(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】シリコン酸化膜研磨用スラリー組成物及びそれを用いた研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230526BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20230526BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230526BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230526BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2021544909
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 KR2020002934
(87)【国際公開番号】W WO2020180061
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0024836
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515126259
【氏名又は名称】ヨンチャン ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】イ スンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンファン
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535538(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020931(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/159530(WO,A1)
【文献】特開2017-014482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/14
C09G 1/02
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜又はポリシリコン膜の選択比を調節して研磨することができるように、コロイド状シリカからなる研磨材0.2乃至10重量%;5-メチルベンゾトリアゾール又はポリエチレングリコールからなる添加剤0.001乃至7重量%;及び残量の溶媒から構成される、CMP用スラリー組成物
であって、
前記コロイド状シリカのゼータ電位(Zeta potential)が+15乃至+50mVであり、
前記コロイド状シリカの粒子サイズは30乃至80nmであり、
前記添加剤は、ポリエチレングリコール:5-メチルベンゾトリアゾールの比率が0.2~1.4:0.025~0.05であり、
シリコン酸化膜:シリコン窒化膜:ポリシリコン膜の研磨選択比が10.2~27.5:1:1.3~10.7であり、
シリコン酸化膜の除去率は200~3000Å/minであることを特徴とする、CMP用スラリー組成物。
【請求項2】
前記コロイド状シリカは、金属(Li、B、Mg、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ta、W、Pt、Na、Al)の含有量が100ppb以下であることを特徴とする、請求項1に記載のCMP用スラリー組成物。
【請求項3】
前記金属(Li、B、Mg、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ta、W、Pt、Na、Al)の含有量が50ppb以下であることを特徴とする、
請求項2に記載のCMP用スラリー組成物。
【請求項4】
pHが3乃至5であることを特徴とする、請求項1に記載のCMP用スラリー組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のCMP用スラリー組成物を用いて、3D NANDフラッシュ(Nand flash)半導体の製造においてゲートギャップポリ(Gate gap poly)工程中にシリコン酸化膜の初期段差を研磨して、「シリコン酸化膜又はポリシリコン膜」の中から選択される1種又は2種と「シリコン窒化膜」で形成される被研磨膜を同時に研磨することを特徴とする、CMP用スラリー組成物を用いた研磨方法。
【請求項6】
前記被研磨膜を同時に研磨する方法は、添加剤と研磨材の含有量の調節によって「シリコン酸化膜:シリコン窒化膜:ポリシリコン膜」の選択比を調節して研磨することを特徴とする、
請求項5に記載のCMP用スラリー組成物を用いた研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP用スラリー組成物及びその組成物を用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の集積度が増加するにつれて、半導体ウェーハ(Wafer)上に形成される構造物の高低段差が増加しているが、段差が増加する場合、後続のリソグラフィー(Lithography)工程で焦点深度(DOF:Depth of Focusing)の問題によりマスクパターンを正確に印刷(Printing)するのに困難が発生する。
【0003】
したがって、最近では、ウェーハの表面を平坦化するために化学的な除去加工と機械的な除去加工を一つの加工工程に合わせた化学機械研磨(Chemical-Mechanical Polishing;以下「CMP」という)工程が広く用いられている。一般的に、CMP工程は、段差付きウェーハの表面を研磨パッド(Polishing pad)上に密着させた後、研磨材と化学物質が含まれている研磨液であるスラリー(Slurry)をウェーハと研磨パッドとの間に注入させてウェーハの表面を平坦化させる。すなわち、CMP工程は、簡単には、半導体ウェーハから特定の膜質を平坦に削る作業であるといえる。このようなCMP工程において、研磨(Polishing)後の研磨面の均一度は非常に重要である。CMP工程のための構成として、ウェーハが装着されるヘッド、それと同じ方向に回転するパッド、これらの間にナノサイズの研磨粒子などが含まれているスラリーがあり、ウェーハは、表面張力又は真空によってヘッドに装着される。CMP工程において、ウェーハはパッドとスラリーによって研磨され、パッド付き研磨テーブルは単純な回転運動をし、ヘッド部は回転運動と揺動運動を同時に行い、ウェーハを一定の圧力で研磨テーブルの方向に加圧する。ヘッド部の自体荷重と印加される加圧力によってウェーハの表面とパッドとは接触し、この接触面同士の間の微細な隙間、すなわちパッドの気孔部分の間に加工液としてのスラリーが流動する。スラリー内の研磨粒子とパッドの表面突起によって機械的な除去作用が行われ、スラリー内の化学成分によっては化学的な除去作用が行われる。また、ウェーハのデバイスが形成された突出部分の上部から研磨粒子又は表面突起との接触が行われ、この突出部分に圧力が集中するので、他の部分よりも相対的に高い表面除去速度を有し、加工が進むことにより、全面積にわたって突出部分は均一に除去される。
【0004】
一般的に、低いpHで、シリコン窒化膜は陽(positive)ゼータ電位(Zeta potential)を有し、逆に、シリコン酸化膜は陰(negative)ゼータ電位を有する。静電気的引力理論に基づいて、シリコン酸化膜の高い研磨率を実現するためには、反対電位として陽(positive)ゼータ電位を有する研磨材を用いて、陰(negative)ゼータ電位を有するシリコン酸化膜との吸着力を高める。また、研磨材としてのコロイド状シリカには、製造過程で発生するか汚染する金属不純物が存在することにより、研磨過程でスクラッチ(Scratch)不良が増加する。このような金属不純物を除去した高純度の研磨材は、スクラッチの発生率を大幅に低下させる。
【0005】
CMP工程は、工程の進行中に同一の物質のみを研磨して、指定された厚さだけを除去しなければならないタイプと、異なる種類の物質に会って研磨終点(Polishing end point)が決められるタイプに区分することができる。工程中に研磨されてはならない層の研磨率が研磨される物質の研磨率よりも大幅に小さい場合、少しの過剰研磨で自然に研磨終点(PEP)が決定できる。上述したように2つの物質の研磨比を選択比という。前記CMP工程に用いられるスラリーは、化学反応を引き起こすことが可能な雰囲気の溶液に選択比を持つ研磨材が混合されなければならない。つまり、3D NANDフラッシュ(Nand flash)半導体の製造において、ゲートギャップポリ(Gate gap poly)工程中に上述のようにシリコン酸化膜の研磨を優先にし、シリコン窒化膜が露出されると同時に研磨が停止する2種の物質の研磨比が異なる、すなわち、選択比が異なるスラリーが必要になった。また、金属層の損傷がなく、マイクロスクラッチを減少させて素子の電気的特性を向上させる最適なCMP用スラリー組成物の開発が求められている。
【0006】
一方、CMPにおける被研磨面は、ポリシリコン膜(多結晶シリコン膜)、単結晶シリコン膜、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などの多種多様な材料を露出させている。従来では、上述した材料のうちの1種をターゲットにしたCMP用スラリー組成物を用いて、そのターゲットにした材料をCMPで除去した。しかし、他の材料との研磨速度比が大きく異なると、ターゲットにした材料が過剰に研磨され、ディッシングや浸食などの欠陥を引き起こす場合があった。また、ターゲットにした材料ごとに、各対象に適したCMP用スラリー組成物を選択し、CMPによって除去しなければならないため、生産性が低くなるという問題点があった。
【0007】
したがって、最近、半導体デバイスの構造の多様化に伴い、ポリシリコン膜、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の3種類の膜質を同時に研磨することが求められている。この3種類の膜質を同時に研磨するためには、研磨対象ごとに対象に応じてスラリーを選択してスラリーを供給しなければならない工程から外れ、CMP用スラリー組成物自体で膜質の選択比を調節して研磨することができる開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜に対する研磨選択比を自由に調節して研磨することができるため、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の選択的な除去が要求される半導体製造工程に有用に適用できるCMP用スラリー組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、シリコン酸化膜の段差除去用研磨材として、高純度の陽(positive)ゼータ電位(Zeta potential)のコロイド状シリカを用いることが可能な研磨スラリーによる段差除去の際にスクラッチ(Scratch)不良を最小限に抑えることができる研磨スラリー及びそれを用いる絶縁膜の平坦化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、シリコン酸化膜の研磨性能を向上させるとともにスクラッチ不良を最小限に抑え、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜に対する選択比を調節して研磨することができるように、コロイド状シリカからなる研磨材と;ポリエチレングリコール及びヘテロ環化合物よりなる群から選択される1種以上の添加剤と;溶媒と;を含むことを特徴とする、CMP用スラリー組成物を提供する。
【0011】
本発明の好適な一実施形態において、前記コロイド状シリカは、ゼータ電位(Zeta potential)が+10乃至+70mVである。
【0012】
本発明の好適な一実施形態において、前記金属(Li、B、Mg、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ta、W、Pt、Na、Al)の含有量は100ppb以下とする。粒子サイズが10乃至120nmであることを特徴とする。
【0013】
本発明の好適な一実施形態において、前記ヘテロ環化合物は、窒素原子が2つ以上のものであって、1,2,4H-トリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾゾール及びピペラジンよりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の好適な一実施形態において、前記添加剤は、ポリシリコン膜に対して選択比の調節が可能なポリエチレングリコールと、シリコン窒化膜に対して選択比の調節が可能なヘテロ環化合物とから構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の好適な一実施形態において、前記CMP用スラリー組成物は、組成物の総重量に対して、コロイド状シリカからなる研磨材0.2~10重量%、並びにポリエチレングリコール及びヘテロ環化合物よりなる群から選択される1種以上の添加剤0.001乃至7重量%を含有し、残部は溶媒からなることを特徴とする。
【0016】
本発明の好適な一実施形態において、前記添加剤は、ポリエチレングリコール:ヘテロ環化合物の比率が0~5.0:0~5.0であることを特徴とする。
【0017】
本発明の好適な一実施形態において、前記CMP用スラリー組成物は、pHが3~5であることを特徴とする。
【0018】
本発明の好適な一実施形態において、前記CMP用スラリー組成物は、シリコン酸化膜の研磨率が200~3000Å/minであり、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の中から選択される2種以上で形成される被研磨膜を同時に研磨することを特徴とする。
【0019】
本発明の好適な一実施形態において、前記研磨は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の研磨選択比が1~50:1:1~10であることを特徴とする。
【0020】
本発明の好適な一実施形態において、前記CMP用スラリー組成物は、研磨材に添加剤を含ませて単一スラリーとして使用することを特徴とする。
【0021】
本発明は、他の実施形態において、前記CMPスラリー組成物を用いて半導体ウェーハを研磨するステップを含むことを特徴とする、CMP用スラリー組成物を用いた研磨方法を提供する。
【0022】
本発明の好適な一実施形態において、前記研磨方法は、研磨材と添加剤がそれぞれ注入され、研磨材と添加剤の含有量の調節によってシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の選択比を調節して研磨することを特徴とする。
【0023】
本発明の好適な一実施形態において、前記コロイド状シリカの含有量の調節によってシリコン酸化膜の研磨率を調節し、前記ポリエチレングリコールの含有量の調節によってポリシリコン膜の選択比を調節して研磨させることを特徴とする。
【0024】
また、ヘテロ環化合物の含有量の調節によってシリコン窒化膜の選択比を調節して研磨させることを特徴とする。
【0025】
本発明の好適な一実施形態において、前記添加剤は、ポリエチレングリコールとヘテロ環化合物の比率が0~5.0:0~5.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるCMP用スラリー組成物は、シリコン酸化膜の研磨性能を向上させるとともにスクラッチ(Scratch)不良を最小限に抑えて、工程信頼度と生産性を向上させる。また、シリコン窒化膜とポリシリコン膜に対してシリコン酸化膜を高い研磨選択比で研磨することができるため、シリコン酸化膜の選択的な除去が要求される半導体製造工程に有用に適用できる。また、上述したCMP用スラリー組成物は、研磨対象ごとに、対象膜質に適したそれぞれのスラリーを選択する必要がないため、生産効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をより詳細に説明する。
他に定義されない限り、本明細書で使用されたすべての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を持つ。一般的に、本明細書で使用された命名法は、本技術分野でよく知られている、通常使用されるものである。
【0028】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0029】
一般的に、CMP(Chemical-Mechanical Polishing;以下「CMP」という)工程におけるスラリー(Slurry)とは、通常、研磨材(Abrasive)と添加剤(Additive)が含まれているものをスラリーといい、また、単一化された製品である研磨材のみでもスラリーという。本発明は、研磨材と添加剤の流量を変更しながら、研磨される膜質の選択比を変更する技術であるので、研磨材と添加剤に区分することとする。しかし、場合によっては、研磨材に添加剤を含ませて単一スラリー組成物に製造することもできる。
【0030】
本発明において、「除去率(Removal rate)」とは、CMP工程でウェーハの膜質が削られる程度、すなわち膜質の除去速度を意味する。
【0031】
本発明において、「選択比(Selectivity ratio)」とは、同一の研磨条件で互いに異なる物質に対する異なる除去率を意味する。
【0032】
以下、本発明のCMP用スラリー組成物及びそれを用いた研磨方法を詳細に説明する。
一般的なCMP用スラリー組成物に使用されるコロイド状シリカのゼータ電位(Zeta potential)は陰(Negative)の値を有し、低いpHでシリコン酸化膜も同じ陰の表面電位を有する。したがって、研磨材とシリコン酸化膜間の静電気的斥力により、研磨率が低くて初期段差が高いシリコン酸化膜を除去するのには限界がある。前記コロイド状シリカのゼータ電位が+10乃至+70mVであることが、除去率(Removal rate)を適切に維持するための面で好ましく、電位値が+30mV乃至+50mVである場合がさらに好ましい。もしゼータ電位の値が+10mV未満である場合には、膜質に対する除去率(Removal rate)が減少して工程進行時間が長くかかり、+70mVを超える場合には、オーバー(over)除去率によってスクラッチ(Scratch)に脆弱であるので、好ましくない。
【0033】
通常、コロイド状シリカは、製造過程で発生する金属不純物が10~600PPMであってCMP工程中に致命的なスクラッチ(Scratch)不良率を増加させる。前記コロイド状シリカは、金属(Li、B、Mg、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ag、Cd、Sn、Ta、W、Pt、Na、Al)の含有量を100ppb以下とすることが、スクラッチ(Scratch)を減少させるのに好ましく、50ppbである場合にさらに好ましい。
【0034】
一般的な場合には、低いpHでシリコン窒化膜が最もうまく研磨されるが、本発明では、シリコン窒化膜に対する選択比を低くして除去率を最小限に抑えつつ、デバイスの構造的な特徴に応じて、シリコン窒化膜に比べてシリコン酸化膜とポリシリコン膜に対する選択比を調節して除去率を高く或いは低く自由に調節して研磨することができる。
【0035】
上述したように、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜に対する選択比を調節するための要因としては、CMP用スラリー組成物の構成物質である「添加剤及び研磨材の含有量の調節」によって左右されるが、添加剤及び研磨材の含有量の調節によって、それぞれのCMP工程に合う最適な選択比を適用して、半導体ウェーハを研磨することができる。
【0036】
したがって、従来の半導体工程で使用されるスラリーは、各研磨対象に応じて途中でスラリーを交換しなければならない煩わしさがあったが、本発明で開発しようとするスラリーは、さまざまなデバイス及び様々な工程に対して一つのスラリーを用いて添加剤及び研磨材の含有量の調節によってシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜に対する選択比を調節して研磨することができるので、研磨対象に応じて途中でスラリーを交換することなく連続的に研磨して除去することができる。
【0037】
本発明の一実施形態は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜に対する選択比を調節して研磨することができるように、コロイド状シリカからなる研磨材と;ポリエチレングリコール及びヘテロ環化合物よりなる群から選択される1種以上の添加剤と;溶媒と;を含むことを特徴とする、CMP用スラリー組成物を提供するものであることができる。
【0038】
前記コロイド状シリカは、ナノ粒径のシリカ粒子が沈降せずに、溶媒に安定的に分散しているコロイド溶液を意味する。前記コロイド状シリカは、粒子サイズが10~120nmであることが、スクラッチ(Scratch)及び除去率(Removal rate)を適切に維持するための面で好ましく、粒子サイズが30~80nmである場合にさらに好ましい。もし、コロイド状シリカの粒子サイズが10nm未満である場合には、膜質に対する除去率(Removal rate)が減少して工程進行時間が長くかかり、120nmを超える場合には、スクラッチ(Scratch)に脆弱であるので、好ましくない。
【0039】
本発明の一実施形態に係るCMP用スラリー組成物において、前記添加剤は、ポリシリコン膜に対して選択比の調節が可能なポリエチレングリコールと、シリコン窒化膜に対して選択比の調節が可能なヘテロ環化合物とからなるものであることができる。つまり、添加剤であるポリエチレングリコールの含有量を高くすると、非イオン界面活性剤としての粉状乳化剤の特性によってポリシリコン膜に対する研磨速度を大幅に減少することができ、添加剤であるヘテロ環化合物の含有量を高くすると、沈降及び凝集を抑制するとともにシリコン窒化膜に対する研磨速度を減少させることができる。
【0040】
この際、前記ヘテロ環化合物は、窒素原子が2つ以上のものであって、1,2,4H-トリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、テトラゾール、イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール及びピペラジンよりなる群から選択される1種以上のものであることができる。
【0041】
本発明の一実施形態に係るCMP用スラリー組成物において、前記溶媒は、組成物の濃度を調節して膜質の除去率を調節するために使用されるものであって、添加剤に希釈させて使用することができ、溶媒は、脱イオン水、水などを使用することができるが、脱イオン水を使用することが最も好ましい。
【0042】
前記CMP用スラリー組成物は、組成物の総重量に対して、コロイド状シリカからなる研磨材0.2~10重量%、並びにポリエチレングリコール及びヘテロ環化合物よりなる群から選択される1種以上の添加剤0.001~7重量%を含有し、残部は溶媒からなるものであることができる。
【0043】
前記コロイド状シリカからなる研磨材、すなわちコロイド状シリカは、組成物の総重量に対して0.2~10重量%を含むことが好ましい。もしコロイド状シリカを0.2重量%未満で使用する場合には、Solidの含有量が不足して除去率(Removal rate)が減少し、コロイド状シリカを10重量%超過で使用する場合には、過剰な含有量による凝集現象が起こるので、好ましくない。
【0044】
前記ポリエチレングリコール及びヘテロ環化合物よりなる群から選択される1種以上の添加剤は、組成物の総重量に対して0.001~7重量%を含むことが好ましい。もし添加剤を0.001重量%未満で使用する場合には、添加剤の含有量が低くて添加剤に対する作用が殆どなく、添加剤を7重量%超過で使用する場合には、添加剤が過剰含有され、一緒に添加された他の種類の添加剤が適切に役割を果たさないので、好ましくない。
【0045】
このとき、添加剤は、ポリエチレングリコールとヘテロ環化合物の比率が0~5.0:0~5.0であることが、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の研磨選択比が1~50:1:1~10を満足させて、シリコン窒化膜に比べて、シリコン酸化膜とポリシリコン膜に対する選択比を調節して除去率を高く或いは低く自由に調節して研磨することができるので、好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態によるCMP用スラリー組成物は、pHが3~5であることが組成物の安定性の面で好ましい。もしpHの範囲が3未満である場合には、除去率(Removal rate)が不安定であり、pHの範囲が5を超える場合には、コロイド粒子の凝集現象及び除去率(Removal rate)が不安定であるので、好ましくない。上記のpHの範囲となるように調節するために、塩基性物質としては、KOH、NH4OH、NaOH、TMAH、TBAH、HNO3などを単独で又は混合して使用することができ、酸性物質としては、硝酸、硫酸、塩酸などの無機酸を単独で又は混合して使用することができる。pHは、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の研磨速度と密接に関連しているので、精密に調節しなければならない。
【0047】
前述したように、本発明から提供されるCMP用スラリー組成物は、添加剤及びコロイド状シリカの含有量の調節によってシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の中から選択される2種以上で形成される被研磨膜を同時に研磨するものであることができる。この時、前記CMP用スラリー組成物は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の研磨選択比が1~50:1:1~10のものであることができる。また、シリコン酸化物の除去率(研磨速度)は200~3000Å/min、ポリシリコン膜の除去率(研磨速度)は20~1000Å/min、シリコン窒化膜の除去率(研磨速度)は20~200Å/minを有するものであることができる。これは、シリコン窒化膜が露出される半導体工程でシリコン酸化膜及びポリシリコン膜を高い研磨選択比で研磨することができるので、シリコン酸化膜及びポリシリコン膜の選択的な除去が要求される半導体製造工程に有用に適用できる。
【0048】
また、本発明から提供されるCMP用スラリー組成物は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜に対する選択比を調節して研磨することができるが、場合に応じて、一部異なる膜質の場合においても研磨することができるものであり得る。一例として、本発明のCMP用スラリー組成物は、トレンチ(Trench)構造の形態である場合、バルク(Bulk)膜質を研磨する用途で便利に使用できる。それだけではなく、通常、パイプチャンネル(Pipe channel)地域は、犠牲膜質を用いて構造を形成するが、CMP工程で構造を形成しようとする場合、パイプチャンネルのディッシング(Dishing)又はOver CMPによるトレンチ変化を最小限に抑えるために、さまざまな特性を有するスラリーの使用が必要である。このような場合、膜質の選択比調節が可能な本発明のCMP用スラリー組成物の適用が可能である。
【0049】
前記CMP用スラリー組成物は、研磨材に添加剤を含ませて単一スラリーとして使用が可能なものであることができる。
【0050】
本発明の別の一実施形態は、前記CMPスラリー組成物を用いて半導体ウェーハを研磨するステップを含むことを特徴とする、CMP用スラリー組成物を用いた研磨方法を提供するものであることができる。前記研磨方法は、研磨材と添加剤がそれぞれ注入され、添加剤と研磨材の含有量の調節によってシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の選択比を調節して研磨するものであることができる。
【0051】
前記CMPスラリー組成物を用いた研磨方法の一例は、次の通りである。まず、CMPスラリー組成物を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨面と接触させ、被研磨面と研磨パッドを相対的に動かして研磨する。研磨装置としては、半導体基板を保持するホルダーと研磨パッドを接着した研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂などを使用することができる。研磨中、研磨パッドには、CMP用スラリー組成物を、各研磨材及び添加剤のラインを介してポンプなどへ連続的に供給する。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨材で覆われている状態を維持することが好ましい。この時、前記添加剤は、ポリエチレングリコールの含有量の調節によってポリシリコン膜の選択比を調節して研磨させるものであり、ヘテロ環化合物の含有量の調節によってシリコン窒化膜の選択比を調節して研磨させるものであることができる。この時、前記添加剤は、ポリエチレングリコールとヘテロ環化合物の比率が0~5.0:0~5.0のものであることができる。研磨終了後の半導体基板は、流水でよく洗浄した後、スピンドライヤー、ランプタイプなどを用いて、半導体基板上に付着した水滴を落としてから乾燥させることが好ましい。被処理体としては、ポリシリコン膜、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜の中から選択される2種以上で形成される被研磨面を有する半導体基板を挙げることができる。
【0052】
本発明によるCMPスラリー組成物は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜を高い研磨選択比で研磨することができるため、ポリシリコン膜、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜の3種で形成される被研磨面を有する半導体製造工程に有用に適用できる。上述したCMPスラリー組成物は、研磨対象ごとに、対象に適したそれぞれのスラリーを選択する必要がないため、生産効率の向上を図ることができる。
【0053】
以下、本発明の好適な実施例及び比較例を説明する。しかし、下記の実施例は本発明の好適な一実施例に過ぎず、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
実施例1~6
表1に記載された組成成分、組成比率、ゼータ電位の値及びpHでスラリー組成物を製造したが、まず、研磨材であるコロイド状シリカを準備し、ポリエチレングリコール、ヘテロ環化合物である5-メチル-ベンゾトリアゾールが含有されている添加剤に、溶媒である脱イオン水を残量混合して、それぞれ前記研磨材のゼータ電位の値と含有量を調節し、シリコン酸化膜の研磨性能を向上させ、シリコン窒化膜との選択比の調節が可能なCMP用スラリー組成物を製造した。製造されたCMP用スラリー組成物にpH調節剤としてKOH、HNO3を添加してpHを3.5に調節した。
【0055】
比較例1及び比較例2
表1に記載された組成成分、組成比率、ゼータ電位の値及びpHでスラリー組成物を製造したが、ゼータ電位の値を陰(Negative)の値に調節した以外は、実施例1~6と同様に製造した。
【0056】
【0057】
特性測定(CMPスラリー組成物による研磨速度の評価)
前記実施例1~6及び比較例1~2によって製造されたCMPスラリー組成物を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜の研磨速度を評価した。
このとき、研磨装備は、CTS社製のCMP装備を使用した。
CMPスラリー組成物を用いてシリコン酸化膜、シリコン窒化膜の研磨速度を測定した結果を、下記表2に示す。
【0058】
【0059】
実施例1~6と比較例を対比してみると、前記表2に示すように、研磨材であるコロイド状シリカのゼータ電位(Zeta potential)が陽(Positive)の値である場合、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜の研磨選択比が増加することを確認した。
【0060】
しかし、ゼータ電位(Zeta potential)が陰(Negative)の値である場合は、逆に、シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜の研磨選択比が増加することを確認した。
【0061】
ゼータ電位(Zeta potential)が陽(Positive)の値である場合に該当する「実施例1~3」において、その値を15、30、50に増加させるほど、シリコン窒化膜の除去率は減少し、シリコン酸化膜の除去率は増加して選択比が増加することを確認した。このような結果は、ゼータ電位(Zeta potential)が陽(Positive)の値である場合に該当する「実施例4~6」においてもその値を15、30、50に増加させるほど、シリコン窒化膜の除去率は減少し、シリコン酸化膜の除去率は増加して選択比が増加することを確認した。
【0062】
一方、同じゼータ電位の値で研磨材の含有量を増加させた場合に該当する「実施例1及び4」において、その含有量を3乃至6に増加させるほど、シリコン酸化膜の除去率が増加して選択比が増加することを確認したので、このような結果は、研磨材の含有量を増加させた場合に該当する「実施例2及び5」と「実施例3及び6」においても、その含有量を3乃至6に増加させるほどシリコン酸化膜の除去率が増加して選択比が増加することを確認した。
【0063】
結果的に、コロイド状シリカのゼータ電位(Zeta potential)の陽の値を増加させた或いは研磨材の含有量を増加させた本発明の組成物の場合に、シリコン酸化膜の研磨率を増加させて、初期段差の高いシリコン酸化膜を高い研磨速度で研磨することができる。
【0064】
また、シリコン窒化膜に対してシリコン酸化膜を高い研磨選択比で研磨することができるため、シリコン酸化膜の選択的な除去が要求される半導体製造工程、例えば、ゲートギャップポリ(Gate gap poly)工程に有用に適用できるCMP用スラリー組成物を提供することができることを確認した。
【0065】
実施例7
金属不純物を除去した高純度のコロイド状シリカを準備し、実施例2と同様の方法でCMP用スラリー組成物を製造した。
【0066】
比較例3
実施例7で金属不純物を除去していない一般コロイド状シリカを使用した以外は、実施例7と同様の方法でCMP用スラリー組成物を製造した。
製造されたCMP用スラリー組成物に含有された金属不純物の含有量、組成成分、組成比率、ゼータ電位の値は、下記表3の通りである。
【0067】
【0068】
特性測定(CMPスラリー組成物による研磨速度の評価)
前記表3は、実施例7と比較例3によって製造されたCMPスラリー組成物を用いてシリコン酸化膜を研磨した後、AIT-XPを用いてスクラッチの数を測定して示したものである。
【0069】
比較例3に比べて、実施例7のスラリー組成物で研磨するとスクラッチの数が著しく減少したことが分かる。
結果的に、金属不純物を除去したコロイド状シリカを用いる本発明の組成物が、シリコン酸化膜のスクラッチ不良を最小限に抑えて工程信頼度と生産性を向上させる。
【0070】
実施例8~12
表4に記載された組成成分、組成比率、ゼータ電位の値及びpHでスラリー組成物を製造したが、まず、研磨材であるコロイド状シリカを準備し、ポリエチレングリコール、ヘテロ環化合物である5-メチル-ベンゾトリアゾールが含有されている添加剤に、溶媒である脱イオン水を残量混合して、それぞれ前記研磨材のゼータ電位の値と含有量を調節し、シリコン酸化膜の研磨性能を向上させ、シリコン窒化膜との選択比の調節が可能なCMP用スラリー組成物を製造した。製造されたCMP用スラリー組成物にpH調節剤としてKOH、HNO3を添加してpHを3.5に調節した。
【0071】
比較例4及び5
比較例4は、ポリエチレングリコールを使用していない以外は実施例8~12と同様にして製造し、比較例5は、ヘテロ環化合物である5-メチル-ベンゾトリアゾールを使用していない以外は実施例8~12と同様にして製造した。この時、コロイド状シリカの種類と含有量は同様にして、CMP用スラリー組成物を製造した。
製造されたCMP用スラリー組成物に含まれているスラリー含有量は、下記表4の通りである。
【0072】
【0073】
特性測定(CMPスラリー組成物による研磨速度の評価)
前記実施例8~12及び比較例4~5によって製造されたCMPスラリー組成物を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の研磨速度を評価した。
このとき、研磨装備は、CTS社製のCMP装備を使用した。
CMPスラリー組成物を用いてシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びポリシリコン膜の研磨速度を測定した結果を、下記表5に示す。
【0074】
【0075】
実施例8~12と比較例4、5を対比してみると、前記表5に示すように、実施例8~12は、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜及びポリシリコン膜の研磨選択比が増加することを確認した。特に、シリコン窒化膜に対するシリコン酸化膜の研磨選択比は、いずれも1:10以上と著しく増加した。
【0076】
これに対し、ポリシリコン膜の除去率を調節するポリエチレングリコールを使用していない比較例4の場合は、ポリシリコンの除去率がシリコン酸化膜の除去率よりも高いため、CMP工程後のポリシリコンの残渣(residue)が残っているという問題点がありうる。
【0077】
比較例5のようにヘテロ環化合物である5-メチル-ベンゾトリアゾールを使用しない場合、シリコン窒化膜の除去率が上昇してシリコン窒化膜に対してシリコン酸化膜及びポリシリコン膜の選択比が減少する。
【0078】
このように本発明のCMP用スラリー組成物を含む場合、シリコン窒化膜に対してシリコン酸化膜及びポリシリコン膜を高い研磨選択比で研磨することができるため、シリコン酸化膜及びポリシリコン膜の選択的な除去が要求される半導体製造工程に有用に適用できるCMP用スラリー組成物を提供することができることを確認した。