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特許7285852エネルギー処理能力の改善されたカスケードバリスタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】エネルギー処理能力の改善されたカスケードバリスタ
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/10 20060101AFI20230526BHJP
   H01C 7/18 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H01C7/10
H01C7/18
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020546325
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 US2019020501
(87)【国際公開番号】W WO2019173186
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】62/638,369
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】カーク,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ベロリーニ,マリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ラビンドラナータン,パラニアッパン
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507473(JP,A)
【文献】特開平11-003809(JP,A)
【文献】特開平08-195304(JP,A)
【文献】特開2013-089947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0007817(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/10
H01C 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向にずれた第1の対向端面および第2の対向端面を画定する矩形構成を有するバリスタであって、
前記第1の対向端面に隣接する第1の端子と、
前記第2の対向端面に隣接する第2の端子と、
複数の活性電極層であり、前記複数の活性電極層の各活性電極層は、前記第1の端子と電気的に接続された第1の電極および前記第2の端子と電気的に接続された第2の電極を含、前記第1の電極は、活性電極端部間隙を形成するように、前記長さ方向において前記第2の電極から離間されている、複数の活性電極層と、
複数の浮遊電極層であり、前記複数の浮遊電極層の各浮遊電極層は、浮遊電極を含み、前記複数の浮遊電極層は、前記複数の活性電極層と交互配置され、浮遊電極間隙を形成するように、各浮遊電極層が高さ方向に隣接する活性電極層から離間されている、複数の浮遊電極層と
を備え、
各活性電極層の前記第1の電極は、前記長さ方向において重複距離に沿って隣接するそれぞれの浮遊電極と重なり合い、
前記複数の活性電極層の各活性電極層は、前記第1の端子と前記第2の端子との間で前記長さ方向においてある長さを有し、
各活性電極層の長さの前記重複距離に対する重複比率は5よりも大きく、
8,000ボルトの5,000回以上の静電放電ストライク後の前記バリスタのブレークダウン電圧は、前記バリスタの初期ブレークダウン電圧の0.9倍よりも大きい、バリスタ。
【請求項2】
前記浮遊電極は、前記第1の端子および前記第2の端子の各々から前記長さ方向において等距離に配置される、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項3】
前記バリスタの静電容量は、100pF未満である、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項4】
前記バリスタの漏れ電流は、30ボルトにおいて10μA未満である、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項5】
前記バリスタの過渡エネルギー能力は、0.01ジュールよりも大きい、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項6】
前記バリスタの比過渡エネルギー能力は、1x10J/mよりも大きい、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項7】
前記バリスタの上層は、前記複数の活性電極層のそれぞれ1つの活性電極層を含み、前記第1の端子および前記第2の端子は、前記上層の上に形成される、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項8】
前記バリスタの上部誘電体層および底部誘電体層の少なくとも一方は、少なくとも1つのダミー電極を含む、請求項1に記載のバリスタ。
【請求項9】
バリスタであって、
第1の端子と、
第2の端子と、
複数の活性電極層であり、前記複数の活性電極層の各活性電極層は、前記第1の端子と電気的に接続された第1の電極および前記第2の端子と電気的に接続された第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記長さ方向において前記第2の電極から離間されている、複数の活性電極層と、
カスケード構成において前記複数の活性電極層と交互配置された複数の浮遊電極層であって、前記複数の浮遊電極層の各浮遊電極層は、浮遊電極を含む、複数の浮遊電極層と
を備え、
各活性電極層の前記第1の電極は、前記長さ方向において重複距離に沿って隣接するそれぞれの浮遊電極と重なり合い、
前記複数の活性電極層の各活性電極層は、前記第1の端子と前記第2の端子との間で前記長さ方向においてある長さを有し、
各活性電極層の長さの前記重複距離に対する重複比率は5よりも大きく、
前記バリスタの静電容量は、100pF未満である、バリスタ。
【請求項10】
,000ボルトの5,000回以上の静電放電ストライク後の前記バリスタのブレークダウン電圧は、前記バリスタの初期ブレークダウン電圧の0.9倍よりも大きい、請求項9に記載のバリスタ。
【請求項11】
前記バリスタの過渡エネルギー能力は、0.01ジュールよりも大きい、請求項9に記載のバリスタ。
【請求項12】
前記バリスタの比過渡エネルギー能力は、1x10J/mよりも大きい、請求項9に記載のバリスタ。
【請求項13】
バリスタであって、
第1の端子と、
第2の端子と、
複数の活性電極層であり、前記複数の活性電極層の各活性電極層は、前記第1の端子と電気的に接続された第1の電極および前記第2の端子と電気的に接続された第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記長さ方向において前記第2の電極から離間されている、複数の活性電極層と、
カスケード構成において前記複数の活性電極層と交互配置された複数の浮遊電極層であって、前記複数の浮遊電極層の各浮遊電極層は、浮遊電極を含む、複数の浮遊電極層と
を備え、
各活性電極層の前記第1の電極は、前記長さ方向において重複距離に沿って隣接するそれぞれの浮遊電極と重なり合い、
前記複数の活性電極層の各活性電極層は、前記第1の端子と前記第2の端子との間で前記長さ方向においてある長さを有し、
各活性電極層の長さの前記重複距離に対する重複比率は5よりも大きく、
前記バリスタの比過渡エネルギー能力は、1x10J/mよりも大きい、バリスタ。
【請求項14】
,000ボルトの5,000回以上の静電放電ストライク後の前記バリスタのブレークダウン電圧は、前記バリスタの初期ブレークダウン電圧の0.9倍よりも大きい、請求項13に記載のバリスタ。
【請求項15】
前記バリスタの過渡エネルギー能力は、0.01ジュールよりも大きい、請求項13に記載のバリスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術の相互参照
[0001]本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年3月5日の出願日を有する米国仮特許出願第62/638,369号の出願日の出願利益を主張する。
【0002】
[0002]本主題は、一般に、回路基板に搭載されるように適合されている電子構成要素に関し、より詳細には、バリスタおよびバリスタアレイに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]多層セラミックキャパシタまたはバリスタなどの多層セラミック素子は、典型的には、積層された複数の誘電体-電極層によって構築される。製造中、それらの層は多くの場合、圧縮されて垂直積層構造に形成され得る。多層セラミック素子は、単一の電極またはアレイ内の複数の電極を含むことができる。
【0004】
[0004]バリスタは、電圧依存非線形抵抗器であり、サージ吸収電極、アレスタ、および電圧安定装置として使用されている。バリスタは、例えば、繊細な電気構成要素と並列に接続される場合がある。バリスタの非線形抵抗応答は、多くの場合、制限電圧(clamping voltage)として知られるパラメータによって特徴付けられる。バリスタの制限電圧未満の印加電圧について、バリスタは、一般的に、非常に高い抵抗を有し、したがって、開回路に類似して動作する。一方、バリスタがその制限電圧よりも高い電圧にさらされると、その抵抗は低減され、結果、バリスタは、短絡回路により類似して動作し、より大きい電流の流れを許容する。この非線形応答は、電流サージをそらし、および/または、電圧スパイクが繊細な電子構成要素を損傷するのを防止するために使用され得る。
【0005】
[0005]しばらくの間、様々な電子構成要素の設計は、小型化に向かう一般的な業界動向によって動機付けられていた。電子構成要素の小型化の結果として、動作電流が低下し、耐久性が低減された。バリスタの電流およびエネルギー処理能力は、一般的に、電流によって生成される熱によって制限される。大きすぎる電流がバリスタに流れた場合、バリスタは過熱し、溶融、焼損などの損傷を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]したがって、エネルギー処理能力の改善された小型バリスタが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本開示の一実施形態によれば、バリスタは、長さ方向にずれた第1の対向端面(opposing end surface)および第2の対向端面を画定する矩形構成を有することができる。バリスタは、第1の対向端面に隣接する第1の端子、および、第2の対向端面に隣接する第2の端子を含むことができる。バリスタは、第1の端子と電気的に接続された第1の電極および第2の端子と電気的に接続された第2の電極を含む活性電極層(active electrode layer)を含むことができる。第1の電極は、活性電極端部間隙(active electrode end gap)を形成するように、長さ方向において第2の電極から離間され得る。バリスタは、浮遊電極を含む浮遊電極層(floating electrode layer)を含むことができる。浮遊電極層は、浮遊電極間隙(floating electrode gap)を形成するように、高さ方向において活性電極層から離間され得る。活性電極端部間隙の浮遊電極間隙に対する比率は、約2よりも大きくてもよい。
【0008】
[0008]本開示の別の実施形態によれば、バリスタは、第1の端子と、第2の端子と、複数の活性電極層とを含むことができる。複数の活性電極層の各々は、第1の端子または第2の端子のうちの少なくとも1つと電気的に接続され得る。バリスタは、カスケード構成において複数の活性電極層と交互配置された複数の浮遊電極層を含むことができる。バリスタの静電容量は、約100pF未満であり得る。
【0009】
[0009]本開示の別の実施形態によれば、バリスタは、第1の端子と、第2の端子と、複数の活性電極層とを含むことができる。複数の活性電極層の各々は、第1の端子または第2の端子のうちの少なくとも1つと電気的に接続され得る。バリスタは、カスケード構成において複数の活性電極層と交互配置された複数の浮遊電極層を含むことができる。バリスタの比過渡エネルギー能力(specific transient energy capability)は、約1x10j/mよりも大きくてもよい。
【0010】
[0010]当業者向けの、その最良の形態を含む本主題の完全で実施可能な開示が本明細書に記載されており、これは添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】[0011]本開示の態様によるバリスタの一実施形態の図である。
図1B】本開示の態様によるバリスタの一実施形態の図である。
図1C】本開示の態様によるバリスタの一実施形態の図である。
図2】[0012]本開示の態様によるバリスタの様々な特性を試験するために使用される例示的な電流パルスを示す図である。
図3】[0013]本開示の態様によるバリスタの例示的な試験中の電流および電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0014]本明細書および添付の図面全体を通じて参照符号が繰り返し使用されている場合、これは、本主題の同じまたは類似の特徴、電極、またはステップを表すように意図されている。
【0013】
[0015]本開示が例示的な実施形態の説明にすぎず、本主題のより広い態様を限定するものとして解釈されるべきではなく、より広い態様は例示的な構成において具現化されることは、当業者には理解されたい。
【0014】
[0016]一般に、本開示はカスケードバリスタ(cascade varistor)に関する。バリスタは、優れたエネルギー散逸特性を有することができる。例えば、バリスタの過渡エネルギー能力(transient energy capability)は、静電放電(ESD:electrostatic discharge)反復ストライク(repetitive strike)処理能力、過渡エネルギー能力、および/または比過渡エネルギー能力(単位体積当たりのエネルギー)として表され得る。付加的に、本開示の態様によれば、バリスタはまた、静電容量が低いこと(バリスタを静電容量に敏感な回路に特に適したものにする)、および、バリスタの動作電圧において漏れ電流が低いことを含む、いくつかの他の望ましい特性も呈することができる。
【0015】
[0017]バリスタは、長さ方向にずれた第1の対向端面および第2の対向端面を画定する矩形構成を含むことができる。バリスタは、第1の対向端面に隣接する第1の端子、および、第2の対向端面に隣接する第2の端子を含むことができる。バリスタはまた、第1の端子と電気的に接続された第1の電極および第2の端子と電気的に接続された第2の電極を含む活性電極層も含むことができる。第1の電極は、活性電極端部間隙を形成するように、長さ方向において第2の電極から離間され得る。バリスタは、浮遊電極を備える浮遊電極層を含むことができる。浮遊電極層は、浮遊電極間隙を形成するように、高さ方向において活性電極層から離間され得る。活性電極端部間隙の浮遊電極間隙に対する比率は、約2よりも大きくてもよい。
【0016】
[0018]理論に限定されることなく、上述したカスケード構成は、エネルギー処理能力が増大されることを容易にすることができる。例えば、バリスタのブレークダウン電圧(breakdown voltage)よりも大きい電圧において、浮遊電極は、端子間の導電を向上させることができる。さらに、ブレークダウン電圧を下回る電圧について、浮遊電極は、バリスタの性能を損なわないことが可能である。その上、浮遊電極は、長さ方向の熱伝導を向上させ、結果、放熱を向上させることができる。大きい電流/エネルギーサージの間、電流が誘電体層を通じて流れると、熱が生成される。浮遊電極層は、誘電体層の中央から、熱がより容易に放散され得る端子に向けての熱流が向上されることを容易にすることができる。結果として、バリスタは、過熱することなく、より大きいエネルギーサージを処理することが可能であり得る。したがって、浮遊電極層は、バリスタのエネルギー処理能力を向上させることができる。
【0017】
[0019]誘電体層は、ともに圧縮され、焼結されて、単一構造を形成することができる。誘電体層は、例えば、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、または任意の他の適切な誘電体材料などの、任意の適切な誘電体材料を含むことができる。例えば、誘電体材料の電圧依存抵抗を生成または増強する様々な添加剤が誘電体材料に含まれてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、添加剤は、コバルト、ビスマス、マンガンの酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、添加剤は、ガリウム、アルミニウム、アンチモン、クロム、チタン、鉛、バリウム、ニッケル、バナジウム、スズの酸化物、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。誘電体材料は、約0.5モル百分率~約3モル百分率、および、いくつかの実施形態においては約1モル百分率~約2モル百分率に及ぶ添加剤によってドーピングされ得る。誘電体材料の平均粒径は、誘電体材料の非線形特性に寄与し得る。いくつかの実施形態において、平均粒径は、約10マイクロメートル(ミクロン)~100マイクロメートル、いくつかの実施形態においては約20マイクロメートル~80マイクロメートルに及んでもよい。
【0018】
[0020]バリスタの端子および電極は、様々な導電性材料から形成され得る。例示的な伝導性材料は、パラジウム、銀、白金、および銅を含む。誘電体層上に印刷されることが可能な任意の他の適切な導体が、電極および/または端子を形成するのに使用されてもよい。
【0019】
[0021]利用される特定の構成にかかわらず、本発明者らは、電極、および、活性電極端部間隙の浮遊電極間隙に対する比率の構成を選択的に制御することを通じて、優れたエネルギー処理能力を呈するバリスタが達成され得ることを発見した。いくつかの実施態様において、活性電極端部間隙の浮遊電極間隙に対する比率は、約2よりも大きくてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、この比率は、約2~約50、いくつかの実施形態において、約2~約30、および、いくつかの実施形態において、約3~約25に及んでもよい。
【0020】
[0022]活性電極端部間隙は、約100マイクロメートル~約1000マイクロメートル、および、いくつかの実施形態において、約200マイクロメートル~約800マイクロメートルに及んでもよい。浮遊電極間隙は、約15マイクロメートル~約300マイクロメートル、および、いくつかの実施形態において、約25マイクロメートル~約150マイクロメートルに及んでもよい。
【0021】
[0023]上記で示したように、バリスタは、優れたエネルギー処理能力を呈することができる。例えば、バリスタは、10x1000マイクロ秒パルスによって決定されるものとして、約0.01ジュールよりも大きい、いくつかの実施形態において、約0.03ジュールよりも大きい、および、いくつかの実施形態において、約0.04ジュールよりも大きい、過渡エネルギー能力を有することができる。例えば、いくつかの実施形態において、過渡エネルギー能力は、約0.02~約0.04ジュールに及ぶことができる。
【0022】
[0024]付加的に、バリスタは、コンパクトにすることができ、結果、優れた比過渡エネルギー能力がもたらされる。例えば、バリスタの比過渡エネルギー能力は、6x10ジュール/立方メートル(j/m)よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、比過渡エネルギー能力は、約1x10J/m~約20x10J/m、いくつかの実施形態において、約1.5x10J/m~約10x10J/m、および、いくつかの実施形態において、約2x10J/m~約7x10J/mに及んでもよい。
【0023】
[0025]いくつかの実施形態において、本開示の態様によるバリスタは、性能を大幅に劣化させることなく、反復的な静電放電ストライクに耐えることが可能であり得る。例えば、約8,000ボルトの5,000回以上の静電放電ストライク後のバリスタのブレークダウン電圧は、バリスタの初期ブレークダウン電圧の約0.9倍、いくつかの実施形態において、初期ブレークダウン電圧の約0.95倍、および、いくつかの実施形態において、初期ブレークダウン電圧の約0.98倍よりも大きくなり得る。
【0024】
[0026]いくつかの実施形態において、本開示の態様によるバリスタはまた、低い静電容量も呈することができる。例えば、バリスタは、約100ピコファラッド(「pF」)未満の静電容量を有することができる。例えば、いくつかの実施形態において、バリスタは、約50pF未満、いくつかの実施形態において、約20pF未満、および、いくつかの実施形態において、約10pF未満の静電容量を有することができる。例えば、いくつかの実施形態において、バリスタは、約0.1pF~約20pF、いくつかの実施形態において、約0.1pF~約10pF、いくつかの実施形態において、約0.7pF~約5pF、および、いくつかの実施形態において、約0.1pF~約1pFに及ぶ静電容量を有してもよい。
【0025】
[0027]いくつかの実施形態において、バリスタは、低い漏れ電流を呈することができる。例えば、約30ボルトの動作電圧における漏れ電流は、約10マイクロアンペア(μA)未満であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、約30ボルトの動作電圧における漏れ電流は、約0.01μA~約5μA、いくつかの実施形態において、約0.005μA~約1μA、いくつかの実施形態において、約0.05μA~約0.15μAに及んでもよく、例えば0.1μAでもよい。
【0026】
[0028]ここで図面を参照して、本開示の例示的な実施形態が、これより詳細に論じられる。図1A図1Cは、本開示の態様によるバリスタ10の一実施形態を示す。図1Aは、バリスタ10の一実施形態の様々な層を示す概略断面図である。一実施形態において、バリスタ10は、例えば、上述したようなセラミック誘電体材料から作成される、複数の概ね平坦な誘電体層を含むことができる。
【0027】
[0029]図1Aを参照すると、バリスタ10は、Z方向13に積層された複数の活性電極層12を含むことができる。各活性電極層12は、第1の端子16と電気的に接続された第1の電極14および第2の端子20と電気的に接続された第2の電極18を含むことができる。各第1の電極14は、活性電極端部間隙24を形成するように、長さ方向22において、同じ活性電極層12内のそれぞれの第2の電極18から離間され得る。長さ方向22は、高さ方向13に概ね垂直であり得る。
【0028】
[0030]バリスタ10はまた、複数の浮遊電極層26も含むことができる。複数の浮遊電極層26は、活性電極層12のそれぞれの対の間で交互の構成に配置され(例えば、交互配置され)得る。各浮遊電極層26は、浮遊電極28を含むことができる。いくつかの実施形態において、浮遊電極28は、いかなる外部構造とも直接的に電気接続されないものであり得る。例えば、浮遊電極28は、端子16、20から電気的に分離され得る。いくつかの実施形態において、浮遊電極28は、長さ方向22に関して浮遊電極層26の中央に概ね配置され得る。例えば、浮遊電極層26は、第1の端子16および第2の端子20の各々から長さ方向22においてほぼ等距離に配置され得る。
【0029】
[0031]いくつかの実施形態において、バリスタ10はまた、複数の誘電体層40も含むことができる。例えば、誘電体層40は、活性電極層12と浮遊電極層26との間で交互に配置され得る。誘電体層40は、各活性電極層12と隣接する浮遊電極間隙26との間に配置されるように示されているが、いくつかの実施形態において、すべてよりも少ない活性電極層12と隣接する浮遊電極間隙26との間に配置されてもよい。付加的に、いくつかの実施形態において、誘電体層40の各々は、ほぼ同じ厚さを有することができる。しかしながら、他の実施形態において、誘電体層40は、浮遊電極28と隣接する活性電極16、18との間の距離がバリスタ10内で変化し得るように、様々な厚さを有してもよい。
【0030】
[0032]浮遊電極層26は、浮遊電極間隙42を形成するように、高さ方向13において隣接する活性電極層12から離間され得る。上記で示したように、いくつかの実施態様において、活性電極端部間隙24の浮遊電極間隙42に対する比率は、約2よりも大きくてもよい。
【0031】
[0033]付加的に、いくつかの実施形態において、第1の電極14および/または第2の電極18は、長さ方向22において重複距離(overlap distance)44に沿って浮遊電極28と重なり合ってもよい。活性電極層12は、第1の端子16と第2の端子20との間で長さ方向22において長さ46を有することができる。重複比率(overlap ratio)は、活性電極層12の長さ46を重複距離44によって除算した値として定義され得る。上記で示したように、いくつかの実施形態において、重複比率は、約5よりも大きくてもよい。重複距離44に沿って、第1の電極14および第2の電極18と浮遊電極28との間に静電容量が形成され得る。したがって、約5よりも大きい重複比率は、バリスタ10のエネルギー散逸能力を大幅に低減することなくそのような静電容量を低減することができる。しかしながら、他の実施形態において、第1の電極14および第2の電極18は浮遊電極層28と一切重なり合わなくてもよい。また他の実施形態において、重複比率は約5未満とすることができる。
【0032】
[0034]本開示は、いかなる特定の数の誘電体-電極層にも限定されないことも理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、バリスタ10は、2つ以上の誘電体-電極層、4つ以上の誘電体-電極層、8つ以上の誘電体-電極層、10個以上の誘電体-電極層、20個以上の誘電体-電極層、30個以上の誘電体-電極層、または、任意の適切な数の誘電体-電極層を含んでもよい。
【0033】
[0035]図1Bおよび図1Cを参照すると、バリスタ10は、第1の端面30を有することができる。図1Bおよび図1Cの視点からは示されないが、バリスタ10は、第1の端面30に対向し、長さ方向22においてずれている第2の端面32を含むことができることも理解されたい。バリスタ10はまた、第1の側面34も有することができ、図1Bおよび図1Cの視点からは示されないが、バリスタは、第1の側面34に対向し、長さ方向22に垂直である幅方向38においてずれている第2の側面36を含むことができることも理解されたい。
【0034】
[0036]図1Bは、(例えば、端子がバリスタ10上に形成される前の)端子のないバリスタ10を示す。いくつかの実施形態において、バリスタ10の上層は、露出された活性の第1の電極14および第2の電極18を含むことができる。端子16、20と接続するために、第1の電極14の縁部は、第1の端面30まで延伸することができ、第2の電極18の縁部は、第2の端面32まで延伸することができる。付加的に、他の実施形態において、第1の電極16および第2の電極18はまた、側面34、36まで延伸して、そのような実施形態においては側面の周りで曲がるように構成され得る端子との改善された接続を提供することもできる。
【0035】
[0037]図1Cを参照すると、バリスタ10は、バリスタ10の活性電極14、18を回路(例えば、プリント回路基板上の)に電気的に接続するための終端構造を含むことができる。終端構造は、第1の端子16および第2の端子20を含むことができる。第1の端子16および第2の端子20は、白金、銅、パラジウム銀、または他の適切な伝導性材料の金属化層を含むことができる。スパッタリングなどの典型的な処理技法によって被着されるクロム/ニッケル層および後続する銀/鉛層が、終端構造の他の伝導層として使用され得る。
【0036】
[0038]図1Cに示されているように、第1の端子16は、第1の電極14と電気的に接続されるように、バリスタ10の第1の端面30上に配置され得る。言い換えれば、第1の電極14は、第1の端面30において第1の端子16と電気的に接続し得る。第2の端子20は、第2の端面32において第2の端子20と電気的に接続し得る。
【0037】
[0039]いくつかの実施形態において、バリスタ10の上部誘電体層および/または底部誘電体層は、ダミー電極を含むことができる。ダミー電極は、バリスタ10の電気的特性に実質的に寄与することなく、端子16、20のバリスタ10への機械的接着を改善することができる。例えば、ダミー電極は、長さ方向22において活性電極14、18よりも短くなり得る。ダミー電極は、端子14、18との電気的接続を改善し、および/または、端子14、18の形成(例えば、純銅終端プロセス(fine copper termination process)を使用するなど、無電解および/または電解めっきを通じた)を改善するために、任意の誘電体層40内に形成されてもよい。
【0038】
用途
[0040]本明細書において開示されているバリスタは、多種多様な装置に用途を見出すことができる。例えば、バリスタは、無線周波数アンテナ/増幅器回路に使用され得る。バリスタは、レーザドライバ、センサ、レーダ、無線周波数識別チップ、近赤外線通信、データ線、Bluetooth、光学、Ethernet、および任意の適切な回路を含む様々な技術に用途を見いたすこともできる。
【0039】
[0041]本明細書において開示されているバリスタは、自動車産業に特定の用途を見いたすこともできる。例えば、バリスタは、自動車用途における上述された回路のいずれかに使用され得る。そのような用途において、受動的電気構成要素は、厳密な耐久性および/または性能要件を満たすことを要求され得る。例えば、AEC-Q200規格は、特定の自動車適用を規制する。本開示の態様によるバリスタは、例えばAEX-Q200-002パルス試験を含む、1つまたは複数のAEX-Q200試験を満たすことが可能であり得る。
【0040】
[0042]超低静電容量バリスタ(ultra-low capacitance varistor)は、データ処理および伝送技術において特定の用途を見出すことができる。例えば、本開示の態様は、約1pF未満の静電容量を呈するバリスタを対象とする。そのようなバリスタは、例えば、高周波データ伝送回路における信号歪みへの寄与が最小であり得る。
[0043]本開示は、以下の実施例を参照すると、よりよく理解され得る。
【0041】
実施例
[0044]当該技術分野において知られているように、電子装置のケースサイズは、4桁コード(例えば、XXYY)として表現される場合があり、最初の2桁(XX)はミリメートル(または千分の一インチ)単位の装置の長さであり、最後の2桁(YY)はミリメートル(または千分の一インチ)単位の装置の幅である。例えば、一般的なメートル法のケースサイズは、2012、1608、および0603を含み得る。
【0042】
[0045]例示的な0402ケースサイズバリスタは、1MHzにおいて0.8pFの静電容量を呈し得る。0402ケースサイズバリスタは、15ボルトの作動DC電圧、125ボルトのブレークダウン電圧、および、作動DC電圧における100nAの漏れ電流を有し得る。
【0043】
[0046]本開示の態様によれば、バリスタは、高い比エネルギー能力を有することができる。例示的な高比エネルギー能力バリスタが、以下の表にリストされる。
【0044】
【表1】
【0045】
[0047]リストされているDC動作電圧およびAC動作電圧は、これらの例示的なバリスタの用途を限定するようには意図されない。むしろ、それらは理想的な動作電圧を示すにすぎない。表に示されているように、リストされている動作電圧は、ブレークダウン電圧を十分に下回り、結果、バリスタは、一般的に、それらの動作電圧において高い抵抗を与え(例えば、実効的に開回路として動作する)、望ましくない電流を防止することができる。例えば、上記のバリスタの各々は、DC動作電圧において、約0.1μA以下の漏れ電流を有する。
【0046】
[0048]上記でリストされた0402バリスタは、約0.381ミリメートル(15ミル)~約0.508ミリメートル(20ミル)に及ぶ活性電極端部間隙、および、約0.0254ミリメートル(1ミル)~約0.127ミリメートル(5ミル)に及ぶ浮遊電極間隙を有することができる。そのため、これらの例示的な0402バリスタの活性電極端部間隙の浮遊電極間隙に対する比率は、約3~約18に及ぶことができる。
【0047】
[0049]上記でリストされた0603バリスタは、約0.5588ミリメートル(22ミル)~約0.7112ミリメートル(28ミル)に及ぶ活性電極端部間隙、および、約0.0254ミリメートル(1ミル)~約0.127ミリメートル(5ミル)に及ぶ浮遊電極間隙を有することができる。そのため、これらの例示的な0603バリスタの活性電極端部間隙の浮遊電極間隙に対する比率は、約4~約23に及ぶことができる。
【0048】
[0050]以下の表は、本開示の態様による例示的な超低静電容量バリスタに関する情報を提供する。
【0049】
【表2】
【0050】
[0051]リストされた静電容量値は、上記で提示された試験周波数において測定されている。これらの例示的な超低静電容量バリスタは、データ伝送および/または処理技術に特定の用途を見出すことができる。
【0051】
試験方法
[0052]以下の節は、様々なバリスタ特性を決定するためにバリスタを試験するための例示的な方法を提供する。
【0052】
過渡エネルギー能力
[0053]バリスタの過渡エネルギー能力は、Keithley 2400シリーズ電源測定ユニット(SMU)、例えば、Keithley 2410-C SMUを使用して測定され得る。バリスタは、10x1000μs電流波にさらされ得る。ピーク電流値は、バリスタが(例えば、過熱によって)故障することなく散逸させることが可能である最大エネルギーを決定するように経験的に選択され得る。例示的な電流波は図2に示される。電流(垂直軸202)が時間(水平軸204)に対してプロットされている。電流はピーク電流値206まで増大し、その後、減衰する。「上昇」時間期間(垂直の点線206によって示されている)は、電流パルスの開始(t=0)から、電流がピーク電流値206の90%に達するとき(水平の点線208によって示されている)までである。「減衰時間」(垂直の点線210によって示されている)は、電流パルスの開始(t=0)から、電流がピーク電流値206の50%に戻るとき(水平の点線212によって示されている)までである。10x1000μsパルスについて、「上昇」時間は10μsであり、減衰時間は1000μsである。
【0053】
[0054]パルスがバリスタを通る間、電圧がバリスタにわたって測定され得る。図3は、バリスタを通る電流(垂直軸304)に対する、バリスタにわたる電圧(水平軸302)の例示的なプロットを示す。図3に示されるように、電圧がブレークダウン電圧306を超えると、追加の電流がバリスタを通じて流れても、電圧は大幅には増大しない。言い換えれば、バリスタは電圧を、おおよそ制限電圧308に「固定」する。
【0054】
[0055]バリスタ10の過渡エネルギー処理能力は、バリスタ10を通過したエネルギーの量を計算することによって決定され得る。より具体的には、測定電流と測定電圧との積を、パルス中の時間に関して積分することによって、定格過渡エネルギーが計算され得る。
E=∫IVdt
式中、Eはバリスタによって散逸される総エネルギーであり、Iはバリスタを通る瞬間電流であり、Vはバリスタにわたる瞬間電圧であり、tは時間を表す。
【0055】
[0056]付加的に、バリスタの静電放電能力を決定するために、一連の反復的静電放電ストライクが与えられ得る。例えば、5,000回以上の8,000ボルト静電放電ストライクがバリスタに加えられ得る。この一連のストライクの間、バリスタのブレークダウン電圧が定期的な間隔をおいて(後述されるように)測定され得る。静電放電ストライク後のバリスタのブレークダウン電圧が測定され得、ストライク前の初期ブレークダウン電圧と比較され得る。
【0056】
制限電圧およびブレークダウン電圧
[0057]バリスタの制限電圧は、Keithley 2400シリーズ電源測定ユニット(SMU)、例えば、Keithley 2410-C SMUを使用して測定され得る。再び図3を参照すると、制限電圧308は、上昇時間が8μsであり、減衰時間が20μsである8x20μs電流パルス中にバリスタにわたって測定される最大電圧として、正確に測定され得る。これは、ピーク電流値310がバリスタに損傷を与えるほど大きくならない限り、真のままである。
【0057】
[0058]ブレークダウン電圧306は、バリスタの電流対電圧の関係の変曲点として検出され得る。図3を参照すると、ブレークダウン電圧306よりも大きい電圧について、電流は、ブレークダウン電圧306よりも低い電圧と比較して、電圧の増大とともにより急速に増大し得る。例えば、図3は、電圧に対する電流の両対数グラフを表す。ブレークダウン電圧306よりも低い電圧について、理想的なバリスタは、一般的に、以下の関係に概ね従う電圧を呈し得る。
V=CIβ
式中、Vは電圧を表し、Iは電流を表し、Cおよびβは、バリスタの仕様(例えば、材料特性)に依存する定数である。バリスタについて、定数βは一般的に1未満であり、結果、電圧は、この領域においてオームの法則に従う理想的な抵抗器よりも増大するのが遅い。
【0058】
[0059]一方、ブレークダウン電圧306よりも大きい電圧について、電流対電圧の関係は一般的に、オームの法則に概ね従い得、電流は電圧と線形的に関係付けられる。
V=IR
式中、Vは電圧を表し、Iは電流を表し、Rは大きい一定の抵抗値である。電流対電圧の関係は、上述のように測定され得、経験的に収集された電流対電圧データセットの変曲点を決定するために、任意の適切なアルゴリズムが使用され得る。
【0059】
ピーク電流値
[0060]損傷を受けることなくバリスタが処理することができるピーク電流値は、過渡エネルギー能力に関して上述されたのと同様に、Keithley 2400シリーズ電源測定ユニット(SMU)を使用して測定され得る。バリスタは、増大する電流レベルにおいて連続的な8x20μs電流パルスにさらされ得る。ピーク電流値は、例えば加熱を通じてバリスタを損傷させることなく、8x20μs電流波を使用してバリスタを通じてパルス状にされ得る最大の電流値として経験的に決定され得る。
【0060】
静電容量
[0061]スーパーキャパシタの静電容量は、Keithley 3330精密LCZメータを使用して、0.0ボルト、1.1ボルト、または2.1ボルトのDCバイアス(0.5ボルト二乗平均平方根正弦波信号)を用いて測定され得る。動作周波数は、上記の表2において別途指定されない限り、1,000Hzである。温度は室温であり(約23℃)、相対湿度は25%である。
【0061】
[0062]本発明の思想および範囲から逸脱することなく、本発明のこれらのおよび他の修正および変形が当業者によって実践され得る。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的または部分的の両方で交換され得ることは理解されたい。さらに、上記の説明は例示にすぎず、そのため、添付の特許請求の範囲においてさらに説明される本発明を限定するようには意図されていないことが、当業者には諒解されよう。
図1A
図1B
図1C
図2
図3