(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】仮締切り工
(51)【国際特許分類】
E02D 19/04 20060101AFI20230526BHJP
E02B 3/04 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
E02D19/04
E02B3/04 301
(21)【出願番号】P 2021089659
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591267925
【氏名又は名称】日本スピードショア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】前田英樹
(72)【発明者】
【氏名】菊田亮一
(72)【発明者】
【氏名】笠岡真佐志
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-070437(JP,A)
【文献】特開2004-124670(JP,A)
【文献】実開昭52-143223(JP,U)
【文献】登録実用新案第3044871(JP,U)
【文献】特開2016-098479(JP,A)
【文献】特開平06-228933(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0267362(US,A1)
【文献】特開2017-075463(JP,A)
【文献】特開2019-019483(JP,A)
【文献】特開2004-044329(JP,A)
【文献】特開2016-118030(JP,A)
【文献】特開昭55-116929(JP,A)
【文献】特開2017-218844(JP,A)
【文献】登録実用新案第3129192(JP,U)
【文献】特開2015-193998(JP,A)
【文献】登録実用新案第3231818(JP,U)
【文献】特開2002-227224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/04
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向するパネルを切梁で固定することで箱枠を形成したこと、
前後方向及び左右方向に複数箱枠を並設したこと、
前後方向に隣接する箱枠同士を、略コ字状を呈する連結部材を隣接する箱枠の上端縁にわたり架渡す形態で、固定したこと、
最前方左右方向一列を構成する複数の箱枠に土のうを入れたこと、
を特徴とする仮締切工。
【請求項2】
箱枠を、対向する一対の、パネルの両側面に設けた縦梁間に、切梁を取り付けて構成した請求項1に記載の仮締切工。
【請求項3】
箱枠を対向する一対の、パネルの両側面に設けたスライドレール間に、切梁を取り付けて構成した請求項1に記載の仮締切工。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中や水際などに構造物を造る際、陸上と同じ条件で工事を行うため、水を仮堤防などで締切る、いわゆる仮締切り工に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の護岸工事など水中あるいは水際に構築物を建造する場合、一時的に工事に必要な部分から排水しドライワークとなし、工事を行うことが多い。この方法として、仮締切り工法が知られている。
【0003】
堤防を開削して工事を行う場合などには、鋼矢板二重式工法という仮締切り工法が採用される。鋼矢板を二重(平行)に打設後、鋼矢板間をタイロッドで連結することで仮設堤防を構築するものである。
【0004】
堤防の開削を行わない程度の工事の場合は、大型土のうを用いたり、土堤を築いたりして仮設堤防を築く盛土式や、一枚の鋼矢板を打設し、押え盛り土で矢板を支持し仮設堤防となしたりする方法が採用される。また、対向するパネルを切梁で固定することで箱枠を形成し、該箱枠内に土のうなどを詰めて仮設堤防となすこともある。
【0005】
特許文献1には、複数の親杭を所定の間隔をおいて打設し、この親杭の外周に腹起し材を架渡し、さらにこの腹起しの外側に鋼矢板を打設するという仮締切り工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記大型土のうを用いる締切り工法には、増水時に大型土のうの転倒・流失などが発生し、工事現場やその後背地への影響が問題となる事も少なくない。通常、大型土のうは布積みで施工され自重により構造体の安定性を確保しているが、大型土のう同士は連結されておらず一体性がないことから、増水時の流勢により不安定な状態になりやすい。このことは、上記箱枠内に土のうなどを詰めた仮設堤防にも当てはまる。
【0008】
そこで本発明は、増水時などにおいても転倒や流失が発生しづらい、仮締切り工を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0010】
(1) 請求項1に記載の仮締切工は、対向するパネルを切梁で固定することで箱枠を形成し、複数の箱枠を連結部材で固定して構成した。
【0011】
(2) 請求項2に記載の仮締切工は、請求項1に記載の発明において、箱枠を、対向する一対のパネルの両側面に設けた縦梁間に、切梁を取り付けて構成した。
【0012】
(3) 請求項3に記載の仮締切工は、請求項1に記載の発明において、箱枠を、対向する一対の、パネルの両側面に設けたスライドレール間に、切梁を取り付けて構成した。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成される本発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。なお、各図におけるFとは前方を、Bは後方を、Rは右方向を、Lは左方向を意味するものである。
【0014】
図4に示すように、本発明に係る仮締切工10は、箱枠11を連結部材12で固定して構成してある。
【0015】
上述の従来例である、対向するパネルを切梁で固定することで箱枠を形成し、該箱枠内に土のうなどを詰めて形成する仮設堤防とは、
図4における土のう50が入った左右方向の複数の箱枠11一列のみで構成されるものである。かかる構造であると、上述の通り増水時の水圧で転倒する恐れがある。
【0016】
しかし本発明に係る仮締切工10であれば、土のう50が入った最前方左右方向一列の箱枠11が、それぞれ後方に複数の箱枠11と連結部材12で固定されている。それゆえ各箱枠11が互いに支えあうことで、増水時にも水圧で転倒や流出することを可及的に抑制することが可能となるのである。
【0017】
また、土のう50が入っていない箱枠11の場合、箱枠11内を水が流れることが可能であることも、転倒や流出を抑制することに資するものである。
【0018】
さらには箱枠11の上部に覆工板を載置すれば、当該覆工板の上で作業を行うことが可能という利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい発明の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。 なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。
【0021】
図1に示すように、請求項1記載の仮締切工10は、複数の箱枠11を複数の連結部材12で固定して構成されるものである。具体的には前後方向に隣接する箱枠11同士が連結部材12で固定されている。図中左右方向に並ぶ箱枠11同士は固定されていないが、むろん本発明は左右方向に並ぶ箱枠を連結部材で固定する態様のものを、排除するものではない。
【0022】
箱枠11は、対向する一対のパネル13を1本以上の切梁14で固定することで形成してある。
【0023】
パネル13は所要水圧あるいは所要土圧に対応する強度を与えられた、所要寸法の長方形に形成された鋼材により形成されている。パネル13の周囲は
切梁14はジャッキ構造となっており、その両端部がパネル13の前記縦支持部材15に固着されている。
【0024】
切梁14の両基端には、パネル13に対する着脱可能な支持構造が設けられている。この着脱可能な支持構造としては、周知の構造が採用される。例えば、図示省略するが、縦支持部材15の所定位置に装着用のブラケットが設けられ、この装着用のブラケットに切梁14の基端が嵌められて、ピンなどによって着脱可能に固定できるような構造とされる。もちろんこれに限定されない。
【0025】
連結部材12は、
図5に示すように略コ字状を呈し、所要強度を備えた鋼材である。
【0026】
請求項2記載の発明においては、
図2に示すように、箱枠20を、対向する一対のパネル13の両側面に設けた縦梁21間に、切梁14を取り付けて構成してある。
【0027】
この縦梁21は、鋼材よりなる角柱であり、パネル13に設けた凸状の挿入部に対応した凹状の受領部が設けられている。該受領部に該挿入部を嵌合することでパネル13を縦梁21に固定するものである。
【0028】
むろん上記縦梁の構造は一例であり、縦梁21の長手方向に縦溝を設け、該縦溝にパネル13を嵌め込むようにしても良いし、あるいは縦梁21を断面コ字状の長尺部材で形成し、内部にパネル13を嵌め込む形態としても良い。
【0029】
請求項3に記載の発明においては、
図3に示すように、箱枠30を、対向する一対の、パネル13の両側面に設けたスライドレール31間に、切梁14を取り付けて構成した。
【0030】
このスライドレール31は、構造材を組合わせて所要長さに形成され、使用時における前後方向の両面に軸線に沿って案内溝32,32がそれぞれ形成されている。
図3に示される実施形態では、リップ付き溝形鋼をウエブ表面側を重ね合わせて一体形状にされ、その内側が案内溝32となるように形成されている。なお、このスライドレール31は、この実施形態に限定されるものではなく、他の部材を使用して所要断面強度が得られ、かつパネル13の端部を嵌め合わせて保持できる案内溝が形成されるものであればよい。
【符号の説明】
【0031】
10・・仮締切工
11・・箱枠
12・・連結部材
13・・パネル
14・・切梁
20・・箱枠
21・・縦梁
30・・箱枠
31・・スライドレール
32・・案内溝