(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】生産監視装置、生産監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230529BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230529BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2019103721
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2022-04-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 月刊 自動認識 第32巻第6号(通巻428号) 日本工業出版
(73)【特許権者】
【識別番号】512319232
【氏名又は名称】株式会社KMC
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】安部 新一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 声喜
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-302527(JP,A)
【文献】特開2009-023303(JP,A)
【文献】特開2018-171863(JP,A)
【文献】特開2010-287227(JP,A)
【文献】特開2003-340866(JP,A)
【文献】特開2017-156798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0161900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して製品を生産する生産設備から設備データを受け取り、前記生産設備で1つの前記製品を生産する単位である1ショット又は1サイクル内での前記設備データのピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握し
、
前記ピーク値の大きさと第1の閾値
範囲とを比較
し、前記ピーク値の大きさが前記第1の閾値範囲内に無い場合に第1の警報信号を生成し、
前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値
範囲とを比較
し、前記ピーク値の時間軸上の位置が前記第2の閾値範囲内に無い場合に第2の警報信号を生成する
制御部
を具備する生産監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生産監視装置であって、
前記設備データは、アナログデータとしての波形データであり、
前記制御部は、前記波形データを受け取り、受け取った前記波形データからピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握し、前記ピーク値の大きさと
前記第1の閾値
範囲とを比較し、前記ピーク値の時間軸上の位置と
前記第2の閾値
範囲とを比較する
生産監視装置。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の生産監視装置であって、
前記制御部は、前記第1の警報信号又は前記第2の警報信号に応じてパトライト(登録商標)で警報表示するための信号を出力する
生産監視装置。
【請求項4】
請求項2に記載の生産監視装置であって、
前記制御部は、
第1の軸及び第2の軸を有する座標系と、前記座標系内に表示される前記1ショット又は1サイクルの前記波形データと、前記波形データ上に表示される前記1ショット又は1サイクルの前記ピーク値と、前記第1の軸上に表示される前記ピーク値の大きさ及び前記第1の閾値範囲と、前記第2の軸上に表示される前記ピーク値の時間軸上の位置及び前記第2の閾値範囲とを同一の画面上に表示するための波形表示データを出力する
生産監視装置。
【請求項5】
請求項2又は
4に記載の生産監視装置であって、
前記制御部は、複数種類の前記波形データを時間的に同期させて同一画面上に同時に表示するための複数種類波形表示データを出力する
生産監視装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5のうちいずれか1項に記載の生産監視装置であって、
前記制御部は、前記設備データの時系列データを表示するための時系列表示データを出力する
生産監視装置。
【請求項7】
請求項1乃至
6のうちいずれか1項に記載の生産監視装置であって、
前記制御部は、前記設備データの複数種類の時系列データを時間的に同期させて同一画面上に同時に表示し、且つ、画面上に同時刻比較ラインを表示する複数種類時系列表示データを出力する
生産監視装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7のうちいずれか1項に記載の生産監視装置であって、
2つ以上の前記生産設備を監視するものであり、
前記制御部は、1つの前記生産設備についての複数種類の設備データを同一の画面上に同時に1グループとして表示するためのグループ表示データを出力する
生産監視装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8のうちいずれか1項に記載の生産監視装置であって、
2つ以上の前記生産設備からなる生産ラインを複数監視するものであり、
前記制御部は、生産ライン単位で前記設備データを同一の画面上に同時に表示するための生産ライン表示データを出力する
生産監視装置。
【請求項10】
連続して製品を生産する生産設備から設備データを受け取り、
前記生産設備で1つの前記製品を生産する単位である1ショット又は1サイクル内での前記設備データのピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握し、
前記ピーク値の大きさと第1の閾値
範囲とを比較
し、前記ピーク値の大きさが前記第1の閾値範囲内に無い場合に第1の警報信号を生成し、
前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値
範囲とを比較
し、前記ピーク値の時間軸上の位置が前記第2の閾値範囲内に無い場合に第2の警報信号を生成する
生産監視方法。
【請求項11】
連続して製品を生産する生産設備から設備データを受け取るステップと、
前記生産設備で1つの前記製品を生産する単位である1ショット又は1サイクル内での前記設備データのピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握するステップと、
前記ピーク値の大きさと第1の閾値
範囲とを比較
し、前記ピーク値の大きさが前記第1の閾値範囲内に無い場合に第1の警報信号を生成するステップと、
前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値
範囲とを比較
し、前記ピーク値の時間軸上の位置が前記第2の閾値範囲内に無い場合に第2の警報信号を生成するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機やプレス機などの生産設備による生産を監視する生産監視装置、生産監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインにおいては、生産される製品の品質特性に影響する生産時の温度、圧力などの計測データなどを生産プロセス中で収集し、これらの計測データを生産監視装置で集中的に管理することが行われている。
【0003】
特許文献1には、加工機が加工した一製品ごとに、複数種類の監視データのそれぞれのしきい値に基づき加工機のそれぞれの監視データを評価し、一製品ごとの評価結果に基づき加工機により加工された製品を分別する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、その
図28などを参照すれば、マッピングデータから、部品精度の情報を見ながら、金型メンテナンス時期、或いは金型部品の再製作、冷却水や金型温度の設定値、成形機の設定値(保圧、ノズル温度等)等の判断をリアルタイムに、かつ、適切に行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-046293号公報
【文献】特開2018-073329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような生産監視装置では、生産設備で生産される製品の不良率低減や生産性の更なる向上を図るための監視が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、生産設備で生産される製品の不良率低減や生産性の更なる向上を図ることができる生産監視装置、生産監視方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る生産監視装置は、連続して製品を生産する生産設備から設備データを受け取り、前記生産設備で1つの前記製品を生産する単位である1ショット又は1サイクル内での前記設備データのピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握し、前記ピーク値の大きさと第1の閾値とを比較し、前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値とを比較する制御部を具備する。
【0009】
本発明では、設備データのピーク値の大きさ及びピーク値の時間軸上の位置を把握し、ピーク値の大きさと第1の閾値とを比較し、ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値とを比較しているので、生産設備で生産される製品の不良率低減や生産性の更なる向上を図ることができる。
【0010】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、前記設備データは、アナログデータとしての波形データであり、前記制御部は、前記波形データを受け取り、受け取った前記波形データからピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握し、前記ピーク値の大きさと第1の閾値とを比較し、前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値とを比較する。
【0011】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、前記制御部は、前記ピーク値の大きさと第1の閾値とを比較して比較結果に基づき第1の警報信号を生成し、又は、前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値とを比較して比較結果に基づき第2の警報信号を生成する。
【0012】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、前記制御部は、前記第1の警報信号又は前記第2の警報信号に応じてパトライト(登録商標)で警報表示するための信号を出力する。
【0013】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、前記制御部は、前記波形データ、前記第1の閾値及び第2の閾値を同一の画面上に表示するための波形表示データを出力する。
【0014】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、前記制御部は、複数種類の前記波形データを時間的に同期させて同一画面上に同時に表示するための複数種類波形表示データを出力する。
【0015】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、前記制御部は、前記設備データの時系列データを表示するための時系列表示データを出力する。
【0016】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、前記制御部は、前記設備データの複数種類の時系列データを時間的に同期させて同一画面上に同時に表示し、且つ、画面上に同時刻比較ラインを表示する複数種類時系列表示データを出力する。
【0017】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、2つ以上の前記生産設備を監視するものであり、前記制御部は、1つの前記生産設備についての複数種類の設備データを同一の画面上に同時に1グループとして表示するためのグループ表示データを出力する。
【0018】
本発明の一形態に係る生産監視装置では、2つ以上の前記生産設備からなる生産ラインを複数監視するものであり、前記制御部は、生産ライン単位で前記設備データを同一の画面上に同時に表示するための生産ライン表示データを出力する。
【0019】
本発明の一形態に係る生産監視方法は、連続して製品を生産する生産設備から設備データを受け取り、前記生産設備で1つの前記製品を生産する単位である1ショット又は1サイクル内での前記設備データのピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握し、前記ピーク値の大きさと第1の閾値とを比較し、前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値とを比較する。
【0020】
本発明の一形態に係るプログラムは、連続して製品を生産する生産設備から設備データを受け取るステップと、前記生産設備で1つの前記製品を生産する単位である1ショット又は1サイクル内での前記設備データのピーク値の大きさ及び前記ピーク値の時間軸上の位置を把握するステップと、前記ピーク値の大きさと第1の閾値とを比較するステップと、前記ピーク値の時間軸上の位置と第2の閾値とを比較するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、生産設備で生産される製品の不良率低減や生産性の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生産システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した生産システムにおける生産監視システムの構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る設定値と実績値の表示例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る生産監視装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係るPLC側から生産監視装置側に送信される通信データの構成の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る生産監視装置において取得した、成形機の型温度の1ショット内での波形データの一例である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る生産監視装置において取得した、加工機のエンドミルの加工負荷の1サイクル内での波形データの一例である。
【
図8】複数種類の時系列データを時間的に同期させて同一画面上に同時に表示した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る生産システムの構成を示す図である。
図1に示すように、生産システム1は、製品を連続的に生産するための1以上の生産設備10、11・・・と、生産設備10、11・・・から設備データを収集し、且つ、生産設備10、11・・・との間での通信異常を検出可能なPLC20と、生産監視装置30とを有する。設備データには、生産設備における稼働データの他、様々な計測データ等が含まれる。
【0024】
本実施形態に係る生産システム1は、生産設備10、11・・・と1台のPLC20とで1つの生産ラインを構成し、8つの生産ライン1-1、1-2、・・・1-8を有する。
【0025】
生産監視装置30は、これらの8つの生産ライン1-1、1-2、・・・1-8の生産を監視する。
【0026】
生産設備は、例えば成形機10、プレス機11、加工機12、自動機13、ロボット14、センサー15等のそれぞれをいう。生産設備としては、その他に様々のものがあり、例えば温調器や乾燥機などの周辺設備なども含まれる。また、センサー15としては、成形機10で用いられる型の内部に配置される型温センサー、表面温度センサー、型の圧力センサーなどがあり、更に設備の周辺に配置される温度センサーや流量センサーなどの付帯センサーがある。
【0027】
PLC20は、当該ライン内の成形機10、プレス機11、加工機12、自動機13、ロボット14、センサー15から設備データを収集する。ここで、設備データとは、成形機10でいうと、成形時刻、ショットNo、V-P切換位置、クッション位置、サイクル時間、可塑化時間、1次射出時間、代々圧力、最小クッション、型開時間、型閉時間などである。上記のセンサー15により計測されたデータも設備データに含まれる。また、センサー15により計測されたデータには、生産設備で1つの製品を生産する単位である1サイクル又は1ショット内での圧力や温度などのアナログデータ(波形データ)も含まれる。
【0028】
生産監視装置30は、8台のPLC20から上記の様々設備データを収集して8つの生産ライン1-1、1-2、・・・1-8全体を監視する。生産監視装置30には、パトライト(登録商標)40と、表示装置50とが接続されている。また、生産監視装置30は、ネットワーク(図示を省略)を介して遠隔よりデータのやり取りを行うことも可能である。
【0029】
図2は、
図1に示した生産システム1における生産監視システムの構成を示す図である。
図2に示すように、生産監視システム2は、上記の、8台のPLC20と、生産監視装置30と、パトライト(登録商標)40と、表示装置50とにより構成される。
【0030】
PLC20は、主に通信部21と、制御部22と、記憶部23とを有する。
【0031】
通信部21は、生産設備10、11・・・より設備データを取得し、その取得したデータを生産監視装置30に送る。
【0032】
制御部22と、PLC20全体を包括的に制御する。例えば、制御部22は、通信部21を介して生産設備10、11・・・とこのPLC20との間の通信異常を検出する検出部として機能する。例えば、生産設備10、11・・・との間の通信路25が断線(図中「×」で示す。)があれば、生産設備10、11・・・からデータがこなくなる(応答しなくなる)ので、通信異常として検出する。なお、生産設備10、11・・・のうち1つの生産設備からデータがこなくなった場合には、当該1つの生産設備との間の通信路25の通信異常として検出する。なお、当該生産設備の破損等による異常とみなしてもよい。
【0033】
本実施形態に係るPLC20には、SDメモリカードやUSBメモリなどの外部メモリ24が接続可能とされている。外部メモリ24には、通信部21を介して受信した生産設備10、11・・・からの設備データが一旦蓄積され、PLC20から生産監視装置30へは、通信部21を介して外部メモリ24に蓄積された設備データが送信される。これにより、内部メモリとしての記憶部23のメモリ容量不足に柔軟に対応できる。特に、上記のようにアナログデータ(波形データ)を設備データとして扱うような場合には、データ量が膨大になるために、このような外部メモリ24を用いて容量の柔軟性を図ることは有用である。なお、外部メモリ24を用いずに記憶部23に設備データを保持するようにしても勿論構わない。
【0034】
生産監視装置30は、主に、通信部31と、制御部32と、記憶部33とを有する。
【0035】
通信部31は、PLC20より、設備データ及びPLC20で検出された通信異常に関するデータを受信する。
【0036】
制御部32は、PLC20との間での通信異常を検出する検出部としての機能を有する。例えば、PLC20との間の通信路34が断線(図中「×」で示す。)があれば、PLC20からデータがこなくなる(応答しなくなる)ので、当該PLC20との間の通信異常として検出する。
【0037】
制御部32は、通信部31による受信結果及び制御部32による上記の検出部としての検出結果に基づき、生産設備10、11・・・の異常、生産設備10、11・・・とPLC20との間の通信異常及びPLC20と当該生産監視装置30の間の通信異常を、それぞれ区別して警告する情報を出力する警告情報出力部として機能する。また、制御部32は、生産監視装置30から出力された警告情報に基づき、生産設備10、11・・・の異常、生産設備10、11・・・とPLC20との間の通信異常及びPLC20と生産監視装置30との間の通信異常を、それぞれ異なる色で発光するパトライト(登録商標)を画面上に表示する表示データを出力するパトライト(登録商標)表示データ出力部として機能する。
【0038】
記憶部33は、PLC20を介して受け取った生産設備10、11・・・の設備データを蓄積する。
【0039】
制御部32は、記憶部33に蓄積された設備データに基づき、生産設備10、11・・・による生産を監視する。例えば、制御部32は、記憶部33に蓄積された設備データの値の傾向値(経年変化値)を管理し、例えば設備データに基づく値が所定値を超えたとき、或いは超えそうになると事前に予測されるとき、生産設備の運転の停止等を促す警報をパトライト(登録商標)40等から発する。なお、生産設備10、11・・・を強制的に停止させてもよい。
【0040】
制御部32は、PLC20より受信した設備データから生産設備10、11・・・で1つの製品を生産する単位である1サイクル又は1ショット内での波形データを得て、波形データに基づき、生産設備10、11・・・を管理する手段として機能する。生産設備10、11・・・を管理するとは、例えば波形データに異常値乃至異常値傾向が見られるとき、生産設備10、11・・・の運転の停止等を促す警報をパトライト(登録商標)40等から発することをいう。
【0041】
制御部32は、通信部31を介してPLC20より、設備データ等が受信できたかどうかを確認し、設備データ等を受信できないときにはPLC20に再送信を要求する検出・再送要求機能を有する。そして、制御部32は、再送要求にもかかわらず設備データ等が受信できないときには、アラートを出力する。アラートは、報知音でもよいし、表示装置50に表示するものなどであってもよい。
【0042】
パトライト(登録商標)40は、生産監視装置30から出力された警告情報に基づき、生産設備10、11・・・の異常、生産設備10、11・・・とPLC20との間の通信異常及びPLC20と生産監視装置30との間の通信異常を、それぞれ異なる色で発光する。例えば、パトライト(登録商標)40は、青、黄色、赤、白の4色を発光する。生産設備10、11・・・に異常がないときには、青を発光する。生産設備10、11・・・の一部が停止しているとき、黄色を発光する。したが手、生産設備10、11・・・に異常がないが、生産設備10、11・・・の一部が停止しているときには、パトライト(登録商標)40では青と黄色の両方が発光する。また、生産設備10、11・・・が異常のときには、パトライト(登録商標)40は白を発光し、生産設備10、11・・・とPLC20との間の通信異常及びPLC20と生産監視装置30との間の通信異常のときには、パトライト(登録商標)40は赤を発光する。このようなパトライト(登録商標)40の発光は一例であり、様々なパターンでの発光が考えられる。
【0043】
表示装置50は、生産監視装置30から出力された表示データに基づき、生産設備10、11・・・の異常、上記のパトライト(登録商標)40を画面上に表示する。ここで、PLC20が収集する設備データには、生産設備10、11・・・に対する設定値及びそれに対する実績値のデータが含まれている。生産監視装置30では、制御部32がPLC20より受信した設備データに基づき、生産設備10、11・・・に対する設定値及びそれに対する実績値を画面上に表示する表示データを出力する設定値・実績値表示データ出力部として機能する。表示装置50は、この表示データに基づき、設定値と実績値を画面上に表示する。
図3にその画面の一例を示す。実際の生産設備10、11・・では、同一の生産設備であっても機差を有している。作業者は、画面上に表示された設定値と実績値とを比較することで、この機差を知ることができ、例えばそれに応じた対応をとることが可能となる。
【0044】
次に、生産監視装置30の動作を
図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0045】
制御部32は、PLC20側との間で通信が断となっていないか判断する(ステップ401)。
【0046】
制御部32は、通信がPLC20側との間で通信が断となっている場合には、PLC20側との間で再接続の動作を実行する(ステップ402)。
【0047】
制御部32は、PLC20側との間で通信が断ではなく、或いは再接続によりPLC20側との間で通信が断ではなくなったとき、PLC20側から送信される通信データからヘッダの情報を読み取り(ステップ403)、ヘッダ情報に基づき通信データに含まれる設備データ等を読み取る(ステップ404)。
【0048】
図5に、PLC20側から生産監視装置30側に送信される通信データの構成の一例を示し、通信データは、シリアルナンバー、ショット等の時刻、モード(成形が手動モードか自動モードかなどを区別する。)、アラーム種別(アラームが設備アラームかPLCアラームかを区別する。)、センサー(1)のデータ、センサー(2)のデータ、・・・等を含む。設備アラームは、例えば生産設備10、11・・・が異常、PLCアラームは、例えば生産設備10、11・・・とPLC20との間の通信異常を示す。
【0049】
次に、生産設備10、11・・・で1つの製品を生産する単位である1サイクル又は1ショット内での波形データを得て、波形データに基づき、生産設備10、11・・・を管理する点について更に詳しく説明する。
【0050】
図6は、生産監視装置30において取得した、成形機10の型温度の1ショット内での波形データの一例である。
【0051】
成形機10の型温度は、1ショット内ではまず射出開始より上昇し、所定の時点でピークになり、その後低下する。ピーク時の温度(tmax)は所定の範囲(t0~t1)内にある必要がある。加えて、成形機10の型温度がピークとなる時点、つまり射出開始より成形機10の型温度がピークとなるまでの時間(Tpeak)も所定の範囲(T0~T1)内にある必要がある。
・ピーク時の温度(tmax)が所定の範囲(t0~t1)より低いと、材料が型内に流れ込み難くなり、成形不良が発生する。
・ピーク時の温度(tmax)が所定の範囲(t0~t1)より高いと、材料が型内での流れが速くなり、対岸到着時間が早くなり、バリが発生してしまう。
・成形機10の型温度がピークとなるまでの時間(Tpeak)が所定の範囲(T0~T1)よりも短い場合は、型の注入口が経年変化で広がったと推定され、型のメンテナンスを行うべき時期として検出される。
・成形機10の型温度がピークとなるまでの時間(Tpeak)が所定の範囲(T0~T1)よりも長い場合は、型の注入口にゴミなどが詰まっていると推定され、型の確認を行うべきタイミングとして検出される。
【0052】
制御部32は、成形機10の型温度の1ショット内での波形データに対して、ピーク時の温度(tmax)が所定の範囲(t0~t1)内にあるかどうかを判断し、加えて、成形機10の型温度がピークとなる時点、つまり射出開始より成形機10の型温度がピークとなるまでの時間(Tpeak)も所定の範囲(T0~T1)内にあるかどうかを判断する。
【0053】
制御部32は、成形機10の型温度の1ショット内での波形データに対して、ピーク時の温度(tmax)が所定の範囲(t0~t1)内にない場合には、パトライト(登録商標)40を白に発光させ、表示装置50に同様の表示を行い、更に表示装置50に型温を上げる、或いは下げるように指示を表示する。或いは、制御部32よりPLC20を経由して型温を上げるように、或いは下げるようにコントロールしてもよい。
【0054】
制御部32は、成形機10の型温度の1ショット内での波形データに対して、成形機10の型温度がピークとなるまでの時間(Tpeak)が所定の範囲(T0~T1)内にない場合には、パトライト(登録商標)40を白に発光させ、表示装置50に同様の表示を行い、更に表示装置50に型のメンテナンスや確認の指示を表示する。
【0055】
図7は、生産監視装置30において取得した、加工機12のエンドミルの加工負荷の1サイクル内での波形データの一例である。
【0056】
加工機12のエンドミルの加工負荷は、1サイクル内ではまず加工開始より上昇し、所定の時点でピークになり、その後低下する。ピーク時の大きさ(Pmax)は所定の範囲(P0~P1)内にある必要がある。加えて、加工機12のエンドミルの加工負荷がピークとなる時点、つまり加工開始より加工機12のエンドミルの加工負荷がピークとなるまでの時間(Tpeak)も所定の範囲(T0~T1)内にある必要がある。
・ピーク時の大きさ(Pmax)が所定の範囲(P0~P1)より低いと、被加工側に何らかの問題があると推定される。
・ピーク時の大きさ(Pmax)が所定の範囲(P0~P1)より高いと、エンドミルの切れ味が悪くなったと推定される。
・加工機12のエンドミルの加工負荷がピークとなるまでの時間(Tpeak)が所定の範囲(T0~T1)よりも短い場合は、エンドミルの取り付け位置が所定の位置よりもZ方向に下がっていると推定される。
・加工機12のエンドミルの加工負荷がピークとなるまでの時間(Tpeak)が所定の範囲(T0~T1)よりも長い場合は、エンドミルの取り付け位置が所定の位置よりもZ方向に下がっていると推定される。
【0057】
制御部32は、加工機12のエンドミルの加工負荷の1サイクル内での波形データに対して、ピーク時の大きさ(Pmax)が所定の範囲(P0~P1)内にあるかどうかを判断し、加えて、加工機12のエンドミルの加工負荷がピークとなる時点、つまり加工開始より加工機12のエンドミルの加工負荷がピークとなるまでの時間(Tpeak)も所定の範囲(T0~T1)内にあるかどうかを判断する。
【0058】
制御部32は、加工機12のエンドミルの加工負荷の1サイクル内での波形データに対して、ピーク時の大きさ(Pmax)が所定の範囲(P0~P1)内にない場合には、パトライト(登録商標)40を白に発光させ、表示装置50に同様の表示を行い、更に表示装置50にエンドミルの交換等を促すように表示する。
【0059】
制御部32は、加工機12のエンドミルの加工負荷の1サイクル内での波形データに対して、加工機12のエンドミルの加工負荷がピークとなるまでの時間(Tpeak)が所定の範囲(T0~T1)内にない場合には、パトライト(登録商標)40を白に発光させ、表示装置50に同様の表示を行い、更に表示装置50にエンドミルの取り付け状態の確認の指示を表示する。
【0060】
本実施形態に係る生産監視装置30では、PLC20より受信した設備データから1サイクル又は1ショット内での波形データを得て、波形データに基づき、生産設備10、11・・・を管理している。典型的には、1サイクル又は1ショット内での波形データのピーク値の上限値及び下限値を設定し、ピーク値が上限値を超えたとき、又はピーク値が下限値より小さくなったとき、所定の警報等を行う。また、1サイクル又は1ショット内での波形データがピークとなる時点、つまり1サイクル又は1ショットの開始よりピークとなるまでの時間の範囲を設定し、その時間が所定時間未満、又は所定時間を超えるときには、所定の警報等を行う。これにより、生産設備10、11・・・の異常をより的確に把握することができる。なお、上記のように設定される上限値及び下限値、或いは時間の範囲、つまり閾値の範囲は、適宜設定することができるようにしてもよい。
【0061】
以上の実施形態では、制御部32が1サイクル又は1ショット内での波形データを得て、波形データに基づき、生産設備10、11・・・を管理していたが、制御部32は記憶部33に蓄積された設備データに基づき、様々な管理が可能である。
【0062】
例えば、上記のピーク値やその他の計測値などを時系列に表示して時系列データとして管理してもよい。
【0063】
上記のピーク値以外の計測値の閾値を管理してもよい。例えば、計測値が所定の上限閾値以上となったときには製品の異物不良が発生する可能性があるとし、所定の下限値以下となったときには製品の寸法不良が発生する可能性があるとし、それぞれ所定の警告を発してもよい。
【0064】
設備データの値の傾向値(経年変化値)を管理し、例えば設備データに基づく値が所定値を超えたとき、或いは超えそうになると事前に予測されるとき、それぞれ所定の警告を発してもよい。
【0065】
1サイクル又は1ショット内での複数種類の波形データを時間的に同期させて同一画面上に同時に表示してもよい。例えば、成形機における型の型内樹脂温度、型内圧力、型表面温度、成形機射出圧力の波形データを同時に表示装置に表示してもよい。これにより、成形機による成形の状況を正確に把握することができる。
【0066】
時系列データに関しても複数種類の時系列データを時間的に同期させて同一画面上に同時に表示してもよい(
図8参照)。その際に、
図8に示すように、画面上に同時刻比較ラインを設けることで、複数種類の時系列データ間での同時刻におけるデータの比較がし易くなる。
【0067】
1つの生産設備についての複数種類の設備データを同一の画面上に同時に1グループとして表示するようにしてもよい。例えば、成形機の温調機、乾燥機、型内温度センサー、ホットランナー、流量センサー、型内圧力センサー、型表面温度センサーのデータを同一の画面上に同時に表示してもよい。
【0068】
生産ライン単位で設備データを同一の画面上に同時に表示するようにしてもよい。例えば、8つの生産ライン1-1、1-2、・・・1-8のうち任意の1つの生産ラインに属する成形機10、プレス機11、加工機12、自動機13、ロボット14、センサー(1)5から設備データを同一の画面上に同時に表示するようにしてもよい。
【0069】
本実施形態では、製品不良が予測されるようなときに、生産監視装置が警告等を発したり、生産設備の設定値をコントロールするものであったが、製品不良が予測されるようなときに、ロボットが生産設備によって生産された製品又は生産中の製品を不良品として生産ラインから取り出すように生産監視装置が管理してもよい。
【0070】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、様々な応用や変形が可能であり、そのような応用や変形の範囲も本発明の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0071】
1 :生産システム
1-1、・・・ :生産ライン
2 :生産監視システム
10、11・・・:生産設備
10 :成形機
11 :プレス機
12 :加工機
13 :自動機
14 :ロボット
15 :センサー
20 :PLC(プログラマブルロジックコントローラ)
21 :通信部
22 :制御部
23 :記憶部
24 :外部メモリ
25 :通信路
30 :生産監視装置
31 :通信部
32 :制御部
33 :記憶部
34 :通信路
40 :パトライト(登録商標)
50 :表示装置