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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】環境負荷管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0645 20230101AFI20230529BHJP
   G06Q 50/26 20120101ALI20230529BHJP
【FI】
G06Q30/0645
G06Q50/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022548622
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2022029755
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021200713
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514248411
【氏名又は名称】Future Science Research株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】松村 昭彦
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102439637(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0256781(US,A1)
【文献】特開2014-038448(JP,A)
【文献】特開2009-217401(JP,A)
【文献】特開2011-134179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0145833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を識別する物品識別情報と、前記物品の製造にともなう化学物質の排出量とを対応づける製造負荷データを保存する製造負荷データ格納部と、
前記物品を識別する物品識別情報と、前記物品の貸し出し先となるユーザを識別するユーザ識別情報を対応づける貸出管理情報を参照して請求先となるユーザに貸し出された物品を特定し、前記製造負荷データを参照して前記貸し出された物品の製造にともなう前記化学物質の排出量を特定し、所定量の化学物質を排出する権利を示す排出権データの価格および前記貸し出された物品の製造にともなう前記化学物質の排出量に基づいて、前記請求先となるユーザに対する前記物品の使用料を算出する使用料計算部と、を備える環境負荷管理装置。
【請求項2】
前記化学物質は温室効果ガスである、請求項1に記載の環境負荷管理装置。
【請求項3】
前記使用料計算部は、前記排出権データの価格、前記物品の製造にともなう前記化学物質の排出量および前記物品の使用量に基づいて、前記物品の使用料を算出する、請求項1または2に記載の環境負荷管理装置。
【請求項4】
前記物品の使用による劣化進行度を算出する劣化計算部、を更に備え、
前記使用料計算部は、前記排出権データの価格、前記物品の製造にともなう前記化学物質の排出量および前記物品の使用による劣化進行度に基づいて、前記物品の使用料を算出する、請求項3に記載の環境負荷管理装置。
【請求項5】
前記製造負荷データ格納部は、前記製造負荷データとして、前記物品を構成する第1部品の製造にともなう前記化学物質の排出量である第1排出量と、前記物品を構成する第2部品の製造にともなう前記化学物質の排出量である第2排出量を保存し、
前記使用料計算部は、前記排出権データの価格、前記第1排出量および前記第2排出量に基づいて、前記物品の使用料を算出する、請求項1に記載の環境負荷管理装置。
【請求項6】
前記物品の使用による前記第1部品および前記第2部品それぞれの劣化進行度を算出する劣化計算部、を更に備え、
前記使用料計算部は、前記排出権データの価格、前記第1排出量、前記第2排出量、前記第1部品および前記第2部品それぞれの劣化進行度に基づいて、前記物品の使用料を算出する、請求項5に記載の環境負荷管理装置。
【請求項7】
前記使用料計算部は、エネルギーの種類と前記化学物質の排出量を定義する負荷テーブルを参照し、前記物品に補給されたエネルギーの種類および補給量に応じて前記物品の使用料を算出する請求項1に記載の環境負荷管理装置。
【請求項8】
前記化学物質の排出量に応じて徴収される賦課金の全部または一部を、前記排出権データにより相殺する決済部、を更に備える請求項1に記載の環境負荷管理装置。
【請求項9】
物品を識別する物品識別情報と、前記物品の製造にともなう化学物質の排出量とを対応づける製造負荷データを保存する製造負荷データ格納部と、
前記物品に補給されたエネルギーの種類および補給量を示す補給データを取得する消費取得部と、
前記化学物質の排出量に応じて徴収される賦課金の全部または一部を、所定量の化学物質を排出する権利を示す排出権データにより相殺する決済部と、
前記物品の使用による劣化進行度を算出する劣化計算部と、
前記物品の使用料を算出する使用料計算部と、を備え、
前記使用料計算部は、
前記物品を識別する物品識別情報と、前記物品の貸し出し先となるユーザを識別するユーザ識別情報を対応づける貸出管理情報を参照して請求先となるユーザに貸し出された物品を特定し、前記製造負荷データを参照して前記貸し出された物品の製造にともなう前記化学物質の排出量を特定し、前記排出権データの価格および前記貸し出された物品の製造にともなう前記化学物質の排出量および前記物品の劣化進行度に基づいて、前記物品の第1使用料を算出し、更に、
エネルギーの種類と前記化学物質の排出量を定義する負荷テーブルを参照し、前記排出権データの価格、前記エネルギーの種類および補給量に基づいて、前記物品の第2使用料を算出し、前記第1使用料に前記第2使用料を加算することで、前記物品の使用料を算出する、環境負荷管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質の排出にともなう環境負荷を管理するための技術、に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、長い年月をかけて地下に蓄積されてきた炭素化合物を人類が掘り出し、これを燃焼させてエネルギーを取り出した結果、大気中の二酸化炭素濃度が高まったためであると考えられている。
【0003】
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減を目指すため、1990年に京都議定書(Kyoto Protocol)が締結された。京都議定書では、各国に温室効果ガスの排出枠が設定された。また、温室効果ガスの削減をいっそう促すために「炭素クレジット(CC:Carbon Credit)」という金融商品が発案された。具体的には、省エネ設備の導入、再生可能エネルギー(Renewable Energy)の導入、植林・間伐など、温室効果ガスの削減につながる事業がなされたとき、公的機関により炭素クレジットが生産されたと認定される。
【0004】
炭素クレジットを購入することは、温室効果ガス削減事業への支援となる。各国の企業は、温室効果ガスの排出量を削減するだけでなく、炭素クレジットを購入することで、温室効果ガスの削減目標達成を目指している。近年、地球温暖化防止の機運が高まるとともに、炭素クレジットの需要は急増しており、炭素クレジットの取引価格は高額化していくと予想されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-217401号公報
【文献】特開2005-49937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭素クレジットは、企業活動のあり方を変えていく上で有効なメカニズムを提供する。一方、地球温暖化を防止するためには、企業だけでなく、個人の行動も変わっていく必要がある。炭素クレジットは、本質的には企業取引を前提として考え出されたものであるため、特許文献1のように個人に炭素クレジットを取り扱わせる場合には手続が煩雑になってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題認識に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、個人に対する手続き上の負担を抑制しつつ、地球にやさしい循環型社会への転換を促すための技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様における環境負荷管理装置は、所定量の化学物質を排出する権利を示す排出権データを取得する排出権取得部と、物品の製造にともなう化学物質の排出量を示す製造負荷データを取得する負荷取得部と、排出権データの価格および物品の製造にともなう化学物質の排出量に基づいて、物品の使用料を算出する使用料計算部と、を備える。
【0009】
本発明の別の態様における環境負荷管理装置は、所定量の化学物質を排出する権利を示す排出権データを取得する排出権取得部と、物品に補給されたエネルギーの種類および補給量を示す補給データを取得する消費取得部と、エネルギーの種類と化学物質の排出量を定義する負荷テーブルを参照し、排出権データの価格と、エネルギーの種類および補給量に基づいて、物品の使用料を算出する使用料計算部と、を備える。
【0010】
本発明の別の態様における環境負荷管理装置は、所定量の化学物質を排出する権利を示す排出権データを取得する排出権取得部と、物品の製造にともなう化学物質の排出量を示す製造負荷データを取得する負荷取得部と、物品に補給されたエネルギーの種類および補給量を示す補給データを取得する消費取得部と、化学物質の排出量に応じて徴収される賦課金の全部または一部を、排出権データにより相殺する決済部と、物品の使用による劣化進行度を算出する劣化計算部と、物品の使用料を算出する使用料計算部と、を備える。
使用料計算部は、排出権データの価格、物品の製造にともなう化学物質の排出量および物品の劣化進行度に基づいて、物品の第1使用料を算出し、更に、エネルギーの種類と化学物質の排出量を定義する負荷テーブルを参照し、排出権データの価格、エネルギーの種類および補給量に基づいて、物品の第2使用料を算出し、第1使用料に第2使用料を加算することで、物品の使用料を算出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、個人の手続き負担を抑制しつつ、循環型社会への転換を促しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態におけるカーリースシステムの概念図である。
図2】自動車使用料の構成を示す模式図である。
図3】カーリースシステムのシステム構成図である。
図4】環境負荷管理装置のハードウェア構成図である。
図5】環境負荷管理装置の機能ブロック図である。
図6】貸出管理情報のデータ構造図である。
図7】製造負荷データのデータ構造図である。
図8】二次電池の経年劣化パターンを模式的に示すグラフである。
図9】負荷テーブルのデータ構造図である。
図10】料金計算の処理過程を示すフローチャートである。
図11図10のS10における料金M2の計算処理を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態におけるカーリースシステム100の概念図である。
本実施形態の前提として、企業活動において二酸化炭素が排出されたとき、その排出量に応じて炭素税等の賦課金(金銭的負担)が発生する社会を想定する。炭素クレジット(排出権データ)の生産者(以下、「CC生産者」とよぶ)は、ソルガムとよばれる植物を育成する。
【0014】
ソルガムは、バイオマス発電の燃料となる。ソルガムは、熱帯・亜熱帯地域の作物で、深い根を下ろして吸水するため降水量の少ない地域でも育てやすい。また、ソルガムは、大気中の二酸化炭素を根に蓄えるため温室効果ガスの削減にも寄与する。ソルガムは温暖化対策の有力手段として期待されている。
ソルガムを育成し、公的機関の認定を受けることで、CC生産者は炭素クレジットを生産する。本実施形態における炭素クレジットとは、「所定量の二酸化炭素を排出する権利」である。
【0015】
カーリース会社は、ユーザに自動車の貸し出しビジネスを行う。ユーザは、カーリース会社から自動車を長期貸借し、単位期間ごと、たとえば、1ヶ月ごとに自動車の使用料(以下、単に「自動車使用料」とよぶ)を支払う。
【0016】
カーリース会社は、CC生産者から炭素クレジットを購入する。カーリース会社は、CC生産者と長期契約をすることで大量の炭素クレジットを継続的に購入してもよいし、炭素クレジットの取引市場から必要量を購入してもよい。たとえば、ある企業が1トンの二酸化炭素を排出した場合でも、1トン分の炭素クレジットを購入することにより、二酸化炭素の排出量をキャンセルできる。いいかえれば、1トンの二酸化炭素の排出にともなう賦課金を炭素クレジットにより相殺できる。炭素クレジットの価格(以下、「CC価格」とよぶ)は、需給に応じて変動する。詳細は後述するが、カーリース会社は炭素クレジットの購入代金を自動車使用料に転嫁する。
【0017】
自動車メーカーは、自動車を生産する。カーリース会社は、自動車メーカーから自動車を購入する。自動車の製造時には二酸化炭素が発生する。このため、自動車メーカーには賦課金が発生するが、本実施形態においてはカーリース会社が自動車メーカーの代わりに賦課金を支払う。カーリース会社は、購入した炭素クレジットにより、自動車製造にともなって排出された二酸化炭素(以下、「製造炭素(PC:Production-Carbon)」とよぶ)にともなう賦課金の全部または一部を相殺する。したがって、自動車メーカーは、製造炭素にともなう金銭的および事務的な負担をカーリース会社に任せることができる。
【0018】
カーリース会社は、ガソリン、バイオメタノール、水素、電気などのエネルギーに対応するさまざまな自動車を貸し出す。エネルギー提供者は、自動車にガソリン等の各種エネルギーを提供する。ユーザは、ガソリンスタンド、充電ステーション、水素ステーションなどのエネルギー補給地において、自動車を駆動するためのエネルギーを補給する。
【0019】
エネルギー提供者は、エネルギーを提供したとき、エネルギーの補給量をカーリース会社に通知する。補給量は、ガソリンであればリットル、電気であれば電力量のように、エネルギーの種別に対応する単位量に基づいて通知される。カーリース会社は、エネルギー補給量に応じて、エネルギー提供者にエネルギーの料金(以下、「補給料金」とよぶ)を支払う。補給料金も自動車使用料に転嫁される。
【0020】
自動車がエネルギーを消費するときにも二酸化炭素が発生する。いいかえれば、エネルギーそのものも二酸化炭素の発生源となる。このため、エネルギー提供者にも賦課金が発生するが、カーリース会社はエネルギー提供者の代わりにエネルギーについての賦課金も支払う。カーリース会社は、炭素クレジットにより、エネルギーの生産にともなって排出された二酸化炭素(以下、「エネルギー炭素(EC:Energy-Carbon)」とよぶ)を相殺する。エネルギー提供者も、エネルギー炭素にともなう金銭的および事務的な負担をカーリース会社に任せることができる。
【0021】
ユーザは、自動車がエネルギー補給を受けたときには、補給料金を支払う必要はない。上述したように、カーリース会社は、1ヶ月に1回、自動車使用料の一部として補給料金をユーザに請求する。
【0022】
以上のように、ユーザはカーリース会社から自動車を長期貸借し、自動車使用料をカーリース会社に毎月支払う。自動車使用料には、補給料金のほか、製造炭素およびエネルギー炭素にともなう負担金が含まれる(後述)。ユーザは、自動車使用料を支払うだけなので、二酸化炭素の排出にともなう特段の事務手続を行う必要はない。
【0023】
ユーザは、エネルギー効率が高く、製造炭素の少ない自動車(以下、「エコカー(eco-car:ecologically friendly car)」とよぶ)、エネルギー炭素の少ないエネルギー(以下、「クリーンエネルギー」とよぶ)を選ぶことにより、自動車使用料を抑制できる。このような仕組みにより、ユーザに煩瑣な手続を強いることなく、ユーザを脱炭素型の生活スタイルに誘導できる。
【0024】
図2は、自動車使用料の構成を示す模式図である。
自動車使用料は、料金M1,E1,M2,E2の4種類の料金を含む。料金M1は固定の基本料金である。料金E1は、補給料金、すなわち、1ヶ月間に自動車に供給されたエネルギーの料金である。ユーザがエネルギー提供者からガソリン、水素、電気などのエネルギー補給を受けたとき、エネルギー提供者からカーリース会社に補給料金が請求される。カーリース会社はエネルギー提供者に補給料金を支払い、後日、1ヶ月分の補給料金を料金E1としてユーザに請求する。
【0025】
料金M2(第1使用料)と料金E2(第2使用料)は、地球温暖化対策のための負担金(以下、「炭素負担金」とよぶ)である。料金M2は、製造炭素についての炭素負担金である。ユーザが、製造炭素の少ない自動車を選んだときには料金M2は安くなる。料金M2は、自動車の種類とCC価格によって決まるが詳細は後述する。
【0026】
料金E2は、エネルギー炭素についての炭素負担金である。ユーザがエネルギー炭素の少ないエネルギーを選択するときには料金E2は安くなる。料金E2は、エネルギーの種類、エネルギーの補給量およびCC価格によって変動するが、詳細は後述する。
【0027】
製造炭素の多い自動車を利用する場合には料金M2が高くなる。ユーザは、製造炭素が少なく、エネルギー効率が高く、かつ、エネルギー炭素の少ないエネルギーを利用する自動車を利用することにより自動車使用料を抑制できる。自動車利用料が契機となってエコカーの需要が高まれば、自動車メーカーがエコカーを製造するインセンティブも高められる。また、エコカーが普及すれば、エネルギー提供者もクリーンエネルギーに設備投資しやすくなる。
【0028】
図3は、カーリースシステム100のシステム構成図である。
カーリースシステム100は、環境負荷管理装置200、メーカー端末104、決済システム106、CC管理端末108、エネルギー供給装置110およびユーザ端末112を含む。環境負荷管理装置200、メーカー端末104、決済システム106、CC管理端末108、エネルギー供給装置110およびユーザ端末112は、インターネット102を介して相互に接続される。ユーザ端末112は、自動車のユーザにより使用される通信端末であり、スマートフォン、タブレットコンピュータ、デスクトップPC、ラップトップPCなど通信機能と表示機能を有する任意のコンピュータであればよい。
【0029】
環境負荷管理装置200は、カーリース会社により管理されるサーバであって、カーリースサービスを管理する。ユーザは環境負荷管理装置200に対してあらかじめユーザ登録をしておく。ユーザは、氏名、住所、銀行口座情報、クレジットカード番号等を環境負荷管理装置200に登録し、環境負荷管理装置200はユーザIDを各ユーザに付与する。また、カーリース会社が管理する自動車は、車体IDにより識別される。
【0030】
メーカー端末104は、自動車メーカーの担当者により利用される通信端末である。自動車メーカーは、自動車をカーリース会社に販売し、カーリース会社の担当者は新たに納入された自動車に車体IDを付与して在庫登録する。また、自動車メーカーの担当者は、自動車を納入したとき、自動車の製造炭素の量(以下、「製造炭素値」とよぶ)をメーカー端末104に入力し、メーカー端末104は製造炭素値を環境負荷管理装置200に通知する。環境負荷管理装置200は車体IDと製造炭素値を対応づけて登録するが、詳細は図7に関連して後述する。
【0031】
決済システム106は、金融機関が運営するサーバである。カーリース会社が自動車メーカーから自動車を購入したとき、環境負荷管理装置200は決済システム106に決済指示を送信する。決済システム106は、カーリース会社(購入者)の銀行口座から購入代金を引き落とし、自動車メーカーの銀行口座へ入金処理を行う。自動車メーカーは入金確認後、カーリース会社に納車する。
【0032】
CC管理端末108は、CC生産者により利用される通信端末である。CC生産者は、ソルガムを育成することにより炭素クレジットを生産する。CC生産者は国などの公的機関に炭素クレジットを認定してもらう。カーリース会社は、上述したように、CC生産者から炭素クレジットを購入する。このとき、CC生産者は、CC管理端末108から公的機関に炭素クレジットの移転登録を行う。
【0033】
環境負荷管理装置200は、決済システム106に炭素クレジットの購入にともなう決済を指示する。決済システム106は、カーリース会社の銀行口座から炭素クレジットの購入代金を引き落とし、CC生産者の銀行口座への入金処理を実行する。また、CC生産者からカーリース会社に炭素クレジットは移転される。なお、炭素クレジットの移転登録もカーリース会社が行ってもよい。
【0034】
エネルギー供給装置110は、エネルギー提供者により設置されるガソリンスタンド、水素ステーション、充電ステーションなど、自動車にエネルギーを供給する装置である。ユーザの自動車は、エネルギー供給装置110からエネルギー補給を受けることができる。エネルギー供給装置110は、エネルギー供給時において、車体ID、ユーザIDとともにエネルギーの補給量、エネルギーの種類、補給料金、補給日時等を含む「補給データ」を環境負荷管理装置200に送信する。
【0035】
環境負荷管理装置200は補給データに応じて決済システム106に決済を指示する。決済システム106は、カーリース会社の銀行口座から補給料金を引き落とし、エネルギー提供者の銀行口座への入金処理を実行する。
【0036】
環境負荷管理装置200は、1ヶ月ごとに自動車使用料を計算し、ユーザ端末112に自動車使用料を通知する。また、環境負荷管理装置200は決済システム106に決済を指示する。決済システム106は、ユーザの銀行口座から自動車使用料を引き落とし、カーリース会社の銀行口座への入金処理を実行する。環境負荷管理装置200は、電子データとして領収書を生成し、ユーザ端末112に送信する。
【0037】
図4は、環境負荷管理装置200のハードウェア構成図である。
環境負荷管理装置200は、コンピュータプログラムを格納する不揮発性メモリとしてのストレージ312、プログラムおよびデータを展開する揮発性のメモリ304、レジスタ、演算器、命令デコーダ等を内蔵し、メモリ304からプログラムを読み出して実行するプロセッサ300(CPU:Central Processing Unit)等を含む。プロセッサ300は、比較的高速な第1バス302と接続される。第1バス302には、メモリ304のほかNIC(Network Interface Card)が接続される。第1バス302には、このほか、GPU(Graphics Processing Unit)等の他のデバイスが接続されてもよい。
【0038】
第1バス302は、ブリッジ308を介して比較的低速な第2バス310と接続される。第2バス310には、ストレージ312のほか、モニタあるいはスピーカなどの出力デバイス316が接続される。また、第2バス310には、マウスやキーボードなどの入力デバイス314、プリンタなどの周辺機器318が接続されてもよい。
【0039】
図5は、環境負荷管理装置200の機能ブロック図である。
環境負荷管理装置200の各構成要素は、CPUおよび各種コプロセッサ(co-processor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。
以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0040】
環境負荷管理装置200は、通信部120、データ処理部122およびデータ格納部124を含む。
通信部120は、CC管理端末108、エネルギー供給装置110、決済システム106、メーカー端末104およびユーザ端末112との通信処理を担当する。データ格納部124は各種情報を格納する。データ処理部122は、通信部120により取得されたデータおよびデータ格納部124に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部122は、通信部120およびデータ格納部124のインタフェースとしても機能する。
【0041】
通信部120は、送信部126と受信部128を含む。
送信部126は、外部装置に各種データを送信する。受信部128は、外部装置から各種データを受信する。
【0042】
受信部128は、排出権取得部130、負荷取得部132および消費取得部134を含む。
排出権取得部130は、CC管理端末108から炭素クレジットを取得する。より具体的には、CC管理端末108は炭素クレジットの移転登録を行い、排出権取得部130は炭素クレジットの移転登録通知を受信する。なお、ブロックチェーン等により、CC管理端末108から環境負荷管理装置200に炭素クレジットを移転してもよい。
【0043】
負荷取得部132は、メーカー端末104から車体IDおよび製造炭素値を示す「製造負荷データ」を受信する。消費取得部134は、エネルギー供給装置110からユーザID、車体ID、エネルギーの補給量と種類を示す補給データを受信する。
【0044】
データ処理部122は、劣化計算部136、貸出管理部138、使用料計算部140および決済部142を含む。
劣化計算部136は、自動車の「劣化進行度」を計算する。劣化進行度は、自動車の使用にともなう自動車の劣化の進み具合を示す指標であるが、詳細は後述する。貸出管理部138は、自動車の貸し出しを管理する。使用料計算部140は、自動車使用料を計算する。決済部142は、決済システム106に各種指示を送信することにより、決済を実行する。
【0045】
図6は、貸出管理情報160のデータ構造図である。
貸出管理情報160は、データ格納部124に格納される。カーリース会社は、ユーザに自動車を貸し出す。このとき、貸出管理部138は、ユーザID、車体IDおよび貸出日を対応づけて貸出管理情報160に登録する。ユーザが自動車を返したときには、貸出管理部138は貸出管理情報160から該当レコードを抹消する。本実施形態におけるカーリース会社は、自動車を数ヶ月、数年の単位にて長期にわたって貸し出すことを想定している。
【0046】
たとえば、ユーザID=P01のユーザ(以下、「ユーザ(P01)」のように表記する)は、車体ID=C06の自動車(C06)を2021年11月29日に借りている。また、ユーザ(P04)は自動車(C12)を2019年12月10日から借りている。上述したように、ユーザは自動車を借りている間は、自動車使用料をカーリース会社に毎月支払う。
【0047】
図7は、製造負荷データ170のデータ構造図である。
製造負荷データ170も、データ格納部124に格納される。図7の製造負荷データ170は、自動車(C01)の製造炭素を示す。自動車(C01)は、構成部品Q01~Q10を含む。構成部品Q01~Q10の製造炭素の合計が、自動車(C01)の製造炭素となる。
【0048】
自動車(C01)はEV(Electric Vehicle)であり、構成部品Q01(第1部品)は自動車(C01)に搭載される二次電池である。構成部品Q01(二次電池)の製造炭素値(第1排出量)は「4200」である。なお、単位量のエネルギーの生産時に発生するエネルギー炭素の量のことを「エネルギー炭素値」とよび、製造炭素値とエネルギー炭素値をまとめていうときには「炭素値」とよぶ。炭素値は、二酸化炭素の重量を指標化した数値である。たとえば、Rキログラムの二酸化炭素を炭素値「1」としてもよい。
【0049】
構成部品Q01(二次電池)については、製造炭素値「4200」に応じた賦課金が発生する。ユーザは自動車(C01)を借りるとき、使用期間における構成部品Q01(二次電池)の劣化進行度に応じて構成部品Q01の製造炭素に関わる賦課金の一部を負担する。劣化進行度に基づく負担額の計算方法については次の図8に関連して後述する。
【0050】
構成部品Q02(第2部品)は自動車(C01)のタイヤである。構成部品Q02(タイヤ)の製造炭素値(第2排出量)は「1800」である。使用料計算部140は、タイヤの製造炭素に基づく負担金を走行距離に基づいて計算する。たとえば、自動車(C01)のタイヤについて想定される最大走行距離が10万キロメートルであるとする。ユーザ(P05)が自動車(C01)を借りて1ヶ月あたり200キロメートルを走行したときには、使用料計算部140は製造炭素値「1800」の0.2%(=200/10万)にあたる炭素値「3.6」をユーザ(P05)の負担分として算出する。炭素値TあたりのCC価格がX円であるときには、使用料計算部140は、X×(3.6/T)円を料金M2の一部として含める。
【0051】
構成部品Q03は自動車(C01)のボディである。構成部品Q03(ボディ)の製造炭素値は「3000」である。構成部品Q03(ボディ)について想定される使用可能期間が120ヶ月(10年)であるとする。ユーザ(P05)が自動車(C01)を1ヶ月借りたときには、使用料計算部140は製造炭素値「3600」の1/120にあたる炭素値「30」をユーザ(P01)の負担分として算出する。このとき、使用料計算部140は、構成部品Q03(ボディ)についての負担額として、X×(30/T)円を料金M2に含める。
【0052】
構成部品Q01~Q10の製造炭素値の合計が、自動車(C01)の製造炭素値となる。図7によれば自動車(C01)の製造炭素値は「11600」である。カーリース会社は自動車(C01)を購入するとき、自動車(C01)の製造炭素「11600」に基づく賦課金を炭素クレジットにより相殺する。なお、カーリース会社は、相殺できなかった残金を公的機関等に支払ってもよい。
【0053】
ユーザ(P05)が自動車(C01)を借りたとき、使用料計算部140は1ヶ月ごとに各構成部品の製造炭素についてのユーザの負担分を計算し、料金M2を算出する。ユーザ(P05)は、自動車(C01)の使用量に応じて製造炭素にともなう賦課金を少しずつ負担し、カーリース会社は料金M2により賦課金の負担分、いいかえれば、炭素クレジットの購入代金を回収する。
【0054】
図8は、二次電池の経年劣化パターンを模式的に示すグラフである。
横軸は時間経過を示し、縦軸は構成部品Q01(二次電池)の性能を示す。二次電池の性能は、内部抵抗、放電電圧、SOH(State of Health)などにより指標化される。SOHは「満充電容量/初期公称容量」として定義される。すなわち、SOHは初期の満充電容量(初期公称容量)に対する、劣化時の満充電容量の比である。二次電池の劣化が進むと満充電容量が低下する。
【0055】
時点t0は、計測対象となる二次電池の使用開始タイミングである。本実施形態においては、「1-SOH(満充電容量/初期公称容量)」を劣化度として定義する。時点t0においては、劣化度は0(%)である。二次電池の劣化度が20(%)以上となったとき、いいかえれば、SOHが80(%)以下になったとき、二次電池を交換するものとする。交換時の劣化度、上記の例でいえば20(%)を「劣化閾値」とよぶ。
【0056】
時点t1は、時点t0から所定期間の経過後、たとえば、1年後の時点である。このときのSOHは90(%)であるため、劣化度は10(%)である。期間T1(時点t0-t1)においては劣化度が0(%)から10(%)に増加している。この場合、期間T1における劣化進行度は10(%)となる。
【0057】
時点t2は、時点t1から所定期間(1年間)の経過後の時点である。時点t2の劣化度は15(%)であるとする。期間T2(時点t1-t2)における構成部品Q01(二次電池)の劣化進行度は5(%)となる。
【0058】
図7によれば、構成部品Q01(二次電池)の製造炭素値は「4200」である。ユーザ(P05)が自動車(C01)を借りたとき、構成部品Q01(二次電池)の1ヶ月あたりの劣化進行度が1(%)だったとする。また、構成部品Q01(二次電池)の劣化閾値を20(%)とするとき、使用料計算部140は炭素値「4200」の1/20にあたる炭素値「210」をユーザ(P05)の負担分として算出する。炭素値TあたりのCC価格がX円であるときには、構成部品Q01(二次電池)の製造炭素についての炭素負担金として、使用料計算部140はX×(210/T)円を料金M2に含める。
【0059】
カーリース会社は、二次電池のSOHを計測する計測装置を自動車(C01)とともにユーザ(P05)に貸し出す。計測装置は、月末の所定日時に構成部品Q01(二次電池)のSOHを自動計測し、SOH(劣化度)を環境負荷管理装置200に通知する。環境負荷管理装置200の劣化計算部136は、計測装置から受信した劣化度に基づいて、1ヶ月あたりの劣化進行度を計算する。
【0060】
たとえば、2月末に計測された劣化度が4.9(%)、3月末に計測された劣化度が5.2(%)だったときには、劣化計算部136は3月における構成部品Q01(二次電池)の劣化進行度を0.3(%)(=5.2-4.9)と算出する。使用料計算部140は、劣化進行度に基づいて構成部品Q01(二次電池)についての料金M2を計算する。
【0061】
このほか、充電ステーションとしてのエネルギー供給装置110が、自動車(C01)に充電するとき、構成部品Q01(二次電池)のSOH(劣化度)を計測し、環境負荷管理装置200に通知してもよい。エネルギー供給装置110は、SOHを計測する計測部(不図示)とSOHを環境負荷管理装置200に通知する通知部(不図示)を備えてもよい。
【0062】
環境負荷管理装置200の劣化計算部136は、エネルギー供給装置110から受信した最新の劣化度に基づいて、1ヶ月あたりの劣化進行度を計算してもよい。たとえば、2月の最終充電時に計測された劣化度が2.5(%)で、3月の最終充電時に計測された劣化度が3.1(%)であったときには、劣化計算部136は3月における構成部品Q01(二次電池)の劣化進行度を0.6(%)(=3.1-2.5)として算出する。
【0063】
図9は、負荷テーブル180のデータ構造図である。
負荷テーブル180は、データ格納部124に格納される。負荷テーブル180は、エネルギー種別とエネルギー炭素値を対応づけて定義する。エネルギー炭素値は、単位量あたりの二酸化炭素の排出量を示す。エネルギーの種類はエネルギーIDにより識別される。
【0064】
エネルギーID=F01はガソリンに対応する。エネルギー(F01)は1リットルあたりW1キログラムの二酸化炭素を排出する。エネルギー(F02)は軽油に対応し、1リットルあたりW2キログラムの二酸化炭素を排出する。
【0065】
エネルギー供給装置110は、エネルギー(F01:ガソリン)を自動車(C01)に給油したときには、車体IDとともに給油量を環境負荷管理装置200に通知する。環境負荷管理装置200の使用料計算部140は、給油量および負荷テーブル180に基づいて、エネルギー補給量に応じたエネルギー炭素値の総量(以下、「排出炭素値」とよぶ)を計算する。たとえば、エネルギー(F01:ガソリン)を20リットル給油したときの排出炭素値は「W1×20」となる。
【0066】
水素、バイオメタノールのエネルギー炭素はゼロである。電気エネルギーの場合には、単位電力量あたりの二酸化炭素の排出量がエネルギー炭素値として定義される。たとえば、太陽電池により生産された電気エネルギーの場合には、エネルギー炭素値はゼロとなる。風力発電、地熱発電等、いわゆる再生可能エネルギーにより生産された電気エネルギーは二酸化炭素を排出しない。一方、石炭火力発電は、二酸化炭素を排出する。エネルギー供給装置110は、自動車に電気エネルギーを供給するときには、電気エネルギーを生成したエネルギー源も環境負荷管理装置200に通知する。
【0067】
一例として、エネルギー供給装置110から自動車(C02)にガソリンを20リットル給油したとする。このときの排出炭素値は「W1×20」となる。炭素値TあたりのCC価格がX円であるときには、使用料計算部140はX×(W1×20/T)円を料金E2に含める。
【0068】
自動車(C01)はEVであるとする。エネルギー供給装置110は、自動車(C01)に単位電力量×4の電気エネルギーを給電したとする。ここでいう単位電力量は、100キロワット時などの基準量である。エネルギー供給装置110が自動車(C01)に供給した電力のうち30%は太陽光発電に由来し、70%は石炭火力発電に由来しているとする。
【0069】
太陽光発電のエネルギー炭素はゼロであり、石炭火力発電のエネルギー炭素値は1単位電力量あたりYであるとする。このとき、使用料計算部140は負荷テーブル180を参照し、排出炭素値を「2.8Y(=0×0.3×4+Y×0.7×4)」として算出する。炭素値TあたりのCC価格がX円であるときには、使用料計算部140はX×(2.8Y/T)円を料金E2に含める。
ユーザは、クリーンエネルギーを利用することにより、料金E2を抑制できる。
【0070】
図10は、料金計算の処理過程を示すフローチャートである。
料金計算は、定期的に実行される。本実施形態においては、使用料計算部140は、毎月月末に図10に示す料金計算をユーザごとに実行する。ここでは、自動車(C01)を借りているユーザ(P05)について、自動車使用料(月額)を計算する場合を想定して説明する。
【0071】
使用料計算部140は、まず、料金M2を計算する(S10)。料金M2は、炭素負担金のうち、製造炭素に基づく負担分であるが、料金M2の計算方法の詳細は次の図11に関連して説明する。
【0072】
続いて、使用料計算部140は、料金E1を計算する(S12)。エネルギー供給装置110は、ユーザ(P05)が自動車(C01)にエネルギー補給を行ったとき、補給量に応じた補給料金を環境負荷管理装置200に通知する。使用料計算部140は、1ヶ月分の補給料金の集計値を料金E1として算出する。
【0073】
使用料計算部140は、料金E1を計算したあと、料金E2を計算する(S14)。上述したように、使用料計算部140は負荷テーブル180を参照し、エネルギーの補給量、エネルギーの種別および料金計算時点におけるCC価格に基づいて料金E1を算出する。
【0074】
使用料計算部140は、固定料金である料金M1に、料金E1、料金M2および料金E2を加算した金額を自動車使用料として算出する。決済部142は決済システム106に指示して、ユーザ(P05)の銀行口座から自動車使用料を引き落とし、カーリース会社の銀行口座への入金処理を実行する。
【0075】
図11は、図10のS10における料金M2の計算処理を詳細に示すフローチャートである。
使用料計算部140は、自動車(C01)についての製造負荷データ170を参照し、未検討の構成部品があるときには、いいかえれば、製造炭素値についての計算が未了の構成部品があるときには(S20のY)、その構成部品の製造炭素値を計算する(S22)。構成部品Q01(二次電池)の場合には、劣化計算部136は劣化進行度を計算する。使用料計算部140は、構成部品Q01(二次電池)の製造炭素値と劣化進行度に基づいて、1ヶ月あたりの製造炭素値を計算する。計算結果はメモリに一時記憶される。
【0076】
構成部品Q02(タイヤ)の場合には、使用料計算部140は構成部品Q02の製造炭素値と走行距離に基づいて、1ヶ月あたりの製造炭素値を計算する。構成部品Q03の場合には、使用料計算部140は構成部品Q03の製造炭素値と使用時間に基づいて、1ヶ月あたりの製造炭素値を計算する。
【0077】
上述したように、構成部品Q02(タイヤ)の最大走行距離と1ヶ月あたりの走行距離に基づいて、1ヶ月あたりの製造炭素値の負担分が計算される。最大走行距離は、構成部品Q02(タイヤ)の設計者が性能実験に基づいて任意に設定してもよい。あるいは、自動車の試作時に試験走行を行い、構成部品Q01(二次電池)が劣化閾値に到達するまで走行した場合の走行距離を最大走行距離として設定してもよい。
【0078】
使用料計算部140は、構成部品の1ヶ月あたりの製造炭素値およびCC価格に基づいて、構成部品についての使用料を計算し(S24)、料金M2に加算する(S26)。すべての構成部品について使用料の計算が終わったときには(S20のN)、S10の処理は終了する。このように、自動車(C01)の構成部品Q01~Q10それぞれの製造炭素値および使用量(劣化進行度、走行距離、使用時間等)に基づいて、料金M2が算出される。
【0079】
[総括]
以上、実施形態に基づいてカーリースシステム100を説明した。
カーリースシステム100においては、自動車のユーザは、定期的に環境負荷管理装置200(カーリース会社)から自動車使用料を請求され、銀行口座から自動車使用料が引き落とされる。このため、ユーザには二酸化炭素の排出にともなう手続き負担は発生していない。また、炭素負担金(料金M2、E2)だけでなく、エネルギーの補給料金も自動車使用料の一部としてまとめて支払われるので、ユーザは、エネルギー供給装置110においてエネルギー補給を受けるときにも支払い手続きをする必要はない。
【0080】
決済部142は、自動車使用料を請求するとき、料金M1、E1、M2、E2それぞれの内訳を示す領収書を発行する。送信部126は、決済部142が作成した領収書の電子データをユーザ端末112に送信する。ユーザは、領収書を確認することで、料金M1、E1、M2、E2を知ることができる。ユーザは、製造炭素の少ない自動車、特に、製造炭素の少ない構成部品によって作られる自動車を選ぶことで料金M2を抑制できる。この結果、製造コストが高くても、製造炭素の少ないエコカーが選好されやすくなるため、カーリースシステム100は環境負荷の少ないエコカーの普及を促進できる。
【0081】
また、ユーザは、エネルギー炭素の少ないクリーンエネルギーを選ぶことで、料金E2を抑制できる。エネルギーの単価が高いときには料金E1が高くなるが、クリーンエネルギーの場合には料金E2が安くなるので、再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギーが選好されやすくなる。クリーンエネルギーが選ばれやすくなれば、エネルギー提供者もクリーンエネルギーに設備投資しやすくなる。
【0082】
水素とガソリンの両方に対応するハイブリッド型の自動車を利用する場合、ユーザは料金E2を抑制するために、ガソリンよりも水素を積極的に選ぶようになる。この結果、水素ステーションの設置数が少ない場合でも、ユーザは水素ステーションを積極的に探して利用するようになり、このようなユーザ行動の変化が水素ステーションへの設備投資を後押しする。
【0083】
このように、二酸化炭素の排出量に応じて自動車使用料を可変とすることで、エネルギー効率のよい自動車、製造時における環境負担の少ない自動車、環境負担の少ないエネルギーを選ぶようにユーザを誘導し、ユーザの行動を変化させることで低炭素の循環型社会に向けて少しずつ社会を変えていくことができる。
【0084】
自動車メーカーは、製造炭素について賦課金が発生しても、カーリース会社が代わりに賦課金を支払ってくれる。このため、自動車メーカーは、環境負荷の大きな自動車を製造したとしても直接的な不利益は発生しない。しかし、ユーザがエコカーを積極的に選ぶようになれば、カーリース会社もエコカーの購入数を増やすことになるため、結果的に、自動車メーカーもエコカー中心の生産にシフトしていく。したがって、自動車メーカーにエコカーへの生産シフトを強制することなく、市場原理に基づいて自動車メーカーがエコカーを増産するように誘導できる。
【0085】
エネルギー提供者についても同様である。エネルギー炭素に基づく賦課金もカーリース会社が負担する。ユーザは自動車使用料を下げるためにクリーンエネルギーを好むようになる。したがって、市場原理に基づいて、エネルギー提供者にグリーンエネルギーへの設備投資を促すことができる。エネルギー提供者も、賦課金というペナルティに強制されるのではなく、ユーザの選好を確認した上で安心して設備投資をしやすくなる。
【0086】
カーリース会社が自動車メーカーおよびエネルギー提供者の賦課金を負担するため、カーリース会社は大量の炭素クレジットを必要とする。カーリース会社は、製造炭素およびエネルギー炭素についての賦課金を直接支払ってもよいが、炭素クレジットで相殺することもできる。また、CC生産者は、炭素クレジットの大口顧客となるカーリース会社と契約することで、資金調達や営業活動が不要となり、炭素クレジット生産に対する設備投資を行いやすくなる。
【0087】
カーリース会社も、大量かつ継続的な購入を約束することで、安定したCC価格にて炭素クレジットを調達できる。ソルガムからバイオ燃料を生成する場合には、CC生産者は炭素クレジットを生産するだけでなく、エネルギー提供者としての役割も兼ねることができる。炭素クレジットの需要に加えてバイオ燃料の需要も高まれば、CC生産者にとってソルガムを栽培することはいっそう合理的となるため、ソルガム育成およびバイオ燃料の普及が更に促される。
【0088】
本実施形態においては、自動車の構成部品ごとに製造炭素を管理している。自動車の構成部品を交換したときには、使用料計算部140は、新構成部品の製造炭素に基づいて自動車使用料を計算する。たとえば、1月に自動車(C01)の構成部品Q01(二次電池A)を新たな二次電池Bに交換したときには、2月においては新しい二次電池Bの製造炭素および劣化進行度に基づいて料金M2を計算する。このような制御方法によれば、構成部品を交換しながら長く使える自動車については、自動車使用料を抑制しやすくなる。
【0089】
カーリースシステム100によれば、料金M2には自動車の製造炭素にともなう炭素負担金が反映される。自動車がエネルギー効率の高い二次電池を使う場合には、料金E1は低くなる。しかし、エネルギー効率が高くても劣化しやすい二次電池の場合には、料金M2が高くなってしまう。二次電池による環境負荷は、製造炭素、エネルギー効率だけでなく、耐久性にも影響される。カーリースシステム100によれば、長く利用可能な二次電池を採用することで、料金M2を抑制できる。
【0090】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0091】
[変形例]
本実施形態においては、二酸化炭素の排出にともなう環境負荷をユーザが負担するとして説明した。二酸化炭素に限らず環境に負荷のかかる他の化学物質についても、カーリースシステム100の仕組みは応用可能である。二酸化炭素以外にも、フロン、メタン、一酸化窒素などのさまざまな温室効果ガスを対象としてもよい。このほかにも、アンモニアや二酸化窒素などの窒素化合物、重金属などの各種の化学物質などが考えられる。
【0092】
本実施形態においては、ソルガムの育成による炭素クレジットの生産を想定して説明したが、炭素クレジットの生産はソルガムに限らず、藻類、菌類などの植物、微生物によっても可能である。
【0093】
貸出管理情報160においては、貸出日のほか、返却日も記録されてもよい。貸出日および返却日を記録しておくことで、ユーザごとに自動車を借りている期間を管理できる。また、多くの自動車を借りたユーザ、複数の自動車を同時に借りるユーザに対しては、ボリュームディスカウントなどのサービスを行うことも考えられる。
【0094】
本実施形態においては、エネルギー炭素にともなう賦課金が発生するとして説明した。変形例として、エネルギー炭素にともなう賦課金は発生しないとしてもよい。使用料計算部140は、クリーンエネルギーが選ばれたときには料金E2が抑制されるように料金設定をすれば、ユーザはクリーンエネルギーを選びやすくなる。クリーンエネルギーの需要が高まれば、エネルギー提供者もクリーンエネルギーへの投資を増やしやすくなる。
【0095】
本実施形態においては、決済システム106が銀行決済を実行することにより、送金処理を行うとして説明した。変形例として、決済部142は、ブロックチェーン等を用いたP2P方式により送金処理を実行してもよい。たとえば、ユーザからカーリース会社への自動車使用料の支払いに際しては、ユーザはユーザ端末112において仮想通貨の送金の指示し、送金指示が記述されたブロックが通信ネットワークにおいて取引認証をしてもらうことで、カーリース会社は自動車使用料を仮想通貨として受け取ってもよい。
【0096】
製造炭素についての負担は、劣化進行度、走行距離、使用時間以外のパラメータにより算出してもよい。たとえば、構成部品Q01(二次電池)について想定される最大充電回数がK回であって、1ヶ月あたりの充電回数がL回であるときには、構成部品Q01(二次電池)の製造炭素のL/Kをユーザの負担分としてもよい。このほか、エンジンであればオイルの消耗量、交換回数、タイヤであれば溝の深さに基づいて劣化進行度を指標化してもよい。
【0097】
たとえば、計測装置により、1月末のタイヤの溝の深さを劣化度B1、2月末のタイヤの溝の深さを劣化度B2として計測し、劣化計算部136は劣化度B2と劣化度B1の差分値を、2月におけるタイヤの劣化進行度として算出してもよい。自動車の試作時に試験走行を行い、走行開始時のタイヤの溝の深さを劣化度B3、二次電池が劣化閾値に到達するまで走行した場合のタイヤの溝の深さを劣化度B4(<B3)としてもよい。そして、「B3-B4」を最大劣化幅BMとしてもよい。1ヶ月あたりの劣化進行度BXとしたとき、BX/BMに基づいて、1ヶ月あたりの製造炭素値の負担分を算出してもよい。
【0098】
本実施形態においては、エネルギー供給装置110は環境負荷管理装置200にエネルギー補給量およびエネルギー種別を示す補給データを送信し、環境負荷管理装置200は補給データおよび負荷テーブル180に基づいて排出炭素値を計算するとして説明した。
【0099】
エネルギー供給装置110は、エネルギー補給量とともに、排出炭素値を計算する炭素値計算部(不図示)を備えてもよい。エネルギー供給装置110の通知部(不図示)は、ユーザID、車体ID、補給料金、エネルギー補給量および排出炭素値を環境負荷管理装置200に通知し、環境負荷管理装置200の使用料計算部140は通知された排出炭素値と負荷テーブル180に基づいて料金E2を計算してもよい。
【0100】
エネルギー供給装置110は価格受信部(不図示)を備えてもよい。価格受信部は、更に、炭素クレジットの市場価格を外部サイトからCC価格として取得し、排出炭素値およびCC価格に基づいて料金E2を計算してもよい。エネルギー供給装置110の通知部は、料金E1(補給料金)とともに料金E2を環境負荷管理装置200に通知してもよい。
【0101】
本実施形態においては、カーリース会社はCC生産者から相対取引により炭素クレジットを購入するとして説明した。このときのCC価格は、カーリース会社とCC生産者の間で合意した固定料金であってもよい。単位期間ごと、たとえば1年ごとにCC価格(取引価格)を見直すとしてもよい。カーリース会社は市場から炭素クレジットを購入してもよい。この場合には、CC価格は需給に応じて変動することになる。
【0102】
本実施形態においては、構成部品ごとの製造炭素に基づいて、構成部品ごとの使用料を計算し、その合計値を料金M2とした。変形例として、自動車全体の製造炭素に基づいて、使用料計算部140は料金M2を算出してもよい。たとえば、自動車(C02)の製造炭素値がNであり、自動車(C02)の想定使用可能期間が360ヶ月であるとする。このとき、使用料計算部140は1ヶ月あたりの製造炭素値をN/360として算出する。使用料計算部140は、N/360およびCC価格に基づいて、料金M2を算出してもよい。
【0103】
使用料計算部140は、自動車の最大走行距離(廃車になるまで走行可能な距離)に基づいて料金M2を算出してもよい。たとえば、自動車(C02)の製造炭素値がNであり、自動車(C02)の想定最大航行距離がEMキロメートルであるとする。また、自動車(C02)の1ヶ月あたりの走行距離がE1キロメートルであったとする。このとき、使用料計算部140は1ヶ月あたりの製造炭素値をN×E1/EMとして算出する。使用料計算部140は、N×E1/EMおよびCC価格に基づいて、料金M2を算出してもよい。
【0104】
使用料計算部140は、自動車の1ヶ月(単位期間)あたりの製造炭素を代表的な構成部品の劣化進行度に基づいて算出してもよい。たとえば、自動車(C01)がEVであるとき、使用料計算部140は自動車(C01)の構成部品Q01(二次電池)の劣化進行度に基づいて、料金M2を算出してもよい。
【0105】
具体的には、まず、構成部品Q01(二次電池)の劣化閾値は20(%)であるとする。自動車(C01)の製造炭素値がN、1ヶ月あたりの構成部品Q01(二次電池)の劣化進行度がj(%)だったときには、使用料計算部140は1ヶ月あたりの製造炭素値をN×j/20として算出する。使用料計算部140は、N×j/20およびCC価格に基づいて、料金M2を算出してもよい。このように、自動車の使用量を、代表的な構成部品である二次電池の劣化進行度に基づいて算出してもよい。使用料計算部140は、自動車の製造炭素値および二次電池の劣化進行度、CC価格に基づいて、料金M2を算出してもよい。
【0106】
環境負荷管理装置200のデータ処理部122は、提案部(不図示)を備えてもよい。提案部は、ユーザに対して自動車使用料を下げる方法を提案する。たとえば、急発進、急ブレーキなどが多いためエネルギーを無駄に消費することが多いユーザに対しては、提案部は加減速をゆるやかにすることで料金E1を下げられることを提案してもよい。また、使用中の自動車の製造炭素に比べて新型の自動車の製造炭素が所定量以上少ないときには、提案部は新型の自動車への乗り換え(契約変更)を提案してもよい。
【0107】
このほか、ガソリンと電気、ガソリンと水素のように2種類以上のエネルギーを利用可能な自動車の場合には、提案部は環境負荷の少ないエネルギーを使うようにユーザに提案してもよい。提案部は、エネルギー供給装置110の配置マップをユーザに提供し、水素ステーションが近いときには水素補給をするようにユーザに提案してもよい。
【0108】
本実施形態においては、自動車を数ヶ月から数年の単位で貸与するビジネスを想定して説明した。自動車はレンタカーとして、数時間から数日程度の短期間だけ貸与されるとしてもよい。この場合にも、使用料計算部140は自動車の貸与期間に基づいて、料金M1、E1、M2、E2を算出すればよい。
【0109】
二酸化炭素などの化学物質の排出にともなう賦課金を、カーリース会社ではなく自動車メーカー自身で負担してもよい。このとき、自動車メーカーはカーリース会社から炭素クレジットを購入することで賦課金の全部または一部を相殺してもよい。
【0110】
本実施形態においては、エネルギー供給装置110は補給料金をカーリース会社に請求し、カーリース会社は自動車使用料の一部(料金E1)として補給料金をユーザに請求するとして説明した。変形例として、ユーザはエネルギー提供者に対して補給料金を支払うとしてもよい。また、エネルギー炭素に基づく賦課金も、ユーザはエネルギー提供者に直接支払うとしてもよい。
【0111】
上述したように、カーリースシステム100、特に、環境負荷管理装置200による環境負荷管理方法は、自動車以外のリースに対しても応用可能である。また、環境負荷管理装置200は、リースのみならず、シェアリングやレンタルなど、1つの物品を複数のユーザが使用料を支払って使用する利用形態にも応用可能である。
【0112】
<船舶>
海運業で使用する大型船舶の場合、船主は、船舶を造船会社から購入する。船主は、必要に応じて金融機関から資金調達する。船主は、購入した船舶を海運会社に貸し出す。海運会社は、船舶を運用して貨物輸送を行い、荷主から輸送料をもらう。船主は、船舶を貸し出すことにより、海運会社から用船料をもらう。図1に示したカーリースシステム100のモデルにあてはめると、造船会社は「自動車メーカー」に対応し、船主は「カーリース会社」に対応し、海運会社は「ユーザ」に対応する。
【0113】
世界では1年間にX1隻のコンテナ船が製造されるとする。コンテナ船1隻の製造費用はY1(円)であるとする。1年間のコンテナ船の製造により排出される製造炭素の総量は、Z1(トン)であるとする。また、炭素1(トン)あたりの炭素クレジットの価格をC1(円)とする。以上の想定のもとに計算すると、コンテナ船1隻を製造するときに発生する製造炭素量Z2は、Z2=Z1/X1となる。これを炭素クレジットに換算すると、コンテナ船1隻の製造炭素にともなうコストC2は、C2=C1×Z2となる。
【0114】
コンテナ船の耐用年数をT1(年)とすると、コンテナ船の製造費用および製造炭素の負担量の1年あたりの負担額K1=(Y1+C2)/T1となる。X1=500、Y1=70億、Z1=60万、C1=1万と想定して試算すると、コンテナ船1隻の製造炭素にともなうコストC2は、C2=4700万となる。このうち、コンテナ船1隻の製造費用Y1を耐用年数T1で除したY1は、Y1/T1=4670万であるため、製造炭素にともなう炭素負担金(料金M2)は30万円程度なので(4700-4670)、炭素負担金を用船料に含めたとしても、海運会社の負担感はそれほど増えないと考えられる。
【0115】
エネルギー炭素についての炭素負担金(料金E2)についても、カーリースと同様である。世界中のコンテナ船の運行にともなって1年間に排出するエネルギー炭素の総量をZ3(トン)とする。世界中のコンテナ船の数をX2とすると、コンテナ船1隻あたりのエネルギー炭素Z4は、Z4=Z3/X2となる。これを炭素クレジットに換算すると、コンテナ船1隻の1年あたりのエネルギー炭素についてのコストC3は、C3=C1×Z4となる。エネルギー炭素のコストについても用船料に加算される。
【0116】
重油をエネルギー源とするコンテナ船よりも、メタノールをエネルギー源とするコンテナ船の方が、エネルギー炭素は少ない。一方、重油に比べるとメタノールは燃料費が高くなる。エネルギー炭素にともなうコストが大きいときには、燃料費の差額を考慮したとしても、海運会社にとってはメタノールを選ぶ方が経済合理的となる。
【0117】
<建築物>
建物、特に、オフィスビルあるいは大型集合住宅の場合、まず、建設会社が建物を建設する。不動産会社は、この建物を購入し、入居者に部屋を貸し出す。不動産業者は、入居者から賃料をもらう。不動産会社は、賃料によって土地購入費用および建設費用をまかなう。図1に示したカーリースシステム100のモデルにあてはめると、建設会社は「自動車メーカー」に対応し、不動産会社は「カーリース会社」に対応し、入居者は「ユーザ」に対応する。
【0118】
建物の建設費用には、建物を建設するコストと、土地の取得費用が含まれる。また、建設に際しては各種資材の運搬および製造により製造炭素が発生する。この製造炭素のコストを賃料の一部に含める。
【0119】
建物の運営に際しても、空調設備、照明設備などの利用によりエネルギー炭素が発生する。不動産会社が環境負荷管理装置200を運営する場合、環境負荷管理装置200は、建物の建設費用、製造炭素およびエネルギー炭素を考慮して賃料を定めればよい。たとえば、断熱性の高いビルの場合、建設費用が高くなるがエネルギー炭素は少なくなるため、エネルギー炭素についての炭素負担金(料金E2)を下げることができる。ビルの緑化についても同様の効果が期待できる。
【0120】
以上のように、本実施形態においては、自動車および船舶を貸与する場合を想定して説明したが、これらに限らずなんらかのエネルギーによって駆動される駆動機械であれば本発明は応用可能である。駆動機械としては、このほかには、航空機、農業機械、複写機などのオフィス機器、工作機械、電灯、テレビなどが考えられる。
【0121】
不動産に限らず、駆動機械以外の静的な物品に対しても本発明は応用可能である。たとえば、机、椅子、彫像などの物品を貸与するときには、使用料計算部140は料金M1,M2に基づいて使用料を算出してもよい。このときにも、料金M2は、物品の製造炭素値およびCC価格に基づいて算出される。
【0122】
貸出しの対象となるのは自動車(最終製品)に限らず、自動車を構成する部品であってもよい。たとえば、バッテリー、ボディ、タイヤなどの「最終製品を構成するモジュール」を貸出しの対象としてもよい。あるいは、複数の製品を組み合わせて貸し出すことも考えられる。たとえば、住宅、家電製品、自動車、ソファなどをまとめて貸出し、製造炭素およびエネルギー炭素に基づいて月額の使用料を支払うというライフスタイルも考えられる。
【要約】
環境負荷管理装置は、所定量の化学物質を排出する権利を示す排出権データを取得する排出権取得部と、物品の製造にともなう前記化学物質の排出量を示す製造負荷データを取得する負荷取得部と、排出権データの価格および物品の製造にともなう化学物質の排出量に基づいて、物品の使用料を算出する使用料計算部とを備える。
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