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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20230526BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20230526BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20230526BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230526BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/22 501A
G01N23/2252
G01N23/04 330
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021001502
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106481
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】八木 一樹
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 佑輔
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-051576(JP,A)
【文献】CATRIONA S.M.YEOH et al.,The Dark Side of EDX Tomography:Modeling Detector Shadowing to Aid 3D Elemental Signal Analysis,Microscopy AND Microanalysis,2015年,Vol.21, No.3,p.759-764,ISSN:1431-9276,DOI:HTTP://DX.DOI.ORG/10.1017/S1431927615000227
【文献】KRAXNER JOHANNA et al.,Quantitative EDXS:Influence of geometry on a four detector system,Ultramicroscopy,2017年10月18日,Vol.172,P.30-39
【文献】XU W et al.,A numerical model for multiple detector energy dispersive X-ray spectroscopy in the transmission electron microscope,Ultramicroscopy,2016年,Vol.164,P.51-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00 - 37/36
G01N 23/00 - 23/2276
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を傾斜させる傾斜機構と、
前記試料から放出される電磁波を検出する検出器と、
前記試料の傾斜角を示す傾斜角情報と前記検出器の検出立体角を示す検出立体角情報とを対応づけたテーブルが記憶されたテーブル記憶部と、
前記傾斜機構を制御する傾斜制御部と、
前記傾斜制御部から前記傾斜角情報を取得し、前記テーブルを参照して、前記検出立体角情報を取得する検出立体角情報取得部と、
前記検出器で電磁波を検出する測定時間を設定する測定時間設定部と、
を含
前記測定時間設定部は、
前記検出器の検出立体角が変化した場合に、検出立体角が変化する前の前記検出立体角情報と、検出立体角が変化した後の前記検出立体角情報に基づいて、1回の測定で前記検出器で検出される信号量が検出立体角が変化する前後で一定となるように前記測定時間を設定する、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記検出器における電磁波の検出結果に基づいて分析データを生成する分析データ生成部と、
前記分析データが記憶される分析データ記憶部と、
を含み、
前記分析データ生成部は、
前記検出立体角情報取得部から前記検出立体角情報を取得する処理と、
取得した前記検出立体角情報を、前記分析データに関連づけて、前記分析データ記憶部に記憶する処理と、
を行う、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記検出立体角情報に基づく画像を、表示部に表示させる表示制御部を含む、荷電粒子
線装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記検出立体角情報は、検出立体角を、検出立体角の、前記検出器で得られる最大の検出立体角に対する割合として表したものである、荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記測定時間設定部は、前記検出器で得られる最大の検出立体角である最大検出立体角に対する検出立体角が変化する前の検出立体角の割合と、前記最大検出立体角に対する検出立体角が変化した後の検出立体角の割合に基づいて、前記測定時間を設定する、荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記検出立体角情報の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部から前記検出立体角情報を取得し、前記テーブルを参照して、前記傾斜角情報を取得する傾斜角情報取得部と、
を含み、
前記傾斜制御部は、前記傾斜角情報に基づいて、前記傾斜機構を制御する、荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
前記検出立体角情報が示す検出立体角が閾値よりも小さい場合に、警告情報を通知する通知部を含む、荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記試料に電子線を照射する照射系レンズを含み、
前記電磁波は、X線である、荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
前記傾斜機構を有する試料ステージと、
前記試料ステージに装着可能であって、前記試料を保持する第1試料ホルダーと、
前記試料ステージに装着可能であって、前記試料を保持し、前記第1試料ホルダーと形状の異なる第2試料ホルダーと、
を含み、
前記テーブル記憶部には、2つの前記テーブルが記憶され、
2つの前記テーブルのうちの第1テーブルは、前記第1試料ホルダーにおける、前記傾斜角情報と前記検出立体角情報を対応づけるテーブルであり、
2つの前記テーブルのうちの第2テーブルは、前記第2試料ホルダーにおける、前記傾斜角情報と前記検出立体角情報を対応づけるテーブルである、荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、
前記検出器は、2つ配置され、
前記テーブル記憶部には、2つの前記テーブルが記憶され、
2つの前記テーブルのうちの第3テーブルは、2つの前記検出器のうちの第1検出器における、前記傾斜角情報と前記検出立体角情報を対応づけるテーブルであり、
2つの前記テーブルのうちの第4テーブルは、2つの前記検出器のうちの第2検出器における、前記傾斜角情報と前記検出立体角情報を対応づけるテーブルである、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡や、透過電子顕微鏡に搭載される元素分析装置として、エネルギー分散型X線分光装置(Energy dispersive X-ray Spectrometer)が知られている。
【0003】
エネルギー分散型X線分光装置が搭載された電子顕微鏡において、試料で発生したX線を検出する際には、X線検出器が試料近傍に配置される。このようなエネルギー分散型X線分光装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-72005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子顕微鏡では、試料ステージは、試料を傾斜させる傾斜機構を有している。例えば、透過電子顕微鏡において、結晶性の試料を高倍率で観察する際には、結晶格子が観察できるように試料を傾斜させて、特定の結晶方位を電子線の入射方向に合わせる。
【0006】
しかしながら、試料を傾斜させると、試料で発生したX線が試料ホルダーなどの試料近傍に配置された部材で遮られて、X線検出器の検出面の一部にしかX線が入射しない。したがって、X線検出器の検出立体角が小さくなり、検出効率が低くなってしまう。なお、検出効率とは、試料から放出されたX線のうち、検出されて信号となる割合をいう。
【0007】
電子顕微鏡において、検出器の検出立体角を把握できれば、検出効率が高い最適な状態で測定ができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
試料を傾斜させる傾斜機構と、
前記試料から放出される電磁波を検出する検出器と、
前記試料の傾斜角を示す傾斜角情報と前記検出器の検出立体角を示す検出立体角情報とを対応づけたテーブルが記憶されたテーブル記憶部と、
前記傾斜機構を制御する傾斜制御部と、
前記傾斜制御部から前記傾斜角情報を取得し、前記テーブルを参照して、前記検出立体角情報を取得する検出立体角情報取得部と、
前記検出器で前記電磁波を検出する測定時間を設定する測定時間設定部と、
を含
前記測定時間設定部は、
前記検出器の検出立体角が変化した場合に、検出立体角が変化する前の前記検出立体角情報と、検出立体角が変化した後の前記検出立体角情報に基づいて、1回の測定で前記検出器で検出される信号量が検出立体角が変化する前後で一定となるように前記測定時間を設定する
【0009】
このような荷電粒子線装置では、検出立体角情報取得部がテーブルを参照して傾斜角情報から検出立体角情報を取得するため、検出立体角を容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
図2】X線検出器を説明するための図。
図3】X線検出器と試料の位置関係を説明するための図。
図4】検出器制御部の構成を示す図。
図5】傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけたテーブルを説明するための図。
図6】分析画面を模式的に示す図。
図7】表示処理の一例を示すフローチャート。
図8】分析画面の変形例を模式的に示す図。
図9】分析画面の変形例を模式的に示す図。
図10】検出器制御部の変形例を示す図。
図11】測定時間を設定する処理の一例を示すフローチャート。
図12】検出器制御部の変形例を示す図。
図13】検出立体角を設定する処理の一例を示すフローチャート。
図14】検出器制御部の変形例を示す図。
図15】通知部による通知の一例を示す図。
図16】通知処理の一例を示すフローチャート。
図17】検出器制御部の変形例を示す図。
図18】第2実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
図19】第2実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
図20】第1X線検出器と試料の位置関係、および第2X線検出器と試料の位置関係を説明するための図。
図21】検出器制御部の構成を示す図。
図22】第2X線検出器における傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけたテーブルを説明するための図。
図23】分析画面を模式的に示す図。
図24】分析画面を模式的に示す図。
図25】分析画面を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
また、以下では、本発明に係る荷電粒子線装置として、電子線を試料に照射してX線を発生させる透過電子顕微鏡を例に挙げて説明するが、本発明に係る荷電粒子線装置は電子線以外の荷電粒子線(イオンビーム等)を試料に照射してX線を発生させる装置であってもよい。また、本発明に係る荷電粒子線装置は電子線を試料に照射してX線以外の電磁波(カソードルミネッセンス等)を発生させる装置であってもよい。
【0013】
1. 第1実施形態
1.1. 電子顕微鏡
まず、第1実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。なお、図1には、便宜上、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0014】
電子顕微鏡100は、電子源10と、照射系レンズ11と、試料ホルダー12と、試料ステージ14と、対物レンズ15と、中間レンズ16と、投影レンズ17と、撮像装置18と、X線検出器20と、傾斜制御部30と、検出器制御部40と、を含む。電子顕微鏡100は、透過電子顕微鏡である。
【0015】
電子源10は、電子線を発生させる。電子源10は、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する電子銃である。
【0016】
照射系レンズ11は、電子源10で発生した電子線を集束して試料Sに照射するためのレンズである。
【0017】
試料ホルダー12は、試料Sを保持している。試料ホルダー12は、試料ステージ14に装着可能である。試料ステージ14は、試料ホルダー12に保持された試料Sを位置決めする。図示の例では、試料ステージ14は、対物レンズ15のポールピースの横から試料Sを挿入するサイドエントリーステージである。
【0018】
電子顕微鏡100は、試料Sを傾斜させる傾斜機構13を有している。傾斜機構13は、試料SをX方向に傾斜させるX傾斜機構と、試料SをY方向に傾斜させるY傾斜機構と、を有している。具体的には、試料ステージ14は、試料SをX方向に傾斜させるX傾斜機構を有している。また、試料ホルダー12は、試料SをY方向に傾斜させるY傾斜機構を有している。このように電子顕微鏡100では、試料Sを互いに直交する2方向(X方向およびY方向)に傾斜させることができる。なお、傾斜機構13の構成は、特に限定されない。
【0019】
対物レンズ15は、試料Sを透過した電子線で透過電子顕微鏡像(TEM像)を結像するための初段のレンズである。対物レンズ15は、図示はしないが、ポールピースを有しており、ポールピースの上極とポールピースの下極との間に磁場を発生させて電子線を集束させる。
【0020】
中間レンズ16および投影レンズ17は、対物レンズ15によって結像されたTEM像をさらに拡大し、撮像装置18に結像させる。電子顕微鏡100では、対物レンズ15、中間レンズ16、および投影レンズ17によって、結像系が構成されている。
【0021】
撮像装置18は、結像系によって結像されたTEM像を撮影する。撮像装置18は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary MOS)カメラ等のデジタルカメラである。
【0022】
X線検出器20は、試料Sに電子線が照射されることにより試料Sから放出された特性X線を検出する。X線検出器20としては、例えば、シリコンドリフト検出器(Silicon Drift Detector、SDD)、Si(Li)検出器などを用いることができる。X線を検出する際には、X線検出器20は、試料Sの近傍に配置される。
【0023】
傾斜制御部30は、傾斜機構13を制御する。傾斜制御部30は、試料ステージ14のX傾斜機構および試料ホルダー12のY傾斜機構を制御する。傾斜制御部30は、例えば、傾斜機構13を制御して、試料Sを傾斜させる処理を行う。傾斜制御部30は、試料Sの傾斜角を示す傾斜角情報の入力を受け付ける入力受付部を含む。試料Sの傾斜角は、水平面に対する試料Sの角度である。入力受付部の機能は、例えば、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどで実現できる。
【0024】
傾斜制御部30は、試料Sの傾斜角を示す傾斜角情報を検出器制御部40に送る。傾斜制御部30が傾斜角情報を検出器制御部40に送ることによって、傾斜制御部30と検出器制御部40において、傾斜角情報を共有することができる。
【0025】
傾斜角情報は、試料SのX方向の傾斜角の情報と、試料SのY方向の傾斜角の情報と、を含む。傾斜角情報は、試料Sの傾斜角を特定するための情報である。
【0026】
傾斜制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置(RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)を含む。傾斜制
御部30では、CPUなどのハードウェアで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種計算処理、各種制御処理を行う。
【0027】
検出器制御部40は、X線検出器20を制御する。また、検出器制御部40は、X線検出器20におけるX線の検出結果に基づいて分析データを生成する。分析データは、スペクトルデータや、マッピングデータを含む。
【0028】
図2は、X線検出器20を説明するための図である。
【0029】
X線検出器20にX線が入射すると、X線検出器20内でX線のエネルギーの大きさに応じた電荷が発生し、この電荷がX線検出器20内の電界効果型トランジスタによって電圧に変換される。X線検出器20から出力された信号(パルス信号)は、比例増幅器22で増幅され、多重波高分析器24で波高値ごとに計数される。検出器制御部40は、この波高値ごとのパルス数に基づいて、横軸にX線のエネルギー、縦軸にX線のカウント数(強度)で示されるスペクトルを示すスペクトルデータを生成する。
【0030】
図3は、X線検出器20と試料Sの位置関係を説明するための図である。
【0031】
図3に示すように、電子顕微鏡100では、試料Sで発生したX線を検出する際には、試料Sの側方にX線検出器20が配置される。図示の例では、試料Sから見て、-X方向にX線検出器20が配置されている。上述したように、電子顕微鏡100は、傾斜機構13を有しており、試料Sを傾斜させることができる。図示の例では、X傾斜機構を用いて、試料SをX方向に傾斜させている。
【0032】
ここで、試料Sを傾斜させると、試料Sから放出されたX線が試料S近傍に配置された部材で遮られてしまう場合がある。図3に示す例では、試料Sから放出されたX線の一部が試料ホルダー12で遮られている。そのため、X線検出器20の検出面21の一部にしかX線が入射しない。したがって、X線検出器20の検出立体角が減少してしまう。ここで、検出立体角とは、試料S上の電子線の入射点からX線検出器20の検出面21を見込んだ立体角をいう。検出立体角は、検出面21の有効検出面積が大きいほど大きくできる。検出立体角が大きいほど、検出効率が高い。
【0033】
図4は、検出器制御部40の構成を示す図である。
【0034】
検出器制御部40は、図4に示すように、処理部410と、操作部420と、表示部430と、記憶部440と、を含む。
【0035】
操作部420は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部410に出力する。操作部420の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどのハードウェアにより実現することができる。
【0036】
表示部430は、処理部410によって生成された画像を表示する。表示部430の機能は、LCD(liquid crystal display)、CRT(Cathode Ray Tube)、操作部420としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
【0037】
記憶部440は、処理部410の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部440は、処理部410のワーク領域としても機能する。記憶部440の機能は、ハードディスク、RAMなどにより実現できる。
【0038】
処理部410は、X線検出器20を制御する処理を行う。処理部410の機能は、各種
プロセッサ(CPU等)などのハードウェアでプログラムを実行することにより実現できる。処理部410は、検出立体角情報取得部412と、分析データ生成部414と、表示制御部416と、を含む。
【0039】
検出立体角情報取得部412は、傾斜制御部30から傾斜角情報を取得し、傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけたテーブルを参照して、検出立体角情報を取得する。
【0040】
図5は、傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけたテーブルT2を説明するための図である。
【0041】
図5に示すテーブルT2の横軸は、X方向の傾斜角情報(TiltX)を表す軸であり、縦軸はY方向の傾斜角情報(TiltY)を表す軸である。図示の例では、TiltXは、試料SのX方向の傾斜角[°]を示し、TiltYは、試料SのY方向の傾斜角[°]を示している。座標(TiltX,TiltY)=(0,0)は、試料SのX方向の傾斜角が0°、試料SのY方向の傾斜角が0°であることを示している。すなわち、座標(TiltX,TiltY)=(0,0)は、試料Sが水平な状態を示している。
【0042】
テーブルT2の各座標(TiltX,TiltY)には、各座標で表される傾斜角情報に対応した検出立体角情報が記憶されている。
【0043】
例えば、X方向の傾斜角がA[°]、Y方向の傾斜角がB[°]の場合、座標(TiltX,TiltY)=(A,B)で表される。テーブルT2の座標(A,B)には、検出立体角情報としてC[sr]が記憶されている。そのため、テーブルT2を参照することによって、傾斜角情報(A,B)から検出立体角情報C[sr]を取得できる。
【0044】
図5に示すテーブルT2には、検出立体角Ωを、検出立体角Ωの、X線検出器20で得られる最大の検出立体角Ωmaxに対する割合Ω/Ωmaxで表した場合に、当該割合が80%以上の座標、および、当該割合が40%以下の座標にそれぞれハッチングを付している。
【0045】
テーブルT2は、例えば、3次元CADで電子顕微鏡100のモデルを作成し、当該モデルを用いて、検出立体角を算出することで作成できる。X傾斜機構およびY傾斜機構によって傾斜可能なすべての傾斜角について検出立体角を算出することで、テーブルT2を作成できる。
【0046】
テーブルT2は、記憶部440に記憶されている。すなわち、記憶部440は、テーブルT2が記憶されたテーブル記憶部として機能する。
【0047】
分析データ生成部414は、X線検出器20におけるX線の検出結果に基づいて、分析データを生成する。分析データ生成部414は、例えば、スペクトルデータや、マッピングデータを生成する。マッピングデータは、試料上の元素の分布を示す元素マッピングデータ、および試料上の位置とスペクトルを関連付けたスペクトルマッピングデータを含む。
【0048】
分析データ生成部414は、生成した分析データを記憶部440に記憶する。このとき、分析データ生成部414は、分析データに、測定条件を関連づけて記憶する。測定条件は、検出立体角情報を含む。分析データ生成部414は、検出立体角情報取得部412から検出立体角情報を取得し、取得した検出立体角情報を分析データに関連付けて記憶部440に記憶する。
【0049】
記憶部440は、分析データに測定条件情報が関連付けて記憶される分析データ記憶部
として機能する。
【0050】
なお、電子顕微鏡100では、1つの記憶装置が分析データ記憶部およびテーブル記憶部として機能するが、分析データ記憶部とテーブル記憶部を、別々の記憶装置で実現してもよい。
【0051】
表示制御部416は、検出立体角情報に基づく画像を表示部430に表示させる。検出立体角情報に基づく画像には、数字や、記号、図形、グラフなどを含む。また、表示制御部416は、分析データに基づく画像を表示部430に表示させる。分析データに基づく画像は、スペクトルや、マップなどを含む。
【0052】
図6は、分析画面2を模式的に示す図である。
【0053】
表示制御部416は、表示部430に分析画面2を表示させる。分析画面2は、分析結果表示領域4と、検出立体角表示領域6と、を含む。分析結果表示領域4には、分析データに基づく画像が表示される。図示の例では、分析データに基づく画像としてスペクトルが表示されている。検出立体角表示領域6には、検出立体角情報に基づく画像が表示される。図示の例では、検出立体角情報に基づく画像として、検出立体角の大きさを示す数値が表示されている。図6に示すように、表示部430に検出立体角情報に基づく画像が表示されることによって、ユーザーは容易に検出立体角を把握できる。
【0054】
1.2. 動作
次に、電子顕微鏡100の動作について説明する。電子顕微鏡100において、試料Sの傾斜角が変わると、検出立体角も変わる。そのため、電子顕微鏡100では、試料Sの傾斜角が変更されると、変更された傾斜角に対応する検出立体角を示すための画像を表示部430に表示する。以下では、検出立体角を示すための画像を表示部430に表示させる表示処理について説明する。
【0055】
図7は、電子顕微鏡100における表示処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
電子顕微鏡100において、ユーザーが傾斜制御部30の入力受付部を操作して試料Sの傾斜角情報を入力すると、入力受付部が傾斜角情報を受け付ける(S100のYes)。
【0057】
傾斜制御部30は、入力された傾斜角情報に基づいて、傾斜機構13を制御する(S102)。傾斜制御部30は、傾斜角情報から、X方向の傾斜角の情報(TiltX)およびY方向の傾斜角の情報(TiltY)を取得し、X方向の傾斜角の情報に基づいてX傾斜機構を動作させ、Y方向の傾斜角の情報に基づいてY傾斜機構を動作させる。この結果、試料Sの傾斜角が、入力された傾斜角情報に対応した傾斜角となる。
【0058】
次に、傾斜制御部30は、傾斜角情報を検出器制御部40に送る(S104)。これにより、傾斜制御部30と検出器制御部40において、現在の試料Sの傾斜角を示す傾斜角情報を共有できる。なお、傾斜角情報を送る処理は、傾斜機構13を制御する処理(S102)の前に行ってもよいし、傾斜機構13を制御する処理(S102)と同時に行ってもよい。
【0059】
検出立体角情報取得部412は、傾斜制御部30から傾斜角情報を取得し、テーブルT2を参照して、検出立体角情報を取得する(S106)。
【0060】
分析データ生成部414は、ユーザーが測定を開始する指示(開始指示)を行ったか否
かを判定する(S108)。例えば、操作部420から開始指示が入力された場合に、開始指示があったと判断する。
【0061】
開始指示があったと判断された場合(S108のYes)、分析データ生成部414は、X線検出器20におけるX線の検出結果に基づいて分析データを生成する(S110)。表示制御部416は、図6に示すように、分析データに基づく画像と検出立体角情報に基づく画像を表示部430に表示させる(S112)。これにより、図6に示すように、表示部430には、分析データを示す画像と、測定時のX線検出器20の検出立体角を示す画像が表示される。
【0062】
分析データ生成部414は、検出立体角情報を、分析データに関連付けて記憶部440に記憶する(S114)。
【0063】
開始指示がなかったと判断された場合(S108のNo)、表示制御部416は、検出立体角情報に基づく画像を、表示部430に表示させる(S116)。これにより、表示部430には、現在のX線検出器20の検出立体角を示す画像が表示される。処理S114の後、または処理S116の後、電子顕微鏡100は表示処理を終了する。
【0064】
1.3. 作用効果
電子顕微鏡100は、試料Sの傾斜角を示す傾斜角情報とX線検出器20の検出立体角を示す検出立体角情報とを対応づけたテーブルT2が記憶された記憶部440と、傾斜機構13を制御する傾斜制御部30と、傾斜制御部30から傾斜角情報を取得し、テーブルT2を参照して、検出立体角情報を取得する検出立体角情報取得部412と、を含む。このように、電子顕微鏡100では、検出立体角情報取得部412がテーブルT2を参照して傾斜角情報から検出立体角情報を取得するため、検出立体角を容易に把握できる。
【0065】
電子顕微鏡100では、分析データ生成部414は、検出立体角情報取得部412から検出立体角情報を取得する処理と、取得した検出立体角情報を、分析データに関連づけて、記憶部440に記憶する処理と、を行う。このように、電子顕微鏡100では、分析データに検出立体角情報が関連付けられて記憶部440に記憶されるため、検出立体角を考慮した解析ができる。例えば、スペクトルを取得して定量分析を行う場合に、検出立体角を考慮することができる。これにより、定量精度を高めることができる。
【0066】
電子顕微鏡100では、検出立体角情報に基づく画像を、表示部430に表示させる表示制御部416を含む。そのため、電子顕微鏡100では、ユーザーが検出立体角を容易に把握できる。したがって、電子顕微鏡100では、複数の試料Sについて分析を行う場合であっても、検出立体角に関して同一条件で分析を行うことができる。
【0067】
1.4. 変形例
次に、第1実施形態に係る電子顕微鏡の変形例について説明する。以下では、上述した電子顕微鏡100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0068】
1.4.1. 第1変形例
図8および図9は、分析画面2の変形例を模式的に示す図である。
【0069】
上述した実施形態では、図6に示すように、検出立体角表示領域6には、検出立体角情報に基づく画像として、検出立体角の大きさを示す数値が表示されていたが、検出立体角情報に基づく画像は、これに限定されない。
【0070】
例えば、検出立体角情報に基づく画像は、図8に示すように、検出立体角を、検出立体
角Ωの、X線検出器20の最大の検出立体角Ωmaxに対する割合Ω/Ωmax(以下、単に「最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmax」ともいう)として表したものであってもよい。このとき、図5に示すテーブルT2の各座標に記録される検出立体角情報は、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxであってもよい。
【0071】
また、例えば、検出立体角情報に基づく画像は、図9に示すように、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxを図やグラフとして表したものであってもよい。図示の例では、円を、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxに対応する領域だけ塗りつぶして、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxを表している。
【0072】
また、図示はしないが、検出立体角情報に基づく画像として、検出面21を模式的に示す画像上に、実際にX線が照射される領域と、X線が照射されない領域と、を示したものを表示してもよい。これにより、検出面21上のX線が実際に照射されている領域を視覚的に把握することができる。
【0073】
1.4.2. 第2変形例
第2変形例では、電子顕微鏡100は、検出立体角が変更されても、1回の測定における信号量が一定となるように、検出立体角に基づいて測定時間を設定する。図10は、検出器制御部40の変形例を示す図である。
【0074】
第2変形例では、検出器制御部40の処理部410は、図10に示すように、測定時間設定部417を含む。
【0075】
測定時間設定部417は、検出立体角情報に基づいて、測定時間を設定する。測定時間は、1回の測定においてX線検出器20でX線を検出する時間である。
【0076】
測定時間設定部417は、互いに異なる検出立体角で複数回の測定を行った場合であっても、各測定においてX線検出器20で検出される信号量(X線量)が一定となるように、検出立体角情報に基づいて測定時間を設定する。
【0077】
例えば、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxが100%のときに、測定時間がt秒に設定されている状態で、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxが50%に変更されると、測定時間設定部417は、測定時間を2×t秒に設定する。これにより、信号量を一定にできる。
【0078】
また、例えば、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxが50%のときに、測定時間がt秒に設定されている状態で、最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxが100%に変更されると、測定時間設定部417は、測定時間をt/2秒に設定する。これにより、信号量を一定にできる。
【0079】
図11は、電子顕微鏡100における測定時間を設定する処理の一例を示すフローチャートである。
【0080】
電子顕微鏡100において、ユーザーが検出器制御部40の操作部420を操作して測定時間を設定するための測定時間情報を入力すると、操作部420が測定時間情報を受け付ける(S200のYes)。操作部420は、測定時間情報を受け付けると、処理部410に測定時間情報を送る。このように、操作部420は、測定時間情報を受け付ける入力受付部として機能する。
【0081】
測定時間設定部417は、操作部420から測定時間情報を取得し、取得した測定時間
情報に基づいて、測定時間を設定する(S202)。
【0082】
次に、傾斜制御部30は、傾斜角情報を検出器制御部40に送る(S204)。これにより、傾斜制御部30と検出器制御部40において、現在の試料Sの傾斜角情報を共有できる。なお、傾斜角情報を送る処理は、測定時間を設定する処理(S202)の前に行ってもよいし、測定時間を設定する処理(S202)と同時に行ってもよい。
【0083】
検出立体角情報取得部412は、傾斜制御部30から傾斜角情報を取得し、テーブルT2を参照して、検出立体角情報を取得する(S206)。
【0084】
測定時間設定部417は、検出立体角情報に基づいて、検出立体角が変化したか否かを判定する(S208)。測定時間設定部417が、検出立体角が変化していないと判定した場合(S208のNo)、処理S204に戻って、傾斜制御部30が傾斜角情報を送る処理S204および検出立体角情報取得部412が傾斜立体角情報を取得する処理S206が行われる。そして、測定時間設定部417が、検出立体角が変化したか否かを判定する(S208)。このように、測定時間設定部417は、検出立体角をモニターする。
【0085】
測定時間設定部417は、検出立体角が変化したと判定した場合(S208のYes)、検出立体角情報に基づいて、測定時間を設定する(S210)。
【0086】
例えば、最大検出立体角に対する割合が100%から50%に変化した場合、測定時間設定部417は、測定時間をt秒から2×t秒に変更する。また、例えば、最大検出立体角に対する割合が50%から100%に変化した場合、測定時間設定部417は、測定時間をt秒からt/2秒に変更する。処理S210の後、電子顕微鏡100は測定時間を設定する処理を終了する。
【0087】
第2変形例では、電子顕微鏡100は、X線検出器20でX線を検出する測定時間を設定する測定時間設定部417を含み、測定時間設定部417は、検出立体角情報に基づいて、測定時間を設定する。そのため、電子顕微鏡100では、例えば、互いに異なる検出立体角で複数回の測定を行った場合でも、各測定においてX線検出器20で検出される信号量に関する条件を一定にできる。
【0088】
1.4.3. 第3変形例
第3変形例では、電子顕微鏡100は、ユーザーが操作部420を介して所望する検出立体角情報を入力すると、所望する検出立体角となるように試料Sを傾斜させる。図12は、検出器制御部40の変形例を示す図である。
【0089】
第3変形例では、検出器制御部40の処理部410は、図12に示すように、傾斜角情報取得部418を含む。
【0090】
ユーザーが操作部420を介して検出立体角情報を入力すると、操作部420が検出立体角情報を受け付けて、処理部410に送る。このように、操作部420は、検出立体角情報を受け付ける入力受付部として機能する。
【0091】
傾斜角情報取得部418は、操作部420から検出立体角情報を取得し、テーブルT2を参照して、傾斜角情報を取得する。例えば、検出立体角情報としてC[sr]が入力された場合、傾斜角情報取得部418は、テーブルT2からC[sr]が記憶されている座標を検索する。図5に示すテーブルT2では、C[sr]は、座標(TiltX,TiltY)=(A,B)に記憶されている。そのため、傾斜角情報取得部418は、傾斜角情報として、X方向の傾斜角がA[°]、Y方向の傾斜角がB[°]を取得できる。
【0092】
傾斜角情報取得部418は、取得した傾斜角情報を傾斜制御部30に送る。傾斜制御部30は、傾斜角情報に基づいて、傾斜機構13を制御する。これにより、ユーザーが所望する検出立体角で測定を行うことができる。
【0093】
図13は、電子顕微鏡100における検出立体角を設定する処理の一例を示すフローチャートである。
【0094】
電子顕微鏡100において、ユーザーが検出器制御部40の操作部420を操作して検出立体角情報を入力すると、操作部420が検出立体角情報を受け付ける(S300のYes)。操作部420は、検出立体角情報を処理部410に送る。
【0095】
傾斜角情報取得部418は、操作部420から検出立体角情報を取得し、テーブルT2を参照して、傾斜角情報を取得する(S302)。傾斜角情報取得部418は、取得した傾斜角情報を傾斜制御部30に送る(S304)。
【0096】
傾斜制御部30は、傾斜角情報に基づいて傾斜機構13を制御する(S306)。これにより、試料Sが傾斜し、X線検出器20の検出立体角が、入力された検出立体角情報に対応した検出立体角となる。処理S306の後、電子顕微鏡100は検出立体角を設定する処理を終了する。
【0097】
第3変形例では、電子顕微鏡100は、検出立体角情報の入力を受け付ける入力受付部としての操作部420と、当該入力受付部から検出立体角情報を取得し、テーブルT2を参照して、傾斜角情報を取得する傾斜角情報取得部418と、を含む。また、傾斜制御部30は、傾斜角情報に基づいて、傾斜機構13を制御する。そのため、電子顕微鏡100では、所望する検出立体角となるように、傾斜制御部30を動作させることができる。したがって、電子顕微鏡100では、自動で、X線検出器20の検出立体角を、所望する検出立体角にできる。
【0098】
1.4.4. 第4変形例
第4変形例では、電子顕微鏡100は、検出立体角が小さい場合に、警告情報を通知する。図14は、検出器制御部40の変形例を示す図である。
【0099】
第4変形例では、検出器制御部40の処理部410は、図14に示すように、通知部419を含む。
【0100】
図15は、通知部419による通知の一例を示す図である。
【0101】
通知部419は、検出立体角があらかじめ設定された閾値よりも小さい場合に、警告情報を通知する。通知部419による通知は、例えば、図15に示すように、検出立体角が小さいことを警告するためのメッセージ8である。なお、通知部419による通知は、メッセージ8の表示に限定されず、例えば、ブザーなどを用いた音による通知であってもよいし、ランプなどを用いた光による通知であってもよい。
【0102】
図16は、電子顕微鏡100における通知処理の一例を示すフローチャートである。
【0103】
電子顕微鏡100において、ユーザーが傾斜制御部30の入力受付部を操作して試料Sの傾斜角情報を入力すると、入力受付部が傾斜角情報を受け付ける(S400のYes)。入力受付部は、傾斜角情報を傾斜制御部30に出力する。
【0104】
傾斜制御部30は、入力された傾斜角情報に基づいて、傾斜機構13を制御する(S402)。傾斜制御部30は、傾斜角情報を検出器制御部40に送る(S404)。
【0105】
検出立体角情報取得部412は、傾斜制御部30から傾斜角情報を取得し、テーブルT2を参照して、検出立体角情報を取得する(S406)。
【0106】
次に、通知部419は、検出立体角情報取得部412が取得した検出立体角情報が示す検出立体角が、あらかじめ設定された閾値よりも小さいか否かを判定する(S408)。通知部419は、検出立体角情報が示す検出立体角が閾値よりも小さいと判定した場合(S408のYes)、警告情報を通知する(S410)。
【0107】
検出立体角が閾値よりも小さくないと判定した場合(S408のNo)、または処理S410の後、電子顕微鏡100は、通知処理を終了する。
【0108】
第4変形例では、電子顕微鏡100は、通知部419を含むため、ユーザーは、検出立体角が小さいことを容易に把握できる。
【0109】
1.4.5. 第5変形例
図17は、検出器制御部40の変形例を示す図である。
【0110】
試料ホルダー12には、観察や分析の用途に応じて様々な種類がある。試料ホルダー12の先端部の形状が異なると、傾斜角情報と検出立体角情報の関係も変わる。
【0111】
第5変形例では、電子顕微鏡100は、試料ホルダー12として、第1試料ホルダーと、第2試料ホルダーと、を有している。第1試料ホルダーと第2試料ホルダーとは、先端の形状が異なっている。
【0112】
また、記憶部440には、テーブルT2(第1テーブルの一例)およびテーブルT4(第2テーブルの一例)が記憶されている。テーブルT2は、第1試料ホルダーにおける、傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけるテーブルである。テーブルT4は、第2試料ホルダーにおける、傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけるテーブルである。
【0113】
検出立体角情報取得部412は、試料ホルダーの種類を特定するための情報を受け付けると、当該情報に基づいて、テーブルT2を用いるのか、それともテーブルT4を用いるのかを決定する。
【0114】
試料ホルダーの種類を特定するための情報は、例えば、ユーザーが操作部420を介して試料ホルダーの種類を特定するための情報を入力することによって、操作部420から処理部410に送られる。また、第1試料ホルダーおよび第2試料ホルダーが出力した試料ホルダーの種類を特定するための情報を検出立体角情報取得部412が受け付けることで、当該情報を取得してもよい。
【0115】
なお、上記では、電子顕微鏡100が2種類の試料ホルダー12を含む場合について説明したが、電子顕微鏡100は3種類以上の試料ホルダー12を含んでいてもよい。この場合には、試料ホルダー12の種類の数だけ、記憶部440にテーブルが記憶される。
【0116】
2. 第2実施形態
2.1. 電子顕微鏡
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡について、図面を参照しながら説明する。図18および図19は、第2実施形態に係る電子顕微鏡200の構成を示す図である。
【0117】
以下、第2実施形態に係る電子顕微鏡200において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0118】
上述した電子顕微鏡100は、図1および図2に示すように、1つのX線検出器20を含んでいたが、電子顕微鏡200は、図18および図19に示すように、X線検出器20(以下「第1X線検出器20」ともいう)に加えて、第2X線検出器220を含む。すなわち、電子顕微鏡200は、2つのX線検出器を含む。
【0119】
図19に示すように、試料Sから見て、第1X線検出器20は-X方向に配置されており、第2X線検出器220は+Y方向に配置されている。
【0120】
第1X線検出器20にX線が入射すると、第1X線検出器20内でX線のエネルギーの大きさに応じた電荷が発生し、この電荷がX線検出器20内の電界効果型トランジスタによって電圧に変換される。第1X線検出器20から出力された信号(パルス信号)は、比例増幅器22で増幅される。
【0121】
第2X線検出器220にX線が入射すると、第2X線検出器220内でX線のエネルギーの大きさに応じた電荷が発生し、この電荷が第2X線検出器220内の電界効果型トランジスタによって電圧に変換される。第2X線検出器220から出力された信号(パルス信号)は、比例増幅器222で増幅される。
【0122】
第1X線検出器20から出力されたパルス信号および第2X線検出器220から出力されたパルス信号は、多重波高分析器24で波高値ごとに計数される。検出器制御部40は、この波高値ごとのパルス数に基づいて、横軸にX線のエネルギー、縦軸にX線のカウント数(強度)で示されるスペクトルのデータ(スペクトルデータ)を生成する。
【0123】
電子顕微鏡200は、第1X線検出器20および第2X線検出器220を含むため、検出効率を向上できる。
【0124】
図20は、第1X線検出器20と試料Sの位置関係、および第2X線検出器220と試料Sの位置関係を説明するための図である。
【0125】
図20に示すように、電子顕微鏡200では、試料Sで発生したX線を検出する際には、試料Sの側方に第1X線検出器20および第2X線検出器220が配置される。
【0126】
ここで、第1X線検出器20および第2X線検出器220は、異なる位置に配置されている。図示の例では、第1X線検出器20の検出面21は+X方向を向き、第2X線検出器220の検出面221は-Y方向を向いている。また、試料Sは、+X方向に傾斜している。そのため、試料Sの傾斜角が同じであっても、第1X線検出器20の検出立体角の大きさと、第2X線検出器220の検出立体角の大きさは異なる。したがって、第1X線検出器20における傾斜角と検出立体角の関係と、第2X線検出器220における傾斜角と検出立体角の関係とは、異なる。
【0127】
図21は、検出器制御部40の構成を示す図である。
【0128】
上述したように、第1X線検出器20における傾斜角と検出立体角の関係と、第2X線検出器220における傾斜角と検出立体角の関係とは異なる。そのため、記憶部440には、第1X線検出器20における、傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけるテーブルT
2(第3テーブルの一例)と、第2X線検出器220における、傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけるテーブルT6(第4テーブルの一例)と、が記憶されている。
【0129】
検出立体角情報取得部412は、傾斜角情報から第1X線検出器20における検出立体角情報を取得する場合には、テーブルT2を参照する。また、検出立体角情報取得部412は、傾斜角情報から第2X線検出器220における検出立体角情報を取得する場合には、テーブルT6を参照する。
【0130】
なお、図示はしないが、電子顕微鏡200が2種類の試料ホルダーを含む場合には、記憶部440には、4つのテーブルが記憶される。
【0131】
図22は、第2X線検出器220における傾斜角情報と検出立体角情報を対応づけたテーブルT6を説明するための図である。
【0132】
図22に示すように、テーブルT6は、図5に示すテーブルT2と異なる。テーブルT6の作成方法は、上述したテーブルT2の作成方法と同様である。
【0133】
表示制御部416は、第1X線検出器20の検出立体角情報に基づく画像、および第2X線検出器220の検出立体角情報に基づく画像を表示部430に表示させる。
【0134】
図23図25は、分析画面2を模式的に示す図である。
【0135】
図23に示すように、検出立体角表示領域6には、第1X線検出器20の検出立体角、第2X線検出器220の検出立体角、および第1X線検出器20の検出立体角と第2X線検出器220の検出立体角の和が表示されてもよい。
【0136】
また、図24に示すように、検出立体角表示領域6には、第1X線検出器20における最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmax、第2X線検出器220における最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmax、および第1X線検出器20における最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxと第2X線検出器220における最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxの平均値が表示されてもよい。
【0137】
また、図25に示すように、検出立体角表示領域6には、第1X線検出器20における最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxを図やグラフで表したもの、および第2X線検出器220における最大検出立体角に対する割合Ω/Ωmaxを図やグラフで表したものが表示されてもよい。
【0138】
2.2. 動作
電子顕微鏡200における表示処理は、上述した図7に示す電子顕微鏡100における表示処理と、処理S106において、第1X線検出器20の検出立体角情報を取得するときにはテーブルT2を参照し、第2X線検出器220の検出立体角情報を取得するときにはテーブルT6を参照する点が異なる。その他の処理は、上述した図7に示す電子顕微鏡100における表示処理と同様であり、その説明を省略する。
【0139】
2.3. 作用効果
電子顕微鏡200では、記憶部440には、テーブルT2とテーブルT6が記憶されている。そのため、電子顕微鏡200では、第1X線検出器20の検出立体角および第2X線検出器220の検出立体角を容易に把握できる。
【0140】
2.4. 変形例
上述した、第1実施形態の第2~第5変形例は、第2実施形態にも適用できる。
【0141】
3. その他
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0142】
例えば、上述した第1実施形態および第2実施形態では、試料に電子線を照射して試料でX線を発生させる場合について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は電子線以外の荷電粒子線(イオンビーム等)を照射して試料でX線を発生させてもよい。
【0143】
また、本発明に係る荷電粒子線装置は、X線以外の電磁波を検出する検出器を含んでいてもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、試料に電子線を照射して試料で発生した光(カソードルミネッセンス)を検出する検出器を含んでいてもよい。
【0144】
本発明に係る荷電粒子線装置は、例えば、走査透過電子顕微鏡(STEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)、集束イオンビーム装置(FIB)、カソードルミネッセンス顕微鏡であってもよい。
【0145】
また、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0146】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0147】
2…分析画面、4…分析結果表示領域、6…検出立体角表示領域、8…メッセージ、10…電子源、11…照射系レンズ、12…試料ホルダー、13…傾斜機構、14…試料ステージ、15…対物レンズ、16…中間レンズ、17…投影レンズ、18…撮像装置、20…X線検出器、20…第1X線検出器、21…検出面、22…比例増幅器、24…多重波高分析器、30…傾斜制御部、40…検出器制御部、100…電子顕微鏡、200…電子顕微鏡、220…第2X線検出器、221…検出面、222…比例増幅器、410…処理部、412…検出立体角情報取得部、414…分析データ生成部、416…表示制御部、417…測定時間設定部、418…傾斜角情報取得部、419…通知部、420…操作部、430…表示部、440…記憶部
図1
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