(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】MTF測定装置とその使用
(51)【国際特許分類】
G01M 11/02 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
G01M11/02 A
(21)【出願番号】P 2021154393
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】10 2020 125 064.9
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518193696
【氏名又は名称】トライオプティクス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Trioptics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ポイカト
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第3295144(EP,B1)
【文献】中国特許第105675266(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第110186651(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0201744(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108931357(CN,A)
【文献】国際公開第2014/065058(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209688451(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第114697509(CN,A)
【文献】国際公開第2011/055654(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-G01M 11/08
H04N 23/00
H04N 23/11
H04N 23/20-H04N 23/30
H04N 23/40-H04N 23/76
H04N 23/90-H04N 23/959
H04N 25/00
H04N 25/20-H04N 25/61
H04N 25/615-H04N 25/79
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの被測定デバイス(6)を受け入れるためのサンプルステージ(4)であって、前記被測定デバイス(6)が少なくとも1つのレンズ(10)を備えるサンプルステージ(4)と、
剛性構造であるカメラホルダ(22)の所定の位置に取り付けられた複数の望遠鏡状カメラ(8)であって、前記被測定デバイス(6)の少なくとも1つの前記レンズ(10)によって投影された像を受け取る望遠鏡状カメラ(8)と
少なくとも1つのデータリンク(14)を経由して前記望遠鏡状カメラ(8)に結合された処理ユニット(12)とを備え、
前記望遠鏡状カメラ(8)が、前記データリンク(14)を経由して画像データを前記処理ユニット(12)に送信するように構成され、
前記処理ユニット(12)が、全ての前記望遠鏡状カメラ(8)から前記画像データを受信し、前記望遠鏡状カメラ(8)によって受け取られた前記画像データから全ての望遠鏡状カメラ(8)のMTF測定データセットを演算することによって、複数のMTF測定を実行するように構成され、
前記望遠鏡状カメラ(8)が、カメラホルダ(22)に取り付けられ、全ての前記望遠鏡状カメラ(8)が、異なる視野位置においてMTF測定に帰結する前記画像データを捕捉し、
前記カメラホルダ(22)が、保持構造(26)と、第1端部(34)と第2端部(36)との間に延びる細長い部材である少なくとも2つのブラケット(32)とを備え、
前記第1端部(34)および前記第2端部(36)が、前記保持構造(26)に取り外し可能に取り付けられ、
少なくとも2つの前記望遠鏡状カメラ(8)が、全ての前記ブラケット(32)に取り付けられ、
該ブラケット(32)が、前記保持構造(26)から個別に脱着可能であるMTF測定装置(2)。
【請求項2】
全ての前記ブラケット(32)が、前記第1端部(34)と前記第2端部(36)との間の長手方向(L)に延び、前記ブラケット(32)が前記保持構造(26)に取り付けられ、前記ブラケット(32)の長手方向(L1~L7)が互いに平行である請求項1に記載のMTF測定装置(2)。
【請求項3】
前記保持構造(26)が、第1側部要素(28)および第2側部要素(30)を備え、
前記第1側部要素(28)および前記第2側部要素(30)が、前記保持構造(26)の反対側の横方向の側面を形成し、
前記ブラケット(32)の前記第1端部(34)が、前記第1側部要素(28)に取り付けられ、
前記ブラケット(32)の前記第2端部(36)が、前記第2側部要素(30)に取り付けられている請求項1または請求項2に記載のMTF測定装置(2)。
【請求項4】
前記ブラケット(32)が、前記第1端部(34)と前記第2端部(36)との間に延びる湾曲した中央部(38)を備え、
少なくとも2つの前記望遠鏡状カメラ(8)が、湾曲した前記中央部(38)に取り付けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載のMTF測定装置(2)。
【請求項5】
前記ブラケット(32)の湾曲した前記中央部(38)が、少なくとも部分的に、円の一部のように湾曲し、特に、前記円の中心が、前記カメラホルダ(22)と前記サンプルステージ(4)との間に配置され、さらに、特に、前記円の中心が、前記サンプルステージ(4)の平面内に配置されている請求項4に記載のMTF測定装置(2)。
【請求項6】
前記ブラケット(32)の断面が、前記第1端部(34)および/または前記第2端部(36)において、前記中央部(38)の断面と比較して大きい請求項4または請求項5に記載のMTF測定装置。
【請求項7】
前記ブラケット(32)が平坦な部材であり、
全ての前記ブラケット(32)がブラケット平面(40)内に延びており、
少なくとも2つの前記ブラケット(32)の前記ブラケット平面(40)が、ブラケット平面交差線(42)に沿って交差するように配置され、特に、前記ブラケット平面交差線(42)が、前記カメラホルダ(22)と前記サンプルステージ(4)との間に配置され、さらに、特に、前記ブラケット平面交差線(42)が、前記サンプルステージ(4)の平面内に配置されている請求項1から請求項6のいずれかに記載のMTF測定装置。
【請求項8】
前記ブラケット(32)が、互いに反対向きに配置された2つの大きな表面(44)をそれぞれ有する平坦な部材であり、
前記望遠鏡状カメラ(8)は、全ての該望遠鏡状カメラ(8)のカメラ本体(46)が、前記ブラケット(32)の2つの大きな前記表面(44)のうちの1つに直接取り付けられるように、前記ブラケット(32)に取り付けられている請求項1から請求項7のいずれかに記載のMTF測定装置。
【請求項9】
前記保持構造(26)および/または前記ブラケット(32)の少なくとも1つが、ヒートシンク、特に冷却フィン(47)を備える請求項1から請求項8のいずれかに記載のMTF測定装置(2)。
【請求項10】
前記ブラケット(32)が、その上に取り付けられた前記望遠鏡状カメラ(8)とともにカメラモジュールを形成し、全ての前記カメラモジュールが同様に設計されている請求項1から請求項9のいずれかに記載のMTF測定装置(2)。
【請求項11】
前記望遠鏡状カメラ(8)が、少なくともほぼ正方形状のパターンまたは六角形状のパターンで取り付けられている請求項1から請求項10のいずれかに記載のMTF測定装置(2)。
【請求項12】
少なくとも1つのレンズ(10)を有する前記被測定デバイス(6)の異なる視野位置において、複数のMTF測定を行う請求項1から請求項11のいずれかに記載のMTF測定装置(2)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MTF測定装置に関するものであり、少なくとも1つのレンズを備える少なくとも1つの被測定デバイスを受けるサンプルステージと、剛体構造であるカメラホルダの所定の固定位置にそれぞれ取り付けられ、単一の被測定デバイスの少なくとも1つのレンズによって投影された像を受ける複数の望遠鏡状カメラと、少なくとも1つのデータリンクを介して望遠鏡状カメラに結合された処理ユニットとを備え、望遠鏡状カメラは、データリンクを介して画像データを処理ユニットに送信するように構成され、処理ユニットは、全ての望遠鏡状カメラから画像データを受信し、望遠鏡状カメラによって送信された画像データから全ての望遠鏡状カメラのMTF測定データセットを演算することによって、複数のMTF測定を実行するように構成されており、望遠鏡状カメラは、全てのカメラが異なる視野位置でのMTF測定をもたらす画像データを取り込むように、カメラホルダに取り付けられている。本発明は、さらに、このMTF測定装置の使用に関するものである。
【0002】
MTF(Modulation Transfer Function)とは、光学系の品質を直接的かつ定量的に示すための1つのパラメータである。MTF測定は、撮像光学系の特性評価のための品質管理に頻繁に適用されている。イメージングの応用が、例えば、携帯電話機や自動車応用のような大量生産の市場に移行するにつれ、大量のMTF測定が大量生産において標準となっている。
【背景技術】
【0003】
大量のMTF測定を行うMTF測定装置は、例えば、米国特許出願公開第2017/0048517号明細書によって知られている。このMTF測定装置は、複数の被測定デバイスを搭載したトレイを測定することができる。測定は、複数の望遠鏡またはコリメータを使用して同時に行われ、これらの望遠鏡またはコリメータは、各コリメータまたは望遠鏡が回転しながら平行に移動し、測定構造の画像をその測定対象のレンズに提供する。望遠鏡またはコリメータを保持する機械的な装置は、コリメータおよび望遠鏡の平行移動を可能にし、各コリメータまたは望遠鏡が各被測定レンズの中心回りに回転する。レンズの中心付近の多数の点から光を照射することにより、視野内の異なる点を特徴づけるMTF値を測定することができる。
【0004】
もうひとつの測定原理は、複数の静止した望遠鏡状カメラを被測定レンズまたは被測定デバイスに対して異なる角度で設置することに基づいている。測定は、各被測定デバイス(DUT)を測定位置に移動させ、測定を行い、その位置から移動させ、続いて次のDUTを測定位置に移動させるという、1つずつの手順で行われる。この測定原理に基づいたMTF測定装置としては、例えば、Trioptics社の「ImageMaster Pro」(商標)がある。
【0005】
「ImageMaster Pro」(商標)は、複数の望遠鏡状カメラを備え、各望遠鏡状カメラが、所定の位置に固定されている。これは、ドーム型のカメラホルダを使用することによって達成される。カメラは、ドームの曲率中心に向かうドームの内側に配置されている。望遠鏡状カメラは、単一の被測定デバイスに向けられている。X-Yステージ上に設置されたサンプルホルダは、被測定デバイス(DUT)を搬送する。サンプルホルダは、被測定デバイスの少なくとも1つのレンズによって投影された像を望遠鏡状カメラが撮影する測定位置に、DUTを連続的に順次移動させる。カメラが異なる位置および方向に取り付けられているため、DUTの異なる視野位置のMTFを並行して特徴づけることができる。
【0006】
本発明の目的は、MTF測定装置およびMTF測定装置の使用を提供することであり、MTF測定装置は、被測定デバイスの視野内の異なる点を特徴づけるために、それぞれが固定位置に取り付けられた複数の静止した望遠鏡状カメラを備えることが望ましく、MTF測定装置は、強化された保守可能性を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下のMTF測定装置によって解決される。
MTF測定装置は、少なくとも1つのレンズを備える、少なくとも1つの被測定デバイスを受けるサンプルステージと、剛性構造を有するカメラホルダの固定された所定の位置に取り付けられ、単一の被測定デバイスの少なくとも1つのレンズによって投影された像を受ける複数の望遠鏡状カメラと、少なくとも1つのデータリンクを介して望遠鏡状カメラに接続された処理ユニットとを備え、望遠鏡状カメラが、データリンクを介して処理ユニットに画像データを送信するように構成され、処理ユニットが、全ての望遠鏡状カメラから画像データを受信し、望遠鏡状カメラによって取得された画像データから全ての望遠鏡状カメラのMTF測定データセットを計算することにより、複数のMTF測定を行うように構成され、望遠鏡状カメラが、カメラホルダに取り付けられ、全ての望遠鏡状カメラが、異なる視野位置において、MTF測定に帰結する画像データを取得する。
【0008】
MTF測定装置は、カメラホルダが、保持構造と、第1端部と第2端部との間に延びる細長い部材である少なくとも2つのブラケットとを備え、第1端部および第2端部が、保持構造に取り外し可能に取り付けられ、少なくとも2つのカメラが、全てのブラケットに取り付けられ、ブラケットが、保持構造から個別に脱着可能である点において強化されている。
【0009】
有利なことに、カメラホルダは、モジュール設計を有している。モジュールは、全てのブラケットに取り付けられた少なくとも2つのカメラと、カメラが取り付けられたブラケットとを備えている。カメラホルダのモジュールは容易に交換することができ、これによりMTF測定装置の迅速な保守が可能となる。さらに、各モジュールは互いに独立して交換することができる。これはさらに重要な利点である。このような技術的側面は、MTF測定装置を、非常に保守容易なものにしている。
【0010】
本明細書では、「カメラ」という表現は、そのカメラが望遠鏡状カメラであると特に言及しなくても、常に「望遠鏡状カメラ」という表現とみなされるべきである。
【0011】
これらの利点は、次のような状況を考えると容易に理解できる。MTF測定装置のカメラの1つにエラーが検出された場合には、サービス技術者は、このカメラを含むブラケットを、当該ブラケットに取り付けられている他の全てのカメラと一緒に交換することができる。言い換えれば、サービス技術者は、カメラホルダのモジュールを交換する。MTF測定装置は、非常に短いダウンタイムで再び動作可能になる。これにより、MTF測定装置の可用性または稼働時間が向上し、経済的にも大きな利点がある。MTF測定装置から取り外されたモジュールは、その後、保守を受けることができる。カメラの保守、例えばカメラの交換は、個別のモジュールを対象とした作業の場合、より容易に行うことができる。さらに、これらの保守作業は、MTF測定装置が再び稼働している間に行うことができる。カメラがブラケットに設置され、そのブラケットと共にモジュールが構成されると、カメラはブラケット上に予め位置合わせされ得る。言い換えれば、現場、すなわち、MTF測定装置内においてカメラが動作させられる場所における、カメラの位置合わせに必要な時間を不要にするか、少なくとも大幅に短縮することができる。モジュールの交換は、経験の浅いユーザまたは保守技術者によっても簡単に行うことができる。有利なことに、MTF測定装置は、必要な保守作業を最小限に抑えながら、(稼働時間の増加として)可用性を向上させることができる。
【0012】
本発明の有利な実施形態によれば、MTF測定装置は、全てのブラケットが、第1端部と第2端部との間で長手方向に延びており、ブラケットが保持構造に取り付けられ、ブラケットの長手方向が互いに平行になっている点において、さらに強化されている。
【0013】
ブラケットの平行な配置は、MTF測定装置の保守性をさらに向上する。モジュールのブラケットが互いに平行に配置されていると、モジュールを迅速かつ容易に交換することができる。モジュールへのアクセスが容易である。経験の浅いユーザまたは保守技術者であっても、保守作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【0014】
本発明のさらに別の有利な実施形態によれば、MTF測定装置は、保持構造が第1側部要素と第2側部要素とを備え、両側部要素が保持構造の反対側の横方向の側面を形成し、ブラケットの第1端部が、第1側部要素に取り付けられ、ブラケットの第2端部が第2側部要素に取り付けられている点において、さらに強化されている。
【0015】
第1側部要素および第2側部要素と、これら2つの側部要素の間の空間にまたがるブラケットとを備える保持構造は、機械的に非常に安定しており、保守容易かつ経済的に生産できる。したがって、信頼性が高く、複数のカメラを正確に保持するのに適した保持構造を提供することができる。
【0016】
本発明の他の有利な実施形態において、MTF測定装置は、ブラケットが、第1端部と第2端部との間に延びる湾曲した中央部を備え、少なくとも2つのカメラが中央部に取り付けられている点において、さらに強化されている。
【0017】
ブラケットの湾曲した中央部は、このブラケットに取り付けられるカメラの位置合わせを単純化する。カメラは、1つの単一の被測定デバイスを指向するように整列される。そのためには、カメラの光軸を星状に揃える必要がある。さらに、カメラが、少なくとも被測定デバイスからほぼ同じ距離を有することが望ましい場合には、そのような配列を達成する最も簡単な方法は、カメラを湾曲したホルダに配置することである。この湾曲したホルダの曲率中心は、有利なことに、少なくとも被測定デバイスの位置とほぼ一致している。このような観点から、カメラを保持するための湾曲した中央部を有するブラケットが特に好適である。
【0018】
MTF測定装置は、ブラケットの湾曲部分が、少なくとも部分的に、円の一部のように湾曲しており、特に、円の中心がカメラホルダとサンプルステージとの間に配置され、さらに、特に、円の中心がサンプルステージの平面内に配置されている点において、さらに強化することができる。
【0019】
円の中心は、有利には、サンプルステージが、被測定デバイスの光学系(例えば、レンズ)を保持する平面内に配置される。湾曲した中央部を有するブラケットは、必要な方法でカメラを容易かつ正確に保持するのに特に適している。
【0020】
さらに別の有利な実施形態では、ブラケットの断面は、中央部の断面と比較して、第1端部および/または第2端部においてより大きい。
【0021】
カメラは必然的に排熱を発生させる。このため、カメラ保持構造の一部を構成するブラケットは、カメラから排熱を逃がすための熱の逃げ道としても機能する。このことは、中央部よりも端部が大きな断面を有するブラケットを使用して非常に効率的に実施することができる。この種のブラケットは、ブラケットの熱伝導率が中央部と比較して端部において高いため、排熱を側部要素に効率的に放散することができる。
【0022】
本発明の別の有利な実施形態によれば、MTF測定装置は、ブラケットが平坦な部材であり、全てのブラケットがブラケット平面内に延び、少なくとも2つのブラケットが、少なくとも2つのブラケットのブラケット平面がブラケット平面交差線に沿って交差するように配置され、特に、ブラケット平面交差線が、カメラホルダとサンプルステージとの間に配置され、さらに、特に、ブラケット平面交差線がサンプルステージの平面内に配置されている点において、さらに強化されている。
【0023】
上記の説明では、カメラが1つの被測定デバイスに指向するように配置されている。これは、1つのモジュール、つまり1つのブラケットに取り付けられているカメラだけに適用されるものではない。このカメラの配置ルールは、異なるブラケット、つまり異なるモジュールに取り付けられたカメラにも適用される。モジュールを相互に交換可能に維持するには、モジュール全体、すなわちブラケットを傾けて、このブラケットのカメラを単一の被測定デバイスに位置合わせする。これは、個々のブラケットのブラケット平面を上述したように位置合わせすることにより、非常に簡単かつ効率的に達成することができる。
【0024】
この設計は、カメラホルダの全てのモジュールを同様に設計することができ、非常に有利である。1つのモジュールを交換する必要がある場合には、当該ブラケットの特定の取り付け位置に関係なく交換することができる。言い換えれば、カメラホルダのどの位置にもこのモジュールを配置できるため、スペア部品として単一のモジュールだけがあれば十分である。
【0025】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ブラケットは、互いに反対側に配置される2つの大きな表面をそれぞれ有する平坦な部材であり、カメラは、全てのカメラのカメラ本体がブラケットの2つの大きな表面のうちの1つに直接取り付けられるように、ブラケットに取り付けられる。
【0026】
カメラ本体をブラケットに直接取り付けることにより、排熱の効率的な放熱を達成することができる。カメラとブラケットとの接触面積が大きければ大きいほど、カメラからブラケットへの排熱が効率的に放散される。このことは、カメラ本体をブラケットの2つの大きな面のうちの1つに直接取り付けることが重要な利点であることの理由である。
【0027】
保持構造および/または少なくとも1つのブラケットがヒートシンク、特に冷却フィンを備えていると、排熱の放散がさらに促進される。
【0028】
保持構造、つまり、ヒートシンクを有する側部要素および/またはブラケットを提供することにより、カメラから発生する排熱を効率的に環境に放散することができる。側部要素またはブラケットにのみ、適切なヒートシンクを設けることもできる。冷却フィン以外のヒートシンク、例えば、液冷システムなども、本実施形態の範囲内である。
【0029】
MTF測定装置は、MTF測定装置のハウジング内に熱が蓄積されたり、熱対流の気流が大きくなったりしないように、追加の適切な冷却手段を設けることにより、さらに強化することができる。熱対流は、取得された画像にフリッカーを発生させ、それによって測定精度を低下させる可能性がある。効率的な放熱と光路内の熱対流の最小化は、例えば、MTF測定装置のハウジングにファンを設け、ハウジングの上側から放出される強制的な上昇気流を発生させることにより達成することができる。
【0030】
本発明の有利な実施形態において、ブラケットとそれに取り付けられた望遠鏡状カメラとがカメラモジュールを形成し、MTF測定装置の全てのカメラモジュールが同様に設計されている。これにより、交換部品の保管コストを最小限に抑えながら、モジュールの交換を容易に行うことができる。第1のアプローチにおいては、スペア部品として1つの単一のモジュールだけをストックしておけば十分である。なぜなら、どのモジュールにエラーが発生しても、このスペア部品のモジュールがその交換に適しているからである。
【0031】
カメラホルダの設計が、排熱の効率的な放散を可能にするので、MTF測定装置に適用されるカメラの密度および全数を増やすことができる。カメラを四角状のパターンで並べることにより、高い設置密度を達成することができる。また、カメラを六角状のパターンで配置すれば、設置密度をさらに向上することができる。四角状のパターンおよび/または六角状のパターンは、それぞれ少なくともほぼ四角状および六角状であればよい。数学的に考えると、六角状のパターンは、カメラの密度を最大にすることができる配置である。MTF測定装置に配置できるカメラの数が多ければ多いほど、被測定デバイスをより正確に特徴づけることができる。
【0032】
また、この目的は、少なくとも1つのレンズを有する被測定デバイスの異なる視野位置において複数のMTF測定を行うための、1つ以上の上述した実施形態に係るMTF測定装置の使用によっても解決される。
【0033】
MTF測定装置に関して述べられたものと同一または類似の利点が、MTF測定装置の使用にも適用される。
【0034】
本発明のさらなる特徴は、本発明に係る実施形態の説明並びに請求項および添付図面から明らかになる。本発明に係る実施形態は、個々の特徴を満たすことも、いくつかの特徴の組み合わせを満たすこともできる。
【0035】
本発明は、本発明の一般的な意図を制限することなく、例示的な実施形態に基づいて以下に説明され、本文中でより詳細に説明されていない本発明に係る全ての詳細の開示に関しては、図面の参照が明示的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】MTF測定装置の測定原理を示す模式的な図である。
【
図2】MTF測定装置のカメラホルダを示す単純化された斜視図である。
【
図3】カメラホルダの側面視を示す他の単純化された透視図である。
【
図4】
図3と比較して90°異なる方向からみたカメラホルダの他の側面視を示す他の単純化された透視図である。
【
図5】カメラホルダの上面視を示す単純化された透視図である。
【
図6】ブラケットに取り付けられた複数の望遠鏡状カメラを備えるカメラホルダの単一のモジュールを示す他の単純化された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面において、同一または類似の種類の要素またはそれぞれ対応する部品には、その項目が再度紹介される必要をなくすために、同じ参照符号が付けられている。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係るMTF測定装置2の測定原理を示す模式図である。MTF測定装置2は、複数の被測定デバイス6を受け入れるサンプルステージ4を備えている。図面を分かりやすくするために、1つの被測定デバイス6のみに参照符号を付与している。サンプルステージ4は、被測定デバイス6を受ける高品質のトレイである。サンプルステージ4は、一例として2つのサンプルについて示されているような、サンプルの不要な傾きを回避するように設計されている。分かりやすくするために、傾き角度が強調されている。
【0039】
サンプルステージ4は、交差した方向矢印によって示されるX-Y平面内で並進移動することができる。サンプルステージ4の動きは、一度に一つの被測定デバイス6を測定のための位置に配置する。そして、最初の被測定デバイス6のMTF測定が終了した後に、別の被測定デバイス6に位置を変える。言い換えると、MTF測定装置2は、被測定デバイス6を順次測定するためのものであり、一度に1つの被測定デバイス6が特徴づけられることを意味している。
【0040】
また、MTF測定装置2は、軸上MTF測定を行うための第1の望遠鏡状カメラ(telescopic camera)8.1を備えている。さらに、MTF測定装置2は、軸外のMTF測定を行うための第2の望遠鏡状カメラ8.2および第3の望遠鏡状カメラ8.3を備えている。望遠鏡状カメラ8.1~8.3は、概して、参照符号8を用いて参照される。本明細書においては、「カメラ」を参照する場合、そのカメラが「望遠鏡状」カメラであることを明示的に言及しなくても、常に「望遠鏡状カメラ」を参照していると考えるべきである。カメラ8.1~8.3は、被測定デバイス6によって投影された像を受け取る。被測定デバイス6は、少なくとも1つのレンズ10を有する光学系を備えている。図面の簡略化のためだけに、描かれている被測定デバイス6は、単一のレンズ10を有する。カメラ8.1~8.3は、異なる位置に取り付けられているため、被測定デバイス6の光学系、例えば、レンズ10の異なる視野位置を特徴づけるMTF測定に帰結する画像データを取得することができる。この明細書においては、レンズ10に言及するとき、光学系への言及と考えることもできる。
【0041】
望遠鏡状カメラ8は、適切なデータリンク14を介して処理ユニット12に結合されている。処理ユニット12は、MTF測定装置2の一部を構成している。望遠鏡状カメラ8は、データリンク14を介して画像データを処理ユニット12に送るように構成されている。画像データを取得するために、望遠鏡状カメラ8は、イメージセンサ16と、望遠撮像光学系18とを備えている。処理ユニット12は、全ての望遠鏡状カメラ8から取得された画像データを受信し、当該カメラ8によって受信された画像データから全てのカメラ8のためのMTF測定データセットを演算することによって、複数のMTF測定を行うように構成されている。
【0042】
取得される画像データは、被測定デバイス6の少なくとも1つのレンズ10に、レンズ10の焦点面20に配置されたレチクルの像を照射することによって生成される。レチクルは、スルーフォーカススキャンを行うために、Z軸に沿って移動される。
【0043】
MTF測定装置2は、複数のカメラ8を保持するカメラホルダ22(
図1では図示せず)を備えている。MTF測定装置2は、ハウジング24をさらに備えている。処理ユニット12は、ハウジング24内に配置されてもよい。
【0044】
図2は、MTF測定装置2のカメラホルダ22の図を示す簡略化した斜視図である。カメラホルダ22は、図示された実施形態によれば、第1側部要素28および第2側部要素30として構成される保持構造26を備えている。2つの側部要素28,30は、保持構造26の反対側の横方向の側部を形成する。さらに、カメラホルダ22は、複数のブラケット32,1~32.7を備え、これらは、概して、参照符号32を用いて参照される。ブラケット32は、第1端部34と第2端部36との間に延びる細長い部材である。端部34,36において、ブラケット32は、保持構造26、すなわち、側部要素28,30に取り外し可能に取り付けられている。これは、例えば、側部要素28,30の貫通孔に挿入され、各ブラケット32の端面にねじ込まれるねじを使用することによって達成される。全てのブラケット32には、複数のカメラ8が取り付けられている。ブラケット32は、保持構造26に対して個別に着脱可能である。つまり、ブラケット32は、個別に取り付けおよび取り外しが可能である。例えば、隣のブラケット32を交換する場合に、1以上の追加のブラケット32を取り外す必要はない。これにより、カメラホルダ22の保守が容易になる。
【0045】
図3は、カメラホルダ22の側面視を示す簡略化した透視図である。全てのブラケット32は、第1端部34と第2端部36との間に延びる湾曲した中央部38を備えている。2つの端部34,36は、
図3において破線で示されている。2つの端部34,36は、それぞれのブラケット32の端面間で測定されるブラケット32の全長の、例えば、1%から10%の間、特に、約5%の長さに沿って延びている。
【0046】
特に、ブラケット32の湾曲した中央部38は、少なくとも部分的に、円の一部のように湾曲している。ブラケット32は、その円の中心が、カメラホルダ22とサンプルステージ4との間に配置されるように設計されている(
図1参照)。この円の中心は、特に、サンプルステージ4の平面上に配置される。また、測定されるレンズ10または光学系の中心面に配置することもできる。ブラケット32のこの設計は、ブラケット32上に配置されるカメラ8の整列に特に有効である。カメラ8は全て1つの被測定デバイス6(
図1参照)に指向され、カメラ8は被測定デバイス6に対して少なくともほぼ同じ距離を持っていることが有利であるため、カメラ8を円の一部の上に配置することが有利である。これは、異なる形状のブラケット32を使用することによっても達成可能であるが、カメラ8を湾曲した中央部38に配置することにより、カメラ8がブラケット32に非常に均等に取り付けられた設計が可能になる。
【0047】
図4は、カメラホルダ22の別の簡略化された透視側面図である。そこには、第1側部要素28と、ブラケット32のそれぞれの端面の一部とが示されている。ブラケット32は、平坦な部材であり、全てのブラケット32は、ブラケット平面40内に延びている。説明のために、第1のブラケット32.1のための第1のブラケット平面40,1が、一転鎖線を用いて図示されている。さらに、第3のブラケット32,3のための第3のブラケット平面40.3も、同じく一転鎖線を用いて図示されている。ブラケット平面は、概して、参照符号40を用いて参照される。カメラホルダ22のブラケット32は、ブラケット32のブラケット平面40が、ブラケット平面交差線42に沿って交差するように配置されている。ブラケット平面交差線42は、カメラホルダ22とサンプルステージ4との間に配置されている(
図1参照)。特に、ブラケット平面交差線42は、サンプルステージ4の平面上に配置されている。さらに、全てのブラケット32について、ブラケット32が湾曲した中央部38を有するように設計されている場合には、円の中心がブラケット平面交差線42上に位置している。言い換えれば、カメラホルダ22のブラケット32は、ブラケット32上に配置されたカメラ8が単一の被測定デバイス6上に整列するように傾斜している。
【0048】
ブラケット32がカメラ8とともに、容易に交換可能なモジュールを形成しているので、この設計は特に有利である。軸上測定を行うカメラ8.1を備える中央のモジュールに対して対称に配置されたモジュール(
図5も参照。)が、同一になるように設計されているので、交換が可能である。言い換えれば、これらの2つのブラケット32は、1つずつ交換することができる。これは、中央のブラケット32.4の隣に直接配置されているブラケット32だけでなく、中央のブラケット32.4から離れた第2列または第3列に配置されているブラケット32にも適用される。
【0049】
このことは、
図5の模式的な簡略化された透視上面図において容易に見ることができる。さらに、ブラケット32がそれぞれ、参照符号Lを用いて共通して言及される長手方向L1~L7に延びていることが分かる。ブラケット32の長手方向Lは、カメラホルダ2の右側に隣接して示された二重矢印によって示されている。ブラケット32の長手方向のLは、各ブラケット32のそれぞれの第1端部34と第2端部36との間に延びている。ブラケット32は、保持構造26上、つまり、第1側部要素28および第2側部要素30上に取り付けられ、全てのブラケット32の長手方向L1~L7が互いに平行である。
【0050】
図6は、カメラホルダ22の中央ブラケット32.4を示す簡略化された斜視図である。
図6には、中央ブラケット32.4について見ることができ、全てのブラケット32について説明できることは、ブラケット32の断面が、湾曲した中央部38の断面に比べて、第1端部34および第2端部36において大きくなっていることである。このことは、ブラケット32が、カメラ8からの排熱を側部要素28,30に放散するための熱橋としても機能するので有利である。第1端部34および第2端部36の断面が大きいほど、中央部38と比較して熱伝導率が高くなる。これにより、熱が保持構造26内、例えば、側部要素28,30内に放散される。
【0051】
ブラケット32は、それぞれが2つの反対向きの大きな表面を有する平坦な部材である。
図6には、1つの大きな表面44が見える。カメラ8は、ブラケット32に直接取り付けられ、全てのカメラ8のカメラ本体46がブラケット32の2つの大きな表面44のうちの1つに直接接触している。カメラ本体46をブラケット32の大きな表面44に直接取り付けることにより、カメラ8とブラケット32との間に良好な熱伝導性を持たせることができる。これは主に、2つの部品間の大きな接触面によるものである。このことは、カメラ8からの排熱をブラケット32に逃がす補助となる。
【0052】
ブラケット32には、冷却フィン47が設けられていてもよい。同様のことが、側部要素28,30および保持構造26全般に適用される。冷却フィン47は、熱を環境に、つまりハウジング24の内部に放散させることができる(
図1参照)。冷却フィン47は、
図4および
図6に模式的に示されている。冷却フィン47は、異なる設計のものを用いてもよく、図示された部品の他の部分に延びていてもよい。ハウジング24から熱を排出するために、ファン48が、ハウジング24の天板の内側または天板上に配置されてもよい。ファン48は、ハウジング24の内部から外部環境に暖かい空気を排出することができる。
【0053】
効率的な熱放散により、カメラ8を緊密に密集して配置することができる。例えば、カメラ8は、少なくともほぼ正方形状のパターンまたは六角形状のパターンで取り付けられてもよい。
図5では、一例として、ほぼ六角形の配置が示されている。
【0054】
MTF測定装置2は、少なくとも1つのレンズ10を有する被測定デバイス6の異なる視野位置において、複数のMTF測定を行うために使用するのに特に適している。
【0055】
図面のみから引用されたものを含む全ての名前の付いた特徴、および、他の特徴と組み合わせて開示されている個々の特徴は、単独および組合せで、本発明にとって重要であると考えられる。本発明に係る実施形態は、個々の特徴またはいくつかの特徴の組合せによって完全に満たされ得る。「特に」または「特別に」という文言と組み合わされた特徴は、好ましい実施形態として扱われる。
【符号の説明】
【0056】
2 MTF測定装置
4 サンプルステージ
6 被測定デバイス
8,8.1,8.2,8.3 望遠鏡状カメラ
10 レンズ
12 処理ユニット
14 データリンク
16 イメージセンサ
18 望遠撮像光学系
20 焦点面
22 カメラホルダ
24 ハウジング
26 保持構造
28 第1側部要素
30 第2側部要素
32,32.1~32.7 ブラケット
34 第1端部
36 第2端部
38 湾曲した中央部
40,40.1,40.3 ブラケット平面
42 ブラケット平面交差線
44 表面
46 カメラ本体
47 冷却フィン
48 ファン
L,L1~L7 長手方向