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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】ロボットの原点出し装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20230526BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B25J9/10 A
G05B19/18 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021543632
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034405
(87)【国際公開番号】W WO2021044477
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】大塚 一輝
(72)【発明者】
【氏名】馬目 俊文
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-040637(JP,A)
【文献】特開2015-077649(JP,A)
【文献】実開平04-013285(JP,U)
【文献】特開平10-044083(JP,A)
【文献】特開2000-126962(JP,A)
【文献】特開平03-003792(JP,A)
【文献】特開平10-235526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1当接面を有する下面と、前記下面と対向する上面とを有するロボットアームと、
前記ロボットアームに対して軸方向の移動及び軸心回りの回転が可能であって、前記上面から前記下面にかけて前記ロボットアームを貫通するように配設される軸部材と、
前記ロボットアームの貫通部分よりも下方において前記軸部材に搭載され、前記軸方向において前記第1当接面と対向する第2当接面と、当該第2当接面の外周側に位置する側面と、を有するストッパと、
前記軸部材の前記軸方向の移動によっては前記ストッパと干渉しない位置において、前記ロボットアームの前記下面から下方に突設された第1突起部と、
前記ストッパの前記側面から外側に突設され、前記第1突起部に対して当接が可能な第2突起部と、を備え、
前記第1当接面と前記第2当接面とは、前記軸部材の前記軸方向への移動によって面接触が可能であって、前記面接触によって前記軸部材の前記軸方向の原点出しが行われる当接面であり、
前記第1突起部と前記第2突起部とは、前記軸部材の前記軸心回りの回転によって当接が可能であって、前記当接によって前記軸部材の回転方向の原点出しが行われる突起部である、ロボットの原点出し装置において、
前記ロボットアームの前記下面は、前記第2当接面と対向するように突設された複数の突起物を備え、
前記第1当接面は、前記複数の突起物の突出先端側に各々備えられた単位当接面の集合体によって構成され、
前記ストッパは、前記軸部材に外嵌される円筒の形状を有し、
前記第2当接面は、前記円筒における前記ロボットアームの前記下面と対向する環状の端面であり、
前記側面は、前記円筒の外周面であって、
前記複数の突起物は、前記環状の端面と対向するように前記ロボットアームの前記下面に環状に配列された複数のボルトからなり、
前記第1当接面を構成する前記単位当接面は、前記ボルトのボルト頭の頂面からなる、ロボットの原点出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットの原点出し装置において、
前記ロボットアームに組み付けられ、前記軸部材を軸心回りに回転可能に支持するベアリングと、
前記軸部材に一体化され、前記軸部材に前記軸心回りの回転力を伝達するプーリと、をさらに備え、
前記軸部材が前記軸心回りに回転すると、前記ストッパと前記プーリとは同期回転し、
前記複数のボルトは前記プーリに取り付けられている、ロボットの原点出し装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロボットの原点出し装置において、
前記ロボットアームの前記下面と前記ストッパとの間に介在される緩衝部材をさらに備え、
前記緩衝部材は、前記ロボットアームの前記下面と一体若しくは前記ストッパと一体に設けられ、
前記第1当接面は前記緩衝部材における前記第2当接面と対向する面、若しくは、前記第2当接面は前記緩衝部材における前記第1当接面と対向する面である、ロボットの原点出し装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のロボットの原点出し装置を用いたロボットの原点設定方法であって、
前記第1当接面と前記第2当接面とが面接触するまで前記軸部材を前記軸方向に移動させ、前記軸部材の前記軸方向の原点位置を設定し、
前記軸方向の原点位置から、前記回転方向の原点出しのために設定された特定位置まで、前記軸部材を前記軸方向に移動させ、
前記特定位置に配置された前記軸部材を、前記第1突起部と前記第2突起部とが当接するまで前記軸心回りに回転させ、前記軸部材の前記回転方向の原点位置を設定する、
ロボットの原点設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向の移動及び軸心回りの回転が可能な軸部材を有するロボットの原点出し装置、及び当該装置を用いた原点出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スカラ型ロボットは、ロボットアームに対して昇降及び回転する作業軸(軸部材)を備えている。例えば、スカラ型ロボットの電源投入時等に、作業軸の軸方向(Z軸)及び回転方向(R軸)の原点位置を設定する原点出し作業が必要となる。特許文献1には、この原点出し作業を、専用のセンサ類を用いることなく実行するセンサレス原点出し方法が開示されている。当該方法では、ロボットアームの下面に当接片を突設すると共に、軸部材に搭載されるZ軸ストッパの上面に突起部を設ける。そして、軸部材をZ軸方向に移動させ、前記当接片をZ軸ストッパの上面に当接させることでZ軸の原点出しを行う。また、軸部材をZ軸回りに回転させ、前記突起部を前記当接片に当接させることでR軸の原点出しを行う。
【0003】
しかし、特許文献1の方法では、例えばZ軸ストッパが作業軸の暴走防止(抜け止め)の機能を果たす際において、ロボットアーム下面の当接片がZ軸ストッパの上面の一部に衝突することになる。つまり、前記衝突時における前記当接片の衝撃を、ストッパ上面の一部が集中的に受け止める構造となる。このため、可搬質量が大きい作業軸の場合には、前記衝撃によって前記ストッパが破損する可能性がある。従って、作業軸の原点出しをセンサレスで行う方法を、可搬質量の低い小型のスカラ型ロボットにしか適用できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6117673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、軸部材の軸方向及び回転方向の原点出しをセンサレスで行うと共に、軸部材に搭載されるストッパの破損を防止することができるロボットの原点出し装置及び方法を提供することにある。
【0006】
本発明の一局面に係るロボットの原点出し装置は、第1当接面を有するベース部材と、前記ベース部材に対して軸方向の移動及び軸心回りの回転が可能な軸部材と、前記軸部材に搭載され、前記軸方向において前記第1当接面と対向する第2当接面と、当該第2当接面の外周側に位置する側面と、を有するストッパと、前記軸部材の前記軸方向の移動によっては前記ストッパと干渉しない位置において、前記ベース部材に突設された第1突起部と、前記ストッパの前記側面から外側に突設され、前記第1突起部に対して当接が可能な第2突起部と、を備え、前記第1当接面と前記第2当接面とは、前記軸部材の前記軸方向への移動によって面接触が可能であって、前記面接触によって前記軸部材の前記軸方向の原点出しが行われる当接面であり、前記第1突起部と前記第2突起部とは、前記軸部材の前記軸心回りの回転によって当接が可能であって、前記当接によって前記軸部材の回転方向の原点出しが行われる突起部であることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の局面に係るロボットの原点設定方法は、上記のロボットの原点出し装置を用いた原点設定方法であって、前記第1当接面と前記第2当接面とが面接触するまで前記軸部材を前記軸方向に移動させ、前記軸部材の前記軸方向の原点位置を設定し、前記軸方向の原点位置から、前記回転方向の原点出しのために設定された特定位置まで、前記軸部材を前記軸方向に移動させ、前記特定位置に配置された前記軸部材を、前記第1突起部と前記第2突起部とが当接するまで前記軸心回りに回転させ、前記軸部材の前記回転方向の原点位置を設定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係るロボットの原点出し装置が適用されるスカラ型ロボットの第1実施形態を示す側面図である。
図2図2は、前記スカラ型ロボットを下方側から見た斜視図である。
図3図3は、図2の要部拡大図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、作業軸の軸方向の原点出し動作を示す側面図である。
図5図5(A)及び図5(B)は、作業軸の回転方向の原点出し動作を示す平面図である。
図6図6は、スカラ型ロボットの制御系を示すブロック図である。
図7図7は、コントローラによる作業軸の原点設定制御の第1例を説明するフローチャートである。
図8図8(A)、図8(B)及び図8(C)は、上記原点設定制御の状況を模式的に示す図である。
図9図9は、上記原点設定制御の第2例を説明するフローチャートである。
図10図10は、上記原点設定制御の第3例を説明するフローチャートである。
図11図11は、上記原点設定制御の第3例を説明するフローチャートである。
図12図12は、本発明に係るロボットの原点出し装置が適用されるスカラ型ロボットの第2実施形態を示す要部斜視図である。
図13図13は、第2実施形態に係るスカラ型ロボットの作業軸ユニットを示す側面図である。
図14図14は、第2アームに組み込まれた状態の、前記作業軸ユニットの上面視の斜視図である。
図15図15は、第2アームに組み込まれた状態の、前記作業軸ユニットの縦断面図であって、作業軸が下降している状態を示す図である。
図16図16は、第2アームに組み込まれた状態の、前記作業軸ユニットの縦断面図であって、作業軸が上昇している状態を示す図である。
図17図17(A)及び図17(B)は、本発明に係る原点出し装置の第1変形例を示す側面図である。
図18図18は、本発明に係る原点出し装置の第2変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係るロボットの原点出し装置が、スカラ型ロボット(水平多関節ロボット)に適用される例を示す。本発明は、スカラ型ロボットに限らず、ベース部材に対して軸方向の移動及び軸心回りの回転が可能な軸部材を備える限りにおいて、各種のロボットに適用可能である。
【0010】
<第1実施形態>
[スカラ型ロボットの全体構造]
図1は、本発明に係る原点出し装置が適用されるスカラ型ロボット1の第1実施形態を示す側面図、図2は、スカラ型ロボット1を下方側から見た斜視図である。スカラ型ロボット1は、所定の基台10上に設置される円柱状のアーム支持台11と、このアーム支持台11に片持ち支持されるアーム12と、このアーム12の先端部分で支持される作業軸2(軸部材)とを含む。アーム支持台11は、例えば生産ラインの架台等からなる基台10に、ボルト締めにて固定される。
【0011】
アーム12は、第1アーム13と第2アーム14(ベース部材)との連結体からなる。第1アーム13は、水平方向に延びるロボットアームであり、その基端側がアーム支持台11によって鉛直方向に延びるa軸周りに回動可能に支持されている。第2アーム14も、水平方向に延びるロボットアームであり、その基端側が第1アーム13の先端側によって鉛直方向に延びるb軸周りに回動可能に支持されている。アーム支持台11と第2アーム14との間には、第2アーム14に搭載される電装品への給電及び制御用のケーブルを収容するケーブル保護管15が架け渡されている。
【0012】
作業軸2は、スプライン軸である。作業軸2は、第2アーム14の先端側に、当該第2アーム14を上下方向に貫通する状態で保持されている。すなわち、作業軸2の下端21は第2アーム14の下面14Bよりも下方に位置しており、上端22は第2アーム14の上面14Aよりも上方に位置している。作業軸2は、第2アーム14に対して軸方向の移動(Z軸方向の移動)と、当該作業軸2の軸心回りの回転(R軸方向の移動)とが可能である。以上より、本実施形態のスカラ型ロボット1は、移動軸としてa軸、b軸、Z軸及びR軸の4つの移動軸を有するロボットである。
【0013】
スカラ型ロボット1は、上記4つの移動軸についての動作を行わせる駆動源として、第1アームモータ31、第2アームモータ32、Z軸モータ33及びR軸モータ34を備えている。第1アームモータ31は、第1アーム13をa軸回りに回転駆動させるモータであり、アーム支持台11の内部に配置されている。第1アームモータ31の駆動力は、図略の減速機構を介して第1アーム13に伝達される。第2アームモータ32、Z軸モータ33及びR軸モータ34は、第2アーム14の上面14Aに取り付けられている。第2アームモータ32は、第2アーム14をb軸回りに回転駆動させるモータである。第2アームモータ32の駆動力は、図略の減速機構を介して第2アーム14に伝達される。
【0014】
Z軸モータ33は、作業軸2をZ軸方向に移動させるためのモータである。Z軸モータ33から作業軸2への駆動力の伝達のため、ボールねじ軸35、ヘッドホルダ36及びZ軸伝達ベルト33Tが備えられている。ボールねじ軸35は、第2アーム14の上面14Aから鉛直方向に立設され、軸回りに回転自在である。ヘッドホルダ36は、ボールねじ軸35と作業軸2とを連結する部材であり、ナット部361と連結部362とを含む。ナット部361は、ボールねじ軸35に螺合されている。連結部362は、作業軸2がR軸に回転可能な状態で、上端22を保持する。Z軸伝達ベルト33Tは、Z軸モータ33の駆動力をボールねじ軸35へ伝達する。Z軸伝達ベルト33Tは、Z軸モータ33の出力軸に取り付けられた図略のプーリと、ボールねじ軸35の下端に取り付けられた図略のプーリとの間に架け渡されている。
【0015】
Z軸モータ33が正回転又は逆回転駆動されると、Z軸伝達ベルト33Tを介して回転駆動力が伝達され、ボールねじ軸35が軸周りに正回転又は逆回転する。ヘッドホルダ36は、ボールねじ軸35の正回転又は逆回転に伴って、当該ボールねじ軸35に沿って昇降移動する。ヘッドホルダ36の昇降に伴い、作業軸2も昇降する。つまり、作業軸2はZ軸方向に移動する。
【0016】
R軸モータ34は、作業軸2をR軸方向に移動(Z軸周りに回転)させるためのモータである。R軸モータ34から作業軸2への駆動力の伝達のため、中継プーリ37、スプラインプーリ38及びR軸伝達ベルト34Tが備えられている。中継プーリ37は、第2アーム14のアーム延伸方向の中央付近で回転可能に支持されている。スプラインプーリ38は、スプラインナットを含み、作業軸2に取り付けられている。R軸伝達ベルト34Tは、中継プーリ37とスプラインプーリ38との間に架け渡されている。また、R軸モータ34の出力軸に取り付けられた図略のプーリと、中継プーリ37の下段プーリとの間にも、図略の中間伝達ベルトが架け渡されている。
【0017】
R軸モータ34が回転されると、上記中間伝達ベルト、中継プーリ37、R軸伝達ベルト34T及びスプラインプーリ38を介して、その回転駆動力が作業軸2へ伝達される。これにより作業軸2は、R軸方向に移動(例えば上方視で時計方向に回転)する。
【0018】
スカラ型ロボット1は、作業軸2のZ軸及びR軸の原点出しの装置として、ストッパ4、当接ボルト5(第2突起部)及び円弧状突片6(第1突起部)を備えている。ストッパ4は、作業軸2に搭載されている。搭載箇所は、作業軸2の下端21と第2アーム14(ベース部材)の下面14Bとの間である。ストッパ4は、本来的には、作業軸2のZ軸方向への企図しない移動を抑止する役目を果たす。例えば、ストッパ4は、スカラ型ロボット1の電源が突然落ちた場合等に、第2アーム14を抜けて作業軸2が上方向に移動することを防止する。このためストッパ4には、第2アーム14の下面14Bとの衝突に起因する大きな衝撃力が加わることがある。
【0019】
ストッパ4は、円筒の形状を有し、作業軸2に外嵌され、一体化されている。従って、ストッパ4は、作業軸2がZ軸及びR軸に沿って移動すると、同様にZ軸方向及びR軸方向に移動する。なお、ストッパ4の上面側には、ダンパー44(緩衝部材)が一体的に装着されている。当接ボルト5は、ストッパ4に取り付けられている。一方、円弧状突片6は、第2アーム14の下面14Bに取り付けられている。円弧状突片6は、作業軸2のZ軸方向の移動によってはストッパ4にと干渉しない位置において、下面14Bから下方に突設されている。これに対し、当接ボルト5と円弧状突片6とは当接が可能な位置関係にある。以下、この原点出しの装置の詳細構造を説明する。
【0020】
[原点出しの装置の詳細構造]
図3は、図2における第2アーム14の先端側の拡大図である。図4は、前記先端側の側面図、図5は、前記先端側を下方側から見た平面図である。図4(A)は作業軸2が上限まで上昇してストッパ4が第2アーム14に当接した状態を、図4(B)は前記当接状態から所定距離だけ作業軸2が下降した状態を示している。図5(A)と図5(B)とでは、作業軸2のR軸方向の位置が異なり、図5(B)では当接ボルト5と円弧状突片6とが当接している状態を示している。
【0021】
ストッパ4は、作業軸2を貫通させる円形の中心開口と、径方向に延びるスリット411とを備え、作業軸2の軸方向に所定の厚さを有するCリング41からなる。Cリング41は、スリット411の形成部分において、固定ねじ42にて作業軸2に対して締め付け固定されている。すなわち、Cリング41の外周面43には、スリット411と直交する方向に凹設されたねじ収容部412が備えられている。Cリング41の内部には、ねじ収容部412の底部からスリット411を跨ぐように、ねじ溝が刻設されている。Cリング41が作業軸2に嵌め込まれた状態で、前記ねじ溝に固定ねじ42を螺合することで、スリット411の幅を締め代として、ストッパ4を作業軸2に固定することができる。スリット411の幅は僅かであり、ストッパ4は円筒型の形状を有している。
【0022】
ダンパー44は、ウレタン樹脂などの緩衝性を備える部材からなり、Cリング41(ストッパ4)の上面に載置される態様で、当該Cリング41に一体的に固定されている。ダンパー44は、Cリング41の直径よりも僅かに小さい直径を有し、作業軸2を貫通させる円形の中心開口を備えた円筒状の緩衝部材である。例えばダンパー44は、接着剤にてCリング41の上面に取り付けることができる。このようなダンパー44の取り付けにより、第2アーム14とストッパ4との間に衝撃を緩和する干渉部材が介在されたことになる。本実施形態では、ストッパ4にダンパー44が一体に設けられていることから、第2アーム14の下面14Bと対向するダンパー44の上側の環状端面4S(第2当接面)が、下面14B(後述の環状受け面14S)に対する当接面となる。
【0023】
既述の通り、ストッパ4は実質的に円筒体であり、円周面からなる外周面43(側面)を有している。外周面43は、環状端面4Sよりも外周側に位置する側面である。この外周面43から外側へ突設する形で、当接ボルト5がストッパ4に取り付けられている。当接ボルト5は、締結用の六角孔を備えた円筒型のボルト頭部と、ねじ切りされたボルト胴部とを備える。ストッパ4の外周面43には、径方向内側に延びるねじ孔が設けられ、当該ねじ孔に当接ボルト5が螺合されている。
【0024】
円弧状突片6は、環状円板141に一体化された態様で、第2アーム14の下面14Bに取り付けられている。環状円板141は、下面14Bにおける作業軸2の貫通位置に配置され、図には現れない中心孔を備える薄板状の円板である。前記中心孔は、作業軸2を貫通させるための開口である。環状円板141は、ネジ止め等によって下面14Bに固定され、第2アーム14に一体化されている。
【0025】
環状円板141の全体中心孔の周囲には、環状の平面からなる環状受け面14S(第1当接面)が設けられている。この環状受け面14Sは、ストッパ4が第2アーム14(ベース部材)に対して突き当たる面となる。本実施形態では、上記の通りストッパ4側の突き当たり面はダンパー44の環状端面4Sであり、環状受け面14Sは環状端面4Sと軸方向において対向している。
【0026】
円弧状突片6は、環状円板141の周縁付近から下方に向けて突設されている。具体的には円弧状突片6は、環状受け面14Sの外周縁の一部に沿うように突設された円弧状の突片である。円弧状突片6は、基端部60、側壁61、内面62、外面63及び下端面64を含む。基端部60は、円弧状突片6が環状円板141から立ち上がる部分であり、図5に示すように、環状受け面14Sの外周縁から環状円板141自体の外周縁までの環状領域において、下面視で扇形の形状を有している。前記環状領域の全周(360°)に対して、基端部60(円弧状突片6)が占めている領域は60°程度である。前記環状領域に対して、概ね、30°~90°程度の範囲で、円弧状突片6の領域を設定することが望ましい。
【0027】
側壁61は、環状円板141の平面から下方に延びる円弧状突片6の側面を形成しており、ストッパ4に取り付けられた当接ボルト5が突き当たる壁面である。図4に示すように、側壁61は、側面視において基端部60から径方向内側に向かうように傾いた面である。第2アーム14の環状受け面14Sにストッパ4の環状端面4Sが当接した状態(図4(A))で、当接ボルト5の取り付け位置に至る高さ位置まで、側壁61の下端部は延在している。
【0028】
内面62は、円弧状突片6においてストッパ4の外周面43と対向する面である。外面63は、円弧状突片6の外周面を形成する面であり、径方向内側にテーパ状に傾いた面である。下端面64は、円弧状突片6の下端面を構成する円弧面である。内面62は、外周面43の凸曲面と略同じ曲率を有する凹曲面を有し、両者間には円弧状のギャップGが存在している。このギャップGにより、円弧状突片6とストッパ4とは互いに干渉しない構造となっている。また、ギャップGが円弧状であるので、円弧状突片6とストッパ4とを、なるべく接近した状態で配置することが可能である。このため、ストッパ4と円弧状突片6とが干渉しない構造をコンパクトに構築することができる。また、当接ボルト5の、外周面43からの突出長を短くすることができる利点もある。
【0029】
なお、作業軸2のうち、ストッパ4よりも先端側(下側)は作業用機器の装着領域である。この領域には、スカラ型ロボット1が実行する作業に対応した各種のアタッチメントが固定される。
【0030】
[センサレスの原点出し]
本実施形態によれば、上記の通りに構成された原点出しの装置を有するので、作業軸2のZ軸及びR軸の原点出しをセンサレスで行うことができる。図4(A)及び図4(B)には、作業軸2のZ軸方向の原点出し動作が示されている。第2アーム14に一体化された環状円板141の環状受け面14S(第1当接面)と、ストッパ4に一体化されたダンパー44の環状端面4S(第2当接面)とは、作業軸2のZ軸方向(軸方向)において対向している。作業軸2のZ軸方向への移動によって、環状受け面14Sと環状端面4Sとは、面接触が可能である。この面接触によって、作業軸2のZ軸方向の原点出しが行われる。
【0031】
図4(B)では、作業軸2が下降していることに伴い、ストッパ4は第2アーム14に対して下方に離間している状態が示されている。当然、この状態では、環状受け面14Sと環状端面4Sとは離間している。Z軸の原点出しにおいては、図4(B)の状態から作業軸2が上昇される。当該上昇により、やがて図4(A)に示す通り、環状受け面14Sと環状端面4Sとが面接触する。この面接触が実現された作業軸2の高さ位置が、作業軸2のZ軸方向の原点位置として設定される。なお、当接ボルト5の位相によっては、環状受け面14Sと環状端面4Sとの面接触の前に、当接ボルト5と円弧状突片6とが干渉する場合がある。この場合、原点位置を誤検知することになるが、この誤検知を防ぐ制御については後記で説明する。
【0032】
図5(A)及び図5(B)には、作業軸2のR軸の原点出し動作が示されている。第2アーム14の下面14Bから下方へ突設された態様の円弧状突片6(第1突起部)と、ストッパ4の外周面43から径方向外側へ突設された態様の当接ボルト5(第2突起部)とは、作業軸2のR軸方向の回転によって当接が可能である。本実施形態では、円弧状突片6の側壁61に当接ボルト5のボルト頭が突き当たる。この当接によって、作業軸2のR軸方向の原点出しが行われる。
【0033】
図5(A)では、当接ボルト5が円弧状突片6に対してR軸方向に離間している状態が示されている。R軸の原点出しにおいては、図5(A)の状態から作業軸2が軸心(Z軸)回りに回転される。当該回転により、やがて図5(B)に示す通り、当接ボルト5が円弧状突片6の側壁61に当接する。この当接が実現された作業軸2の回転位置が、作業軸2のR軸方向の原点位置として設定される。
【0034】
[制御構成]
図6は、スカラ型ロボット1の制御系を示すブロック図である。スカラ型ロボット1は、アームコントローラ7を備えている。アームコントローラ7は、作業軸2を含むアーム12の全体の動作を統括的に制御する。アームコントローラ7は、周知のCPU、ROM、RAM等から構成され、所定のプログラムが実行されることで機能的に、主制御部71、記憶部72及びモータドライバ73を含むように動作する。
【0035】
記憶部72は、スカラ型ロボット1の動作制御するためのプログラムやデータが記憶されている。主制御部71は、前記プログラム等に基づき、モータドライバ73に制御信号を出力する。モータドライバ73は、前記制御信号に従って、図1に基づき上述した第1アームモータ31、第2アームモータ32、Z軸モータ33及びR軸モータ34を駆動する。
【0036】
第1アームモータ31にはレゾルバ31Rが付設されている。レゾルバ31Rは、第1アームモータ31の回転軸の角度を検出するセンサである。レゾルバ31Rにより検出される第1アームモータ31の回転角度情報は、主制御部71にフィードバックされる。同様に、第2アームモータ32、Z軸モータ33及びR軸モータ34にも、レゾルバ32R、33R、34Rが各々付設されている。これらレゾルバ32R、33R、34Rが検出する各モータ32、33、34の回転角度情報もまた、主制御部71にフィードバックされる。
【0037】
既述の通り、本実施形態のスカラ型ロボット1は、作業軸2の原点設定のための専用のセンサ類を具備しないセンサレスタイプである。例えば、スカラ型ロボット1への電源投入時等に、記憶部72に記憶されているプログラム等に従い、主制御部71の制御に基づき作業軸2の原点位置設定が行われる。以下、アームコントローラ7による作業軸2の軸方向(Z軸)および回転方向(R軸)の原点設定制御の具体例について説明する。
【0038】
[原点設定制御の第1例]
図7は、アームコントローラ7による作業軸の原点設定制御の第1例を説明するフローチャートである。このフローチャートに示す制御は、スカラ型ロボット1の電源投入によりスタートする。この制御がスタートすると、アームコントローラ7は、先ずZ軸の原点出しのため、モータドライバ73を介してZ軸モータ33を駆動させ、作業軸2を上昇させる(ステップS1)。このとき、R軸モータ34は駆動されず、作業軸2の回転角度位置を保持した状態とされる。
【0039】
次いで、アームコントローラ7は、作業軸2が停止したか否かを判定する(ステップS2)。Z軸モータ33が駆動状態にあっても、作業軸2に取り付けられたストッパ4が第2アーム14の下面14Bに突き当たると、作業軸2は停止する。詳しくは、第2アーム14側の環状受け面14Sと、ストッパ4側の環状端面4SとがZ軸方向に突き当たることにより、作業軸2は停止する。アームコントローラ7(主制御部71)は、Z軸モータ33のレゾルバ33Rから入力される回転角度情報の変化量から、作業軸2が停止したか否かを判定する。つまり、作業軸2の上昇が停止すると、これに伴いレゾルバ33Rから入力される回転角度情報の変化量がほぼ「0」となるため、これにより作業軸2が停止したことを検知することが可能となる。なお、モータドライバ73からZ軸モータ33に供給される電流値の変化に基づいて、作業軸2が停止したか否かを判定してもよい。
【0040】
作業軸2が停止していないと判定された場合(ステップS2でNO)、Z軸モータ33の駆動が継続される。一方、作業軸2が停止したと判定された場合(ステップS2でYES)、アームコントローラ7は、電源投入時を基準として、Z軸モータ33のレゾルバ33Rから入力される回転角度情報に基づき、Z軸方向における作業軸2の停止位置を作業軸2の第1仮軸方向原点位置(Z1)として取得する。また、アームコントローラ7は、このときの作業軸2の回転角度位置を、作業軸2の第1回転角度位置(R1)として取得する(ステップS3)。
【0041】
次に、アームコントローラ7は、Z軸モータ33を反転駆動させて、作業軸2を予め記憶された所定量(例えば10mm)だけ下降させる(ステップS4)。さらにアームコントローラ7は、R軸モータ34を駆動させて、作業軸2を70°だけ特定方向(本実施形態では下方から見て反時計回り)に回転させる(ステップS5)。回転角=70°とされるのは、円弧状突片6の中心角が60°程度であることを考慮したものである。前記回転角は、円弧状突片6の中心角よりもある程度大きい任意の角度に設定することができる。このような回転角に設定することで、仮に一回目の作業軸2の上昇(ステップS1)で当接ボルト5と円弧状突片6が干渉したとしても、二日目の作業軸2の上昇(下記ステップS8)では前記干渉が確実に回避できるからである。
【0042】
その後、アームコントローラ7は、作業軸2を上昇させる(ステップS6)。ステップS2の処理と同様に、作業軸2が停止したか否かを判定する(ステップS7)。作業軸2が停止したと判定すると(ステップS7でYES)、アームコントローラ7は、そのときのZ軸方向における作業軸2の停止位置を、作業軸2の第2仮軸方向原点位置(Z2)として取得する。また、アームコントローラ7は、このときの作業軸2の回転角度位置を、作業軸2の第2回転角度位置(R2)として取得する(ステップS8)。
【0043】
続いて、アームコントローラ7は、ステップS3、S8で取得したZ1、Z2を参照して、Z1=Z2であるか否かを判定する(ステップS9)。Z1=Z2である場合(ステップS9でYES)、当接ボルト5と円弧状突片6とが当接することなく、Z1、Z2が取得されたことを意味する。つまり、Z軸方向の原点出し作業が完了となる。この場合、アームコントローラ7は、第1仮軸方向原点位置(Z1)を軸方向原点位置(Z)として設定するとともに、この第1仮軸方向原点位置(Z1)を基準にして、R軸の原点出しを行う所定の高さ位置(特定位置)に作業軸2をZ軸方向に移動させる(ステップS10)。前記所定の高さ位置は、回転方向の原点設定用の特定の高さ位置として、予め記憶部72に記憶されている。
【0044】
その後、アームコントローラ7は、R軸モータ34を駆動して、R軸モータ34を回転させ(ステップS11)、続いて作業軸2が停止したか否かを判定する(ステップS12)。R軸モータ34が駆動状態にあっても、ストッパ4に搭載された当接ボルト5が円弧状突片6の側壁61に突き当たると、作業軸2の回転は停止する。アームコントローラ7は、R軸モータ34のレゾルバ34Rから入力される回転角度情報の変化量から、作業軸2の回転が停止したか否かを判定する。
【0045】
作業軸2が停止していないと判定された場合(ステップS12でNO)、R軸モータ34の駆動が継続される。一方、作業軸2が停止したと判定された場合(ステップS12でYES)、作業軸2の停止位置を回転方向原点位置(R)として設定する(ステップS13)。これにより、R軸の原点出し作業も完了する。
【0046】
これに対し、ステップS9においてZ1=Z2ではない場合(ステップS9でNO)、アームコントローラ7は、現在の第1仮軸方向原点位置(Z1)を破棄し、現在の第2仮軸方向原点位置(Z2)を第1仮軸方向原点位置(Z1)に置き換える(ステップS14)。これは、Z1、Z2のいずれかが、当接ボルト5と円弧状突片6との当接によって取得されたエラー値であることを意味するためである。その後、アームコントローラ7は、処理をステップS4に移行し、ステップS4~S9の処理を繰り返す。最終的に、ステップS9でYESとの判定が得られると、ステップS10の処理に移行する。
【0047】
図8(A)、図8(B)及び図8(C)は、上記原点設定制御の状況を模式的に示す図である。本実施形態では、作業軸2が軸方向に移動しても、ストッパ4と円弧状突片6とが互いに干渉しない位置関係にある。そして、ストッパ4側の環状端面4Sと第2アーム14側の環状受け面14Sとが面接触することが可能とされている。他方、ストッパ4に取り付けられた当接ボルト5は、円弧状突片6と干渉可能な位置関係にある。
【0048】
このため、電源投入時に作業軸2を単に上昇させるだけでは、当接ボルト5が円弧状突片6に干渉することがある。すなわち、図8(A)に示すように、第2アーム14側の円弧状突片6の真下に当接ボルト5が位置している場合には、図8(B)に示すように、作業軸2を上昇させると当接ボルト5が円弧状突片6に突き当たる。この場合、誤った位置で軸方向原点位置(Z)が設定される。
【0049】
そこで、本実施形態では、ステップS1、S6において、回転角度位置が互いに70°異なる位置で作業軸2を上昇させている。これにより、ステップS1における作業軸2の上昇が、図8(A)に示すように、当接ボルト5が円弧状突片6に当接する位置での上昇であったとしても、70°の作業軸2の回転によって、中心角=60°程度の円弧状突片6と当接ボルト5とが干渉する状態は解消される。従って、ステップS6での作業軸2の上昇では、図8(C)に示すように、当接ボルト5が円弧状突片6に当接することなく、ストッパ4側の環状端面4Sと第2アーム14側の環状受け面14Sとが面接触する。図8(C)は正しくZ軸の原点出しが行われている状態であり、ステップS9、S14の処理が実行されることで、的確に軸方向原点位置(Z)を設定することができる。
【0050】
そして、この軸方向原点位置(Z)を基準に回転方向原点設定高さ位置に作業軸2を移動させた上で(ステップS10)、作業軸2を回転させて当接ボルト5を円弧状突片6に当接させることにより、作業軸2の回転方向原点位置(R)を設定する(ステップS13)。これにより、専用のセンサを用いることなく、Z軸モータ33及びR軸モータ34に付設されるレゾルバ33R、34Rからの回転角度情報のみで、作業軸2の軸方向および回転方向の原点位置を適切に設定することができる。
【0051】
[原点設定制御の第2例]
図9は、上記原点設定制御の第2例を説明するフローチャートである。上記第1例のステップS1~S8と同様にして、第1仮軸方向原点位置(Z1)及び第2仮軸方向原点位置(Z2)と、第1回転角度位置(R1)及び第2回転角度位置(R2)を取得する(ステップS21~S28)。
【0052】
但し、第1例(図7)のステップS5に相当するステップS25の処理では、アームコントローラ7は作業軸2を180°回転させる。従って、第1例とは異なり、第1回転角度位置(R1)と第2回転角度位置(R2)との回転角度の差は180°である。仮に、第1仮軸方向原点位置(Z1)又は第2仮軸方向原点位置(Z2)の取得時のいずれか一方において当接ボルト5と円弧状突片6とが干渉したとしても、作業軸2の180°の回転によって、いずれか他方では両者が確実に干渉しないようにすることができる。
【0053】
次に、アームコントローラ7は、ステップS23で取得した第1仮軸方向原点位置(Z1)と、ステップS28で取得した第2仮軸方向原点位置(Z2)とを比較する(ステップS29)。この比較で、第2仮軸方向原点位置(Z2)よりも第1仮軸方向原点位置(Z1)の方が高い場合(Z1>Z2)、アームコントローラ7は、作業軸2を若干下降させて当該作業軸2を回転させることにより、作業軸2を第1仮回転方向原点位置(R1)に戻す(ステップS30)。
【0054】
その後、アームコントローラ7は、第1仮軸方向原点位置(Z1)を軸方向原点位置(Z)として設定するとともに、この第1仮軸方向原点位置(Z1)を基準にして所定の回転方向原点設定高さ位置へ作業軸2を移動させる(ステップS31)。この高さ位置は、当接ボルト5を円弧状突片6の側壁61に回転方向において当接させることが可能な高さ位置である。
【0055】
次に、アームコントローラ7は、R軸モータ34を駆動して、R軸モータ34を回転させ(ステップS32)、続いて作業軸2が停止したか否かを判定する(ステップS33)。R軸モータ34が駆動状態にあっても、当接ボルト5が円弧状突片6の側壁61に突き当たると、作業軸2の回転は停止する。作業軸2が停止していないと判定された場合(ステップS33でNO)、R軸モータ34の駆動が継続される。一方、作業軸2が停止したと判定された場合(ステップS33でYES)、作業軸2の停止位置を回転方向原点位置(R)として設定する(ステップS34)。
【0056】
一方、ステップS29の処理で、第1仮軸方向原点位置(Z1)よりも第2仮軸方向原点位置(Z2)の方が高いと判断された場合(Z1<Z2)、アームコントローラ7は、第2仮軸方向原点位置(Z2)を軸方向原点位置(Z)として設定する。そして、アームコントローラ7は、第2仮軸方向原点位置(Z2)を基準として所定の回転方向原点設定高さ位置に作業軸2を移動させる(ステップS29)。その後、処理はステップS32に移行され、上記と同様にステップS32、S33、S34の処理が実行され、作業軸2の回転方向原点位置(R)が設定される。
【0057】
また、ステップS29の処理で、第1仮軸方向原点位置(Z1)と第2仮軸方向原点位置(Z2)との高さが等しいと判断した場合(Z1=Z2)、アームコントローラ7は、処理をステップS31に移行する。そして、ステップS31~S34の処理が実行され、作業軸2の回転方向原点位置(R)が設定される。
【0058】
[原点設定制御の第3例]
図10及び図11は、上記原点設定制御の第3例を説明するフローチャートである。第3例では、アームコントローラ7は、カウンタnに「1」をセットし(ステップS41)、その後、ステップS42~S49の処理を実行する。このステップS42~S49の処理は、図7に示した第1例のフローチャートにおけるステップS1~S8の処理と実質的に同一である。これらステップS42~S49の処理により、アームコントローラ7は、第n仮軸方向原点位置(Zn)及び第n回転角度位置(Rn)と、第(n+1)仮軸方向原点位置(Z(n+1))及び第n+1回転角度位置(R(n+1))とを取得する。
【0059】
次に、アームコントローラ7は、Zn=Z(n+1)であるか否かを判定する(ステップS50)。ここでYESと判断された場合には、当接ボルト5と円弧状突片6とが当接することなく、Zn及びZ(n+1)が取得されたことを意味する。この場合、図7のステップS10~S13に対応するステップS51~S54の処理が実行される。アームコントローラ7は、それまでに取得されている最も高いZ値である第nMAX仮軸方向原点位置(ZMAX)を基準にして、記憶部72に記憶されている回転方向原点設定高さ位置に作業軸2を移動させる(ステップS51)。
【0060】
その後、アームコントローラ7は、R軸モータ34を駆動して、R軸モータ34を回転させ(ステップS52)、続いて作業軸2が停止したか否かを判定する(ステップS53)。作業軸2が停止していないと判定された場合(ステップS53でNO)、R軸モータ34の駆動が継続される。一方、作業軸2が停止したと判定された場合(ステップS53でYES)、アームコントローラ7は、作業軸2の停止位置を回転方向原点位置(R)として設定する(ステップS54)。
【0061】
これに対して、ステップS50の処理でNOと判定された場合には、アームコントローラ7は、ステップS55~S60の処理を実行することにより、第(n+2)仮軸方向原点位置(Z(n+2))をさらに取得する。ステップS55~S59の処理は、上記ステップS45~S49の処理と同等である。続いて、アームコントローラ7は、既に取得している第n仮軸方向原点位置(Zn)及び第(n+1)仮軸方向原点位置(Z(n+1))のうち、値の大きい方と、第(n+2)仮軸方向原点位置(Z(n+2))とが同一であるか否かを判定する(ステップS60)。
【0062】
同一であるとの判定の場合(ステップS60でYES)、アームコントローラ7は、処理をステップS51に移行し、作業軸2の回転方向原点位置(R)を設定するための処理を実行する。一方、同一ではないとの判定の場合(ステップS60でNO)、アームコントローラ7は、カウンタnを「1」インクリメントした後(ステップS61)、処理をステップS55に移行し、ステップS55~S60の処理を繰り返す。そして、最終的に、第n仮軸方向原点位置(Zn)及び第(n+1)仮軸方向原点位置(Z(n+1))のうち、値の大きいものと、第(n+2)仮軸方向原点位置(Z(n+2))とが同じになると、処理をステップS51に移行し、作業軸2の回転方向原点位置(R)を設定するための処理を実行する。
【0063】
つまり、先に説明した図7の第1例では、作業軸2の回転角度位置を70°ずつずらしながら互いに異なる回転角度位置で仮軸方向原点位置を取得する。そして、連続して取得した仮軸方向原点位置が同一となったときに、先に取得した仮軸方向原点位置を軸方向原点位置とする。図10及び図11の第3例でも、作業軸2の回転角度位置を70°ずつずらしながら互いに異なる回転角度位置で仮軸方向原点位置を取得することは同じである。しかし、第3例では、連続して取得した3つの仮軸方向原点位置のうち2つが同一となったときに、後から取得した第nMAX仮軸方向原点位置(ZMAX)を軸方向原点位置とするものである。
【0064】
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係るロボットの原点出し装置によれば、第2アーム14側の環状受け面14Sとストッパ4側の環状端面4Sとの当接、並びに、当接ボルト5と円弧状突片6との当接によって、センサレスで作業軸2の軸方向及び回転方向の原点出しを行わせることができる。また、ストッパ4の破損対策に関し、当該ストッパ4は、回転方向の原点出しのために第2アーム14の下面14Bから突設されている円弧状突片6とは干渉することはない。さらに、当接ボルト5は、円筒状のストッパ4の外周面43から径方向の外側に突設されている。そして、環状受け面14Sと環状端面4Sとの面接触によって、作業軸2の軸方向の原点出しが行われる。このため、軸方向の原点出しの際の勿論のこと、ストッパ4が作業軸2の暴走を抑止する際にも、ストッパ4に対して部分的な衝撃力が作用することが回避される。つまり、前記衝撃力を環状受け面14S及び環状端面4Sの面接触で受けることができるので、ストッパ4の破損を抑止することができる。
【0065】
とりわけ、環状受け面14S及び環状端面4Sは、作業軸2を取り囲むように形成された環状の平面であるので、衝撃力を均等に受けることができる。また、円筒の外周面43から当接ボルト5が突設されるので、作業軸2の回転によって円弧状突片6に当接させ易くすることができる。
【0066】
また、円弧状突片6は、環状受け面14Sの外周縁の一部に沿うように突設された円弧状の突片であって、当接ボルト5が突き当たる側壁61を有する。このためストッパ4と円弧状突片6とが干渉しない構造をコンパクトに構築することができる。また、ストッパ4の外周面43と円弧状突片6とを近接して設置できるので、円弧状突片6に突設する当接ボルト5の突出長を短くすることが可能となり、この点からも原点出し装置のコンパクト化を図ることができる。
【0067】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、第1当接面が、環状の平面からなる環状受け面14Sである例を示した。第1当接面は連続した平面でなくともよく、多点的に配置された突起物の突出先端側に備えられた単位当接面の集合体であっても良い。第2実施形態では、単位当接面の集合体からなる第1当接面が適用される例を示す。図12は、第2実施形態に係るスカラ型ロボット1Aを示す要部斜視図である。図13は、作業軸2とその付属品とからなる作業軸ユニットの側面図である。第1実施形態と異なる第1当接面に関する部分だけを専ら説明し、他の部分については説明を省略ないしは簡略化する。
【0068】
第2アーム14の下面14Bには、ストッパ4の環状端面4S(第2当接面)と対向するように環状に配列された、複数の当止ボルト8(突起物)が取り付けられている。図12では、各当止ボルト8のボルト頭が示されている。ボルト頭の突出先端である頂面81(単位当接面)は、レンチ孔を除いて平坦な面からなる。各頂面81は、同一水平面内に位置しており、これら環状に配列された頂面81の集合体で第1当接面が構成されている。つまり、図13に示すように、各頂面81がストッパ4の環状端面4Sと各々面接触することで、当該環状端面4Sと環状に配列された頂面81の集合体との間に実質的に面接触状態が形成される。
【0069】
図14図16をさらに参照して説明を加える。図14は、第2アーム14に組み込まれた状態の、前記作業軸ユニットの上面視の斜視図である。図15及び図16は、前記作業軸ユニットの縦断面図であって、図15は作業軸2が下降している状態を、図16は作業軸2が上昇している状態を各々示している。作業軸2には、スプラインナット23及びベアリング24と、図1に示したスプラインプーリ38(プーリ)とが一体的に取り付けられている。
【0070】
スプラインナット23は、トルク伝達可能に作業軸2をZ方向に摺動させる。ベアリング24は、第2アーム14のフレーム14Fに組み付けられ、作業軸2を軸心回りに回転可能に支持する。既述の通り、スプラインプーリ38は、作業軸2に軸心回りの回転力を伝達するプーリであり、R軸伝達ベルト34Tを介してR軸モータ34の駆動力が与えられる。作業軸2にはストッパ4が取り付けられているので、作業軸2が軸心回りに回転すると、ストッパ4とスプラインプーリ38とは同期回転することになる。
【0071】
スプラインプーリ38は、最下部に下端リング部381を備える。下端リング部381は、ベアリング24の内輪側に入り込んでいる。下端リング部381には、当止ボルト8を螺合させるための、Z方向に延びる複数のボルト孔(図には表れない)が穿孔されている。下端リング部381の下端面とベアリング24の下端面とは面一であり、これら下端面にはリング平板からなる下部板金82が添設されている。当止ボルト8は、下部板金82を通して、下端リング部381の前記ボルト孔に螺合されている。
【0072】
図12に示されているように、第2アーム14の下面14Bには、作業軸2の周囲を取り囲むように下方に突設された環状突起部141Aが形成されている。円弧状突片6は、この環状突起部141Aから下方に突設されている。環状突起部141Aの内側には開口142が設けられている。開口142の内径は、ダンパー44の外径よりやや大きい。上述の当止ボルト8及び下部板金82は、開口142から露呈している。
【0073】
図15に示すように、本実施形態では当止ボルト8の頂面81は、環状突起部141Aの下端面よりもやや下方に突出している例を示している。これに代えて、作業軸2のZ方向のストロークを少しでも確保できるよう、頂面81が環状突起部141Aの下端面より上方に位置させても良い。
【0074】
ベアリング24の上端側には、リング平板からなる上部板金83が添設されている。上部板金83は、ベアリング24の外輪を第2アーム14のフレーム14Fに固定するために配置されている。上部板金83及びフレーム14Fにはボルト孔が穿孔されている。当該ボルト孔に固定ボルト84が螺合されることで、ベアリング24がフレーム14Fに固定される。なお、この固定ボルト84による固定によって、作業軸2のユニット(図13)が、堅牢なダイカスト等からなる第2アーム14に固定される。つまり、当止ボルト8がストッパ4の衝突によって受ける衝撃力を、十分な強度が確保されている第2アーム14で受け止める構成とすることができる。
【0075】
図15及び図16は、作業軸2のZ軸方向の原点出し動作を示す図でもある。第2アーム14に一体化された当止ボルト8の頂面81(単位当接面/第1当接面)と、ストッパ4に一体化されたダンパー44の環状端面4S(第2当接面)とは、作業軸2の軸方向において対向している。作業軸2の軸方向への移動によって、環状に配列された複数の頂面81の集合体と環状端面4Sとは、面接触が可能である。この面接触によって、作業軸2のZ軸方向の原点出しが行われる。
【0076】
図15の状態では、作業軸2が下降していることに伴い、ストッパ4は第2アーム14に対して下方に離間している。この状態では、頂面81と環状端面4Sとは離間している。Z軸の原点出しにおいては、図15の状態から作業軸2が上昇される。当該上昇により、やがて図16に示す通り、頂面81と環状端面4Sとが面接触する。この面接触が実現された作業軸2の高さ位置が、作業軸2のZ軸方向の原点位置として設定される。なお、R軸の原点出し動作については、第1実施形態と同様に、当接ボルト5と円弧状突片6との当接によって行われる。
【0077】
第2実施形態によれば、第1当接面が、多点的に配置された頂面81(単位当接面)の集合体によって構成される。従って、ストッパ4の衝撃力を多点的、分散的に受け止め易い構造とすることができる。また、複数の当止ボルト8を第2アーム14に一体化されるスプラインナット23に取り付けるだけで、簡易的に第1当接面を構築することができる。さらに、ストッパ4と同期回転するスプラインプーリ38に複数の当止ボルト8が取り付けられる。従って、作業軸2が軸心回りに回転している状態で頂面81と環状端面4Sとが接触しても、擦れが生じることはなく、両者の摩耗を抑止することができる。
【0078】
[変形例]
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取ることができる。
【0079】
(1)上記実施形態では、ストッパ4に緩衝部材としてのダンパー44が一体化されている例を示した。ダンパー44の介在によって、ストッパ4に対する衝撃を緩和させることができる利点がある。これに代えて、第2アーム14に対してストッパ4を面接触させる構造だけでストッパ4の破損が抑止可能な場合は、ダンパー44を省くようにしても良い。
【0080】
図17(A)及び図17(B)は、本発明に係る原点出し装置の第1変形例を示す側面図である。この第1変形例では、ストッパ4の上面にダンパー44が取り付けられていない。この場合、円筒型のストッパ4の上面が環状端面4S(第2当接面)となる。つまり、ストッパ4の本体部分が直接第2アーム14に面接触する構造である。図17(B)に示すように、環状端面4Sと、第2アーム14の下面14Bに配置された環状受け面14S(第1当接面)とが上下方向に対向する。そして、図17(A)に示すように、Z軸の原点出し作業時や作業軸2の抜け止め時に、両者が面接触する。
【0081】
(2)図18は、本発明に係る原点出し装置の第2変形例を示す側面図である。上記実施形態では、ストッパ4側にダンパー44が一体化されている例を示したが、第2変形例では、ダンパー44が第2アーム14側に一体に設けられている。すなわち、第2アーム14の下面14Bに固定される環状円板141に、ダンパー44が固着されている。この態様では、ダンパー44の下面がストッパ4を受ける環状受け面14S(第1当接面)となり、ストッパ4の上面が環状端面4S(第2当接面)となる。
【0082】
[上記実施形態に包含される発明]
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0083】
ロボットの原点出し装置は、第1当接面を有するベース部材と、前記ベース部材に対して軸方向の移動及び軸心回りの回転が可能な軸部材と、前記軸部材に搭載され、前記軸方向において前記第1当接面と対向する第2当接面と、当該第2当接面の外周側に位置する側面と、を有するストッパと、前記軸部材の前記軸方向の移動によっては前記ストッパと干渉しない位置において、前記ベース部材に突設された第1突起部と、前記ストッパの前記側面から外側に突設され、前記第1突起部に対して当接が可能な第2突起部と、を備え、前記第1当接面と前記第2当接面とは、前記軸部材の前記軸方向への移動によって面接触が可能であって、前記面接触によって前記軸部材の前記軸方向の原点出しが行われる当接面であり、前記第1突起部と前記第2突起部とは、前記軸部材の前記軸心回りの回転によって当接が可能であって、前記当接によって前記軸部材の回転方向の原点出しが行われる突起部であることを特徴とする。
【0084】
この原点出し装置によれば、第1当接面と第2当接面との当接、並びに第1突起部と第2突起部との当接によって、センサレスで軸部材の軸方向及び回転方向の原点出しを行わせることができる。また、ストッパの破損対策に関し、当該ストッパは、回転方向の原点出しのためにベース部材側に突設される第1突起部とは干渉することはない。さらに、第2突起部は、ストッパの側面から外側に突設される。そして、ベース部材側の第1当接面とストッパ側の第2当接面との面接触によって、軸部材の軸方向の原点出しが行われる。このため、軸方向の原点出しの際の勿論のこと、ストッパが軸部材の暴走を抑止する際にも、ストッパに対して部分的な衝撃力が作用することが回避される。つまり、前記衝撃力を前記第1当接面及び前記第2当接面の面接触で受けることができるので、ストッパの破損を抑止することができる。
【0085】
上記のロボットの原点出し装置において、前記ストッパは、前記軸部材に外嵌される円筒の形状を有し、前記第2当接面は、前記円筒における前記ベース部材と対向する環状の端面であり、前記側面は、前記円筒の外周面であることが望ましい。
【0086】
この原点出し装置によれば、ストッパの第2当接面を環状の平面とすることができ、衝撃力を均等に受け易くすることができる。また、円筒の外周面から第2突起部が突設されるので、軸部材の回転によって第1突起部に当接させ易くすることができる。
【0087】
上記のロボットの原点出し装置において、前記第1当接面は、前記第2当接面が突き当たる環状の受け面であり、前記第1突起部は、前記環状の受け面の外周縁の一部に沿うように突設された円弧状の突片であって、当該突片は前記第2突起部が突き当たる側壁を有することが望ましい。
【0088】
この原点出し装置によれば、ストッパの第2当接面を受ける環状の受け面からなる第1当接面の外周縁に、円弧状の突片からなる第1突起部が配置される。このためストッパと第1突起部とが干渉しない構造をコンパクトに構築することができる。また、ストッパの側面と第1突起部とを近接して設置できるので、前記側面から突設する第2突起部の突出長を短くすることが可能となり、この点からも原点出し装置のコンパクト化を図ることができる。
【0089】
上記のロボットの原点出し装置において、前記ベース部材は、前記第2当接面と対向するように突設された複数の突起物を備え、前記第1当接面は、前記複数の突起物の突出先端側に各々備えられた単位当接面の集合体によって構成される構成としても良い。
【0090】
この原点出し装置によれば、第2当接面と面接触する第1当接面が、多点的に配置された単位当接面の集合体によって構成される。従って、前記ストッパの衝撃力を多点的に受け止め易い構造とすることができる。
【0091】
上記のロボットの原点出し装置において、前記ストッパは、前記軸部材に外嵌される円筒の形状を有し、前記第2当接面は、前記円筒における前記ベース部材と対向する環状の端面であり、前記側面は、前記円筒の外周面であって、前記複数の突起物は、前記環状の端面と対向するように前記ベース部材に環状に配列された複数のボルトからなり、前記第1当接面を構成する前記単位当接面は、前記ボルトのボルト頭の頂面からなることが望ましい。
【0092】
この原点出し装置によれば、環状に配列された複数のボルト頭の頂面の集合体によって第1当接面を構成し、環状の端面からなる第2当接面と面接触させることができる。すなわち、複数のボルトをベース部材に取り付けるだけで、簡易的に第1当接面を構築することができる。
【0093】
上記のロボットの原点出し装置において、前記ベース部材に組み付けられ、前記軸部材を軸心回りに回転可能に支持するベアリングと、前記軸部材に一体化され、前記軸部材に前記軸心回りの回転力を伝達するプーリと、をさらに備え、前記軸部材が前記軸心回りに回転すると、前記ストッパと前記プーリとは同期回転し、前記複数のボルトは前記プーリに取り付けられていることが望ましい。
【0094】
この原点出し装置によれば、ストッパと同期回転するプーリに複数のボルトが取り付けられる。従って、軸部材が軸心回りに回転している状態で第1当接面と第2当接面が接触しても、擦れが生じることはなく、第1当接面及び第2当接面の摩耗を抑止することができる。
【0095】
上記のロボットの原点出し装置において、前記ベース部材と前記ストッパとの間に介在される緩衝部材をさらに備え、前記緩衝部材は、前記ベース部材と一体若しくは前記ストッパと一体に設けられ、前記第1当接面は前記緩衝部材における前記第2当接面と対向する面、若しくは、前記第2当接面は前記緩衝部材における前記第1当接面と対向する面であることが望ましい。
【0096】
この原点出し装置によれば、緩衝部材の介在によって、ストッパに対する衝撃を緩和させることができる。従って、よりストッパが破損し難い構造とすることができる。
【0097】
本発明の他の局面に係るロボットの原点出し方法は、上記のロボットの原点出し装置を用いた原点設定方法であって、前記第1当接面と前記第2当接面とが面接触するまで前記軸部材を前記軸方向に移動させ、前記軸部材の前記軸方向の原点位置を設定し、前記軸方向の原点位置から、前記回転方向の原点出しのために設定された特定位置まで、前記軸部材を前記軸方向に移動させ、前記特定位置に配置された前記軸部材を、前記第1突起部と前記第2突起部とが当接するまで前記軸心回りに回転させ、前記軸部材の前記回転方向の原点位置を設定することを特徴とする。
【0098】
この原点出し方法によれば、第1当接面と第2当接面との当接、並びに第1突起部と第2突起部との当接によって、センサレスで軸部材の軸方向及び回転方向の原点出しを行わせることができる。また、ストッパに対して部分的な衝撃力が作用することを回避することができる。
【0099】
以上説明した本発明によれば、軸部材の軸方向及び回転方向の原点出しをセンサレスで行うと共に、軸部材に搭載されるストッパの破損を防止することができるロボットの原点出し装置及び方法を提供することができる。
図1
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図18