(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】カングレロール四ナトリウムの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07H 19/20 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
C07H19/20
(21)【出願番号】P 2020531020
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 CN2018120184
(87)【国際公開番号】W WO2019114674
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】201711318174.2
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518020370
【氏名又は名称】亜宝薬業集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】YABAO PHARMACEUTICAL GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.43 Fumin Road,Ruicheng County,Yuncheng,Shanxi 044600,China
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】唐 方輝
(72)【発明者】
【氏名】鮑 継宇
(72)【発明者】
【氏名】高 軍峰
(72)【発明者】
【氏名】譚 宙広
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105061431(CN,A)
【文献】特表平08-506335(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106674322(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カングレロール四ナトリウムの調製方法であって、
【化1】
有機溶媒の中で、化合物Cを、オキシ塩化リンと反応させ、化合物Bを含む反応液
を得るステップ(1)、
前記ステップ(1)で得られた前記化合物Bを含む反応液を、酸結合剤の存在下で、クロドロン酸またはその単塩と反応させた後、重炭酸ナトリウムと反応させて、カングレロール四ナトリウムを含む反応液
を得るステップ(2)、及び、
前記ステップ(2)で得られた前記カングレロール四ナトリウムを含む反応液から、カングレロール四ナトリウムを得るステップ(3)を含み、
ここで、前記ステップ(3)の中
、前記ステップ(2)で得られた前記カングレロール四ナトリウムを含む反応液を、カラムクロマトグラフィーにより分離精製し、溶離剤で溶離して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を回収し、凍結乾燥して、カングレロール四ナトリウム
を得る、調製方法。
【請求項2】
前記ステップ(2)で得られた前記カングレロール四ナトリウムを含む反応溶液を、カラムクロマトグラフィーにより一回だけで分離精製し、溶離剤で溶離して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液が得られ、凍結乾燥することにより、カングレロール四ナトリウムを得ることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)において、前記有機溶媒は、アセトニトリル、リン酸トリエチル又はリン酸トリメチルからなる群より選ばれる一種又はそれらの任意の組み合わせであり、
前記化合物Cと前記オキシ塩化リンとのモル比が1:1~1:3であり、
前記化合物Cを、塩基存在下でオキシ塩化リンと反応させ、
前記塩基は、1,8-ビス-ジメチルアミノナフタレン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンからなる群より選ばれる一種又はそれらの任意の組み合わせであり、
前記化合物Cと前記塩基とのモル比は1:0.1~1:2であり、
前記ステップ(1)における反応温度が-30~20℃であり、反応時間が1~24時間で
あることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記ステップ(1)における反応温度が-10~10℃であり、反応時間が3~10時間であることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記ステップ(2)において、前記酸結合剤はトリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン又はN、N-ジイソプロピルエチルアミンからなる群より選ばれる一種又はそれらの任意の組み合わせであり、前記化合物Cと前記酸結合剤とのモル比は1:2~1:8であり、
前記化合物Cと前記クロドロン酸又はその単塩とのモル比は1:1.1~1:3.5であり
、前記クロドロン酸単塩は、クロドロン酸トリ-n-ブチルアミン塩、クロドロン酸一ナトリウム塩、クロドロン酸一カリウム塩からなる群より選ばれる一種又はそれらの任意の組み合わせであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の調製方法。
【請求項6】
前記ステップ(2)において、前記化合物Cと前記重炭酸ナトリウムとのモル比は1:10~1:30であり
、
前記ステップ(2)において、前記ステップ(1)で得られた前記化合物Bを含む反応液を、前記クロドロン酸又はその塩と反応させる際の反応温度が-10~30℃であり、反応時間が1~5時間であり、重炭酸ナトリウムと反応させる際の反応温度が10~40℃であり、反応時間が10~40時間であることを特徴とする、請求項1~
5の何れかに記載の調製方法。
【請求項7】
前記ステップ(3)において、前記C18シリカゲルフィラーの粒径は、20~150ミクロンの範囲であり
、前記C18シリカゲルフィラーと前記化合物Cとの質量比は35:1~130:1であり
、前記溶離剤は、メタノールの体積濃度が0.1%-10%のメタノール水溶液、アセトニトリルの体積濃度が0.1%-10%のアセトニトリル水溶液又は水から選ば
れることを特徴とする、請求項1~
6の何れかに記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年12月12日に中国知的財産権局に出願された、「カングレロール四ナトリウムの調製方法」と題された、第201711318174.2号の中国特許出願の優先権を主張するが、その全内容は引用により、本願に組み込まれる。
【0002】
本願は医薬品化学合成技術分野に属する。具体的には、カングレロール四ナトリウムの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カングレロール四ナトリウム(cangrelor tetrasodium)は、P2Y12受容体阻害剤であり、AstraZeneca社によって製造され、Medicines社が研究開発の許可を獲得した。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の患者の血栓性心血管疾患の件を減らす為に、米国食品医薬品局(FDA)は、2015年6月22日に、商品名Kengrealであるカングレロール四ナトリウムの点滴静注剤の販売を承認した。カングレロールは、クロピドグレルやプラスグレルなどの抗血小板薬と異なり、非チエノピリジン系アデノシン三リン酸類似体であり、P2Y12血小板受容体に直接作用して、血小板凝集を迅速に阻害することができ、そして、即効性があり、可逆的であり、代謝が早く、出血のリスクが少ないという利点がある。
【0004】
カングレロール四ナトリウムは、化学名がN-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]-5’-アデニル酸の、ジクロロメチレンジホスフェートを含む一無水物の、四ナトリウム塩であり、その構造式は、
【化1】
である。
【0005】
文献J.Med.Chem.1999、12、213-220は、カングレロール四ナトリウムの調製方法が報告されており、合成経路は、
【化2】
である。
【0006】
具体的に、当該合成経路は、化合物1がオキシ塩化リンと反応してなる反応処理液を、カラムクロマトグラフィーのカラムDowex 50WX8(H+型)を通過して、アンモニア水で溶離し、溶離液を凍結乾燥して化合物2を得るステップ;化合物2が水を含むので、ピリジンと共沸することで水を除去し、そしてDMF中でCDIと反応して化合物3を得るステップ;次に、化合物3とクロドロン酸トリ-n-ブチルアミン塩とを反応させて粗生成物を得るステップ;粗生成物を、デキストランゲルDEAE-Sephadexにより精製し、重炭酸トリエチルアンモニウムまたは重炭酸アンモニウム溶液で溶離し、溶離液を凍結乾燥して濃縮したところ、検出を行い、主に生成物を含む溶離液を集めて凍結乾燥し、カングレロールアンモニウム塩を得るステップ;カングレロールアンモニウム塩は、塩を転換し、分離、洗浄、凍結乾燥により、カングレロール四ナトリウムを得るステップ;を含む。その調製方法については、長いルートと複雑なプロセスを持ち、複数の精製と凍結乾燥が必要であり、デキストランゲルによる精製効果が良好ではなく、化合物1からカングレロールアンモニウム塩までの収率はわずか4%であり、そして、大量の有機溶剤の使用が環境問題を起こす。
【0007】
特許文献CN1613864Aは、未反応の原料および生成物を効果的に分離できない問題を解決するために、ヌクレオチド三リン酸三ナトリウム塩(すなわち、カングレロール三ナトリウム塩)の精製および調製方法が開示されており、反応式は、
【化3】
である。
【0008】
主なステップは、ヌクレオチド一リン酸アンモニウム塩を原料とし、J.Med.Chem.1999,12,213-220の合成法を参照して、カングレロールを含む反応処理液を得て、陰イオン交換樹脂を使用して粗分離を行い、重炭酸アンモニウム水溶液で溶離し、溶離液を凍結乾燥して、少量の純粋のヌクレオチド三リン酸アンモニウム塩(即ち、カングレロールアンモニウム塩)および大量の不純物を得るステップ;不純物には、14-18%の、未反応の原料であるヌクレオチド一リン酸アンモニウム塩を含み、大きな孔径強酸性陽イオン交換樹脂により不純物を分離・精製し、流出物と重炭酸アンモニウムとを反応させて、ヌクレオチド三リン酸アンモニウム塩を含む溶離液を得た後、その溶離液を凍結乾燥し、樹脂に残った原料を回収するステップ;純粋のヌクレオチド三リン酸アンモニウム塩を合わせ、重炭酸ナトリウム水溶液で置換し、ヌクレオチド三リン酸三ナトリウム塩(すなわち、カングレロール三ナトリウム塩)を得て凍結乾燥を行うステップ;を含む。この調製方法は、カングレロールアンモニウム塩の収率が50%~58%に向上させたが、例えば、反応が不完全である為、反応溶液に未反応の原料が大量含まれること;中間体として潮解しやすいカングレロールアンモニウム塩を形成する必要があること;プロセスは複雑であり、精製および凍結乾燥の回数が増やし、時間を無駄にし、廃棄物の問題も厳しく、大規模な調製には有利ではないこと等の大量の問題がある。
【0009】
特許文献US9295687B1は、カングレロールの不純物が報告されており、その構造式は下記の通り。
不純物A:
【化4】
不純物B:
【化5】
不純物C:
【化6】
不純物D:
【化7】
不純物E:
【化8】
【0010】
原薬のICHガイドラインでは、原薬の中で未知の単一の不純物が0.1%未満であることを要求する。本願の発明者らは、従来の文献の調製方法に従って得られたカングレロールナトリウムは、不純物の含有量がいずれも比較的高く、例えば、不純物Aの含有量は2%を超えており、原薬の品質要件を満たすことができないことを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既存の技術の不備に対して、本願の目的は、新規なカングレロール四ナトリウムの調製方法を提供することであり、合成ルートとプロセスを好適化することで操作を簡略化させ、生成物の収率と純度を向上させ、大規模な調製の要求に満足させる。
【0012】
本願の目的によれば、本願の技術案は、
【化9】
有機溶媒の中で、化合物Cをオキシ塩化リンと反応させ、化合物Bを含む反応液が得られるステップ(1)、
酸結合剤(deacid reagent)の存在下で、ステップ(1)で得られた化合物Bを含む反応液を、クロドロン酸またはその単塩と反応した後、重炭酸ナトリウムと反応してカングレロール四ナトリウムを含む反応液を得るステップ(2)、及び、
ステップ(2)で得られたカングレロール四ナトリウムを含む反応液から、カングレロール四ナトリウムを得るステップ(3)を含み、
ステップ(3)の中、好ましくは、ステップ(2)で得られたカングレロール四ナトリウムを含む反応液を、カラムクロマトグラフィーにより分離精製し、溶離剤で溶離して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を回収し、凍結乾燥してカングレロール四ナトリウムが得られ、より好ましくは、前記カラムクロマトグラフィーはC18シリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、最も好ましくは、ステップ(2)で得られたカングレロール四ナトリウムを含有する反応溶液を、カラムクロマトグラフィーにより一回だけで分離および精製し、溶離剤で溶離して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウム塩の溶離液が得られ、凍結乾燥することにより、カングレロール四ナトリウム塩を得る、カングレロール四ナトリウムの調製方法である。
【0013】
本願において、出発原料としての化合物Cの化学名はN-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]アデノシンであり、CAS番号は163706-58-9である。化合物Cは、市販品を使用してもよく、例えば、J.Med.Chem.1999、12、213-220などの文献に記載された調製方法に従って得ることもできる。
【0014】
好ましくは、ステップ(1)における前記有機溶媒は、アセトニトリル、リン酸トリエチル及びリン酸トリメチルからなる群より選ばれる一種又はそれらの任意の組み合わせである。
【0015】
好ましくは、ステップ(1)における化合物Cとオキシ塩化リンとのモル比は、1:1~1:3である。
【0016】
ステップ(1)において、化合物Cとオキシ塩化リンとの反応は、塩基の非存在下で行っても良く、塩基の存在下で行っても良いが、塩基の存在下で行うことが好適である。好ましくは、前記塩基は、1,8-ビス-ジメチルアミノナフタレン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンから選ばれ;より好ましくは、化合物Cと塩基とのモル比は1:0.1~1:2である。
【0017】
好ましくは、ステップ(1)において、反応温度が-30~20℃であり、反応時間が1~24時間である。より好ましくは、ステップ(1)において、反応温度が-10~10℃であり、反応時間が3~10時間である。
【0018】
本願によれば、ステップ(1)が完成した後で、得られた化合物Bを含む反応液は処理せず、そのまま次のステップに移送できることで、プロセスが大幅に簡素化される。
【0019】
本願の実施形態の一つによれば、ステップ(2)における酸結合剤の定義は、当業者にとって自明なことである。好ましくは、ステップ(2)における酸結合剤は、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン及びN、N-ジイソプロピルエチルアミンからなる群より選ばれる一種又はそれらの任意の組み合わせであり;より好ましくは、化合物Cと酸結合剤とのモル比は1:2~1:8である。
【0020】
本願によれば、ステップ(2)において、化合物Cとクロドロン酸又はその単塩とのモル比は1:1.1~1:3.5であり;好ましくは、化合物Cとクロドロン酸又はその単塩とのモル比は1:1.4~1:2である。クロドロン酸単塩は、クロドロン酸トリ-n-ブチルアミン塩、クロドロン酸一ナトリウム塩、クロドロン酸一カリウム塩などからなる群より選ばれる一種又はそれらの任意の組み合わせである。最も好ましくは、クロドロン酸トリ-n-ブチルアミン塩である。
【0021】
本願によれば、ステップ(2)において、クロドロン酸又はその単塩は、固体状で分割で添加してもよく、ステップ(1)における前記有機溶媒を使用して溶液にして分割で添加しても良い。
【0022】
本願によれば、ステップ(2)において、化合物Cと重炭酸ナトリウムとのモル比は1:10~1:30であり;好ましくは、化合物Cと重炭酸ナトリウムとのモル比は1:15~1:20である。ステップ(2)において、重炭酸ナトリウムは、固体状で分割で添加しても良く、重炭酸ナトリウム水溶液にして添加しても良い。重炭酸ナトリウム水溶液の質量濃度は、通常、1.0%~飽和溶液濃度であり、5%~9%であることが好ましい。
【0023】
本願の実施形態の一つによれば、ステップ(2)において、ステップ(1)で得られた化合物Bを含む反応液を、クロドロン酸又はその単塩と反応させる際の反応温度が-10~30℃であり、反応時間が1~5時間である。ステップ(2)において、重炭酸ナトリウムと反応させる際の反応温度が10~40℃であり、反応時間が10~40時間である。
【0024】
本願が提供された調製方法によれば、ステップ(2)が終了した後、カングレロール四ナトリウムを含む反応液を得る。発明者らは、HPLCにより、この反応液が主に80-85mol%のカングレロール四ナトリウムを含有し、不純物Aであるジナトリウム塩(構造式は下記通り)の含有量が僅か約2-5mol%であることを見出した。
【化10】
不純物Aであるジナトリウム塩
【0025】
ステップ(3)において、前記「C18シリカゲル」とは、オクタデシル基結合シリカゲル(octadecylsilyl silica gel,略称はODSである)を意味し、C18シリカゲルは、シリカゲルをマトリックスとしてオクタデシル官能基を結合するので、炭素含有量と疎水性が高い。カラムクロマトグラフィーのフィラーとしてC18シリカゲルを使用する逆相分離モードでは、非極性または疎水性化合物が強く保持される一方、極性化合物が弱く保持されるので、より早く通過して、成分の分離および精製を実現できる。
【0026】
C18シリカゲルフィラーは市販品であり、例えば、DAISOGEL ODS、YMC ODS、GH GEL ODS、COSMOSILC18、Fuji Chromatorex C18、Silicycle ODS、SKR-10、SEPAX C18等が挙げられ、提供可能なフィラー粒径は1.8ミクロンから300ミクロンまで、又はそれ以上である。
【0027】
本願によれば、ステップ(3)において、大規模調製のコストと効率を考慮すると、C18シリカゲルフィラーの粒径は、20~150ミクロンの範囲から選ばれるのが好ましい。より好ましくは、C18シリカゲルフィラーの粒径は、40~100ミクロンの範囲から選ばれる。
【0028】
本願によれば、ステップ(3)において、安全と環境保護の観点から、溶離剤はメタノールの体積濃度が0.1%-10%のメタノール水溶液、アセトニトリルの体積濃度が0.1%-10%のアセトニトリル水溶液、及び水から選ばれる。好ましくは、溶離剤が水である。本願における「水」とは、医薬用水を意味し、「医薬品製造管理規則」の条件を満たしている。溶離態様は、グラジエント溶離でも良く、アイソクラティック溶離でも良い。
【0029】
本願によれば、ステップ(3)において、C18シリカゲルフィラーと化合物Cとの質量比は35:1~130:1である。好ましくは、C18シリカゲルフィラーと化合物Cとの質量比は60:1~90:1である。
【0030】
選択しうるステップとして、ステップ(3)において、カングレロール四ナトリウム塩を含む反応溶液を、C18シリカゲルカラムクロマトグラフィーを通過させる前に、濾過などの本分野での通常の方法により機械的な不純物を除去することが可能である。
【0031】
選択しうるステップとして、ステップ(3)において、カングレロール四ナトリウムを含む反応溶液を、C18シリカゲルカラムクロマトグラフィーを通過させる前に、抽出により一部の不純物を除去することが可能であり、抽出に用いる溶剤の選択は当業者にとって一般的な操作であるので、ここで余計な記載をしない。
【0032】
発明者らの更なる研究により、ステップ(3)におけるカラムクロマトグラフィーは、C18シリカゲルと類似な物理的および化学的特性を持つ他のフィラーを採用しても、良好な分離および精製結果も達成できることを見出した。
【0033】
本願によれば、以下のステップを含むカングレロール四ナトリウムの調製方法を提供することができる。
【化11】
ステップ(1):有機溶媒の中で、化合物Cをオキシ塩化リンと反応させ、化合物Bを含む反応液が得られ、ここで、反応温度が-30~20℃であり、反応時間が1~24時間であり、前記有機溶媒がアセトニトリル、リン酸トリエチルまたはリン酸トリメチルから選ばれ、前記化合物Cとオキシ塩化リンとのモル比が1:1~1:3である;
ステップ(2):酸結合剤の存在下で、ステップ(1)で得られた化合物Bを含む反応液を、クロドロン酸またはその単塩と反応させ、反応温度が-10~30℃であり、反応時間が1~5時間であり、そして重炭酸ナトリウムと反応させ、反応温度が10~40℃であり、反応時間が10~40時間であることにより、カングレロール四ナトリウムを含む反応液が得られ、
ここで、前記酸結合剤は、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン及びN、N-ジイソプロピルエチルアミンから選ばれ、化合物Cと酸結合剤とのモル比は1:2~1:8であり、前記クロドロン酸単塩は、クロドロン酸トリ-n-ブチルアミン塩、クロドロン酸一ナトリウム塩、クロドロン酸一カリウム塩から選ばれ、化合物Cとクロドロン酸又はその単塩とのモル比は1:1.1~1:3.5であり、化合物Cと重炭酸ナトリウムとのモル比は1:10~1:30である;及び、
ステップ(3):ステップ(2)で得られたカングレロール四ナトリウムを含む反応液を、C18シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、溶離剤で溶離して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を回収し、凍結乾燥して純粋のカングレロール四ナトリウムが得られ、
ここで、前記C18シリカゲルフィラーの粒径範囲が20~150ミクロンであり、C18シリカゲルフィラーと化合物Cとの質量比が35:1~130:1であり、前記溶離剤はメタノールの体積濃度が0.1%-10%のメタノール水溶液、アセトニトリルの体積濃度が0.1%-10%のアセトニトリル水溶液、または水から選ばれる。
【0034】
本願によれば、
前記ステップ(1)における好ましい反応温度が-10~10℃であり、好ましい反応時間が3~10時間である;
前記ステップ(2)において、化合物Cとクロドロン酸又はその単塩とのモル比は、1:1.4~1:2が好ましく、化合物Cと重炭酸ナトリウムとのモル比は1:15~1:20が好ましい;
前記ステップ(3)において、C18シリカゲルフィラーの粒径は40~100ミクロンが好ましく、C18シリカゲルフィラーと化合物Cとの質量比は60:1~90:1が好ましく、溶離剤は水が好ましい。
【0035】
従来技術と比べ、本願は、合成ルートが短く、N-[2-(メチルチオ)エチル]-2-[(3,3,3-トリフルオロプロピル)チオ]アデノシン(化合物C)を出発原料として、2つのステップによるワンポット反応により、カングレロール四ナトリウムを含む反応溶液を得ることができ、反応は十分で、カングレロールアンモニウム塩中間体を形成してから塩を転換する必要が無く、反応条件は穏やかで、操作は簡単である;後処理は、C18シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより一回だけで分離および精製し、溶離液は水又は水を主成分とする低濃度有機溶媒水溶液を採用し、廃棄物が少なく、コストが低く、産物のHPLC純度は99.5%以上であり、原料の品質要件を満たし、収率は70%以上であり、大規模な調製に適している;という利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本願は、さらに以下の実施例を参照することにより説明され、その実施例は、本願の調製方法を詳細に記載した。当業者にとって自明なことは、本願の範囲を離脱しない限り、調製条件について様々な変更が行われる。
【0037】
実施例に用いられる試薬は、特に説明されない限り、市販品である。
【0038】
実施例は、特に説明されない限り、常温(10℃~30℃))下で行う。
【0039】
用いられる器械は、
凍結乾燥機(Shanghai Bilon Instrument Manufacturing Co., Ltd,)、
AV-400核磁気共鳴装置(ドイツのBruker社)、
LC-20AT高速液体クロマトグラフ(島津製作所社)がある。
【0040】
HPLC測定条件:
InertsilODS-2 カラムC18,サイズ5μm,4.6mm×250mm
移動相A:0.05Mでのリン酸アミン溶液(酢酸とトリエチルアミンでpH=7.2に調整)
移動相B:アセトニトリル
HPLCグラジエント:
【表1】
流速:1ml/分
時間:45分
紫外線吸収波長:242nm
【0041】
実施例1
500mLの四つ口フラスコに、化合物C4.7g(10mmol)、リン酸トリエチル90mLおよび1,8-ビスジメチルアミノナフタレン2.1g(10mmol)を加え、-10℃に冷却し、オキシ塩化リン3.1g(20mmol)を滴下した後、保温しながら20時間反応させ、化合物Bを含む反応液を得た。
【0042】
トリ-n-ブチルアミン10.2g(55mmol)、クロドロン酸3.7g(15mmol)及びリン酸トリエチル50mLを混合し、上記の化合物Bを含む反応液に投入して、常温で2時間撹拌した後、質量濃度が8%である重炭酸ナトリウム水溶液315gを加え、常温で12時間撹拌した。
【0043】
濾過を行い、その濾液を、YMC ODS-A C18シリカゲルフィラー(粒径100ミクロン)420gを充填したクロマトグラフィーカラムにより分離精製し、体積濃度5%のメタノール水溶液でアイソクラティック溶離を行って、流速が2.0リットル/時間であり、溶離液を段階的に収集し、HPLCで検出して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を合わせて、凍結乾燥した後、白色粉末状固体であるカングレロール四ナトリウム6.1gを得た。
【0044】
カングレロール四ナトリウムのモル収率が71%、HPLC純度が99.91%であり、不純物Aである二ナトリウム塩の含有量が0.03%であり、不純物Cの含有量が0.02%であり、不純物B、D、Eは検出されていない。NMRデータ:1H-NMR δ(D2O):8.23(1H,s),5.95(1H,d,J=5.6Hz),4.65(1H,m),4.49(1H,m),
4.28(1H,m),4.17(2H,m),3.67(1H,s),3.21(2H,t,J=7.6Hz),2.72(2H,t,J=6.8Hz),2.58(2H,m),2.01(3H,s)。
【0045】
実施例2
500mLの四つ口フラスコに、化合物C4.7g(10mmol)、リン酸トリエチル60mL、アセトニトリル50mLおよびジイソプロピルエチルアミン2.6g(20mmol)を加え、0℃に冷却し、オキシ塩化リン2.3g(15mmol)を滴下した後、保温しながら5時間反応させ、化合物Bを含む反応液を得た。
【0046】
トリ-n-ブチルアミン13.0g(70mmol)、クロドロン酸7.4g(30mmol)及びリン酸トリエチル50mLを混合し、上記の化合物Bを含む反応液に投入して、0℃で4時間撹拌した後、質量濃度が10%である重炭酸ナトリウム水溶液126gを加え、30℃で28時間撹拌した。
【0047】
濾過を行い、その濾液をt-ブチルメチルエーテル200mLで抽出し、得られた水相を、YMC ODS-A C18シリカゲルフィラー(粒径50ミクロン)280gを充填したクロマトグラフィーカラムにより分離精製し、体積濃度5%のアセトニトリル水溶液でアイソクラティック溶離を行って、その流速が2.0リットル/時間であり、溶離液を段階的に収集し、HPLCで検出して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を合わせて凍結乾燥した後、白色粉末状固体であるカングレロール四ナトリウム6.2gを得た。
【0048】
カングレロール四ナトリウムのモル収率が72%であり、HPLC純度が99.94%であり、不純物Aである二ナトリウム塩の含有量が0.02%であり、不純物Cの含有量が0.02%であり、不純物B、D、Eは検出されていない。
【0049】
実施例3
500mLの四つ口フラスコに、化合物C4.7g(10mmol)、リン酸トリエチル90mLおよびジイソプロピルエチルアミン1.3g(10mmol)を加え、10℃に冷却し、オキシ塩化リン3.1g(20mmol)を滴下した後、1時間保温して化合物Bを含む反応液を得た。
【0050】
トリ-n-プロピルアミン4.3g(30mmol)、クロドロン酸4.9g(20mmol,2eq)及びリン酸トリエチル20mLを混合し、上記の化合物Bを含む反応液に投入して、常温で2時間撹拌した後、質量濃度が5%である重炭酸ナトリウム水溶液500gを加え、40℃で20時間撹拌した。
【0051】
濾過を行い、その濾液を、DAISOGEL ODS-BP C18シリカゲルフィラー(粒径50ミクロン)165gを充填したクロマトグラフィーカラムにより分離精製し、精製水で溶離を行って、その流速が2.0リットル/時間であり、溶離液を段階的に収集し、HPLCで検出して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を合わせて凍結乾燥した後、白色粉末状固体であるカングレロール四ナトリウム6.6gを得た。
【0052】
カングレロール四ナトリウムのモル収率が76%であり、HPLC純度が99.79%であり、不純物Aである二ナトリウム塩の含有量が0.05%であり、不純物Cの含有量が0.04%であり、不純物B、D、Eは検出されていない。
【0053】
実施例4
500mLの四つ口フラスコに、化合物C4.7g(10mmol)、アセトニトリル90mLおよび1,8-ビスジメチルアミノナフタレン0.54g(2.5mmol)を加え、-10℃に冷却し、オキシ塩化リン4.6g(30mmol)を滴下した後、10時間保温して化合物Bを含む反応液を得た。
【0054】
トリエチルアミン5.1g(50mmol)、クロドロン酸トリ-n-ブチルアミン塩6.5g(15mmol)及びアセトニトリル50mLを混合し、上記の化合物Bを含む反応液に投入して、常温で5時間撹拌した後、質量濃度が10%である重炭酸ナトリウム水溶液84gを加え、常温で20時間撹拌した。
【0055】
濾過を行い、その濾液を、YMC ODS-AQ C18シリカゲルフィラー(粒径20ミクロン)200gを充填したクロマトグラフィーカラムにより分離精製し、脱イオン水で溶離を行って、その流速が2.0リットル/時間であり、溶離液を段階的に収集し、HPLCで検出して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を合わせて凍結乾燥した後、白色粉末状固体であるカングレロール四ナトリウム6.1gを得た。
【0056】
カングレロール四ナトリウムのモル収率が71%であり、HPLC純度が99.91%であり、不純物Aである二ナトリウム塩の含有量が0.03%であり、不純物Cの含有量が0.02%であり、不純物B、D、Eは検出されていない。
【0057】
実施例5
500mLの四つ口フラスコに、化合物C4.7g(10mmol)、リン酸トリエチル90mLおよび1,8-ビスジメチルアミノナフタレン2.1g(10mmol)を加え、-10℃に冷却し、オキシ塩化リン3.1g(20mmol)を滴下した後、保温しながら5時間反応させ、化合物Bを含む反応液を得た。
【0058】
トリ-n-ブチルアミン10.2g(55mmol)、クロドロン酸3.7g(15mmol)及びリン酸トリエチル50mLを混合し、上記の化合物Bを含む反応液に投入して、常温で2時間撹拌した。その後、質量濃度が8%である重炭酸ナトリウム水溶液200gを加え、常温で20時間撹拌した。
【0059】
濾過を行い、その濾液を、FUJI CHROMATOREXC18 SMB100-20/45 C18シリカゲルフィラー(粒径20-45ミクロン)350gを充填したクロマトグラフィーカラムにより分離精製し、体積濃度1%のメタノール水溶液2Lで溶離を行った後、脱イオン水で溶離を行って、その流速が2.0リットル/時間であり、溶離液を段階的に収集し、HPLCで検出して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を合わせて凍結乾燥した後、白色粉末状固体であるカングレロール四ナトリウム6.5gを得た。
【0060】
カングレロール四ナトリウムのモル収率が75%であり、HPLC純度が99.96%であり、不純物Aである二ナトリウム塩の含有量が0.02%であり、不純物Cの含有量が0.02%であり、不純物B、D、Eは検出されていない。
【0061】
実施例6
20Lの反応釜に、化合物C470g(1mol)、リン酸トリエチル4.7Lおよび1,8-ビスジメチルアミノナフタレン214g(1mol)を加え、-10℃に冷却し、オキシ塩化リン230g(1.5mol)を滴下した後、保温しながら3時間反応させ、化合物Cの含有量が5%未満であることをHPLC中央制御で示したところ、化合物Bを含む反応液を得た。
【0062】
トリ-n-ブチルアミン740g(4mol)、クロドロン酸490g(2mol)及びリン酸トリエチル5Lを混合し、上記の化合物Bを含む反応液に投入して、25~30℃で2時間撹拌した。
【0063】
別の反応釜に、質量濃度が8%である重炭酸ナトリウム水溶液21kgを用意した後、撹拌しながら上記反応液を重炭酸ナトリウム水溶液に滴下し、30~40℃で30時間撹拌した。
【0064】
濾過を行い、その濾液を、YMC ODS-A C18シリカゲルフィラー(粒径75ミクロン)30kgを充填したクロマトグラフィーカラムにより分離精製し、脱イオン水で溶離を行って、溶離液を段階的に収集し、HPLCで検出して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を合わせて凍結乾燥した後、白色粉末状固体であるカングレロール四ナトリウム635gを得た。
【0065】
カングレロール四ナトリウムのモル収率が73.5%であり、HPLC純度が99.88%であり、不純物Aである二ナトリウム塩の含有量が0.03%であり、不純物Cの含有量が0.04%であり、不純物B、D、Eは検出されていない。NMRデータ:1H-NMR δ(D2O):8.23(1H,s),5.95(1H,d,J=5.6Hz),4.65(1H,m),4.49(1H,m),
4.28(1H,m),4.17(2H,m),3.67(1H,s),3.21(2H,t,J=7.6Hz),2.72(2H,t,J=6.8Hz),2.58(2H,m),2.01(3H,s)。
【0066】
実施例7
500mLの四つ口フラスコに、化合物C4.7g(10mmol)およびリン酸トリエチル90mLを加え、-10℃に冷却し、オキシ塩化リン3.1g(20mmol)を滴下した後、保温しながら20時間反応させ、化合物Bを含む反応液を得た。
【0067】
トリ-n-ブチルアミン10.2g(55mmol)、クロドロン酸3.7g(15mmol)及びリン酸トリエチル50mLを混合し、上記の化合物Bを含む反応液に投入して、常温で2時間撹拌した後、丁寧に質量濃度が8%である重炭酸ナトリウム水溶液315gを加え、常温で12時間撹拌した。
【0068】
濾過を行い、その濾液を、YMC ODS-A C18シリカゲルフィラー(粒径100ミクロン)420gを充填したクロマトグラフィーカラムにより分離精製し、体積濃度5%のメタノール水溶液でアイソクラティック溶離を行って、その流速が2.0リットル/時間であり、溶離液を段階的に収集し、HPLCで検出して、HPLC純度≧99.5%のカングレロール四ナトリウムの溶離液を合わせて凍結乾燥した後、白色粉末状固体であるカングレロール四ナトリウム6.3gを得た。
【0069】
カングレロール四ナトリウムのモル収率が73%であり、HPLC純度が99.91%であり、不純物Aである二ナトリウム塩の含有量が0.03%であり、不純物Cの含有量が0.02%であり、不純物B、D、Eは検出されていない。
【0070】
対比実施例1(CN1613864Aによるカングレロール三ナトリウム塩の調製)
トリ-n-ブチルアミン1.85gをピリジン150mLに溶解し、ヌクレオチド一リン酸アンモニウム塩5.83gを添加し、撹拌溶解した後、40℃で真空蒸留を行い、共沸で水を除去した後、DMF120mL、CDI8.1gを添加し、撹拌しながら16時間反応させて、メタノール2.46gを加え、1時間撹拌し、クロドロン酸13.92g、トリ-n-ブチルアミン10.56g及びDMF溶液350mLを滴下し、室温で26時間撹拌した後、濾過で不溶性不純物を除去し、得られた濾液における溶剤を60℃で真空除去を行って、200mLの精製水を加えて溶解させ、陰イオン交換樹脂DEAE-Sephadex A-100により分離および精製し、脱イオン水5L、0.1M重炭酸アンモニウム水溶液2.5L、0.2M重炭酸アンモニウム水溶液2.5L、0.3Mの重炭酸アンモニウム水溶液で順次に溶離し、HPLC検出を行い、カングレロールを含む溶離液7.2Lを回収し、凍結乾燥したところ、カングレロール三アンモニウム塩5.1gを得ることになって、そのモル収率が56.7%、HPLC純度が91.3%、ヌクレオチド一リン酸アンモニウム塩(不純物Aであるアンモニウム塩)が7.1%である。
【0071】
不純物Cが0.6%である。
【0072】
対比実施例2(文献J.Med.Chem.1999,12,213-220によるカングレロール四ナトリウムの調製)
化合物C5.17g(11mmol)をリン酸トリエチル120mLに溶解し、0℃に冷却、オキシ塩化リン6.6g(43mmol)を滴下した後、保温しながら5時間反応させ、重炭酸ナトリウム14.5gを含む氷水1Lに入れ、得られた混合物を45分間撹拌した後、エーテル200mL×2で抽出を行い、水相をクロマトグラフィーカラムDowex 50WX8(H+型)に通過し、アンモニア水で溶離し、溶離液を凍結乾燥して、ヌクレオチド一リン酸アンモニウム塩化合物を得た。
【0073】
前のステップで得られたアンモニウム塩を反応ボトルに加えて、トリ-n-ブチルアミン1.57gを添加し、そして、ピリジン50mLを加えて減圧下で蒸発乾固する操作を3回繰り返し、ピリジンの使用量が毎回50mLであり、残留物にDMF100mL、CDI6.6gを加え、撹拌しながら4時間反応させ、メタノール2gを加えてさらに30分間撹拌し、クロドロン酸トリ-n-ブチルアミン塩21gを含むDMF100mlを投入、18時間反応させ、ろ過し、減圧下で溶媒を蒸発させ、脱イオン水100mLで残留物を溶解し、DEAE-Sephadex-A25で分離精製、0-0.6Mの重炭酸アンモニウム水溶液でグラジエント溶離を行い、溶離液を多段階に収集、HPLCでモニタリングしてカングレロールを含む溶離液を合わせて、凍結乾燥して、得られたアンモニウム塩をメタノール20mLで溶解し、1Mのヨウ化ナトリウムのアセトン溶液300mLを滴下し、室温で3時間撹拌し、窒素下で濾過、アセトンで洗浄し、フィルターケーキを精製水100mLで溶解した後、凍結乾燥したところ、カングレロール四ナトリウム910mgを得た。その結果は、モル収率が9%、HPLC純度が96.5%、不純物Aである二ナトリウム塩が2.2%である。
【0074】
上記の文献の方法に従って標的化合物を調製した結果は、文献の結果と一致し、本願が提供されるプロセスと比べ、収率が大幅に低下し、そして後処理および精製操作も煩雑であり、工業的な大規模生産には適せず、精製した後に得られた製品はAPI(原薬)の品質要件を満たすことができない。
【0075】
上に述べたものは、単に本願の好ましい実施形態であり、本願は限定されず、本願の趣旨および原理の範囲内で行われた補正、置換または改良等は、何れも本願の保護範囲に含まれるものとする。