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  • 特許-眼科用鑷子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】眼科用鑷子
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
A61F9/007 130Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021503987
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007549
(87)【国際公開番号】W WO2020179550
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019040976
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】田澤 祥亨
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0000670(US,A1)
【文献】特表2017-506111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348013(US,A1)
【文献】米国特許第10092168(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第108095805(CN,A)
【文献】特表2017-517326(JP,A)
【文献】国際公開第2010/126076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体と、前記管体の内腔に収納可能な一対のネック部と、前記ネック部の先端側に位置し前記管体の内腔に収納しない一対の把持部と、を有する鑷子部分を具備し、眼球に取り付けたカニューレを通して眼球内の手術に用いる眼科用鑷子であって、
前記鑷子部分は、前記管体を摺動させて前記ネック部を前記管体の内腔に収納することで前記把持部が閉じる構造であって、
前記ネック部が略S字形状であって、前記管体の中心軸側が凸である第1の湾曲又は屈曲部と、前記管体の中心軸側が凹である第2の湾曲又は屈曲部と、を有し、前記第1の湾曲又は屈曲部が管体側、前記第2の湾曲又は屈曲部が把持部側、に位置しており、前記第1の湾曲又は屈曲部及び前記第2の湾曲又は屈曲部の両方を前記管体の内腔に収納することができ
前記第1の湾曲又は屈曲部が前記管体の内腔に収納されたとき前記把持部の先端同士が接触し、前記第2の湾曲又は屈曲部が前記管体の内腔に収納されたとき前記把持部の全体が接触して把持力が向上し、また、前記第2の湾曲又は屈曲部が前記管体の内腔に収納された状態のとき前記管体から出ている、前記ネック部より先端側の部分の最大幅が前記管体の外径より小さくなっていることを特徴とする眼科用鑷子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科手術に用いられる眼科用鑷子に関する。
【背景技術】
【0002】
硝子体手術・白内障手術・緑内障手術等の眼科手術においては、眼組織等を把持・処置することが行われる。このような眼科手術において、眼科用手術器具等を眼球内で用いる際は、まず、カニューレを眼球に取り付け、そのカニューレを通して眼科用手術器具等を挿入する(例えば、特許文献1参照)。そして、眼科用手術器具の一例として、硝子体等の眼組織を掴んで処置する眼科用鑷子がある。
【0003】
図4は、従来の眼科用鑷子の使用図である。ここで、硝子体手術において眼球Eに取付けられる一般的なカニューレ40は、金属性のパイプの基端部付近を樹脂製のベースに嵌め込んだ構成になっている。
【0004】
眼科用鑷子100は、先端側が硝子体を掴む鑷子部分20になっており、鑷子部分20は、カニューレ40を通して、眼球Eの内部に挿入される。鑷子部分20の構成は、先端が把持部23、その把持部23から連続してネック部22があり、さらにネック部22から基端側は管体21の内腔に納められている。管体21としては、眼球Eの内部へ挿入されるため、非常に細い素材が使われている。また、作業中に、管体21がカニューレ40の外側で折れ曲がるのを防ぐために、管体21の外側を補強スリーブ33で補強することもある。
【0005】
眼科用鑷子100の基本的な構成は、管体21の外側に他の部品を介して本体部35を有し、本体部35に対し摺動する位置に移動部材37を有している。ここで、移動部材37と管体21とは繋がっており、作動部36を閉じたり開いたりすると、作動部36から板バネ等の付勢手段で繋がっている移動部材37が本体部35に対して軸方向に動き、さらに移動部材37に繋がっている管体21が軸方向に摺動する。そうすることによって、ネック部22が管体21の内腔に入ったり出たりし、ネック部22が管体21の内腔に入ったときは把持部23が閉じ、ネック部22が管体21の外側に出たときは把持部が開く。つまり、作動部36を指で閉じると鑷子部分20の把持部23が閉じ、指を離して作動部36を開くと把持部23が開くことになる。尚、眼科用鑷子100では補強スリーブ33を設けているが、補強スリーブ33を設けない場合もある。また、本体部35に対し移動部材37は、内側に配置されても良いし、外側に配置されても良い。
【0006】
しかし、このような従来の眼科用鑷子の場合、基本的に把持部を閉じるか開くかのどちらかであって、把持力を調整することは非常に難しい作業である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/126076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような実情に鑑み、本発明は、使用状況に合わせて容易に把持力の強弱を調整することが可能な眼科用鑷子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の眼科用鑷子は、管体と、一対のネック部と、そのネック部の先端側に位置する一対の把持部と、を有する鑷子部分を具備する眼科用鑷子であって、鑷子部分は、管体を摺動させてネック部を管体の内腔に収納することで把持部が閉じる構造であって、ネック部は、管体の中心軸側が凸である第1の湾曲又は屈曲部と、管体の中心軸側が凹である第2の湾曲又は屈曲部と、を有し、第1の湾曲又は屈曲部が管体側、第2の湾曲又は屈曲部が把持部側、に位置していることとする。
【0010】
また、第1の湾曲又は屈曲部が管体の内腔に収納されたとき把持部同士が接触し、第2の湾曲又は屈曲部が管体の内腔に収納されたとき把持部の把持力が向上することにするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の湾曲又は屈曲部のみを管体の内腔に収納したときと、第2の湾曲又は屈曲部まで管体の内腔に収納したときとで、把持力が明確に異なるので、把持力の調整が容易であるという効果を奏する。
【0012】
また、第1の湾曲又は屈曲部が管体の内腔に収納されたとき把持部同士が接触し、第2の湾曲又は屈曲部が管体の内腔に収納されたとき把持部の把持力が向上することにすると、対象物を軽く摘みたい場合は第1の湾曲又は屈曲部まで、強く挟みたい場合は第2の湾曲又は屈曲部まで管体の内腔に収納すればよいので、使用状況に合わせて容易に使い分けが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の眼科用鑷子に係る鑷子部の拡大図である。
図2】鑷子部の動きを説明する図であり、(a)は鑷子部が開いた状態、(b)は鑷子部を軽く閉じた状態、(c)は把持部の把持力を強くした状態である。
図3】眼科用鑷子の使用方法を説明する図である。
図4】従来の眼科用鑷子の使用図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の眼科用鑷子に係る鑷子部の拡大図である。
【0016】
眼科用鑷子10の基本動作は、前述した従来のものと同様に、作動部を指で閉じると鑷子部分20の把持部23が閉じ、作動部を開くと把持部23が開くというものである。
【0017】
眼科用鑷子10の鑷子部分20は、管体21と、一対のネック部22と、そのネック部22の先端側に位置する一対の把持部23と、を有する構成である。ネック部22から基端側は図示していないが、管体21の中を通って作動部の根元付近で固定されている。
【0018】
そして、作動部を指で閉じると、管体21が軸方向に摺動して、ネック部22が管体21の内腔に収納され、先端の把持部23が閉じる構造になっている。
【0019】
ここで、ネック部22は、管体側に第1の湾曲又は屈曲部22a、把持部側に第2の湾曲又は屈曲部22bを有していることとする。そして、第1の湾曲又は屈曲部22aは管体21の中心軸側が凸の湾曲であり、第2の湾曲又は屈曲部22bは管体21の中心軸側が凹の湾曲である。言い換えると、管体21の中心軸は、第1の湾曲又は屈曲部22aの外側、かつ、第2の湾曲又は屈曲部22bの内側に位置することになる。
【0020】
ここで、管体21を摺動させてネック部22を管体21の内腔に収納したとき、把持部23が閉じられるのだが、その鑷子部20の動きを図を用いて説明する。図2は、鑷子部の動きを説明する図であり、(a)は鑷子部が開いた状態、(b)は鑷子部を軽く閉じた状態、(c)は把持部の把持力を強くした状態である。
【0021】
図2(a)に示すようにネック部22が管体21の内腔に収納されていないときは、把持部23同士は離れており、鑷子部20が開いた状態となっている。そこから管体21を摺動させてネック部22の第1の湾曲部22aを管体21の内腔に収納したとき、把持部23同士が先端側から接触して、図2(b)に示すように鑷子部20が軽く閉じた状態となる。この状態において、対向する第2の湾曲部22bを結んだときの最大幅は、管体21の内径よりも大きい。
【0022】
さらに、管体21を摺動させて第2の湾曲又は屈曲部22bまで管体21の内腔に収納したとき、第2の湾曲又は屈曲部22bがバネの働きをして把持部23同士がより強く閉じることになる。ここで、第2の湾曲又は屈曲部22bは管体21の中心軸側が凹の湾曲なので、管体21を摺動させたとき、湾曲の頂点が管体21の内腔に収納されるまで把持部23の把持力は強くなることになる。つまり、従来の眼科用鑷子のように把持部が閉じるか開くかのどちらかだけでなく、把持力を調節することが可能となる。
【0023】
なお、第1の湾曲又は屈曲部22aと第2の湾曲又は屈曲部22bとは曲がりの方向が逆であり、把持部23同士の接触の前後で作動部を閉じる抵抗力が変化するので、把持力の状況は指の作動部に反映されることになり、把持力の調整を比較的容易に行うことができる。
【0024】
ここで、第1の湾曲又は屈曲部22aの曲率半径R1は、第1の湾曲又は屈曲部22aが管体21の内腔に収納されたときに把持部23の先端同士が接触することを考慮して決定しなければならない。また、第2の湾曲又は屈曲部22bの曲率半径R2は、第2の湾曲又は屈曲部22bが管体21の内腔に収納されるときのバネとしての力を考慮して決定されなければならない。
【0025】
次に、把持部23を軽く閉じた場合や強く閉じた場合を、実際にどのような場面で使用すればよいかを説明する。図3は、眼科用鑷子の使用方法を説明する図である。
【0026】
図3(a)は、網膜50上の増殖膜51を引っ張っている状況である。このように増殖膜51がほぼ網膜50に接触しているような場合は、把持部23で増殖膜51を軽く摘んで引っ張り上げる必要がある。なお、このような場合に、把持力を強くし過ぎると、増殖膜51が千切れる可能性があることから、あまり把持力は強くせず、軽く摘む程度にすることが必要である。
【0027】
そうして、増殖膜51をある程度引っ張り上げた後は、図3(b)に示すようにしっかりと増殖膜51を挟んで、除去する必要がある。このときは、増殖膜51を落とさないように把持力を強くすることが要求される。なお、上記のような使用方法以外にも把持力の調整が必要になる場面はあり、本発明は、そのような把持力の調整を実現できるというメリットがある。また、ここでは眼組織を掴む例について説明しているが、例えば眼内レンズ等の眼科用器具を掴む際にも使用することが可能である。
【0028】
また、言い換えると、第1の湾曲又は屈曲部22aのみを管体21の内腔に収納したときは、把持部23の先端で摘むという使い方であり、第2の湾曲又は屈曲部22bまで管体21の内腔に収納したときは、把持部23の全体で挟むという使い方をしている。つまり、本発明の眼科用鑷子であれば、把持部が摘む形状と挟む形状の2種類の眼科用鑷子のそれぞれの特徴を、1本で実現することができるということになる。
【符号の説明】
【0029】
10 眼科用鑷子
20 鑷子部分
21 管体
21a 管体の中心軸
22 ネック部
22a 第1の湾曲又は屈曲部
22b 第2の湾曲又は屈曲部
23 把持部
33 補強スリーブ
35 本体部
36 作動部
37 移動部材
40 カニューレ
50 網膜
51 増殖膜
図1
図2
図3
図4