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特許7286156索条牽引式輸送設備における保安装置の診断装置
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  • 特許-索条牽引式輸送設備における保安装置の診断装置 図1
  • 特許-索条牽引式輸送設備における保安装置の診断装置 図2
  • 特許-索条牽引式輸送設備における保安装置の診断装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】索条牽引式輸送設備における保安装置の診断装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 12/10 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
B61B12/10 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019164330
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021041781
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】日比谷 敏行
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-115428(JP,A)
【文献】特開2008-239084(JP,A)
【文献】特開2001-218865(JP,A)
【文献】特開昭63-300973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0029348(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107244324(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0044273(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/00-12/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の異常を検出する保安装置と、該保安装置に接続回路により接続され前記保安装置の信号により動作する保安装置側リレーと、設備の運行を制御するPLCの入力側に接続されて、前記保安装置側リレーの信号により動作する制御装置側リレーと、前記PLCの入力側に接続された診断スイッチと、前記PLCの出力側と前記接続回路とを接続する診断回路とを備え、前記診断スイッチの信号により、前記保安装置の信号と同一の信号を前記PLCの出力側から前記診断回路へ出力することを特徴とする索条牽引式輸送設備における保安装置の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道や鋼索鉄道等の索条牽引式輸送設備において、設備の異常を検出する保安装置の診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
索条牽引式輸送設備は、搬器や車両を索条に連結し、この索条を駆動することにより人や貨物を輸送する設備であり、各種の索道や鋼索鉄道として知られている。索条牽引式輸送設備においては、停留場に索条を巻き掛ける滑車を設置し、この滑車に連結した電動機を制御することにより滑車が回転して索条が駆動され、搬器や車両が線路中を移動する。
【0003】
索条牽引式輸送設備には、運行の安全を確保するために各種の保安装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。保安装置としては、例えば、乗客が定位置で降車できずに乗り越したことを検出する乗越検出器や、滑車の逆転を検出する逆転検出器、制動装置が開放していることを検出する制動装置開放検出器などがある。これらの検出器には各種のセンサやスイッチを備えており、各センサやスイッチの信号は、上記の電動機等を制御する制御装置に入力されている。そして、これらの保安装置が異常を検出すると、制御装置が電動機や制動機を制御して索条の駆動を停止するとともに、運転室や監視室に備えた表示器に異常箇所を表示するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-139231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の技術においては、次のような問題があった。保安装置が動作して上記のように表示器に異常箇所が表示された場合には、係員が当該箇所へ行って異常の確認を行う。このときに、異常を示された箇所に何ら異常が認められない場合があり、このような場合には、センサやスイッチの故障等による保安装置自体の故障や、制御装置内部の電気的回路の故障が考えられ、これらの箇所を検査する必要がある。
【0006】
しかしながら、保安装置が設置された機械装置等の場所と、制御装置が設置された運転室の場所とは距離が離れた位置にあり、また、保安装置が高い位置に設置されていることもある。したがって、係員はこれらの間を移動して検査を行わねばならず、検査を行うのにあたり係員の作業が煩雑なものになっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、保安装置の検査作業を簡略化でき、効率的に検査を行うことができる索条牽引式輸送設備における保安装置の診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、設備の異常を検出する保安装置と、該保安装置に接続回路により接続され前記保安装置の信号により動作する保安装置側リレーと、設備の運行を制御するPLCの入力側に接続されて、前記保安装置側リレーの信号により動作するPLC側リレーと、前記PLCの入力側に接続された診断スイッチと、前記PLCの出力側と前記接続回路とを接続する診断回路とを備え、前記診断スイッチの信号により、前記保安装置の信号と同一の信号を前記PLCの出力側から前記診断回路へ出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不具合要因が制御装置内にあるのか制御装置外にあるのかを識別して確認できるので、制御装置内外のいずれかを検査すれば良いため、保安装置の検査作業を簡略化することができ、検査を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】チェアリフトの設備全体を示す模式図
図2】保安装置と制御装置間の電気回路の概略図
図3】モニターに表示された診断画面
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、索条牽引式輸送設備の代表例としてチェアリフトの設備全体を示す模式図である。起点停留場10と終点停留場11には、それぞれ折返し滑車12と原動滑車13とを回転自在に備え、これらの滑車12、13間に索条14を無端状に張架している。線路中には地形に応じて支柱15を立設し、索条14を移動可能に支持している。終点停留場11の原動滑車13は、減速機16及び電動機17等からなる駆動装置に連結されており、これを駆動することにより原動滑車13が回転して索条14が線路に沿って循環移動する。終点停留場11には制御装置19が備えられており、これにより電動機17等が制御される。索条14には、椅子式の搬器18が所定の間隔で取り付けられており、起点停留場10と終点停留場11との間で人員の輸送を行う。
【0012】
各停留場10、11には、運行上の安全を確保するために各種の保安装置20を備えている。保安装置20には、例えば、乗客が定位置で降車できずに乗り越したことを検出する乗越検出器や、滑車の逆転を検出する逆転検出器、制動装置が開放していることを検出する制動装置開放検出器などがある。これらの保安装置20には、リミットスイッチや近接スイッチ等のセンサを備えており、これらセンサの発信信号は、制御装置19に入力される。いずれかの保安装置20が異常を検知すると、この保安装置20からの信号により制御装置19は電動機17を停止するとともに制動機を動作させて運行を停止し、運転盤等に備えたモニターに異常箇所を表示する。
【0013】
図2は、保安装置20と制御装置19間の電気回路の概略図である。図においては、一つの保安装置20についての回路構成を示しているが、各保安装置20についてそれぞれ同様の回路が構成されている。制御装置19内には、保安装置側リレー21、制御装置側リレー22とPLC(プログラマブル ロジック コントローラー)23とを備えている。保安装置側リレー21は、制御装置19の外部に備えた保安装置20へ接続回路25を介して接続されており、保安装置20が異常を検知して発する検出信号によりOFFとなる。一方、PLC23の入力側には、制御装置側リレー22が接続されており、保安装置側リレー21がOFFとなると制御装置側リレー22がOFFとなる。この信号を受けてPLC23は、電動機17の停止や制動機の作動など、チェアリフトの運行を停止する制御信号を出力側から発信する。
【0014】
また、PLC23の出力側には、接続回路25に接続されている診断回路24が形成されており、また、入力側には運転盤のモニターで操作する診断スイッチ26が接続されている。そして、診断スイッチ26が作動すると、保安装置20が正常なときに発信する検出信号と同一の信号がPLC23の出力側から診断回路24へ出力される。
【0015】
以上の構成により、いずれかの保安装置20から信号が発信されると上記したように保安装置側リレー21がOFFとなり、これにともなって制御装置側リレー22がOFFとなり、PLC23がこれを検知してリフトを停止するように制御を行いリフトが停止する。そして係員は、運転盤のモニターにて異常発生箇所を確認し、当該異常発生箇所に出向いて確認及び点検を行う。このときに、保安装置20の設置箇所において実際には異常が発生していない場合には、上記回路に不具合要因があり、これを特定する必要がある。このような場合に係員は、次のようにして診断を行う。
【0016】
図3は、運転盤に備えたモニターに表示された診断画面である。モニター27は、タッチパネル式のモニター27であって、診断画面には、診断スイッチ26と各保安装置20に対応した状態表示記号28とが表示されていおり、診断を行う場合に運転係員は、診断スイッチ26にタッチして診断を開始する。診断スイッチ26をタッチするとモニター27からPLC23へ信号が送信され、これを受信したPLC23は、出力側から診断回路24へ信号を送出する。これにより回路上では、擬似的に保安装置20が正常に動作した状態となる。
【0017】
制御装置19内の回路が正常な場合には、保安装置側リレー21及び制御装置側リレー22が動作し、これによりPLC23からモニター27に信号が発信されて、モニター27上の状態表示記号28が、例えば青色に発色する。この表示により運転係員は、制御装置19の外側の回路に不具合要因があることを知ることができる。反対に、制御装置19内の断線や保安装置側リレー21又は制御装置側リレー22の故障などがあるとPLC23に信号が入力されず、これをPLC23が判定してモニター27の状態表記記号28が、例えば赤色に発色するように制御する。この表示により運転係員は、制御装置19の内部の回路に不具合要因があることを知ることができる。
【0018】
このように本発明によれば、係員は回路上の不具合要因が制御装置19内にあるのか、又は制御装置19外にあるのかを容易に判断できるので、その後の検査作業を簡略化でき、効率的に検査を行うことができる。なお、上記の説明においては、索条牽引式輸送設備の一例としてチェアリフトを示したが、本発明は各種の索道や鋼索鉄道等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 起点停留場
11 終点停留場
12 折返し滑車
13 原動滑車
14 索条
15 支柱
16 減速機
17 電動機
18 搬器
20 保安装置
21 保安装置側リレー
22 制御装置側リレー
23 PLC
24 診断回路
25 接続回路
26 診断スイッチ
27 モニター
28 状態表示記号
図1
図2
図3