(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20230529BHJP
F21S 8/04 20060101ALI20230529BHJP
F21V 9/08 20180101ALI20230529BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20230529BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230529BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
F21S2/00 300
F21S8/04
F21V9/08 400
F21V17/00 453
G02B5/20
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2017240727
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】大西 格
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】大谷 光司
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138534(JP,A)
【文献】特開2003-46124(JP,A)
【文献】特開2012-104814(JP,A)
【文献】特開2017-161755(JP,A)
【文献】特開2008-159741(JP,A)
【文献】特開2017-10917(JP,A)
【文献】特開2013-125845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0081901(US,A1)
【文献】特開2002-151262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S2/00, 8/04
F21V9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
第一波長域の光を吸収することにより
第三波長域の光を発する発光材料を含む第一光学フィルタと、
前記第一波長域の一部に相当する第二波長域の光を吸収する吸収材料を含む第二光学フィルタとを備え、
前記第二光学フィルタは、前記第一光学フィルタと前記光源との間に
、前記第一光学フィルタよりも前記光源寄りに位置し
、
前記光源の発光に基づく
前記第二光学フィルタの劣化により前記第二光学フィルタの光の吸収量が減少
すると、前記第一光学フィルタから出射される出射光の前記第一波長域の成分と、前記出射光の第三波長域の成分とが変化し、
前記第一波長域の成分が変化したことによる前記出射光の色度の変化と、
前記第三波長域の成分が変化したことによる前記出射光の色度の変化とは、色度座標上において反対方向の変化となる
照明器具。
【請求項2】
前記第一光学フィルタ、及び、前記第二光学フィルタは、隙間を空けて配置される
請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記第一光学フィルタ、及び、前記第二光学フィルタは、接着部材により接着されている
請求項1に記載の照明器具。
【請求項4】
前記第一光学フィルタ及び前記第二光学フィルタは、直接接触して
いる
請求項1に記載の照明器具。
【請求項5】
前記第一光学フィルタ及び前記第二光学フィルタの一方の厚みは、前記第一光学フィルタ及び前記第二光学フィルタの他方の厚みよりも薄い
請求項
1に記載の照明器具。
【請求項6】
さらに、透光性を有する基板を備え、
前記第一光学フィルタ及び前記第二光学フィルタは、前記基板の主面上に積層される
請求項4に記載の照明器具。
【請求項7】
さらに、透光性を有する基板を備え、
前記第一光学フィルタは、前記基板の一方の主面上に設けられ、
前記第二光学フィルタは、前記基板の他方の主面上に設けられる
請求項1に記載の照明器具。
【請求項8】
前記第一光学フィルタの厚みは、前記第二光学フィルタの厚みよりも薄い
請求項1に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部の波長域の光をカットする光学フィルタを備える照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)を使用した照明器具が普及しつつある。このような照明器具として、特許文献1には、コンパクト化が可能な発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、照明器具においては、出射光のスペクトルを設計目標に近づけることが難しい場合がある。
【0005】
本発明は、出射光のスペクトルを設計目標に近づけることが容易な照明器具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る照明器具は、光源と、第一波長域の光を吸収することにより発光する発光材料を含む第一光学フィルタと、第二波長域の光を吸収する吸収材料を含む第二光学フィルタとを備え、前記第一光学フィルタ及び前記第二光学フィルタの一方は、前記第一光学フィルタ及び前記第二光学フィルタの他方と前記光源との間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、出射光のスペクトルを設計目標に近づけることが容易な照明器具が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る照明器具の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る照明器具の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る照明器具の模式断面図である。
【
図4】
図4は、光源が発する白色光のスペクトルを示す図である。
【
図5】
図5は、発光材料としてペリレン誘導体を含む第一光学フィルタの特性を示す図である。
【
図6】
図6は、吸収材料としてテトラアザポルフィリン化合物を含む第二光学フィルタの光の透過特性を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る照明器具の出射光のスペクトルを示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る照明器具の模式断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る照明器具を40000時間発光させた場合の出射光のスペクトルの変化を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る照明器具を40000時間発光させた場合の出射光のスペクトルの変化を示す図である。
【
図11】
図11は、40000時間発光した後の照明器具の出射光の色度の初期値からの変化を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態3に係る波長制御素子の第一例の模式断面図である。
【
図13】
図13は、実施の形態3に係る波長制御素子の第二例の模式断面図である。
【
図14】
図14は、実施の形態3に係る波長制御素子の第三例の模式断面図である。
【
図15】
図15は、実施の形態3に係る波長制御素子の第四例の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0011】
(実施の形態1)
[構成]
以下、実施の形態1に係る照明器具の構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る照明器具の外観斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る照明器具の分解斜視図である。
図3は、実施の形態1に係る照明器具の模式断面図である。
【0012】
図1に示されるように、実施の形態1に係る照明器具10は、室内空間等を照明するスポットライトである。照明器具10は、具体的には、本体部11と、光源12と、反射板13と、レンズ14と、第一光学フィルタ15と、第二光学フィルタ16とを備える。
【0013】
本体部11は、略円柱状の外形を有し、光出射側に設けられた空間に光源12、反射板13、レンズ14、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16を収容する。本体部11は、例えば、樹脂材料によって形成されるが、一部または全部が金属材料によって形成されてもよい。
【0014】
光源12は、例えば、基板上に実装された複数のLEDチップが封止部材によって封止されたCOB(Chip On Board)型の発光モジュールである。基板の平面視形状は、例えば、矩形であり、封止部材が形成された基板上の発光領域の平面視形状は、例えば、円形である。
【0015】
複数のLEDチップのそれぞれは、例えば、InGaN系の材料によって構成された、発光ピーク波長が430nm以上480nm以下の窒化ガリウム系のLEDチップであり、青色光を発する。封止部材は、波長変換材として黄色蛍光体を含んだ透光性樹脂材料で構成される。透光性樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂が用いられるが、エポキシ樹脂またはユリア樹脂などが用いられてもよい。また、黄色蛍光体には、例えば、YAG系の蛍光体が採用されるが、LuAG系の蛍光体が採用されてもよい。
【0016】
光源12においては、複数のLEDチップが発した青色光の一部は、封止部材に含まれる黄色蛍光体によって黄色光に波長変換される。そして、黄色蛍光体に吸収されなかった青色光と、黄色蛍光体によって波長変換された黄色光とは、封止部材中で拡散及び混合される。これにより、光源12からは、白色光が出射される。
図4は、光源12が発する白色光のスペクトルを示す図である。
図4の縦軸は光強度を示し、横軸は光の波長を示す。
【0017】
なお、上記透光性樹脂材料には、演色性を高めることなどを目的として、黄色蛍光体の他に、赤色蛍光体及び緑色蛍光体などが含まれてもよい。上記透光性樹脂材料には、黄色蛍光体に代えて緑色蛍光体が含まれてもよい。
【0018】
反射板13は、光の反射機能を有する部材であって、光源12が発する光が入射する開口である入射口と、入射口から入射した光が出射される開口である出射口とを有する。反射板13は、内径が入射口から出射口に向かって大きくなるように構成された筒状の部材である。
【0019】
反射板13の内面は、光源12が発する光を反射する反射面である。反射面は、入射口から入射した光を反射して出射口から出射する。反射板13は、例えば、白色樹脂材料によって形成される。反射板13の内面は、銀やアルミニウム等の金属材料からなる金属蒸着膜(金属反射膜)によってコーティングされてもよい。また、反射板13は、アルミニウム等、樹脂材料よりも反射率の高い金属材料を用いて形成されてもよい。反射板13の出射口部分には、レンズ14が配置される。
【0020】
レンズ14は、特定の光学特性を有する光学素子である。レンズ14は、光源12が発する光を拡散(または平行化)するための凸レンズ(より具体的には、フレネルレンズ)である。レンズ14は、光源12と対向配置される。レンズ14の平面視形状は、略円形である。レンズ14は、例えば、アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂等の樹脂材料により形成される。レンズ14を透過した光は、第一光学フィルタ15に入射する。
【0021】
第一光学フィルタ15は、第一波長域の光を選択的に吸収することにより発光する発光材料を含む光学フィルタである。第一光学フィルタ15は、言い換えれば、発光フィルタである。
【0022】
第一光学フィルタ15は、透光性を有する円板状の光学素子である。第一光学フィルタ15は、具体的には、上記発光材料として蛍光色素(言い換えれば、発光色素)を含有するアクリル樹脂により形成される。第一光学フィルタ15の基材は、アクリル樹脂に限定されず、ポリカーボネート樹脂などのその他の樹脂材料であってもよい。蛍光色素は、例えば、ペリレン誘導体である。
図5は、発光材料としてペリレン誘導体を含む第一光学フィルタ15の特性を示す図である。
図5では、第一光学フィルタ15の発光スペクトル、及び、吸収スペクトルの両方が図示されている。
図5の縦軸は光の透過率または光強度を示し、横軸は光の波長を示す。
【0023】
図5に示されるように、第一光学フィルタ15、例えば、可視光域のうち630nm以下の第一波長域の光を吸収する。また、第一光学フィルタ15は、例えば、550nm以上780nm以下の第三波長域にわたる光を発する。第一光学フィルタ15は、580nm付近に光の吸収ピークを有し、620nm付近に発光ピークを有する。つまり、第一光学フィルタ15の光の吸収ピーク波長は、発光ピーク波長よりも短い。
【0024】
なお、第一光学フィルタ15が含有する発光材料は、ペリレン誘導体に限定されない。発光材料は、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、または、アミン誘導体などの色素であってもよい。また、発光材料は、色素のような有機化合物に限定されず、蛍光体などの無機化合物であってもよい。第一光学フィルタ15を透過した光は、第二光学フィルタ16に入射する。
【0025】
第二光学フィルタ16は、第二波長域の光を選択的に吸収する吸収材料を含む光学フィルタである。第二光学フィルタ16は、言い換えれば、吸光フィルタである。
【0026】
第二光学フィルタ16は、透光性を有する円板状のカラーフィルタである。第二光学フィルタ16は、具体的には、上記吸収材料として色素を含有するアクリル樹脂により形成される。第二光学フィルタ16の基材は、アクリル樹脂に限定されず、ポリカーボネート樹脂などのその他の樹脂材料であってもよい。吸収材料として使用される色素は、自発光しない色素である。吸収材料として使用される色素は、具体的には、例えば、テトラアザポルフィリン化合物である。
図6は、吸収材料としてテトラアザポルフィリン化合物を含む第二光学フィルタ16の光の透過特性を示す図である。
図6の縦軸は光の透過率を示し、横軸は光の波長を示す。
【0027】
図6に示されるように、第二光学フィルタ16は、例えば、500nm以上600nm以下の第二波長域の光を吸収する。第二光学フィルタ16は、590nm付近に光の吸収ピークを有する。照明器具10においては、第二波長域は、第一波長域と重なる。つまり、第二波長域の一部は、第一波長域に含まれる。
【0028】
テトラアザポルフィリン化合物は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、または、コバルト(Co)などの金属元素を含む。なお、第二光学フィルタ16が含有する吸収材料は、テトラアザポルフィリン化合物以外の色素であってもよい。吸収材料は、ポルフィリン誘導体、メチン系色素、メロシアニン化合物、または、フタロシアニン化合物などの色素であってもよい。
【0029】
以上説明したように、照明器具10は、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16の両方を備える。これにより、設計者は、第一光学フィルタ15に含まれる発光材料の種類及び量、並びに、第二光学フィルタ16に含まれる吸収材料の種類及び量を調整することにより、出射光のスペクトルを設計目標に追い込むことができる。したがって、照明器具10は、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16のいずれかのみを備える照明器具よりも、出射光のスペクトルを設計目標に近づけることが容易な照明器具であるといえる。
図7は、照明器具10の出射光のスペクトルを示す図である。
図7の縦軸は光強度を示し、横軸は波長を示す。
【0030】
照明器具10においては、第一光学フィルタ15は、第二光学フィルタ16と光源12との間に位置する。つまり、第一光学フィルタ15は、第二光学フィルタ16よりも光源12側に位置する。したがって、
図7において実線で示されるスペクトルは、
図4のスペクトルを有する白色光が、
図5の特性を有する第一光学フィルタ15を透過した後、さらに、
図6の透過特性を有する第二光学フィルタ16を透過することで得られる、照明器具10の出射光のスペクトルである。
【0031】
図7のスペクトルにおいては、580nm付近の波長域における光強度が比較的低下している。これにより、肌色の好ましさを示す指数PS(Preference Index of Skin Color)などが向上された照明器具10が実現される。なお、
図7のスペクトルは一例であり、第一光学フィルタ15に含まれる発光材料、及び、第二光学フィルタ16に含まれる吸収材料の組み合わせにより多様な出射光のスペクトルが実現される。
【0032】
また、照明器具10において、第一光学フィルタ15には、発光材料及び吸収材料のうち発光材料のみが含まれ、第二光学フィルタ16には、発光材料及び吸収材料のうち吸収材料のみが含まれている。これにより、発光材料及び吸収材料の両方が混在している光学フィルタに比べて、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16のそれぞれに安定した特性を与えることができる。なお、第一光学フィルタ15には、複数種類の発光材料が含まれてもよい。第二光学フィルタ16には、複数種類の吸収材料が含まれてもよい。
【0033】
ところで、
図7において破線で示されるスペクトルは、第二光学フィルタ16が第一光学フィルタ15よりも光源12側に位置する、比較例に係る照明器具の出射光のスペクトルである。比較例に係る照明器具は、照明器具10と第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16の配置のみが異なる。
【0034】
第一光学フィルタ15の光の吸収域である第一波長域と、第二光学フィルタ16の光の吸収域である第二波長域とが重なる場合に、比較例に係る照明器具のように、光源12が発する光が第一光学フィルタ15よりも先に第二光学フィルタ16に入射すると、第一光学フィルタ15の光の吸収量が減ってしまう。第一光学フィルタ15の光の吸収量が減少すると、これに応じて第一光学フィルタ15の発光量も減少する。
【0035】
これに対し、照明器具10では、光源12が発する光が第二光学フィルタ16よりも先に第一光学フィルタ15に入射するため、第一光学フィルタ15の発光量を確保することができる。したがって、
図7に示されるように、照明器具10の出射光のスペクトル(
図7の実線)においては、比較例に係る照明器具の出射光のスペクトル(
図7の破線)に比べて発光ピークの光強度が高く、光源12が発する光の利用効率が向上されている。
【0036】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2に係る照明器具について説明する。
図8は、実施の形態2に係る照明器具の模式断面図である。なお、以下の実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明が行われ、既出事項の説明については適宜省略される。
【0037】
図8に示されるように、実施の形態2に係る照明器具10aは、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16の配置が照明器具10と異なる。照明器具10aにおいては、第二光学フィルタ16が第一光学フィルタ15よりも光源12側に位置する。つまり、第二光学フィルタ16は、第一光学フィルタ15と光源12との間に位置する。
【0038】
照明器具10aは、照明器具10に比べて長時間の使用後も出射光の色度の変化が小さい。以下、40000時間の使用後の出射光の色度の変化について図面を参照しながら説明する。
図9は、照明器具10を40000時間発光させた場合の出射光のスペクトルの変化を示す図である。
図10は、照明器具10aを40000時間発光させた場合の出射光のスペクトルの変化を示す図である。
図11は、40000時間発光した後の照明器具10の出射光の色度、及び、40000時間発光した後の照明器具10aの出射光の色度の初期値からの変化を示す図である。
【0039】
図9の(a)及び
図10の(a)では、照明器具10及び照明器具10aの出射光のスペクトルの初期状態が太線で示されており、このときの出射光の色度は、
図11の「初期値」に対応する。
図9の(b)では、40000時間経過後の照明器具10の出射光のスペクトルが太線で示されており、このときの出射光の色度は、
図11の「実施の形態1」に対応する。
図10の(b)では、40000時間経過後の照明器具10aの出射光のスペクトルが太線で示されており、このときの出射光の色度は、
図11の「実施の形態2」に対応する。なお、
図11は、色度座標を示す図であり、光源12が発する光の単体の色度も参考にプロットされている。
【0040】
図9及び
図10においては、照明器具10及び照明器具10aの出射光のスペクトル以外に、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16の特性についても細線で示されている。
図9及び
図10において、(1)は、第一光学フィルタ15の光の吸収スペクトルであり、(2)は、第一光学フィルタ15の発光スペクトルであり、(3)は、第二光学フィルタ16の光の吸収スペクトルである。なお、実施の形態2では、第二光学フィルタ16に含まれる吸収材料は、メロシアニン化合物である。
【0041】
一般に、第二光学フィルタ16(つまり、吸光フィルタ)は、第一光学フィルタ15(つまり、発光フィルタ)よりも劣化の進行が速い。照明器具10では、第一光学フィルタ15が第二光学フィルタ16よりも光源12寄りに位置しているため、第二光学フィルタ16の劣化が第一光学フィルタ15の出射光に与える影響はほとんどない。このため、
図9に示されるように、照明器具10が40000時間発光した後の第一光学フィルタ15の発光スペクトルの変化(つまり、
図9の(a)の(2)から
図9の(b)の(2)への変化)は小さい。言い換えれば、照明器具10では、40000時間発光した後も第一光学フィルタ15から第二光学フィルタ16に入射する光のスペクトルに大きな変化はない。
【0042】
そうすると、照明器具10が40000時間発光した後には、第二光学フィルタ16が劣化して光の吸収量が減少した分(つまり、
図9の(a)の(3)から
図9の(b)の(3)への変化分)、出射光のスペクトルが初期状態から大きく変化する。
図11に示されるように、40000時間発光した後の照明器具10の出射光のスペクトルの色度は、初期値を中心としたMacAdam楕円の3stepの範囲の外側に位置する。したがって、照明器具10の出射光の色度の初期値からの変化は人間の目で認識可能である。
【0043】
これに対し、照明器具10aでは、第二光学フィルタ16が第一光学フィルタ15よりも光源12寄りに位置している。このため、
図10に示されるように、劣化により第二光学フィルタ16の光の吸収量が減少した分(つまり、
図10の(a)の(3)から
図10の(b)の(3)への変化分)、第一光学フィルタ15に入射する光のスペクトルが変化する。そうすると、第一光学フィルタ15の発光スペクトルの変化(つまり、
図10の(a)の(2)から
図10の(b)の(2)への変化)が比較的大きくなる。具体的には、第一光学フィルタ15の発光量が増加する。
【0044】
しかしながら、第二光学フィルタ16の光の吸収量が減少したことによる色度の変化と、第一光学フィルタ15の発光スペクトルの変化による色度の変化とは、色度座標上において反対方向の変化となる。つまり、第二光学フィルタ16の光の吸収量が減少したことによる色度の変化と、第一光学フィルタ15の発光スペクトルの変化による色度の変化とはある程度相殺される。
【0045】
この結果、
図11に示されるように、40000時間発光した後の照明器具10aの出射光のスペクトルの色度は、初期値を中心としたMacAdam楕円の3stepの範囲の内側に位置する。したがって、照明器具10aの出射光の色度の初期値からの変化を人間の目で認識することは難しい。
【0046】
このように、第二光学フィルタ16が第一光学フィルタ15と光源12との間に位置する照明器具10aは、長時間の使用後も出射光の色度の変化が小さい利点を有する。
【0047】
(実施の形態3)
上記実施の形態1及び実施の形態2では、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16は、別体であった。つまり、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16は、隙間をあけて配置されていた。このような構成は、照明器具10(または照明器具10a)において第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16を個別に交換できる利点がある。
【0048】
しかしながら、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16は、一体的な光学素子とされてもよい。以下の実施の形態3では、このような一体的な光学素子を、便宜上、波長制御素子と定義し、このような波長制御素子について説明する。波長制御素子は、光源12が発する光の波長を制御するための素子である。
【0049】
波長制御素子は、例えば、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16の貼り合わせによって形成される。
図12は、このような実施の形態3に係る波長制御素子の第一例の模式断面図である。
【0050】
図12に示される波長制御素子20aにおいては、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16は、接着部材30により接着されている。具体的には、円板状の第一光学フィルタ15の主面、及び、円板状の第二光学フィルタ16の主面が接着部材30によって接着されている。接着部材30の厚みは、例えば、第一光学フィルタ15の厚み、及び、第二光学フィルタ16の厚みよりも薄い。
【0051】
接着部材30は、透光性を有する材料によって形成される。なお、第一光学フィルタ15の基材、及び、第二光学フィルタ16の基材がアクリル樹脂である場合、接着部材30には、アクリル樹脂系の材料が用いられるとよい。つまり、接着部材には、第一光学フィルタ15の基材、及び、第二光学フィルタ16の基材のそれぞれと屈折率が近い材料が用いられるとよい。これにより、第一光学フィルタ15及び接着部材30の間、及び、第二光学フィルタ16及び接着部材30の間のそれぞれに界面が形成されることが抑制される。そうすると、界面における反射による光のロスが少なくなるため、光の利用効率が向上される。
【0052】
また、
図13は、実施の形態3に係る波長制御素子の第二例の模式断面図である。
図13に示される波長制御素子20bにおいては、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16が直接接している。第一光学フィルタ15aは、第一光学フィルタ15と同様の機能を有する光学フィルタであるが、第二光学フィルタ16の主面に第一光学フィルタ15aの元となる透光性材料が塗布されることによって形成される点が第一光学フィルタ15と異なる。第一光学フィルタ15aの元となる透光性材料は、例えば、スピンコート法によって塗布されるが、ディスペンサ法またはインクジェット法によって塗布されてもよい。
【0053】
この結果、第一光学フィルタ15aの厚みは、第二光学フィルタ16の厚みよりも薄くなる。波長制御素子20bにおいては、第一光学フィルタ15aの厚みは、例えば、50μm程度であり、第二光学フィルタ16の厚みは、例えば、0.5mm以上2.0mm以下である。つまり、第一光学フィルタ15aの厚みは、第二光学フィルタ16の厚みの5分の1以下である。
【0054】
なお、第一光学フィルタ15に、第二光学フィルタの元となる透光性材料が塗布されてもよい。この場合、塗布によって形成された第二光学フィルタの厚みは、第一光学フィルタ15の厚みよりも薄くなる。このように、第一光学フィルタ及び第二光学フィルタの一方が、当該光学フィルタの元となる透光性材料の塗布によって形成される場合、第一光学フィルタ及び第二光学フィルタの一方の厚みは、第一光学フィルタ及び第二光学フィルタの他方の厚みよりも薄くなる。
【0055】
ところで、光学フィルタは、基材の厚みが分厚いほど長寿命となる傾向を有する。上述のように、第二光学フィルタ16は、第一光学フィルタ15よりも寿命が比較的短い。そこで、波長制御素子20bのように、第一光学フィルタ15aの厚みが第二光学フィルタ16の厚みよりも薄い構成によれば、波長制御素子20bの長寿命化を図ることができる。
【0056】
なお、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16の両方が塗布によって形成されてもよい。
図14は、このような実施の形態3に係る波長制御素子の第三例の模式断面図である。
図15は、実施の形態3に係る波長制御素子の第四例の模式断面図である。
【0057】
図14に示される波長制御素子20cにおいては、透光性を有する基板40の主面41上に第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aが積層されている。具体的には、基板40の主面41上に第二光学フィルタ16aが形成され、第二光学フィルタ16a上に第一光学フィルタ15aが形成されている。第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aは、直接接している。なお、基板40の主面41上に第一光学フィルタ15aが形成され、第一光学フィルタ15a上に第二光学フィルタ16aが形成されてもよい。
【0058】
第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aは、いずれも塗布によって形成される。このため、第一光学フィルタ15aの厚み、及び、第二光学フィルタ16aの厚みは、基板40の厚みよりも薄い。基板40は、例えば、アクリル樹脂などの透光性を有する樹脂材料によって形成されるが、ポリカーボネート樹脂などのその他の樹脂材料によって形成されてもよい。
【0059】
また、
図15に示される波長制御素子20dにおいては、透光性を有する基板40の一方の主面41に第一光学フィルタ15aが設けられ、基板40の他方の主面42に第二光学フィルタ16aが設けられる。つまり、波長制御素子20dにおいては、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aの間に基板40が介在する。一方の主面41及び他方の主面42は、互いに背向する主面である。
【0060】
第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aは、いずれも塗布によって形成される。このため、第一光学フィルタ15aの厚み、及び、第二光学フィルタ16aの厚みは、基板40の厚みよりも薄い。
【0061】
以上説明したように、波長制御素子20c及び波長制御素子20dにおいては、透光性材料の塗布によって第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aを形成することができる。
【0062】
なお、以上説明した実施の形態3に係る波長制御素子は、光源12が発する光が第二フィルタよりも先に第一光学フィルタに入射するように配置されてもよいし、光源12が発する光が第一光学フィルタよりも先に第二光学フィルタに入射するように配置されてもよい。
【0063】
また、実施の形態3に係る波長制御素子は、基板40に代えてレンズ14の表面に第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aが設けられることによって実現されてもよい。言い換えれば、基板40は、光を集光または拡散するような光学特性を有してもよい。
【0064】
(まとめ)
以上説明したように、照明器具10は、光源12と、第一波長域の光を吸収することにより発光する発光材料を含む第一光学フィルタ15と、第二波長域の光を吸収する吸収材料を含む第二光学フィルタ16とを備える。第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16の一方は、第一光学フィルタ15及び第二光学フィルタ16の他方と光源12との間に位置する。
【0065】
これにより、設計者は、第二光学フィルタ16に含まれる吸収材料の種類及び量、並びに、第一光学フィルタ15に含まれる発光材料の種類及び量を調整することにより、出射光のスペクトルを設計目標に追い込むことができる。つまり、出射光のスペクトルを設計目標に近づけることが容易な照明器具10が実現される。
【0066】
また、例えば、第一光学フィルタ15は、第二光学フィルタ16と光源12との間に位置する。
【0067】
これにより、上記実施の形態1で説明されたように、第二波長域の少なくとも一部が第一波長域に含まれる場合などには、第一光学フィルタ15の発光量を確保することができる。つまり、光源12が発する光の利用効率を向上することができる。
【0068】
また、例えば、第二波長域の少なくとも一部は、第一波長域に含まれる。
【0069】
これにより、第一光学フィルタ15の発光量を確保することができる。つまり、光源12が発する光の利用効率を向上することができる。
【0070】
また、照明器具10aにおいては、第二光学フィルタ16は、第一光学フィルタ15と光源12との間に位置する。
【0071】
これにより、上記実施の形態2で説明されたように、長時間の使用後も出射光の色度の変化が小さい照明器具10aが実現される。
【0072】
また、例えば、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16は、隙間を空けて配置される。
【0073】
これにより、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16を個別に交換することが容易となる。
【0074】
また、波長制御素子20aでは、例えば、第一光学フィルタ15、及び、第二光学フィルタ16は、接着部材30により接着される。
【0075】
これにより、接着部材30に、第一光学フィルタ15の基材、及び、第二光学フィルタ16の基材と屈折率が近い材料が用いられれば、第一光学フィルタ及び第二光学フィルタが隙間をあけて配置されるような場合に比べて、界面における反射による光のロスを減らすことができる。したがって、光源12が発する光の利用効率を向上することができる。
【0076】
また、波長制御素子20bでは、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16は、直接接触している。波長制御素子20cも同様である。
【0077】
これにより、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16が隙間をあけて配置されるような場合に比べて、界面を減らすことができる。そうすると、界面における反射による光のロスが抑制されるため、光源12が発する光の利用効率を向上することができる。
【0078】
また、波長制御素子20bでは、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16の一方(具体的には、第一光学フィルタ15a)の厚みは、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16の他方(具体的には、第二光学フィルタ16)の厚みよりも薄い。
【0079】
これにより、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16の他方に透光性材料を塗布することにより、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16の一方を形成することができる。
【0080】
また、照明器具10または照明器具10aは、さらに、透光性を有する基板40を備えてもよい。例えば、波長制御素子20cにおいては、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aは、基板40の主面41上に積層される。
【0081】
これにより、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aの両方を、透光性材料の塗布により形成することができる。
【0082】
また、照明器具10または照明器具10aは、さらに、透光性を有する基板40を備えてもよい。例えば、波長制御素子20dにおいては、第一光学フィルタ15aは、基板40の一方の主面41上に設けられ、第二光学フィルタ16aは、基板40の他方の主面42上に設けられる。
【0083】
これにより、第一光学フィルタ15a及び第二光学フィルタ16aの両方を、透光性材料を基板40に塗布することにより形成することができる。
【0084】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、このような実施の形態に限定されるものではない。
【0085】
例えば、上記実施の形態では、照明器具は、第一光学フィルタ及び第二光学フィルタを1つずつ備えたが、第一光学フィルタ及び第二光学フィルタを少なくとも1つずつ備えればよい。つまり、照明器具は、複数の第一光学フィルタを備えてもよい。また、照明器具は、複数の第二光学フィルタを備えてもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、照明器具は、スポットライトであるとして説明された。しかしながら、本発明は、第一光学フィルタ及び第二光学フィルタを備える他の照明器具として実現されてもよい。例えば、本発明は、ダウンライトとして実現されてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態で説明された照明器具の光学系は一例である。本発明の特徴的な機能を実現できる他の光学系を有する照明器具も本発明に含まれる。例えば、上記実施の形態で説明された光学系と同様の機能を実現できる範囲で、当該光学系に別の光学素子が追加されてもよいし、当該光学系に含まれる一部の光学素子が省略されてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、光源は、COB型の発光モジュールであったが、光源は、SMD(Surface Mount Device)型の発光モジュールであってもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、光源には、発光素子としてLEDチップが用いられたが、半導体レーザ等の半導体発光素子、有機EL(Electro Luminescence)または無機EL等の固体発光素子が用いられてもよい。
【0090】
以上、一つまたは複数の態様に係る照明器具について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。例えば、本発明は、上記実施の形態で説明された波長制御素子の製造方法として実現されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10、10a 照明器具
12 光源
15、15a 第一光学フィルタ
16、16a 第二光学フィルタ
20a、20b、20c、20d 波長制御素子
30 接着部材
40 基板
41、42 主面