lu3-xAl12 : Cr、Y3-xAl12 : Crで表されるものが挙げられる(xは、0.05<x<0.3)。この他にも、YbやNdを含む構成としては、一般式Y3-x-yAl12 : Cr,Yb、Y3-x-yAl12 : Cr,Nd、Y3-x-yAl12 : Cr,(Yb,Nd)、Y3-x-yGa12 : Cr,Yb、Y3-x-yGa12 : Cr,Nd、Y3-x-yGa12 : Cr,(Yb,Nd)で表されるものが挙げられる(yは、0≦y<0.3)
【0022】
上記一般式で示される各構成元素の組成比は、出発原料の原料モル組成比から定められるものである。すなわち、上記一般式中に定義された組成比xは、出発原料におけるCrの原料モル組成比を表している。また、上記一般式中に定義された組成比(3-xーy)は、出発原料における(Y, Lu, Gd)の原料モル組成比を表している。(Yb,Nd)についても同様に、その組成比yは、出発原料における(Yb,Nd)の原料モル組成比を表している。
【0023】
上記(Y, Lu, Gd)という表記は、Y, Lu, およびGdのうち少なくとも1つの元素を含有することを示す。すなわち、(Y, Lu, Gd)という表記は、Y, Lu, およびGdのうちのいずれか1つの元素が含まれる場合もあり、Y, Lu, およびGdのうちの2種類の元素が含まれる場合もあり、Y, Lu, およびGdの全ての元素が含まれる場合もあることを示す。(Yb,Nd)という表記についても同様であり、Yb、およびNdのうち少なくとも1つの元素を含有することを示す。
【0024】
このような優れた特性を有する本発明に係る近赤外線発光蛍光体を合成する方法は、特に限定されないが、例えば、発光センターのCr源と、Y源、Lu源、Gd源のうちの一または複数と、Ga源、Al源、Sc源のうちの一または複数を、乾式或いは湿式法を用いて均一混合し、それを還元または酸化雰囲気で焼成することにより製造することができる。
【0025】
当該各原料化合物については、本発明に係る近赤外線発光蛍光体の構成元素(例えば、Cr、Y、Lu、Gd、Ga、Al、Sc等)が含有されている化合物を、所望とする構成元素の近赤外線発光蛍光体が得られるように(構成元素が漏れないように)用いれば、特に制限はされない。
【0026】
このような原料化合物の一例としては、近赤外線発光蛍光体の構成元素を含有する酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物等を用いることができる。例えば、近赤外線発光蛍光体の構成元素の1つであるクロム元素(Cr)に関しては、原料化合物の1つとしては、酸化クロム等を用いることが可能である。本発明に係る近赤外線発光蛍光体を製造する際に、当該各原料化合物は熱処理されるため、当該熱処理によって、最終的には当該各原料化合物から構成元素だけが残り、原料化合物が酸化物、水酸化物、又は炭化物であるかどうかに依存することはなく、本発明に係る所望とする近赤外線発光蛍光体が形成される。
【0027】
このようにして得られた本発明に係る近赤外線発光蛍光体は、それ自体として上述の優れた特性を有するものであるが、さらに、他の蛍光体と混合することによって、より広い範囲の近赤外線領域にわたってブロードな発光をする蛍光体混合物として利用することができる。
【0028】
このような本発明に係る蛍光体混合物としては、上述の近赤外線発光蛍光体ScBO:Crを含むと共に、YAl12:Ce蛍光体、CaAlSiN蛍光体、SrCaAlSiN蛍光体、ScBO:Cr蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体、(Lu, Y, Gd)Al12:Ce蛍光体、LaSi11:Ce蛍光体、α-サイアロン蛍光体から成る群から選択される少なくともYAl12:Ce蛍光体を含むものである。
【0029】
すなわち、本発明に係る蛍光体混合物は、本近赤外線発光蛍光体と、少なくともYAl12:Ce蛍光体から構成される。
【0030】
好ましくは、さらにScBO:Cr蛍光体および/または(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体を含むことであり、よりブロードな(フラットな)近赤外線発光が得られる。さらに好ましくは、CaAlSiN蛍光体、SrCaAlSiN蛍光体、および(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体から成る群から選択される少なくともいずれかを含むことであり、さらにブロードな(フラットな)近赤外線発光が得られる。
【0031】
また、本発明に係る蛍光体混合物は、混合される各蛍光体の重量比率は特に限定されないが、好ましくは、YAl12:Ce蛍光体:前記近赤外線発光蛍光体が、1:1~1:10であり、より好ましくは、1:1~1:5であり、例えば、1:4とすることができ、さらにブロードな(フラットな)近赤外線発光が得られる。
【0032】
また、本発明に係る蛍光体混合物がScBO:Cr蛍光体および/または(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体を含む場合には、混合される各蛍光体の重量比率は特に限定されないが、好ましくは、重量比率で、YAl12:Ce蛍光体:(ScBO:Cr蛍光体および/または(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体)が、1:1~1:10であり、より好ましくは、1:1~1:6であり、例えば、1:6とすることができ、さらにブロードな(フラットな)近赤外線発光が得られる。
【0033】
また、本発明に係る蛍光体混合物がCaAlSiN蛍光体および/またはSrCaAlSiN蛍光体を含む場合には、混合される各蛍光体の重量比率は特に限定されないが、好ましくは、重量比率で、YAl12:Ce蛍光体:(CaAlSiN蛍光体および/またはSrCaAlSiN蛍光体)が、1:0.1~1:1であり、より好ましくは、1:0.1~1:0.5であり、例えば、1:0.1とすることができ、さらにブロードな(フラットな)近赤外線発光が得られる。
【0034】
本発明に係る蛍光体混合物は、この励起源からの照射によって、波長550nm~950nmに発光ピークを有するブロードな(フラットな)発光スペクトルを示す橙色可視光および赤色可視光も含む近赤外線(750nm~1400nm)を高い発光強度で発光することができ、各種の発光素子や発光装置などに利用することができる。
【0035】
本発明の特徴を更に明らかにするため、以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例によって制限されるものではない。
【0036】
(実施例1)
(Y3-xGa12 : Crの合成)
原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3を最終的なCr:Y:Ga:Oのモル組成比が、0.08:2.92:5:12、0.10:2.90:5:12、0.12:2.88:5:12、0.15:2.85:5:12、0.20:2.80:5:12となるように秤量し、乳鉢を用いて混合した。この混合物をアルミナ製坩堝にいれ、電気炉に大気中1500℃で5時間焼成した。焼成物を水洗浄、乾燥、分級処理後、実施例1に該当する近赤外線発光蛍光体を得た。線源がCuKα線のX線回折装置(XRD6100、島津製作所社製)を用いてX線回折パターンを測定した。蛍光分光光度計(FP6500、JASCO社製)で波長450nm励起による発光特性を測定した。得られた蛍光体のX線回折パターンを図1に示す。図1から、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。
【0037】
また、得られた蛍光体の発光特性を図2(a)に示す。得られた結果から、Crの配合モル比率が0.08~0.2の範囲で確かに高い発光強度が確認された。特に、Crの配合モル比率が0.08~0.15まででは発光強度の増加が特に高いものとなった。
【0038】
さらに、原料として、Crの配合比率が0.3molの場合として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3を最終的なCr:Y:Ga:Oのモル組成比が、0.30:2.7:5:12となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体の波長450nm励起による発光特性を測定した結果を図2(b)に示す。得られた結果から、Crの配合比率を0.3molを超すまで高めた場合には、発光特性が低下したことが確認された。
【0039】
(実施例2)
(Y2.9-zLuGa12 : Cr0.1の合成)
原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Lu2O3を最終的なCr:Y:Lu:Ga:Oのモル組成比が、0.10:2.00:0.90:5:12、0.10:0:2.90:5:12、となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。
【0040】
得られた蛍光体の発光特性を図3に示す。得られた結果から、実施例1の蛍光体に関してYの一部をLuで置換した場合には、発光強度がさらに増加したことが確認された。
【0041】
(実施例3)
(Y3-xScGa12 : Crの合成)
原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Sc2O3を最終的なCr:Y:Sc:Ga:Oのモル組成比が、0.10:2.90:2:5:12、となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンを図4に示す。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。
【0042】
得られた蛍光体の発光特性を図5に示す。得られた結果から、波長740nm前後で鋭いピークの発光を示したことが確認された。
【0043】
(実施例4)
(Lu3-xGa12 : Crの合成)
原料として、Lu2O3、Ga2O3、Cr2O3、Sc2O3を最終的なCr:Lu:Sc:Ga:Oのモル組成比が、0.10:2.90:2:5:12、となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンを図6に示す。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。
【0044】
(実施例5)
(Gd3-xGa12 : Crの合成)
原料として、Gd2O3、Ga2O3、Cr2O3を最終的なCr:Gd:Ga:Oのモル組成比が、0.10:2.90:5:12となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンを図7に示す。図7から、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。
【0045】
得られた蛍光体(図中のGGG:Crで示される)の発光特性を図8に示す。得られた結果から、実施例1の蛍光体(図中のYGG:Crで示される)よりも、より長波長(730nm前後)側で鋭いピークの発光を示したことが確認された。
【0046】
(実施例6)
(Lu3-xAl12 : Crの合成)
原料として、Lu2O3、Al2O3、Cr2O3を最終的なCr:Lu:Ga:Oのモル組成比が、0.10:2.90:5:12となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンを図9に示す。図9から、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。
【0047】
得られた蛍光体(図中のLuAGで示される)の発光特性を図10に示す。得られた結果から、実施例1の蛍光体(図中のYGGで示される)よりも、より短波長(700nm前後)側で鋭いピークの発光を示したことが確認された。
【0048】
(実施例7)
(Y3-xAl12 : Crの合成)
原料として、Y2O3、Al2O3、Cr2O3を最終的なCr:Y:Al:Oのモル組成比が、0.10:2.90:5:12となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンを図11に示す。図11から、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。
【0049】
得られた蛍光体の発光特性を図12に示す。得られた結果から、波長700nm前後で鋭いピークの発光を示したことが確認された。
【0050】
(Y3-x-yGa12 : Cr,Ybの合成)
さらに、上記実施例1の蛍光体組成にイッテルビウム(Yb)を添加した組成の蛍光体について確認した。上記と同様に、原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Yb2O3を最終的なCr:Y:Ga:O:Ybのモル組成比が、0.09:2.90:5:12:0.01となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。得られた蛍光体の発光特性を図13に示す。
【0051】
上記と同様に、上記実施例1の蛍光体組成にイッテルビウム(Yb)を添加した組成の蛍光体について、原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Yb2O3を最終的なCr:Y:Ga:O:Ybのモル組成比が、0.15:2.80:5:12:0.05となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。得られた蛍光体の発光特性を図14に示す(図中のCr-Ybで示される)。また、図14には、実施例1の蛍光体(図中のYGGーrefで示される)の結果も併せて示す。
【0052】
上記得られた結果から、波長700nm前後での鋭いピークの発光を示したことに加えて、波長1000nm前後での鋭いピークの発光も確認された。特に、イッテルビウム(Yb)を含まない実施例1の蛍光体(図14中のYGGーrefで示される)のピーク強度と比較すると、得られた蛍光体(図14中のCr-Ybで示される)は、イッテルビウム(Yb)に由来する波長1000nm前後でのピーク強度が2倍という強さを示した。このように、イッテルビウム(Yb)の添加によって得られる波長1000nm前後での鋭いピークの発光によって、さらに幅広い用途での利用が可能となることが確認された。例えば、本実施例に係る蛍光体は、その幅広い用途の一つとして、太陽電池の光源としても利用可能なものである。本実施例に係る近赤外線発光蛍光体は、このようにイッテルビウム(Yb)を加えることによって得られる当該1000nm領域の発光強度の高い発光を太陽電池に利用することによって、太陽電池の大幅な効率向上が可能となる。
【0053】
(Y3-x-yGa12 : Cr,Ndの合成)
先ず、上記と同様に、上記実施例1の蛍光体組成にイッテルビウム(Yb)を添加した組成の蛍光体について、原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Yb2O3を最終的なCr:Y:Ga:O:Ybのモル組成比が、0.15:2.84:5:12:0.01となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。得られた蛍光体の発光特性を図15の蛍光体(1k-A)として示す。
【0054】
さらに、上記蛍光体(1k-A)組成中のイッテルビウム(Yb)に代替して、ネオジム(Nd)を添加した組成の蛍光体について確認した。上記と同様に、原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Nd2O3を最終的なCr:Y:Ga:O:Ndのモル組成比が、0.15:2.84:5:12:0.01となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。得られた蛍光体の発光特性を図15の蛍光体(1k-B)として示す。
【0055】
上記得られた結果から、ネオジム(Nd)を添加したことにより、波長700nm前後での鋭いピークの発光を示したことに加えて、波長1000nm前後、特に波長900nm前後での鋭いピークの発光も確認された。このように、ネオジム(Nd)の添加によって得られる波長900nm前後での鋭いピークの発光によって、さらに幅広い用途での利用が可能となることが確認された。例えば、本実施例に係る蛍光体は、その幅広い用途の一つとして、太陽電池の光源としても利用可能なものである。本実施例に係る近赤外線発光蛍光体は、このようにネオジム(Nd)を加えることによって得られる当該900nm領域の発光強度の高い発光を太陽電池に利用することによって、太陽電池の大幅な効率向上が可能となる。
【0056】
(Y3-x-yGa12 : Cr,(Yb,Nd)の合成)
先ず、上記蛍光体(1k-A)と同様の元素構成で、Ybのモル組成比を0.006とした蛍光体を合成した。すなわち、イッテルビウム(Yb)を含むがネオジム(Nd)を含まない組成の蛍光体について、原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Yb2O3を最終的なCr:Y:Ga:O:Ybのモル組成比が、0.15:2.844:5:12:0.006となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。得られた蛍光体の発光特性を図16の蛍光体(1k-A2)として示す。
【0057】
さらに、上記蛍光体組成にネオジム(Nd)をモル組成比0.002で添加した組成の蛍光体について確認した。すなわち、イッテルビウム(Yb)およびネオジム(Nd)を共に含む組成の蛍光体について、原料として、Y2O3、Ga2O3、Cr2O3、Yb2O3、Nd2O3を最終的なCr:Y:Ga:O:Yb:Ndのモル組成比が、0.15:2.842:5:12:0.006:0.002となるように秤量し、後は上述の実施例1と同様に、近赤外線発光蛍光体を製造し、そのX線回折パターンおよび発光特性を得た。得られた蛍光体のX線回折パターンから、得られた蛍光体において異相は認められず、高品位な結晶が形成されたことが確認された。得られた蛍光体の発光特性を図16の蛍光体(1k-C)として示す。
【0058】
上記得られた結果から、イッテルビウム(Yb)およびネオジム(Nd)を共に添加したことにより、波長700nm前後での鋭いピークの発光を示したことに加えて、波長1000nm前後、さらに、波長900nm前後での鋭いピークの発光も確認された。このように、イッテルビウム(Yb)およびネオジム(Nd)を共に添加したことによって得られる波長900nm前後での鋭いピークの発光によって、さらに幅広い用途での利用が可能となることが確認された。例えば、本実施例に係る蛍光体は、その幅広い用途の一つとして、太陽電池の光源としても利用可能なものである。本実施例に係る近赤外線発光蛍光体は、このようにイッテルビウム(Yb)およびネオジム(Nd)を加えることによって得られる波長1000nm前後、波長900nm領域の発光強度の高い発光を太陽電池に利用することによって、太陽電池の大幅な効率向上が可能となる。
【0059】
(実施例8)
(2種の蛍光体混合物)
以下、上記実施例1で得た蛍光体Y3-xGa12 : Crを、他の蛍光体と混合して蛍光体混合物を得た。本実施例では、2種類の蛍光体を混合した。すなわち、近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1とYAl12:Ce蛍光体を、重量比率でYAl12:Ce蛍光体:近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1を1:3で混合した蛍光体混合物と、1:4で混合した蛍光体混合物とを得た。得られた蛍光体混合物について、波長450nm励起による発光特性の測定結果を各々図17および図18に示す。
【0060】
得られた蛍光体混合物は、波長550nm~850nmの広範囲にわたりフラットな発光スペクトルで近赤外線を発光することが確認された。近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1の配合比率がより高い上記重量比率が1:4の場合には、よりフラットな発光スペクトルで近赤外線を発光することが確認された。
【0061】
(実施例9)
(3種の蛍光体混合物)
本実施例では、3種類の蛍光体を混合した。すなわち、重量比で、(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体:YAl12:Ce蛍光体:近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1を1:1:1で混合した蛍光体混合物と、YAl12:Ce蛍光体:(Ba,Sr)SiO:Eu蛍光体:近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1を1:0.1:4で混合した蛍光体混合物および1:0.5:4で混合した蛍光体混合物と、YAl12:Ce蛍光体:近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1:ScBO:Cr蛍光体を1:4:6で混合した蛍光体混合物とを得た。得られた蛍光体混合物について、波長450nm励起による発光特性の測定結果を各々図19図22に示す。
【0062】
得られた蛍光体混合物は、波長550nm~850nmの広範囲にわたりフラットな発光スペクトルで近赤外線を発光することが確認された。近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1の配合比率がより高い上記重量比率が1:4の場合や、ScBO:Cr蛍光体を混合させた混合物では、よりフラットな発光スペクトルで近赤外線を発光することが確認された。
【0063】
(実施例10)
(4種の蛍光体混合物)
本実施例では、4種類の蛍光体を混合した。すなわち、重量比で、YAl12:Ce蛍光体:近赤外線発光蛍光体Y2.9Ga12 : Cr0.1:CaAlSiN蛍光体:ScBO:Cr蛍光体を1:4:0.1:6で混合した蛍光体混合物を得た。また、同じ重量比率で、CaAlSiN蛍光体をSrCaAlSiN蛍光体に替えて混合した蛍光体混合物を得た。得られた蛍光体混合物について、波長450nm励起による発光特性の測定結果を各々図23および図24に示す。
【0064】
得られた蛍光体混合物は、いずれも、波長550nm~850nmの広範囲にわたりフラットな発光スペクトルで近赤外線を発光することが確認された。いずれも良好な発光を示しており、特に、CaAlSiN蛍光体がより高い発光強度で発光したことが確認された。
【0065】
得られた結果から、各実施例の蛍光体混合物では、これまでにはない高い発光強度を有するフラットな近赤外線が発光されたことから、その用途の一例としては、可視から近赤外光が必要な多変量解析用のランプや太陽電池の光源等として利用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図22
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図24