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特許7286179AXLデコイ受容体を用いる転移性癌の治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】AXLデコイ受容体を用いる転移性癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/45 20060101AFI20230529BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230529BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20230529BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230529BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
A61K38/45 ZMD
A61K31/337
A61K47/65
A61K47/68
A61P35/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020523776
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 US2018059218
(87)【国際公開番号】W WO2019090227
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】62/681,944
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/618,916
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/581,671
(32)【優先日】2017-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513090149
【氏名又は名称】アラヴァイヴ バイオロジクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARAVIVE BIOLOGICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア,ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】プロハスカ,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】タビビアザール,レイ
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-518055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/315553(US,A1)
【文献】J Clin Invest.,2017年,Vol. 127, No. 1,pp. 183-198
【文献】Nat Chem Biol.,2014年,10(11),pp.977-983
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-31/80
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
A61P 35/00-35/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対照と比較して長期全生存を達成するために決定されたレジメンにしたがって、患者におけるヒトプラチナ耐性卵巣癌を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物が:i)可溶性AXL変異体ポリペプチド;及びii)薬学的に許容される担体を含み、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、AXL膜貫通ドメインを欠き、機能性フィブロネクチン(FN)ドメインを欠き、1つのIg1ドメインを有し、1つのIg2ドメインを有し、並びに、Gly32Ser、Ala72Val、Asp87Gly、Val92Ala、及びGly127Argからなる野生型AXL配列(配列番号:1)のアミノ酸修飾のセットを有し、前記修飾が、増殖停止特異的タンパク質6(GAS6)に結合する前記AXLポリペプチドの親和性を増大させ、前記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、Fc領域にペプチドリンカーによって融合されたものであり、
前記医薬組成物が、パクリタキセルと組み合わせて投与されるものであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、用量レジメンが、隔週で投与される10mg/kg、隔週で投与される15mg/kg、及び隔週で投与される20mg/kgからなる群から選択される前記可溶性AXL変異体ポリペプチドの治療有効量、並びに、毎週投与される10mg/m 、20mg/m 、30mg/m 、40mg/m 、50mg/m 、60mg/m 、75mg/m 、80mg/m 、90mg/m 、100mg/m 、120mg/m 、150mg/m 、175mg/m 、200mg/m 、210mg/m 、220mg/m 、230mg/m 、240mg/m 、250mg/m 、260mg/m 、及び300mg/m からなる群から選択されるパクリタキセルの治療有効量を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医薬組成物において、用量レジメンが、隔週で投与される15mg/kgの前記可溶性AXL変異体ポリペプチド、及び、毎週投与される80mg/m のパクリタキセルを含むことを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
米国仮特許出願番号第62/581,671号(2017年11月4日出願);米国仮特許出願番号第62/618,916号(2018年1月18日出願);及び米国仮特許出願番号第62/681,944号(2018年6月7日出願)の利益を主張するものであり、このすべての内容をそれぞれ参照により本明細書中に取り込む。
【0002】
配列表
本出願は、「紙のコピー」(PDFファイル)の形で配列表を含み、及びファイルは、ここに提示する、参照配列(配列番号1)をコンピュータで読める形(ST25フォーマットテキストファイル)で含む。配列表は、37C.F.R.1.822にて定義される標準的なアミノ酸の3文字表記を用いて示される。
【0003】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本研究開発は、New Company Product Development Award DP150127としてCancer Prevention & Research Institute of Texasによる援助を受けたものである。本出願に関して発行された全ての特許における権利は米国テキサス州が有し得る。
【背景技術】
【0004】
癌は、身体の他の部分に広がるか又は侵入する可能性がある異常な細胞増殖を伴う疾患群である。別個の腫瘍塊を形成する、すなわち嚢胞又は液体領域を含まない異常な増殖は、固形腫瘍として定義される。固形腫瘍は、良性(癌ではない)又は悪性(癌)であり得る。異なるタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細胞のタイプにちなんで命名される。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫、及びリンパ腫がある。2つの血球系、骨髄性及びリンパ性のいずれかに由来する癌は、血液悪性腫瘍として定義される。このような悪性腫瘍は、血液癌又は液体腫瘍とも呼ばれる。液体腫瘍の例としては、多発性骨髄腫、急性白血病(例えば、11q23陽性急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病並びに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤血白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ性白血病)、真性多血球血症、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(無痛性及び高悪性度の形態)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、ヘアリーセル白血病、及び骨髄異形成があげられる。
【0005】
癌患者に利用可能な治療は、手術、細胞縮小療法及び細胞毒性化学療法を含む併用療法に大きく依存する。残念ながら、いくつかのケースでは効果的でも、正常な組織の副作用が、しばしば用量を制限することになる毒性として現れ、腫瘍の根絶を妨げる。そして、これらのさまざまな治療法の副作用を管理できる場合でも、持続的な反応は、特に、治療的に屈折性の転移性疾患の場合、実現し難いことが多い。
【0006】
標的療法、すなわち特定の分子又はシグナル伝達経路を標的とする概念は、これらの問題に取り組み、正常な組織の副作用を低減するために開発された。しかし、ほとんどの患者は、これらの標的療法に対して反応を示さないか、反応してからすぐに再発してしまう。したがって、転移性及び難治性疾患の治療に対処する現在の標準的ケアを併用できる、より効果的な標的療法が必要とされている。
【0007】
癌の予防及び治療における治療努力は、シグナル伝達経路又は選択的調節タンパク質のレベルに注力している。プロテインキナーゼ活性、カルシウム恒常性、及び腫瘍タンパク質の活性化はシグナルを駆動しているため、治療的介入の主要な制御部位となる可能性がある。AXL受容体とその活性化リガンドである増殖停止特異的6(GAS6)は、ヒトの癌における転移と治療抵抗性の重要な原動力である。AXLは、Tyro3(又はSKY)、AXL、及びMER(O’Bryan,JR,Molecular and Cellular Biology,5016-5031,1991)を含む、受容体チロシンキナーゼのTAMファミリーに属する。GAS6は、3つの受容体すべてに共通のリガンドである。信号伝達のための重複リガンドを有する他のTAMファミリーメンバーとは対照的に、AXLの唯一の既知のリガンドはGAS6である(非常に高い天然結合親和性を備える)。GAS6-AXLシグナル伝達経路の過剰発現と活性化は、腎癌、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、及び前立腺癌を含む、様々な種類のヒトの腫瘍において重要であることが見出されてきた(Rankin,EK,PNAS,13373-13378,2014)。高度に転移性の癌におけるAXLの過剰発現は、予後不良、腫瘍の攻撃的な挙動及び治療への抵抗性に関連する。研究によると、固形腫瘍では、GAS6-AXLシグナル伝達経路の活性化により、腫瘍の浸潤と転移が促進されるだけでなく、一般的に用いられる化学療法剤に対する耐性の発現が促進される。GAS6とAXLが進行性及び難治性の癌で果たす重要な役割を考えると、このシグナル伝達軸は治療的介入の魅力的なターゲットを表す。残念ながら、GAS6とAXLの間の~30pMという非常に強い結合親和性が、競合的アンタゴニストの開発を困難なものとした。
【0008】
AXL受容体は、2つの異なるGAS6結合エピトープ:そのN末端免疫グロブリン様(Ig)ドメイン上の高親和性サイトと第2Igドメイン上の低親和性部位を含む。本発明者らは、合理的かつコンビナトリアルタンパク質工学法の組み合わせを用いてAXL Ig1上に主要部位を設計し、内因性AXLよりも高い親和性でGAS6に結合する半減期が長いAXL「デコイ受容体」を提供し、GAS6を効果的に隔離し、AXL信号伝達を抑止した。これらデコイ受容体は、in vitroで高転移性細胞の浸潤/移動を減らし、ヒトの膵臓癌、腎臓癌、乳癌、及び卵巣癌の攻撃的な前臨床モデルにおいて転移性疾患を阻害し、良性の安全プロファイルを呈する。非臨床モデルと、現在臨床で開発されている最先端の抗AXL小分子を直接比較すると、上記デコイ受容体は優れた抗腫瘍効果を発揮する一方で、薬理試験では毒性を示さなかった。さらに重要なことには、オンターゲット効果とオフターゲット効果の両方に引き起こされる有効な用量に関連する顕著な毒性のため、癌患者集団で臨床試験を開始する必要があるが、本発明者らが設計したデコイ受容体は細胞毒性薬ではない。
【0009】
特許文献13/554,954;13/595,936;13/714,875;13/950,111;14/712,731;14/650,852;14/650,854;14/910,565;US2011/022125;US2013/056435;US2012/069841;US2013/074809;US2013/074786;US2013/074796;US2015/0315553は、このすべての内容を教示のためそれぞれ参照により本明細書中に取り込む。
【発明の概要】
【0010】
一形態では、本発明は、対照と比較して長期全生存を達成するように決定されたレジメンに従って可溶性AXLポリペプチドを投与することを含む、ヒト転移性癌などの増殖性疾患の治療方法を提供する。
【0011】
いくつかの態様では、増殖性疾患が:B細胞リンパ腫;肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌):気管支癌;結腸直腸癌;前立腺癌;乳癌;膵臓癌;胃癌;卵巣癌;膀胱癌;脳又は中枢神経系癌;末梢神経系癌;食道癌;子宮頸癌;黒色腫;子宮又は子宮内膜癌;口腔又は咽頭の癌;肝臓癌;腎臓癌;胆道癌;小腸又は虫垂癌;唾液腺癌;甲状腺癌;副腎癌;骨肉腫;軟骨肉腫;脂肪肉腫;精巣癌;及び悪性線維性組織球腫;皮膚癌;頭頸部癌;リンパ腫;肉腫;多発性骨髄腫;及び白血病からなる群より選択される癌である。いくつかの態様では、癌が卵巣癌である。いくつかの態様では、癌が乳癌である。
【0012】
いくつかの態様では、癌がバイオマーカーGAS6及び/又はAXLを過剰発現する癌である。いくつかの態様では、癌が再発性癌である。いくつかの態様では、癌が標準的な治療法に抵抗性のヒト転移性癌である。いくつかの態様では、このヒト転移性癌が化学療法抵抗性癌である。いくつかの態様では、このヒト転移性癌がプラチナ耐性癌である。
【0013】
別の形態では、本発明は、AXL膜貫通ドメインを欠き、GAS6に結合するAXLポリペプチドの親和性を野生型AXLよりも増加させる、野生型AXLと比較して少なくとも1つの変異を有する可溶性AXLポリペプチドを、低分子キナーゼ阻害剤標的療法、手術、細胞縮小療法、細胞毒性化学療法、及び免疫療法からなる群より選択される第2療法と併用して、投与することを含む、ヒト転移性癌の治療方法を提供する。
【0014】
いくつかの態様では、第2療法が、細胞縮小療法であり、この併用が細胞縮小療法の治療指数を増加させ得る。いくつかの態様では、細胞縮小療法がDNA修復経路で作用し得る。いくつかの態様では、細胞縮小療法が放射線療法である。いくつかの態様では、この併用が相乗的であり得る。
【0015】
いくつかの態様では、第2療法が:ダウノルビシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、エピルビシン、イダルビシン、アナマイシン、MEN10755、エトポシド、テニポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(NAVELBINE);ビンデシン、ビンドリン、ビンカミン、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、シタラビン(CYTOSAR-U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(FUdR)、チオグアニン(6-チオグアニン)、メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート、10-プロパルギル-5,8-ジデアザ葉酸(PDDF、CB3717)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリン、シスプラチン(cis-DDP)、カルボプラチン、オキサリプラチン、ヒドロキシ尿素、ゲムシタビン、及びN-メチルヒドラジンからなる群より選択される化学療法剤である。いくつかの態様では、この併用が相乗的であり得る。
【0016】
いくつかの態様では、第2療法が、特定の腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いる治療;抗体薬物複合体を用いる治療;CTLA-4、PD-1、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3及びVISTAなどの共刺激又は共阻害分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又は遮断抗体を用いる治療;ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞結合抗体(BiTE登録商標)を用いる治療;IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-β及びIFN-γなどの生物学的応答修飾物質を投与する治療;シプロイセル-Tなどの治療ワクチンを用いる治療;樹状細胞ワクチン又は腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いる治療;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いる治療;CAR-NK細胞を用いる治療;腫瘍浸潤リンパ球(TILs)を用いる治療;養子移入した抗腫瘍T細胞(体外増幅及び/又はTCRトランスジェニック)を用いる治療;TALL-104細胞を用いる治療;及びToll様受容体(TLR)アゴニストCpG及びイミキモドなどの免疫刺激剤を用いる治療;から選択される免疫療法を含むがこれらに限定されない。ここでこの併用療法が、腫瘍細胞のエフェクター細胞殺傷の増加をもたらす、すなわち、同時投与された場合、可溶性AXLポリペプチドと免疫療法との間に相乗効果が存在する。
【0017】
いくつかの態様では、第2療法がポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤(PARP)阻害剤の投与を含む。いくつかの態様では、このPARP阻害剤が、ABT-767、AZD2461、BGB-290、BGP15、CEP9722、E7016、E7449、フルゾパリブ、INO1001、JPI289、MP124、ニラパリブ、オラパリブ、ONO2231、ルカパリブ、SC101914、タラゾパリブ、ヴェリパリブ、WW46又はその塩若しくは誘導体、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ及びヴェリパリブからなる群より選択される。いくつかの態様では、この併用は相乗的であり得る。
【0018】
いくつかの態様では、上記治療の方法が、可溶性AXL変異体ポリペプチドとペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)を組み合わせて投与することを含む。いくつかの態様では、上記治療の方法が、可溶性AXL変異体ポリペプチドとパクリタキセルを、組み合わせて投与することを含む。いくつかの態様では、この併用は相乗的であり得る。
【0019】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドが可溶性AXL変異体ポリペプチドであり、ここでこの可溶性AXL変異体ポリペプチドが、AXL膜貫通ドメインを欠き、機能性フィブロネクチン(FN)ドメインを欠き、1つ又は複数のIg1ドメインを有し、1つ又は複数のIg2ドメインを有し、またここで上記AXL変異体変異体ポリペプチドが、野生型AXLと比べて、GAS6に結合するAXL変異体ポリペプチドの親和性の増大を呈する。
【0020】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドが可溶性AXL変異体ポリペプチドであり、ここで上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、AXL膜貫通ドメインを欠き、機能性フィブロネクチン(FN)ドメインを欠き、1つのIg1ドメインを有し、機能性Ig2ドメインを欠き、またここで上記AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXLと比べて、GAS6に結合するAXL変異体ポリペプチドの親和性の増大を呈する。
【0021】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドが、Fcドメインを含む融合タンパク質である。いくつかの態様では、この変異体ポリペプチドがAXL細胞内ドメインを欠く。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドがさらに、機能性フィブロネクチン(FN)ドメインを欠き、またここで上記変異体ポリペプチドが、GAS6に結合するポリペプチドの親和性の増大を呈する。いくつかの態様では、この可溶性AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXL配列に対して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。
【0022】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、少なくとも1つのアミノ酸修飾を、野生型AXL配列(配列番号1)の1)15~50番目の位置の間、2)60~120番目の位置の間、及び3)125~135番目の位置の間からなる群より選択される領域内に、含む。
【0023】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、少なくとも1つのアミノ酸修飾を、野生型AXL配列(配列番号1)の19、23、26、27、32、33、38、44、61、65、72、74、78、79、86、87、88、90、92、97、98、105、109、112、113、116、118、若しくは127番目の位置又はその組み合わせの位置に含む。
【0024】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、1)A19T、2)T23M、3)E26G、4)E27G又はE27K、5)G32S、6)N33S、7)T38I、8)T44A、9)H61Y、10)D65N、11)A72V、12)S74N、13)Q78E、14)V79M、15)Q86R、16)D87G、17)D88N、18)I90M又はI90V、19)V92A、V92G又はV92D、20)I97R、21)T98A又はT98P、22)T105M、23)Q109R、24)V112A、25)F113L、26)H116R、27)T118A、28)G127R又はG127E、及び29)G129E並びにその組み合わせ、からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。
【0025】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)バリン92;及び(d)グリシン127。
【0026】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)アスパラギン酸87及び(b)バリン92。
【0027】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)バリン92;(d)グリシン127及び(e)アラニン72。
【0028】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:アラニン72。
【0029】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドグリシン32残基がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87残基がグリシン残基に置換され,バリン92残基がアラニン基に置換され、又はグリシン127残基がアルギニン残基若しくはその組み合わせに置換される。
【0030】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチド残基アスパラギン酸87残基がグリシン残基に置換されるか又はバリン92残基がアラニン基若しくはその組み合わせに置換される。
【0031】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドアラニン72残基がバリン残基に置換される。
【0032】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドグリシン32の残基がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87の残基がグリシン残基に置換され、バリン92の残基がアラニン基に置換され、グリシン127の残基がアルギニン残基に置換されるか、又はアラニン72の残基がバリン残基若しくはその組み合わせに置換される。
【0033】
いくつかの態様では、上記AXL変異体が、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グルタミン酸26;(b)バリン79;(c)バリン92;及び(d)グリシン127。
【0034】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドグルタミン酸26の残基がグリシン残基に置換され、バリン79の残基がメチオニン残基に置換され、バリン92の残基がアラニン基に置換されるか、又はグリシン127の残基がアルギニン残基若しくはその組み合わせに置換される。
【0035】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXLポリペプチド(配列番号1)のアミノ酸領域19-437、130-437、19-132、21-121、26-132、26-121及び1-437からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸領域を含み、またここで1つ又は複数のアミノ酸修飾が上記アミノ酸領域において生じる。
【0036】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドが、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72;及びバリン92。
【0037】
いくつかの態様では、上記AXL変異体ポリペプチドグリシン32がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87がグリシン残基に置換され、アラニン72がバリン残基に置換され、及びバリン92がアラニン残基若しくはその組み合わせに置換される。
【0038】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、またここで上記AXL変異体が、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72;及び(d)バリン92。
【0039】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、またここでグリシン32がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87がグリシン残基に置換され、アラニン72がバリン残基に置換され、及びバリン92がアラニン残基若しくはその組み合わせに置換される。
【0040】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、またここで上記AXL変異体が野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72;(d)バリン92;及び(e)グリシン127。
【0041】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、またここでグリシン32がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87がグリシン残基に置換され、アラニン72がバリン残基に置換され、バリン92がアラニン残基に置換され、及びグリシン127がアルギニン残基又はその組み合わせに置換される。
【0042】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、またここで上記AXL変異体が、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72;及び(d)バリン92。
【0043】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体がFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、またここでグリシン32がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87がグリシン残基に置換され、アラニン72がバリン残基に置換され、及びバリン92がアラニン残基若しくはその組み合わせに置換される。
【0044】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、またここで上記AXL変異体が、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72;(d)バリン92;及び(e)グリシン127。
【0045】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体がFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、またここでグリシン32がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87がグリシン残基に置換され、アラニン72がバリン残基に置換され、バリン92がアラニン残基に置換され、及びグリシン127がアルギニン残基又はその組み合わせに置換される。
【0046】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、Ig2ドメインを欠き、またここで上記AXL変異体が、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72及び(d)バリン92。
【0047】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体がFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、Ig2ドメインを欠き、またここでグリシン32がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87がグリシン残基に置換され、アラニン72がバリン残基に置換され、及びバリン92がアラニン残基若しくはその組み合わせに置換される。
【0048】
いくつかの態様では、上記可溶性AXLポリペプチドがFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、Ig2ドメインを欠き、またここで上記AXL変異体が、野生型AXL配列(配列番号1)に対する、アミノ酸変化を以下の位置に含む:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72;(d)バリン92;及び(e)グリシン127。
【0049】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体がFcドメインを含む融合タンパク質であり、機能性FNドメインを欠き、Ig2ドメインを欠き、またここでグリシン32がセリン残基に置換され、アスパラギン酸87がグリシン残基に置換され、アラニン72がバリン残基に置換され、バリン92がアラニン残基に置換され、及びグリシン127がアルギニン残基又はその組み合わせに置換される。
【0050】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドがGAS6に対して少なくとも約1x10-8M、1x10-9M、1x10-10M、1x10-11M又は1x10-12Mの親和性を有する。
【0051】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、上記野生型AXLポリペプチドのGAS6への親和性よりも、少なくとも約5倍強い、少なくとも約10倍強いか又は少なくとも約20倍強いGAS6への親和性を呈する。
【0052】
いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドがさらにリンカーを含む。いくつかの態様では、上記リンカーが1つ又は複数の(GLY)4SER単位を含む。いくつかの態様では、上記リンカーが1、2、3又は5(GLY)4SER単位を含む。
【0053】
いくつかの態様では、患者に投与される上記可溶性AXL変異体ポリペプチドの用量が、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、約10.0mg/kg、約10.5、約11.0、約11.5、約12.0、約12.5、約13.0、約13.5、約14.0、約14.5、約15.0、約15.5、約16.0、約16.5、約17.0、約17.5、約18.0、約18.5、約19.0mg/kg、約19.5、及び約20.0mg/kgからなる群より選択される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって毎週10mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって毎週5mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって毎週2.5mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって毎週1mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって14日毎に20mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって14日毎に10mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって14日毎に5mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって14日毎に2.5mg/kgの用量でIV注入される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが30又は60分間にわたって14日毎に1mg/kgの用量でIV注入される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、AXLデコイ受容体を用いるGAS6誘導性浸潤/移動の阻害を示す。(A)無血清培地中の可溶性AXLデコイ受容体(AVB-S6-500)及びMDA-MB-231Axl TNBC細胞を、マトリゲルコーティングされたボイデンチャンバーの上部に播種した。化学誘引物質として血清を含む培地をチャンバーの底に加えた。24時間のインキュベーション後、マトリゲル全体に移動した細胞の数を数え、PBS対照に対する侵襲細胞の割合として表した。(B)AVB-S6-500、OVCAR8 Axl卵巣癌細胞、1型コラーゲン、50ng/mLのGAS6、及び増殖培地をマイクロウェルに播種し、インキュベートした。6日目に、侵襲性の表現型を呈する細胞の数を数え、PBS対照に対する侵襲細胞の割合として表した。1-100μg/mLの範囲のAVB-S6-500が、GAS6誘導性細胞浸潤/移動を有意に阻害した。
図2図2は、AVB-S6-500MDA-MB-231細胞浸潤アッセイの代表的な画像を示す。
図3図3は、AXLデコイ受容体を用いた転移性腫瘍負荷の低減を示す。マウスにSKOV3.ip卵巣癌腫瘍細胞(1x10)を腹腔内接種(IP)し、無作為にグループ分けし、AVB-S6-500を1日おきに5、10、又は20mg/kg(Q2D)投与した。転移性腫瘍負荷は、腹腔内のすべての目に見える転移性病変をカウントし、全ての病変組織を切除して秤量することにより、24日間の投与後に評価し、全体の重量(A)及び転移数(B)を測定した。AVB-S6-500は、10及び20mg/kgで投与した場合、転移性腫瘍負荷を大幅に低減させた。
図4図4は、AXLデコイ受容体及びドキソルビシンの組み合わせを用いる優れた効力を示す。マウスにSKOV3.ip卵巣癌腫瘍細胞(1x10)を腹腔内接種(IP)し、無作為にグループ分けし、AVB-S6-500を20mg/kg(Q2D)のみ又は2mg/kgのドキソルビシンと併用して週2回、投与した(DOX)。転移性腫瘍負荷は、投与の24日後に評価した。転移の全体重量(A)と転移数(B)を比較すると、併用療法に有意な利点があることが示された。AVB-S6-500とドキソルビシンの併用により、病変組織の平均重量が大幅に減少し、2匹が治癒した。
図5図5は、AXLデコイ受容体の5mg/kg(1.7mg/kgのヒト相当量)の単回投与後のカニクイザルにおける約1週間の血清GAS6の抑止を示す。カニクイザルにおいて、5mg/kgのAVB-S6-500により少なくとも168時間血清GAS6が抑止され、NOAEL≧150mg/kg/日が毎週の反復投与試験で確立された。
図6図6は、1mg/kg(A)及び2.5mg/kg(B)のAXLデコイ受容体の単回投与後のヒト対象における血清GAS6の約1週間の抑止を示す。
図7図7は、5mg/kg(A)及び10mg/kg(B)のAXLデコイ受容体の単回投与後のヒト対象における血清GAS6の約1週間の抑止を示す。
図8図8は、健常対象(N=6/用量)におけるAVB-S6-500の単回IV注入後のAVB-S6-500の平均(+/-)濃度を示す線グラフである。
図9図9は、健常対象(n=6/用量)におけるAVB-S6‐500の単回IV注入後の血清GAS6の平均(+/-)濃度を表す線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
本明細書で別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含むものとする。一般的に、本明細書に記載の細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して、またこれらの技術にて使用される命名法は、一般的に使用され、当技術分野で周知である。本発明の方法及び技術は、一般に、当技術分野で周知の従来の方法に従って、また特に指示がない限り、本明細書全体で引用及び議論される様々な一般的でより具体的な参考文献に記載のように行われる。例えば、ここに参照により取り込む、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第4版,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,NY(2012)を参照されたい。酵素反応及び精製技術は、当該分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って行われる。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、及び薬用及び製薬化学に関連して使用される命名法、並びにそれらの実験手順及び技術は、一般に使用され、当技術分野で周知のものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤、及び送達、並びに対象の治療に用いられる。
【0056】
本明細書で用いられる「腫瘍」という用語は、悪性又は良性にかかわらず、全ての新生物細胞の成長及び増殖、並びに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織をいう。
【0057】
「癌」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、自律的で無秩序な増殖を呈し、細胞増殖による対照の顕著な喪失を特徴とする異常な増殖表現型を呈する細胞をいう。一般的に、本出願における検出、分析、分類、又は治療の目的の細胞は、前癌性(例えば、良性)、悪性、前転移性、及び非転移性細胞を含む。
【0058】
「原発腫瘍」という用語は、悪性又は良性に関わらず、全ての新生物細胞の成長及び増殖、並びに、元の癌性腫瘍の臓器などの、細胞の自律的で無秩序な成長が始まった解剖学的部位に位置する全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織をいう。原発腫瘍は転移を含まない。
【0059】
癌の「病理」は、患者の健康を損なう全ての現象を含む。これは、異常又は制御不能な細胞増殖、原発腫瘍の増殖と形成、転移、隣接細胞の正常な機能の妨害、異常なレベルでのサイトカイン又は他の分泌産物の放出、炎症反応又は免疫学的反応の抑制又は悪化、腫瘍形成、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、周囲又は遠方の組織又は臓器(リンパ節など)への浸潤を含むが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で用いられる、「癌再発」及び「腫瘍再発」という用語、並びにそれらの文法的変形は、癌の診断後の腫瘍性又は癌性細胞のさらなる増殖をいう。特に、癌性組織でさらなる癌性細胞増殖が起こると、再発が起こり得る。「腫瘍の拡大」は、同様に、腫瘍の細胞が局所又は遠方の組織及び臓器に播種したときに発生する。したがって、腫瘍の拡大は腫瘍の転移を含む。「腫瘍浸潤」は、腫瘍の増殖が局所的に拡がって、正常な臓器機能の圧迫、破壊、又は予防によって、関与する組織の機能が損なわれたときに発生する。
【0061】
本明細書で用いられる、「転移」という用語は、元の癌性腫瘍の臓器に直接接続されていない、臓器又は身体部分における癌性腫瘍の増殖をいう。転移は、微小転移を含むと理解され、これは、元の癌性腫瘍(例えば、原発腫瘍を含む臓器)の臓器に直接接続されていない臓器又は身体部分における検出不可能な量の癌性細胞の存在である。転移はまた、元の腫瘍部位(例えば、原発腫瘍部位)からの癌細胞の離脱や、身体の他の部分への癌細胞の移動及び/又は浸潤などのプロセスのいくつかのステップとして定義することもできる。
【0062】
癌の性質に応じて、適切な患者サンプルが得られる。本明細書中で用いられる表現「癌性組織サンプル」は、癌性腫瘍から得られた任意の細胞をいう。転移しなかった固形腫瘍(例えば、原発腫瘍)の場合、外科的に除去された腫瘍からの組織サンプルが一般的に得られ、従来の技術による試験のために調製される。
【0063】
適切な患者サンプルの定義は、生物学的起源の血液及び他の液体サンプル、生検標本若しくは組織培養物などの固形組織サンプル、又はそれらに由来する細胞及びそれらの子孫を包含する。この定義はさらに、生物学的起源の血液及び他の液体サンプル、生検標本又は組織培養物などの固形組織サンプル又はそれらに由来する細胞及びそれらの子孫を包含する。この定義はさらに、試薬による処理;洗浄;又は癌細胞などの特定の細胞集団の濃縮など、調達後に何らかの方法で操作されたサンプルも含む。この定義はさらに、特定のタイプの分子、たとえば核酸、ポリペプチドなどが濃縮されたサンプルも含む。「生体サンプル」という用語は、臨床サンプルを包含し、またさらに、外科的切除によって得られた組織、生検によって得られた組織、培養における細胞、細胞上清、細胞溶解物、組織サンプル、臓器、骨髄、血液、血漿、血清なども含む。「生体サンプル」は、患者の癌細胞から得られたサンプル、例えば、患者の癌細胞から得られたポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含むサンプル(例えば、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む細胞溶解物又は他の細胞抽出物);及び患者由来の癌細胞を含むサンプル、を含む。患者由来の癌細胞を含む生体サンプルはさらに、非癌性細胞も含むことができる。
【0064】
本発明の方法を用いた治療の目的の腫瘍は、固形腫瘍、例えば癌腫、神経膠腫、黒色腫、肉腫などを含む。卵巣癌及び乳癌は特に対象となる。癌腫は、例えば前立腺、肺などにおける様々な腺癌;副腎皮質癌;肝細胞癌;腎細胞腫、卵巣癌、上皮内癌、乳管癌、乳胞の癌腫、基底細胞癌;扁平上皮癌;移行上皮癌;結腸癌;鼻咽頭癌;多房嚢胞性腎細胞腫;燕麦細胞癌、大細胞肺癌;小細胞肺癌などを含む。癌腫は、前立腺、膵臓、結腸、脳(例えば、膠芽腫)、肺、乳房、皮膚などに見られ得る。軟組織腫瘍の指定には、線維芽細胞、筋線維芽細胞、組織球、血管細胞/内皮細胞及び神経鞘細胞由来の新生物が含まれる。結合組織の腫瘍は肉腫;組織球腫;線維腫;骨格軟骨肉腫;骨外性粘液型軟骨肉腫;明細胞肉腫;繊維肉腫などを含む。血液癌は、白血病及びリンパ腫、例えば皮膚T細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)などを含む。いくつかの態様では、上記癌が卵巣癌である。いくつかの態様では、上記癌がバイオマーカーGAS6及び/又はAXLを過剰発現する癌である。いくつかの態様では、患者が以前に抗がん療法による治療に反応したが、治療を中止すると再発した(以下「再発性癌」)。いくつかの態様では、上記癌が標準的な治療法に抵抗性である。いくつかの態様では、上記癌が化学療法抵抗性癌である。いくつかの態様では、上記癌がプラチナ耐性癌である。
【0065】
「と組み合わせて」、「併用療法」及び「コンビネーション製品」は、特定の態様では、第1治療剤及び本明細書で使用される化合物の患者への同時投与をいう。いくつかの態様では、コンビネーション製品は同時ではなく投与される。組み合わせて投与される場合、各成分は同時に、又は異なる時点に任意の順序で順次投与することができる。したがって、各成分は、別々に投与することができるが、所望の治療効果をもたらすように時間的に十分接近させて投与できる。
【0066】
本明細書で用いられる「無病生存率」という表現は、患者の寿命に対する癌の影響に関して、そのような腫瘍の再発及び/又は浸潤の欠如、並びに診断後の患者の運命をいう。「全生存率」という表現は、患者の死因が、直接的な癌の影響によるものではない可能性とは無関係に、診断後の患者の運命をいう。「無病生存(率)の可能性」、「再発のリスク」という表現及びその変形は、癌の診断後の患者における腫瘍の再発又は拡大の確率をいい、その確率は、本発明のプロセスに従って求められる。
【0067】
所望の薬理活性を有する化合物は、AXL/GAS6機能を調節するために生理学的に許容される担体としてホストに投与され得る。治療剤は、様々な方法で、経口的、局所的、非経口的、例えば、静脈内、皮下、腹腔内、ウイルス感染によって、血管内に、などで投与され得る。静脈内送達は特に興味深い。導入の方法に応じて、上記化合物は様々な方法で配合され得る。製剤中の治療的に活性な化合物の濃度は、約0.1-100重量%であり得る。
【0068】
医薬組成物は、顆粒、錠剤、丸薬、坐剤、カプセル、懸濁液、膏薬、ローションなどの様々な形態で調製することができる。経口及び局所使用に好適な医薬品グレードの有機若しくは無機担体及び/又は希釈剤を用いて、治療的に活性な化合物を含む組成物を構成することができる。当該技術分野で既知の希釈剤は、水性媒体、植物及び動物の油脂を含む。浸透圧を変化させるための安定剤、湿潤剤及び乳化剤、塩又は適切なpH値を確保するための緩衝液、及び皮膚浸透促進剤を補助剤として用いることができる。
【0069】
AXL又はそのリガンドGAS6の「阻害剤」、「活性剤」、及び「修飾薬」は、それぞれ、受容体若しくはリガンド結合、又は、リガンド、受容体、アゴニスト、アンタゴニスト、及びそれらのホモログ及び模倣体などのシグナル伝達についてインビトロ及びインビボアッセイを用いて同定される、阻害、活性化、又は調節分子をいうよう用いられる。
【0070】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、2つ以上のアミノ酸残基のポリマーをいう。この用語は、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然に生ずるアミノ酸の人工化学模倣体である、アミノ酸ポリマー、並びに天然に生ずるアミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。「抗体」及び「(複数の)抗体」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、しばしば抗原と呼ばれる別の分子と相互作用及び/又は結合することができるポリペプチドをいう。抗体は、例えば、「抗原結合ポリペプチド」又は「標的分子結合ポリペプチド」を含むことができる。本発明の抗原は、例えば、本発明に記載される任意のポリペプチドを含むことができる。
【0071】
「アミノ酸」という用語は、天然に生ずるアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に生ずるアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体をいう。天然に生ずるアミノ酸は、遺伝コードによってコードされるもの、並びに後で修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然に生ずるアミノ酸と同じ基本的化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合しているα炭素、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。こうした類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に生ずるアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に生ずるアミノ酸と同様に機能する化学物質をいう。本発明でアミノ酸を表すために用いられる全ての単一文字は、当分野で日常的に用いられ認識されるアミノ酸記号に従って使用される。例えば、Aはアラニンを意味し、Cはシステインを意味する。アミノ酸は、元のアミノ酸(当該位置の前)から変更されたアミノ酸(当該位置の後)への変化を反映する当該位置の前後の単一文字で表される。たとえば、A19Tは、19位のアミノ酸アラニンがスレオニンに変更されることを意味する。
【0072】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に用いられ、治療について評価されている及び/又は治療を受けている哺乳動物をいう。一態様では、哺乳動物はヒトである。したがって、「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、卵巣又は前立腺の腺癌、乳癌、神経膠芽腫などを含む癌を有する個体を包含するが、例えば癌性組織を除去するために切除(手術)を受けたか、又は切除(手術)の候補者を含むがこれらに限定されない。対象はヒトであってもよいが、他の哺乳動物、特にマウス、ラットなどのヒト疾患の実験モデルとして有用な哺乳動物も含まれる。
【0073】
適切な患者サンプルの定義は、生物学的起源の血液及び他の液体サンプル、生検標本又は組織培養物などの固形組織サンプル又はそれらに由来する細胞及びそれらの子孫を包含する。この定義は、試薬による処理;洗浄;又は子宮内膜細胞、腎疾患細胞、炎症性疾患細胞及び/又は移植拒絶(GVHD)細胞などの特定の細胞集団の濃縮など、調達後に何らかの方法で操作されたサンプルも含む。この定義は、特定のタイプの分子、たとえば核酸、ポリペプチドなどが濃縮されたサンプルも含む。「生体サンプル」という用語は、臨床サンプルを包含し、外科的切除によって得られる組織、生検によって得られる組織、培養での細胞、細胞上清、細胞溶解物、組織サンプル、臓器、骨髄、血液、血漿、血清などをも含む。「生体サンプル」は、患者のサンプル細胞から得られるサンプル、例えば、患者のサンプル細胞から得られるポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含むサンプル(例えば、ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む細胞溶解物又は他の細胞抽出物);及び患者からのサンプル細胞を含むサンプルを含む。患者由来のサンプル細胞を含む生体サンプルはまた、正常な非疾患細胞を含むことができる。
【0074】
本明細書で用いられる「診断」という用語は、ウイルス感染の識別など、分子的又は病理学的な状態、疾患又は状態の識別をいうために用いられる。
【0075】
本明細書で用いられる、「治療」、「治療する」などの用語は、薬剤の投与、又は効果を得るための手順の実施をいう。この効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に防止することに関して予防的であり得、並びに/又は疾患及び/若しくは疾患の症状の部分的又は完全な治癒をもたらすことに関して治療的であり得る。本明細書で用いられる「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおけるウイルス感染又は曝露のあらゆる治療を網羅し、以下を含む:(a)感染を防止すること、(b)感染を阻害すること、すなわち感染の進行を阻止すること、(c)疾患を緩和すること、すなわち感染を後退させること。
【0076】
治療は、軽減;寛解;症状の減弱又は疾患状態を患者にとってより許容できるものにする;変性又は衰退の速度の減速;又は、変性の最終時点での衰弱を抑える、などのあらゆる客観的又は主観的パラメーターを含む、癌の治療又は回復又は予防における成功の兆候のことをいい得る。症状の治療又は回復は、医師による検査の結果を含む、客観的又は主観的パラメーターに基づくことができる。したがって、「治療する」という用語は、症状又は状態の発症を予防若しくは遅延、緩和、又は阻止若しくは阻害するための、本発明の化合物又は薬剤の投与を含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症状、又は疾患の副作用の低減、排除、又は防止をいう。
【0077】
本明細書で用いられる、「相関する」又は「と相関する」という用語及び同様の用語は、2つのイベントの事例間の統計的関連をいい、ここでイベントは数値、データセットなどを含む。たとえば、イベントが数値を含む場合、正の相関(ここでは「直接相関」とも称する)は、一方が増加すると、他方も増加することを意味する。負の相関(本明細書では「逆相関」とも称する)は、一方が増加すると他方が低下することを意味する。
【0078】
「投与単位」は、治療される特定の個人のための単一投与量として好適な物理的に別個の単位をいう。各単位は、必要な医薬担体と組み合わせて所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含むことができる。投与単位形態の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、及び(b)こうした活性物質を配合する技術に固有の制限によって決定され得る。
【0079】
「薬学的に許容される賦形剤」は、一般的に安全で、非毒性で、かつ望ましい医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用及びヒトの医薬的使用に許容される賦形剤を含む。このような賦形剤は、固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物、気体であることができる。
【0080】
用語「薬学的に許容される」、「生理学的に許容される」及びそれらの文法的変形は、組成物、担体、希釈剤及び試薬のことをいうように、互換的に用いられ、組成物の投与を妨げる程度の望ましくない生理学的効果を生み出すことなく、ヒトに又はヒト上に投与することができる材料を表す。
【0081】
「治療有効量」は、乳癌又は卵巣癌を治療するために対象に投与された場合に、そのような癌の治療に影響を与えるのに充分な化合物の量をいう。この「治療有効量」は、例えば、選択された上記可溶性AXL変異体ポリペプチド、癌の病期、患者の年齢、体重及び/又は健康、並びに処方する医師の判断に応じて変化し得る。任意の所与の例における適切な量は、当業者によって容易に確認され得るか、又は日常的な実験によって決定され得る。
【0082】
「治療効力を決定する」という表現及びその変形は、治療が対象に利益を提供していることを決定するための任意の方法を含むことができる。「治療効力」という用語及びその変形は、一般に、疾患に関連する1つ又は複数の徴候又は症状の緩和によって示され、当業者によって容易に決定することができる。「治療効力」はまた、疾患の標準的又は非標準的治療に典型的に関連する毒性の徴候及び症状の予防又は回復をいい得る。治療効力の決定は、通常、適応症及び疾患特異的であり、治療が患者に有益な効果を提供していることを判定するための、当技術分野で既知又は利用可能な任意の方法を含むことができる。例えば、治療効力の証拠は、疾患又は適応症の寛解を含むことができるが、これらに限定されない。さらに、治療効力は、対象の全体的な健康における全般的な改善、たとえば、これらに限定されないが、患者の生活の質の向上、対象の予測生存率の上昇、うつ病の減少又は適応症の再発率の低下(寛解時間の増加)も含むことができる。(例えば、Physicians’Desk Reference(2010)を参照)。
【0083】
本明細書で用いられる場合、「無増悪生存期間」という用語は、疾患(例えば、癌)を有する対象が、疾患状態を著しく悪化させることなく生存する期間を意味する。無増悪生存期間は、腫瘍増殖の進行がない期間として、及び/又は患者の疾患状態が進行性疾患であると判定されない期間として評価され得る。いくつかの態様では、癌を有する対象の無増悪生存期間は、腫瘍(病変)サイズ、腫瘍(病変)数、及び/又は転移を評価することによって評価される。
【0084】
本明細書で用いられる、「客観的応答率(「ORR」)は、所定の量の腫瘍サイズの縮小を最小期間伴う患者の割合として定義される。応答期間は、通常、初期応答から腫瘍進行が実証されるまでの時間から測定される。一般に、ORRは部分的応答と完全な応答の合計として定義することができる。
【0085】
本発明の医薬組成物と既知の癌治療薬の「併用投与」は、既知の薬物と本発明の組成物の両方が治療効果を有するような場合の薬物及びAXL変異体の投与を意味する。こうした併用投与は、本発明の化合物の投与に関して、薬物の並行(すなわち、同時に)、前、又は後の投与を含み得る。当業者にとって、本発明の特定の薬物及び組成物についての投与の適切なタイミング、順序及び投与量を決定するのに困難はないであろう。
【0086】
AXL、MER、Tyro3及びGAS6、並びに関連経路は、WO2011/091305、並びに米国特許出願第13/554,954号及び13/595,936に記載があり;それらの全ては、あらゆる目的のためにそれらの全体を参照により本明細書に組み込む。
【0087】
例示的態様
本発明の方法は、本明細書に記載の可溶性AXL変異体ポリペプチドを投与することにより、癌の転移を治療、低減、又は予防することを含む。一形態では、本発明は、AXL膜貫通ドメインを欠き、及び野生型AXLと比べてGAS6に結合するAXLポリペプチドの親和性を増す、野生型AXLに対する少なくとも1つの変異を有する、可溶性AXLポリペプチドの投与を含む、ヒト転移性癌の治療方法を提供する。
【0088】
いくつかの態様では、上記方法は、対照と比較して無増悪生存期間を延長する。いくつかの態様では、上記方法は、対照と比較して全生存期間を延長する。いくつかの態様では、上記方法は、対照と比較して改善された無増悪生存期間を達成する。いくつかの態様では、上記方法は、対照と比較して改善された化学療法の無い間隔を達成する。いくつかの態様では、上記方法は、対照と比較して、最初の後続治療までの時間の改善を達成する。いくつかの態様では、上記方法は、対照と比較して、第2の後続治療までの時間の改善を達成する。いくつかの態様では、上記方法は、FOSI及び/又はEQ-5D-5Lによって測定される、生活の質に有害な影響を及ぼさないことが判定されている。
【0089】
目的の癌は、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍を含む。様々な態様では、上記癌は、:B細胞リンパ腫;肺癌(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌);気管支癌;結腸直腸癌;前立腺癌;乳癌;膵臓癌;胃癌;卵巣癌;膀胱癌;脳又は中枢神経系癌;末梢神経系癌;食道癌;子宮頸癌;黒色腫;子宮又は子宮内膜癌;口腔又は咽頭の癌;肝臓癌;腎臓癌;胆道癌;小腸又は虫垂癌;唾液腺癌;甲状腺癌;副腎癌;骨肉腫;軟骨肉腫;脂肪肉腫;精巣癌;並びに悪性線維性組織球腫;皮膚癌;頭頸部癌;リンパ腫;肉腫;多発性骨髄腫;及び白血病からなる群より選択される。
【0090】
卵巣癌は、女性の癌による死亡の5番目の全体的原因であり、女性における全ての癌による死亡の5%に相当する。2014年には、卵巣癌の新しい症例が21,980件になると推定されており、14,270人の女性がこの疾患で死亡すると推定される。2012年の米国の女性における上皮性卵巣癌の予想発生数は約22,280人(15,500人の死亡)、2012年のヨーロッパでは65,538人の患者(42,704人の死亡)と推定された。高悪性度の漿液性卵巣癌は最も一般的なサブタイプであり、広範なゲノム不安定性を示し、このことは、相同組換えにおける欠陥である可能性が高いことを示す(Bowtell D D,Nat Rev Cancer2010;10:803-8)。診断時、ほとんどの女性は進行した疾患を呈し、このことが高い死亡率を説明する。最初の化学療法は、タキサン又はプラチナ化学療法のいずれか、あるいは両方の組み合わせで構成される。患者の約75%が最前線の治療に反応する一方で、そのうち70%は最終的に1-3年以内に再発する。当初の高い反応率にもかかわらず、再発率が高いため、ニーズは著しく満たされていない。第3の細胞毒性薬(トポテカン、ゲムシタビン、又はドキシル)を追加することにより、標準的な2剤化学療法(カルボプラチン及びパクリタキセル)を改善する試みは失敗に終わった(du Boisら、2006及びPfistererら、2006)。最初の化学療法による反応が達成された後の維持療法は、疾患の進行の副作用を遅らせ、毒性のある化学療法の必要を遅らせ、全生存期間を延ばすことにより、臨床的利益を提供するアプローチとなり得る。しかし、現在、卵巣癌の維持療法において広く受け入れられている標準治療は存在しない。
【0091】
いくつかの態様では、上記癌が、卵巣癌である。いくつかの態様では、上記卵巣癌が標準的な治療法に抵抗性である。いくつかの態様では、上記再発性及び/又はプラチナ耐性癌が卵巣癌である。いくつかの態様では、上記卵巣癌が、可溶性AXL変異体ポリペプチド療法の開始時に、プラチナ耐性卵巣癌である。いくつかの態様では、上記卵巣癌が、可溶性AXL変異体ポリペプチド療法の開始時に、再発性、プラチナ耐性卵巣癌である。いくつかの態様では、上記卵巣癌が、可溶性AXL変異体ポリペプチド療法の開始前に最新のプラチナ系化学療法レジメンに応答した。いくつかの態様では、最新のプラチナ系化学療法レジメンに対する応答が完全応答である。いくつかの態様では、最新のプラチナ系化学療法レジメンに対する応答が部分的応答である。いくつかの態様では、上記卵巣癌が可溶性AXL変異体ポリペプチド療法の開始前に、最後から2番目のプラチナ系化学療法レジメンに反応した。
【0092】
別の形態では、本発明は、手術、細胞縮小療法、細胞毒性化学療法、及び免疫療法からなる群より選択される第2療法と組み合わせて、AXL膜貫通ドメインを欠き、及び野生型AXLと比べてGAS6に結合するAXLポリペプチドの親和性を増す、野生型AXLに対する少なくとも1つの変異を有する、可溶性AXLポリペプチドを、投与することを含む、癌の治療方法を提供する。いくつかの態様では、この併用は相乗的であり得る.
【0093】
いくつかの態様では、上記併用療法が、抗増殖療法又は細胞縮小療法を含む。抗増殖療法又は細胞縮小療法は、宿主の腫瘍細胞及び他の望ましくない細胞を排除するために治療的に用いられ、電離放射線の送達などの療法の使用、及び化学療法剤の投与を含む。例えば、電離放射線(IR)は、治療される領域の細胞を損傷又は破壊するエネルギーをデポジットすることにより、癌患者の約60%を治療するために用いられ、本発明の目的のために、従来の線量及びレジメン又は減らされた線量で送達され得る。細胞に対する放射線障害は非特異的であり、DNAに複雑な影響を及ぼす。治療の効力は、正常細胞よりも癌細胞への細胞傷害が大きいかどうかに依存する。放射線療法はあらゆる種類の癌の治療に使用し得る。一部の種類の放射線療法には、X線やガンマ線などの光子が含まれる。癌細胞に放射線を送達するためのもう1つの手法は、内部放射線療法であり、これは、放射性インプラントを腫瘍又は体腔に直接配置し、放射線量を小さな領域に集中させる。電離放射線の好適な線量は、少なくとも約2Gy~約10Gy以下、通常は約5Gyの範囲であり得る。紫外線照射の好適な線量は、少なくとも約5J/m2~約50J/m2以下、通常は約10J/m2の範囲であり得る。サンプルは、紫外線照射後少なくとも約4時間~約72時間以下、通常は約4時間から収集され得る。
【0094】
化学療法剤は、当技術分野で周知であり、従来の用量及びレジメンで、又は低減された投与量又はレジメンで、用いられ、例えば、アントラサイクリンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、ダウノルビシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、エピルビシン、イダルビシン、アナマイシン、MEN10755などの化合物を含む。他のトポイソメラーゼ阻害剤は、ポドフィロトキシン類似体のエトポシド及びテニポシド、さらにアントラセンジオン、ミトキサントロン、及びアムサクリンを含む。他の抗増殖剤は、例えばビンカアルカロイドのファミリーなどの、微小管構築を妨害する。ビンカアルカロイドの例としては、ビンブラスチン、ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE);ビンデシン;ビンドリン;ビンカミン;等があげられる。DNA損傷剤は、ヌクレオチド類似体、アルキル化剤などを含む。アルキル化剤は、窒素マスタード、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)など;及びニトロソウレア、例えばカルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)、ストレプトゾシン、クロロゾトシンなどを含む。ヌクレオチド類似体はピリミジン、例えばシタラビン(CYTOSAR-U)、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(FUdR)など;プリン、例えばチオグアニン(6-チオグアニン)、メルカプトプリン(6-MP)、ペントスタチン、フルオロウラシル(5-FU)など、及び葉酸類似体、例えばメトトレキサート、10-プロパルギル-5,8-ジデアザ葉酸(PDDF、CB3717)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸(DDATHF)、ロイコボリンなどを含む。目的の他の化学療法剤は、金属錯体、例えばシスプラチン(シス-DDP)、カルボプラチン、オキサリプラチンなど;尿素、例えばヒドロキシ尿素;ゲムシタビン、及びヒドラジン、例えばN-メチルヒドラジンを含む。各種態様では、こうした化学療法剤の投与量は、これらに限定されないが、約10mg/m、20mg/m、30mg/m、40mg/m、50mg/m、60mg/m、75mg/m、80mg/m、90mg/m、100mg/m、120mg/m、150mg/m、175mg/m、200mg/m、210mg/m、220mg/m、230mg/m、240mg/m、250mg/m、260mg/m、及び300mg/mのいずれかを含む。
【0095】
いくつかの態様では、上記併用療法が免疫療法を含む。本明細書で用いられる、「免疫療法」という用語は、これらに限定されないが、特定の腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いる治療(例えば、Blattman及びGreenbergによるレビュー,Science,305:200,2004;Adams及びWeiner,Nat Biotech,23:1147,2005;Vogalら,J Clin Oncology,20:719,2002;Colombatら,Blood,97:101,2001を参照);抗体薬物複合体を用いる治療(例えば,Ducry,Laurent(Ed.)Antibody Drug Conjugates.In:Methods in Molecular Biology.Book1045.New York(NY),Humana Press,2013;Nature Reviews Drug Discovery 12,259-260,2013年4月を参照);CTLA-4(イピリムマブ),PD-1(ニボルマブ;ペンブロリズマブ;ピリジズマブ)及びPD-L1(BMS-936559;MPLD3280A;MEDI4736;MSB0010718C)(例えば,Philips及びAtkins,International Immunology,27(1);39-46,2014年10月を参照)、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3及びVISTA(例えば、Sharonら、Chin J Cancer.,33(9):434-444,2014年9月;Hodiら,N Engl J Med,2010;Topalianら,N Engl J Med,366:2443-54,2012を参照)などの共刺激又は共阻害分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又は遮断抗体を用いる治療;ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞結合抗体(BiTE(登録商標))を用いる治療(例えば、米国特許第9,260,522号;米国特許出願第20140302037号を参照);IL-2,IL-12,IL-15,IL-21,GM-CSF,IFN-α,IFN-β及びIFN-γなどの生物学的応答修飾物質の投与を含む治療(例えばSutlu Tら,Journal of Internal Medicine,266(2):154-181,2009;Joshi S PNAS USA,106(29):12097-12102,2009;Li Yら,Journal of Translational Medicine,7:11,2009を参照);シプロイセル-Tなどの治療ワクチンを用いる治療(例えば,Kantoff PW New England Journal of Medicine,363(5):411-422,2010;Schlom J.,Journal of the National Cancer Institutes,104(8):599-613,2012を参照);樹状細胞ワクチン又は腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いる治療;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いる治療(例えば、Rosenberg SA Nature Reviews Cancer,8(4):299-308,2008;Porter DLら,New England Journal of Medicine,365(8):725-733,2011;Grupp SAら,New England Journal of Medicine,368(16):1509-151,2013;米国特許第9,102,761号;米国特許第9,101,584号を参照);CAR-NK細胞を用いる治療(例えば、Glienkeら、Front Pharmacol、6(21):1-7、2015年2月を参照);腫瘍浸潤リンパ球(TILs)を用いる治療(例えば、Wuら、Cancer J.、18(2):160-175、2012を参照);養子移入した抗腫瘍T細胞を用いる治療(体外増幅 及び/又はTCRトランスジェニック)(例えば、Wrzesinskiら、J Immunother、33(1):1-7、2010を参照);TALL-104細胞を用いる治療;及びToll様受容体(TLR)アゴニストCpG及びイミキモドなどの免疫刺激剤を用いる治療(例えば、Krieg、Oncogene、27:161-167, 2008;Lu、Front Immunol、5(83):1-4、2014年3月を参照)を含む、癌治療をいう。
【0096】
特定の腫瘍抗原に対する枯渇抗体の利用に焦点を当てた免疫療法が探究され、大成功を収めている(例えば、Blattman及びGreenbergによるレビュー、Science、305:200、2004;Adams及びWeiner、Nat Biotech、23:1147、2005を参照)。そのような腫瘍抗原特異的、枯渇抗体のいくつかの例は、HERCEPTIN(登録商標)(抗Her2/neu mAb)(Baselgaら、J Clin Oncology、Vol 14:737、1996;Baselgaら、Cancer Research、58:2825、1998;Shak、Semin.Oncology、26(Suppl12):71、1999;Vogalら、J Clin Oncology、20:719、2002);及びRITUXAN(登録商標)(抗CD20mAb)(Colombatら、Blood、97:101、2001)である。残念ながら、腫瘍学の治療において明瞭に成果をあげる一方で、それらは単剤療法としては、一般的に個人の約30%でしか機能せず、応答が部分的である。さらに、これら抗体含有レジメンによる治療後、多くの個人は、最終的に難治性化又は再発する。
【0097】
共刺激又は共阻害分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体又は遮断抗体を用いる治療は、広範な研究及び臨床評価の分野であってきた。通常の生理学的条件下では、免疫チェックポイントは自己寛容の維持(つまり、自己免疫の予防)にとって極めて重要であり、免疫系が病原性感染に反応している際のダメージから組織を保護する。腫瘍が特定の免疫チェックポイント経路を、特に腫瘍抗原に特異的なT細胞に対する免疫耐性の主要なメカニズムとして選択することも現在、明らかである(Pardoll DM.、Nat Rev Cancer、12:252-64、2012)。したがって、免疫チェックポイント分子、例えばCTLA-4(イピリムマブ)、PD-1(ニボルマブ;ペンブロリズマブ;ピリジズマブ)及びPD-L1(BMS-936559;MPLD3280A;MEDI4736;MSB0010718C)(例えば、Philips及びAtkins、International Immunology、27(1);39-46、2014年10月を参照)、及びOX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、及びVISTA(例えばSharonら、Chin J Cancer、33(9):434-444、2014年9月;Hodiら、N Engl J Med、2010;Topalianら、N Engl J Med、366:2443-54を参照)に対する抗体を用いる治療は、癌などの増殖性疾患の患者、特に、難治性及び/又は再発性癌の患者を治療するための新しい代替免疫治療として評価されているところである。
【0098】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法を用いる治療は、患者自身のT細胞が実験室で単離され、特定の抗原又はタンパク質を認識する合成受容体でリダイレクトされ、患者に再注入される免疫療法である。CARは、(1)典型的には抗体に由来する抗原結合領域、(2)CARをT細胞内に固定する膜貫通ドメイン、及び(3)1又は複数の細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、を最小限に含有する合成分子である。CARは、T細胞特異性を、ヒト白血球抗原(HLA)に依存しない方法で抗原にリダイレクトし、T細胞寛容に関連する問題を克服する(Kalos M and June CH、Immunity、39(1):49-60、2013)。過去5年間で、CAR-T細胞療法の少なくとも15件の臨床試験が発表されてきた。CAR-T細胞療法を取り巻く新たな興奮の波は、ペンシルベニア大学(Penn)の研究者が、CD19に向けられたCAR T細胞の単回投与後に長期の寛解を示した難治性慢性リンパ性白血病(CLL)の3人の患者に関する報告を発表した、2011年8月に始まった(Porter DLら、N Engl J Med.、365(8):725-733、2011)。
【0099】
ドナーT細胞とは対照的に、ナチュラルキラー(NK)細胞は、移植片対宿主病(GvHD)を誘導するリスク無しに抗癌効果を媒介することが知られる。従って、アロ反応性NK細胞はまた、癌の細胞療法のための好適で強力なエフェクター細胞として、今やかなりの関心の的でもある。いくつかのヒトNK細胞株、例えば、NK-92、HANK-1、KHYG-1、NK-YS、NKG、YT、YTS、NKL及びNK3.3(Kornbluth、Jら、J.Immunol.134、728-735、1985;Cheng M.ら、Front.Med.6:56、2012)が樹立されており、及び様々なCAR発現NK細胞(CAR-NK)が生成されてきた。CAR発現NK細胞を用いる免疫療法は、研究と臨床評価が活発な分野である(例えば、Glienkeら、Front Pharmacol、6(21):1-7、2015年2月を参照)。
【0100】
二重特異性T細胞エンゲージャー分子(BiTE(登録商標))は、病原性標的細胞に対する細胞傷害性T細胞のポリクローナル活性化及びリダイレクトのための二重特異性単鎖抗体のクラスを構成する。BiTE(登録商標)は、癌細胞の表面標的抗原及びT細胞のCD3に対して二重特異性である。BiTE(登録商標)は、T細胞受容体の特異性、共刺激、又はペプチド抗原の提示とは無関係に、あらゆる種類の細胞傷害性T細胞を癌細胞に接続できる。これは、任意の他の種類の二重特異性抗体構築物についてまだ報告されていないユニークな特性セットすなわち、T細胞の同時刺激を必要としない、低T細胞数での標的細胞に対する並外れた能力及び有効性である(Baeuerleら、Cancer Res、69(12):4941-4、2009)。BiTE抗体は、これまで、CD19、EpCAM、Her2/neu、EGFR、CD66e(又はCEA、CEACAM5)、CD33、EphA2、及びMCSP(又はHMW-MAA)(Id.)を含む、10個を上回る異なる標的抗原に対して構築されてきた。ブリナツモマブ(Nagorsen,D.ら、Leukemia & Lymphoma50(6):886-891、2009)及びソリトマブ(Amannら、Journal of Immunotherapy32(5):452-464、2009)などのBiTE(登録商標)抗体を用いる治療は、臨床的に評価されているところである。
【0101】
いくつかの態様では、第2療法が、PARP阻害剤の投与を含む。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、DNA損傷に反応してさまざまな活動に関与する酵素のファミリーである。PARP-1は、塩基除去修復(BER)経路を通じて一本鎖切断(SSB)修復を媒介する主要なDNA修復酵素である。PARP阻害剤は、BRCA1及びBRCA2変異を擁する腫瘍細胞を選択的に殺すことが実証されてきた。さらに、前臨床及び予備的な臨床データは、PARP阻害剤がBRCA1又はBRCA2以外の遺伝子の機能不全によって引き起こされる相同組換え修復欠損症の腫瘍に対して選択的に細胞毒性であることを示唆する。いくつかの態様では、PARP阻害剤は、ABT-767、AZD2461、BGB-290、BGP15、CEP9722、E7016、E7449、フルゾパリブ、INO1001、JPI289、MP124、ニラパリブ、オラパリブ、ONO2231、ルカパリブ、SC101914、タラゾパリブ、ヴェリパリブ、WW46、又はそれらの塩若しくは誘導体からなる群より選択される。いくつかの態様では、抗PARP療法は、約100mg、約200mg、若しくは約300mgのニラパリブ又はその塩若しくは誘導体と同等の用量で実施される。いくつかの態様では、抗PARP療法は、約100mgのニラパリブ又はその塩若しくは誘導体と同等の用量で実施される。いくつかの態様では、抗PARP療法は、約200mgのニラパリブ又はその塩若しくは誘導体と同等の用量で実施される。特定の態様では、抗PARP療法は、約300mgのニラパリブ又はその塩若しくは誘導体と同等の用量で実施される。
【0102】
上記AXL変異体が、第2療法に先立って、と同時に、又はその後に、通常、少なくとも約1週間、少なくとも約5日間、少なくとも約3日間、少なくとも約1日間、投与され得る。上記AXL変異体は、単回投与で与えてよく、又は、複数回投与に分割して、例えば、毎日、1日2回、週2回、毎週等を含む一定期間にわたって与え得る。有効用量は、投与経路、特定の薬剤、細胞縮小剤の用量などによって異なり、当業者によって経験的に決定され得る。静脈内投与されるポリペプチドの有用範囲は、経験的に決定してよく、例えば、少なくとも約0.1mg/kg体重;少なくとも約0.5mg/kg体重;少なくとも約1mg/kg体重;少なくとも約2.5mg/kg体重;少なくとも約5mg/kg体重;少なくとも約10mg/kg体重;少なくとも約20mg/kg体重;以上であり得る。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週10mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週5mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週2.5mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週1mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、14日毎に20mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に10mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に5mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に2.5mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に1mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。
【0103】
さらにいくつかの態様では、本発明の治療実体は、多くの場合、活性治療剤、すなわち、様々な他の薬学的に許容される成分を含む医薬組成物として投与される。(Remington’s Pharmaceutical Science、15.sup.th ed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1980を参照)。好ましい形態は、意図される投与様式及び治療用途に依存する。上記組成物はまた、所望の製剤によって、動物又はヒト投与用の医薬組成物を配合するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される、薬学的に許容される非毒性担体又は希釈剤を含むことができる。希釈剤は、組み合わせの生物活性に影響を及ぼさないように選択される。こうした希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤なども含み得る。
【0104】
さらに他のいくつかの態様では、本発明の医薬組成物はまた、タンパク質、キトサンなどの多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びコポリマー(ラテックス官能化セファロース(商標)、アガロース、セルロースなど)、高分子アミノ酸、アミノ酸共重合体、及び脂質凝集体(油滴又はリポソームなど)などのゆっくりと代謝される高分子を含むことができる。さらに、これらの担体は免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能できる。
【0105】
さらに他の態様では、本発明の方法は、治療を必要とする対象に、本発明の治療的実体(例えば、阻害剤)の治療有効量又は有効用量を投与することを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の本発明の治療実体の、例えば原発性又は転移性癌の治療のための有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトか動物か、投与される他の医薬品、及び治療が予防的又は治療的であるかどうかを含む、多くの異なるファクターによって異なる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も治療することができる。安全性と有効性を最適化するために、治療の投与量は滴定の必要がある。
【0106】
いくつかの態様では、投与量が宿主体重の約0.0001~100mg/kg、及びより通常は0.01~5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は1mg/kg体重若しくは10mg/kg体重又は1~10mg/kgの範囲内であることができる。いくつかの態様では、患者に投与される上記可溶性AXL変異体ポリペプチドの投与量が、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5、約10.0mg/kg、約10.5、約11.0、約11.5、約12.0、約12.5、約13.0、約13.5、約14.0、約14.5、約15.0、約15.5、約16.0、約16.5、約17.0、約17.5、約18.0、約18.5、約19.0mg/kg、約19.5、及び約20.0mg/kgからなる群より選択される。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週10mg/kgの用量で30又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週5mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週2.5mg/kgの用量で30分又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが、毎週1mg/kgの用量で30又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に20mg/kgの用量で30又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に10mg/kgの用量で30又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に5mg/kgの用量で30又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に2.5mg/kgの用量で30又は60分間にわたってIV注入として与えられる。いくつかの態様では、上記可溶性AXL変異体ポリペプチドが14日毎に1mg/kgの用量で30又は60分間にわたってIV注入として与えられる。
【0107】
いくつかの態様では、治療計画は、2週間毎に1回又は月に1回、又は3&#12316;6ヶ月に1回の投与を必要とする。本発明の治療実体は、通常、複数の機会に投与される。単回投与の間隔は、毎週、毎月、又は毎年とすることができる。患者の治療実体の血中濃度の測定によって示されるように、間隔は不規則であることもできる。あるいは、本発明の治療実体は、徐放性製剤として投与することができ、その場合、より少ない頻度での投与が必要とされる。投与量と頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期によって異なる。
【0108】
予防的適用において、比較的低投与量が長期間にわたって比較的低い頻度の間隔で投与される。一部の患者は、一生涯治療を受け続ける。治療用途では、疾患の進行が減速又は終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的又は完全な回復を示すまで、比較的高い投与量が比較的短い間隔で必要になる場合がある。その後、当該患者には予防レジメンを施すことができる。
【0109】
さらに他の態様では、本発明の方法は、AML、卵巣癌、乳癌、肺癌、肝臓癌、結腸癌、胆嚢癌、膵臓癌、前立腺癌、及び/又は神経膠芽腫の、原発腫瘍形成又は腫瘍転移又は腫瘍浸潤の治療、低減又は防止を含む。
【0110】
さらにいくつかの他の態様では、予防的適用のために、医薬組成物又は医薬品は、リスクを排除又は低減、重症度を軽減、又は、疾患の発症を遅らせるのに十分な量を、疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動的症状、その合併症及び疾患の発症中に現れる中間的病理学的表現型といった、疾患又は状態になりやすい、又はそうでなければそうしたリスクがある患者に投与される。
【0111】
さらに他のいくつかの態様では、治療用途のために、本発明の治療実体は、その合併症及び疾患の発症における中間的病理学的表現型を含む、疾患の症状(生化学的、組織学的及び/又は行動的)を治癒又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量を、そのような疾患の疑いがある、又はすでに罹患している患者に投与する。治療的又は予防的治療を達成するのに適当な量は、治療的又は予防的有効用量として定義される。予防計画と治療計画の両方において、薬剤は通常、十分な反応が達成されるまで数回の投与が行われる。典型的には、反応は監視され、癌の再発がある場合は反復投与が行われる。
【0112】
本発明によれば、原発性又は転移性癌の治療のための組成物は、非経口、局所、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内又は筋肉内手段により投与することができる。最も典型的な投与経路は静脈内又は腫瘍内であるが、他の経路も等しく効果的であることができる。
【0113】
非経口投与の場合、本発明の組成物は、水、油、生理食塩水、グリセロール又はエタノールなどの無菌液体であることができる医薬担体を用いて、生理学的に許容される希釈剤中の物質の溶液又は懸濁液の注射可能な投与量で投与することができる。さらに、湿潤剤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などの補助物質を組成物中に存在させることができる。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物、又は合成起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、及び鉱油である。一般に、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能な溶液にとって好ましい液体担体である。抗体及び/又はポリペプチドは、活性成分の徐放を可能にするような方法で処方することができる蓄積注射剤又はインプラント調製物の形で投与することができる。いくつかの態様では、上記組成物は、HCl又はNaOHでpH7.4に調整された、10mMのTris、210mMのスクロース、51mMのL-アルギニン、0.01%ポリソルベート20からなる水性緩衝液中に配合された1mg/mLのポリペプチドを含む。
【0114】
典型的には、組成物は、液体溶液又は懸濁液のどちらかとしての注射剤として調製され;注射前に液体ビヒクルに溶解又は懸濁するのに好適な固体の形としても、調製することができる。調製物はまた、上述のように、リポソーム、又はポリラクチド、ポリグリコリド、若しくはコポリマーなどの微粒子に、乳化するか、又は、カプセル化して、アジュバント効果増強することができる(Langer、Science249:1527、1990及びHanes、Advanced Drug Delivery Reviews28:97-119、1997)。本発明の薬剤は、そのような方法で配合できる蓄積注射剤又はインプラント製剤の形で投与して、有効成分の持続放出又はパルス放出を可能にできる。
【0115】
他の投与様式に好適な追加の製剤は、経口、鼻腔内、及び肺用製剤、坐剤、及び経皮用途のものを含む。
【0116】
坐剤の場合、結合剤及び担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリド;があげられ、こうした坐剤は、0.5%~10%、好ましくは1%~2%の範囲の有効成分を含む混合物から形成することができる。経口製剤としては、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、及び炭酸マグネシウムなどの賦形剤があげられる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤又は粉末の形を取り、10%~95%、好ましくは25%~70%の有効成分を含む。
【0117】
局所適用は、経皮又は皮内送達をもたらすことができる。局所投与は、コレラ毒素又は解毒された誘導体若しくはそのサブユニット又は他の類似の細菌毒素と薬剤との同時投与によって促進されることができる。Glennら、Nature391:851、1998。共投与は、成分を混合物として、又は化学的架橋若しくは融合タンパク質としての発現により得られる連結分子として用いることにより達成できる。あるいは、経皮送達は、皮膚パッチ又はトランスフェロソームを用いて達成できる。Paulら、Eur.J.Immunol.25:3521-24、1995;Cevcら、Biochem.Biophys、Acta1368:201-15、1998。
【0118】
医薬組成物は、一般的に無菌として実質的に等張で、かつ、米国食品医薬品局の全ての医薬品製造品質管理基準(GMP基準)に完全に準拠して、配合される。好ましくは、本明細書に記載のポリペプチド組成物の治療有効量は、実質的な毒性を引き起こすことなく治療的利益を提供するものである。
【0119】
本明細書に記載のタンパク質の毒性は、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)又はLD100(集団の100%に対して致死的な用量)を測定することによって、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の用量比が治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物実験から得られたデータは、ヒトでの使用に毒性のない投与量範囲の策定に使用できる。本明細書に記載のタンパク質の投与量は、毒性がほとんどないか全くない有効用量を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。この投与量は、採用される剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動する可能性がある。正確な配合、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。(例えば、Finglら、1975、In:The Pharmacological Basis of Therapeutics、Ch.1を参照)。
【0120】
また、本発明の範囲内には、本発明の組成物及び使用説明書を含むキットがある。キットは、少なくとも1つの追加試薬、例えば、細胞縮小薬をさらに含むことができる。組成物は、単位用量製剤中に提供され得る。キットは一般的に、キットの内容物の使用目的を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上若しくはキットとともに提供される、又はさもなければキットに付随する、書面又は記録された資料を含む。
【0121】
本明細書に引用された全ての出版物及び特許は、個々の出版物又は特許が具体的かつ個別に示され参照により組み込まれるように、参照により本明細書に組み込まれ、また、参照により本明細書に組み込まれ、出版物が引用される関係でその方法及び/又は材料を開示及び説明する。いかなる出版物の引用も、出願日より前のその開示に対するものであり、本発明が、先行発明によってそのような出版物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供された発行日は実際の発行日と異なる場合があり、個別に確認を要する場合がある。
【0122】
この開示を読めば当業者には明らかであるように、本明細書で説明及び例示された個々の態様はそれぞれ、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離又はそれと組み合わせてよい個別の構成要素及び特徴を有する。列挙された方法はいずれも、列挙されたイベントの順序で、又は論理的に可能な他の任意の順序で実行できる。本明細書で用いられる用語は、特定の態様を説明するためのものであることも理解される。
【0123】
前述の発明は、理解を明確にする目的で、説明図及び例を用いてある程度詳細に説明されてきたが、本発明の精神から逸脱することなく、又は特定の変更や修正を加え得ること、及び添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは、本発明の教示に照らして、当業者には、容易に明らかであろう。
【0124】
当業者は、慣用の実験のみを用いて、本明細書に記載の本発明の特定の態様に対する多くの同等物を認識し、又は確認することができる。そのような同等物は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0125】
実験
実施例1
AXLデコイ受容体を用いたGAS6誘導性浸潤/移動の阻害
GAS6誘導性浸潤/移動の阻害を、トリプルネガティブ乳癌(MDA-MB-231)及び卵巣癌(OVCAR8)のモデルにおいて、Corning(登録商標)Matrigel(登録商標)又はコラーゲン浸潤アッセイをそれぞれ用い、また、野生型AXL配列(配列番号:1)に対して下記の位置:(a)グリシン32;(b)アスパラギン酸87;(c)アラニン72;(d)バリン92;及び(e)グリシン127にアミノ酸変化を含み、AXL膜貫通ドメインを欠き、機能性FNドメインを欠き、及びペプチドリンカーによって上記可溶性AXL変異体ポリペプチドに連結されたFcドメイン(以下、AVB-S6-500と称する)を含む、可溶性AXL変異体ポリペプチドを含む、AXLデコイ受容体を用いて、評価した。
【0126】
無血清培地中のAVB-S6-500及びMDA-MB-231 Axl TNBC細胞を、マトリゲルコーティングされたボイデンチャンバーの上部に播種した。化学誘引物質として血清を含む培地をチャンバーの底に加えた。24時間のインキュベーション後、マトリゲル全体に移動した細胞の数を数え、PBS対照に対する侵襲性細胞の割合として表した(図1A)。AVB-S6-500、OVCAR8 Axl卵巣癌細胞、タイプ1コラーゲン、50ng/mL GAS6、及び増殖培地をマイクロウェルに播種し、インキュベートした。6日目に、侵襲性の表現型を呈する細胞の数を数え、PBS対照に対する侵襲性細胞の割合として表した(図1B)。AVB-S6-500は、1~100μg/mLの範囲で、GAS6誘導性細胞浸潤/移動を有意に阻害した。
【0127】
実施例2
MDA-MB-231細胞浸潤アッセイにおけるIC50値の決定及びAXLデコイ受容体とチロシンキナーゼ阻害剤の比較
AVB-S6-500のIC50値を、MDA-MB-231細胞浸潤アッセイ±50nMのGAS6及び細胞生存率アッセイにて決定し、承認済チロシンキナーゼ阻害剤、ボスチニブ、のIC50と比較した。AVB-S6-500で処理したMDA-MB-231細胞の代表的な画像を図2に示す。表1に示すように、AVB-S6-500は、細胞浸潤の阻害においてボスチニブよりも約100倍強力であり、7つの細胞毒性/化学療法治療標準(SOC)薬と比較して、8つの多様な癌細胞株(結腸癌、乳癌、AML、卵巣癌、膵臓癌、及びNSCLC)のパネルの細胞生存度に影響しなかった。
【0128】
実施例3
AXLデコイ受容体を用いた転移性腫瘍負荷の低減
マウスにSKOV3.ip卵巣癌腫瘍細胞(1×10)を腹腔内(IP)接種し、無作為にグループ分けし、また、AVB-S6-500を1日おきに5、10、又は20mg/kg(Q2D)で投与した。転移性腫瘍負荷は投与の24日後に、腹腔内の全ての目に見える転移性病変を数え、全ての病変組織を切除して秤量することにより、評価し、全重量(図3A)と転移の数(図3B)を確定した。AVB-S6-500は、10及び20mg/kgで投与した際、転移性腫瘍負荷を顕著に低減させた。SKOV3.IPマウス異種移植モデルにおけるAVB-S6-500単剤療法は、10及び20mg/kgのQ2D(ヒトでは2.5~5mg/kg/週に相当)で肉眼的転移病変の平均数と平均体重を有意に減少させ、無血清GAS6レベルを抑止した。
【0129】
実施例4
AXLデコイ受容体及びドキソルビシンの組み合わせを用いる優れた有効性
マウスにSKOV3.ip卵巣癌腫瘍細胞(1×10)を腹腔内(IP)接種し、無作為にグループ分けし、AVB-S6-500を20mg/kgのQ2D単独で、又は週2回2mg/kgのドキソルビシン(DOX)と組み合わせて投与した。転移性腫瘍負荷は、投与の24日後に評価した。全重量(図4A)と転移の数(図4B)の比較では、併用療法に対する有意な利益が示された。AVB-S6-500とドキソルビシンの組み合わせにより、病変組織の平均重量が大幅に減少し、2匹が治癒した。
【0130】
実施例5
PK試験
マウス試験により、sGAS6(薬物標的)の枯渇と抗転移効果との関係が確立された。マウス試験で有効だった用量は、マウスにおける血清GAS6レベルの抑止に関連しており、ヒトでは0.5~1.7mg/kgに相当する。カニクイザルにおけるPK試験では、AVB-S6-500は、5mg/kg(ヒト等価用量:1.7mg/kg)の単回投与後、カニクイザルで約1週間血清GAS6の抑止、すなわちヒトにおける毎週のIV注入のための望ましいプロファイルを示した(図5)。
【0131】
血清GAS6(sGAS6)枯渇と抗転移活性との間に観察された前臨床関係により、sGAS6は、GLP毒物学を含む全ての非臨床試験でsGAS6レベルを評価するための薬力学的[PD]アッセイにおける、有用なバイオマーカーであると認識された。これらの試験において、非常に一貫したPK/PDが観察された。
【0132】
実施例6
安全試験
マウス及びサルに投与されたAVB-S6-500は、所望の生物学的効果に必要なものよりもはるかに高い用量での単回及び反復投与後の忍容性が良好であった。オス及びメスのCD-1マウスにおいて、25、50、及び100mg/kg(50、100、及び200mg/kg/週)の用量で、週1回又は2回のスローボーラス静脈内注射(IV)、又は、サルにおいて30、100及び150mg/kgの用量で週4回30分間のIV注入について、治療関連死亡率若しくは副作用は無かった。全ての投与量は、試験期間全体を通して血清GAS6レベルの完全な抑止をもたらした。最大無毒性量(NOAEL)はそれぞれ、マウスでは200mg/kg/週(最高用量)、サルでは150mg/kg/週であった。
薬物動態/薬力学的モデリング及びマウスの有効用量の外挿により、1.5~5mg/kgのAVB-S6-500がヒトに有効であると予測される。非常に一貫性のあるPK/PDが、バイオマーカーとしてsGAS6を用いた非臨床試験で観察される。
【0133】
AVB-S6-500は、ヒトの乳癌及び卵巣癌異種移植モデルにおける転移性癌の負担を低減するのに有効であり、はるかに高用量でもカニクイザル及びマウスにおいて安全であることが示された。これらの結果は、多くの腫瘍学的モデル全体で有効性と安全性が実証されてきた、先行するデコイ受容体の結果と同様であり、健常ボランティアにおけるAVB-S6-500の安全な使用をサポートする。
【0134】
動物PK/PDのモデリングを、癌患者で見られるsGAS6の上昇を考慮したヒト試験での投薬を導くのに用いた。具体的には、毒物学プロファイルにより、ヒト試験で初めて、健常ボランティアへの投薬と、PDに導かれた用量選択と組み合わせたGLP毒性試験が可能になった。AVB-S6-500のクリアランスに対するGAS6の効果は、ターゲット媒介薬物動態(TMDD)モデルに組み込まれ、AVB-S6の平行線形及び非線形クリアランスを提供した。サルのデータを用いて、1、2.5、5、及び10mg/kgの用量レベルについてヒトGAS6抑制のシミュレーションを実行した。癌患者のsGAS6レベルが潜在的により高いことと化学療法併用の投薬レジメンを考慮して、様々なAVB-S6投薬レジメンをモデル化して、腫瘍学研究で用いられる用量による標的範囲を予測した。ターゲット媒介薬物動態(TMDD)モデルを用いて、有効であると推定されるヒトの用量は、1.5mg/kg(GAS6レベルがベースラインよりも少なくとも50%低いことを保証する)から5mg/kg(遊離GAS6の97%の抑止を保証し、GAS6レベルを正常レベルに比して3倍増加させることができる)の範囲であった。
【0135】
実施例7
健常対象における静脈内AVB-S6-500の単盲検、無作為化、プラセボ対照、フェーズ1、単回上昇用量及び反復投与、安全性及び忍容性試験
静脈内AVB-S6-500の単回上昇用量(SAD)、及び、単回用量レベル(5mg/kg)で週に1回、合計4回、静脈内投与されたAVB-S6-500の反復用量(RD)の安全性及び忍容性を、健康な患者で評価する。SADとRDの薬物動態(PK)と薬力学(PD)を特徴付ける。
【0136】
適格な対象は、表2及び表3に示される用量レベルでAVB-S6-500又はプラセボのいずれかを受けるために3:1の比率でランダムに割り当てられ、盲検化した。

【0137】
各対象について、試験は3つの期間:前治療期間(1日目の最長28日前に行われるスクリーニング訪問を含む)、治療期間、及び追跡期間(試験終了/早期離脱訪問)から構成された。各コホートの試験終了(EOS)/早期離脱(EW)訪問の完了後、全ての用量レベルからの利用可能な安全性データは、スポンサー、メディカルモニター(MM)、及び治験責任医師によってレビューされ、AVB-S6-500の次の最高用量を登録して続行するかどうかが決定される。
【0138】
単回上昇用量コホートに登録された対象は、無作為化スケジュールに従って、AVB-S6-500又はプラセボの単回投与を受けるように割り当てられ;反復投与コホートの対象は、無作為化スケジュールに従って、4用量のAVB-S6-500又はプラセボ(4週間にわたって毎週投与)を受けるように割り当てられた。RD対象は、第2週と第3週の1日目に治験薬の各用量の投与を受けるためにクリニックに戻り、各週毎の用量投与後に外来通院を継続する。対象は、第4週の1日目にCRUに入院し、第4週の用量の投与後24時間、CRUに留まり、PK/PD評価のための採血を容易とした。第4週の2日目に、対象は、その日のすべての予定された評価が完了した後にCRUから退院し、EOS/EW訪問を通じて外来で通院を続ける。
【0139】
治験薬の全ての用量は、1時間にわたる静脈内注入によって投与される150mlの希釈剤(250mlバッグ中)中の注入用の溶液として調製された。全ての治療は、クリニックのスタッフによってクリニックで行われた。治験薬は、10mLのAVB-S6-500を含むバイアルで提供された(濃度20mg/mL、AVB-S6-500の総含有量は1バイアルあたり200mg)。AVB-S6-500は、個々の対象番号についてパッケージ化されない。無作為化コードに基づいて、薬剤師又は適切に訓練された被指名人が、静脈内投与用の治験薬を調製する。注入用のAVB-S6-500溶液は、現行の適正製造基準に従ってパッケージ化及びラベル付けされ、20mLバイアル(各バイアルに10mLを含む)で臨床現場に提供された。
【0140】
AVB-S6-500濃度及びGAS6(薬力学的マーカーを含む)レベルの分析のための血液サンプル(血清)は、投与に対して以下の時点で単一の上昇コホートに登録された対象から採取された:投与前45分以内(0時間)及び投与後約1、2、4、6、8、24、72、120、168、及び336時間。反復投与コホートに登録された対象の場合、AVB-S6-500及びGAS6分析用の血清サンプルを以下の時点で採取した:試験第1週-投与前45分以内(投与前)、及び投与後約1、2、4、6、8、24、72、及び120時間;試験第2週-投与前(投与の45分以内;第1週の168時間の時点としても作用);試験第3週-投与前(投与の45分以内);試験第4週-投与前45分以内(投与前)、及び投与後約1、2、4、6、8、24、72、120、168、504、528及び696時間。
【0141】
薬物動態学的及び薬力学的分析のために、血液サンプル(4mL)を血清分離器チューブに採取し、PK/PD/ADA実験室マニュアルに記載のように処理する。AVB-S6-500の薬物動態評価及びGAS6レベルの薬力学的評価のための血清サンプルはSNBLに送られる。各対象からの1セットの血清サンプルは、コホートごとに複数回、継続的に発送される(試験PK/PDマニュアルで定義される発送スケジュール)。残りの2回又は3回分のサンプルは、バックアップとしてCRUに保管される。PK及びPD分析のために一部の時点で採取された血液サンプル(4mL)は、抗薬物抗体(ADA)の存在について分析される。薬物動態データは、10mg/kgの用量レベルへの上昇時点で考慮される。具体的には、PKデータは初期用量コホートに続いて採取し、そして、非臨床種のスケーリングを用いたヒトPKの現在の推定値と比較する。これらのデータは、必要に応じて、後続の用量レベルで概算された安全マージンを再評価するために用いた。
【0142】
AVB-S6-500は、全ての用量にわたって十分に忍容された。深刻な有害事象は無かった。身体診察又はバイタルサインにおいて認められた治療関連の変化は無かった。検査値に基づくAEはいずれも臨床的に有意であるとは見なされず、治療を必要とせず、全て無症候性であった。プロトコールに従って、活性薬物を与えられた対象についてのCTCAE v 4.03基準を満たす全ての検査値は、おそらく関連すると考えられた。おそらく/多分、又は確実に関連すると見なされるものは無かった。
【0143】
単回IV注入後、AVB-S6-500のPKは、モノクローナル抗体などの他のタンパク質治療と同様の特徴を示し、一般に少量の分布及び二相性消失を示した。最高血清AVB-S6-500濃度(Cmax)と濃度対時間曲線下の面積(AUC)は、用量の増加とともに増加した。Cmaxにおける増加はこの用量範囲全体でほぼ比例したが、AUCにおける増加は用量に比例するよりわずかに大きかったため、TMDDと一致する非線形の消失動態が示唆された。毎週の投与を繰り返すと、次の注入(Ctrough)の直前の最後に測定された濃度の増加は投与量1と4の間で約2倍であり、単回投与の平均半減期の59時間と一致して、適度な蓄積を示唆した。全ての単回投与及び反復投与コホートの中で、抗AVB-S6抗体について陽性であった対象はいなかった。さらに、AVB-S6の反復投与中の血清GAS6の長期抑制は、抗AVB-S6抗体について陽性と判定された対象がいないことを反映した。
【0144】
図6及び7に示すように、血清GAS6レベルは、1mg/kgでの投与後1週間で抑制され(6名中4名の対象で観察された)(図6A)、2.5mg/kgでの投与後1週間で抑制され(6名中6名の対象で観察された)(図6B)、5mg/kgでの投与後2週間で抑制され(6名中6名の対象で観察された)(図7A)、及び10mg/kgでの投与後2週間で抑制され(6名中6名の対象で観察された)並びに10mg/kgでの投与後3週間で抑制され(6名中3名の対象で観察された)。
【0145】
図8及び9に示すように、AVB-S6-500薬物レベルが用量応答を示し、AVB-S6-500の最低用量(1mg/kg)が薬理学的に活性である。対象全体の平均血清GAS6レベルは15.7±3.9ng/mLであった。健常対象に1、2.5、5、又は10mg/kgのAVB-S6を1回注入すると、即座に循環血清GAS6濃度がBLQレベル(2ng/mL)に最大に低下した。1及び2.5mg/kgのAVB-S6-500の注入後、GAS6の抑制が7日間維持された。血清GAS6は、それぞれ、5及び10mg/kg用量の注入後22及び29日間、検出可能なレベル未満に抑制されたままであった。健常対象に毎週5mg/kgのAVB-S6-500を注入すると、循環血清GAS6濃度が即時かつ持続的にBLQレベルに最大に低下した。GAS6が6名の対象中2名でLLOQを上回り測定可能であったが、ベースラインレベルに戻らなかった際、GAS6の抑制は、最後の注入後504時間まで、全ての対象のBLQレベルで維持された。GAS6濃度は他のすべての対象においてBLQのままであった(6名中4名)。したがって、PK/PDモデリングにより、sGAS6を抑制(>90%低減)し、化学療法の投薬レジメンと互換性のある癌試験の投薬レジメンの選択が確認された。
【0146】
ヒトで確立されたPK/PDプロファイルは、前臨床データ及びモデリングと一致した。
【0147】
実施例8
プラチナ耐性再発性卵巣癌の患者におけるAVB-S6-500とペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)又はパクリタキセルとの組み合わせのフェーズ1b/2試験
卵巣癌を有する48名の患者からのsGAS6レベルの分析は、レベルが、正常な健常ボランティア試験からのレベルより2倍高かったことを示唆した。サルのPK/PDモデリングとフェーズ1の健常ボランティアデータを利用し、sGAS6の増加をシミュレーションすると、毎週5mg/kg又は隔週10mg/kgの投与レジメンは、癌患者のsGAS6レベルを抑止することが示唆された。PK/PDモデリングにより、90%を上回る患者で標的を抑制するであろう卵巣試験の用量選択が確認され、化学療法の投薬レジメンと患者の通院回数限定に適合する複数の投薬レジメンが特定された。健常ボランティアでの人間の安全性とPK/PDプロファイルの確立と組み合わせて独自のPDアッセイを使用することで、臨床プログラムが合理化され、腫瘍学試験の用量選択が導かれた。
【0148】
フェーズ1b
フェーズ1b部分において、ペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)又はパクリタキセルと組み合わせたAVB-S6-500の非盲検様式の安全性及び忍容性は、プラチナ耐性再発性卵巣癌患者で評価される。
【0149】
AVB-S6-500+PLD患者において、AVB-S6-500は、30又は60分間にわたるIV注入として10mg/kgの用量を、60分間にわたるIV注入として40mg/mの用量で与えられるPLDと組み合わせて、第1治療サイクルの1日目に与えられる。その後、10mg/kgの用量でAVB-S6-500を14日毎に、第1サイクルの15日目から投与する。2週間毎(q2w)に10mg/kgのAVB-S6-500がPLDとの併用で十分に忍容されない場合、AVB-S6-500の用量は毎週5mg/kgに減らす。6名の新しい患者がこのコホートに登録される。
【0150】
AVB-S6-500+パクリタキセル患者では、AVB-S6-500は、毎週、30又は60分間にわたるIV注入として10mg/kgを、毎週、60分間にわたるIV注入として80mg/mで与えられるパクリタキセルと組み合わせて、28日ごとの治療サイクルの1日目、8日目、15日目、及び22日目に与えられる。各コホートでは、最初に6名の患者に各組み合わせ化学療法レジメンで投与して、組み合わせの安全性を評価する。10mg/kgのAVB-S6-500がパクリタキセルとの併用で十分に忍容されない場合、AVB-S6-500用量は毎週5mg/kgに低下させる。6名の新しい患者がこのコホートに登録される。パクリタキセルと組み合わせた5mg/kgの用量について忍容性が高い場合、さらに6名の患者がこの投与レジメンに登録される。
【0151】
RP2Dは、それぞれの化学療法バックボーンとの組み合わせで、及び、P1b試験からの1ヶ月のPK/PDの評価に基づいて、安全/忍容可能であると考えられるAVB-S6-500の用量/投与レジメンとなり、AVB-S6-500血清レベル>3720ng/mLを達成し、また、投与間隔を通じて全ての患者の血清GAS6をBLQに抑制している。治験薬による治療は、残存腫瘍がなくなるまで(化学療法剤を用いて;AVB-S6-500は完全奏効後少なくとも1年間継続する必要がある)、又は疾患の進行、死亡、インフォームドコンセントの撤回若しくは許容できない毒性の発生まで継続する。
【0152】
フェーズ2
AVB-S6-500のRP2D及び血清GAS6を抑止する所望の効果を有する忍容される併用用量の確立後、フェーズ2部分では、AVB-S6-500+PLD対プラセボ+PLD又はAVB-S6-500+パクリタキセル対プラセボ+パクリタキセルを、無作為化された二重盲検法で、治療されたプラチナ耐性再発性卵巣癌患者における無増悪生存期間(PFS)について比較する。客観的奏効率(ORRは第2エンドポイントとして評価されることもある)。AVB-S6-500は、RP2Dレジメンで60分かけてIV注入として投与される。これは、28日間の治療サイクルで、1日目から開始される。医師による化学療法の選択は、以下のオプションを含む:1)パクリタキセルを80mg/mの用量で28日間の治療サイクルで毎週IV注入として60分間にわたって投与するか、又は2)PLDをIV注入として60分間にわたって40mg/mの用量で28日間の治療サイクルの1日目に投与する。治験薬による治療は、残存腫瘍がなくなるまで(化学療法剤を用い;AVB-S6-500は完全奏効後少なくとも1年間継続する必要がある)、又は疾患の進行、死亡、インフォームドコンセントの撤回又は許容できない毒性の発生まで継続する。
【0153】
患者は、2つの治療アーム:アームA(AVB-S6-500+医師の選択による化学療法)及びアームB(プラセボ+医師の選択による化学療法)のうちの1つに登録され、ランダムに2:1とする。各アームには2つのコホートがあり、1つはPLD併用レジメン用、もう1つはPac併用レジメン用である。
【0154】
本明細書にて開示及び主張される全ての物品及び方法は、本開示に照らして、過度の実験なしに作成及び実行することができる。本発明の物品及び方法を好ましい態様に関して説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、物品及び方法に変形を適用できることは当業者には明らかであろう。当業者に明らかなそのような変形及び同等物は全て、現存するか又は今後開発されるかにかかわらず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内にあると見なされる。本明細書で言及される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルを示す。全ての特許、特許出願、及び出版物は、あらゆる目的のために全体として参照により本明細書に組み込まれ、あたかも個別出版物がそれぞれ任意及びあらゆる目的で具体的かつ個別に全体として参照により組み込まれることが明示されているのと同じ程度に組み込まれる。本明細書で例示的に説明された本発明は、本明細書で具体的に開示されていない要素がなくても好適に実施することができる。したがって、本発明は、好ましい態様及び任意の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書で開示される概念の修正及び変形は、当業者によって用いられてもよく、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられる。
【0155】
[配列表]
添付の配列表に列挙された核酸及びアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822で定義されるように、ヌクレオチド塩基の標準文字略号及びアミノ酸の3文字表記を用いて示される。
【0156】
配列番号1は、ヒトAXLポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号1-ヒトAXLポリペプチドアミノ酸配列
MGRVPLAWCLALCGWACMAPRGTQAEESPFVGNPGNITGARGLTGTLRCQLQVQGEPPEVHWLRDGQILELADSTQTQVPLGEDEQDDWIVVSQLRITSLQLSDTGQYQCLVFLGHQTFVSQPGYVGLEGLPYFLEEPEDRTVAANTPFNLSCQAQGPPEPVDLLWLQDAVPLATAPGHGPQRSLHVPGLNKTSSFSCEAHNAKGVTTSRTATITVLPQQPRNLHLVSRQPTELEVAWTPGLSGIYPLTHCTLQAVLSNDGMGIQAGEPDPPEEPLTSQASVPPHQLRLGSLHPHTPYHIRVACTSSQGPSSW THWLPVETPEGVPLGPPENISATRNGSQAFVHWQEPRAPLQGTLLGYRLAYQGQDTPEVLMDIGLRQEVTLELQGDGSVSNLTVCVAAYTAAGDGPWSLPVPLEAWRPGQAQPVHQLVKEPSTPAFSWPWWYVLLGAVVAAACVLILALFLVHRRKKETRYGEVFEPTVERGELVVRYRVRKSYSRRTTEATLNSLGISEELKEKLRDVMVDRHKVALGKTLGEGEFGAVMEGQLNQDDSILKVAVKTMK IAICTRSELEDFLSEAVCMKEFDHPNVMRLIGVCFQGSERESFPAPVVILPFMKHGDLHSFLLYSRLGDQPVYLPTQMLVKFMADIASGMEYLSTKRFIHRDLAARNCMLNENMSVCVADFGLSKKIYNGDYYRQGRIAKMPVKWIAIESLADRVYTSKSDVWSFGVTMWEIATRGQTPYPGVENSEIYDYLRQGNRLKQPADCLDGLYALMSRCWELNPQDRPSFTELREDLENTLKALPPAQEPDEILYVNMDEGGGYPEPPGAAGGADPPTQPDPKDSCSCLTAAEVHPAGRYVLCPSTTPSPAQPADRGSPAAPGQEDGA
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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