(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】自動車用内装布帛
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20230529BHJP
D04H 3/011 20120101ALI20230529BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230529BHJP
【FI】
B60R13/02 B
D04H3/011
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2021046599
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】510206039
【氏名又は名称】スミノエ テイジン テクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】真川 和久
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143278(JP,A)
【文献】特開2015-140412(JP,A)
【文献】特開2006-022437(JP,A)
【文献】特表2017-521571(JP,A)
【文献】特開2004-019060(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189669(WO,A1)
【文献】特開2013-087372(JP,A)
【文献】実開平05-091500(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
B60R 13/02
D01F 6/00- 6/96
D06P 3/00- 3/874
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、
前記布帛を構成する糸において、次の(1)~(3)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ
前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が17以下であり、
前記布帛のJIS L3102で規定の6号綿帆布による耐摩耗性試験(押圧荷重9.81N、10、000回往復)で4級以上、かつ
該耐摩耗性試験の摩耗前後の色差▲Δ▼Eが
2.65
未満であることを特徴とする自動車用内装布帛。
(1)前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上
(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
(3)前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸
(黒に近い色)
【請求項2】
前記3色混繊の原着糸は、互いに異なる顔料を0.3~1.5重量%混入した繊維3種類を混繊した糸である請求項1に記載の自動車用内装布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の座席シート、ドア張りなどをはじめ自動車内装材の表皮などの用途に好適に用いられる自動車用内装布帛に関する。
【0002】
なお、本願の特許請求の範囲及び本明細書において、繊維と糸の太さ(番手)の単位として、Tはテックス、dTとdtexはデシテックスの意味で用いている。
【背景技術】
【0003】
従来から自動車用内装布帛の色相は、圧倒的に黒内装が多く、どのような車種であっても、黒内装が存在する。黒内装は、手垢や粉塵などの汚れが目立ちにくく、落ち着いた印象をもたらすため多く採用されている。反面、シート表皮として使用される内装布帛は、長期に亘って繰り返される乗降時の人体による摩耗により、布帛表面の繊維がフィブリル化し、白く失色したような現象がみられる。本願では、この現象を白化現象と呼ぶ。白化現象は、特にシートサイド部の布帛が乗降時に摩擦されることで起こりやすく、近年流行のSUV車などヒップポイントの高い車に多く見られる現象である。ヒップポイントの高い車では、乗降時の摩擦による荷重が大きいため布帛の白化現象が問題となっていた。
【0004】
自動車用内装布帛として広く利用されているポリエステル繊維においては、黒色や濃色を表現する場合、天然繊維や、ポリアミドを主体とするナイロン繊維よりも、発色性が劣り、深みが得られないという課題あった。例えば、特許文献1には、自動車用内装布帛の摩擦物性を満たす濃色の布帛が提案されているが、1.2dtex以下の繊度では、摩擦による布帛の色落ちは抑えられたとしても、摩耗後の白化現象を抑えるには不十分である。
【0005】
この問題を解決する一般的な方法により単糸繊度を太くすれば、染色性も良くなり、濃色化が容易になり、摩耗性の向上も図れるが、手触りが悪くなり、合成繊維独特の光沢感が強くなり、自動車用内装布帛として品位を損なうことになる。
【0006】
また、摩耗性の向上のために布帛の繊維表面を樹脂で固着する加工が知られているが近年のサスティナビリティの観点からも、余分な樹脂剤の使用や、製造工程や工数の追加は、製品の製造過程におけるCO2排出量の増加を招くとともに、製品自体の易リサイクル性を阻害するためこの加工を回避することが求められている。すなわち、環境負荷の少ない製品が求められている。
【0007】
さらに、カーシェアリングといったニーズの高まりから、自動車に公共性が求められ、不特定多数の人が利用する自動車には、長期間使用しても外観変化の少ない布帛が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、環境負荷の少ない製品、すなわち再生材料の使用率による環境性能評価に優れるのはもちろんのこと、従来のように摩耗性の向上のために布帛の繊維表面を樹脂で固着する加工を施す必要もなく、比較的明度が低い布帛であっても布帛の素材や構成によって長期に亘り耐摩耗性に優れ、摩耗後の白化現象が起きない自動車用内装布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、比較的明度の低い自動車用内装布帛の摩耗後の白化現象の防止策を鋭意検討した結果、布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の太さや原料を特定なものに限定したところ、前記課題を一挙に解決できることを見出した。すなわち、摩耗性に優れ、摩耗後に白化現象が起こらない自動車用内装布帛を得られることを見出し本発明に到達した。本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、
前記布帛を構成する糸において、次の(1)~(3)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ
前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が17以下であり、
前記布帛のJIS L3102で規定の6号綿帆布による耐摩耗性試験(押圧荷重9.81N、10、000回往復)で4級以上、かつ
該耐摩耗性試験の摩耗前後の色差▲Δ▼Eが2.65未満であることを特徴とする自動車用内装布帛。
(1)前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上
(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
(3)前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸(黒に近い色)
【0013】
[2]前記3色混繊の原着糸は、互いに異なる顔料を0.3~1.5重量%混入した繊維3種類を混繊した糸である前項1に記載の自動車用内装布帛。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、自動車内装において主流の黒内装に適した比較的明度が低い、すなわちL*の値が17以下の布帛であっても、前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸であるので、より一層摩耗による白化現象が起こらず、長期に亘り耐摩耗性に優れ、外観変化が目立ちにくくなるという利点があり、 特に耐摩耗性試験前後の色差▲Δ▼Eが2.65未満であることから、より一層外観変化が少ない自動車用内装布帛を提供できる。
【0017】
[2]の発明では、布帛の色合い面で自動車用内装用として適正を高めることができる。さらに、異なる顔料を混入することで、摩耗による白化現象や外観変化が目立ちにくくなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】摩耗により白化現象が生じた布帛の一例の布帛表面の写真(非摩耗部と摩耗部)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る自動車用内装布帛の一実施形態について詳しく説明する。
【0021】
本発明の自動車用内装布帛は、ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、前記布帛を構成する糸において、次の(1)~(3)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が17以下であり、前記布帛のJIS L3102で規定の6号綿帆布による耐摩耗性試験(押圧荷重9.81N、10、000回往復)で4級以上、かつ該耐摩耗性試験の摩耗前後の色差▲Δ▼Eが2.65未満であることを特徴とする。 (1)前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上 (2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸 (3)前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸(黒に近い色)
【0022】
このような構成を採用することで、再生材料の使用率による環境性能に優れるのはもちろんのこと、従来のように摩耗性の向上のために布帛の繊維表面を樹脂で固着する加工を施す必要もなく、比較的明度が低い、すなわちL*の値が、17以下の布帛であっても、前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸(黒に近い色)であるので、より一層摩耗による白化現象が起こらず、長期に亘り耐摩耗性に優れ、外観変化が目立ちにくくなるという利点があり、 特に耐摩耗性試験前後の色差▲Δ▼Eが2.65未満であることから、より一層外観変化が少ない自動車用内装布帛を提供できる。また、樹脂剤を用いないので製造工程における工程、工数の増加や、材料費の増加によって製造費がアップも発生することなく、風合いの点で布帛としての魅力を失うこともない。さらに、自動車内装用布帛として、主流の黒内装に好適であり、任意の顔料色を選択することで、意匠性を高め、内装色に合わせることができるというという利点がある。
【0023】
前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さを、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上とすることで、摩耗後に繊維の単繊維切れやフィブリル化による白化現象や、相対的な摩耗強度を高めることができる。単繊度2.5dtex~4.5dtexの範囲、かつ総繊度1,000dtex~1,500dtexの範囲がより好ましい。
【0024】
前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸した糸であるので、環境負荷の低減に貢献できる。50重量%未満では、環境負荷低減の効果が少なくなり、逆に75重量%を超えると光沢感が強くなり品位を損なうことになるので50~75重量%の範囲にする必要がある。
【0025】
前記ポリエステル長繊維の糸は、3色混繊の原着糸(黒に近い色)である。この構成を採用することで、摩耗後の外観変化が目立ちにくくなる。前記3色混繊の原着糸は、互いに異なる顔料を0.3~1.5重量%混入した繊維3種類を混繊した糸が好ましい。こうして、布帛の色合い面で自動車用内装用として適正をさらに高めることができる。すなわち、低明度でも摩耗後の白化現象が起こらず、外観変化が目立ちにくいことから、主流の黒内装に好適に用いられる。異なる顔料の繊維を混繊することで、摩耗後の外観変化が目立ちにくくなるという利点がある。
【0026】
本発明において原着糸は、例えば顔料が混練されたポリエステル系樹脂ペレットを溶融紡糸することで得られるが、3色混繊の原着糸は、3基(原着糸1、原着糸2、原着糸3)の二軸押出機を介して溶融紡糸された各繊維を合糸することで得られる。
【0027】
原着糸用の顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アンスラキノン系、ペリノン系などの有機顔料及び酸化チタン、酸化鉄、群青、カーボンブラックなどの無機顔料を挙げることができる。
【0028】
前記樹脂成形品廃材としては、ポリエステル系樹脂を主体とするものであれば特に限定されないが、数多く出回っていることからポリエチレンテレフタレート製の液状飲食料品用、例えば、水、ジュース、茶等のペットボトルを主体とするものであることが好ましい。分別回収によって安定した品質のものを入手しやすいので、前記ポリエステル長繊維の繊度を安定させることができる。さらに、サスティナビリティの観点から廃材を使用することで、グリーン調達可能な製品であるという利点がある。
【0029】
本発明の自動車用内装布帛を構成する繊維素材としては、ポリエステル長繊維を含んでなり、上述の(1)~(3)の条件を同時に満たす糸の比率を30~70重量%の範囲とすることより他は特に限定されず、例えば、ポリアミド繊維、アクリル繊維などの繊維を、混繊、混紡、撚糸等で複合化して含んでもよい。
【0030】
本発明の自動車用内装布帛の形態としては特に限定されないが、織物、編物が好ましい。また、特定のポリエステル長繊維を布帛の最表面に突出させるには、織物では、布帛を構成する繊維の番手差を3倍以上にすればよく、例えば本発明では、1000dtex以上に対して340dtex以下の番手の糸と交織することが挙げられ、どちらか一方をタテ糸、もう一方をヨコ糸としても良く、1000dtexの糸の比率が30~70重量%であればそれぞれの番手の糸の配置は特に制限されない。1000dtex以上の番手糸の比率を30~70重量%としておけば、風合いの悪化は抑えられ自動車用内装材として使用できる範囲となる。また、本発明での、1000dtexi以外の番手糸の色相・明度については、完成した織物で一見視明度がL*の値が17以下の範囲であれば良く、本発明では、1000dtex以上の糸と同系色の色相・明度にて交織し評価した。また、編物でも前記織物と同様に3倍以上の番手差の糸を交編すればよい。
【0031】
また、本発明において織物、編物などでは、裏面側にバッキング層を設けるのが好ましい。裏面側にバッキング層を設けることにより寸法安定性の向上や、難燃性などの機能性を付与することができる。バッキング層としては、特に限定されないが、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂等の樹脂組成物に公知の難燃剤を配合したものを挙げることができる。なお、バッキング層を積層するには、前記樹脂組成物のエマルジョンに難燃剤等を配合し、公知のロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター等によって塗工し、乾燥すればよい。
【0032】
前記布帛は、JIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が17以下で、布帛の平面摩耗試験でタテ方向及び、ヨコ方向共に3級以上、耐摩耗性試験による摩耗前後の色差▲Δ▼Eが2.65未満であるため、摩耗後の白化現象がおこらず、長期に亘り外観変化が少ない。L*の値が25以上であれば、明るく、黒内装に色合わせすることはできない。
【実施例】
【0033】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに特に限定されるものではない。なお、表1に各実施例、比較例を示し、表2に耐摩耗性試験、色差、風合い評価及び環境性能評価の結果を示す。
【0034】
<ポリエステル長繊維の糸の準備>
(A)樹脂成型品廃材を70重量%とバージン(市販品)のポリエステル系樹脂ペレットに原着糸1はカーボンブラック、酸化チタンを含む顔料を0.54重量%含み、原着糸2はカーボンブラック、酸化チタン、青系を含む顔料を0.66重量%含み、原着糸3は、カーボンブラック、酸化チタン、青系を含む顔料を0.79重量%含む配合とし、3基の二軸押出機を介して溶融紡糸された原着糸1、原着糸2、原着糸3を合糸し3色混繊の原着糸を得る方法で、紡糸ヘッドのノズルの違いにより次の4種類の3色混繊原着糸を得た。この原着糸の一見視はブラック色であった。
1220dtex/432f(単糸繊度2.8dtex)・・・BK1
1100dtex/288f(単糸繊度3.8dtex)・・・BK2
660dtex/288f(単糸繊度2.3dtex)・・・BK3
250dtex/216f(単糸繊度1.1dtex)・・・BK4
(B)樹脂成型品廃材を50重量%とバージン(市販品)のポリエステル系樹脂ペレットに原着糸1は、カーボンブラック、酸化チタン、青系を含む顔料を0.48重量%含み、
原着糸2は、原着糸1と同じ配合の顔料を0.48重量%含み、
原着糸3は、原着糸1と同じ配合の顔料を0.48重量%含む配合とし、3基の二軸押出機を介して溶融紡糸された原着糸1、原着糸2、原着糸3を合糸し単一色混繊の原着糸を得る方法で、次の一色混繊原着糸を得た。この原着糸の一見視はブラック色であった。
1100dtex/288f(単糸繊度3.8dtex)・・・BK5
なお、ここでは白化現象が起こりやすいブラック色での実施例を示したが、L*の値が25以下であれば、ダークブルー色やダークブラウン色などにも、適宜顔料の配合を変更することで適用できる。
【0035】
【実施例1】
【0036】
上述の3色混繊原着糸BK1と167dtex/48fのポリエステル長繊維(ブラック色)を交織し、BK1の構成比率が60重量%となるよう製織した。(織組織は、表1を参照)交織される167dtex/48fの原糸の色相・明度については、3色混繊糸との太さの影響で表面には出現しにくいが、一見視色相・明度は、BK1と同様になるよう調色した。続いて製織した生機を液流染色機で精練し、乾燥した後、アクリル系樹脂エマルジョンを生機の裏面に塗布し、熱風乾燥機で温度150℃×5分乾燥し、幅出しセットして経密度69本/インチ、緯密度57本/インチに仕上げ、L*の値が16である自動車用内装布帛を得た。布帛の耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、摩耗前後の布帛の色差▲Δ▼Eは、タテ方向が1.65、ヨコ方向が1.38で白化評価は共に合格であり、白化現象は見られなかった。風合い評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【実施例2】
【0037】
実施例1において、3色混繊原着糸BK1に替えて3色混繊原着糸BK2を用い、BK2の構成比率が60重量%となるように製織した以外は実施例1と同様にして、L*の値が15である自動車用内装布帛を得た。布帛の耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、摩耗前後の布帛の色差▲Δ▼Eは、タテ方向が1.55、ヨコ方向が1.26で白化評価は共に合格であり、白化現象は見られなかった。風合い評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
<参考例>
【実施例3】
【0038】
実施例1において、3色混繊原着糸BK1に替えて単一混繊原着糸BK5を用い、BK5の構成比率が50重量%となるように製織し、幅出しセットして、経密度70本/インチ、緯密度56本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、L*の値が12である自動車用内装布帛を得た。布帛の耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、摩耗前後の布帛の色差▲Δ▼Eは、タテ方向が2.65、ヨコ方向が3.18で白化評価は共に合格であり、白化現象は見られなかった。風合い評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【0039】
<比較例1>
実施例1において、3色混繊原着糸BK1に替えて3色混繊原着糸BK3を用い、BK3の構成比率が60重量%となるように製織し、幅出しセットして、経密度80本/インチ、緯密度60本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、L*の値が16である布帛を得た。布帛の耐摩耗性試験の結果はタテ方向が3級、ヨコ方向が3級で共に不合格であった。また、摩耗前後の布帛の色差▲Δ▼Eは、タテ方向が5.34、ヨコ方向が5.55で白化評価はいずれも不合格で、白化現象が見られた。風合い評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【0040】
<比較例2>
実施例1において、3色混繊原着糸BK1に替えて3色混繊原着糸BK4を用い、BK4の構成比率が50重量%となるように製織し、幅出しセットして、経密度180本/インチ、緯密度85本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、L*の値が17である布帛を得た。布帛の耐摩耗性試験の結果はタテ方向が3級、ヨコ方向が3級で共に不合格であった。また、摩耗前後の布帛の色差▲Δ▼Eは、タテ方向が6.55、ヨコ方向が6.34で白化評価はいずれも不合格で、白化現象が見られた。風合い評価は4級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【0041】
<比較例3>
実施例1において、3色混繊原着糸BK1に替えて3色混繊原着糸BK2を用い、BK2の構成比率が20重量%となるように製織し、幅出しセットして、経密度70本/インチ、緯密度56本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、L*の値が16である布帛を得た。布帛の耐摩耗性試験の結果はタテ方向が3級、ヨコ方向が3級で共に不合格であった。また、摩耗前後の布帛の色差▲Δ▼Eは、タテ方向が5.85、ヨコ方向が5.94で白化評価はいずれも不合格で、白化現象が見られた。風合い評価は4級で合格だが、環境性能評価は「×」で不合格であった。
【0042】
<比較例4>
実施例1において、3色混繊原着糸BK1に替えて3色混繊原着糸BK2を用い、BK2の構成比率が80重量%となるように製織し、幅出しセットして、経密度50本/インチ、緯密度40本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、L*の値が17である布帛を得た。布帛の耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、摩耗前後の布帛の色差▲Δ▼Eは、タテ方向が2.54、ヨコ方向が2.56で白化評価は共に合格であり、白化現象は見られなかった。風合い評価は2級で不合格だが、環境性能評価は「○」で合格であった。
【0043】
【0044】
表1、表2から分かるように実施例1~2の自動車用内装布帛は、長期に亘り外観変化が少なく、優れた耐摩耗性能があり、摩耗後の白化現象が起こらない自動車用内装布帛であった。
【0045】
一方、比較例1~4の布帛は、耐摩耗性試験、摩耗後の白化評価、風合い評価、環境性能評価において、全てを同時に満足することが無かった。
【0046】
<明度L*>
布帛の明度L*の値を、JIS Z8722-2009に準拠して日本電色工業(株)社製の分光色差計(品番NF555)を用いて測定した。
【0047】
<耐摩耗性試験>
平面摩耗試験機(形式:AR-2S、インテック株式会社製)を用いた耐摩耗性試験により評価した。測定は、幅70mm、長さ300mmの試験片をタテ方向及び、ヨコ方向から1枚ずつ採取し、平面摩耗試験機の平面摩耗台に厚み10±1mm、20%圧縮応力が0.79~1.08N/cm2のウレタンフォームを敷いた上に試験片を置き、クランプで固定した。次に、JIS L3102(綿帆布)で規定の6号綿帆布を取り付けた摩擦子を試験片の上にのせ、摩擦子を含めた押圧荷重を9.81N、ストロークを140mm、速度を60m±10往復/分として、10,000回往復の試験を行った。試験片の中央部の摩耗具合を目視で観察して、次の5段階で評価した。なお、4級以上を合格とした。
(等級)
5級・・・変化が認められない
4級・・・変化がわずかに認められるが、ほとんど目立たない
3級・・・変化が明らかに認められるが、目立たない
2級・・・変化がやや著しい
1級・・・変化が著しい
【0048】
<摩耗後の白化評価(色差▲Δ▼E測定)>
耐摩耗性試験前後の試験片の色差▲Δ▼Eを測定し白化度合いを評価した。すなわち、耐摩耗性試験後の試験片中央部と試験前の試験片の色差を測定し、色差▲Δ▼Eが5以下を合格とした。
【0049】
<風合い評価>
自動車用内装布帛の風合いを触感での官能評価し、次の4段階で評価した。なお、3級以上を合格とした。
(等級)
4級・・・表面がスムースでざらざらしない
3級・・・表面がややざらざらするが、気にならない
2級・・・表面がややざらざらする
1級・・・表面が著しくざらざらする
【0050】
<環境性能評価>
自動車用内装布帛の総重量に対する再生材料の比率で評価した。すなわち、再生材料が総重量の25重量%以上のものはグリーン調達の対象となることから合格で「○」とし、25重量%未満のものは不合格で「×」とした。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の自動車用内装布帛は、自動車の座席シート、ドア張りなどをはじめ自動車内装材の表皮などの用途に好適である。