(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスク及びフォトマスク
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20230526BHJP
【FI】
G03F1/24
(21)【出願番号】P 2021214368
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0011135
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0053875
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0077681
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514205126
【氏名又は名称】エスアンドエス テック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】シン,チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-デ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ファ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チョル-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミン-クァン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ミン-キョン
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225737(WO,A1)
【文献】特開2020-181206(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225736(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/100632(WO,A1)
【文献】特開2017-181571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板;
前記基板上に形成された反射膜
;
前記反射膜上に形成されたキャッピング膜;
前記キャッピング膜上に形成されたエッチング阻止膜;及び
前記エッチング阻止膜上に形成された位相反転膜;
を含み、
前記キャッピング膜は、ルテニウム(Ru)を含む物質で構成され、
前記位相反転膜は、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)を含む
物質で
構成され、
前記エッチング阻止膜は、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含む物質で構成され、
前記エッチング阻止膜は、2層以上の構造で形成され、
前記エッチング阻止膜の最上部層は、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含む物質で構成され、前記エッチング阻止膜の前記最上部層の下側の層は、タンタルを含むが酸素(O)を含まない物質で構成される、極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項2】
前記位相反転膜のルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)の合計含有量は、50~100at%であることを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項3】
前記位相反転膜は、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、及びチタニウム(Ti)のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されることを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項4】
前記位相反転膜は、ボロン(B)をさらに含む物質で形成され、ボロン(B)の含有量は、5~50at%であることを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項5】
前記位相反転膜は、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、及び水素(H)のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されることを特徴とする、請求項4に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項6】
前記位相反転膜は、45at%以下の窒素(N)をさらに含む物質で形成されることを特徴とする、請求項4に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項7】
前記位相反転膜は、Ru:Cr=40~99at%:1~60at%の組成比を有するスパッタリングターゲット、又はRu:Cr:B=40~95at%:1~50at%:1~20at%の組成比を有するスパッタリングターゲットを用いて形成されることを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項8】
前記位相反転膜は、Crの含有量がRuの含有量よりも大きくなるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項9】
前記位相反転膜は、13.5nm波長の極紫外線露光光において前記反射膜の反射率に対する相対反射率が3~15%であることを特徴とする、請求項8に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項10】
前記位相反転膜は、Crの含有量がRuの含有量より小さい又は同一となるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項11】
前記位相反転膜は、13.5nm波長の極紫外線露光光において前記反射膜の反射率に対する相対反射率が15~30%であることを特徴とする、請求項10に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項12】
前記位相反転膜は、170~220゜の位相反転量を有することを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項13】
前記位相反転膜は、30~70nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項14】
前記位相反転膜は、300nm以下の平坦度を有することを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項15】
前記位相反転膜は、0.5nmRMS以下の粗さを有することを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項16】
前記位相反転膜の上部に形成され、Si、SiO、SiN、SiC、SiON、SiCO、SiCN、SiCONのいずれか一つで構成されるハードマスク膜;
をさらに含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項17】
前記位相反転膜は、2層以上の多層構造を有し、
前記位相反転膜の最上部層は、酸素(O)をさらに含む物質で形成され、前記最上部層の下の下部層は、酸素(O)を含まない物質で形成されることを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項18】
前記最上部層は、酸素(O)の含有量が1~60at%であり、1~10nmの厚さを有することを特徴とする、請求項17に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項19】
前記最上部層は、Si、SiN、SiC、SiO、SiCN、SiCO、SiNO、SiCONのいずれか一つ、TaO、TaCO、TaON、TaCONのいずれか一つ、又はRuTaO、RuTaON、RuTaBO、RuTaBONのいずれか一つの物質で形成されることを特徴とする、請求項17に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項20】
前記最上部層の上部に形成され、Cr、CrN、CrC、CrO、CrCN、CrON、CrCO、CrCONのいずれか一つの物質で構成されるハードマスク膜;
をさらに含むことを特徴とする、請求項19に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項21】
前記位相反転膜は、2層以上の多層構造を有し、
前記位相反転膜の最上部層は、CrO、CrCO、CrON、CrCONのいずれか一つで形成されることを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項22】
前記最上部層の上部に形成され、Si、SiO、SiN、SiC、SiON、SiCO、SiCN、SiCONのいずれか一つの物質で構成されるハードマスク膜;
をさらに含むことを特徴とする、請求項21に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項23】
前記位相反転膜は、下方に行くほどエッチング速度が増加するか、或いは前記位相反転膜の下部でのエッチング速度が他の部分の少なくとも一部に比べて大きいことを特徴とする、請求項1に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項24】
前記位相反転膜は、Crの含有量が下方に行くほど次第に減少するように構成されることを特徴とする、請求項23に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項25】
前記位相反転膜は、2層以上の多層構造を有し、
前記位相反転膜の最下部層は、Crの含有量が他の層のいずれか一つ以上に比べて少ないか、或いはCrを含まない材質で形成されることを特徴とする、請求項23に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項26】
前記位相反転膜は、
タンタル(Ta)を含む物質で形成され、前記位相反転膜の下部の前記キャッピング膜に対するエッチング阻止膜の機能を有する第1層;及び
前記第1層
上に形成され、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)を含む物質で形成され、前記位相反転膜の反射率及び位相反転量を制御する第2層;
を含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項27】
前記第1層は、ボロン(B)、ニオビウム(Nb)、チタニウム(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されることを特徴とする、請求項
26に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項28】
前記第1層は、窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されることを特徴とする、請求項
26に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項29】
前記第1層は、窒素の含有量が50at%以下であることを特徴とする、請求項
28に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項30】
前記第1層は、Taの含有量が50at%以上であり、7nm以下の厚さを有することを特徴とする特徴とする、請求項
26に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項31】
前記第1層は、ボロン(B)をさらに含む物質で形成され、
前記位相反転膜は、前記反射膜に対する相対反射率が14~15%であることを特徴とする、請求項
26に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項32】
前記第1層は、ニオビウム(Nb)をさらに含む物質で形成され、
前記位相反転膜は、前記反射膜に対する相対反射率が20%以上であることを特徴とする、請求項
26に記載の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスク。
【請求項33】
請求項1の極紫外線リソグラフィ用ブランクマスクを用いて作製されたフォトマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランクマスク(Phase shift Blankmask)及びフォトマスク(Photomask)に関し、EUV露光光に対して位相を反転させる位相反転膜を備えた極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスク及びこれを用いて製造されるフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造のためのリソグラフィ技術は、ArF、ArFi MP(Multiple Lithography)からEUVリソグラフィ技術へと発展している。EUVリソグラフィ技術は、13.5nmの露光波長を使用することにより、解像度(Resolution)の向上及び工程単純化が可能であり、10nm級以下の半導体素子製造用に脚光を浴びている技術である。
【0003】
一方、EUVリソグラフィ技術において、EUV光は、いかなる物質にもよく吸収され、また、この波長において物質の屈折率が1に近いため、既存のKrF又はArF光を用いるフォトリソグラフィと違い、屈折光学系を使用することができない。そのため、EUVリソグラフィでは反射光学系を用いた反射型フォトマスクが使用される。
【0004】
ブランクマスクは、前記フォトマスクの原材料であり、反射型構造を形成するよう、基板上に、EUV光を反射する反射膜、EUV光を吸収する吸収膜の2種の薄膜を含んでなる。フォトマスクは、このようなブランクマスクの吸収膜をパターニングすることによって作製され、反射膜の反射率と吸収膜の反射率との差異(Contrast)を用いてウェハーにパターンを形成する原理を利用する。
【0005】
一方、最近では、10nm級以下、すなわち、7nm級又は5nm級素子、さらには3nm級以下の半導体素子の製造のためのブランクマスク開発が要求されている。ところが、5nm級以下、例えば3nm級の工程では、現在のバイナリ形態のフォトマスクを利用するには、ダブルパターニングリソグラフィ(DPL:Double Pattering Lithography)技術が適用されなければならないという不具合がある。このため、前記のような吸収膜を備えたバイナリ形態のブランクマスクに比べてより高い解像度(Resolution)を具現できる位相反転ブランクマスクの開発が試みられている。
【0006】
図1は、極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクの基本構造を示す図である。極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクは、基板102、基板102上に積層された反射膜104、反射膜104上に形成された位相反転膜108、及び位相反転膜108上に形成されたレジスト膜110を含んで構成される。
【0007】
前記のようなEUVリソグラフィ用位相反転ブランクマスクにおいて、位相反転膜108は一般に、フォトマスクの作製が容易であり、ウエハープリンティング(Wafer Printing)時に性能(Performance)に優れる材料を用いて作製されることが好ましい。例えば、位相反転膜物質としてタンタル(Ta)系物質が考慮できる。ところが、タンタル(Ta)系物質は、相対的に高い屈折率(High n)及び高い消滅係数(High k)を有するため、要求される反射率及び位相反転量が具現し難いという問題点がある。具体的に、タンタル(Ta)系物質は、一般に、55~65nmの厚さを有するように構成することによって180゜程度の位相量を具現できるが、反射膜104に対する相対反射率が5%未満と低いため、位相反転膜108として高いウエハープリンティング効果を有し難い。このため、位相反転膜108に対する要求反射率が高い場合には、タンタル(Ta)は位相反転膜108の材質として不適である。
【0008】
一方、位相反転膜108は、エッチング時にパターン正確度(Fidelity)を良くするために、非晶質の形態で構成されることが好ましい。
【0009】
また、位相反転膜108は、低い薄膜ストレス(Stress)を有する必要がある。一般に、薄膜のストレスは、平坦度変化(△TIR:Total indicated reading)で表記される。薄膜のパターン形成過程において薄膜ストレスの解し(Release)現象は、パターン整列度(Registration)の変化を発生させる。このような問題点は、パターンの大きさ及び密度によって異なって発生するが、これを効果的に制御するためには、薄膜が低いストレスを有するようにする必要がある。
【0010】
また、位相反転膜108は低い表面粗さ(Surface Roughness)を有する必要がある。既存のバイナリ型ブランクマスクでは、露光光に対して反射率が低いため、相対的に表面粗さによる乱反射影響が微小であるが、位相反転膜は、5%以上の反射率が要求されることにより、その影響が大きくなる。例えば、位相反転膜の表面粗さ(Surface Roughness)が高くなると、露光光の乱反射による反射率減少又は反射光のフレア(Flare)現象によるコントラスト(Contrast)減少につながることがあり、ウェハーPRパターンのLER(Line Edge Roughness)及びLWR(Line Width Roughness)が悪くなる問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、位相反転膜に対して要求される高い反射率及び適切な位相反転量を満たすことができるEUVリソグラフィ用位相反転ブランクマスクを提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、位相反転膜の表面粗さの制御により、ウエハープリンティング時にコントラスト、LER、LWRなどの特性を良くすることができる高品質のEUVリソグラフィ用位相反転ブランクマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るEUVリソグラフィ用ブランクマスクは、基板;前記基板上に形成された反射膜;及び、前記反射膜上に形成された位相反転膜を含み、前記位相反転膜は、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)を含む物質で形成されることを特徴とする。
【0014】
前記位相反転膜のルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)の合計含有量は、50~100at%であることが好ましい。
【0015】
前記位相反転膜は、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、及びチタニウム(Ti)のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されてよい。
【0016】
前記位相反転膜は、ボロン(B)をさらに含む物質で形成されてよい。このとき、前記位相反転膜のボロン(B)含有量は、5~50at%であることが好ましい。
【0017】
前記位相反転膜は、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、及び水素(H)のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されてよい。
【0018】
前記位相反転膜は、45at%以下の窒素(N)をさらに含む物質で形成されることが好ましい。
【0019】
前記位相反転膜は、Ru:Cr=40~99at%:1~60at%の組成比を有するスパッタリングターゲット、又はRu:Cr:B=40~95at%:1~50at%:1~20at%の組成比を有するスパッタリングターゲットを用いて形成される。
【0020】
前記位相反転膜は、Crの含有量がRuの含有量よりも大きくなるように構成することにより、13.5nm波長の極紫外線露光光において前記反射膜の反射率に対する相対反射率が3~15%になってよい。
【0021】
前記位相反転膜は、Crの含有量がRuの含有量より小さい又は同一となるように構成することにより、13.5nm波長の極紫外線露光光において前記反射膜の反射率に対する相対反射率が15~30%になってよい。
【0022】
前記位相反転膜は、170~220゜の位相反転量を有する。
【0023】
前記位相反転膜は、30~70nmの厚さを有する。
【0024】
前記位相反転膜は、300nm以下の平坦度を有する。
【0025】
前記位相反転膜は、0.5nmRMS以下の粗さを有する。
【0026】
前記位相反転膜の上部には、Si、SiO、SiN、SiC、SiON、SiCO、SiCN、SiCONのいずれか一つで構成されるハードマスク膜が形成されてよい。
【0027】
前記位相反転膜は、2層以上の多層構造を有してよい。このとき、前記位相反転膜の最上部層は、酸素(O)をさらに含む物質で形成され、前記最上部層の下の下部層は、酸素(O)を含まない物質で形成されてよい。前記最上部層の酸素(O)の含有量は1~60at%であることが好ましい。前記最上部層は1~10nmの厚さを有する。前記最上部層は、Si、SiN、SiC、SiO、SiCN、SiCO、SiNO、SiCONのいずれか一つ、TaO、TaCO、TaON、TaCONのいずれか一つ、又はRuTaO、RuTaON、RuTaBO、RuTaBONのいずれか一つの物質で形成されてよい。前記最上部層の上部には、Cr、CrN、CrC、CrO、CrCN、CrON、CrCO、CrCONのいずれか一つの物質で構成されるハードマスク膜が形成されてよい。
【0028】
前記位相反転膜が2層以上の多層構造を有する場合に、前記位相反転膜の最上部層は、CrO、CrCO、CrON、CrCONのいずれか一つで形成されてよい。前記最上部層の上部にはSi、SiO、SiN、SiC、SiON、SiCO、SiCN、SiCONのいずれか一つの物質で構成されるハードマスク膜が形成されてよい。
【0029】
前記位相反転膜は、下方に行くほどエッチング速度が増加するか、或いは前記位相反転膜の下部でのエッチング速度が他の部分の少なくとも一部に比べて大きいことが好ましい。そのために、前記位相反転膜は、Crの含有量が下方に行くほど次第に減少するように構成されるか、或いは、前記位相反転膜が2層以上の多層構造を有するが、前記位相反転膜の最下部層は、Crの含有量が他の層のいずれか一つ以上に比べて少なくなるように構成されるか、Crを含まないように構成されてよい。
【0030】
前記反射膜と前記位相反転膜との間には、前記位相反転膜に対してエッチング選択比を有するエッチング阻止膜が形成されてよい。前記エッチング阻止膜は、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオビウム(Nb)、ルテニウム(Ru)のいずれかの一つ以上の物質で形成されるか、或いはこの物質に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)、ボロン(B)のいずれか一つ以上をさらに含む化合物で形成される。
【0031】
前記反射膜と前記エッチング阻止膜との間には、ルテニウム(Ru)を含む材質のキャッピング膜が形成され、この場合、前記エッチング阻止膜は、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含む材質で形成されることが好ましい。
【0032】
前記エッチング阻止膜は、2層以上の構造で形成されてよい。このとき、前記エッチング阻止膜の最上部層は、タンタル(Ta)及び酸素(O)を含む材質で形成され、前記エッチング阻止膜の最上部層の下部の層は、タンタルを含み、酸素(O)を含まない材質で形成されることが好ましい。
【0033】
前記反射膜の上部にキャッピング膜が形成される場合、前記位相反転膜は、タンタル(Ta)を含む物質で形成され、前記位相反転膜の下部の前記キャッピング膜に対するエッチング阻止膜の機能を有する第1層、及び前記第1層の上部に形成され、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)を含む物質で形成され、前記位相反転膜の反射率及び位相反転量を制御する第2層を含んで構成されてよい。
【0034】
前記第1層は、ボロン(B)、ニオビウム(Nb)、チタニウム(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されてよい。前記第1層は、窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されてよい。前記第1層は、窒素の含有量が50at%以下であることが好ましい。前記第1層は、Taの含有量が50at%以上であることが好ましい。
【0035】
前記第1層は、7nm以下の厚さを有する。
【0036】
前記第1層は、ボロン(B)をさらに含む物質で形成され、これによれば、前記位相反転膜の前記反射膜に対する相対反射率が14~15%となるように具現することが容易である。
【0037】
前記第1層は、ニオビウム(Nb)をさらに含む物質で形成され、これによれば、前記位相反転膜の前記反射膜に対する相対反射率が20%以上となるように具現することが容易である。
【0038】
一方、本発明によれば、上記のような構成を有する極紫外線リソグラフィ用ブランクマスクを用いて作製されたフォトマスクが提供される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、タンタル(Ta)系位相反転膜に比べて高い相対反射率(位相反転膜の下部にある反射膜の反射率に対する相対的な反射率)を有し、170~230゜の位相反転量を有する位相反転膜を備えた極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクが提供される。また、本発明によれば、位相反転膜の表面粗さが0.5nmRMS以下、さらには0.3nmRMS以下である極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクが提供される。
【0040】
このようなブランクマスクを用いて作製されたフォトマスクを用いて、最終的に7nm以下のパターン作製時に優れた解像度(Resolution)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】従来の極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクの基本構造を示す図である。
【
図2】本発明に係る極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【
図3】
図2における位相反転膜の具体的な構成の第1~第5実施例を示す図である。
【
図4】
図2における位相反転膜の具体的な構成の第1~第5実施例を示す図である。
【
図5】
図2における位相反転膜の具体的な構成の第1~第5実施例を示す図である。
【
図6】
図2における位相反転膜の具体的な構成の第1~第5実施例を示す図である。
【
図7】
図2における位相反転膜の具体的な構成の第1~第5実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、図面を参照して本発明をより具体的に記述する。
【0043】
図2は、本発明に係る極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクを示す図である。
【0044】
本発明に係る極紫外線リソグラフィ用位相反転ブランクマスクは、基板202、基板202上に積層された反射膜204、反射膜204上に積層されたキャッピング膜205、キャッピング膜205上に積層された位相反転膜208、位相反転膜208上に積層されたハードマスク膜209、及びハードマスク膜209上に積層されたレジスト膜210を備える。また、本発明のブランクマスクは、基板202の背面に形成された導電膜201、及びキャッピング膜205と位相反転膜208との間に形成されたエッチング阻止膜207をさらに備えることができる。また、位相反転膜208とレジスト膜210との間には吸収膜(図示せず)がさらに備えられてよい。
【0045】
基板202は、EUV露光光を利用する反射型ブランクマスク用グラス基板として適合するように、露光時の熱によるパターンの変形及びストレスを防止するために0±1.0×10-7/℃、好ましくは0±0.3×10-7/℃の低熱膨張係数を有するLTEM(Low Thermal Expansion Material)基板で構成される。基板202の素材としては、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックなどが用いられてよい。
【0046】
基板202は、露光時に反射光のパターン位置エラー(Pattern Position Error)を制御するために、低い数値の平坦度(Flatness)が要求される。平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)値と表現され、基板202は、低いTIR値を有することが好ましい。基板202の平坦度は、132mm2領域又は142mm2領域において100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。
【0047】
反射膜204は、EUV露光光を反射する機能を有し、各層の屈折率が異なる多層膜構造を有する。具体的には、反射膜204は、Mo材質の層とSi材質の層を交互に40~60層積層して形成する。反射膜204の最上部層は、反射膜204の酸化を防止するために、Si材質の保護膜で構成されることが好ましい。
【0048】
反射膜204は、イメージ感度(Image Contrast)を良くすることから、13.5nm波長に対する高い反射率が要求されるが、このような多層反射膜の反射強度(Reflection Intensity)は、露光光の入射角度及び各層の厚さによって異なる。例えば、露光光の入射角度が5~6゜の場合は、Mo層及びSi層がそれぞれ、2.8nm、4.2
nmの厚さで形成されることが好ましい。
【0049】
反射膜204は、13.5nmのEUV露光光に対して60%以上、好ましくは64%以上の反射率を有することが好ましい。
【0050】
反射膜204の表面平坦度をTIR(Total Indicated Reading)と定義するとき、TIRは1,000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下の値を有する。反射膜204の表面TIRが高い場合に、EUV露光光が反射される位置のエラーが誘発され、位置エラーが大きいほどパターン位置エラー(Pattern Position Error)が大きくなる。
【0051】
反射膜204は、EUV露光光に対する乱反射を抑制するために、0.5nmRms以下、好ましくは0.3nmRms以下、より好ましくは0.1nmRms以下の表面粗さ(Surface Roughness)値を有する。
【0052】
キャッピング膜205は反射膜204上に形成され、反射膜204の酸化膜形成を防止して反射膜204のEUV露光光に対する反射率を維持し、位相反転膜208のパターニング時に反射膜204がエッチングされることを防止する役割を担う。好ましい例として、キャッピング膜205は、ルテニウム(Ru)を含む材質で形成される。キャッピング膜205は、2~5nmの厚さで形成することが好ましい。キャッピング膜205の厚さが2nm以下であると、キャッピング膜205としての機能を発揮し難くなり、5nm以上であると、EUV露光光に対する反射率が低下する問題がある。
【0053】
エッチング阻止膜207は、キャッピング膜205と位相反転膜208との間に選択的に備えられ、位相反転膜208のパターニングのためのドライエッチング(Dry Etching)工程又は洗浄(Cleaning)工程時に下部のキャッピング膜205を保護する役割を担う。エッチング阻止膜207は、好ましくは、位相反転膜208に対して10以上のエッチング選択比(Etch Selectivity)を有する物質で形成される。
【0054】
エッチング阻止膜207が形成される場合、エッチング阻止膜207はその上部の位相反転膜208と共にパターニングされ、位相反転膜208の一部として機能する。この場合、位相反転膜208の反射率は、エッチング阻止膜207と位相反転膜208との積層構造全体における反射率を意味する。
【0055】
エッチング阻止膜207を形成する物質は、エッチング阻止膜207が全体の位相反転量及び反射率に影響を与える点を考慮し、また、位相反転膜208に対して要求されるエッチング阻止膜207のエッチング選択比(etching selectivity)を考慮して決定される。エッチング阻止膜207は、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオビウム(Nb)、ルテニウム(Ru)のいずれか一つ以上の物質で構成される、或いはこの物質に酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)、ボロン(B)のいずれか一つ以上をさらに含む化合物で構成されてよい。
【0056】
位相反転膜208とキャッピング膜205に同種物質が含まれる場合、例えば、位相反転膜208とキャッピング膜205がルテニウム(Ru)を含む物質で構成される場合に、エッチング阻止膜207は、ルテニウム(Ru)に対してエッチング選択比を有する物質で構成されてよい。すなわち、ルテニウム(Ru)ベースの位相反転膜208は、一般に塩素系ガスによってエッチングされる特性を有するので、エッチング阻止膜207は、フッ素系ガスによってエッチングされる物質で構成されてよい。具体的には、エッチング阻止膜207は、シリコン(Si)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、ニオビウム(Nb)、ボロン(B)のいずれか一つ以上を含む物質、又はそれらに酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つ以上を含む物質で構成されてよい。
【0057】
エッチング阻止膜207がタンタル(Ta)を含む材質で形成される場合に、エッチング阻止膜は酸素(O)をさらに含むことが好ましい。タンタル(Ta)は、酸素(O)を含む場合にフッ素系ガスによってエッチングされるので、エッチング阻止膜207は、その上部の位相反転膜208に対してエッチング選択比を有することになる。一方、エッチング阻止膜207がタンタル(Ta)ベースの単層で構成される場合に、パターニング後に、タンタル(Ta)は自然酸化による酸化(Oxidation)が発生する。タンタル(Ta)を含むエッチング阻止膜207が酸素(O)をさらに含む場合、このような酸化現象に起因する不規則的な面を減少させることができる。
【0058】
一方、エッチング阻止膜207が酸素(O)を含む場合には、Ru材質のキャッピング膜205にダメージ(Damage)を与え、反射率減少などの影響を及ぼすので、エッチング阻止膜207は酸素(O)を含まないように構成されることが好ましい。したがって、エッチング阻止膜207がタンタル(Ta)を含む材質で形成される場合には、エッチング阻止膜207を2層以上の構造で形成するが、最上部層は酸素(O)をさらに含み、最上部層の下部層は酸素(O)を含まないように構成されることが好ましい。エッチング阻止膜207の下部層は酸素を含まないことにより、塩素系ガスによってエッチングされる。このとき、エッチング阻止膜207の下のキャッピング膜205はルテニウム(Ru)を含むため、キャッピング膜205が塩素系ガスにエッチングされることがあるが、エッチング阻止膜207の下部をエッチングするエッチングガスは、酸素(O)を含まない塩素系(Cl)ガスを使用してエッチングすることにより、キャッピング膜205に対するエッチングダメージを最小化することができる。
【0059】
エッチング阻止膜207に対するエッチングガスは、その上部に形成される位相反転膜208に対するエッチングガスと同一であっても異なってもよい。例えば、エッチングガスが同一である場合には、エッチング阻止膜207と位相反転膜208の組成又は組成比を異ならせ、EPD(End Point Detection)システムによりエッチング終点を確認することができる。
【0060】
また、エッチング阻止膜207は、最終パターン形成時に除去される物質で形成できる。エッチング阻止膜207の除去のために、乾式エッチング、湿式エッチング及び洗浄過程でエッチング阻止膜207が除去される物質を使用すればよい。具体的に、洗浄過程で洗浄溶液としてSC-1、SPM、APM、Megasonic、又は脱イオン熱水(Hot-DI water)を使用することにより、エッチング阻止膜207を除去することができる。
【0061】
エッチング阻止膜207は、0.5~10nmの厚さを有し、好ましくは1~7nmの厚さを有する。エッチング阻止膜207が10nm以上の厚さを有すると、最終に形成された位相反転膜208のパターンの反射率が減少し、0.5nm以下の厚さを有すると、エッチング阻止膜207としての役割を果たし難くなるという問題点が発生する。
【0062】
位相反転膜208は、露光光の位相を反転させて反射することにより、反射膜204によって反射される露光光と相殺干渉を起こし、露光光を消滅させる機能を有する。位相反転膜208は、露光光の波長に対して位相反転制御(Phase Shift Control)が容易ながらも透過度が高い物質で形成される。このような物質として、本発明では、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)が使用される。Ru及びCrを含む材質は、耐薬品性に優れ、乾式エッチング時に通常使用されるフッ素(F)系及び塩素(Cl)系ガスを適用できるという長所がある。特に、RuとCrを含む材質は、塩素系ガスで容易にエッチングすることができる。一方、位相反転膜208は、Ru及びCrの他にも、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、チタニウム(Ti)、ニオビウム(Nb)、ボロン(B)のいずれかの一つ以上の物質をさらに含むことができる。
【0063】
Ru及びCrは、位像反転膜208の反射率と位相反転量を決定する。Ruは、Crに比べて屈折率が低いので、RuとCrとの組成比の制御によって位相反転膜208の位相反転量を制御することができる。位相反転膜208に含まれるRu及びCrの含有量の合計は50~100at%であることが好ましい。Ru及びCrの含有量が50at%以下である場合には、3~30%の反射率の確保及び位相反転量の制御がし難いという問題点がある。
【0064】
位相反転膜208に含まれるRu及びCrの比率は、要求される反射率を考慮して決定される。RuはCrに比べて低い消滅係数を有するので、Ruの含有量がCrの含有量に比べて相対的に増加すると位相反転膜208の反射率が高くなる。
【0065】
低い反射率が要求される場合には、Crの含有量がRuの含有量よりも大きくなるように構成される。具体的には、Cr:Ru=50~99at%:1~50at%の割合とすれば、3~15%の相対反射率が具現し易い。ここで、相対反射率は、キャッピング膜205を含む反射膜204の反射率に対する位相反転膜208の反射率を意味する。例えばキャッピング膜205を含む反射膜204の反射率が65%であり、位相反転膜208の反射率が3.3%である場合に、位相反転膜208の反射膜204に対する相対反射率は、5.08%になる。本発明における反射率は、13.5nm波長のEUV露光光に対する反射率を意味する。
【0066】
高い反射率が要求される場合には、Crの含有量がRuの含有量より小さい又は同一となるように構成される。具体的には、Cr:Ru=1~50at%:50~99at%の割合で構成すれば、15~30%の相対反射率が具現し易い。
【0067】
一方、Ru及びCrを含む位相反転膜208は、ボロン(B)をさらに含んで形成されることが好ましい。ボロン(B)は、位相反転膜の薄膜結晶性を非晶質化させ、パターン形成時にパターンプロファイル(Pattern Profile)を良くする。また、ボロン(B)は、RuとCrに比べて低い原子量を有することにより、スパッタリング後に薄膜の表面粗さを下げる機能を有する。これにより、位相反転膜208の表面で発生する乱反射などが制御し易い。また、ボロン(B)は、光学的にRu及びCrに比べて低い消滅係数(k)を有するので、ボロン(B)を含有すると、3~30%の範囲で所定の反射率及び180゜前後の位相反転量が具現し易い。さらに、ボロン(B)の含有量が増加することにより、Ru及びCrを含む位相反転膜208のエッチング速度が増加し、パターンプロファイル(Pattern Profile)、特に、パターンのLER及びLWRを向上させることができる。Ruは、フッ素系及び塩素系エッチングガスのいずれによってもエッチングされ得、特に、塩素系ガスと共に酸素(O)及び/又はアルゴン(Ar)ガスを用いてエッチングする場合に、エッチング速度が速い。この場合、位相反転膜208にボロン(B)が含まれると、エッチング速度を増加させることがより容易になる。
【0068】
一方、ボロン(B)の含有量が高いと、相対的に、洗浄工程時に洗浄溶液に脆弱な傾向を示す。このため、位相反転膜208に含まれるボロン(B)の含有量は5~50at%であることが好ましい。
【0069】
位相反転膜208はさらに、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)のいずれか一つ以上を含んで形成できる。特に、窒素(N)を含む場合、最終的に位相反転膜がパターニングされたフォトマスクにおけるパターンのエッジ粗さ(edge roughness)が改善される長所を有する。このとき、窒素(N)の含有量は45at%以下に制御されることが好ましい。
【0070】
位相反転膜208は、単層又は2層以上の多層で構成されてよい。
【0071】
位相反転膜208が2層以上の構造で形成される場合に、少なくとも一つの層は酸素(O)を含み、残りの層は酸素(O)を含む構造で形成されてよい。このとき、2層以上の構造の位相反転膜208において、最上部層は酸素(O)を含み、最上部層の下部層は酸素(O)を含まないことが好ましい。最上部層に酸素(O)が含まれることにより、最終的に位相反転膜208の最上部層において193nmのArF検査波長に対するコントラスト(Contrast)を向上させることができる。
【0072】
2層以上の構造の位相反転膜208において、最上部層は、前述したような本発明の位相反転膜208の主な材質、すなわち、Ru及びCrを含む材質で形成されてよい。具体的には、位相反転膜208の最上部層は、RuCrO、RuCrON、RuCrBO、RuCrBONのいずれか一つで構成されてよい。
【0073】
また、これと違い、最上部層は、Ru及び/又はCrを含まない材質で形成されてもよい。具体的には、位相反転膜208の最上部層は、Si、SiN、SiC、SiO、SiCN、SiCO、SiNO、SiCONのいずれか一つのSi化合物、TaO、TaCO、TaON、TaCONのいずれか一つのTa酸化化合物、又はCrO、CrCO、CrON、CrCONのいずれか一つのCr酸化化合物で形成されてもよい。このとき、最上部層以外の位相反転膜208の下部層は、Ru及びCrを含む材質、例えば、RuCr、RuCrN、RuCrB、RuCrBNのいずれか一つで形成されてよい。最上部層とその下部層とが、材質の差異又は酸素(O)含有の有無の違いによってエッチング選択比を有する場合に、最上部層は、検査波長での反射率減少効果をもたらすとともに、その下部層に対してハードマスク膜としての機能を有することができる。この場合、
図2におけるハードマスク膜209は別に形成されなくてよい。
【0074】
一方、位相反転膜208が単層で構成される場合には、13.5nmの検査波長を用いた検査が可能である。この時には、反射膜204に対する位相反転膜208の反射率の差異が、20%以上になるためである。
【0075】
一方、最上部層以外の位相反転膜208の下部層は、単一の層で構成されてもよく、2層以上で構成されてもよい。
【0076】
位相反転膜208が2層以上の構造で構成される場合の具体的な実施例については、
図3~
図7を参照して後述する。
【0077】
位相反転膜208が最上部層とその下部の層で構成される場合に、最上部層は1~10nmの厚さ、好ましくは2~5nmの厚さを有する。最上部層が1nm以下の厚さを有する場合には、下部の層に対するエッチング選択比が確保し難く、10nm以上の厚さを有する場合には、最上部層のエッチングのためのレジスト膜210の厚さが減少し難くなる。
【0078】
位相反転膜208を形成するためのスパッタリングターゲットは、Ru:Cr=40~99at%:1~60at%の組成比を有するRuCr合金、又はRu:Cr:B=40~95at%:1~50at%:1~20at%の組成比を有するRuCrB物質で構成されてよい。
【0079】
位相反転膜208は、170~220゜の位相反転量を有し、好ましくは170~190゜、より好ましくは175~185゜の位相反転量を有する。位相反転膜208は、最終的に形成されるパターンのプロファイル及び大きさによって最適化された位相反転量を有することが好ましい。
【0080】
前述したように、エッチング阻止膜207が形成される場合、上記の反射率と位相反転量は、位相反転膜208とエッチング阻止膜207全体の反射率と位相反転量を意味する。
【0081】
位相反転膜208は、影効果(Shadowing Effect)が減少することから、厚さは小さいほど有利である。位相反転膜208は、30~70nmの厚さを有し、好ましくは40~60nmの厚さを有する。
【0082】
位相反転膜208は、チャージアップ(Charge-up)現象を減少できることから、面抵抗が低いほど有利である。本発明の位相反転膜208は、1000Ω/□以下の面抵抗を有し、好ましくは500Ω/□以下、より好ましくは100Ω/□以下の面抵抗を有する。
【0083】
位相反転膜208は、抵抗の影響を減少させることから、低い平坦度(△TIR)を有することが好ましい。本発明の位相反転膜208は、300nm以下の平坦度を有し、好ましくは200nm、より好ましくは100nm以下の平坦度を有する。
【0084】
位相反転膜208は、表面での乱反射によるフレア現象を防止し、反射光の強度(Intensity)減少を防止できることから、低い表面粗さを有することが好ましい。本発明の位相反転膜208は、0.5nmRMS以下の粗さを有し、好ましくは0.3nmRMS以下の粗さを有する。
【0085】
本発明の位相反転膜208は、フォトマスクの洗浄時に優れた耐薬品性を有し、具体的には、本発明に係る位相反転膜208は、SC-1及びSPM工程後の厚さ変化が1nm以下である。
【0086】
ハードマスク膜209は選択的に備えられ、その下部の位相反転膜208をパターニングするためのエッチングマスクの機能を有する。ハードマスク膜209は、Si、SiO、SiN、SiC、SiON、SiCO、SiCN、SiCONのいずれか一つで形成されてよい。ハードマスク膜209は、エッチング時に発生する副産物を最小化することから、塩素系ガスにエッチングされる特性を有する物質で形成されることが好ましい。そのために、ハードマスク膜209は、Cr化合物、具体的に、Cr、CrN、CrC、CrN、CrCN、CrCO、CrON、CrCONのいずれか一つで形成されてよい。
【0087】
ハードマスク膜209の物質は、位相反転膜208の最上部層の材質を考慮し、最上部層に対してエッチング選択比を有するように選択される。位相反転膜208がRu及びCrを含む場合に、位相反転膜208はフッ素(F)系ガスに比べて塩素(Cl)系エッチング物質によって相対的に速くエッチングされる特性を有する。このため、ハードマスク膜209は、フッ素(F)系エッチング物質によってエッチングされる物質で構成されることが好ましい。例えば、ハードマスク膜209は、Si系物質、又はSiにC、O、Nのいずれか一つ以上をさらに含む物質で形成されてよく、具体的には、Si、SiC、SiO、SiN、SiCO、SiCN、SiON、SiCONのいずれか一つで形成されてよい。好ましくは、ハードマスク膜209は、SiONで形成される。ハードマスク膜209は、5nm以下の厚さを有するように形成されることが好ましい。
【0088】
位相反転膜208が2層以上の構造を有する場合には、ハードマスク膜209は、位相反転膜208の最上部層に対してエッチング選択比を有する材質で形成される。例えば、位相反転膜208の最上部層がSi、SiN、SiC、SiO、SiCN、SiCO、SiNO、SiCONのいずれか一つ、TaO、TaCO、TaON、TaCONのいずれか一つ、又はRuTaO、RuTaON、RuTaBO、RuTaBONのいずれか一つの物質で形成される場合には、ハードマスク膜209は、Cr、CrN、CrC、CrO、CrCN、CrON、CrCO、CrCONのいずれか一つの物質で構成されてよい。また、最上部層がCrO、CrCO、CrON、CrCONのいずれか一つで形成される場合には、ハードマスク膜はSi、SiO、SiN、SiC、SiON、SiCO、SiCN、SiCONのいずれか一つの物質で構成されてよい。
【0089】
レジスト膜210は、化学増幅型レジスト(CAR:Chemically Amplified Resist)で構成される。レジスト膜210は、40~100nm、好ましくは40~80nmの厚さを有する。
【0090】
導電膜201は基板202の背面に形成される。導電膜201は、低い面抵抗値を有し、静電チャック(Electronic-Chuck)と極紫外線リソグラフィ用ブランクマスクとの密着性を向上させ、静電チャックとの摩擦によってパーティクルが発生することを防止する機能を有する。導電膜201は、100Ω/□以下の面抵抗を有し、好ましくは、50Ω/□以下、より好ましくは20Ω/□以下の面抵抗を有する。
【0091】
導電膜201は、単一膜、連続膜、又は多層膜の形態で構成されてよい。導電膜201は、例えば、クロム(Cr)又はタンタル(Ta)を主成分として形成されてよい。
【0092】
以下では、
図3~
図7を参照して、
図2のブランクマスクにおいて位相反転膜208の具体的な構成の実施例を説明する。
図3~
図7では、
図2の構成のうち位相反転膜208部分だけを示している。
【0093】
図3の第1実施例において、位相反転膜208は、最上部層208nと下部層208bの2層で構成されており、下部層208bはRuCrBNで形成され、最上部層208nはRuCrBNOで形成される。
【0094】
一方、Ruを含む物質の場合、パターンプロファイルが悪くなる問題があり、特に、パターンの下部でフーティング(footing)が発生する問題がある。このような問題を防止するために、位相反転膜208は、基板202の方向に行くほど、すなわち、下方に行くほどエッチング速度が増加するか、或いは、位相反転膜208の下部におけるエッチング速度が、位相反転膜208の他の部分の少なくとも一部に比べて大きいことが好ましい。
【0095】
そのために、
図3の実施例において、下部層208bは、Crの含有量が下方に行くほど次第に減少するように構成される。これにより、位相反転膜208は、下方に行くほどエッチング速度が増加する。
【0096】
図4及び
図5の第2及び第3実施例は、
図3の実施例の構成において下方に行くほどエッチング速度が速くなるようにすることにより、パターンプロファイルを改善可能にした具体的な別個の構成を示している。
図4及び
図5の各実施例において、位相反転膜208は、最上部層208nと下部層208bの他に、最下部層208aをさらに備えており、最上部層208nと下部層208bの構成は、
図3の実施例と同一である。
【0097】
図4で、最下部層208aは、下部層208bと同じ材質で形成されており、最下部層208aは、Crの含有量が下部層208bに比べて少なくなるように構成される。仮に、下部層208bが複数の層で構成される場合には、最下部層208aは、Crの含有量が、下部層208bを構成する複数の層のいずれか一つ以上に比べて少なくなるように構成されてよい。さらに、
図5で、最下部層208aは、Crを含まない材質、具体的にはRuB又はRuで形成される。
【0098】
このような
図3~
図5の実施例によれば、位相反転膜208の下方に行くほどエッチング速度が増加する、又は最下部層208aのエッチング速度がその上部の層に比べてエッチング速度が増加するので、位相反転膜208のパターンのフーティングが防止される。
【0099】
【0100】
本実施例の位相反転膜208は、14~15%の相対反射率を有する。また、位相反転膜208は、170~230゜位相反転量を有し、好ましくは、ウエハープリンティング時にNILSの効果が極大化する、例えば182~195゜の位相反転量を有する。
【0101】
本実施例において、位相反転膜208は、最下部の第1層208-1及び第1層208-1の上の第2層208-2を含む2層の構造で構成される。第2層208-2は、RuCrを含む物質で構成され、第1層208-1は、タンタル(Ta)を含む物質で構成される。
【0102】
第1層208-1は、第2層208-2のエッチング時に下部のキャッピング膜205のダメージ(Damage)を防止する機能を有する。第1層208-1の下のキャッピング膜205がRuを含み、第2層208-2もRuCrで形成されてRuを含むので、位相反転膜208の第2層208-2のエッチング時に第1層208-1がエッチングされることがある。このため、第1層208-1が第2層208-2とキャッピング膜205に対してエッチング選択比を有する物質で構成されることにより、第1層208-1がエッチング阻止膜として機能する。この場合、
図2におけるような別個のエッチング阻止膜207は不要である。好ましくは、第1層208-1は、第2層208-2及びキャッピング膜205に対してエッチング選択比が10以上である物質で構成される。第1層208-1は、エッチング阻止膜の機能を果たすために必要な最小限の厚さを有し、好ましくは、7nm以下の厚さを有する。
【0103】
第1層208-1は、タンタル(Ta)単独、又はタンタル(Ta)にボロン(B)、ニオビウム(Nb)、チタニウム(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)のいずれか一つ以上をさらに含む物質で構成されてよい。さらに、第1層208-1は、このような物質に窒素、炭素、酸素のいずれか一つ以上をさらに含む物質で構成されてよい。一例として、第1層208-1は、タンタル(Ta)の単独化合物で形成される場合に、Ta、TaN、TaC、TaO、TaON、TaCO、TaCN、TaCONのいずれか一つで構成されてよい。
【0104】
また、第1層208-1は、第2層208-2を含む位相反転膜208全体の反射率及び位相反転量を制御する機能を有する。そのために、第1層208-1と第2層208-2は、様々な組成、組成比及び厚さの組合せを有することができる。具体的には、位相反転膜208全体の反射率を高めるために、第1層208-1の厚さを7nm以下又は5nm以下に制御する、或いは、位相反転膜208全体の消滅係数(k)を低くするために、第1層208-1がボロン(B)をさらに含むように構成されてよい。好ましくは、第1層208-1は、
図3のようにTaBNで構成される。ボロン(B)を含むと、位相反転膜208が14~15at%の相対反射率を有するように制御することが容易である。
【0105】
第1層208-1は、Taが50at%以上含まれるように構成されることが好ましい。Taが50at%以下であると、第2層208-2とキャッピング膜205に対するエッチング選択比が低くなる問題が発生し、しかも、エッチング速度が相対的に遅いため、優れたパターンプロファイルが形成し難い問題点がある。第1層208-1に窒素(N)を含む場合に、窒素の含有量は50at%以下であることが好ましい。タンタル(Ta)に窒素が追加されると、エッチング速度が遅くなり、そのため、上部の第2層208-2が第1層208-1のエッチング時にダメージを受ける。したがって、第1層208-1が50at%以下の窒素を含むようにすることにより、第2層208-2のダメージを防止することができる。
【0106】
一方、第1層208-1は、単層で構成されてもよく、多層で構成されてもよい。一例として、例えば、第1層208-1はTaで構成された下部層、及びTaOで構成された上部層の2層構造で構成されてよい。
【0107】
第1層208-1のエッチング工程では、下部のキャッピング膜205又は上部の第2層208-2の光学的損失を最小化することから、無酸素のエッチングガスを利用することが好ましい。
【0108】
位相反転膜208の第2層208-2は、25~50nm、好ましくは30~40nmの厚さを有する。位相反転膜208は、全厚さが55nm以下となるように構成されることが好ましい。第2層208-2は、単層又は2層以上の多層で構成されてよい。
【0109】
第2層208-2の組成は、
図3に関する説明で記述したような位相反転膜208の構成が同一に採用されてよい。
【0110】
図7は、第5実施例を示す図である。図示及び説明の便宜上、
図7の各層に対して
図6と同じ参照符号を付与した。
図6について記述した内容のうち、
図7の構成にも該当する内容は、重複記述が省略されるが、このような内容は
図7にも同一に適用される。
【0111】
本実施例の位相反転膜208は、20%以上の相対反射率を有する。また、位相反転膜208は、170~230゜の位相反転量を有し、好ましくは、ウエハープリンティング時にNILSの効果が極大化する、例えば182~195゜の位相反転量を有する。
【0112】
図7の第5実施例は、
図6の実施例と比較して第1層208-1の材質が異なる。すなわち、
図7の実施例では、第1層208-1がTaNbNで構成されている。Nbは、Taに比べて消滅係数(k)が低いので、TaにNbを含めると、第1層208-1の反射率を高めることができる。したがって、TaとNbの含有量を調節することにより、第1層208-1による反射率制御の程度を調節することが可能になる。具体的には、Nbの含有量が高いほど第1層208-1の反射率が高くなり、これにより、位相反転膜208全体の反射率が増加し、高い相対反射率が具現し易くなる。第1層208-1は、Nbの含有量を1~50at%、好ましくは5~50at%、より好ましくは10~40at%とすることにより、位相反転膜208全体の反射率を20%以上にさせることができる。
【0113】
第1層208-1は、エッチング阻止膜機能を果たすために必要な最小限の厚さを有し、好ましくは7nm以下の厚さを有する。第2層208-2は、25~40nmの厚さ、好ましくは30~32nmの厚さを有する。
【0114】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を用いて本発明を具体的に説明したが、実施例は、単に本発明の例示及び説明をするための目的で用いられたもので、意味限定、又は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を制限するためのものではない。したがって、本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、実施例から様々な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点が理解できよう。したがって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲における技術的事項によって定められるべきであろう。