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  • 特許-レーザ加工装置 図1
  • 特許-レーザ加工装置 図2
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  • 特許-レーザ加工装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/082 20140101AFI20230529BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230529BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20230529BHJP
   B23K 26/16 20060101ALI20230529BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/00 M
B23K26/142
B23K26/16
H05K3/00 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019199856
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021070055
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武知 孝洋
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-271289(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139019(WO,A1)
【文献】国際公開第03/076117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/082
B23K 26/16
B23K 26/00
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を基板上で二次元方向に走査させるスキャナユニットと、レーザ発振器から出射されるレーザ光を前記スキャナユニットに導くためにレーザ光をそれぞれ順次通過させる複数の光学部品と、レーザ光による加工動作を制御する制御部とを有するレーザ加工装置において、
前記光学部品の少なくとも一つを通過するレーザ光の一部を受光し電気信号に変換する光検出器と、
前記少なくとも一つの光学部品にガスを吹き付けるノズルと、
前記ノズルにガスを供給するガス供給機構と、を備え、
前記制御部は、前記光検出器からの電気信号が閾値以下となった場合に前記加工動作を停止し、前記少なくとも一つの光学部品に前記ノズルからガスを吹き付け、当該吹き付けが終了した後、前記光検出器からの電気信号が閾値を超えた場合に前記加工動作を再開するように制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記光学部品は収容体の内部に収容されており、
外気を前記収容体に設けられたフィルタを通して当該収容体の内部へ流入させるブロアと、
前記収容体の内部に流入された外気を当該収容体の外部へ排気するための前記収容体に設けられた排気口と、
を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のレーザ加工装置において、
レーザ光が前記少なくとも一つの光学部品に入射される前に通過する光学部品の各々にもガスを吹き付けるノズルを備え、
前記制御部は、前記光検出器からの電気信号が閾値以下となった場合に前記加工動作を停止し、前記少なくとも一つの光学部品及び当該光学部品に入射される前に通過する光学部品の各々に前記ノズルからガスを吹き付けるように制御することを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板に対してレーザを照射して穴あけ加工を行うためのレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ加工装置としては、内部に設けられた反射ミラーなどの光学部品に空気中の塵埃が付着する問題がある。そこで、例えば特許文献1に示すように、レーザ光の伝送時において反射ミラーにドライエアーを吹き付けて塵埃が反射ミラーに付着することを防止する技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された方式であると、常にドライエアーを吹き付けるようになっているので、特定の種類のレーザ(例えばUVレーザ)ではレーザ光が揺らいで穴形状が変化してしまい加工品質が低下する。また、エアー供給機構の故障リスクが高くその寿命が短くなる。また、加工動作の途中でエアー供給機構が故障してしまった場合、加工動作を停止する必要があるが、特許文献1には加工動作を停止させることについての言及がない。さらに、加工動作を停止させた場合、加工動作を再開させることについても言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-003894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、加工品質を確保するとともに、光学部品に付着した塵埃を除去するためのエアー供給機構の故障リスクを小さくして長寿命化をはかり、光学部品に塵埃が付着して加工品質が保てなくなったら加工動作をすみやかに中断し、その後自動的に加工動作を再開する、使い勝手の良いレーザ加工装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工装置は、レーザ光を基板上で二次元方向に走査させるスキャナユニットと、レーザ発振器から出射されるレーザ光を前記スキャナユニットに導くためにレーザ光をそれぞれ順次通過させる複数の光学部品と、レーザ光による加工動作を制御する制御部とを有するレーザ加工装置において、前記光学部品の少なくとも一つを通過するレーザ光の一部を受光し電気信号に変換する光検出器と、前記少なくとも一つの光学部品にガスを吹き付けるノズルと、前記ノズルにガスを供給するガス供給機構とを備え、前記制御部は、前記光検出器からの電気信号が閾値以下となった場合に前記加工動作を停止し、前記少なくとも一つの光学部品に前記ノズルからガスを吹き付け、当該吹き付けが終了した後、前記光検出器からの電気信号が閾値を超えた場合に前記加工動作を再開するように制御することを特徴とする。
【0007】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上の通りであるが、ここで説明していない特徴については、後述する発明を実施するための形態において説明しており、また特許請求の範囲にも示した通りである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工品質を確保するとともに、エアー供給機構の故障リスクを小さくして長寿命化をはかり、光学部品に塵埃が付着して加工品質が保てなくなったらすみやかに加工動作を中断し、その後自動的に加工動作を再開する、使い勝手の良いレーザ加工装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例に係るレーザ加工装置のレーザユニットの構造を説明するための図である。
図2】本発明の一実施例に係るレーザ加工装置のコンプレッサを説明するための図である。
図3】本発明の一実施例に係るレーザ加工装置の構造を示す図である。
図4】本発明の一実施例に係るレーザ加工装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を実施例に沿って説明する。なお、
以下の説明において、同等な各部には同一の符号を付して説明を省略する。
【0011】
図3は本願発明の一実施例に係るレーザ加工装置の構造を示す図である。1は複数の光学部品が内部に設けられレーザ光L1をスキャナユニット3へ照射するレーザユニットで、レーザユニット1とスキャナユニット3との間には空気中の塵埃がレーザユニット1の内部およびスキャナユニット3の内部へ進入するのを防止する伸縮ダクト2が設けられている。伸縮ダクト2はスキャナユニット3のZ方向への移動に伴い伸縮する。スキャナユニット3には図示を省略する一対のガルバノスキャナおよび集光レンズが設けられ、出射したレーザ光L2が基板4上で二次元方向に走査される。
【0012】
4は加工すべきワークとなる基板、5は基板4を載置するテーブルである。テーブル5は図においてX方向及びY方向に動かすことによって、レーザユニット1およびスキャナユニット3に対して相対移動できるようになっている。基板4は前記集光レンズの実用的な直径に基づいて決定される加工領域に区分され、1つの加工領域内の加工が終了すると、テーブル5を水平に移動させ、次の加工領域の中心を前記集光レンズの中心軸上に位置決めする。6はレーザユニット1、スキャナユニット3、テーブル5等、各部の動作を制御するための制御部であり、例えばプログラム制御の処理装置を主体にしたものによって実現される。
【0013】
図1は、本発明の一実施例に係るレーザユニット1の構造を説明するための図、図2は、本発明の一実施例に係るレーザユニット1のコンプレッサを説明するための図である。図3と同じものには同じ番号を付けてあり、本発明の実施例を説明するために必要な部分のみを示してある。
【0014】
レーザユニット1の内部においては、レーザ発振器7から出射されたレーザ光は、それぞれ順次通過する複数の光学部品から成る光学系を通過してスキャナユニット3に導かれる。ここでの光学系は、レーザ発振器7から出射されたレーザ光L3を反射するミラー8、ミラー8で反射されたレーザ光L3を反射するミラー9、ミラー9で反射されたレーザ光L3をダンパ10に吸収される非加工用のレーザ光L4と加工用のレーザ光L5に偏向させる音響光学素子11、音響光学素子11で偏向されたレーザ光L5が入射されるビーム径調整レンズ12、ビーム径調整レンズ12からの加工用のレーザ光L5の一部を分岐させるスプリッタ13及び外部からレーザユニット1への塵埃の進入を防ぐ透過板14が含まれている。なお、レーザユニット1は当該光学系、レーザ発振器7等を収容した収容体を成している。
また、ビーム径調整レンズ12でここでは図示を省略して1枚としたが、実際には複数のレンズで構成される。
【0015】
レーザユニット1における透過板14を通過したレーザ光L1は伸縮ダクト2を介してスキャナユニット3へ入射される。15はブロアで外気をレーザユニット1内へ流入させ、装置の電源を入れている間は常時稼動している。16はフィルタでブロア15によってレーザユニット1へ流入される外気から塵埃を除去する。
なお、ブロア15から流入される外気は、光学部品に吹き付けられてもレーザ光が揺らぐことがない程度の風圧である。17は排気口で、図示を省略する集塵機が接続されていてレーザユニット1内の気体が外部に排気されるが、外部からの気体の進入は防ぐ逆止弁のような構造となっている。したがって、レーザユニット1内は陽圧となり外部から塵埃が進入するのを防ぐようになっている。
【0016】
18はコンプレッサでレーザユニット1周辺の外気から水気及び油分を除去したドライエアーを送出する。19は電磁弁でコンプレッサ18から配管20へのドライエアーの流量を制御する。21はノズルで、ミラー8、9、音響光学素子11、ビーム径調整レンズ12、スプリッタ13および透過板14にドライエアーを吹き付けるためのものである。
ノズル21はミラー8、9のレーザ光反射面、音響光学素子11のレーザ光入出射面、ビーム径調整レンズ12のレーザ光入出射面、スプリッタ13のレーザ光入出射面および透過板14のレーザ光入射面の各々に射出口が向けられるように設けられていて、電磁弁19を開くことにより配管20からのドライエアーが吹き付けられるようになっている。
なお、ここではコンプレッサ18、電磁弁19及び配管20により、ノズル21へのエアー供給機構が構成されている。ここでは、ドライエアーが光学系に吹き付けられるようにしたが、ドライエアーに換えて窒素ガスを吹き付けるようにしてもよい。
【0017】
22は光検出器で、スプリッタ13で分岐されたレーザ光L6を受光し、受光したレーザ光L6を電気信号に変換してその信号を制御部6へ出力するもので、例えばフォトダイオードなどで構成される。
制御部6では光検出器22から入力された信号を閾値と比較する。ミラー8、9、音響光学素子11、ビーム径調整レンズ12あるいはスプリッタ13のいずれかに塵埃が付着すると、光検出器22で検出される光強度が弱くなる。制御部6において、閾値以下と判断された場合、レーザ発振器7からのレーザ光L3の出射、音響光学素子11の偏向、スキャナユニット3およびテーブル5の駆動を停止して加工を停止し、全てのノズル21からドライエアーを吹き付ける。
なお、閾値は加工品質を保証できるかできないかの境界となるものであり、加工に先立って予め実験により求めておくものとする。
【0018】
図4は、本発明の一実施例に係るレーザ加工装置の動作を説明するためのフローチャートであり、フローチャートに記載された以下の処理ステップによりレーザ加工が行われる。
ステップ401:レーザ発振器7からレーザ光L3を照射する。
ステップ402:レーザ光L3を音響光学素子11で加工方向に偏向させてレーザ光L5としてビーム径調整レンズ12に入射させる。また、スプリッタ13からのレーザ光L6を光検出器22で受光し、光検出器22からの信号が閾値以下であるかを判断し、光検出器22からの信号が閾値以下ならばステップ403へ移行する。光検出器22からの信号が閾値より大きい場合、ステップ406へ移行する。
ステップ403:アラームを出しレーザ発振器7からのレーザ光L3の出射、音響光学素子11の偏向、スキャナユニット3およびテーブル5の駆動を停止し、加工動作を停止する。
【0019】
ステップ404:電磁弁19を開き、ミラー8、9、音響光学素子11、ビーム径調整レンズ12、スプリッタ13および透過板14にコンプレッサ18からのドライエアーを吹き付ける。
ステップ405:吹き付け終了後、レーザユニット1内で舞い上がった塵埃が排気されるまで数分間(好ましくは3分程度)加工停止を継続する。なお、加工動作を停止してもブロア15は稼動しているので排気される。加工停止の継続が終了した後、再びステップ401に移行する。
ステップ406:音響光学素子11の偏向、ガルバノユニット3およびテーブル5を駆動し、基板4の加工動作を行う。
ステップ407:加工する穴が他にないかどうかで加工終了を判断し、加工する穴が他にない場合、加工動作を終了し、加工する穴が他に残っている場合、ステップ402へ移行する。
【0020】
以上の実施例によれば、光学部品へのドライエアーの吹き付けはレーザ発振器からのレーザ光の出射が停止してから行われるので、レーザ光の揺らぎを防止して加工品質を確保することが可能となる。また、光学部品に付着した塵埃を除去するのは必要な時点のみになるのでエアー供給機構の負担を軽くすることができ、エアー供給機構の長寿命化をはかることができる。さらに、ミラー8、9、音響光学素子11、ビーム径調整レンズ12あるいはスプリッタ13のいずれかに塵埃が付着して、スキャナユニットに出射されるレーザ光の強度が加工品質を保証できないほど弱くなり、加工品質が保てなくなったらすみやかに加工動作を中断する。従って、加工不良の拡大を防ぐことができ、上記光学部品に付着した塵埃を除去した後で自動的に加工動作を再開するようにしたので、使い勝手の良いレーザ加工装置を得ることができる。
【0021】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は当該実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
【符号の説明】
【0022】
1:レーザユニット 2:伸縮ダクト 3:スキャナユニット 4:基板 5:テーブル
6:制御部 7:レーザ発振器 8、9:ミラー 10:ダンパ 11:音響光学素子
12:ビーム径調整レンズ 13:スプリッタ 14:透過板 15:ブロア
16:フィルタ 17:排気口 18:コンプレッサ 19:電磁弁 20:配管
21:ノズル 22:光検出器
図1
図2
図3
図4