(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】検査システム、検査方法、プログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 33/569 20060101AFI20230529BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230529BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230529BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
G01N33/569 B
G01N33/53 Y
G01N21/64 F
C12M1/34 A
G01N33/569 G
(21)【出願番号】P 2022524067
(86)(22)【出願日】2022-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2022003467
(87)【国際公開番号】W WO2022163845
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021014047
(32)【優先日】2021-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515052682
【氏名又は名称】株式会社バランス・イースト
(73)【特許権者】
【識別番号】521046608
【氏名又は名称】能登 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】徳田 美幸
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511691(JP,A)
【文献】特表2015-505248(JP,A)
【文献】特表2017-506912(JP,A)
【文献】特表2008-541022(JP,A)
【文献】特表2011-515656(JP,A)
【文献】特表2018-514193(JP,A)
【文献】特開平07-258296(JP,A)
【文献】特開昭57-103055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 21/62-21/74
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の検査を行うための検査方法であって、
所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と、前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有するとともに、
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とが反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うステップとすることを特徴とする検査方法。
【請求項2】
微生物の検査を行うための検査方法であって、
所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と、前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有するとともに、
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とが反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うステップとするとともに、前記標的とする微生物と前記抗体とを反応させた後の前記検体において前記標的とする微生物に蛍光を生じさせず、前記標的とする微生物以外の他の微生物に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うステップとすることを特徴とする検査方法。
【請求項3】
微生物の検査を行うための検査方法であって、
所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と、前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有するとともに、
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とが反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うステップとするとともに、前記抗体は、前記標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに前記標的とする微生物に蛍光を生じさせない抗体とすることを特徴とする検査方法。
【請求項4】
微生物の検査を行うための検査方法であって、
所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と、前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有するとともに、
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とが反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うステップとするとともに、
所定の試薬を用いた蛍光染色により、前記検体における微生物を蛍光させる蛍光処理を行い、前記試薬は、前記抗体により前記標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに前記標的とする微生物に蛍光を生じさせない試薬とすることを特徴とす
る検査方法。
【請求項5】
前記試薬は、フルオレセイン系化合物および/またはプロピディウム系化合物とすることを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記試薬は、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
【請求項7】
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか一方と前記抗体とを反応させた後の前記検体において前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか一方に蛍光を生じさせず、前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか他方に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うステップとすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項8】
微生物の検査を行うための検査方法であって、
所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と、前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有するとともに、
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とが反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うステップとし、
前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体から計数した微生物の数から前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体から計数した微生物の数を差し引くことにより前記標的とする微生物の数を計数する工程を有することを特徴とする検査方法。
【請求項9】
前記計数された前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数と前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数とを比較し、前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数に対して前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数が減少したときに、前記標的とする微生物が前記抗体反応を生じたとみなして前記標的とする微生物の種類を特定する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の検査方法。
【請求項10】
微生物の検査を行うための検査方法であって、
所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と、前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有するとともに、
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とが反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うステップとし、
前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体の画像から計数した微生物の数から前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体の画像から計数した微生物の数を差し引くことにより前記標的とする微生物の数を計数する工程を有することを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査システム、検査方法、プログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に関し、特に微生物を検査するための検査システム、検査方法、プログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
過去より食品の微生物管理は、トータルの品質管理の中でも中心的ファクターとなっている。食品衛生法でも、食品や食材事に一般細菌数と大腸菌数等の微生物数は基準値として定められている。よって各種食品関連事業所では日々、食品や、食材からサンプルを抜き取り、一般細菌数と大腸菌数等の微生物数の検査を行っている。食品の細菌数等を検査する技術は、例えば特許文献1に開示される技術を参照することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査の現状は国が定める培養法に頼らざるを得ない状況で48時間の時間と、それに伴い膨大なコストが計上されている。自社検査体制が無い企業は、検査をすべて外部依頼している。しかしながら、これら検査体制は大きな問題を抱えている。それは、検査に要する時間である。食品の大半は、鮮度が重要で有るため、製造後はすぐに出荷される。つまり当日の生産品の微生物検査結果は48時間の判定であるにもかかわらず、検査結果が出る前に、出荷され食されてしまうのである。万一、先に出荷された食品の微生物汚染により食中毒が発生したとしても、原因があとから分かると言う事である。この問題は、世界的にも共通のテーマとなっている。求められているニーズは、検査結果が出てから安心して出荷出来る事である。近年、培養法以外の簡易判定キットも各種販売はされているものの、2時間以上は、かかる上、簡易で有るため精度に問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、迅速にかつ精度よく微生物の検査を行うことができる検査システム、検査方法、プログラム、およびコンピュータが読み取り可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る測定装置は、微生物の検査を行うための検査システムであって、所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体とを反応させた前記検体の蛍光処理を行う蛍光処理部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体とを反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理部を有することとしたので、検体における微生物のうち標的とする微生物と抗体とを反応させて検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行うことにより、検体において標的とする微生物を蛍光させずに他の微生物を蛍光させる等、標的とする微生物を他の微生物と区別することが可能となる。これにより、培養法によらず標的とする微生物の検査を行うことができる等、迅速な微生物の検査を行うことができる。また、抗体は、標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体とすることとしたので、標的とする微生物と確実に反応させることができ、標的とする微生物の蛍光を確実に抑制して精度よく微生物の検査を行うことができる。
【0008】
前記蛍光処理部は、更に前記標的とする微生物と前記抗体が反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うこととすれば、標的とする微生物が抗体反応する前の検体において標的とする微生物も含めて蛍光させることができ、標的とする微生物の抗体反応の前後における変化を把握することが可能となる。
前記蛍光処理部は、更に前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか一方と前記抗体とを反応させた後の前記検体において前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか一方に蛍光を生じさせず、前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか他方に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うこととすれば、標的とする微生物が抗体反応した後の検体において標的とする微生物および標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか一方に蛍光を生じさせず、標的とする微生物および標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか他方に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うことができ、標的とする微生物の抗体反応の前後における変化を把握することが可能となる。
【0009】
前記蛍光処理部は、更に前記標的とする微生物と前記抗体とを反応させた後の前記検体において前記標的とする微生物に蛍光を生じさせず、前記標的とする微生物以外の他の微生物に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うこととすれば、標的とする微生物が抗体反応した後の検体において標的とする微生物に蛍光を生じさせないこととすることができ、標的とする微生物の抗体反応の前後における変化を把握することが可能となる。
【0010】
前記抗体は、前記標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに前記標的とする微生物に蛍光を生じさせない抗体とすることとすれば、標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物に蛍光を生じさせないこととすることができる。
前記蛍光処理部は、所定の試薬を用いた蛍光染色により、前記検体における微生物を蛍光させる蛍光処理を行い、前記試薬は、前記抗体により前記標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに前記標的とする微生物に蛍光を生じさせない試薬とすることとすれば、標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物に蛍光を生じさせないこととすることができる。
前記試薬は、フルオレセイン系化合物および/またはプロピディウム系化合物とすることができる。より詳しくは、前記試薬は、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることが好ましい。
【0011】
前記蛍光した検体の画像処理を行う画像処理部を有することとすれば、標的とする微生物の抗体反応後における変化を画像により把握することが可能となる。
前記標的とする微生物と前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体の画像処理および前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体の画像処理を行う画像処理部を有することとすれば、標的とする微生物の抗体反応の前後における変化を画像により把握することが可能となる。
【0012】
前記画像処理部は、前記蛍光した検体の画像が前記微生物の基準となるデータの範囲に含まれるか否かを判断して、前記蛍光した検体の画像のうち前記微生物の基準となるデータの範囲に含まれる画像を特定することとすれば、標的とする微生物の抗体反応後における微生物以外の異物が除かれた微生物の画像を抽出することができ、更に精度よく微生物の検査を行うことができる。
【0013】
前記画像処理部は、前記微生物の基準となるデータと前記反応する前の蛍光した検体の画像および前記反応した後の蛍光した検体の画像とを比較して、前記微生物の基準となるデータと対応する前記反応する前の蛍光した検体の画像および前記反応した後の蛍光した検体の画像を特定することとすれば、標的とする微生物の抗体反応の前後における微生物以外の異物が除かれた微生物の画像を抽出することができ、更に精度よく微生物の検査を行うことができる。
前記微生物の基準となるデータは、前記標的とする微生物の基準となるデータを含むこととすれば、微生物のうち標的とする微生物以外の微生物を除くことができ更に精度よく微生物の検査を行うことができる。
【0014】
前記標的とする微生物の数を計数する標的微生物数計数部を有することとすれば、より詳しくは、前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体および前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体から前記標的とする微生物の数を計数する標的微生物数計数部を有することとすれば、標的とする微生物の数を計数することができる。
前記標的微生物数計数部は、前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体から計数した微生物の数から前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体から計数した微生物の数を差し引くことにより前記標的とする微生物の数を計数することができる。
より詳しくは、前記標的微生物数計数部は、前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体の画像および前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体の画像から前記標的とする微生物の数を計数することができる。
前記標的微生物数計数部は、例えば、前記画像処理部により画像処理された前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体の画像から計数した微生物の数から前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体の画像から計数した微生物の数を差し引くことにより標的とする微生物の数を計数することができる。
【0015】
前記標的とする微生物の種類を特定する標的微生物特定部を有することとすれば、標的とする微生物の種類を特定することができる。
より詳しくは、前記標的微生物数計数部により計数された前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数と前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数とを比較し、前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数に対して前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体における前記標的とする微生物の数が減少したときに、前記標的とする微生物が前記抗体反応を生じたとみなして前記標的とする微生物の種類を特定する標的微生物特定部を有することができる。
【0016】
前記標的微生物特定部は、前記標的微生物数計数部により計数された前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体の画像における前記標的とする微生物の数と前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体の画像における前記標的とする微生物の数とを比較し、前記抗体が反応する前の前記蛍光した検体の画像における前記標的とする微生物の数に対し前記標的とする微生物と前記抗体とが反応した後の前記蛍光した検体の画像における前記標的とする微生物の数が減少したときに、前記標的とする微生物が前記抗体反応を生じたとみなして前記標的とする微生物の種類を特定することができる。
【0017】
所定のレンズを有する画像撮影部を有し、前記画像撮影部は、前記所定のレンズを介して前記検体の画像を撮影することができる。
前記画像撮影部は、倍率の異なる複数の前記レンズを有し、前記倍率の異なる複数のレンズの選定および/または組み合わせを変更することにより、前記レンズの倍率を所定に変更する構成とすることとすれば、画像の倍率を適宜に変更することができる。
【0018】
前記検体を載置するための所定のステージを有するとともに、前記ステージの位置を制御する位置制御部を有し、前記位置制御部は、前記ステージの位置を制御することにより、前記画像撮影部における焦点位置を制御することとすれば、焦点位置を制御することができる。
【0019】
前記位置制御部は、前記蛍光した検体の位置を変更して行うとともに、前記画像処理部は、前記蛍光した検体の画像を複数撮影し、該複数撮影した画像を集計して画像処理を行うこととすれば、検体において標的とする微生物の濃度に斑がある場合にあっても、測定精度が低下することを抑制することができる。
【0020】
前記蛍光処理部は、所定の試薬を用いた蛍光染色により前記検体における標的とする微生物の前記蛍光処理を行うこととすれば、標的とする微生物を染色して他の微生物と確実に区別することができる。
【0021】
前記標的とする微生物は、細菌およびウィルスのうち少なくともいずれかを含むこととし、前記細菌の検査を行う細菌検査モードおよび前記ウィルスの検査を行うウィルス検査モードの少なくともいずれかのモードを有することとすれば、細菌の検査およびウィルスの検査の少なくともいずれかを行うことができる。
【0022】
前記蛍光処理部は、光の波長の範囲を所定の範囲に制限するバンドパスフィルタを有することとすれば、標的とする微生物を更に精度よく検査することができる。
所定の濾材を用いて、前記検体の濾過を行い、前記検体から異物を除去する濾過部を有することとすれば、検体から異物が除去されて標的とする微生物を更に精度よく検査することができる。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明に係る測定方法は、微生物の検査を行うための検査方法であって、所定の検体における微生物のうち標的とする微生物と、前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた前記検体を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有することを特徴とする。
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とが反応する前の前記検体を蛍光させる蛍光処理を行うステップとすることができる。
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか一方と前記抗体とを反応させた後の前記検体において前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか一方に蛍光を生じさせず、前記標的とする微生物および前記標的とする微生物以外の他の微生物のいずれか他方に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うステップとすることができる。
前記蛍光処理ステップは、更に前記標的とする微生物と前記抗体とを反応させた後の前記検体において前記標的とする微生物に蛍光を生じさせず、前記標的とする微生物以外の他の微生物に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うステップとすることができる。
【0024】
前記抗体は、前記標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに前記標的とする微生物に蛍光を生じさせない抗体とすることができる。
前記蛍光処理ステップは、所定の試薬を用いた蛍光染色により、前記検体における微生物を蛍光させる蛍光処理を行い、前記試薬は、前記抗体により前記標的とする微生物に抗体反応を生じさせたときに前記標的とする微生物に蛍光を生じさせない試薬とすることができる。
前記試薬は、フルオレセイン系化合物および/またはプロピディウム系化合物とすることができる。
前記試薬は、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることができる。
【0025】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、微生物の検査を行うための検査システムのコンピュータを、所定の検体における標的とする微生物と前記標的とする微生物と抗体反応を生じる抗体とを反応させた前記検体の蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理部として機能させることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るコンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、上記プログラムを記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、迅速にかつ精度よく微生物の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る検体の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る検査システムの全体構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る検査システムの全体構成を示す別の図である。
【
図4】同検査システムのコンピュータの構成を示す図である。
【
図5】同検体から異物を除去した状態を模式的に示す図である。
【
図6】同検体と抗体が反応した状態を模式的に示す図である。
【
図7】同検査システムの蛍光処理部および画像撮影部の構成を示す図である。
【
図8】抗体反応する前の検体の画像を示す図である。
【
図9】抗体反応した後の検体の画像を示す図である。
【
図10】本発明の検査方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る検体の構成を模式的に示す図、
図2は、本発明の実施形態に係る検査システムの全体構成を示す図、
図3は、本発明の実施形態に係る検査システムの全体構成を示す別の図、
図4は、同検査システムのコンピュータの構成を示す図、
図5は、同検体から異物を除去した状態を模式的に示す図、
図6は、同検体と抗体が反応した状態を模式的に示す図、
図7は、同検査システムの蛍光処理部および画像撮影部の構成を示す図、
図8は、抗体反応する前の検体の画像を示す図、
図9は、抗体反応した後の検体の画像を示す図である。
【0029】
本発明の検査システム1の概要を説明すると、検査システム1は、
図1に示す所定の検体100(検査対象となるサンプル100)における微生物101のうち標的とする微生物102の測定を行うための装置である。標的とする微生物102は、例えば、細菌およびウィルスを含むことができ、細菌は、一般細菌や大腸菌等、各種の細菌を含むことができ、ウィルスはインフルエンザウィルスやコロナウィルス等、各種のウィルスを含むことができる。検査システム1は、
図2に示すように、濾過部10、蛍光処理部20、画像撮影部30、位置制御部40、画像処理部50、基準データ記憶部60、標的微生物数計数部70、標的微生物特定部80を有している。検査システム1は、
図3に示すように、細菌の検査を行うための細菌検査モード2およびウィルスの検査を行うためのウィルス検査モード3を有している。
【0030】
検査システム1は、コンピュータとしての一般的構成を備えており、
図4に示すように、相互にバス1Aを介して接続された中央処理装置(CPU、GPU、DSP)1B、記憶装置(ROM、RAM、ハードディスク、キャッシュメモリ)1C、入力装置(キーボード、タッチパネル、マウス)1D、表示装置(液晶ディスプレー)1E等を有している。記憶装置1Cは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体として機能する。各機能部10,20,30,40,50,60,70,80は、検査システム1のコンピュータの機能により相互に信号情報の生成や入出力を行うことができる。
【0031】
濾過部10は、所定の濾過フィルタを有している。すなわち、濾過部10は、濾過フィルタを用いて、検体100の濾過を行い、
図5に示すように検体100から異物100´を除去することができる。濾過フィルタは、シリジンフィルタとすることができる。
【0032】
蛍光処理部20は、検体100における微生物101を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行うことができる。すなわち、蛍光処理部20は、標的とする微生物102と所定の抗体110とが反応する前の検体100を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行うことができる。また、蛍光処理部20は、
図6に示すように、標的とする微生物102と所定の抗体110とを反応させた後の検体100を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行うことができる。より詳しくは、蛍光処理部20は、標的とする微生物102と抗体110とを反応させた後の検体100において所定の波長で標的とする微生物102に蛍光を生じさせず、標的とする微生物102以外の他の微生物103に蛍光を生じさせる蛍光処理を行う構成とすることができる。
【0033】
ここで、抗体(例えば、免疫グロブリン)110とは、リンパ球のうちB細胞の産生する糖タンパク分子で、特定のタンパク質などの分子(抗原)を認識して結合する働きをもつ。抗体110は主に血液中や体液中に存在し、例えば、体内に侵入してきた細菌やウィルス、微生物に感染した細胞を抗原として認識して結合する。抗体110が抗原へ結合すると、その抗原と抗体110の複合体を白血球やマイクロファージといった食細胞が認識・貧食して体内から除去するように働いたり、リンパ球などの免疫細胞が結合して免疫反応を引き起こしたりするものである。
【0034】
また、本発明の所定の抗体110は、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせる抗体である。また、所定の抗体110は、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに所定の波長において標的とする微生物102に蛍光を生じさせない抗体である。このような抗体110を用いて標的とする微生物102に抗体反応を生じさせることにより、蛍光処理において蛍光しない標的とする微生物102を蛍光する他の微生物103と区別することが可能となる。すなわち、このような抗体110を用いることで、上述したように、蛍光処理部20は、標的とする微生物102と抗体110とを反応させた後の検体100において所定の波長で標的とする微生物102に蛍光を生じさせず、標的とする微生物102以外の他の微生物103に蛍光を生じさせる蛍光処理を行う構成とすることができる。抗体110が、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせる抗体であり、かつ、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに所定の波長において標的とする微生物102に蛍光を生じさせない抗体であるか否かは予め各種の試験により確認される。
【0035】
ここで、例えば、標的とする微生物102を大腸菌とし、抗体110を大腸菌に抗体反応を生じさせる抗体としたときは、検体100において標的とする微生物102である大腸菌を蛍光させないようにすることができる。すなわち、抗体反応する前の検体100を蛍光させる蛍光処理により大腸菌を含めた細菌の蛍光を行うことができるとともに、抗体反応した後の検体100を蛍光させる蛍光処理により大腸菌を除いた細菌の蛍光を行うことができる。
【0036】
これにより、抗体反応する前の細菌数から抗体反応した後の細菌数を差し引く(減算する)ことで大腸菌の数を把握することができる等、標的とする微生物102の種類ごとに微生物102の数を把握することができる。抗体110は、大腸菌に抗体反応を生じさせる抗体の他、一般細菌に抗体反応を生じさせる抗体、インフルエンザウィルスに抗体反応を生じさせる抗体、コロナウィルスに抗体反応を生じさせる抗体等、各種の抗体を用いることができる。
【0037】
また、蛍光処理部20は、所定の試薬を用いた蛍光染色により、抗体反応する前の検体100における微生物101を蛍光させる蛍光処理および抗体反応した後の検体100における微生物101を蛍光させる蛍光処理を行うことができる。この試薬は、抗体110により標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに所定の波長で標的とする微生物102に蛍光を生じさせない試薬とすることができる。すなわち、蛍光処理部20は、所定の試薬を用いた蛍光染色により、所定の波長で検体100における微生物101を蛍光させる蛍光処理を行い、試薬は、抗体110により標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに所定の波長で標的とする微生物102に蛍光を生じさせない試薬とする構成とすることができる。これにより、蛍光処理を効率よく行うことができる。蛍光染色に用いる試薬は、フルオレセイン系化合物および/またはプロピディウム系化合物とすることができる。より詳しくは、蛍光染色に用いる試薬は、FDA (Fluorescein Diacetate、フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(Propidium Iodide、プロピディウムイオダイド)とすることができる。本発明者により、FDA (Fluorescein Diacetate、フルオレセイン・ジアセテート)およびPI(Propidium Iodide、プロピディウムイオダイド)が抗体110により標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに所定の波長で標的とする微生物102に蛍光を生じさせない試薬であることが明らかとされている。
【0038】
FDAは、細胞内のエステラーゼを蛍光染色させることができ512nm前後の波長の蛍光染色に特に有効となる。また、PIは、核酸を蛍光染色させることができ620nm前後の波長の蛍光染色に特に有効となる。細菌は、FDAを用いて512nm前後の波長の蛍光染色を行い、ウィルスは、エンベローブのあるものは、FDAを用いて512nm前後の波長の蛍光染色を行い、エンベローブのないものは、PIを用いて620nm前後の波長の蛍光染色を行う。これらの波長についても、本発明者により、抗体110により標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに上記の試薬を用いたときに標的とする微生物102に蛍光を生じさせない波長であることが明らかとされている。
【0039】
ここで、蛍光処理部20は、
図7に示すように、励起光照射部21および波長測定部22を有している。励起光照射部21は、検体100に所定の波長の励起光を照射することができる。波長測定部22は、励起光を吸収した検体100からの蛍光の波長を測定することができる。より詳しくは、蛍光処理部20は、抗体反応する前の検体100からの蛍光の波長および抗体反応した後の検体100からの蛍光の波長を測定することができる。例えば、励起光照射部21により照射される光は、488nm、波長測定部22により測定される波長は、細菌検査モード2では512nm前後、ウィルス検査モード3では512nm前後または620nm前後となる。
【0040】
蛍光処理部20は、更に光の波長の範囲を所定の範囲に制限するバンドパスフィルタ23を有している。すなわち、バンドパスフィルタ23は、励起光照射部21により検体100に照射される励起光の波長の範囲、波長測定部22により測定される抗体反応する前の検体100からの蛍光の波長の範囲および抗体反応した後の検体100からの蛍光の波長の範囲をそれぞれ所定の範囲に制限することができる。例えば、励起光照射部21により照射される光は、バンドパスフィルタ23により488±10nm、波長測定部22により測定される波長は、バンドパスフィルタ23により細菌検査モード2では512±10nm、ウィルス検査モード3では512±10nmまたは620±10nmにそれぞれ制限される。
【0041】
画像撮影部30は、
図7に示すように、所定のレンズより詳しくは光学レンズ31と撮影装置32を有している。画像撮影部30は、所定の光学レンズ31と撮影装置32を介して蛍光点を含む検体100の画像を拡大して撮影することができる。
【0042】
画像撮影部30は、倍率の異なる複数の光学レンズ31を有している。すなわち、画像撮影部30は、倍率の異なる複数の光学レンズ31の選定および/または組み合わせを変更することにより、光学レンズ31の倍率を所定に変更することができる。光学レンズ31は、光を屈折させて発散または収束させるための光学素子であり、凸レンズおよび/または凹レンズを用いることができる。撮影装置32は、CCDカメラやCMOSカメラの機能を有しており、検体100の画像を撮影することができる。標的とする微生物102が細菌である場合は、細菌のサイズが1~5μm程度であるため、細菌検査モード2では倍率を5倍以上、標的とする微生物102がウィルスである場合は、ウィルスのサイズが0.1μm程度であるため、ウィルス検査モード3では倍率を50倍以上に設定して画像の撮影を行う。なお、画像の倍率は、検査システム1の有するCPU等のコンピュータの機能により任意に設定することとしてもよい。
【0043】
画像撮影部30は、所定のステージ33(検体100を載置する載置台33)に検体100を載置して蛍光した検体100の画像の撮影を行うことができる。すなわち、画像撮影部30は、微生物101を含む異物100´を捕捉したメンブレンフィルタAの表面の撮影を行う第1の撮影および検体100を直接滴下したスライドガラスBの表面の撮影を行う第2の撮影を行うことができる(第2の撮影は、スライドガラスB上にカバーガラスを載置して行う)。第1の撮影および第2の撮影は、メンブレンフィルタAおよびスライドガラスBをステージ33上に載置して行うことができる。
【0044】
位置制御部40は、検体100を載置するためのステージ33の位置を制御することができる。位置制御部40は、ステージ33の位置を上下方向および水平方向に移動制御することができる。位置制御部40は、ステージ33の位置を上下方向に移動制御することにより、画像撮影部30における焦点位置を制御することができる。すなわち、位置制御部40は、例えば、第1の撮影および第2の撮影における焦点位置がメンブレンフィルタAの表面位置およびスライドガラスBの表面位置となるようにステージ33の位置を上下方向に移動制御することができる。
【0045】
また、位置制御部40は、抗体反応する前の蛍光した検体100の位置および抗体反応した後の蛍光した検体100の位置を水平方向に変更することができる。上記した画像撮影部30は、位置制御部40により検体100の位置を水平方向に変更しつつ、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像および抗体反応した後の蛍光した検体100の画像を複数撮影することができる。
【0046】
画像処理部50は、画像撮影部30により撮影された蛍光した検体100の画像処理を行うことができる。すなわち、画像処理部30は、標的とする微生物102と抗体110が抗体反応する前の蛍光した検体100の画像処理および標的とする微生物102と抗体110とが抗体反応した後の蛍光した検体100の画像処理を行うことができる。
【0047】
また、画像処理部50は、微生物101の基準となるデータに基づいて画像処理を行うことができる。すなわち、画像処理部50は、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像および抗体反応した後の蛍光した検体100の画像が微生物101の基準となるデータの範囲に含まれるか否かを判断して、
図8および
図9に示すように、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像のうち微生物101の基準となるデータの範囲に含まれる画像部分104aおよび抗体反応した後の蛍光した検体100の画像のうち微生物101の基準となるデータの範囲に含まれる画像部分104bを特定する。また、画像処理部50は、前記特定した画像部分104a,104bを抽出することができる。
【0048】
つまり、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像から特定され抽出された画像部分104aには、
図8に示すように、標的とする微生物102の画像および他の微生物103の画像が含まれるのに対して、抗体反応した後の蛍光した検体100の画像から特定され抽出された画像部分104bには、
図9に示すように、標的とする微生物102は抗体と抗体反応を生じるため含まれず、他の微生物103の画像のみが含まれることとなる。
【0049】
したがって、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像から特定され抽出された画像部分104aから微生物101の数N1を計数するとともに、抗体反応した後の蛍光した検体100の画像から特定され抽出された画像部分104bから微生物101の数N2を計数し、数式1に示すように、画像部分104aから計数された微生物101の数N1から画像部分104bから計数された微生物101の数N2を差し引く(減算する)ことにより標的とする微生物102の数Nを計数することができる。
[数式1]
N=N1-N2
【0050】
ここで、微生物101の基準となるデータは、画像処理部50により標的とする微生物102および他の微生物103のいずれも抽出されるように標的とする微生物102のデータおよび他の微生物103のデータのいずれも含んで設定される。
【0051】
すなわち、微生物101の基準となるデータは、標的とする微生物102および他の微生物103の大きさ、標的とする微生物102および他の微生物103の形状、標的とする微生物102および他の微生物103の蛍光の濃淡の少なくともいずれかをファクターとしており、画像処理部50は、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像および抗体反応した後の蛍光した検体100の画像から基準となるデータと対応する大きさや形状の微生物102,103の画像、基準となるデータと対応する濃淡を有する微生物102,103の蛍光部分の画像を特定して抽出することができる。基準となるデータは、例えば一般細菌のデータ、大腸菌のデータ、ウィルスのデータ等を含むことができる。
【0052】
更に、画像処理部50は、上記した画像撮影部30により複数撮影された検体100の位置を水平方向に変更した抗体反応する前の蛍光した検体100の画像および抗体反応した後の蛍光した検体100の画像を集計して画像処理を行うことができる。
【0053】
基準データ記憶部60は、微生物101の基準となるデータを記憶することができる。基準となるデータは、上記のように、微生物101,102の大きさ、微生物101,102の形状、および微生物101,102の蛍光の濃淡の少なくともいずれかをファクターとしている。基準となるデータは、例えば一般細菌のデータ、大腸菌のデータ等、各種の細菌のデータを含むことができる。また、基準となるデータは、ウィルスのデータ等を含むことができ、ウィルスのデータはコロナウィルス、インフルエンザウィルスのデータを含むことができる。
【0054】
標的微生物数計数部70は、標的とする微生物102の数を計数することができる。すなわち、標的微生物数計数部70は、画像処理部50により画像処理された抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像および標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像から標的とする微生物102の数Nを計数することができる。
【0055】
つまり、標的微生物数計数部70は、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像から特定され抽出された画像部分104aから微生物101の数N1を計数するとともに、抗体反応した後の蛍光した検体100の画像から特定され抽出された画像部分104bから微生物101の数N2を計数し、数式1に示すように、画像部分104aから計数した微生物101の数N1から画像部分104bから計数した微生物101の数N2を差し引く(減算する)ことにより標的とする微生物102の数Nを計数することができる。
【0056】
なお、標的微生物数計数部70による標的とする微生物102の数の計数は、画像処理部50により画像処理された抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像および標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像に映し出された蛍光点の数に基づいて行われる。
【0057】
標的微生物特定部80は、標的とする微生物102の種類を特定することができる。すなわち、標的微生物特定部80は、標的微生物数計数部70により計数された抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数と標的とする微生物102と抗体とが反応した後の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数とを比較し、抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数に対し標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数が減少したときに、標的とする微生物102が抗体反応を生じたとみなして標的とする微生物102の種類を特定することができる。
【0058】
ここで、上記した検査システム1の各機能部は、所定のプログラム200を実行させることにより機能をさせることができる。
【0059】
すなわち、プログラム200は、検査システム1のコンピュータを、蛍光処理部20、画像撮影部30、位置制御部40、画像処理部50、基準データ記憶部60、標的微生物数計数部70、標的微生物特定部80として機能させることができる。プログラム200は、検査システム1の記憶装置1Cに記憶されている。
【0060】
次に、本発明の検査システム1による検査方法を
図10のフローチャートに基づいて説明する。
まず初めに工程1として、検体100の調整を行う。例えば、綿棒等で食品や手、口、床等の検査対象物を拭き取る。そして、拭き取った綿棒を精製水で洗い流す。次いで、洗い流した精製水を濾過部10により濾過して異物100´を除去して検体100が調整される。調整された検体100は、抗体反応する前と抗体反応させた後でそれぞれ工程2の蛍光処理ステップにおける蛍光処理を行うため同一検体100を少なくとも2本の試験管(例えば1ml)に分けて調整する。続いて、分けて調整した検体100のうち一の検体100に抗体110を入れ抗体反応を生じさせる(分けて調整した検体100のうち他の検体100には抗体110は入れない)。抗体110は、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物102に蛍光を生じさせない抗体110とすることができる。次に、分けて調整した検体100のそれぞれに蛍光染色を行うための試薬を入れる。試薬は、抗体110により標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物102に蛍光を生じさせない試薬とすることができる。試薬は、フルオレセイン系化合物および/またはプロピディウム系化合物とすることができる。より詳しくは、試薬は、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることができる。
【0061】
続いて工程2として、工程1で分けて調整した検体100のそれぞれについて蛍光処理部20により蛍光処理ステップとして蛍光処理を行う。この蛍光処理は、励起光照射部21および波長測定部22の波長を所定に設定して行う。また、バンドパスフィルタ23の波長の範囲を所定に設定して行う。工程2により抗体反応する前の検体100(工程1において抗体110を入れていない他の検体100)および抗体反応した後の検体100(工程1において抗体110を入れて抗体反応を生じさせた検体100)のそれぞれを所定の波長範囲で蛍光させることができる。
【0062】
次に工程3として、画像撮影部30が工程2で蛍光処理された検体100をステージ33上に載置しつつ画像の撮影を行う。画像撮影部30は、倍率を所定に設定しつつ位置制御部40によりステージ33を上下方向に移動して焦点位置を設定する。また、画像撮影部30は、位置制御部40によりステージ33を水平方向に移動して抗体反応する前の蛍光した検体100の画像および抗体反応した後の蛍光した検体100の画像をそれぞれ複数撮影する。この画像撮影部30による撮影は、メンブレンフィルタAの全表面、スライドガラスBの全表面を位置制御部40により走査して行うことが好ましい。
【0063】
次いで工程4として画像処理部50が工程3で撮影された画像の処理を行う。この画像処理は、微生物101の基準となるデータに基づいて行う。すなわち、画像処理部50は、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像および抗体反応した後の蛍光した検体100の画像が微生物101の基準となるデータの範囲に含まれるか否かを判断して、抗体反応する前の蛍光した検体100の画像および抗体反応した後の蛍光した検体100の画像のうち微生物101の基準となるデータの範囲に含まれる画像部分104a,104bを特定し、特定した画像部分104a,104bを抽出する。この画像部分104a,104bの特定および抽出は、工程3で撮影された水平方向における複数の画像に基づいて行う(複数の画像のデータを平均化する)。
【0064】
続いて工程5として標的微生物数計数部70が、標的とする微生物102の数を計数する。すなわち、標的微生物数計数部70は、画像処理部50により画像処理された抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像および標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像から数式1により標的とする微生物102の数Nを計数する。
【0065】
次いで工程6として標的微生物特定部80が、標的とする微生物102の種類を特定する。すなわち、標的微生物特定部80は、標的微生物数計数部70により計数された抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数と標的とする微生物102と抗体とが反応した後の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数とを比較し、抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数に対し標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数が減少したときに、標的とする微生物102が抗体反応を生じたとみなして標的とする微生物102の種類を特定する。
【0066】
以上説明したように、本発明によれば、検査システム1は、所定の検体100における微生物101のうち標的とする微生物102と、標的とする微生物102と抗体反応を生じる抗体と、を反応させた検体100を蛍光させる蛍光処理を行う蛍光処理部20を有することとしたので、検査方法は、所定の検体100における微生物101のうち標的とする微生物102と、標的とする微生物102と抗体反応を生じる抗体110と、を反応させた検体100を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行う蛍光処理ステップを有することとしたので、検体100における微生物100のうち標的とする微生物102と抗体とを反応させて検体100を蛍光させる蛍光処理を所定の波長で行うことにより、検体100において標的とする微生物102を蛍光させずに他の微生物103を蛍光させる等、標的とする微生物102を他の微生物103と区別することが可能となる。これにより、培養法によらず標的とする微生物102の検査を行うことができる等、迅速な微生物102の検査を行うことができる。また、抗体110は、標的とする微生物102と抗体反応を生じる抗体100とすることとしたので、標的とする微生物102と確実に反応させることができ、標的とする微生物102の蛍光を確実に抑制して精度よく微生物102の検査を行うことができる。
【0067】
また、蛍光処理部20は、標的とする微生物102と抗体110が反応する前の検体110を蛍光させる蛍光処理を行うこととしたので、蛍光処理ステップは、更に標的とする微生物102と抗体100とが反応する前の検体100を蛍光させる蛍光処理を行うステップとすることとしたので、標的とする微生物102が抗体反応する前の検体100において標的とする微生物102も含めて蛍光させることができ、標的とする微生物102の抗体反応の前後における変化を把握することが可能となる。
【0068】
また、蛍光処理部20は、更に標的とする微生物102と抗体110とを反応させた後の検体100において標的とする微生物102に蛍光を生じさせず、標的とする微生物102以外の他の微生物103に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うこととしたので、蛍光処理ステップは、更に標的とする微生物102と抗体110とを反応させた後の検体100において標的とする微生物102に蛍光を生じさせず、標的とする微生物102以外の他の微生物103に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うステップとすることとしたので、標的とする微生物102が抗体反応した後の検体100において標的とする微生物102に蛍光を生じさせないこととすることができ、標的とする微生物102の抗体反応の前後における変化を把握することが可能となる。
【0069】
更にまた、抗体110は、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物に蛍光を生じさせない抗体110とすることとしたので、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物102に蛍光を生じさせないこととすることができる。
【0070】
また更に、蛍光処理部20および蛍光処理ステップは、所定の試薬を用いた蛍光染色により、検体100における微生物101を蛍光させる蛍光処理を行い、試薬は、抗体110により標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物102に蛍光を生じさせない試薬とすることとしたので、標的とする微生物102に抗体反応を生じさせたときに標的とする微生物102に蛍光を生じさせないこととすることができる。
【0071】
更に、標的とする微生物102と抗体110が反応する前の蛍光した検体110の画像処理および標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像処理を行う画像処理部50を有することとしたので、標的とする微生物102の抗体反応の前後における変化を画像により把握することが可能となる。
【0072】
更にまた、画像処理部50は、微生物101の基準となるデータと反応する前の蛍光した検体100の画像および反応した後の蛍光した検体100の画像とを比較して、微生物101の基準となるデータと対応する反応する前の蛍光した検体100の画像および反応した後の蛍光した検体100の画像を特定し特定した画像を抽出することとしたので、標的とする微生物の抗体反応の前後における微生物101以外の異物100´が除かれて検査のノイズが除去された微生物101の画像を抽出することができ、更に精度よく標的とする微生物102の検査を行うことができる。つまり、検体100には、微生物101よりも遥かに多くの異物100´が含まれていることがあり、異物100´を除いて検査のノイズを除去することは、検査精度の大幅な向上に繋がる(異物100´を除いて検査のノイズを除去しなければ、抗体反応による標的となる微生物102の蛍光点数の減少は誤差範囲となることがある)。
【0073】
また更に、標的とする微生物102の数を計数する標的微生物数計数部70を有することとしたので、標的とする微生物102の数を計数することができる。
また、標的とする微生物102の種類を特定する標的微生物特定部80を有することとしたので、標的とする微生物102の種類を特定することができる。
【0074】
更にまた、画像撮影部30は、倍率の異なる複数の光学レンズ31を有し、倍率の異なる複数の光学レンズ31の選定および/または組み合わせを変更することにより、光学レンズ31の倍率を所定に変更する構成とすることとしたので、画像の倍率を適宜に変更することができる。
【0075】
また更に、検体100を載置するための所定のステージ33を有するとともに、ステージ33の位置を制御する位置制御部40を有し、位置制御部40は、ステージ33の位置を移動制御することにより、画像撮影部30における焦点位置を制御することとしたので、焦点位置を制御することができる。
【0076】
また、位置制御部40は、反応する前の蛍光した検体100の位置および反応した後の蛍光した検体100の位置を変更して行うとともに、画像処理部50は、反応する前の蛍光した検体100の画像および反応した後の蛍光した検体100の画像を複数撮影し、該複数撮影した画像を集計して画像処理を行うこととしたので、標的とする微生物の抗体反応の前後における検体100において標的とする微生物102の濃度に斑がある場合にあっても、測定精度が低下することを抑制することができる。
【0077】
更に、蛍光処理部20は、所定の試薬を用いた蛍光染色により反応する前の検体100における微生物101および反応した後の検体100における微生物101を蛍光させる蛍光処理を行うこととしたので、効率よく蛍光処理を行うことができる。
【0078】
更にまた、標的とする微生物102は、細菌およびウィルスの少なくともいずれかを含むこととし、細菌の検査を行う細菌検査モード2およびウィルスの検査を行うウィルス検査モード3を有することとしたので、細菌の検査およびウィルスの検査を行うことができる。
【0079】
また更に、蛍光処理部20は、光の波長の範囲を所定の範囲に制限するバンドパスフィルタ23を有することとしたので、検査のノイズとなる波長が除去されて標的とする微生物102を更に精度よく検査することができる。
【0080】
また、所定の濾材を用いて、検体100の濾過を行い、検体100から異物100´を除去する濾過部10を有することとしたので、蛍光処理を行う前に検体100から物理的に大きな異物100´が除去されて検査のノイズを減らすことができ標的とする微生物102を更に精度よく検査することができる。
【0081】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の応用実施、変形実施が可能であることは勿論である。
すなわち、例えば、上述した実施形態にあっては、検査システム1は、細菌検査モード2およびウィルス検査モード3のいずれのモードも有することとしているが、いずれか一方のモードのみとしても所要の効果を奏することができる。つまり、検査システム1は、細菌検査モード2およびウィルス検査モード2の少なくともいずれかのモードを有することとすれば、所要の効果を奏する。
【0082】
更に、上述した実施形態にあっては、蛍光処理部20、画像処理部50、標的微生物数計数部70、および標的微生物特定部80は、標的とする微生物102の抗体反応の前後における各種処理、計数、特定を行うこととしているが、抗体反応後における各種処理、計数、特定のみを行うこととしても所要の効果を奏する。ただし、蛍光処理部20、画像処理部50、標的微生物数計数部70、および標的微生物特定部80は、抗体反応後における各種処理、計数、特定のみを行うこととするよりも、標的とする微生物102の抗体反応の前後のいずれにおいても各種処理、計数、特定を行うこととする方がより好ましい実施形態となることは勿論である。
【0083】
更にまた、上述した実施形態にあっては、蛍光処理部20および蛍光処理ステップは、標的とする微生物102と抗体110とを反応させた後の検体100において標的とする微生物102に蛍光を生じさせず、標的とする微生物102以外の他の微生物103に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うこととしているが、適宜の抗体110および試薬を用いることにより、蛍光処理部20および蛍光処理ステップは、標的とする微生物102以外の他の微生物103と抗体110とを反応させた後の検体100において標的とする微生物102以外の他の微生物103に蛍光を生じさせず、標的とする微生物102に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うこととしても所要の効果を奏することができる。
【0084】
すなわち、蛍光処理部20および蛍光処理ステップは、標的とする微生物102および標的とする微生物102以外の他の微生物103のいずれか一方と抗体110とを反応させた後の検体100において標的とする微生物102および標的とする微生物102以外の他の微生物103のいずれか一方に蛍光を生じさせず、標的とする微生物102および標的とする微生物102以外の他の微生物103のいずれか他方に蛍光を生じさせる蛍光処理を行うこととしても所要の効果を奏することができる。
【0085】
また更に、上述した実施形態にあっては、標的微生物数計数部70は、画像処理部50により画像処理された抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像および標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像から標的とする微生物102の数を計数することとしているが、画像を介さずに他の方法により標的とする微生物102の数を計数することとしても所要の効果を奏する。
【0086】
また、上述した実施形態にあっては、標的微生物特定部80は、標的微生物数計数部70により計数された抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数と標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数とを比較し、抗体110が反応する前の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数に対して標的とする微生物102と抗体110とが反応した後の蛍光した検体100の画像における標的とする微生物102の数が減少したときに、標的とする微生物102が抗体反応を生じたとみなして標的とする微生物102の種類を特定することとしているが、画像を介さずに他の方法により標的とする微生物102の種類を特定することとしても所要の効果を奏する。
【符号の説明】
【0087】
A:メンブレンフィルタ
B:スライドガラス
1:検査システム
1A:バス
1B:中央処理装置
1C:記憶装置
1D:入力装置
1E:表示装置
2:細菌検査モード
3:ウィルス検査モード
10:濾過部
20:蛍光処理部
21:励起光照射部
22:波長測定部
23:バンドパスフィルタ
30:画像撮影部
31:レンズ(光学レンズ)
32:撮影装置
33:ステージ
40:位置制御部
50:画像処理部
60:基準データ記憶部
70:標的微生物数計数部
80:標的微生物特定部
100:検体
100´:異物
101:微生物
102:標的とする微生物
103:他の微生物
104a,104b:画像部分
110:抗体
200:プログラム