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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】放熱部品および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230526BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022120627
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 諒太
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-527737(JP,A)
【文献】特開2003-332505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱する電気部品を放熱させる放熱部品であって、
液体金属が含浸されたメッシュと、
前記メッシュの両面を覆い、周囲が封止された2枚の膜体と、
を有し、
2枚の前記膜体のうち少なくとも一方に開口が形成されており、前記メッシュは前記開口で露呈された部分が前記電気部品の表面に当接する
ことを特徴とする放熱部品。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱部品において、
前記メッシュは前記開口で露呈する部分が複数層で構成されている
ことを特徴とする放熱部品。
【請求項3】
請求項1に記載の放熱部品において、
前記メッシュは、前記開口で露呈される部分の面積よりもそれ以外の部分の面積が大きい
ことを特徴とする放熱部品。
【請求項4】
請求項1に記載の放熱部品において、
適用される電子機器内で前記電気部品は複数設けられており、
前記開口は複数の前記電気部品に対応した複数個所に形成されている
ことを特徴とする放熱部品。
【請求項5】
請求項1に記載の放熱部品において、
前記開口は複数個所に形成されており、
前記電気部品が当接する箇所以外の開口には、他の放熱部品が当接する
ことを特徴とする放熱部品。
【請求項6】
電子機器であって、
発熱する電気部品と、
前記電気部品を放熱させる放熱部品と、
を有し、
前記放熱部品は
液体金属が含浸されたメッシュと、
前記メッシュの両面を覆い、周囲が封止された2枚の膜体と、
を有し、
2枚の前記膜体のうち少なくとも一方に開口が形成されており、前記メッシュは前記開口で露呈された部分が前記電気部品の表面に当接する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱する電気部品を放熱させる放熱部品、および該放熱部品を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCなどの携帯用情報機器にはGPU、CPUなどの半導体チップが設けられている。GPU、CPUは基板に実装させる部分であるサブストレートと、該サブストレートの表面に設けられた矩形のダイとを有する形状になっている。また、サブストレートの表面には小さいキャパシタがダイの周囲に設けられている場合がある。
【0003】
GPU、CPUなどの半導体チップは発熱体であり、その消費電力(特に高負荷時)によっては放熱させる必要がある。GPU、CPUを放熱させる手段としてベーパーチャンバ、ヒートスプレッダまたはヒートシンクなどの放熱部品を用い、このような放熱部品を介してダイの表面に当接させて熱を拡散させることがある。ダイと放熱部品との間には、熱を効率的に伝達させるために熱伝導材を介在させる場合がある。熱伝導材はTIM(Thermal Interface Material)と呼ばれ、例えば熱伝導シートや伝熱性グリスなどが挙げられる。また、近時はTIMとして液体金属が適用されることがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-146819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体金属は伝熱性グリスよりも伝熱性が高く、ダイから放熱部品へ効果的に熱を伝えることができる。一方、液体金属は伝熱性グリスよりも流動性が高いという特性がある。電子機器は携帯して移動すると振動や衝撃を受けやすい。そうすると、流動性のある液体金属はダイおよび放熱部品から受ける繰り返しの力により、ダイと放熱部品との隙間から漏れ出る懸念がある。
【0006】
また、液体金属は伝熱性に優れてはいるが、それでも発熱体と放熱部品との間に介在することにより多少の熱抵抗を生じ得る。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、液体金属の漏れが生じることがなく、しかも発熱する電気部品との間の熱抵抗を低減させることのできる放熱部品、および該放熱部品を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る放熱部品は、発熱する電気部品を放熱させる放熱部品であって、液体金属が含浸されたメッシュと、前記メッシュの両面を覆い、周囲が封止された2枚の膜体と、を有し、2枚の前記膜体のうち少なくとも一方に開口が形成されており、前記メッシュは前記開口で露呈された部分が前記電気部品の表面に当接する。
【0009】
また、本発明の第2態様に係る電子機器は、発熱する電気部品と、前記電気部品を放熱させる放熱部品と、を有し、前記放熱部品は液体金属が含浸されたメッシュと、前記メッシュの両面を覆い、周囲が封止された2枚の膜体と、を有し、2枚の前記膜体のうち少なくとも一方に開口が形成されており、前記メッシュは前記開口で露呈された部分が前記電気部品の表面に当接する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、液体金属により電気部品の熱を効果的に吸熱して放熱・冷却することができる。また、液体金属はメッシュに含浸されていることから漏れが生じることがない。さらに、放熱部品におけるメッシュの露呈部分はTIMなどを介在させることなく電気部品に直接的に接触することから熱抵抗を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる放熱構造および携帯用情報機器の一部を示す分解斜視図である。
図2図2は、GPUの斜視図である。
図3図3は、放熱部品の模式斜視図である。
図4図4は、放熱部品の模式断面側面図である。
図5図5は、GPUと、該GPUのダイに対して適用した放熱部品との模式断面側面図である。
図6図6は、放熱部品を備える携帯用情報機器の模式断面側面図である。
図7図7は、第1変形例に係る放熱部品の模式断面側面図である。
図8図8は、第2変形例に係る放熱部品の模式断面側面図である。
図9図9は、第3変形例に係る放熱部品の模式断面側面図である。
図10図10は、第4変形例に係る放熱部品の模式断面側面図である。
図11図11は、第5変形例に係る放熱部品の模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる放熱部品および電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明にかかる実施形態にかかる放熱部品10および携帯用情報機器12の一部を示す分解斜視図である。
【0014】
携帯用情報機器(電子機器)12は、例えばノート型PC、タブレット端末またはスマートフォンなどであり、GPU(Graphics Processing Unit)14を備えている。放熱部品10は携帯用情報機器12に対して好適に用いられるが、据え置き型のデスクトップ型コンピュータなどの電子機器に適用することも可能である。GPU14はリアルタイム画像処理が可能な半導体チップである。GPU14は高速演算を行うことにより相応の発熱があるため放熱手段が必要となる。携帯用情報機器12では、GPU14の放熱手段とし放熱部品10を備えている。
【0015】
図2は、GPU14の斜視図である。GPU14はサブストレート22と、ダイ(電気部品)24とを有する。サブストレート22は基板26に実装される薄い板状部であり、平面視で矩形となっている。ダイ24は演算回路を含む部分であり、サブストレート22の上面からやや突出するように設けられている。ダイ24は、平面視でサブストレート22よりも小さい矩形であり、該サブストレート22の上面略中央に設けられている。GPU14は携帯用情報機器12の中で最も発熱する部品の一つであり、その中でもダイ24が特に発熱する。
【0016】
換言すれば、ダイ24が携帯用情報機器12の中で最も発熱する電気部品の1つである。なお、携帯用情報機器12はCPU(Central Processing Unit)を備えている。CPUはGPUと同様にサブストレートおよびダイを備えており、放熱部品10の適用が可能である。さらに、放熱部品10はGPU14やCPU以外の半導体チップ、またはその他の発熱する電気部品の放熱にも適用可能である。
【0017】
サブストレート22の上面には多くの小さいキャパシタ28がダイ24を取り囲むように配列されている。キャパシタ28はダイ24の四方を、場所によって1列または2列で配列されている。キャパシタ28はダイ24の比較的近傍に設けられている。キャパシタ28の高さはダイ24よりも低い。キャパシタ28は絶縁材34(図5参照)で覆われる。絶縁材34は、例えば接着剤や紫外線硬化型のコーティング材であって膜状に形成される。
【0018】
図3は、放熱部品10の模式斜視図である。図4は、放熱部品10の模式断面側面図である。放熱部品10は発熱するGPU14などの電気部品を放熱させるものであり、メッシュ30と、該メッシュ30の両面を覆う第1膜体36aおよび第2膜体36bとを有する。メッシュ30には液体金属32が含浸されている。
【0019】
メッシュ30としては、ワイヤを編んだもの、または板材に対してエッチングなどによって多数の孔を設けたものなどが適用可能である。メッシュ30は、ポリエステルやグラスファイバーなど樹脂材などでもよい。メッシュ30は金属材で構成されていると好適な伝熱性能が得られる。メッシュ30は樹脂材で構成されていると当接する電気部品に対して傷をつけにくい。メッシュ30は、厚みが例えば0.025~0.05mm程度であり、適度な可撓性および引っ張り強さを備える。
【0020】
メッシュ30を銅、アルミニウム材などの金属材とする場合、ニッケル材(ニッケルを主成分とする合金を含む)をメッキしたものを用いるとよい。つまり、メッシュ30は少なくとも表面をニッケル材とすることにより、液体金属32によって変質することが防止できる。メッシュ30をニッケル材で構成することにより、メッキ処理を省略することができる。また、銅材やアルミニウム材をニッケルメッキすることにより、好適な熱伝導性が得られる。メッシュ30は、液体金属32を含浸させることのできる他の多孔質材、例えばスポンジなどの発泡体で置き換えてもよい。
【0021】
液体金属32は、例えばガリウムを主成分とするもので基本的には常温で液体となっている金属であるが、少なくとも携帯用情報機器12の基板26に通電され、GPU14が稼働した通常の使用状態の温度で液体となるフェーズチェンジマテリアルなどであってもよい。液体金属32は金属であることから熱伝導性、導電性に優れる。また、液体金属32は液体であることから流動性がある。液体金属32は基本的にメッシュ30のほぼ全面にわたって含浸されている。
【0022】
含浸の手段は、例えば液体金属32の槽内にメッシュ30を浸漬させ、またはメッシュ30に液体金属32を塗布するとよい。液体金属32はメッシュ30に対して含浸しにくい場合もあるが、この時点ではメッシュ30は放熱部品10に組み入れる前段階の単体となっており扱いが容易であり、しかも上下前後左右の6面が開放されており液体金属32を含浸させやすい。また、この時点ではメッシュ30は単体であることから、液体金属32が適正に含浸されているか目視または所定の手段により検査することができる。
【0023】
膜体36a,36bは、例えばラバー材、PET(Poly Ethylene Terephthalate)材、ポリウレタン材、または銅箔などである。膜体36a,36bはシート状のものであり柔軟であって可撓性を有する。第1膜体36aと第2膜体36bとは同じ大きさであり、周囲が封止部38を形成して内部にメッシュ30を封止している。封止部38は、例えば溶着や接着によって形成される。膜体36a,36bは十分に薄く、内部に保持されているメッシュ30の熱を外部に放散させることができる。膜体36a,36bの厚みは、材質にもよるが概ね0.2~0.3mm程度である。
【0024】
封止部38には放熱部品10を固定するためのビス孔38aが形成されている。放熱部品はビス孔38aを挿通するビスによって所定のボス部に固定される。ビス孔38aの周囲には補強用のビス座やワッシャを設けてもよい。放熱部品10の固定手段としては粘着テープなどを用いてもよい。メッシュ30は、封止部38の内周縁にほぼ沿いながらビス孔38aを避けるような形状となっている。
【0025】
図5は、GPU14と、該GPU14のダイ24に対して適用した放熱部品10との模式断面側面図である。第1膜体36aには矩形(図3参照)の開口40が形成されている。開口40はダイ24に対応した位置に形成されており(図1参照)、該ダイ24の面積よりやや大きい。放熱部品10は第1膜体36aと第2膜体36bとが封止部38によって封止されているが、開口40が形成されていることから内部は完全な密閉状態ではない。
【0026】
メッシュ30は開口40およびその周辺部が第1層42aと第2層42bとの2層構造となっている。第1層42aは封止部38(図3参照)の内周縁にほぼ沿う広い面積を有する。第2層42bは開口40よりやや大きい程度であり、第1層42aと比較するとかなり小さくなっている。ただし、設計条件により第2層42bをさらに大きくしてもよい。
【0027】
第2層42bのほぼ全面は開口40から露呈してダイ24の表面に当接する。第1膜体36aにおける開口40の周辺部36aaは第2層42bの縁と重なっている。つまり、第1層42aおよび第2層42bは、周辺部36aaと第2膜体36bとによって層状に保持されている。第1層42aおよび第2層42bにはそれぞれ液体金属32が含浸されており、両者間には基本的に空隙が存在していない。ただし、液体金属32の含浸工程の都合等の理由により僅かな空隙が生じても構わない。第1層42aと第2層42bとは、特に固定されることなく第1膜体36aと第2膜体36bとによって層状に保持されているが、設計条件によっては両者間の一部を溶接や接着などにより固定してもよい。
【0028】
メッシュ30は、開口40で露呈されてダイ24に当接する露呈部分30aの面積よりもそれ以外の部分の面積が相当に大きく、ダイ24の熱を広範囲に拡散させて放熱・冷却することができる。露呈部分30aは第1層42aと第2層42bの2層構造となっていることから液体金属32が比較的多量に含浸されており熱容量が大きく、ダイ24から吸熱しやすい。メッシュ30は露呈部分30aを有するが、含浸された液体金属32は毛管現象により保持されていることから、ある程度の振動などが加わっても漏れが生じることがない。メッシュ30に含浸された液体金属32は携帯用情報機器12の傾きによって偏在してしまうことがない。
【0029】
液体金属32は基本的にキャパシタ28に触れることがないが、該キャパシタ28は絶縁材34で覆うと一層信頼性が向上する。また、液体金属32は基本的に基板26に実装された他の電気部品に触れることがないがサブストレート22の四周と放熱部品10との間を弾性材44で仕切ることによりさらに信頼性が向上する。弾性材44は、例えばスポンジである。設計条件により絶縁材34および弾性材44は省略してもよい。
【0030】
このように構成される放熱部品10および携帯用情報機器12によれば、液体金属32によりダイ24の熱を効果的に吸熱して拡散および冷却することができ、該液体金属32はメッシュ30に含浸されていることから漏れが生じることがない。
【0031】
本実施の形態に係る放熱部品10では露呈部分30aが直接的にダイ24に当接することから、TIMを介在させる場合と比較して熱抵抗を低減させることができる。放熱部品10はTIMを兼ねていることから、部品点数が低減するとともに組み立てが容易となる。
【0032】
メッシュ30の厚みを0.025~0.05mm程度とし、膜体36a,36bの厚みを0.2~0.3mm程度とすると、放熱部品10は合計厚みを0.1mm程度に実現することができるため、メッシュ30は十分な可撓性がある。そのため、メッシュ30は携帯用情報機器12の筐体内でのレイアウト自由度が高く、他の構成要素との干渉を回避して広い範囲に亘って設けることができる。放熱部品10は薄いため狭い隙間にも配置可能である。放熱部品10はメッシュ30を含んでいることから適度な強度を有する。
【0033】
従来技術にかかる放熱部品としては、例えばベーパーチャンバ、および銅板やグラファイトシートなどのヒートスプレッダが挙げられる。これらは基本的に発熱体との間にTIM材を介して熱接続されるため熱抵抗が生じ得る。また、ベーパーチャンバおよび銅板は熱伝達性に優れるが可撓性がないため、本実施の形態に係る放熱部品10と比較してレイアウトの自由度が低い。グラファイトシートは可撓性に優れるが、本実施の形態に係る放熱部品10と比較して熱容量が劣る。すなわち、放熱部品10は従来技術にかかる放熱部品と比較して可撓性、熱容量および熱伝達性に優れている。
【0034】
図6は、放熱部品10を備える携帯用情報機器12の模式断面側面図である。ここで例示する携帯用情報機器12はいわゆるフォルダブル式であり、ヒンジ機構46を介して折り畳み可能に接続された第1筐体48aと第2筐体48bとを有するものである。携帯用情報機器12は第1筐体48aと第2筐体48bとの間に亘るディスプレイ50を有する。ディスプレイ50は有機ELなどであって柔軟であり、第1筐体48aと第2筐体48bとが相対的に回動することに応じて折り曲げられる。図6は、携帯用情報機器12の折り畳み状態を示しているが、矢印で示すように第1筐体48aと第2筐体48bとを開くことにより平面状となる。放熱部品10は可撓性を有することから、このようなフォルダブル式の携帯用情報機器12において第1筐体48aと第2筐体48bとに亘って設けることができ、広い面積を確保することができる。これにより、GPU14は効果的に放熱され冷却される。また、第1筐体48aと第2筐体48bとが放熱部品10を介して熱的につながり温度が均一化される。
【0035】
次に、放熱部品10の変形例について説明する。各変形例については放熱部品10と同様の構成要素について同符号を付して詳細な説明を省略する。変形例同士についても同様とする。
【0036】
図7は、第1変形例に係る放熱部品10Aの模式断面側面図である。放熱部品10Aのメッシュ30は上記の放熱部品10における第1層42a、第2層42bに代えて4枚の第1層52a、第2層52b、第3層52c、第4層52dを有している。第4層52dは上記の第2層42bと同様に開口40から露呈する露呈部分30aを形成してダイ24に当接する。層52a~52cは上記の1枚の第1層42aを3枚に置き換えたものであるが、面積は第1層42aより小さく、ダイ24および第4層52dよりやや大きい程度となっている。
【0037】
このような放熱部品10Aでは、メッシュ30の面積は比較的小さいが多層構造によってある程度の体積をしており、各層52a~52dには液体金属32が含浸されていることから大きい熱容量が確保され、ダイ24の熱を効果的に吸熱することができる。
【0038】
図8は、第2変形例に係る放熱部品10Bの模式断面側面図である。放熱部品10Bでは、第2膜体36bにおける開口40と対向する位置に開口54が形成されており、第1層42aは開口54から露呈部分30bが露呈する。露呈部分30bには他の放熱部品56が当接する。つまり、開口40が熱の入力側であるのに対し、開口54は熱の出力側に相当する。他の放熱部品56は、例えばヒートパイプ、ベーパーチャンバ、グラファイトシート、ヒートシンクなどである。
【0039】
このように、放熱部品10Bでは開口が複数個所に形成されており、ダイ24が当接する開口40以外の開口54には、他の放熱部品56を当接させている。これにより、放熱部品10Bは他の放熱部品56と組み合わせて使用することができ、一層効果的な放熱が可能となる。また、開口54は開口40と対向する箇所を含むように形成することで、他の放熱部品56は発熱体であるダイ24に対して第1層42a、第2層42bの厚み分だけを介して近接して接続されることになり、熱抵抗が少ない。
【0040】
図9は、第3変形例に係る放熱部品10Cの模式断面側面図である。放熱部品10Cでは第2膜体36bに上記の放熱部品10Bと同様の開口54が形成されているが、放熱部品10Bの場合と異なり開口40からは離れた位置に形成されている。開口54から露呈する露呈部分30bには他の放熱部品56が当接する。
【0041】
このように、他の放熱部品56がレイアウトなどの都合により開口40から離れた位置にある場合にも、その位置に合わせて開口54を形成することにより、メッシュ30を介してダイ24の熱を他の放熱部品56まで熱輸送することができる。また、ダイ24と他の放熱部品56がある程度離れていて、その間に何らかの構成部品58(例えば基板26に実装されたチョークコイルなどの大きい部品)が存在する場合にも、放熱部品10Cは可撓性があることから該構成部品58を回避するように配設することが可能である。さらに、図示を省略するが他の放熱部品56と当接させるための開口54は第1膜体36aに設けてもよい。
【0042】
図10は、第4変形例に係る放熱部品10Dの模式断面側面図である。放熱部品10Dでは、第1膜体36aにおける開口40とは異なる位置に開口60が形成されており、第2層42bは開口60から露呈部分30cが露呈する。露呈部分30cには他の発熱体62が当接する。つまり、開口60は開口40と同様で熱の入力側に相当する。このように、適用される電子機器内で発熱する電気部品が複数設けられている場合には、開口40,60はこれらの複数の電気部品に対応した複数個所に形成するとよい。
【0043】
発熱体62は、例えば基板26に実装されたCPUである。放熱部品10Dは可撓性を有することから、GPU14のダイ24と他の発熱体62との高さや当接面角度が異なる場合であっても適用が可能である。また、図示を省略するが他の発熱体62と当接させるための開口60は第2膜体36bに設けてもよい。つまり、本実施の形態に係る放熱部品では、メッシュ30を発熱する電気部品と当接させるための開口40,60が第1膜体36aおよび第2膜体36bの少なくとも一方に形成される。なお、他の発熱体62は基板26に実装されるものに限られない。
【0044】
図11は、第5変形例に係る放熱部品10Eの模式断面側面図である。放熱部品10Eではメッシュ30が単層構造となっている。つまり、上記の放熱部品10ではメッシュ30が第1層42aと第2層42bとを有していたのに対して、面積の小さい第2層42bを省略して第1層42aのみで構成されている。そして、第1層42aが開口40からの露呈部分30aを形成する。このような放熱部品10Eはメッシュ30が単層構造であって上記の放熱部品10よりも簡便構成となる。
【0045】
上記の放熱部品10,10A~10Eの構造は互いに組み合わせて用いてもよく、例えば、放熱部品10A~10Dにおける複数層のメッシュ30を放熱部品10Eのように単層としてもよい。メッシュ30は、一部に液溜め用の孔を設けたり、または一部に金属板を入れるなど複合的構造としてもよい。第1膜体36aと第2膜体36bとは外周部の封止部38以外の箇所でメッシュ30に形成した孔を介して補助的に溶着・接着してもよい。
【0046】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10,10A,10B,10C,10D,10E 放熱部品
12 携帯用情報機器(電子機器)
14 GPU(電気部品)
22 サブストレート
24 ダイ(電気部品)
26 基板
30 メッシュ
30a,30b,30c 露呈部分
32 液体金属
36a 第1膜体
36b 第2膜体
38 封止部
40,54,60 開口
42a 第1層
42b 第2層
56 他の放熱部品
62 発熱体(電気部品)
【要約】
【課題】液体金属の漏れが生じることがなく、しかも電気部品との間の熱抵抗を低減させることのできる放熱部品を提供する。
【解決手段】放熱部品10は発熱するGPU14を放熱させるものであり、液体金属32が含浸されたメッシュ30と、メッシュ30の両面を覆い、周囲が封止された2枚の膜体36a,36bとを有する。膜体36aには開口40が形成されており、メッシュ30は開口40で露呈された露呈部分30aがGPU14におけるダイ24の表面に当接する。メッシュ30は開口40で露呈する部分が第1層42aと第2層42bとの2層で構成されている。メッシュ30は、開口40で露呈される露呈部分30aの面積よりもそれ以外の部分の面積が大きい。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11