(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】食用組成物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/11 20160101AFI20230529BHJP
A21D 2/14 20060101ALN20230529BHJP
A21D 2/36 20060101ALN20230529BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20230529BHJP
【FI】
A23L33/11
A21D2/14
A21D2/36
A21D13/80
(21)【出願番号】P 2019024699
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2019-02-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-03
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】519051920
【氏名又は名称】台湾中油股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CPC Corporation,Taiwan
【住所又は居所原語表記】No.2,Zuonan Rd.,Nanzi Dist.,Kaohsiung City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 瑞恵
(72)【発明者】
【氏名】田 ▲ふぇ▼萍
(72)【発明者】
【氏名】高 艾玲
(72)【発明者】
【氏名】蔡 承佳
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】加藤 友也
【審判官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-291187(JP,A)
【文献】特開2007-124917(JP,A)
【文献】特開2011-115147(JP,A)
【文献】特開2018-148866(JP,A)
【文献】特開2013-236549(JP,A)
【文献】特開2002-253118(JP,A)
【文献】特開平6-90654(JP,A)
【文献】特公昭45-9221(JP,B1)
【文献】特開2010-136711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L33/10
A21D2/14
A21D2/36
A21D13/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠油及び食用粉末を含む食用組成物であって、
前記米糠油は
、紫外線測定器(UV-detector)を使用する測定又は液体クロマトグラフ/質量分析計(LC-tandem mass spectrometry、LC-MS/MS)を使用する測定で、濃度2,500ppm以上のオリザノールを有し、且つ前記食用組成物の総重量における前記米糠油の含有量は4wt%乃至23wt%の範囲であり、前記食用粉末は少なくともエステラーゼの活性が除去された米糠粉とコーンスターチを含み、且つ前記食用組成物の総重量における前記食用粉末の含有量は30wt%乃至70wt%の範囲であり、前記食用組成物の総重量における前記米糠粉の含有量は12.5wt%乃至25wt%の範囲であり、前記食用組成物の総重量における前記コーンスターチの含有量は8wt%乃至12wt%の範囲であることで、当該食用組成物は、
紫外線測定器(UV-detector)を使用する測定で1gあたり1.32mg乃至2.27mg又は液体クロマトグラフ/質量分析計(LC-tandem mass spectrometry、LC-MS/MS)を使用する測定で1gあたり1.21mg乃至2.03mgのオリザノールを含むことを特徴とする、食用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用組成物(Edible composition)に関し、より詳しくは、オリザノール及び食物繊維を豊富に含む食用組成物、並びにオリザノール及び食物繊維を豊富に含む食用組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米糠粉は玄米を白米に精米する加工過程において生じる副産物であり、ビタミン、ミネラル、食物繊維等の栄養素を豊富に含み、米の栄養エッセンスが集まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、人々は白米の食感を追及するあまり玄米の米糠層を除去し(細かく粉砕された米糠層は米糠粉となる)、栄養価の面では勿体ないことをしていた。具体的には、米糠粉は主に12%乃至16%のタンパク質、16%乃至22%の脂質、20%乃至25%の食物繊維、多くの微量ミネラル、及びビタミンE、オリザノール、フィトステロール等の植物栄養素を含んでいる。焼いた米糠粉は食用や食品添加物となるが、米糠粉は粗くて食感が悪く、人々が好んで食用にすることはなかった。このため、5乃至10重量パーセント(wt%)の米糠粉をパンやクッキーに添加することで飲食物に含まれる食物繊維を増やす等のために用いられることが多かった。
【0004】
また、米糠粉には脂質が豊富に含まれ、米糠粉から抽出される米糠の粗製油と他の植物油との最大の違いは、米糠の粗製油には特殊な天然植物成分が豊富に含まれる点である。オリザノールについて言えば、米糠粗製油の総重量におけるオリザノールの含有量は約1.5wt%乃至2.6wt%である。オリザノールはフィトステロールとフェルラ酸がエステル化された混合物であり、その種類は約10種類以上ある。その中でも、フェルラ酸シクロアルテニル(cycloartenyl ferulate)、24-メチレンシクロアルタノールフェルラ酸エステル(24-methylenecycloartanyl ferulate)、及びカンペステリルフェルラート(campesteryl ferulate)がオリザノールの約8割以上を占める。オリザノールは抗酸化、血中コレステロールの低下、ホルモンバランスの調節、女性の更年期障害の軽減、皮膚状態の改善、胃潰瘍の抑制、神経の保護等の効果を有し、日本では、オリザノールが薬物として不安障害及び更年期障害の治療に用いられている。なお、近年、オリザノールは血液中の脂質及びコレステロールの調節にも利用されている。一般的には、治療効果を目的とするオリザノールの推奨摂取量は1日当たり約300mg乃至500mgであり、一般的なメーカーの保健食品において推奨されるオリザノールの1日当たりの摂取量は約50mg乃至60mgである。
【0005】
市場に出回っている食品には米糠粉が添加されているものもあるが、添加される含有量は多くなく、食品の総重量において米糠粉は通常5wt%乃至10wt%しか含まれていない。米糠粉の本質は小麦粉やコーンスターチ等の穀物粉とは異なる。小麦粉やコーンスターチは水と混合した後に糊化を経て粘性を有し、生地が成型され、クッキー等の菓子として調製されるが、米糠粉は食物繊維で組成され、水と混合した後でも粘性を有さず、質感は粗く、生地がばらけ易くなって、成型しにくくなり、米糠粉の含有量が多いクッキー等の菓子として調製することができなかった。また、米糠粉が添加される食品は、主に食物繊維が求められており、脂質は求められていない。このため、人々はこれらの食品から多量のオリザノールを獲得することはできない。
従来技術において、1日当たりの推奨摂取量のオリザノールを食事により摂取する場合(1日当たり50mg)、最も直接的な方法はオリザノールカプセルを服用することである。しかしながら、市場には様々な保健食品が溢れており、例えば、各栄養物質を全てカプセルや錠剤で摂取するのであれば飲食の楽しみがなくなり、また、カプセルや錠剤では摂取する意欲も湧かない。なお、米糠油を、オリザノールを多量に含むクッキー等の菓子として調製するには、大量の米糠油を小麦粉やコーンスターチと混合しなければならず、混合した生地が成型不可能になり、或いは、焼いた後に油分が多すぎて脂質が溢れ出す問題が発生する。
【0006】
このため、単調な保健食品に比べて、オリザノール及び食物繊維を豊富に含む菓子を開発して人々が摂取しやすくすることは、本分野で解決が待たれる課題の1つであった。
【0007】
本発明は、以上の従来技術の課題を解決する為になされたものである。即ち、本発明の目的は、食用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の食用組成物は、米糠油及び食用粉末を含み、前記米糠油は濃度2,500ppm以上のオリザノールを有し、且つ食用組成物の総重量における米糠油の含有量は4wt%乃至23wt%の範囲である。前記食用粉末は米糠粉を含み、且つ食用組成物の総重量における食用粉末の含有量は30wt%乃至70wt%の範囲である。
【0009】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記食用組成物の総重量において、前記食用粉末は12.5wt%乃至25wt%の米糠粉を有する。
【0010】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記食用粉末は、小麦粉、コーンスターチ、白米が粉砕された米粉、またはそれらの組み合わせを更に含む。
【0011】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記食用組成物の総重量において、前記食用粉末は8wt%乃至12wt%のコーンスターチを含む。
【0012】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記食用組成物は、ラード、牛脂、ココナッツオイル、パームオイル、ピーナッツオイル、コーン油、大豆油、オリーブオイル、椿油(Camellia Oil)、ひまわり油、綿実油、紅花油、バター、糖、牛乳、脱脂粉乳、塩、膨張剤、卵、またはそれらの組み合わせを更に含み、且つ前記食用組成物の総重量におけるラード、牛脂、ココナッツオイル、パームオイル、ピーナッツオイル、コーン油、大豆油、オリーブオイル、椿油、ひまわり油、綿実油、紅花油、またはバターが占める割合は1wt%乃至20wt%の範囲である。糖が占める割合は1wt%乃至20wt%の範囲であり、塩が占める割合は0.1wt%乃至5wt%の範囲であり、膨張剤が占める割合は0.1wt%乃至5wt%の範囲である。好ましくは、限定されないが、前記膨張剤は、ベーキングソーダ、ベーキングパウダー、ドライイースト、またはそれらの組み合わせを含む。好ましくは、前記膨張剤はベーキングソーダである。
【0013】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記食用組成物は焙煎製品や麺類である。好ましくは、前記焙煎製品はクッキーやパンである。
【0014】
本発明の具体的な実施形態によれば、1gあたりの焙煎製品または麺類に含まれるオリザノールは0.1mg乃至3mgの範囲である。
【0015】
また、本発明は、下記の工程を含む前記食用組成物の調製方法を更に提供する。
(1)前記食用組成物の総重量における4wt%乃至23wt%の米糠油及び30wt%乃至70wt%の食用粉末が撹拌混合されて米糠生地となり、前記米糠油は濃度2,500ppm以上のオリザノールを有し、且つ前記食用粉末は米糠粉、小麦粉、コーンスターチ、白米が粉砕された米粉、またはそれらの組み合わせを含む。
(2)前記米糠生地が圧縮成型され、120℃乃至180℃に予熱されたオーブン中で15分間乃至30分間焼く。
【0016】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記工程は下記の工程を更に含む。
工程(1)の前に、マイクロ波、焙炒、焙煎、または蒸す等の米糠粉の加熱処理を行う。
【0017】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記工程は下記の工程を更に含む。
米糠粉を蒸した後に米糠粉の乾燥を行う。
【発明の効果】
【0018】
本発明の食用組成物の調製方法は、米糠から抽出される米糠油を米糠粉に添加し、手作りか機械による大量生産かによらず、食用組成物を成型可能にし、且つ特定の比率の米糠粉により製造された食用組成物の油吸収効果を高め、食用組成物中に含まれる脂質を安定化させて滲み出ないようにする。また、本発明の具体的な実施形態に示されるように、米糠から抽出される米糠油を加熱処理された米糠粉に添加し、食用組成物中に含まれる脂質を更に安定させ、食用組成物の保存期限を更に延長させる。なお、本発明に係る食用組成物はオリザノール及び食物繊維を豊富に含み、食べたときの味覚を高めると同時に、十分な量のオリザノール及び食物繊維を補充させる。これにより、本発明は、従来技術では、菓子中のオリザノール含有量を増やすため、大量の米糠油を使用して小麦粉と混合させなければならず、混合される生地が成型不可能になり、脂質が容易に溢れ出る、という問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】紫外線測定法により測定したオリザノール標準品の検量線を図示する。
【
図2】紫外線測定法及びLC-MS/MS測定法により測定した異なる市販メーカーの米糠油中に含まれるオリザノール濃度のヒストグラムを示す。
【
図3A】本発明により手作りされた食物組成物を図示する。
【
図3B】本発明により機械生産された食物組成物を図示する。
【
図4】本発明により手作りまたは機械生産された食物組成物には全てオリザノールが豊富に含まれることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
<調製例1>米糠粉の調製
外殻を取り除いた玄米の精米後に得られた米糠粉には脂質及び活性酵素が豊富に含まれ、即時処理しなければ米糠粉中の酵素(例えば、リパーゼやエステラーゼ)が脂質を分解してしまい、米糠粉が酸敗化し、油の味が落ちてしまう。このため、米糠粉中の活性酵素を除去して米糠粉の安定性を高める。
一般的には、活性酵素の除去方法には、高温加熱法及び低温冷凍法がある。高温加熱法では高温によりタンパク質を変性させる。低温冷凍法では冷凍することで生じる氷の結晶がタンパク質構造を破壊し、米糠粉中の酵素の活性を失わせる。
【0022】
精米後に得られる米糠粉は3種類の方法でそれぞれ処理される。
(1)マイクロ波により2回30秒加熱される(乾熱処理法)。
(2)電気釜で蒸される(外鍋に70mlの水を入れる)(湿性温熱処理法)。
(3)-30℃で一晩冷凍される(冷凍処理)。処理後の米糠粉はn-ヘキサンにより脂質を抽出し、空気乾燥して脱脂米糠粉(defatted rice bran)として生成した後、5gの脱脂米糠粉を各々取り出し、リン酸三カルシウムを含む30mlの緩衝液(50mM、pH7.0のリン酸緩衝液中に0.5mMのCaCl2が含まれる)により酵素を抽出する。異なる分子量の基質(substrate)を利用し、例えば、小さな分子の酪酸p-ニトロフェニル(p-nitrophenyl-butyrate、p-NPB)及び大きな分子のパルミチン酸p-ニトロフェニル(p-nitrophenyl-palmitate、p-NPP)を利用し、エステラーゼ(esterase)またはリパーゼ(lipase)の活性をそれぞれ測定する。p-NPB及びp-NPPの基質は酵素の作用によりp-ニトロフェノール(p-nitrophenol)を放出させると共に410nmの波長の光線を吸収する。これにより、OD410の読み取り値を検量線(酵素の標準品)により換算し、糠粉中の酵素の活性を算出する。その結果を下記表1に示すが、対照群と比較すると、低温冷凍法(冷凍処理)は米糠粉中のエステラーゼ/リパーゼの活性を失わせることができない。しかしながら、高温加熱法では、特に水蒸気を含む湿性温熱処理法では、米糠粉中の活性酵素の除去効果が最も優れており、乾熱処理法は米糠粉中の約70%のエステラーゼの活性及び約60%のリパーゼの活性を抑制できる。
【0023】
上述の湿性温熱処理法は効果が最も優れているが、大量の体積の米糠粉を処理する場合、湿性温熱処理法では水、電気、及び設備の消費コストが高く、危険性も高い。また、湿性温熱処理後には米糠粉中の水分が増加するため、別途熱乾燥工程を実施して米糠粉中の水分を除去し、微生物の繁殖を防ぎ、長時間保存を可能にする必要がある。このため、大量の米糠粉を安定化させるには、例えば、マイクロ波、焙炒、或いは高温乾燥等の乾熱処理法が最良の選択であると言える。
【0024】
なお、上述の加熱処理を経て活性酵素が除去された米糠粉は、米糠粉の安定性が高まり、保存期限が延長する以外に、加熱後の米糠粉はピーナッツやくるみ等に似た天然の香りを有するため、製造される食品の風味も増す。高温加熱法(乾熱処理及び湿性温熱処理)及び低温冷凍法(冷凍処理)による米糠粉中のエステラーゼ及びリパーゼの活性の除去効果を表1に示す。
【0025】
【0026】
<実施例1>市販の米糠油中に含まれるオリザノール濃度の測定
米糠粗製油中には約1.5%乃至2.6%のオリザノールが含まれるが、米糠粗製油の精製過程において往々にしてオリザノールが失われることがある。例えば、脱ガム及び脱蝋過程において、それぞれ約1.1%及び5.9%のオリザノールが失われる。化学精製を採用する場合、オリザノールは90%近く失われる。このため、精製後の全ての食用米糠油が多量のオリザノールを含有しているとは限らない。よって、まず、本発明では紫外線測定器(UV-detector)または液体クロマトグラフ/質量分析計(LC-tandem mass spectrometry、LC-MS/MS)を使用して市販の米糠油中のオリザノールの含有量を測定する。
【0027】
<1.紫外線測定法>
図1に示すように、異なる濃度のオリザノール標準品(1.5625ppm乃至50ppm)をn-ヘプタン溶剤中にそれぞれ溶解し、OD315の光吸収値を測定し、オリザノールの検量線を作成し、線形回帰係数R2=0.9997を得た。
【0028】
異なる市販メーカーの米糠油をn-ヘプタン中に溶解し、約1,000倍に希釈し、OD315の光吸収値を0.17以上とし、OD315の光吸収値及びオリザノールの検量線に基づいて異なる市販メーカーの米糠油中に含まれるオリザノール濃度を算出する。その結果を
図2に示す。紫外線測定法により測定した市販の米糠油中に含まれるオリザノール濃度の差は極めて大きく、2084ppm乃至12101ppmの範囲となった。
【0029】
<2.LC-MS/MS測定法>
本試験で使用したモデルはABsciex 4000 QtrapRタンデム型質量分析計であり、異なる市販メーカーの米糠油をn-ヘプタン中に溶解し、エタノールで1万乃至10万倍に希釈し、クロマトグラフィーカラム(Agilent Poroshell 120 EC-C18, 4.6*50 mm, 2.7μm)中に10μl注入し、100%のメタノールを移動相とし、クロマトグラフィーカラムの温度を40℃とし、流速を1ml/分とする等の条件で液体クロマトグラフィーを行う。参照文献(Fang N., et al. Characterization of triterpene alcohol and sterol ferulates in rice bran using LC-MS/MS. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2003. 51 (11): p. 3260-3267)に記載されるオリザノールの親イオン及び娘イオンの質量電荷比(m/z)に基づき、構成される主要な3種類 (cycloartenol ferulate、24-methylenecycloartanol ferulate及びcampesterol ferulate)及び副次的な5種類(sitosterol ferulate、cycloartanol ferulate、24-methylenecholesterol ferulate、campestanol ferulate及びstigmastanol ferulate)のオリザノールのイオン対により測定を待つサンプル中のオリザノールのイオン対の組成及び比率を測定し、異なる市販メーカーの米糠油中に含まれるオリザノール濃度を算出する。
【0030】
図2に結果を示すように、LC-MS/MS測定法により測定した市販の米糠油中に含まれるオリザノールの濃度は1162ppm乃至9899ppmの範囲であり、紫外線測定法により測定した結果よりやや低いが、その原因は、LC-MS/MS測定法のオリザノールの質量分析設定が全体的に行われていない、或いは希釈倍率が大きく、大きな誤差が生じたこと等が考えられる。紫外線測定法及びLC-MS/MS測定法により獲得されたオリザノール濃度の数値はある程度差があるが、異なる市販メーカーの米糠油中に含まれるオリザノール濃度の傾向は一致している。一般的には、LC-MS/MS測定法のコストが高く、一般大衆が使用するのは難しいが、紫外線測定法の実効性を証明することはできる。
【0031】
<実施例2>手作り/または機械によるオリザノール及び食物繊維を豊富に含むクッキーの調製
<1.手作りによるオリザノール及び食物繊維を豊富に含むクッキーの調製>
食品組成物の40gの小麦粉及び22.5gのコーンスターチをそれぞれ篩にかけた後、25gの砂糖、1.5gの塩、2gのベーキングソーダ、及び25gのバターを加え、均一に混合した後に粉状に練り、30gの牛乳及び20gの市販のT社またはA社の米糠油を添加し、十分に撹拌する。最後に篩にかけ、焙炒されて安定化した40gの米糠粉を加え、米糠生地となるまで撹拌混合し、食品組成物の総重量における米糠油及び米糠粉が占める比率をそれぞれ9.5wt%及び19.1wt%とする。手作りの約14.5gの米糠生地を取り出し、圧縮成型して厚さ約0.5cm乃至0.7cmのクッキーを作製し、米糠生地を予熱されたオーブン(上層の温度を170℃、下層の温度を120℃で10分間予熱)に入れ、20分間焼き、冷却後にオリザノール及び食物繊維を豊富に含むクッキーが完成する。
<2.機械によるオリザノール及び食物繊維を豊富に含むクッキーの調製>
材料の方法は手作りによるオリザノール及び食物繊維を豊富に含むクッキーの調製と同様とし、違いは市販のT社の米糠油を使用し、食品組成物の総重量における米糠油及び米糠粉が占める比率がそれぞれ4.2wt%及び17.0wt%である点のみである。
【0032】
図3A及び
図3Bに結果を示すように、本発明の手作り(
図3A)/或いは機械(
図3B)によるオリザノール及び食物繊維を豊富に含むクッキーの調製では、共に成型可能であることが実証される。
【0033】
<実施例3>クッキー中に含まれるオリザノール濃度の測定
0.5gのクッキーを量り取り、粉砕後に5mlのn-ヘプタンにより脂質を抽出し、室温で200rpmで1時間振動させて遠心分離し、上澄み液をすくい取る。n-ヘプタンにより上澄み液を10倍に希釈し、OD315の読み取り値を0.17以上とし、測定の信頼性を高める。測定したOD315の読み取り値を検量線により換算した後、クッキー中に含まれるオリザノール濃度が得られる。また、本実施例では別途LC-MS/MS測定法を用いて紫外線測定法により測定したオリザノール濃度を測定し、上述の上澄み液にエタノールを用いて1,000倍に希釈し、LC-MS/MSを使用してオリザノール濃度の測定を行う。
【0034】
図4及び表2に結果を示すように、実施例2で製造されたクッキーは1gあたり約1.21mg乃至2.27mgのオリザノールを含んでいる。1箱約360gのクッキーの場合、約435mg乃至817mgのオリザノールが含まれることになる。よって、毎日50mgのオリザノールの推奨量を食する場合、22g乃至42gのクッキーを食すればよい計算となる。従来の市場に出回る個別包装の箱入りクッキーは、1袋あたりの重量が約20g乃至35gであるため、本発明の概念に基づいて調製された個別包装のクッキーならば、毎日約2袋のクッキーを摂取するのみで1日あたりの推奨量50mgのオリザノールを摂取可能になる。実施例2で製造されたクッキー中に含まれるオリザノールの含有量を表2に示す。
【0035】
【0036】
しかしながら、クッキーを嗜む消費者ならば、1日360g以上のクッキーを食べることは十分可能である。例えば、500gのクッキーを食べれば50mgのオリザノールを摂取することができる。クッキー1gあたり必要なオリザノール濃度は0.1mgにすぎず、必ずしも実施例に示すようなクッキー1gに1.21mgという高濃度のオリザノールが含まれる必要はない。前述のオリザノール濃度の低いクッキーの作製は、米糠油の添加量を減らすかオリザノール濃度の低い米糠油を選択することで達成でき、食品組成物の原料コストを減らせるのみならず、製造される完成品の販売価格も相対的に下げることができ、消費者の負担も減らせる。
【0037】
本発明の食用組成物中に含まれるオリザノール含有量は米糠油中のオリザノールの濃度により決定され、オリザノール濃度が高い米糠油で調製すれば、完成品中のオリザノール含有量も必然的に高くなる。コストを考慮し、米糠油の添加量を減らすこともできる。また、純米糠には約24wt%の食物繊維が含まれ、100gの食品組成物の総重量において米糠が12.5wt%の比率で食品組成物に添加される場合、前記食品組成物は3gの食物繊維を含む。これは食品の栄養標準の「鉄分含有」という基準を満たす。米糠が25wt%の比率で食品組成物に添加される場合、前記食品組成物は食品の栄養標準の「高食物繊維」という基準を満たす。
【0038】
以上を総合すると、本発明の食用組成物は、手作りか機械による大量生産かによらず成型可能であり、且つオリザノール及び食物繊維を豊富に含む。また、実施例3に示すように、39g以下のクッキーを摂取しても、少なくとも50mgのオリザノールを摂取可能であり、オリザノールの1日あたりの推奨量を満たす。よって、カプセルや錠剤型の保健食品と比較し、本発明はおやつとしての食用組成物を提供し、食用者が味覚を楽しめると同時に、オリザノール及び食物繊維等の天然植物栄養素を十分補充可能になる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。