(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】防音型タンピングランマー
(51)【国際特許分類】
F01N 13/00 20100101AFI20230529BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20230529BHJP
E01C 19/34 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
F01N13/00 C
F01N13/08 D
E01C19/34 A
(21)【出願番号】P 2020186338
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000175386
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】四分一 裕起
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-021500(JP,A)
【文献】実開昭57-046021(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00
F01N 13/08
E01C 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンブロックの下部又は側部に消音マフラーが固定された防音型タンピングランマーであって、
エンジンブロックに固定される固定部と、その反対側において固定部と対向する外側部と、固定部と外側部とを接続する二つの接続部とを有するボックス型又は筒状のブラケットを備え、
ブラケットの内側において、
消音マフラーのエンジン側の面の一部が、ブラケットの固定部から外側部に向かって突出した突出部に当接するとともに、消音マフラーの外側面の一部が、ブラケットの外側部に配置又は形成された第一スペーサーに当接することにより、消音マフラーを固定部と外側部の間に挟持した状態で保持できるように構成され
、
消音マフラーが、外側面において第一スペーサーに当接する部分から、エンジン側の面においてブラケットの突出部に当接する部分まで貫通する貫通孔を有し、
第一スペーサーがボルト挿通孔を有し、
ブラケットの突出部がネジ受け部を有し、
第一スペーサーのボルト挿通孔、及び、消音マフラーの貫通孔にボルトを挿通し、ボルトの上端を、ブラケットの突出部のネジ受け部に差し込み、締め付けることにより、ブラケットの固定部、消音マフラー、及び、ブラケットの外側部を連結できるように構成されていることを特徴とする防音型タンピングランマー。
【請求項2】
消音マフラーが、エンジン側の面において開口する排気流入口を有し、この排気流入口の周縁部が排気管の下端のフランジに当接するとともに、外側面の一部がブラケットの外側部に配置又は形成された第二スペーサーに当接するように構成され、更に、外側面において第二スペーサーに当接する部分から、エンジン側の面において排気管の下端のフランジに当接する部分まで貫通する貫通孔を有し、
第二スペーサーがボルト挿通孔を有し、
第二スペーサーのボルト挿通孔、及び、消音マフラーの貫通孔にボルトを挿通し、ボルトの上端を、排気管のフランジに形成されているネジ孔に差し込み、締め付けることにより、排気管、消音マフラー、及び、ブラケットを連結できるように構成されていることを特徴とする、請求項
1に記載の防音型タンピングランマー。
【請求項3】
上端がエンジンの排気ポートに接続され、下端が消音マフラーに接続される一体型の排気管が取り付けられていることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の防音型タンピングランマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤や路面の締め固め作業に用いられるタンピングランマーに関し、特に、消音マフラーによってエンジンの排気音を低減した防音型のタンピングランマーに関する。
【背景技術】
【0002】
原動機としてエンジン(内燃機関)を搭載した一般的なタンピングランマーは、シリンダーの排気ポートの外側開口部に小型の簡易マフラーが直結されているものが多い。このような小型の簡易マフラーは、十分な消音効果を有していないため、ランマーの稼働時において相応の排気音が発生することになる。従って、住宅街や病院等の周辺における作業、或いは、夜間作業においては、稼働時の排気音を可能な限り低減できるように構成した防音型ランマーの使用が求められることがある。
【0003】
従来の防音型ランマーの一例を
図5に示す。この防音型ランマー90においては、エンジンブロック92の下側に、大型の消音マフラー93が、ブラケット91を介して(消音マフラー93の筐体の上部に取り付けたブラケット91を、エンジンブロック92の下部に固定することにより)取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンピングランマーは、稼働時に大きな振動が発生するため、
図5に示す従来の防音型ランマー90のように、中間に配置したブラケット91によって、エンジンブロック92の下側に消音マフラー93を固定する構造を採用した場合、消音マフラー93の筐体の上部(ブラケット91を取り付けた部分)に大きな負担がかかることになり、稼働時間の累積によって筐体が疲労し、損傷してしまう可能性がある。つまり、消音マフラー93の耐久性を十分に確保することが難しいという問題がある。
【0006】
また、エンジンブロック92の下側に消音マフラー93を取り付けた場合、ランマー90の転倒、或いは、異物(土砂等)の衝突等の外的要因により、消音マフラー93が損傷を受ける可能性がある。
【0007】
従って、従来の防音型ランマーは、稼働時の振動や外力(ランマーの転倒や、異物の衝突等)によってマフラーが容易に損傷しないように、設計時におけるマフラー選定の条件として、「筐体が十分な剛性を有していること」が考慮されていた。しかしながらこの場合、エンジンの排気量に対する消音性能、重量、及び、部品コストが過剰(オーバースペック)となってしまうことがある。換言すれば、より適正な消音性能、重量、及び、コストのマフラーが存在している場合であっても、筐体の剛性が不足している場合には、採用することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、ランマー稼働時の振動や外力によるマフラーの損傷を好適に回避することができ、エンジンの排気量に見合った適正な性能、重量、及び、コストのマフラーを採用することができる防音型タンピングランマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防音型タンピングランマーは、エンジンブロックの下部又は側部に消音マフラーが固定され、エンジンブロックに固定される固定部と、その反対側において固定部と対向する外側部と、固定部と外側部とを接続する二つの接続部とを有するボックス型又は筒状のブラケットを備え、ブラケットの内側において、消音マフラーを固定部と外側部の間に挟持した状態で保持できるように構成されていることを特徴としている。
【0010】
尚、この防音型タンピングランマーにおいては、消音マフラーのエンジン側の面の一部が、ブラケットの固定部から外側部に向かって突出した突出部に当接するとともに、消音マフラーの外側面の一部が、ブラケットの外側部に配置又は形成された第一スペーサーに当接することにより、固定部と外側部の間に消音マフラーが挟持されていることが好ましい。
【0011】
また、消音マフラーが、外側面において第一スペーサーに当接する部分から、エンジン側の面においてブラケットの突出部に当接する部分まで貫通する貫通孔を有し、第一スペーサーがボルト挿通孔を有し、ブラケットの突出部がネジ受け部を有し、第一スペーサーのボルト挿通孔、及び、消音マフラーの貫通孔にボルトを挿通し、ボルトの上端を、ブラケットの突出部のネジ受け部に差し込み、締め付けることにより、ブラケットの固定部、消音マフラー、及び、ブラケットの外側部を連結できるように構成されていることが好ましい。
【0012】
更に、消音マフラーが、エンジン側の面において開口する排気流入口を有し、この排気流入口の周縁部が排気管の下端のフランジに当接するとともに、外側面の一部がブラケットの外側部に配置又は形成された第二スペーサーに当接するように構成され、外側面において第二スペーサーに当接する部分から、エンジン側の面において排気管の下端のフランジに当接する部分まで貫通する貫通孔を有し、第二スペーサーがボルト挿通孔を有し、第二スペーサーのボルト挿通孔、及び、消音マフラーの貫通孔にボルトを挿通し、ボルトの上端を、排気管のフランジに形成されているネジ孔に差し込み、締め付けることにより、排気管、消音マフラー、及び、ブラケットを連結できるように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、上端がエンジンの排気ポートに接続され、下端が消音マフラーに接続される一体型の排気管が取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る防音型タンピングランマーは、ランマー稼働時の大きな振動によるマフラーの損傷を回避し、十分な耐久性を確保することができるほか、外力によるマフラーの損傷を好適に回避することができる。
【0015】
また、本発明に係る防音型タンピングランマーは、例えば筐体が薄肉材料で形成されているようなマフラーであっても採用することができ、その結果、消音性能、重量、及び、コストが、適正な(エンジンの排気量に見合った)マフラーを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態において用いられる消音マフラー用のブラケット1の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すブラケット1に消音マフラー6を取り付ける方法の説明図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すブラケット1に消音マフラー6を取り付ける方法の説明図である。
【
図5】
図5は、従来の防音型ランマー90の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に沿って本発明「防音型タンピングランマー」の実施形態について説明する。本発明の第一実施形態に係る防音型タンピングランマーは、
図5に示す従来の防音型ランマー90と同様に、消音マフラーが、タンピングランマーのエンジンブロックの下部に固定されている。但し、消音マフラーを固定する手段として、
図1及び
図2に示すようなブラケット1が用いられている点で特徴を有している。
【0018】
図1は、本発明の第一実施形態において用いられる消音マフラー用のブラケット1の斜視図、
図2は断面斜視図である。このブラケット1は、タンピングランマーのエンジンブロックに固定される固定部2と、その反対側において固定部2と対向する外側部3と、固定部2と外側部3の両側縁同士をそれぞれ接続する二つの接続部4,4とを有し、更に、背面側(
図1及び
図2における奥側)において固定部2、外側部3、及び、接続部4,4の背面側の端縁とそれぞれ接続され、背面側を閉塞する背面側部5を有している。
【0019】
このように本実施形態のブラケット1は、五つの方向(上方、下方、左右の側方、及び、背面側)が閉じられ、一方(開口部11)が開放されたボックス型に形成されているが、背面側部5を全面的に(或いは部分的に)開放することによって筒状に形成することもできる。
【0020】
図示されているようにブラケット1の固定部2には、固定用ボルト(図示せず)を挿通するためのボルト穴21が複数個(本実施形態においては四つ)形成されており、これらのボルト穴21に対してそれぞれ下側(外側部3側)から挿通したボルトを、エンジンブロックの下部に形成されているボルト受け部に差し込んで締め付けることにより、エンジンブロックの下側にブラケット1をしっかりと固定できるようになっている。また、固定部2の開口部11側の位置には、ブラケット1の内側空間への排気管のアクセスを容易にするための切欠22が形成されている。
【0021】
ブラケット1の内部には、
図2に示すように、消音マフラーを安定的に保持するための突出部24、第一スペーサー31、及び、第二スペーサー32,33が配置されている。突出部24は、固定部2の下面から外側部3に向かって突出するように構成されており、中心部にネジ受け部25(ボルトを螺合させることができる孔)が形成されている。第一スペーサー31、及び、第二スペーサー32,33は、外側部3の上面から固定部2に向かって突出するように構成されており、内部にはボルト挿通孔34がそれぞれ形成されている。尚、これらのボルト挿通孔34は外側部3を貫通しており、外側部3の外側からボルトを挿通できるようになっている。
【0022】
図3及び
図4は、ブラケット1に消音マフラー6を取り付ける方法の説明図である。
図3に示すように、ボルト26によってエンジンブロックの下側に固定された状態のブラケット1の内部に、開口部11から消音マフラー6を進入させる。そして、消音マフラー6のエンジン側の面(
図3において死角となる上方側の面)の一部を固定部2の突出部24に当接させるとともに、消音マフラー6の外側面(
図3に示す下方側の面)の一部を、外側部3の第一スペーサー31、及び、第二スペーサー32,33にそれぞれ当接させる。
【0023】
尚、本実施形態においては、消音マフラー6の排気流入口(図示せず)が、エンジン側の面において開口し、この排気流入口の周縁部に、排気管の下端のフランジを当接させて固定できるように構成されている。また、消音マフラー6には、三つの貫通孔61,62,63が形成されている。これらのうち貫通孔61は、消音マフラー6の外側面において第一スペーサー31に当接する部分から、エンジン側の面において突出部24に当接する部分まで貫通し、貫通孔62,63は、消音マフラー6の外側面において第二スペーサー32,33に当接する部分から、エンジン側の面において排気管の下端のフランジに当接する部分まで貫通している。
【0024】
そして、
図4に示すように外側部3の外側(
図4において下方側)から、第一スペーサー31のボルト挿通孔34、及び、消音マフラー6の貫通孔61にボルト71を挿通し、その上端を、突出部24のネジ受け部25に差し込み、締め付けることにより、ブラケット1の固定部2、消音マフラー6、及び、ブラケットの外側部3を連結することができ、消音マフラー6を固定部2と外側部3の間にしっかりと挟持した状態で安定的に保持することができる。
【0025】
また、第二スペーサー32,33のボルト挿通孔34、及び、消音マフラー6の貫通孔62,63にボルト72,73をそれぞれ挿通し、それらの上端を、排気管8のフランジ81に形成されているネジ孔82にそれぞれ差し込み、締め付けることにより、排気管8、消音マフラー6、及び、ブラケット1を連結することができ、従って、ランマー稼働時の大きな振動による消音マフラー6の損傷を回避し、十分な耐久性を確保することができる。
【0026】
また、消音マフラー6は、ランマーが転倒した場合や、異物が衝突した場合でも、ブラケット1によって全体的に覆われるように構成されているため、外力による消音マフラー6の損傷を好適に回避することができる。
【0027】
尚、従来の防音型ランマーにおいては、エンジン(シリンダー)の排気ポートとマフラーとが、二分割型の排気管によって接続されていたが、本実施形態においては、一体型の(上端が排気ポートに接続され、下端が消音マフラー6に接続される)排気管8が採用されており、締結箇所を少なくすることができ、強度の向上を期待することができる。また、排気管8の弾性を利用することで、消音マフラー6の固定保持をアシストできるという効果も期待することができる。
【0028】
また、従来の防音型ランマーは、設計時における消音マフラー選定の条件として、「筐体が十分な剛性を有していること」が考慮されていたため、消音性能、重量、及び、部品コストが過剰な消音マフラーが採用されてしまうことがあったが、本発明に係る防音型ランマーにおいては、上述した通り、消音マフラー6を固定部2と外側部3との間に挟持して安定的に保持することができるほか、消音マフラー6がブラケット1によって全体的に覆われるように構成されているため、ランマー稼働時の振動や外力から消音マフラー6を好適に保護することができ、従って、例えば筐体が薄肉材料で形成されているような消音マフラーであっても採用することができる。その結果、消音性能、重量、及び、コストが、適正な(エンジンの排気量に見合った)消音マフラーを採用することができる。
【0029】
尚、上記実施形態においては、第一スペーサー31、及び、第二スペーサー32,33が、ブラケット1の外側部3の上に載置される構成となっている(ブラケット1に対して独立した部材として構成されている)が、ブラケット1の外側部3の上に予め固定(溶接)すること(或いは、外側部3の一部をプレス加工等によって部分的に変形させること等)により、ブラケット1と一体的に構成することもできる。
【0030】
また、上記実施形態においては、消音マフラー6が、ブラケット1によって覆われた状態でエンジンブロックの下側に固定されているが、エンジンブロックの側方(右側、左側、フロント側、又は、リア側)に固定される構成を採用することもできる。この場合、ブラケット1及び消音マフラー6は、
図4に示す姿勢から約90°回転させた姿勢でエンジンブロックに固定されることが好ましく、この場合、ブラケット1の固定部2は、エンジンブロックの側部(右側の側部、左側の側部、フロント側の側部、又は、リア側の側部)に固定されることになる。
【符号の説明】
【0031】
1:ブラケット、
11:開口部、
2:固定部、
21:ボルト穴、
22:切欠、
24:突出部、
25:ネジ受け部、
26:ボルト、
3:外側部、
31:第一スペーサー、
32,33:第二スペーサー、
34:ボルト挿通孔、
4:接続部、
5:背面側部、
6:消音マフラー、
61~63:貫通孔、
71~73:ボルト、
8:排気管、
81:フランジ、
82:ネジ孔、
90:防音型ランマー、
91:ブラケット、
92:エンジンブロック、
93:消音マフラー、