(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】可逆的な多応答性および多パターン化ナノコーティング
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20230526BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230526BHJP
C09D 5/30 20060101ALI20230526BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20230526BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B32B15/08 Z
C09D7/61
C09D5/30
C09D129/04
C09D201/02
(21)【出願番号】P 2020531566
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 US2018046945
(87)【国際公開番号】W WO2019036648
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】520057173
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ コネチカット
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】スン, ルーイー
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ジンジン
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン, ソンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ダウリア, トマス
(72)【発明者】
【氏名】イム, ヨン フン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ, ティアンレイ
(72)【発明者】
【氏名】コタキ, マサヤ
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-051944(JP,A)
【文献】特開2016-038406(JP,A)
【文献】特開2004-027195(JP,A)
【文献】特開2007-125762(JP,A)
【文献】特表2016-508176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線領域で1未満または2を超える屈折率を有する
Al、Au、Ag、Pt、Ti、Cu、Zn、Fe、Ni、Sn、Cr、Co、W、Pd、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属含有層と、
1つ以上の粘土含有層であって、粘土
または無機化合物と、親水性ポリマー
とを含む、粘土含有層と、を含む、組成物であって、
前記粘土または無機化合物が、モンモリロナイト、α-リン酸ジルコニウム(ZrP)、酸化グラフェン、層状複水酸化物、窒化ホウ素、ラポナイト、WS
2
、MoS
2
、MoSe
2
、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記親水性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、キトサン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンアミン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(スチレンスルホネート)、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
水
を含む液体
、蒸気、またはミストにさらされると虹色を呈する、組成物。
【請求項2】
前記金属含有層中の前記金属が、Au
、Pd
、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の粘土含有層中の前記粘土
または無機化合物が、シートとして存在する、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の粘土含有層中の前記粘土
または無機化合物が、ラポナイトである、請求項1
~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の粘土含有層中の前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の粘土含有層中の前記粘土
または無機化合物が、ラポナイトであり、前記1つ以上の粘土含有層中の前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つ以上の粘土含有層が、架橋剤をさらに含む、請求項1
~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記架橋剤が、ジアルデヒド、ホウ酸、ホウ酸塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ジアルデヒドが、グルタルアルデヒドであり、前記ホウ酸塩が、ホウ砂である、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも一部分の前記粘土
または無機化合物、および前記親水性ポリマーが、架橋される、請求項1
~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記粘土
または無機化合物と前記親水性ポリマーとの間の前記架橋が、物理的架橋である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記粘土
または無機化合物と前記親水性ポリマーとの間の前記架橋が、化学的架橋である、請求項
10に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘土
または無機化合物と前記親水性ポリマーとの間の前記架橋が、物理的架橋と化学的架橋との組み合わせである、請求項
10に記載の組成物。
【請求項14】
前記架橋粘土
または無機化合物が、ラポナイトであり、前記架橋親水性ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
前記
水が、蒸気またはミストの形態である、請求項1
~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記
水を含む液体、蒸気、またはミストが、
純水からなる、請求項1
~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記虹色が、前記1つ以上の粘土含有層の厚さに応じて変動する、請求項1
~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記ラポナイトおよびポリビニルアルコールが、約1:1のラポナイト対ポリビニルアルコールの質量比で存在する、請求項
14~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
請求項1~
18のいずれか一項に記載の組成物を含む、ナノコンポジットコーティング。
【請求項20】
前記コーティングから前記水が実質的に除去されると、前記虹色が消失する、請求項
19に記載のコーティング。
【請求項21】
前記金属含有層が、少なくとも20nmの厚さである、請求項
19または20に記載のコーティング。
【請求項22】
前記架橋剤を使用して、前記コーティング上
にパターンを作成する、請求項
19~21のいずれかに記載のコーティング。
【請求項23】
表面を
、水を含む液体、蒸気、またはミストにさらされると虹色を呈する組成物でコーティングする方法であって、
可視光領域で屈折率が1未満または2を超える
Al、Au、Ag、Pt、Ti、Cu、Zn、Fe、Ni、Sn、Cr、Co、W、Pd、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む金属含有層を表面に適用することと、
粘土
または無機化合物と、親水性ポリマー
とを含む1つ以上の粘土含有層を前記金属含有層上に適用することと、
架橋剤を前記粘土含有層のうちの前記1つ以上に適用して、少なくとも一部分の前記粘土
または無機化合物を前記親水性ポリマーと架橋させることと、を含
み、
前記粘土または無機化合物が、モンモリロナイト、α-リン酸ジルコニウム(ZrP)、酸化グラフェン、層状複水酸化物、窒化ホウ素、ラポナイト、WS
2
、MoS
2
、MoSe
2
、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記親水性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、キトサン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンアミン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(スチレンスルホネート)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項24】
十分な量の水を前記1つ以上の粘土含有層に添加して、前記組成物に虹色を呈させることをさらに含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記虹色を消失させるのに必要な程度まで、前記水を除去することをさらに含む、請求項
24に記載の方法。
【請求項26】
前記金属含有層が、少なくとも20nmの厚さを有する、請求項
23~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記金属含有層中の前記金属が、Au
、Pd
、またはそれらの組み合わせであり、前記1つ以上の粘土含有層中の前記粘土
または無機化合物が、ラポナイトであり、前記1つ以上の粘土含有層中の前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコールである、請求項
23~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記組成物の所望の虹色を達成するために必要に応じて前記粘土含有層の追加の層を適用することをさらに含む、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記架橋剤を使用し
てパターンを作成する、請求項
23~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
請求項1~
18のいずれか一項に記載の組成物でコーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性ポリマーおよび粘土を含むナノコンポジットコーティングに関し、このコーティングは、水にさらされると虹色を呈する。本発明はまた、このようなナノコンポジットコーティングの調製および様々な用途におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
虹色は、光と周期構造に存在する変動との相互作用から生じる構造色の一種である。より具体的には、虹色は、光波がある表面に衝突し、その表面のテクスチャに基づいて様々な角度で散乱するときに発生する。反射波は互いに重なり合っていることから、散乱波長が類似している場合、それらは互いに補強し(建設的干渉)、一方の波長の山が別の波長の谷と整合する場合に、それらは互いに相殺する(破壊的干渉)。建設的干渉および破壊的干渉のこの相互作用によって、虹色現象が引き起こされる。代表的な例として、蝶の羽、孔雀の羽、およびシャボン玉が挙げられる。虹色は静的ではなく、外部環境からの刺激に応じて変化する。その結果、虹色は、化学/物理センサーおよび光学デバイス等の用途での使用に有望である。自然界に虹色が存在することも、生体模倣刺激応答性材料でのその使用に関する広範な調査を促している。これらの材料の構造的周期性および屈折率は、光、pH、溶媒、温度、湿度、および機械力等の外部刺激へさらされるときに独特の光学特性をもたらすように調節することができる。
【0003】
本発明は、コート厚が変動するときおよび外部刺激へさらされるときにそれらの虹色を変更することができる極薄ナノコンポジットコーティングの調製を開示することによって、調整可能な虹色材料の満たされていない必要性に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある態様は、可視光線領域で1未満(<1)または2を超える(>2)屈折率を有する金属を含む金属含有層と、1つ以上の粘土含有層であって、粘土および親水性ポリマーを含む、粘土含有層と、を含む、組成物であって、含水液体にさらされると虹色を呈する、組成物である。
【0005】
例示的実施形態では、粘土含有層は、金属含有層と直接接触している。
【0006】
例示的実施形態では、金属含有層中の金属は、Al、Au、Ag、Pt、Ti、Cu、Zn、Fe、Ni、Sn、Cr、Co、W、Pd、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
特定の実施形態では、金属含有層中の金属は、Au/Pdである。
【0008】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の粘土は、シートとして存在する。
【0009】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の粘土は、モンモリロナイト、α-リン酸ジルコニウム((Zr(HPO4)2・nH2O))、酸化グラフェン、層状複水酸化物、窒化ホウ素、ラポナイト、WS2、MoS2、MoSe2、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0010】
特定の実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の粘土は、ラポナイトである。
【0011】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の親水性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖類(例えば、セルロースおよびキトサン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンアミン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(スチレンスルホネート)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0012】
特定の実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0013】
特定の実施形態では、金属含有層中の金属は、Au/Pdであり、1つ以上の粘土含有層中の粘土は、ラポナイトであり、1つ以上の粘土含有層中の親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0014】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の少なくとも一部分の粘土および親水性ポリマーは、架橋されない。
【0015】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の少なくとも一部分の粘土および親水性ポリマーは、架橋される。
【0016】
特定の実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の少なくとも一部分の粘土および親水性ポリマーは、物理的に架橋される。
【0017】
例示的実施形態では、粘土含有層のうちの1つ以上は、架橋剤をさらに含む。
【0018】
例示的実施形態では、架橋剤は、粘土と親水性ポリマーとの間の化学的架橋を引き起こす。
【0019】
例示的実施形態では、架橋剤は、ジアルデヒド、ホウ酸、ホウ酸塩(Mg2B2O5、CaAlB3O7、およびLi6B4O9等であるが、これらに限定されない)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
例示的実施形態では、ジアルデヒドは、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、2,6,11,15-テトラメチル-2,4,6,8,10,12,14-ヘキサデカヘプタエンジアール、2-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、および2,5-チオフェンジカルボキシアルデヒドを含むが、これらに限定されない。
【0021】
特定の実施形態では、ジアルデヒドは、グルタルアルデヒドであり、ホウ酸塩は、ホウ砂である。
【0022】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層に存在する粘土および親水性ポリマーの少なくとも20%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも90%が架橋される。
【0023】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層に存在する粘土および親水性ポリマーの20~50%、例えば50~75%、例えば75~95%が架橋される。
【0024】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の粘土および親水性ポリマーの一部分は、物理的に架橋され、別の部分は架橋されない。
【0025】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の粘土および親水性ポリマーの一部分は、化学的に架橋され、別の部分は架橋されない。
【0026】
例示的実施形態では、1つ以上の粘土含有層中の粘土および親水性ポリマーの一部分は、化学的に架橋され、別の部分は、物理的に架橋される。
【0027】
特定の実施形態では、架橋粘土は、ラポナイトであり、架橋親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールであり、ラポナイトおよびポリビニルアルコールは、直接または架橋剤を通してのいずれかで互いに架橋される。
【0028】
特定の実施形態では、含水液体は、蒸気形態である。特定の実施形態では、含水液体は、冷ミストとして導入された水、または霧化形態で導入された水である。
【0029】
特定の実施形態では、含水液体は、水である。
【0030】
例示的実施形態では、虹色は、1つ以上の粘土含有層の厚さに応じて変動する。
【0031】
特定の実施形態では、ラポナイトおよびポリビニルアルコールは、約1:1の質量比で存在する。
【0032】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組成物を含むナノコンポジットコーティングである。
【0033】
例示的実施形態では、コーティング中に存在する水の少なくとも一部分(実質的に全ての水を含む)がコーティングから除去されると、虹色が消失する。
【0034】
特定の実施形態では、金属含有層は、少なくとも20nmの厚さである。
【0035】
特定の実施形態では、架橋剤を使用して、コーティング上に書き込み可能なパターンを作成する。
【0036】
本発明の別の態様は、表面(ガラス表面等)を虹色生成組成物でコーティングする方法であって、可視光領域で屈折率が1未満(または2を超える)金属を含む金属含有層を表面に適用することと、粘土および親水性ポリマーを含む1つ以上の粘土含有層を金属含有層上に直接的または間接的に適用することと、架橋剤を粘土含有層のうちの1つ以上に適用して、少なくとも一部分の粘土を親水性ポリマーと架橋させることと、を含む、方法である。
【0037】
例示的実施形態では、この方法は、十分な量の水(蒸気等の任意の好適な形態で)を1つ以上の粘土含有層に添加して、組成物に虹色を呈させることをさらに含む。
【0038】
例示的実施形態では、この方法は、虹色を消失させるのに必要な程度まで、1つ以上の粘土含有層に存在する水を除去することをさらに含む。
【0039】
例示的実施形態では、この方法は、組成物の所望の虹色を達成するために必要に応じて粘土含有層の追加の層を適用することをさらに含む。
【0040】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の組成物を含む物品である。
【0041】
本出願の添付図面を参照して、本発明の具体的な実施形態について以下に説明する。本発明の範囲は図面に限定されない。
【0042】
以下のように、比較のために3つのコーティング系を設計および試験した。
系1:純ポリビニルアルコール(PVA)。好適な粘土(例えば、ラポナイト)により提供される補強がない場合、PVAは、水分にさらされるときに寸法安定性に欠けることが観察された(
図3A参照)。
系2:物理的架橋を伴うPVA/ラポナイト複合体。PVAおよびラポナイトが物理的に架橋された場合、得られた複合体は、水分に対して感受性を有するが、その寸法安定性を維持していることが観察された(
図3B参照)。架橋は、導入された水に動的に応答する能力をコーティング組成物に提供することが観察された。
系3:化学的架橋を伴うPVA/ラポナイト複合体。PVAおよびラポナイトが(架橋剤を介して)化学的に架橋された場合、得られた複合体は、物理的に架橋された複合体と比較して、導入された水に対する感受性が低いことが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の虹色ハイブリッドナノコンポジットの調製を示し、水分の添加および除去により観察される虹色の可逆性を実証する。
【
図2A】物理的または化学的架橋がない場合に、コーティング組成物の寸法安定性が維持されなかったことを示す。また、コートは、1回(1L)から3回(3L)等の一連のコーティング周期の後に複数の層を形成することができず、これは、各コーティング周期中に、前の層が溶解してなくなった可能性があったからである。
【
図2B】
図2Aとは対照的に、ラポナイトナノシートの使用により達成された物理的架橋により、1回(1L)から3回(3L)の累積コーティング周期を通じて高い寸法安定性および厚さの増加を呈したコートが得られたことを示す。ナノシート間のナノ構造および層間距離は、虹色を生成する重要な要因であるとは観察されなかったが、水分に対するコートの応答時間に影響を与えた可能性がある。
【
図3A】系1型のナノコート(PVAを含むが粘土を含まないナノコート)が水分にさらされたときに、ナノコートが寸法安定性を表さなかったことを示す。表面欠陥は、水中でのPVAの溶解度が高いため、6回の水分適用周期後に出現した。
【
図3B】
図3Aとは対照的に、ラポナイトを含有するコート(系2)が高い寸法安定性を呈したことを示す。PVAとラポナイトとの間の物理的架橋の結果として、6回周期および50回周期超(図示せず)の水分適用の後でさえ、コート表面上に可視欠陥が存在しなかった。
【
図4】コート厚を操作することによって、すなわち、系2コートでコーティング周期を1回(1L)から6回(6L)に増加させることによって達成された均一かつ明るい虹色の表面色を示す。異なる虹色の出現のコート厚への依存性によって、物理的架橋の有益な効果が明確に実証された。
【
図5A】
図5Bの反射スペクトルに提示されているコート層の調整可能な光学特性(すなわち、追加のコーティング周期毎のコート色の変化)を示す。
【
図5B】層の厚さと反射波長ピーク位置との関係を示す。
【
図6】PVAおよびラポナイトが化学的に架橋された系3の設計を示す。この化学的架橋の結果として、系は、水分に対してもはや感受性がないことが観察された。
図6に示すように、UCONNロゴの形状のパターン化マスクを作成した。次に、UCONNロゴの非マスク化部分を、スプレーコーティングによって架橋剤(グルタルアルデヒド(GA))に直接さらした。冷水ミストがその表面に適用されたとき、マスク化領域と非マスク化領域との間の水分に対する感受性の違いが、コート厚の変化を起こし、これが、物理的および化学的架橋領域における色の変化につながった。表面の色の変化を伴うこの膨張および収縮工程は、可逆的であることが観察された。
【
図7】系3の化学的架橋設計によって水分に応答するように作成された可逆的で書き込み可能なUCONNロゴパターンを示す。
【
図8A】冷水ミストにさらさない場合に、コートが、比較的滑らかな表面モルフォロジーを示し、最高点から最低点へのステップ高が15nmであったことを示す。
【
図8B】冷水ミストにさらさない場合に、コートが、比較的滑らかな表面モルフォロジーを示し、最高点から最低点へのステップ高が15nmであったことを示す。
【
図8C】冷水ミストにさらさない場合に、コートが、比較的滑らかな表面モルフォロジーを示し、最高点から最低点へのステップ高が15nmであったことを示す。
【
図8D】冷水ミストにさらさない場合に、コートが、比較的滑らかな表面モルフォロジーを示し、最高点から最低点へのステップ高が15nmであったことを示す。
【
図8E】しかしながら、冷水ミストにさらされると、UCONNロゴの文字「N」が位置する架橋領域と比較して非架橋領域からコート厚が著しく増加して、270nmのステップ高が生じたことを示す。
【
図8F】しかしながら、冷水ミストにさらされると、UCONNロゴの文字「N」が位置する架橋領域と比較して非架橋領域からコート厚が著しく増加して、270nmのステップ高が生じたことを示す。
【
図8G】しかしながら、冷水ミストにさらされると、UCONNロゴの文字「N」が位置する架橋領域と比較して非架橋領域からコート厚が著しく増加して、270nmのステップ高が生じたことを示す。
【
図8H】しかしながら、冷水ミストにさらされると、UCONNロゴの文字「N」が位置する架橋領域と比較して非架橋領域からコート厚が著しく増加して、270nmのステップ高が生じたことを示す。
【
図9】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図10】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図11】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図12A】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図12B】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図12C】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図13】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図14】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図15】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図16】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【
図17】は、2016年8月21日に開催された2016年アメリカ化学会秋季大会の発表資料である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書に記載の本発明の独特の特徴は、所望の性能を達成するためにその界面が特に調整された新規の機能性有機層/無機層ハイブリッドコーティング組成物と、一般的にハイブリッドコーティング組成物の設計では無視される特徴である、親水性ポリマーのヒドロキシル基と粘土含有有機層に存在する粘土との間の物理的架橋(例えば、水素結合)を通した界面相互作用の実証と、広く入手可能であり、環境に優しく、かつ費用効率の良い原料の使用とを含む。
【0045】
本発明のコーティング組成物の粘土含有層に含めるのに好適な親水性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、多糖類(例えば、キトサンおよびセルロース)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリエチレンアミン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(スチレンスルホネート)、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明のコーティング組成物の粘土含有層に含めるのに好適な粘土(無機ナノシートとして作用する)には、水性媒体中で剥離可能な任意の粘土、例えば、モンモリロナイト、α-リン酸ジルコニウム(Zr(HPO4)2・nH2O)、酸化グラフェン、層状複水酸化物、窒化ホウ素、および2D遷移金属ジカルコゲナイド(例えば、WS2、MoS2、MoSe2)、またはそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0047】
複数の粘土含有層が、本発明のコーティング組成物に存在してもよい。例示的実施形態では、コーティング組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の粘土含有層を含有してもよい。
【0048】
コーティング組成物の金属含有層に含めるのに好適な金属には、可視光領域で<1または>2の屈折率を有する金属が含まれるが、これらに限定されない。例として、Al、Au、Ag、Pt、Ti、Cu、Zn、Fe、Ni、Sn、Cr、Co、W、Pd、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
コーティング組成物の粘土含有層に含めるのに好適な架橋剤には、ジアルデヒド、ホウ酸、ホウ酸塩(Mg2B2O5、CaAlB3O7、およびLi6B4O9等であるがこれらに限定されない)、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。好適なジアルデヒドには、グリオキサール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、2,6,11,15-テトラメチル-2,4,6,8,10,12,14-ヘキサデカヘプタエンジアール、2-ヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゼンジカルボキシアルデヒド、および2,5-チオフェンジカルボキシアルデヒド、ならびにそれらの混合物から選択されるものが含まれる。
【0050】
本発明のコーティング組成物の好適な厚さ(組成物を水へさらす前)としては、30nm~5μm、例えば30nm~3μm、例えば40nm~3μm、例えば40nm~2μm、例えば50nm~2μm、例えば60nm~1μm、例えば70nm~1μmが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明のコーティング組成物を調製するために、溶媒キャスティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングロッドコーティング、ロールツーロールコーティング、およびドクターブレーディング法の従来の技術を含むがこれらに限定されない異なる方法を使用することができる。
【0052】
コーティング組成物に関連する虹色の変化の可逆性は、親水性ポリマーを粘土と架橋させて、コーティング組成物の観察された膨張/収縮能力ならびに構造的ロバスト性を可能にすることによって、組成物(具体的には、組成物の粘土含有層)を水(冷水ミスト等の水蒸気の形態等)にさらすことにより実証された。虹色の生成の重要な要因は、粘土含有層と金属含有層との間および/または粘土含有層と空気の間の界面での光干渉であると考えられている。
【0053】
コーティング組成物の粘土含有層中の親水性ポリマーの粘土に対する比率は、生成される虹色に依存することは観察されなかったが、この比率は、コーティング組成物が組成物に導入される水に応答するのに必要な時間に影響を与え得る。
【0054】
本発明のコーティング組成物の例示的調製において、PVA/ラポナイトハイブリッドナノコーティングを、Au/Pdスパッタコーティングされたガラススライド上にスピンコーティングした。上記のスピンコーティング工程を繰り返して所望の厚さのコーティング組成物を達成することによって、ガラススライドに必要に応じて複数層のPVA/ラポナイトコーティング(最大6層(6L))を適用した。次の層を適用する前に、各コーティング層を熱板上で完全に乾燥させた。さらに、いくつかの選択された試料を、ロゴテンプレートを使用して領域架橋し、覆われていない領域を、架橋剤のグルタルアルデヒドに直接さらしたが、覆われた領域は架橋されないままにした。他の試料を、代替として架橋剤のホウ酸にさらしたが、覆われた領域は架橋されないままにした。架橋後、試料を水ですすぎ、室温で乾燥させた。試料の加工手順全体を
図1に示す。グルタルアルデヒドを使用して永続的な架橋を作成し、これにより、水の存在/不在下で何度も膨張/非膨張可能な永続的なパターンを作成した。比較として、ホウ酸を使用して、水の存在下で一度の膨張効果を引き起こす非永続的(または動的)架橋を作成したが、水を適用すると架橋が破壊された。この現象は、動的に可逆的なパターンと呼ばれた。
【0055】
興味深い虹色現象を使用して、様々な条件下での膨張によって誘導される寸法変化を示し、本発明の有機/無機ハイブリッドコーティング組成物の設計における界面制御の重要性を実証する。PVA/ラポナイト粘土含有層の厚さと反射光の波長との関係は、
図5Aおよび
図5B、ならびに他の図面に見られる。虹色は、高反射性の底部金属含有層によって増幅された薄膜干渉から生成されることが観察された。
【0056】
極薄ナノコンポジットコーティング組成物は、相対湿度および温度等の外部(例えば、環境)要因に応じて明るい虹色の変化を呈することも観察された。圧力の変化に関して観測された膨張応答に対する追加の変化は、温度応答に反比例して作用すると予想される。加えて、冷水ミストまたは水分等の湿度または水蒸気の他の混合物に対する応答は、コーティング組成物に導入された水の量に比例する遅延膨張応答をもたらすことが観察された。様々なレベルの界面を有する有機/無機ハイブリッドコーティング組成物の設計および合成に基づいて、書き込み可能なパターン化スマートコーティングを加工した。
【0057】
ナノコーティング組成物の3Dトポグラフィーは、架橋領域と非架橋領域との間の膨張度の違いをさらに実証した。本発明のコーティング組成物の表面に水分を適用する前の
図8A~8Dは、最高点から最低点までのステップ高が20nm未満である全体的に滑らかな表面トポグラフィーを示す。対照的に、
図8E~8Hは、水分(例えば冷水ミスト)を組成物に適用した後、ロゴUCONNの文字「N」が位置する架橋領域と比較して非架橋領域の厚さがはるかに大幅に増加して、270nmのステップ高が生じたことを示す。
【0058】
図面を参照すると、ナノメートルの厚さの有機/無機ハイブリッドコーティング組成物の膨張/収縮によって誘導される寸法変化を利用することによって、独特の虹色現象が引き起こされた。このハイブリッドコーティング系は、容易に調製することができ、原料は低コストであり、かつ容易に入手可能である。ハイブリッド有機/無機コーティング組成物の調整可能な界面特徴により、環境センサー、顔料ベースのコーティングの交換、偽造防止コーティング/セキュリティラベル等の用途に好適になる。