IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大斗有限会社の特許一覧

特許7286126ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法
<>
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図1
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図2
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図3
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図4
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図5
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図6
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図7
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図8
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図9
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図10
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図11
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図12
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図13
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図14
  • 特許-ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】ひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
G01B11/02 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017201472
(22)【出願日】2017-10-18
(65)【公開番号】P2019074440
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】517364499
【氏名又は名称】大斗有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】大敷 学
(72)【発明者】
【氏名】知名 誠
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-018921(JP,A)
【文献】特開2007-232684(JP,A)
【文献】特開2014-160109(JP,A)
【文献】特開2006-112127(JP,A)
【文献】特開2012-073165(JP,A)
【文献】特開2015-225060(JP,A)
【文献】特開2009-085785(JP,A)
【文献】特開2017-053819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G01N 21/84 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定装置であって、
基準スケール及び調査対象であるひび割れを接写するための撮影手段と、
前記撮影手段に外嵌可能な筒状のホルダーと、
前記基準スケールを接写して得られた基準スケール画像及び調査対象の前記ひび割れを接写して得られたひび割れ画像を表示するための画像表示手段と、
前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出する換算係数設定手段と、
前記換算係数に基づいて作製され、前記画像表示手段に表示可能なクラックスケールと、
を含んで成り、
前記撮影手段がピント調節ダイヤルを備え、
前記ホルダーが、前記撮影手段に前記ホルダーを外嵌した状態で、前記ピント調節ダイヤルを露出させるための開口部を備え、
前記基準スケールを接写した後、前記開口部から前記ピント調節ダイヤルが露出しないように前記ホルダーを回転させ、前記撮影手段のピント調節を物理的に不可能にして前記ひび割れを接写することを特徴とするひび割れ寸法測定装置。
【請求項2】
調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定装置であって、
基準スケール及び調査対象であるひび割れを接写するための撮影手段と、
前記撮影手段に外嵌可能な筒状のホルダーと、
前記基準スケールを接写して得られた基準スケール画像及び調査対象の前記ひび割れを接写して得られたひび割れ画像を表示するための画像表示手段と、
前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出する換算係数設定手段と、
前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像における所定の2点間の画素数から、前記換算係数を用いて該所定の2点間の実寸法を算出する演算手段と、
を含んで成り、
前記撮影手段がピント調節ダイヤルを備え、
前記ホルダーが、前記撮影手段に前記ホルダーを外嵌した状態で、前記ピント調節ダイヤルを露出させるための開口部を備え、
前記基準スケールを接写した後、前記開口部から前記ピント調節ダイヤルが露出しないように前記ホルダーを回転させ、前記撮影手段のピント調節を物理的に不可能にして前記ひび割れを接写することを特徴とするひび割れ寸法測定装置。
【請求項3】
前記換算係数に基づいて作製され、前記画像表示手段に表示可能なクラックスケールを備えることを特徴とする請求項2に記載のひび割れ寸法測定装置。
【請求項4】
前記撮影手段又は前記画像表示手段がGPSを備えることを特徴とする請求項1から請求項の何れかに記載のひび割れ寸法測定装置。
【請求項5】
調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定方法であって、
撮影手段によって基準スケールを接写し、基準スケール画像を取得するステップと、
前記基準スケールを接写したときに調節したピントを変更せず、前記基準スケールを接写したときの前記撮影手段と前記基準スケールとの距離と同じ撮影距離で調査対象のひび割れを接写し、ひび割れ画像を取得するステップと、
前記基準スケール画像を画像表示手段に表示するステップと、
前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出するステップと、
前記ひび割れ画像を前記画像表示手段に表示するステップと、
前記換算係数に基づいてクラックスケールを作製するステップと、
前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像に前記クラックスケールを重ねて表示するステップと、
を含むことを特徴とするひび割れ寸法測定方法。
【請求項6】
調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定方法であって、
撮影手段によって基準スケールを接写し、基準スケール画像を取得するステップと、
前記基準スケールを接写したときに調節したピントを変更せず、前記基準スケールを接写したときの前記撮影手段と前記基準スケールとの距離と同じ撮影距離で調査対象のひび割れを接写し、ひび割れ画像を取得するステップと、
前記基準スケール画像を画像表示手段に表示するステップと、
前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出するステップと、
前記ひび割れ画像を前記画像表示手段に表示するステップと、
前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像における所定の2点間の画素数から、前記換算係数を用いて該所定の2点間の実寸法を算出するステップと、
を含むことを特徴とするひび割れ寸法測定方法。
【請求項7】
前記換算係数に基づいてクラックスケールを作製するステップと、
前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像に前記クラックスケールを重ねて表示するステップと、
を含むことを特徴とする請求項に記載のひび割れ寸法測定方法。
【請求項8】
前記基準スケール画像を取得後、前記撮影手段に外嵌可能なホルダーを外嵌し、前記撮影手段のピント調節を物理的に不可能とするステップを含むことを特徴とする請求項から請求項の何れかに記載のひび割れ寸法測定方法。
【請求項9】
前記ひび割れの撮影時に、前記撮影手段又は前記画像表示手段が備えるGPSによって前記ひび割れの位置情報を取得するステップを含むことを特徴とする請求項から請求項の何れかに記載のひび割れ寸法測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやガラス、金属等の表面にあるひび割れの寸法を、画像処理によって測定することができる接写式のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、トンネルや橋梁といったコンクリート構造物の表面には経時変化によってひび割れが発生するため、定期的なひび割れ調査を行い、必要に応じて補修作業が行われる。このひび割れ調査においては、線幅の異なる複数の直線が表示されたクラックスケールをひび割れにあてがうことによって、目視によるひび割れ寸法の簡易的な測定が行われており、ひび割れ調査では最も一般的で簡易的な方法である。
【0003】
また、画像情報から検査対象物の実寸法を測定する寸法測定方法及び寸法測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された寸法測定方法は、検査対象が存在する構造物の表面に照射した既知の長さの照射物と、検査対象とを同時に撮影し、その撮影した画像中の照射物の画像を基準に、検査対象の実寸法を求めるものである。そして、特許文献1に開示された寸法測定装置は、検査対象物の表面を撮影するカメラを有する寸法測定装置本体と、寸法測定装置本体に装備されて検査対象物の表面に既知の長さの平行光線によるスリット光を照射する照射手段と、スリット光とき裂欠陥とを同時にカメラで撮像してカメラの画像を取り込み各種の画像処理を行う画像処理手段と、画像処理手段からのき裂欠陥画像とスリット光画像を含んだ画像を表示する表示手段とから構成され、スリット光画像を基準に、き裂欠陥の実寸法を求めるものである。
【0004】
この特許文献1に開示された寸法測定方法及び寸法測定装置によると、従来は寸法測定が困難な狭隘な場所であっても、迅速且つ正確に測定対象物上の測定対象であるき裂欠陥等の実寸法を測定できる方法及び装置を提供できる旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-18921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のクラックスケールを使用したひび割れ調査は、目視で簡単に行えるという利点はあるが、測定したひび割れ毎にひび割れの位置や寸法等の測定情報を記録していく必要があり、作業効率が非常に悪い。また、細かいひび割れを目視にて一つ一つ確認する作業は、非常に労力がかかる。
【0007】
その点、特許文献1に開示された寸法測定方法及び寸法測定装置であれば、既知の長さの平行光線によるスリット光を利用して、スリット光画像を基準に、き裂欠陥の実寸法を求めるものであるため、離れた場所のき裂欠陥等の実寸法を画像処理によって測定できる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された寸法測定方法及び寸法測定装置では、スリット光を検査対象物に直交するように照射する必要がある。スリット光が直交するように照射されていない場合には、き裂欠陥等の実寸法の正確な測定ができない。
【0009】
また、土木構造物等のひび割れ調査においては、補修対象となるひび割れ幅が概ね0.2mm~0.5mmと非常に細かいが、特許文献1に開示された寸法測定方法では、このように細かい寸法の測定は困難であるものと思料する。
【0010】
そこで本願発明者らは、上記の問題点に鑑み、画像処理によって非常に細かいひび割れであってもその寸法を簡単に測定可能な接写式のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定装置であって、基準スケール及び調査対象であるひび割れを撮影するための撮影手段と、前記基準スケールを撮影して得られた基準スケール画像及び調査対象の前記ひび割れを撮影して得られたひび割れ画像を表示するための画像表示手段と、前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出する換算係数設定手段と、前記換算係数に基づいて作製され、前記画像表示手段に表示可能なクラックスケールと、を含んで成ることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定装置であって、基準スケール及び調査対象であるひび割れを撮影するための撮影手段と、前記基準スケールを撮影して得られた基準スケール画像及び調査対象の前記ひび割れを撮影して得られたひび割れ画像を表示するための画像表示手段と、前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出する換算係数設定手段と、前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像における所定の2点間の画素数から、前記換算係数を用いて該所定の2点間の実寸法を算出する演算手段と、を含んで成ることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明のひび割れ寸法測定装置において、前記換算係数に基づいて作製され、前記画像表示手段に表示可能なクラックスケールを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のひび割れ寸法測定装置において、前記撮影手段に外嵌可能なホルダーを備えることを特徴とする。
【0015】
更にまた、本発明のひび割れ寸法測定装置において、前記撮影手段又は前記画像表示手段がGPSを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定方法であって、撮影手段によって基準スケールを撮影し、基準スケール画像を取得するステップと、前記撮影手段によって調査対象のひび割れを撮影し、ひび割れ画像を取得するステップと、前記基準スケール画像を画像表示手段に表示するステップと、前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出するステップと、前記ひび割れ画像を前記画像表示手段に表示するステップと、前記換算係数に基づいてクラックスケールを作製するステップと、前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像に前記クラックスケールを重ねて表示するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
更に、本発明は、調査対象であるひび割れの寸法を測定するためのひび割れ寸法測定方法であって、撮影手段によって基準スケールを撮影し、基準スケール画像を取得するステップと、前記撮影手段によって調査対象のひび割れを撮影し、ひび割れ画像を取得するステップと、前記基準スケール画像を画像表示手段に表示するステップと、前記基準スケールにおける任意の2点間の基準長に基づいて、前記画像表示手段に表示された前記基準スケール画像における前記任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出するステップと、前記ひび割れ画像を前記画像表示手段に表示するステップと、前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像における所定の2点間の画素数から、前記換算係数を用いて該所定の2点間の実寸法を算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のひび割れ寸法測定方法において、前記換算係数に基づいてクラックスケールを作製するステップと、前記画像表示手段に表示された前記ひび割れ画像に前記クラックスケールを重ねて表示するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のひび割れ寸法測定方法において、前記基準スケール画像を取得後、前記撮影手段に外嵌可能なホルダーを外嵌し、前記撮影手段のピント調節を物理的に不可能とするステップを含むことを特徴とする。
【0020】
更にまた、本発明のひび割れ寸法測定方法において、前記ひび割れの撮影時に、前記撮影手段又は前記画像表示手段が備えるGPSによって前記ひび割れの位置情報を取得するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法によると、最初に基準スケールを撮影して撮影手段のキャリブレーションを行うことによって、その後は調査対象のひび割れを順次撮影するのみで、ひび割れ寸法の測定を簡単に行うことができる。特に、基準スケール画像から算出される換算係数に基づいて作製され、画像表示手段に表示可能なクラックスケールによるひび割れ寸法の簡易測定と、演算手段によってひび割れ寸法(実寸法)を算出する詳細測定を行うことができる。
【0022】
また、本発明のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法において、撮影手段に外嵌可能なホルダーを備えることによって、予め撮影手段にホルダーを外嵌しておき、基準スケール画像を取得後は撮影手段のピント調節を物理的に不可能にすることができるため、基準スケール画像を取得したときと同じピント、同じ撮影距離で調査対象のひび割れを撮影することができ、測定誤差の発生がなく、複雑な画像処理を行う必要もない。
【0023】
更に、本発明のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法において、撮影手段又は画像表示手段がGPSを備えることによって、調査対象のひび割れを撮影時に、ひび割れ箇所の位置情報も同時に取得することができるため、ひび割れ箇所の経時変化を管理したり、調査報告書等の資料を作成したりする際に非常に有益な情報となる。また、位置情報を活用することによって、ひび割れの長さを算出したり、調査対象の図面上にひび割れを再現したりすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のひび割れ寸法測定装置の一実施形態を示す説明図である。
図2】本発明のひび割れ寸法測定装置に係る撮影手段の一実施形態を示す説明図である。
図3】本発明のひび割れ寸法測定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図4】本発明のひび割れ寸法測定方法において、画像表示手段に基準スケール画像を表示した状態の一例を示す説明図である。
図5】本発明のひび割れ寸法測定方法において、画像表示手段にひび割れ画像を表示した状態の一例を示す説明図である。
図6】本発明のひび割れ寸法測定方法において、画像表示手段に表示したひび割れ画像にクラックスケールを重ねて表示した状態の一例を示す説明図である。
図7図6の状態からクラックスケールを移動させた状態を示す説明図である。
図8】本発明のひび割れ寸法測定方法において、詳細測定を行う状態の一例を示す説明図である。
図9図8の状態からマーカーを移動させて詳細測定を行う状態を示す説明図である。
図10】本発明のひび割れ寸法測定方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
図11】本発明のひび割れ寸法測定装置によってひび割れ調査を行っている様子を示す説明図である。
図12】本発明のひび割れ寸法測定方法において、画像表示手段に表示された図面上にひび割れを再現した状態の一例を示す説明図である。
図13】本発明のひび割れ寸法測定方法において、画像表示手段に表示されたひび割れ画像によって詳細測定を行う状態の一例を示す説明図である。
図14】本発明によって得られる調査報告書の一例を示す説明図である。
図15】本発明によって得られる調査報告書の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のひび割れ寸法測定装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るひび割れ寸法測定装置10の基本的な構成を示す説明図である。同図に示すように、本実施形態のひび割れ寸法測定装置10は、少なくとも撮影手段12、画像表示手段14及び換算係数設定手段を含んで構成される。
【0026】
本実施形態のひび割れ寸法測定装置10に係る撮影手段12は特に限定されないが、図1及び図2に示すようなマイクロスコープ13が好適である。このマイクロスコープ13によって基準スケールSSを接写することによって基準スケール画像SIを得ることができ、調査対象であるひび割れCを接写することによってひび割れ画像CIを得ることができる。
【0027】
また、本実施形態に係る画像表示手段14も特に限定されないが、図1に示すようなタブレット端末15が好適である。この画像表示手段14であるタブレット端末15の表示部16に、基準スケールSSを撮影して得られた基準スケール画像SI及び調査対象のひび割れCを撮影して得られたひび割れ画像CIが表示されることとなる。
【0028】
なお、本実施形態に係る基準スケールSSの撮影及びひび割れCの撮影において、通常のカメラ撮影と同様、撮影手段12が備える撮影ボタン17を押して基準スケールSS及びひび割れCを直接撮影することによって得られる画像を基準スケール画像SI及びひび割れ画像CIとしてもよい。或いは、撮影手段12(本実施形態ではマイクロスコープ13)によって画像表示手段14(本実施形態ではタブレット端末15)の表示部16に表示された基準スケールSS及びひび割れCの画像をキャプチャすることによって、基準スケール画像SI及びひび割れ画像CIとしてもよい。本実施形態では後者、すなわち、画像表示手段14に表示された基準スケールSS及びひび割れCの画像をキャプチャすることによって、基準スケール画像SI及びひび割れ画像CIとする。
【0029】
更に、本実施形態のひび割れ寸法測定装置10は、基準スケールSSにおける任意の2点間の基準長SLに基づいて、画像表示手段14の表示部16に表示された基準スケール画像SIにおけるこの任意の2点間の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出する換算係数設定手段を備える。本実施形態に係る換算係数設定手段は、画像表示手段14であるタブレット端末15に導入されるソフトウェア、或いは、画像処理用に準備した他のPC等のハードウェアに導入されるソフトウェアによって実行される。
【0030】
そして、本実施形態のひび割れ寸法測定装置10は、換算係数設定手段によって算出された換算係数に基づいて作製され、画像表示手段14であるタブレット端末15の表示部16に表示可能なクラックスケール18を備えることを特徴とする。
【0031】
以上の構成から成る本実施形態のひび割れ寸法測定装置10によるひび割れ寸法測定方法について、図3に基づいて説明する。図3のフローチャートに示すように、まずはステップS1において、撮影手段12によって基準スケールSSを撮影し、基準スケール画像SIを取得する。
【0032】
次に、ステップS2において、基準スケールSSを撮影したときと同じ状態の撮影手段12によって調査対象のひび割れCを撮影し、ひび割れ画像CIを取得する。ここで、撮影手段12が基準スケールSSを撮影したときと同じ状態とは、基準スケールSSを撮影したときに調節したピントを変更せず、基準スケールSSを撮影したときの撮影手段12と基準スケールSSとの距離と同じ撮影距離でひび割れCを撮影することを意味する。
【0033】
調査対象であるひび割れCの画像(ひび割れ画像CI)を取得したら、ステップS3において、基準スケール画像SIを画像表示手段14に表示する。ここで、上記のステップS1及びステップS2の作業が終了したら、このステップS3以降の作業は、本実施形態に係る画像表示手段14であるタブレット端末15に限らず、換算係数設定手段を実行可能なソフトウェアが導入されたPC等の他のハードウェアでも行うことができる。つまり、本実施形態のひび割れ寸法測定方法によると、基準スケール画像SI及び調査対象であるひび割れCの画像を取得後は、調査現場を離れてもひび割れ寸法の測定が可能である。なお、以下では、まずタブレット端末15を使用したひび割れ寸法の簡易測定方法について説明する。
【0034】
ステップS3において、基準スケール画像SIを画像表示手段14に表示したら、ステップS4において以下の画像処理を行う。図4は、本実施形態に係る画像表示手段14のタブレット端末15に導入した、本実施形態のひび割れ寸法測定方法を実行するためのソフトウェアのウィンドウWに、撮影手段12によって撮影した基準スケールSSの画像(基準スケール画像SI)を表示した状態を示している。このソフトウェアは換算係数設定手段を備える。なお、ソフトウェアのウィンドウWは一例であって、ウィンドウWの表示が図4の内容に限定されるものではない。
【0035】
図4では、基準スケールSSにおける70mm~80mmの間の目盛を中心に撮影された基準スケール画像SIが画像表示手段14に表示されている。基準スケールSSにおける任意の2点間、具体的には70mmの位置をポイントP1、80mmの位置をポイントP2とすると、このポイントP1、P2間の基準長SLは10mmとなる。
【0036】
一方、画像表示手段14に表示された基準スケール画像SIにおける任意の2点、70mmのポイントP1と80mmのポイントP2のそれぞれの座標から、ポイントP1、P2間の画素数が算出できる。従って、ポイントP1、P2間の基準長(本実施形態では基準長SL=10mm)に基づいて、基準スケール画像SIにおけるポイントP1、P2間の画素数から、画像表示手段14における長さと画素数との換算計数を算出することができる。
【0037】
ステップS4において換算計数が算出されたら、ステップS5において、ステップS2で取得したひび割れ画像CIを画像表示手段14に表示する。図5は、本実施形態に係る画像表示手段14のタブレット端末15に導入した、本実施形態のひび割れ寸法測定方法を実行するためのソフトウェアのウィンドウWに、ひび割れ画像CIを表示した状態の一例を示している。
【0038】
ステップS6において簡易測定を選択した場合、ステップS7において、ステップS4で算出された換算計数に基づいてクラックスケールCSが作製される。クラックスケールCSは、従来のひび割れ調査において使用されているものと同様のデザインを備える画像であって、本実施形態で作製されるクラックスケールCSには、主として0.05mmきざみに0.05mm~1.3mmの太さの直線が表示されている。
【0039】
そして、ステップS8において、画像表示手段14に表示されたひび割れ画像CIにクラックスケールCSを重ねて表示する。図6に、ひび割れCを撮影したひび割れ画像CIにクラックスケールCSを重ねて表示した状態を示す。
【0040】
ステップS8で表示されたクラックスケールCSを、ステップS9において、図7に示すようにひび割れ画像CI上で移動させることによって、画像表示手段14においてひび割れCの寸法を目視により簡単に測定することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態のひび割れ寸法測定方法に係る簡易測定方法によると、ひび割れCの発生箇所である調査現場において、クラックスケールCSが表示された画像表示手段14を用いて容易に寸法測定ができる。一方、基準スケール画像SI及びひび割れ画像CIがあれば、調査現場を離れてもひび割れCの寸法を容易に測定することができる。
【0042】
また、画像表示手段14において、ひび割れ画像CIにクラックスケールCSを重ねた状態の画像をキャプチャすることによって、調査データの収集・管理、調査報告書等の資料の作製を容易に行うことができ、作業効率の大幅な向上を図ることができる。
【0043】
以上、本発明のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法の一実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上記のものに限定されない。
【0044】
例えば、図3のフローチャートに示すように、ステップS6において、ひび割れ寸法の簡易測定を選択せず、実寸法の測定(以下、「詳細測定」という。)を選択した場合は、ステップS11において、画像表示手段14に表示されたひび割れ画像CIにおける所定の2点間の画素数から、ステップS4で算出された換算係数を用いてこの所定の2点間の実寸法を算出する。図8に示すように、画像表示手段14に表示されたひび割れ画像CIにおいて、ひび割れCにおける所定のポイントP3を選択すると、ポイントP3を通過する基準線L1と、この基準線L1に直交し、もう一方のポイントP4の位置を選択するためのマーカーMの位置を通過する寸法線D、及びポイントP4(マーカーM)の位置を通過し、基準線L1に並行かつ寸法線Dに直交する対向線L2が表示される。これら基準線L1、対向線L2及び寸法線Dは、マーカーMの移動にあわせてポイントP3を中心にして回動し、マーカーMの位置に応じて寸法線Dは伸縮する。
【0045】
そして、図9に示すように、マーカーMによって所定のポイントP4を決定すると、ひび割れ画像CIにおけるポイントP3、P4の各座標からポイントP3、P4間の画素数が算出され、ステップS4で算出された換算係数を用いることによって、ひび割れCにおけるポイントP3、P4間の実寸法を測定することができる。
【0046】
また、ひび割れCにおけるポイントP3、P4間の実寸法を測定する場合でも、上記の実施形態と同様に、画像表示手段14において、ひび割れ画像CIに基準線L1、寸法線D、対向線L2を表示した状態の画像をキャプチャすることによって、ひび割れCにおけるどの位置のひび割れ寸法を測定したのか、また調査データの収集・管理、調査報告書等の資料の作成を容易に行うことができ、作業効率の大幅な向上を図ることができる。
【0047】
ステップS11における詳細測定を実行後、ステップS12において改めて簡易測定を選択した場合は、ステップS7においてクラックスケールCSを作製した上で簡易測定が実施可能である。例えば、詳細測定により実寸法を測定後、調査報告書等の資料作成用として、ひび割れ画像CIにクラックスケールCSを重ねた状態の画像をキャプチャ保存することも可能である。なお、ステップS11における詳細測定の実行後、簡易測定が必要ない場合はそのまま終了する。
【0048】
また、ステップS6において簡易測定を選択し、ステップS7~ステップS9に係る簡易測定の実行後、ステップS10において詳細測定を選択した場合は、ステップS13において、上記のステップS11と同様の詳細測定を実施することができる。
【0049】
以上、本発明のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法の他の実施形態について説明したが、本発明のひび割れ寸法測定装置に係る撮影手段には、この撮影手段に外嵌可能なホルダーを備えることが好ましい。
【0050】
具体的には、図2に示すように、本実施形態に係る撮影手段12であるマイクロスコープ13に外嵌可能なホルダー20を備えることが好ましい。ホルダー20はマイクロスコープ13に外嵌可能な筒状をなし、マイクロスコープ13に外嵌した状態で、マイクロスコープ13が備えるピント調節ダイヤル18を露出させるための開口部21を備えている。
【0051】
図10のフローチャートに示すように、ホルダー20を使用する場合は、先ずステップSaにおいて、撮影手段12であるマイクロスコープ13にホルダー20を外嵌する(図2(a)参照)。そして、ステップS1において、撮影手段12で基準スケールSSを撮影して基準スケール画像SIを取得するが、このとき、ホルダー20が備える開口部21からマイクロスコープ13のピント調節ダイヤル18を回してピント調節を行う。
【0052】
ステップS1において基準スケール画像SIを取得すると、ステップSbにおいて、ホルダー20が備える開口部21からマイクロスコープ13のピント調節ダイヤル18が露出しないようにホルダー20を回転させ(図2(b)参照)、撮影手段12のピント調節を物理的に不可能とする(図2(c)参照)。ホルダー20を回転させた後は、ステップS2以降を順次行うことによって、ひび割れ寸法の測定を行うことができる。
【0053】
このように、撮影手段12にホルダー20を外嵌することによって、撮影手段12のピント調節が物理的に不可能となり、基準スケール画像SIを取得したときと同じピント、同じ撮影距離で調査対象のひび割れCを撮影することができ、測定誤差の発生がなく、複雑な画像処理を行う必要もない。
【0054】
また、本発明の他の実施形態として、撮影手段又は画像表示手段がGPSを備えることが好ましい。特に、撮影手段がGPSを備えることによって、ひび割れの撮影時に、ひび割れ箇所の位置情報を取得することができる。
【0055】
例えば、図11に示すように、調査対象の構造物Aにおいて、ひび割れCに係るひび割れ撮影箇所C1~C5のひび割れ画像CI1~CI5を、GPSを備えた撮影手段によってひび割れ撮影箇所C1~C5の位置情報と共に取得する。また、調査対象の構造物Aにおいて基準となるポイント、例えば基準点P0の位置情報も取得する。
【0056】
そして、図12に示すように、画像表示手段14に表示した構造物Aの図面上における基準点P0の座標と位置情報の関係及び予め算出された換算係数から、ひび割れ撮影箇所C1~C5の位置情報に基づいて図面上の座標を算出することができる。そして、これらひび割れ撮影箇所C1~C5の各ポイントを繋ぐことによって、ひび割れCを図面上で概ね再現したひび割れ画像CIAを得ることができる。ひび割れ撮影箇所を増やすことによって、ひび割れCの図面上での再現性を更に向上することができる。また、ひび割れ画像CIAにおけるひび割れ撮影箇所C1~C5に、各ひび割れ撮影箇所C1~C5で撮影して得られた各ひび割れ画像CI1~CI5をひも付けすることができる。
【0057】
図13は、ひび割れ撮影箇所C3において取得したひび割れ画像CI3を画像表示手段14に表示した状態を示す。ひび割れ撮影箇所C3における所定のポイントP5を選択し、マーカーMによって所定のポイントP6を決定すると、ひび割れ画像CI3におけるポイントP5、P6の各座標からポイントP5、P6間の画素数が算出され、予め算出しておいた換算係数を用いることによって、ひび割れ撮影箇所C3におけるポイントP5、P6間の実寸法を測定することができる。
【0058】
上記のように、ひび割れ箇所の位置情報も撮影と同時に取得することによって、例えば図14に示すような報告書を作成したり、図15に示すように、ひび割れ箇所の経時変化を管理したりする際に非常に有益な情報となる。なお、図14図15に示した報告書等はその一例であって、報告書の様式等は図示したものに限定されない。
【0059】
また、ひび割れ箇所の位置情報を活用することによって、調査現場の図面等にひび割れ箇所やひび割れ図を再現することも可能となる。更には、複数のひび割れ箇所の位置情報を繋ぐことによって、ひび割れ長さを算出することも可能となる。
【0060】
以上、本発明の種々の実施形態について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。例えば、本発明のひび割れ寸法測定装置及びひび割れ寸法測定方法において、上記の実施形態に係る換算係数設定手段では、基準スケールSSにおける任意の2点間(70mmと80mm)の基準長SL(10mm)に基づいて、画像表示手段14に表示された基準スケール画像SIにおける任意の2点間(70mmと80mm)の画素数から、長さと画素数との換算係数を算出した。
【0061】
そこで、基準スケールとして、例えば、2点間の距離が10mmに設定された任意の2点が予め表示されたガラス板等を準備する。そして、図3に示したフローチャートで説明すると、ステップS1において、撮影手段12でこの基準スケールSSを撮影して基準スケール画像SIを取得し、換算係数設定手段に基準スケール画像SIにおける任意の2点を自動認識させることによって、基準長SLは予め10mmに設定されているため、ステップS4に係る換算係数の算出を自動的に行うことが可能となる。つまり、上記の実施形態のように、画像表示手段14に表示された基準スケール画像SIにおいて任意の2点を選択することなく、基準スケール画像SIを取得するのみで、容易に換算係数を算出することが可能となる。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0062】
10:ひび割れ寸法測定装置
12:撮影手段
14:画像表示手段
18:ピント調節ダイヤル
20:ホルダー
21:開口部
SS:基準スケール
SI:基準スケール画像
SL:基準長
C:ひび割れ
CI:ひび割れ画像
CS:クラックスケール

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15