(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】揚重ツール
(51)【国際特許分類】
B66C 1/10 20060101AFI20230526BHJP
B66C 13/08 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B66C1/10 B
B66C13/08 C
(21)【出願番号】P 2020556786
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 NL2019050223
(87)【国際公開番号】W WO2019209103
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-16
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】523026709
【氏名又は名称】アイキューアイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクス・ヘラルドゥス・アンドレアス・ファン・フェッセム
(72)【発明者】
【氏名】バウデヴェイン・カスペル・ユング
(72)【発明者】
【氏名】アルベルテュス・クノル
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン・ローレンス・ヘンドリック・ストゥイプ
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0016939(US,A1)
【文献】実開昭48-011570(JP,U)
【文献】特開2008-220065(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011011603(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力タービンのトランジションピース(2)のような海上構造体の要素を揚重するための揚重ツール(1)であって、フレーム(8)と、揚重すべき要素(2)と係合するための複数の係合部材(6)であって、前記フレーム(8)の中心線を中心として互いから所定の角距離で離隔して前記フレーム(8)に取り付けられている前記係合部材(6)と、クレーンの昇降ケーブルに接続するための昇降部材(9)であって、前記係合部材(6)が位置する仮想円柱の内部に配置されている前記昇降部材(9)と、を備えている前記揚重ツール(1)において、
前記昇降部材(9)と前記フレーム(8)とが、前記係合部材(6)から独立して、前記中心線に関する複数のラジアル方向において前記昇降部材(9)が前記フレーム(8)に対して移動可能とされるように配置されている少なくとも3つのリニアアクチュエータ(10)を介して、相互接続されていることを特徴とする揚重ツール(1)。
【請求項2】
前記リニアアクチュエータ(10)が、前記係合部材(6)で前記フレーム(8)に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の揚重ツール(1)。
【請求項3】
前記昇降部材(9)が、前記揚重ツール(1)が動作状態にある際に、前記フレーム(8)の上方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の揚重ツール(1)。
【請求項4】
前記昇降部材(9)と前記フレーム(8)とが、前記昇降部材(9)が前記中心線に配置されている場合に前記昇降部材(9)を中心として等距離で位置決めされている3つの前記リニアアクチュエータ(10)を介して、相互接続されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の揚重ツール(1)。
【請求項5】
前記リニアアクチュエータ(10)それぞれが、第1のピボット(11)を介して、前記昇降部材(9)に回動可能に取り付けられており、且つ、第2のピボット(12)を介して、前記フレーム(8)に回動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載の揚重ツール(1)。
【請求項6】
前記リニアアクチュエータ(10)それぞれが、前記中心線に対して略垂直に延在しており、
前記第1のピボット(11)と前記第2のピボット(12)とがそれぞれ、前記中心線に対して略平行に延在している回動軸線を有していることを特徴とする請求項5に記載の揚重ツール(1)。
【請求項7】
前記リニアアクチュエータが、三脚を形成していることを特徴とする請求項4又は5に記載の揚重ツール(1)。
【請求項8】
前記リニアアクチュエータが、液圧式シリンダ(10)を備えていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の揚重ツール(1)。
【請求項9】
前記係合部材(6)が、上方に方向づけられている支持面(16)を含む支持要素を備えており、前記支持面(16)が、揚重すべき前記要素(2)の協働する揚重プレート(7)と係合するように構成されており、
前記フレーム(8)が、前記支持要素を前記揚重プレート(7)の下方の位置に移動させるように、揚重すべき前記要素(2)に対して前記揚重ツール(1)を回転させるための駆動装置(13)を備えていることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の揚重ツール(1)。
【請求項10】
前記駆動装置が、駆動可能な駆動ホイール(13)によって形成されており、
前記駆動ホイール(13)が、前記中心線に関するラジアル方向において移動可能とされることを特徴とする請求項9に記載の揚重ツール(1)。
【請求項11】
前記支持要素が、前記フレーム(8)の前記中心線に方向づけられていることを特徴とする請求項9又は10に記載の揚重ツール(1)。
【請求項12】
前記揚重ツール(1)が、位置合わせ装置を備えており、
前記位置合わせ装置が、
カメラ(21)の視線(22)が前記フレーム(8)の前記中心線と同一の方向に延在するように位置決めされている前記カメラ(21)と、
前記カメラから信号を受信及び処理するための制御装置であって、前記トランジションピース(2)が前記揚重ツール(1)によってモノパイルに取り付けられ、且つ、前記トランジションピース(2)が前記モノパイルに接近する場合に、前記制御装置が、前記カメラからの信号に基づいて、前記モノパイルの長さに沿った前記モノパイルの少なくとも2つの円周画像(26,27)
を決定するように、且つ、前記カメラ(21)の前記視線(22)に沿って異なる配置に固定位置を有している仮想円周画像(24,25)それぞれを生成するように、且つ、前記仮想円周画像(24,25)及び前記円周画像(26,27)を作業員にユーザインターフェースを介して示すように構成されている前記制御装置と、
を備えていることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の揚重ツール(1)。
【請求項13】
揚重すべき前記要素(2)が、管状要素(3)を閉じるための取り外し可能な保護蓋(5)を備えている管状要素(3)とされることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の揚重ツール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば洋上風力タービンのトランジションピースのような海洋構造体の要素を揚重するための揚重ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の洋上風力タービンは、トランジションピースが載置されるモノパイル基礎を利用する。タービンと当該タービンの塔とは、トランジションピースの上に取り付けられている。トランジションピースは、揚重ツールをクレーンの昇降ケーブル及びトランジションピースに接続することによって揚重される。揚重ツールをトランジションピースの重心に位置合わせすることが重要である。さもなければ、トランジションピースは、クレーンの昇降ケーブル及び/又はトランジションピースから傾いた状態で懸架される。同一の効果が、他の揚重すべき要素に生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、揚重すべき要素の重心と迅速且つ正確に位置合わせすることができる揚重ツールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該目的を達成させるために、本発明は、フレームと、揚重すべき要素と係合するための複数の係合部材であって、揚重すべき要素が、係合部材がフレームの中心線を中心として互いから所定の角距離でフレームに取り付けられている、複数の係合部材と、クレーンの昇降ケーブルに接続するための昇降部材であって、係合部材が載置されている仮想円柱の内部に配置されている昇降部材と、を備えている揚重ツールであって、昇降部材とフレームとが、少なくとも3つのリニアアクチュエータを通じて堅固に相互接続されており、リニアアクチュエータが、係合部材から独立して、昇降部材が中心線に関する複数のラジアル方向においてフレームに対して移動可能とされるように配置されている、揚重ツールを提供する。
【0005】
本発明の利点は、昇降部材の位置が様々なラジアル方向においてフレームに対して調整可能とされることである。本発明は、リニアアクチュエータを動作させることによって自動位置合わせを制御する機会を提供する。このことは、迅速に機能し安全でもある。作業員が、揚重ツールを位置合わせする際に当該揚重ツールから避難することができるからである。揚重ツールは、水平方向及び垂直方向において自動的に位置合わせ及び位置決めを実行するために、加速度/動作、位置、重力、振動、圧力等を計測するためのセンサを備えている。昇降部材の相対位置は、揚重すべき要素の計算又は計測された重心に基づいて、昇降作業を開始する前に調整される。
【0006】
堅固な相互接続によって、フレームと昇降部材との間における押付力を案内することができる。例えばケーブル接続は、当該堅固な相互接続とは異なり、押付力を案内することができない。動作状態において、フレームの中心線は、上方にすなわち略垂直に方向づけられており、係合部材は、水平方向に向いている平面に位置している。フレームの中心線は、仮想円柱の中心線と一致している。
【0007】
好ましくは、アクチュエータは、係合部材と昇降力が作用するフレームの位置との間の距離を最小にするように、係合部材でフレームに結合されている。
【0008】
昇降部材は、揚重ツールの動作状態においてフレームの上方に配置されている。
【0009】
特定の実施例では、昇降部材とフレームとが、昇降部材が中心線に配置された場合に昇降部材を中心として等角距離で位置決めされている3つのリニアアクチュエータを介して相互接続されている。このような配置によって、中心線に関するすべてのラジアル方向に昇降部材を移動させるための機会を得るので、揚重すべき要素に対する所定の回転位置に揚重ツールを位置決めする必要が無くなる。
【0010】
リニアアクチュエータそれぞれが、第1のピボットを介して昇降部材に回動可能に取り付けられており、且つ、第2のピボットを介してフレームに回動可能に取り付けられている。
【0011】
特定の実施例では、リニアアクチュエータが、中心に対して略垂直に延在しており、第1のピボットと第2のピボットとが、中心線に対して略平行に延在している回動軸線それぞれを有している。これにより、構造が単純化されるが、堅牢になる。
【0012】
代替的には、リニアアクチュエータは三脚を形成している。同様に、六脚構造体であっても良い。
【0013】
実際には、リニアアクチュエータは液圧式シリンダとされる。
【0014】
係合部材はそれぞれ、上方に方向づけられている支持面を含む支持要素を備えており、支持面は、揚重すべき要素の協働する揚重プレートと係合するように構成されており、フレームは、支持要素を揚重プレートの下方の位置に移動させるように、揚重すべき要素に対して揚重ツールを回転させるための駆動装置を備えている。この場合には、揚重ツールの支持要素と揚重すべき要素の揚重プレートとが、バヨネット結合を形成している。
【0015】
駆動装置は、駆動可能な駆動ホイールによって形成されており、駆動ホイールが、揚重すべき要素が管状部分を備えている場合に駆動ホイールと揚重すべき要素の管とを係合及び係合解除するために、中心線に関するラジアル方向において移動可能とされる。
【0016】
支持要素が、支持要素が揚重すべき要素の外方に方向づけられている揚重プレートと係合するように、フレームの中心線に方向づけられている。このような外方に方向づけられている揚重プレートは、例えば揚重すべき要素が洋上風力タービンのトランジションピースである場合に優位である。トランジションピースの上側には、トランジションピースのデバイスを一時的に保護するための保護蓋が設けられているからである。外方に方向づけられている揚重プレートが利用される場合には、保護蓋は、昇降作業の際にトランジションピースの上に載置された状態を維持する。
【0017】
揚重ツールが、位置合わせ装置を備えており、位置合わせ装置が、カメラの視線がフレームの中心線と同一の方向に延在するように位置決めされているカメラと、カメラから信号を受信及び処理するための制御装置であって、トランジションピースが揚重ツールによってモノパイルに取り付けられ、且つ、トランジションピースがモノパイルに接近する場合に、制御装置が、カメラからの信号に基づいて、モノパイルの長さに沿った少なくとも2つの円周画像を、例えばモノパイルの上縁及び下縁を決定するように、且つ、カメラの視線に沿って異なる配置に固定位置を有している仮想円周画像それぞれを生成し、仮想円周画像及び円周画像を作業員にユーザインターフェースを介して示すように構成されている制御装置と、を備えている。作業員は、モノパイルを直接視認することができないクレーン操作者である場合がある。クレーン操作者は、トランジションピースとモノパイルとを位置合わせするために、モノパイルの円周画像と仮想円周画像とが互いに対して移動されるように、トランジションピースを含む揚重ツールを移動させることができる。
【0018】
本発明について、本発明の実施例を例示的に表わす概略的な図面を参照しつつ、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明における揚重ツールの一の実施例の斜視図である。
【
図2】
図1に表わす実施例を拡大した斜視図である。
【
図4】揚重ツールの異なる状態を示す、
図3に類似する図である。
【
図5】揚重ツールの異なる状態を示す、
図3に類似する図である。
【
図6】
図2に表わす実施例の断面を表わす斜視図である。
【
図7】
図1に表わす揚重ツールの一部分を拡大した側面図である。
【
図8】揚重ツールの異なる状態を示す、
図7に類似する図である。
【
図10】揚重ツールの異なる状態を示す、
図9に類似する図である。
【
図11】位置合わせ装置の機能を説明するための図である。
【
図12】位置合わせ装置のユーザインターフェースを表わす。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明における揚重ツール1の一の実施例を表わす。揚重ツール1は、例えば風力タービンのトランジションピース2のような海上構造体の要素を揚重するのに、すなわちフランジを含む他の桿体状部材を揚重するのに適している。トランジションピース2は、例えば海底に固定されているモノパイルに取付可能とされる管状要素3を備えている。トランジションピース2は、管状要素3に固定されている作業足場4を備えている。管状要素3は、管状要素3のデバイス(図示しない)を一時的に保護するための保護蓋5によって覆われている上側端部を有している。このようなデバイスは、風力タービンの動作時における利用を意図しており、当該デバイスが洋上に実際に設置される前に、既にトランジションピース2の内側に載置されている。より一般的には、揚重すべき要素は、管状要素を閉じるための取り外し可能な保護蓋を備えている当該管状要素である。
【0021】
トランジションピース2を意図した位置に据え付けた後に、保護蓋5を取り外し、風力タービンの台をトランジションピース2に取り付けることができる。揚重ツール1は、管状要素3の上側端部に固定されている揚重プレート7に係合可能とされる、3つの係合部材6を備えている。係合部材6と揚重プレート7とは、この場合にはバヨネット結合を介して、互いに結合されている。揚重プレート7は、トランジションピース2から外向きの方向に突出している。このことは、保護蓋5が昇降作業の際にトランジションピース2に載置可能であることを意味する。
【0022】
図2は、揚重ツール1の詳細図である。揚重ツール1は、係合部材6が取り付けられているフレーム8を備えている。フレーム8は、動作時に水平に方向づけられている主平面に載置されている。係合部材6は、仮想円柱の上に配置されており、仮想円柱は、フレーム8の水平に方向づけられている主平面に対して垂直とされる中心線を有している。また、揚重ツール1は、昇降部材9の昇降穴を介してクレーン(図示しない)の昇降ケーブルに接続可能とされる昇降部材9を備えている。図示の実施例では、揚重ツール1の動作時に、昇降部材9はフレーム8の上方に配置されている。
【0023】
図2に表わす実施例では、昇降部材9とフレーム8とが、液圧式シリンダ10の形態をした3つのリニアアクチュエータを通じて、相互接続されており、液圧式シリンダ10は、フレーム8の主平面に対して垂直に延在している回動軸線それぞれを含む第1のピボット11それぞれを介して、昇降部材9に回動可能に取り付けられている。液圧式シリンダ10は、仮想円柱の中心線に対して垂直に延在しており、昇降部材9とフレーム8との間に堅固な接続を形成している。第1のピボット11は、昇降部材9を中心として等角距離で配置されている。昇降部材9が仮想円柱の中心線に配置されている場合には、液圧式シリンダ10が、昇降部材9を中心とする等間隔距離で昇降部材9からラジアル方向に延在している。このような状態は、
図3の上面図に表わされている。
【0024】
また、液圧式シリンダ10は、第1のピボット11の回動軸線に対して平行に延在している回動軸線それぞれを含む第2のピボット12それぞれを介して、フレーム8に回動可能に取り付けられている。
図2に表わす実施例では、第2のピボット12は係合部材6に配置されている。昇降部材9及びフレーム8に対する液圧式シリンダ10の配置に起因して、昇降部材9は、係合部材6から独立して、仮想円柱の中心線のあらゆるラジアル方向においてフレーム8に対して移動可能とされる。これにより、昇降部材9を揚重する前に、昇降部材9をトランジションピース2の重心の上方の位置に容易に移動させることができる。
【0025】
揚重ツール1は、駆動ホイール13を備えており、駆動ホイール13は、係合部材6でフレーム8に回動可能に取り付けられているアーム14に取り付けられている。アーム14は、駆動ホイール13がトランジションピース2の管状要素3に行き来することができるように、液圧式シリンダ15によって駆動される。管状要素3に接触した後に駆動ホイール13を駆動する場合には、揚重ツール1が管状要素3に対して回転される。
図4は、このような状態を表わしており、
図3に表わす状態に対してフレーム8が時計回りに回転されていることを示す。このような移動の際に、係合部材6の上方に方向づけられている支持面16それぞれが揚重プレート7の下方に位置決めされ、バヨネット式結合を形成している。
図6は、このような状態を表わす。
【0026】
図7及び
図8は、係合部材6の動作の詳細を表わす。係合部材6それぞれが、アーム17を備えており、アーム17は、水平に方向づけられている回動軸線を有している第3のピボット18を介してフレーム8に回動可能に取り付けられている一方、水平に方向づけられている回動軸線を有している第4のピボット20を介して第2のピボット12の垂直シャフト19に回動可能に取り付けられている。第4のピボット20の回動軸線は、第3のピボット18の回動軸線と比較して昇降部材9の近傍に配置されている。アーム17それぞれが、ロック要素28を備えている。昇降部材9をフレーム8に対して下方に移動させる際に、係合部材6は、ロック要素28を上方に変位させることに起因して揚重プレート7を受容するための開口部を備えている。
図7は、このような状態を表わす。例えば
図8に表わすように、昇降部材9がフレーム8に対して上方に移動される場合には、アーム17は、揚重プレート7が支持面16と上方に移動しているロック要素28との間に固定されるように傾斜する。その結果として、揚重プレート7は昇降の間に湾曲せず、昇降の際に固定された揚重サポートが実現される。アーム17それぞれが、ロック要素28の側面が係合部材6の対向する壁と当接することによって、アーム17が対応する第3のピボット18を介して制限された角度でのみ回転可能とされるように適合されていることに留意すべきである。
【0027】
図5は、液圧式シリンダ10を動作させることによって昇降部材9が仮想円柱の中心線から離隔するようにフレーム8に対して移動される状態を表わす。昇降部材9の相対位置は、昇降作業を開始する前に、トランジションピース2の計算又は計測された重心に基づいて調整される。代替的には、昇降部材9の相対位置は、昇降作業の際に、揚重ツール1及び/又はトランジションピース2に関するセンサからの上方に基づいて調整される。
【0028】
代替的な実施例では、液圧式シリンダは、三脚を形成している。
図9及び
図10は、3つの液圧式シリンダ10のうち2つの液圧式シリンダが視認可能とされる三脚構成の液圧式回路を表わす。
図9は、昇降部材9がフレーム8の中心線に配置されているが、トランジションピース2の重心COGが当該中心線上に位置していない状態を表わす。
図10は、昇降部材9が重心COGと位置合わせされるように液圧式シリンダ10が動作される状態を表わす。
【0029】
当該実施例では、液圧式シリンダ10は、パスカルの原理(principle of communicating volumes)を利用することによって液圧式シリンダ10の内部の油圧を分布させるために、互いに接続されている。3つの液圧式シリンダ10すべてが同一であり、フェイルセーフのためにブレーキ及び二重シールを装備している。さらに、液圧式シリンダ10それぞれが、揚重ツール1をソフトランディング可能とするために圧力を開放するためのシステムを有している。(液体(volume)を連通させるための)液圧式シリンダ10同士の間の液圧管路は、トランジションピース2を揚重するために必要な油を要求された向き(角度)に従って当該システムを通じて流すことを可能又は不可能とするための弁を含んでいる。
【0030】
動作状態において、トランジションピース2を楊重する際にトランジションピース2が揺動し始めないように、揚重ツール1が懸架されているクレーンフックが、垂直方向において重心COGと位置合わせされることが必要であることに留意すべきである。
【0031】
トランジションピース2をモノパイルに安全且つ正確に取り付けるために、揚重ツール1は、カメラ21と制御装置(図示しない)とを含んでいる位置合わせ装置を備えている。
図11は、位置合わせ装置の機能を示す。カメラ21は、揚重ツール1のフレーム8に配置されている。カメラ21は、カメラ21の視線22(view line)がフレーム8の中心線と同一方向に延在するように位置決めされている。
図11のみが、揚重ツール1、トランジションピース2、及びモノパイルを省略した状態で、カメラ21及び制御装置の機能を概略的に示す。しかしながら、
図11に表わす管23はモノパイルを想定している。
図11は、前方仮想円周画像24と後方仮想円周画像25とがカメラ21の視線22に沿って位置していることを表わす。前方仮想円周画像24と後方仮想円周画像25との両方が、視線22に沿って異なる位置を有しており、制御装置によって生成される。トランジションピース2を揚重ツール1によってモノパイルに取り付けようとし、当該モノパイルに接近させる場合には、カメラ21は、モノパイルの前方円周画像26及び後方円周画像27をも検出する。実際に、前方円周画像26及び後方円周画像27は、モノパイルの上縁及び下縁に対応しているが、管23に沿った他の位置であっても良い。制御装置は、検出及び生成された画像24~27を例えば携帯電話のようなユーザーインターフェース(図示しない)を介してクレーンの運転手に提示する。
図12は、クレーンの運転手が見ることができる画像の一例を表わす。これら画像に基づいて、前方仮想円周画像24及び前方円周画像26と後方仮想円周画像25及び後方円周画像27とがそれぞれ同心円を形成するように、すなわちトランジションピース2とモノパイルとが位置合わせされるように、クレーンの運転手は、トランジションピース2の位置及び向きを調整することができる。この場合には、モノパイルすなわち管23が円状の断面を有しており、ひいては同心円になっていることに留意すべきであるが、他の形状であっても良い。
【0032】
制御装置は、画像を同心で配置させるためにクレーンの運転手が要求する必要な移動を計算するためのソフトウェアを備えている。クレーンの運転手は、安全な方法で工程を遂行するためにモノパイルにおいて人による補助を必要とせず、トランジションピース2とモノパイルとを位置合わせすることができる。
【0033】
また、より一般的には、本発明は、例えば揚重ツールのような部材を例えばモノパイルのような桿体状要素に対して位置合わせするための方法であって、カメラが、位置合わせすべき部材に取り付けられており、カメラの視界が、位置合わせの後に桿体状部材の中心線と略一致している視線に沿って延在するように、カメラが、位置決めされており、カメラを含む部材が、カメラによって桿体状要素が視認可能とされる当該桿体状要素の端部又はその近傍に配置されており、これにより、カメラが、長手方向において異なる位置に配置された桿体状要素の少なくとも2つの円周画像、例えば桿体状要素の上縁及び下縁を検出し、カメラの視線に沿って異なる位置における少なくとも2つの仮想円周画像が生成され、位置合わせすべき部材と桿体状要素とが、仮想円周画像の中心が桿体状要素の円周画像の中心と略一致するように、互いに対して変位及び方向づけられる、方法に関する。また、本発明は、当該方法を適用する位置合わせ装置に関する。
【0034】
本発明は、図面及び発明の詳細な説明に示す実施例に限定される訳ではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲内であれば、様々な態様に変化させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 揚重ツール
2 トランジションピース
3 管状要素
4 作業足場
5 保護蓋
6 係合部材
7 揚重プレート
8 フレーム
9 昇降部材
10 液圧式シリンダ
11 第1のピボット
12 第2のピボット
13 駆動ホイール
14 アーム
15 液圧式シリンダ
17 アーム
18 第3のピボット
19 (第2のピボット12の)垂直シャフト
20 第4のピボット
21 カメラ
22 (カメラ21の)視線
23 管
24 前方仮想円周画像
25 後方仮想円周画像
26 (モノパイルの)前方円周画像
27 (モノパイルの)後方円周画像
28 ロック要素