(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】ロシア属細菌由来ナノ小胞およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20230529BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230529BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230529BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20230529BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230529BHJP
A23L 33/135 20160101ALN20230529BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20230529BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALN20230529BHJP
G01N 33/53 20060101ALN20230529BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20230529BHJP
【FI】
A61K35/74 G ZNA
A61P29/00
A61K9/72
A61K8/99
A61Q19/00
A23L33/135
C12N1/20 E
C12Q1/6806 Z
G01N33/53 M
C12Q1/686 Z
(21)【出願番号】P 2021547348
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 KR2020001612
(87)【国際公開番号】W WO2020166868
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0017064
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0012637
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225945(WO,A1)
【文献】特表2017-538421(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0098149(KR,A)
【文献】国際公開第2018/155961(WO,A1)
【文献】Clinical Microbiology and Infection,2009年,Vol.15, Suppl.4,Page S364, Article P1316
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 8/00- 8/99
A23L 33/00-33/29
C12Q 1/00- 1/70
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロシア・アマラエ(Rothia amarae)由来小胞を有効成分として含む、抗炎症用薬学的組成物。
【請求項2】
前記小胞は、平均直径が10~200nmである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記小胞は、ロシア・アマラエ(Rothia amarae)から自然的または人工的に分泌される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
ロシア・アマラエ(Rothia amarae)由来小胞を有効成分として含む、抗炎症用吸入剤組成物。
【請求項5】
ロシア・アマラエ(Rothia amarae)由来小胞を有効成分として含む、抗炎症用化粧料組成物。
【請求項6】
ロシア・アマラエ(Rothia amarae)由来小胞の、抗炎症用薬剤の生産のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロシア属細菌由来ナノ小胞およびその用途に関し、より具体的には、ロシア属細菌に由来するナノ小胞を用いた糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎等の診断方法、および前記小胞を含む糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患に対する予防、改善または治療用組成物に関する。
【0002】
本出願は、2019年2月14日に出願された韓国特許出願第10-2019-0017064号および2020年2月3日に出願された韓国特許出願第10-2020-0012637号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
21世紀に入ってから過去には伝染病と認識された急性感染性疾患の重要性が低下する一方で、ヒトとマイクロバイオームとの不調和によって発生する免疫機能の異常を伴った慢性疾患が生活の質とヒトの寿命を決定する主な疾患となり疾病パターンが変わった。21世紀の難治性慢性疾患として、癌、心血管疾患、慢性肺疾患、代謝疾患、および神経-精神疾患がヒトの寿命と生活の質を決定する主な疾患として国民保健に大きい問題になっている。前記難治性慢性疾患は、原因因子による免疫機能の異常を伴った慢性炎症を特徴とする。
【0004】
人体に共生する微生物は、100兆に至り、ヒト細胞より10倍多く、微生物の遺伝子数は、ヒトの遺伝子数の100倍を超えることが知られている。微生物叢(microbiotaあるいはmicrobiome)は、与えられた生息地に存在する真正細菌(bacteria)、古細菌(archaea)、真核生物(eukarya)を含む微生物群集(microbial community)を言う。
【0005】
一方、人体に共生する細菌および周辺環境に存在する細菌は、他の細胞への遺伝子、低分子化合物、タンパク質等の情報を交換するために、ナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子が通過できない物理的な防御膜を形成して、粘膜に共生する細菌である場合には、粘膜を通過しないが、細菌由来の小胞は、サイズが100ナノメートルサイズ以下であるので、比較的自由に粘膜を通じて上皮細胞を通過して人体に吸収される。局所的に分泌された細菌由来の小胞は、粘膜の上皮細胞を通じて吸収されて局所炎症反応を誘導すると共に、上皮細胞を通過した小胞は、リンパ管を通じて全身的に吸収されて各臓器に分布し、分布した臓器で免疫および炎症反応を調節する。例えば、大腸菌(Eshcherichia coli)のような病原性グラム陰性細菌に由来する小胞は、局所的に大腸炎を起こし、血管に吸収された場合に、血管内皮細胞の炎症反応を通じて全身的な炎症反応および血液凝固を促進させ、また、インスリンが作用する筋肉細胞等に吸収されて、インスリン抵抗性と糖尿病を誘発する。反面、有益な細菌に由来する小胞は、病原性小胞による免疫機能および代謝機能の異常を調節して疾患を調節することができる。
【0006】
細菌に由来する小胞等の因子に対する免疫反応は、インターロイキン(Interleukin、以下、ILという)-17サイトカインの分泌を特徴とするTh17免疫反応が発生するが、これは、病原性細菌由来小胞に曝露時にIL-6が分泌され、これは、Th17免疫反応を誘導する。Th17免疫反応による炎症は、好中球の浸潤を特徴とし、炎症が発生する過程で好中球、マクロファージ等のような炎症細胞から分泌される腫瘍壊死因子-アルファ(tumor necrosis factor-alpha、以下、TNF-αという)が重要な役割を担当する。
【0007】
脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor,BDNF)は、BDNF遺伝子により生成される脳中にあるタンパク質であって、成長要素の一部である神経栄養因子集団中の1つである。この因子は、基本的な神経成長要因に関連しており、うつ病、認知症、アルツハイマー病、自閉症等で発現が減少していると知られている。
【0008】
一方、ロシア(Rothia)属細菌は、口腔、呼吸器に共生している好気性グラム陽性細菌であって、ほとんど病気を起こさない菌と知られている。しかし、まだロシア属細菌が細胞外に小胞を分泌するという事実が報告されておらず、特に糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎等のような難治性疾患の診断および治療に応用した事例は報告されたところがない。
【0009】
これより、本発明では、ロシア属細菌由来小胞が正常ヒトに比べて糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎患者の臨床サンプルで有意に減少していることを確認して、疾患を診断することができることを確認した。また、ロシア属細菌に属するロシア・アマラエ(Rothia amarae)から小胞を分離し、特性を分析した結果、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患等の疾患に対する予防または治療用組成物として用いることができることを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上記のような従来の問題点を解決するために鋭意研究した結果、メタゲノム解析を通して正常ヒトに比べて糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎患者由来サンプルでロシア属細菌由来小胞の含量が有意に減少していることを確認した。また、ロシア属細菌に属するロシア・アマラエ菌から小胞を分離してマクロファージに処理したとき、病原性小胞による炎症メディエーターであるIL-6およびTNF-αの分泌を顕著に抑制することを確認し、ストレスホルモンによる神経細胞の損傷を抑制するBDNFの発現を有意に増加させることを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0011】
これより、本発明は、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎の診断のための情報提供方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防、改善または治療用組成物を提供することを他の目的とする。
【0013】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、下記の段階を含む、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎の診断のための情報提供方法を提供する。
(a)正常ヒトおよび被検者のサンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行った後、それぞれのPCR産物を取得する段階;および
(c)前記PCR産物の定量分析を通じて正常ヒトに比べてロシア属細菌由来小胞の含量が低い場合、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎に分類する段階。
【0015】
また、本発明は、下記の段階を含む、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎の診断方法を提供する。
(a)正常ヒトおよび被検者のサンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNAに存在する遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCR(Polymerase Chain Reaction)を行った後、それぞれのPCR産物を取得する段階;および
(c)前記PCR産物の定量分析を通じて正常ヒトに比べてロシア属細菌由来小胞の含量が低い場合、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎と判定する段階。
【0016】
本発明の一具現例において、前記(a)段階でのサンプルは、血液または尿でありうる。
【0017】
本発明の他の具現例において、前記(b)段階でのプライマーペアは、配列番号1および配列番号2のプライマーでありうる。
【0018】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または治療用吸入剤組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または治療方法を提供する。
【0022】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物の糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または治療用途を提供する。
【0023】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞の、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の治療に用いられる薬剤を生産するための用途を提供する。
【0024】
本発明の一具現例において、前記心血管疾患は、心房細動、心筋症、心筋梗塞、高血圧、虚血性心臓疾患、冠状動脈疾患、狭心症、粥状硬化症、動脈硬化症、および不整脈よりなる群から選ばれた1つ以上でありうる。
【0025】
本発明の他の具現例において、前記肝疾患は、肝臓癌、肝硬変、肝炎、肝硬化、および脂肪肝よりなる群から選ばれた1つ以上でありうる。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記脳神経疾患は、うつ病、強迫性障害、統合失調症、認知症、アルツハイマー病、てんかん、自閉症、およびパーキンソン病よりなる群から選ばれた1つ以上でありうる。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記炎症疾患は、歯肉炎、歯周炎、胃炎、炎症性腸炎、大腸炎、アトピー皮膚炎、にきび、脱毛、乾癬、鼻炎、鼻ポリープ、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、退行性関節炎、および関節リウマチよりなる群から選ばれた1つ以上でありうる。
【0028】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む、炎症性皮膚疾患の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0029】
本発明の一具現例において、前記炎症性皮膚疾患は、アトピー皮膚炎、にきび、脱毛、および乾癬よりなる群から選ばれた1つ以上でありうる。
【0030】
本発明の一具現例において、前記小胞は、平均直径が10~200nmでありうる。
【0031】
本発明の他の具現例において、前記小胞は、ロシア属細菌から自然的または人工的に分泌されるものでありうる。
【0032】
本発明のさらに他の具現例において、前記ロシア属細菌由来小胞は、ロシア・アマラエから分泌されるものでありうる。
【発明の効果】
【0033】
本発明者らは、腸内細菌である場合には、体内に吸収されないが、細菌由来小胞である場合には、上皮細胞を通じて体内に吸収されて、全身的に分布し、腎臓、肝臓、肺を通じて体外に排泄されることを確認し、患者の血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を通して糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎患者の血液または尿に存在するロシア属細菌由来小胞が正常ヒトに比べて有意に減少していることを確認した。また、ロシア属細菌の一種であるロシア・アマラエを体外で培養して小胞を分離して、体外で炎症細胞に投与したとき、病原性小胞による炎症メディエーターの分泌を有意に抑制することを観察した。また、ストレスホルモンにより抑制された神経細胞のBDNF発現がロシア・アマラエ由来小胞により有意に回復されることを確認したところ、本発明によるロシア属細菌由来小胞は、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎に対する診断方法、および糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患に対する食品、吸入剤または薬物等の予防、改善または治療用組成物として有用に用いられると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1aは、マウスに細菌と細菌由来小胞(EV)を口腔内投与した後、時間別に細菌と小胞の分布様相を撮影した写真であり、
図1bは、口腔内投与した後12時間目に、血液、腎臓、肝臓、および様々な臓器を摘出して、細菌と小胞の体内分布様相を評価した図である。
【
図2】
図2は、糖尿病患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図3】
図3は、心房細動患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図4】
図4は、心筋症患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図5】
図5は、肝臓癌患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図6】
図6は、肝硬変患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図7】
図7は、認知症患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図8】
図8は、うつ病患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図9】
図9は、パーキンソン病患者および正常ヒトの尿に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図10】
図10は、アトピー皮膚炎患者および正常ヒトの血液に存在する細菌由来小胞メタゲノム解析を実施した後、ロシア属細菌由来小胞の分布を比較した結果である。
【
図11】
図11aは、ロシア・アマラエ由来小胞の抗炎症および免疫調節効果を評価するために、病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)の処理前にロシア菌由来小胞を前処理して、大腸菌小胞による炎症メディエーターであるIL-6の分泌に及ぼす影響を評価した結果である(NC:陰性対照;PC:陽性対照,E.coli EV 1.0μg/ml;LP_1.0:ラクトバチルス・プランタルムEV 1.0μg/ml;RAM101:ロシア・アマラエEV)。
図11bは、ロシア・アマラエ由来小胞の抗炎症および免疫調節効果を評価するために、病原性小胞である大腸菌小胞(E.coli EV)の処理前にロシア菌由来小胞を前処理して、大腸菌小胞による炎症メディエーターであるTNF-αの分泌に及ぼす影響を評価した結果である(NC:陰性対照;PC:陽性対照,E.coli EV 1.0μg/ml;LP_1.0:ラクトバチルス・プランタルムEV 1.0μg/ml;RAM101:ロシア・アマラエEV)。
【
図12】
図12は、ロシア・アマラエ由来小胞の神経細胞保護効果を評価するために、神経細胞にストレスホルモンである副腎皮質ホルモン(GC)を処理するとき、ロシア・アマラエ由来小胞を同時に処理して、神経細胞による脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現に及ぼす影響を評価した結果である(EV:ロシア・アマラエ細胞外小胞)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、ロシア属細菌由来小胞およびその用途に関する。
【0036】
本発明者らは、メタゲノム解析を通して正常ヒトに比べて糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎患者由来サンプルでロシア属細菌由来小胞の含量が顕著に減少していることを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0037】
これより、本発明は、下記の段階を含む糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎の診断のための情報提供方法を提供する。
(a)正常ヒトおよび被検者由来サンプルから分離した小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して16S rDNA遺伝子配列に基づいて作製したプライマーペアを用いてPCRを行った後、それぞれのPCR産物を取得する段階;および
(c)前記PCR産物の定量分析を通じて正常ヒトに比べてロシア属細菌由来小胞の含量が低い場合、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎に分類する段階。
【0038】
本発明において使用される用語「診断」とは、広い意味では、患者の病の実態をすべての面にわたって判断することを意味する。判断の内容は、病名、病因、病型、軽重、病状の詳細な容態、合併症の有無、および予後などである。本発明において診断は、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、および/またはアトピー皮膚炎等の発病の有無および疾患の水準等を判断することである。
【0039】
本発明において使用される用語「ナノ小胞(Nanovesicle)」あるいは「小胞(Vesicle)」とは、多様な細菌から分泌されるナノサイズの膜からなる構造物を意味する。グラム陰性菌(gram-negative bacteria)由来小胞、または外膜小胞(outer membrane vesicles,OMVs)は、内毒素(lipopolysaccharide)、毒性タンパク質、および細菌DNAとRNAも有しており、グラム陽性菌(gram-positive bacteria)由来小胞は、タンパク質と核酸の他にも、細菌の細胞壁構成成分であるペプチドグリカン(peptidoglycan)とリポタイコ酸(lipoteichoic acid)も有している。本発明において、ナノ小胞あるいは小胞は、ロシア属細菌から自然的に分泌されたりまたは人工的に生産するもので、球形の形態であり、10~200nmの平均直径を有している。
【0040】
本発明において使用される用語「メタゲノム」とは、「群遺伝子」とも言い、土壌、動物の腸など孤立した地域内のすべてのウイルス、細菌、かび等を含む遺伝子の総和を意味するもので、主に培養にならない微生物を分析するために配列分析器を使用して一度に多くの微生物を同定することを説明する遺伝子の概念として使用される。特に、メタゲノムは、一種のゲノム、遺伝子をいうものではなく、1つの環境単位のすべての種の遺伝子であって、一種の混合遺伝子をいう。これは、オミックス的に生物学が発展する過程で一種を定義するとき、機能的に従来の一種だけでなく、多様な種が互いに相互作用して完全な種を作るという観点から出た用語である。技術的には、迅速な配列分析法を利用して、種に関係なく、すべてのDNA、RNAを分析して、1つの環境内でのすべての種を同定し、相互作用、代謝作用を糾明する技法の対象である。
【0041】
本発明において、前記患者由来サンプルは、血液または尿でありうるが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において、前記(b)段階でのプライマーペアは、配列番号1および配列番号2のプライマーでありうるが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明の他の様態として、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または治療用組成物を提供する。
【0044】
前記組成物は、薬学的組成物および吸入剤組成物を含む。
【0045】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物を個体に投与する段階を含む、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または治療方法を提供する。
【0046】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む薬学的組成物の糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または治療用途を提供する。
【0047】
また、本発明は、ロシア属細菌由来小胞の、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の治療に用いられる薬剤を生産するための用途を提供する。
【0048】
本発明において使用される用語「予防」とは、本発明による組成物の投与により糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、または炎症疾患等を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0049】
本発明において使用される用語「治療」とは、本発明による組成物の投与により糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、または炎症疾患等に対する症状が好転したり有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0050】
本発明において使用される用語「改善」とは、本発明による組成物の投与により糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、または炎症疾患等に関連したパラメーター、例えば症状の程度を減少させるすべての行為を意味する。
【0051】
本発明において使用される用語「個体」とは、病気の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシ等の哺乳類を意味する。
【0052】
本発明において使用される用語「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0053】
本発明において使用される用語「心血管疾患」とは、心臓と主要動脈に発生する疾患を総称し、本発明において前記心血管疾患は、心房細動、心筋症、心筋梗塞、高血圧、虚血性心臓疾患、冠状動脈疾患、狭心症、粥状硬化症、動脈硬化症、および不整脈よりなる群から選ばれた1つ以上でありうるが、これに制限されない。
【0054】
本発明において使用される用語「肝疾患」とは、肝機能に障害が発生する疾患を総称し、本発明において前記肝疾患は、肝臓癌、肝硬変、肝炎、肝硬化、および脂肪肝よりなる群から選ばれた1つ以上でありうるが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明において使用される用語「脳神経疾患」とは、脳神経細胞の問題によって発生する疾患を総称し、本発明において前記脳神経疾患は、うつ病、強迫性障害、統合失調症、認知症、アルツハイマー病、てんかん、自閉症、およびパーキンソン病よりなる群から選ばれた1つ以上でありうるが、これに制限されるものではない。
【0056】
本発明において使用する用語「炎症疾患」とは、免疫系を成す体液性メディエーター(humoral mediator)が直接反応したり、局部的または全身的作動システム(effector system)を刺激することによって起こる連鎖的な生体反応により誘発される疾患を意味し、本発明において前記炎症疾患は、歯肉炎、歯周炎、胃炎、炎症性腸炎、大腸炎、アトピー皮膚炎、にきび、脱毛、乾癬、鼻炎、鼻ポリープ、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、退行性関節炎、および関節リウマチよりなる群から選ばれた1つ以上でありうるが、これに制限されるものではない。
【0057】
前記小胞は、ロシア属細菌を含む培養液を遠心分離、超高速遠心分離、高圧処理、押出、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、機械的分解、化学物質処理、フィルターによる濾過、ゲル濾過クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動、およびキャピラリー電気泳動よりなる群から選ばれた1つ以上の方法を使用して分離することができる。また、不純物の除去のための洗浄、取得された小胞の濃縮等の過程を追加で含むことができる。
【0058】
本発明の一実施例では、細菌および細菌由来小胞をマウスに経口投与して細菌および小胞の体内吸収、分布、および排泄様相を評価して、細菌である場合には、腸粘膜を通じて吸収されないのに対し、小胞は、投与5分以内に吸収されて全身的に分布し、腎臓、肝臓等を通じて排泄されることを確認した(実施例1参照)。
【0059】
本発明の他の実施例では、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎患者と年齢と性別をマッチングした正常ヒトの血液または尿から分離した小胞を用いて細菌メタゲノム解析を実施した。その結果、正常ヒトのサンプルに比べて、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、およびアトピー皮膚炎患者の臨床サンプルでロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(実施例3~11参照)。
【0060】
本発明のさらに他の実施例では、ロシア・アマラエ菌株を培養してこれから分泌された小胞が免疫調節および抗炎症効果を示すかを評価したが、多様な濃度のロシア・アマラエ由来小胞をマクロファージに処理した後、炎症を起こす主要な原因因子である大腸菌由来小胞を処理して炎症メディエーターの分泌を評価した結果、大腸菌由来小胞によるIL-6およびTNF-αの分泌をロシア・アマラエ由来小胞が効率的に抑制することを確認した(実施例13参照)。
【0061】
本発明のさらに他の実施例では、ロシア・アマラエ菌株由来小胞の神経細胞保護効果を評価したが、神経細胞にストレスを与える副腎皮質ホルモンを処理するとき、ロシア・アマラエ由来小胞を神経細胞に同時に処理して脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を評価した結果、神経細胞の損傷を保護するメディエーターであるBDNFの発現をロシア・アマラエ由来小胞が効率的に増加させることを確認した(実施例14参照)。
【0062】
本発明の組成物内の前記ロシア属細菌由来小胞の含量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態等によって適切に調節可能であり、例えば、全体組成物の重量を基準として0.0001~99.9重量%、または0.001~50重量%でありうるが、これに限定されるものではない。前記含量比は、溶媒を除去した乾燥量を基準とした値である。
【0063】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含むことができる。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルム-コーティング物質、および制御放出添加剤よりなる群から選ばれた1つ以上でありうる。
【0064】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、またはエアロゾル等の外用剤等の形態に剤形化して使用され得、前記外用剤は、クリーム、ジェル、パッチ、噴霧剤、軟こう剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤等の剤形を有することができる。
【0065】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。
【0066】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0067】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤としてトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、ヨウ素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1928、2208、2906、2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェル等の賦形剤;ゼラチン、アラビアゴム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック 、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の結合剤が使用され得、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、L-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼインおよびゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアガム、アミロペクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、 D-ソルビトール液、硬質無水ケイ酸など崩解剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール4000、6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、DL-ロイシン、硬質無水ケイ酸等の滑沢剤;が使用され得る。
【0068】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエテール類、ラノリンエテール類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が使用され得る。
【0069】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが使用され得、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用され得る。
【0070】
本発明による乳剤には、精製水が使用され得、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤等が使用され得る。
【0071】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1828、2906、2910等懸濁化剤が使用され得、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用され得る。
【0072】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、PEG、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、ダイズ油、とうもろこし油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、尿素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸およびその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基およびその塩(アンモニアおよび酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、窒素ガス(N2)、エチレンジアミンテトラ酢酸のような安定剤;ソジウムビサルファイト0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルココン酸カルシウムのような無痛化剤;CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含むことができる。
【0073】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツインまたはスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマー(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロポスタル(Idropostal)、マッサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マッサ-MF、マスポル、マスポル-15、ネオスポスタル-エン、パラマウンド-B、スポシール(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゲスタートリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が使用され得る。
【0074】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチン等を混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0075】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が使用され得る。
【0076】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、薬学的に有効な量は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定され得る。
【0077】
本発明による組成物は、個別治療剤で投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定されることができる。
【0078】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与され得る。投与のすべての方式は、予想され得るが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄の周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻を通した噴霧、皮膚投与、経皮投与等により投与され得る。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度等の様々な関連因子とともに活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0080】
本発明の前記吸入剤組成物は、ロシア属細菌由来小胞だけでなく、吸入剤組成物に通常用いられる成分を含むことができ、例えば抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、および香料のような通常の補助剤、そして担体を含むことができる。
【0081】
本発明の他の様態として、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む、糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、および炎症疾患よりなる群から選ばれた1つ以上の疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0082】
本発明の食品組成物は、健康機能食品組成物を含む。
【0083】
本発明のロシア属細菌由来小胞を食品添加物として使用する場合、前記ロシア属細菌由来小胞をそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用できて、通常の方法により適切に使うことができる。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適切に決定され得る。一般的に、食品または飲料の製造時、本発明のロシア属細菌由来小胞は、原料に対して15重量%以下、または10重量%以下の量で添加され得る。しかし、健康および衛生を目的としたり、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合、前記量は、前記範囲以下であり得、安全性の面から何らの問題もないので、有効成分は、前記範囲以上の量で使用され得る。
【0084】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン複合剤等があり、通常の意味における健康機能食品を全部含む。
【0085】
本発明による健康飲料組成物は、通常の飲料のように様々な香味剤または天然炭水化物等を追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物は、ブドウ糖および果糖のようなモノサッカライド、マルトースおよびスクロースのようなジサッカライド、デキストリンおよびシクロデキストリンのようなポリサッカライド、およびキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトール等の糖アルコールである。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味剤等を使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の組成物100ml当たり一般的に約0.01~0.20g、または約0.04~0.10gである。
【0086】
上記以外に、本発明の組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等を含有することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。このような成分は、独立して、または、組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合は、大きく重要なことではないが、本発明の組成物100重量部当たり0.01~0.20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0087】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、ロシア属細菌由来小胞を有効成分として含む、炎症性皮膚疾患の予防または改善用化粧料組成物を提供する。
【0088】
本発明において、前記炎症性皮膚疾患は、アトピー皮膚炎、にきび、脱毛、および乾癬よりなる群から選ばれた1つ以上でありうるが、これに制限されない。
【0089】
本発明による化粧料組成物の剤形は、スキンローション、スキンソフトナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、ミスト、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ハンドローション、ファンデーション、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、クレンジングオイル、クレンジング夜、ボディローションまたはボディクレンザーの形態でありうる。
【0090】
本発明の化粧料組成物は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、およびスフィンゴ脂質よりなる群から選ばれた組成物をさらに含むことができる。
【0091】
水溶性ビタミンとしては、化粧品に配合可能なものであれば、いずれのものでもよいが、例えばビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ピリドキシン、塩酸ピリドキシン、ビタミンB12、パントテン酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、葉酸、ビタミンC、ビタミンH等が挙げられ、それらの塩(チアミン塩酸塩、アスコルビン酸ナトリウム塩等)や誘導体(アスコルビン酸-2-リン酸ナトリウム塩、アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム塩等)も、本発明で使用できる水溶性ビタミンに含まれる。水溶性ビタミンは、微生物変換法、微生物の培養物からの精製法、酵素法または化学合成法等の通常の方法により取得することができる。
【0092】
油溶性ビタミンとしては、化粧品に配合可能なものであれば、いずれのものでもよいが、例えばビタミンA、カロチン、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE(D1-アルファトコフェロール、D-アルファトコフェロール、D-アルファトコフェロール)等が挙げられ、それらの誘導体(パルミチン酸アスコルビン、ステアリン酸アスコルビン、ジパルミチン酸アスコルビン、酢酸DL-アルファトコフェロール、ニコチン酸DL-アルファトコフェロールビタミンE、DL-パントテニルエチルアルコール、D-パントテニルエチルアルコール、パントテニルエチルアエーテル等)等も、本発明において使用される油溶性ビタミンに含まれる。油溶性ビタミンは、微生物変換法、微生物の培養物からの精製法、酵素または化学合成法等の通常の方法により取得することができる。
【0093】
高分子ペプチドとしては、化粧品に配合可能なものであれば、いずれのものでもよいが、例えばコラーゲン、加水分解コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、加水分解エラスチン、ケラチン等が挙げられる。高分子ペプチドは、微生物の培養液からの精製法、酵素法または化学合成法等の通常の方法により精製取得することができ、または、通常、豚や牛等の真皮、蚕の絹繊維等の天然物から精製して使用することができる。
【0094】
高分子多糖としては、化粧品に配合可能なものであれば、いずれのものでもよいが、例えばヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸またはその塩(ナトリウム塩等)等が挙げられる。例えば、コンドロイチン硫酸またはその塩等は、通常、哺乳動物や魚類から精製して使用することができる。
【0095】
スフィンゴ脂質としては、化粧品に配合可能なものであれば、いずれのものでもよいが、例えばセラミド、フィトスフィンゴシン、スフィンゴ糖脂質等が挙げられる。スフィンゴ脂質は、通常、哺乳類、魚類、貝類、酵母または植物等から通常の方法により精製したり化学合成法により取得することができる。
【0096】
本発明の化粧料組成物には、前記必須成分と一緒に、必要に応じて通常化粧品に配合される他の成分を配合してもよい。
【0097】
その他、添加してもよい配合成分としては、油脂成分、保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、有機および無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、精製水等が挙げられる。
【0098】
油脂成分としては、エステル系油脂、炭化水素系油脂、シリコーン系油脂、フッ素系油脂、動物油脂、植物油脂等が挙げられる。
【0099】
エステル系油脂としては、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソアルキル、トリ(カプリル、カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、カプリル酸セチル、ラウリン酸デシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、リシノレイン酸セチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リノール酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル、カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリウンデシル酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソステアリル、イソノナン酸オクチル、ネオデカン酸ヘキシルデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルデシル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンイソステアリン酸エステル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソアルキル、クエン酸トリイソオクチル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルデシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリオクチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸イソセチル、12-ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル、12-ステアロイルヒドロキシステアル酸イソステアリル等のエステル系等が挙げられる。
【0100】
炭化水素系油脂としては、スクアレン、流動パラフィン、アルファ-オレフィンオリゴマー、イソパラフィン、セレシン、パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素系油脂等が挙げられる。
【0101】
シリコーン系油脂としては、ポリメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルポリシロキサン、デカメチルポリロキサン、ドデカメチルシクロシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体、アルキル変性シリコーン油、アミノ変性シリコーン油等が挙げられる。
【0102】
フッ素系油脂としては、ペルフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0103】
動物または植物油脂としては、アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、ゴマ油、米糠油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、油菜油、杏仁油、パーム核油、パーム油、ひまし油、ひまわり油、ブドウ種子油、綿実油、ヤシ油、ククイナッツオイル、小麦胚芽油、こめ胚芽油、シアバター、月見草油、マカダミアナッツ油、メドウフォーム油、卵黄油、牛脂、麻油、ミンク油、オレンジラフィー油、ホホバ油、キャンデリラワックス、カルナバワックス、液状ラノリン、硬化ひまし油等の動物または植物油脂が挙げられる。
【0104】
保湿剤としては、水溶性低分子保湿剤、脂溶性分子保湿剤、水溶性高分子、脂溶性高分子等が挙げられる。
【0105】
水溶性低分子保湿剤としては、セリン、グルタミン、ソルビトール、マンニトール、ピロリドン-カルボン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールB(重合度n=2以上)、ポリプロピレングリコール(重合度n=2以上)、ポリグリセリンB(重合度n=2以上)、乳酸、乳酸塩等か挙げられる。
【0106】
脂溶性低分子保湿剤としては、コレステロール、コレステロールエステル等か挙げられる。
【0107】
水溶性高分子としては、カルボキシビニルポリマー、ポリアスパラギン酸塩、トラガカント、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、水溶性キチン、キトサン、デキストリン等か挙げられる。
【0108】
脂溶性高分子としては、ポリビニルピロリドン・エイコセン共重合体、ポリビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体、ニトロセルロース、デキストリン脂肪酸エステル、高分子シリコーン等か挙げられる。
【0109】
エモリエント剤としては、長鎖アシルグルタミン酸コレステリルエステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸、ロジン酸、ラノリン脂肪酸コレステリルエステル等か挙げられる。
【0110】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等か挙げられる。
【0111】
非イオン性界面活性剤としては、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POE(ポリオキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE脂肪酸エステル、POE硬化ひまし油、POEひまし油、POE・POP(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)共重合体、POE・POPアルキルエーテル、ポリエーテル変性シリコーン、ラウリン酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、水素添加大豆リン脂質等か挙げられる。
【0112】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、アルファ-アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N-アシルアミン酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸ナトリウム、アシル化加水分解コラゲンペプチド塩、ペルフルオロアルキルリン酸エステル等か挙げられる。
【0113】
カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セトステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラノリン誘導体第4級アンモニウム塩等か挙げられる。
【0114】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミドベタイン型、スルホベタイン型、ヒドロキシスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型、ホスホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリン誘導体型、アミドアミン型等の両性界面活性剤等か挙げられる。
【0115】
有機および無機顔料としては、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミンおよびこれらの複合体等の無機顔料;ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、ヨウ素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、CIピグメントイエロー、CIピグメントオレンジ等の有機顔料およびこれらの無機顔料と有機顔料の複合顔料等か挙げられる。
【0116】
有機粉体としては、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;セチルリン酸亜鉛ナトリウム、ラウリルリン酸亜鉛、ラウリルリン酸カルシウム等のアルキルリン酸金属塩;N-ラウロイル-ベタ-アラニンカルシウム、N-ラウロイル-ベタ-アラニン亜鉛、N-ラウロイルグリシンカルシウム等のアシルアミノ酸多価金属塩;N-ラウロイル-タウリンカルシウム、N-パルミトイル-タウリンカルシウム等のアミドスルホン酸多価金属塩;N-イプシロン-ラウロイル-L-リジン、N-イプシロン-パルミトイルリジン、N-アルファ-パルミトイルオルニチン、N-アルファ-ラウロイルアルギニン、N-アルファ-硬化牛脂脂肪酸アシルアルギニン等のN-アシル塩基性アミノ酸;N-ラウロイルグリシルグリシン等のN-アシルポリペプチド;アルファ-アミノカプロン酸、アルファ-アミノラウリン酸等のアルファ-アミノ脂肪酸;ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、四フッ化エチレン等か挙げられる。
【0117】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸アミル、パラアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、桂皮酸ベンジル、パラメトキシ桂皮酸-2-エトキシエチル、パラメトキシ桂皮酸オクチル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサングリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、ジイソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸およびその塩、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾル等か挙げられる。
【0118】
殺菌剤としては、ヒノキチオール、トリクロサン、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、クロルヘキシジングルコン酸塩、フェノキシエタノール、レゾルシン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、感光素301号、モノニトログアヤコールナトリウム、ウンデシレン酸等か挙げられる。
【0119】
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、エリソルビン酸等か挙げられる。
【0120】
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム等か挙げられる。
【0121】
アルコールとしては、セチルアルコール等の高級アルコールか挙げられる。
【0122】
また、その他、添加してもよい配合成分は、これに限定されるものではなく、また、前記いずれの成分も本発明の目的および効果を損傷させない範囲内で配合可能であるが、総重量に対して0.01~5%重量百分率または0.01~3%重量百分率で配合され得る。
【0123】
本発明の剤形がローション、ペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として動物繊維、植物繊維、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルクまたは酸化亜鉛等が用いられる。
【0124】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケートまたはポリアミドパウダーが用いられ得、特にスプレーである場合には、追加的にハイドロクロロフルオロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進体を含むことができる。
【0125】
本発明の剤形が溶液または乳濁液の場合には、担体成分として溶媒、溶媒化剤または乳濁化剤が用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルがある。
【0126】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天またはトラガカント等が用いられる。
【0127】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、リノリン誘導体またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステル等が用いられ得る。
【0128】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例】
【0129】
[実施例1.腸内細菌および細菌由来小胞の体内吸収、分布、および排泄様相の分析]
細菌と細菌由来小胞が粘膜を通じて全身的に吸収されるかを評価するために、下記のような方法で実験を行った。蛍光で標識した腸内細菌と腸内細菌由来小胞をそれぞれ50μgの用量でマウスの胃腸に投与し、0分、5分、3時間、6時間、12時間後に蛍光を測定した。マウス全体イメージを観察した結果、
図1aに示されたように、細菌の場合には、全身的に吸収されなかったが、細菌由来小胞の場合には、投与後5分に全身的に吸収され、投与3時間後には、膀胱に蛍光が濃く観察されて、小胞が泌尿器系に排泄されることが分かった。また、小胞は、投与12時間まで体内に存在することが分かった(
図1a参照)。
【0130】
細菌および細菌由来小胞が全身的に吸収された後、様々な臓器に浸潤された様相を評価するために、蛍光で標識した50μgの細菌と細菌由来小胞を前記の方法のように投与した後、投与12時間後に血液、心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、脂肪、および筋肉を採取した。採取した組織で蛍光を観察した結果、
図1bに示されたように、細菌由来小胞が血液、心臓、肺、肝臓、脾臓、脂肪、筋肉および腎臓に分布したが、細菌は吸収されないことが分かった(
図1b参照)。
【0131】
[実施例2.臨床サンプルで細菌由来小胞メタゲノム解析]
血液または尿をまず10mlチューブに入れ、遠心分離法(3,500×g、10min、4℃)で浮遊物を沈殿させ、上澄み液のみを新しい10mlチューブに移した。0.22μmフィルターを使用して細菌および異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移して、1500×g、4℃で15分間遠心分離して、50kDより小さい物質は捨て、10mlまで濃縮した。さらに、0.22μmフィルター(filter)を使用してバクテリアおよび異物を除去した後、Type 90tiローターで150,000×g、4℃で3時間超高速遠心分離方法を使用して上澄み液を捨て、固まったペレット(pellet)を生理食塩水(PBS)で溶かした。
【0132】
前記方法で分離した小胞100μlを100℃でボイルして、内部のDNAを脂質外に出るようにし、その後、氷に5分間冷ました。そして、残った浮遊物を除去するために、10,000×g、4℃で30分間遠心分離し、上澄み液のみを集めた。そして、Nanodropを用いてDNA量を定量した。以後、前記抽出されたDNAに細菌由来DNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16s rDNAプライマー(primer)でPCRを行って、前記抽出された遺伝子に細菌由来遺伝子が存在することを確認した。
【0133】
【0134】
前記方法で抽出したDNAを前記の16S rDNAプライマーを使用して増幅した後、シーケンシングを行い(Illumina MiSeq sequencer)、結果をStandard Flowgram Format(SFF)ファイルで出力し、GS FLX software(v2.9)を用いてSFFファイルをsequenceファイル(.fasta)とnucleotide quality scoreファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、window(20bps)平均base call accuracyが99%未満(Phred score<20)である部分を除去した。Operational Taxonomy Unit(OTU)分析のためには、UCLUSTとUSEARCHを用いてシーケンス類似度によってクラスタリングを行い、属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、綱(class)は80%、門(phylum)は75%シーケンス類似度を基準としてクラスタリングを行い、各OTUの門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、属(genus)レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S RNAシーケンスデータベース(108,453シーケンス)を用いて属レベルで97%以上のシーケンス類似度を有する細菌をプロファイリングした(QIIME)。
【0135】
[実施例3.糖尿病患者の血液内細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で糖尿病患者96人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト98人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて糖尿病患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表2および
図2参照)。
【0136】
【0137】
[実施例4.心房細動患者の血液内細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で心房細動患者66人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト71人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心房細動患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表3および
図3参照)。
【0138】
【0139】
[実施例5.心筋症患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で心筋症患者59人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト69人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて心筋症患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表4および
図4参照)。
【0140】
【0141】
[実施例6.肝臓癌患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で肝臓癌患者97人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト109人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて肝臓癌患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表5および
図5参照)。
【0142】
【0143】
[実施例7.肝硬変患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で肝硬変患者101人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト126人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて肝硬変患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表6および
図6参照)。
【0144】
【0145】
[実施例8.認知症患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法で認知症患者61人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト70人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べて認知症患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表7および
図7参照)。
【0146】
【0147】
[実施例9.うつ病患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法でうつ病患者84人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト92人の血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてうつ病患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表8および
図8参照)。
【0148】
【0149】
[実施例10.パーキンソン病患者の尿細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法でパーキンソン病患者54人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト62人の尿内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの尿に比べてパーキンソン病患者の尿においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表9および
図9参照)。
【0150】
【0151】
[実施例11.アトピー皮膚炎患者の血液細菌由来小胞メタゲノム解析]
実施例2の方法でアトピー皮膚炎患者57人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト63人の血液を対象として、血液内に存在する小胞から遺伝子を抽出してメタゲノム解析を行った後、ロシア属細菌由来小胞の分布を評価した。その結果、正常ヒトの血液に比べてアトピー皮膚炎患者の血液においてロシア属細菌由来小胞が有意に減少していることを確認した(表10および
図10参照)。
【0152】
【0153】
[実施例12.ロシア・アマラエ由来小胞の分離]
前記実施例の結果を基に、ロシア属細菌に属するロシア・アマラエ菌株を培養した後、その小胞を分離した。ロシア・アマラエ菌株を37℃好気性チャンバーで吸光度(OD 600)が1.0~1.5になるまでBHI(brain heart infusion)培地で培養した後、サブカルチャー(sub-culture)した。以後、菌株が含まれていない培地の上澄み液を回収して10,000g、4℃で15分間遠心分離し、0.45μmフィルターに濾過した後、濾過した上澄み液を100kDa hollowフィルターメンブレンでQuixStand benchtop system(GE Healthcare,UK)を用いて限外濾過(ultrafiltration)を通じて200ml体積に濃縮した。以後、濃縮させた上澄み液をさらに0.22μmフィルターでフィルタリングし、前記濾過した上澄み液を150,000g、4℃で3時間超遠心分離した後、ペレットをDPBSで懸濁した。次に、10%、40%、および50%オプティプレップ溶液(Axis-Shield PoC AS,Norway)を用いて密度勾配遠心分離を行い、低密度溶液の製造のために、オプティプレップ溶液をHEPES-buffered saline(20mM HEPES、150mM NaCl,pH7.4)に希釈して利用した。200,000g、4℃の条件で2時間遠心分離を行った後、上層から1mlの同じボリュームで分画された各溶液を150,000g、4℃の条件で追加で3時間の超遠心分離を実施した。以後、BCA(Bicinchoninic acid)assayを用いてタンパク質を定量し、得られた小胞に対して実験を実施した。
【0154】
[実施例13.ロシア・アマラエ由来小胞の抗炎症効果]
ロシア・アマラエ由来小胞が炎症細胞で炎症メディエーターの分泌に対する影響を調べてみるために、マウスマクロファージ細胞株であるRaw 264.7細胞にロシア・アマラエ由来小胞を多様な濃度(0.1、1、10μg/ml)で処理した後、炎症疾患病原性小胞である大腸菌由来小胞(E.coli EV)を処理して炎症メディエーター(IL-6、TNF-αなど)の分泌量を測定した。より具体的に、Raw 264.7細胞を1×10
5個ずつ24-well細胞培養プレートに分注した後、24時間DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)完全培地で培養させた。以後、培養の上澄み液を1.5mlチューブに集めて、3000gで5分間遠心分離して、上澄み液を集めて4℃に保管しておいて、ELISA分析を進めた。その結果、ロシア・アマラエ由来小胞を前処理した場合、炎症誘発因子によるIL-6(
図11a参照)およびTNF-α(
図11b参照)の分泌が顕著に抑制されることを確認した。これは、大腸菌由来小胞のような炎症誘発因子により誘導される炎症反応をロシア・アマラエ由来小胞が効率的に抑制することができることを意味する。
【0155】
[実施例14.ロシア・アマラエ由来小胞の神経細胞保護効果]
脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrphic factor,BDNF)は、神経細胞の損傷時に神経細胞を保護する主なメディエーターであって、認知症、うつ病、アルツハイマー病、および自閉症等の脳神経疾患で発現が減少している。本実施例では、ロシア・アマラエ由来小胞の脳神経疾患に対する治療効果を評価するために、神経細胞にストレスホルモンを処理して神経細胞保護効果を評価した。すなわち、神経細胞(hippocampal neuronal cell line,HT22 cells)を副腎皮質ホルモン(GC:corticosterone 400ng/ml)またはロシア・アマラエ由来小胞(EV、20μg/ml)とともに24時間体外で培養した後、BDNFの発現をPCR方法で評価した。
【0156】
その結果、副腎皮質ホルモン処理により抑制されたBDNFの発現がロシア・アマラエ由来小胞治療により有意に回復されることを確認した(
図12参照)。これは、ストレスのような脳神経細胞損傷誘発因子により発生する脳神経疾患をロシア・アマラエ由来小胞が効率的に抑制することができることを意味する。
【0157】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明によるロシア属細菌由来小胞は、糖尿病、心房細動、心筋症、肝臓癌、肝硬変、認知症、うつ病、パーキンソン病、またはアトピー皮膚炎に対する診断方法;および糖尿病、心血管疾患、肝疾患、脳神経疾患、または炎症疾患に対する予防、改善、または治療用食品、吸入剤、化粧料、または薬学的組成物として有用に用いられると期待される。
【配列表】