(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】打ち込み装置
(51)【国際特許分類】
B25B 21/00 20060101AFI20230529BHJP
B25C 7/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
B25B21/00 530Z
B25C7/00 Z
(21)【出願番号】P 2019044414
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】武藤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中西 英治
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205238000(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第105081403(CN,A)
【文献】特開2000-094366(JP,A)
【文献】特開平09-141571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00
B25C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁に止め具を打ち込む打ち込み部と、
前記打ち込み部を昇降させる昇降部と、
前記昇降部を駆動させる駆動部と、
を具備し、
前記昇降部は、
前記駆動部からの動力によって伸縮することで前記打ち込み部を昇降させるものであり、
前記昇降部は、
前記駆動部からの動力で駆動しない非可動部と、
前記駆動部からの動力で駆動して前記非可動部に対して移動可能に構成されると共に、前記打ち込み部が取り付けられる可動部と、
を具備し、
前記打ち込み装置は、
前記可動部に取り付けられ、伸縮可能に構成される把持部をさらに具備し、
前記駆動部は、
操作部への操作に基づいて空気圧によって前記昇降部を駆動させるエアーコンプレッサを具備し、
前記把持部を把持した作業者が前記操作部を操作する場合、
前記昇降部の駆動による前記可動部の上昇に応じて、前記把持部が伸張するように構成される、
打ち込み装置。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記昇降部の伸縮量を調整する調整部を具備する、
請求項1に記載の打ち込み装置。
【請求項3】
前記把持部は、
前記昇降部に対して上下に揺動可能に構成される、
請求項1又は請求項2に記載の打ち込み装置。
【請求項4】
前記打ち込み部は、
前記止め具を回転させて前記壁に前記止め具を打ち込むように構成される、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の打ち込み装置。
【請求項5】
前記打ち込み部は、
前記止め具を保持する先端部を前記壁に押し付けることで前記止め具の回転を開始する、
請求項4に記載の打ち込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁に止め具を打ち込む打ち込み部を具備する打ち込み装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁に止め具を打ち込む打ち込み部を具備する打ち込み装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載される連続ビス打ち機(打ち込み装置)は、内壁ボード(壁)にビス(止め具)をねじ込むドライバユニット部と、ドライバユニット部へビスを送り込むビス送り部と、により構成された打ち込み部を具備する。前記連続ビス打ち機は、ビス送り部によりドライバユニット部へビスを1つずつ送り込むことで、ビスを連続して打ち込むことができる。
【0004】
しかし、特許文献1に記載される連続ビス打ち機を用いて内壁ボードの高いところ(例えば、手の届かないところ)にビスを打ち込む場合、作業者は脚立等に昇る必要がある。このように、連続ビス打ち機を用いて内壁ボードにビスを打ち込む場合には、脚立を用いる必要がある(脚立の昇り降りが必要になる)ため、ビスを打ち込む作業を効率的に行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、壁に止め具を打ち込む作業を効率的に行うことが可能な打ち込み装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の壁に止め具を打ち込む打ち込み部と、前記打ち込み部を昇降させる昇降部と、前記昇降部を駆動させる駆動部と、を具備し、前記昇降部は、前記駆動部からの動力によって伸縮することで前記打ち込み部を昇降させるものであり、前記昇降部は、前記駆動部からの動力で駆動しない非可動部と、前記駆動部からの動力で駆動して前記非可動部に対して移動可能に構成されると共に、前記打ち込み部が取り付けられる可動部と、を具備し、前記打ち込み装置は、前記可動部に取り付けられ、伸縮可能に構成される把持部をさらに具備し、前記駆動部は、操作部への操作に基づいて空気圧によって前記昇降部を駆動させるエアーコンプレッサを具備し、前記把持部を把持した作業者が前記操作部を操作する場合、前記昇降部の駆動による前記可動部の上昇に応じて、前記把持部が伸張するように構成されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記駆動部は、前記昇降部の伸縮量を調整する調整部を具備するものである。
【0011】
請求項3においては、前記把持部は、前記昇降部に対して上下に揺動可能に構成されるものである。
【0013】
請求項4においては、前記打ち込み部は、前記止め具を回転させて前記壁に前記止め具を打ち込むように構成されるものである。
【0014】
請求項5においては、前記打ち込み部は、前記止め具を保持する先端部を前記壁に押し付けることで前記止め具の回転を開始するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1においては、壁に止め具を打ち込む作業を効率的に行うことができる。
【0017】
請求項2においては、壁に止め具を打ち込む作業をより効率的に行うことができる。
【0019】
請求項3においては、止め具を打ち込む作業の作業性を向上させることができる。
【0021】
請求項4においては、止め具を安定して打ち込むことができる。
【0022】
請求項5においては、止め具を打ち込む作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】打ち込み装置の全体的な構成を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0025】
以下では、本実施形態に係る打ち込み装置1について説明する。
【0026】
図1に示す打ち込み装置1は、建物の壁に止め具を打ち込むためのものである。なお、本実施形態において、止め具には、外周に雄ネジ部が形成されたもの(例えば、ビスA及びボルト等)と、外周に雄ネジ部が形成されていないもの(例えば、釘等)と、が含まれる。本実施形態に係る打ち込み装置1は、このような止め具として、ビスAを打ち込むためのものである。
【0027】
まず、建物の構造について簡単に説明する。
建物には、床Bが設けられ、当該床Bの縁部から上方へ立ち上がるように内壁Cが設けられる。内壁Cは、ボードC1及び下地C2(
図4参照)を具備する。ボードC1は、枠状に形成された下地C2に対して建物の内側から当接される。ボードC1は、外縁部に所定のピッチを空けてビスAが打ち込まれることで、下地C2に固定される。本実施形態に係る打ち込み装置1は、このようなボードC1にビスAを打ち込む作業に用いられる。
【0028】
以下では、
図1から
図3までを参照して打ち込み装置1の構成について説明する。なお、以下では、
図1及び
図3に示す、昇降部30が最も下降した状態、かつ、打ち込み部80が前を向いた状態を基準に打ち込み装置1の構成について説明する。
【0029】
打ち込み装置1は、高さを調整しながらビスAを打ち込み可能に構成される。本実施形態に係る打ち込み装置1は、内壁CのボードC1の高いところ(例えば、作業者が手を伸ばしても届かないようなところ)にビスAを打ち込む用途に用いられる。打ち込み装置1は、台車部10、支持部20、昇降部30、駆動部40、把持部70及び打ち込み部80を具備する。
【0030】
図1に示す台車部10は、平板状の部材の下面に複数の車輪(不図示)を固定することによって構成される。当該台車部10は、床Bを水平方向に移動することができる。
【0031】
支持部20は、後述する昇降部30を支持するためのものである。支持部20は、台車部10に載置され、当該台車部10の移動に伴って一体的に移動可能に構成される。支持部20は、中心軸21、脚部22、上側接続部23及び下側接続部24を具備する。
【0032】
図1及び
図2に示す中心軸21は、支持部20の中心に配置される軸状の部材である。中心軸21の上端及び下端は、他の部分よりも大径に形成される。中心軸21は、その軸線方向を上下方向に向けて配置されると共に、略筒状に形成される。
【0033】
脚部22は、台車部10と接する軸状の部材である。脚部22は、中心軸21の周方向に間隔を空けて3つ設けられ、中心軸21の上端から下方へ向けて放射状に広がるように形成される。脚部22は、上端部を中心に回動可能、かつ、軸線方向に伸縮可能に構成される。なお、
図2及び後述する
図5では、説明の便宜上、脚部22の記載を省略している。
【0034】
上側接続部23は、中心軸21と後述する昇降部30とを接続する部分である。上側接続部23は、中心軸21に上方から取り付けられる。
【0035】
下側接続部24は、中心軸21と後述する調整部60とを接続する部分である。下側接続部24は、中心軸21に下方から取り付けられる。
【0036】
図1及び
図3に示す昇降部30は、後述する打ち込み部80を昇降させるためのものである。昇降部30は、支持部20の上方に配置される。昇降部30は、固定部31及び可動部32を具備する。
【0037】
固定部31は、支持部20の上側接続部23に固定される筒状の部材である。固定部31は、その軸線方向を上下方向に向けて配置される。固定部31は、中心軸21と連通されると共に、台車部10の移動に伴って一体的に移動可能に構成される。
【0038】
可動部32は、固定部31に対して上下方向に移動可能な部材である。可動部32は、上端及び下端が閉塞された軸状に形成され、軸線方向を上下方向に向けて配置される。可動部32の外径は、固定部31の内径と略同一となるように形成される。可動部32は、下端から上下中途部までが固定部31内に配置されると共に、上部が固定部31から上方へ突出するように配置される。当該可動部32は、固定部31に対して上下方向に摺動可能に構成される。可動部32が摺動することで、昇降部30は軸線方向(上下方向)に伸縮することができる。
【0039】
図1及び
図2に示す駆動部40は、昇降部30を駆動(伸縮)させるためのものである。駆動部40は、エアーコンプレッサ50及び調整部60を具備する。
【0040】
エアーコンプレッサ50は、昇降部30へ圧縮エアを供給するためのものである。本実施形態に係るエアーコンプレッサ50は、台車部10に載置されておらず、当該台車部10とは一体的に移動しないように設けられる。
【0041】
調整部60は、昇降部30の伸縮量を調整するためのものである。調整部60は、中心軸21とエアーコンプレッサ50との間に配置される。調整部60は、調整部本体61、レバー62、圧力計63、第一ホース64及び第二ホース65を具備する。
【0042】
調整部本体61は、略L字状の部材である。調整部本体61には、エアーコンプレッサ50側から中心軸21側へと圧縮エアを案内可能な案内通路と、当該案内通路を開閉するバルブと、が設けられる(不図示)。
【0043】
レバー62は、前記バルブを操作するための部材である。レバー62は、調整部本体61に揺動可能に支持される。レバー62は、付勢部材によって初期位置(
図2に示す握る前の位置)へ向けて付勢されると共に、所定の部材を介して前記バルブと連結される(不図示)。
【0044】
圧力計63は、昇降部30(固定部31)内の圧力を測定するためのものである。圧力計63は、レバー62の近傍に設けられる。
【0045】
第一ホース64は、調整部本体61とエアーコンプレッサ50とを接続する。第二ホース65は、調整部本体61と中心軸21とを接続する。
【0046】
このように構成される駆動部40の調整部本体61及びレバー62は、作業者に握られる。これによって、レバー62は、
図2に示す初期位置から揺動され、前記バルブを動作させて前記案内通路を開放することができる。これにより、レバー62は、第一ホース64、調整部本体61(前記案内通路)、第二ホース65及び中心軸21を介して、エアーコンプレッサ50と昇降部30の固定部31とを連通することができる。また、レバー62は、作業者が手を離すことで初期位置へ戻されて、前記バルブを動作させて前記案内通路を閉塞し、エアーコンプレッサ50と固定部31との連通状態を解除することができる。
【0047】
図1及び
図3に示す把持部70は、作業者が握るためのものである。把持部70は、軸部材71、第一金具72、第二金具73及びピン74を具備する。
【0048】
軸部材71は、軸線方向を後下方(前上方)に向けて配置され、昇降部30の後方に配置される。軸部材71は、筒状に形成される大径部71aと、当該大径部71aの内周面に対して摺動可能な小径部71bと、により軸線方向に伸縮可能に構成される。小径部71bは、大径部71aの後下方に配置される。軸部材71は、大径部71aに対して小径部71bが前上方へ摺動することで、縮小することができる。また、軸部材71は、大径部71aに対して小径部71bが後下方へ摺動することで、伸張することができる。このような軸部材71は、伸縮量(長さ)を調整した状態を保持可能に構成される。
【0049】
第一金具72、第二金具73及びピン74は、軸部材71を昇降部30に取り付けるためのものである。第一金具72は、軸部材71の大径部71aの上端部に固定される。第二金具73は、昇降部30の可動部32の上部に固定される。ピン74は、第二金具73に第一金具72の前端部を回動可能に連結する。
【0050】
このように構成される把持部70の軸部材71は、ピン74を中心に可動部32に対して上下に揺動可能に構成される。また、軸部材71は、可動部32の摺動(昇降部30の伸縮)に応じて一体的に昇降する。
【0051】
打ち込み部80は、ボードC1にビスAを打ち込む部分である。打ち込み部80は、電動式のビス打ち装置によって構成される。打ち込み部80は、打ち込み部本体81、スライド部82及び貯溜部83を具備する。
【0052】
打ち込み部本体81は、ガン状に形成される。打ち込み部本体81は、可動部32の左方に配置されると共に、後部と可動部32とが側面視で重複するように配置される。当該打ち込み部本体81は、可動部32の上部(第二金具73が固定される部分よりも上方)に固定される。打ち込み部本体81の内部には、電力が供給されると駆動するモータ、及び当該モータの駆動により回転するビット等が設けられる。
【0053】
スライド部82は、打ち込み部80の先端部(前端部)である。スライド部82は、打ち込み部本体81に対して前後にスライド可能に構成される。
【0054】
貯溜部83は、ビスAを貯溜するための中空の部分である。貯溜部83は、所定の供給機構(不図示)を介してスライド部82と連結される。貯溜部83は、当該供給機構によってビスAをスライド部82内へ供給可能に構成される。
【0055】
このように構成される打ち込み部80は、ボードC1にスライド部82が押し付けられることによって、当該ボードC1にビスAを打ち込むことができる。具体的には、スライド部82は、ボードC1に押し付けられると、後方へスライドして打ち込み部本体81内に入り込む(収縮する)。このとき、スライド部82内には貯溜部83からビスAが供給され、当該ビスAが前記ビットによって回転される。当該ビスAは、スライド部82から前方へ押し出され、回転されながらボードC1を前方へと移動する。こうして、打ち込み部80は、ボードC1にビスAを打ち込むことができる。
【0056】
次に、
図4から
図7までを参照して打ち込み装置1の動作について説明する。
【0057】
なお、以下においては、
図4の上端部に示す点PにビスAを打ち込む作業を例に挙げて、打ち込み装置1の動作について説明する。また、以下では、
図4に示す状態(点Pの下方にビスAを打ち込んだ後の状態)を初期状態として、点Pへの打ち込み作業を説明する。
【0058】
まず、点Pへの打ち込み作業において、作業者は、打ち込み部80を上昇させる。このとき、作業者は、一方の手で把持部70の軸部材71を把持する。また、作業者は、他方の手で調整部60の調整部本体61及びレバー62を握る。これにより、作業者は、
図5に示すように、エアーコンプレッサ50と昇降部30の固定部31とを連通し、エアーコンプレッサ50からの圧縮エアを固定部31に供給する(
図5に矢印で示すエアの流れ参照)。
【0059】
固定部31に圧縮エアが供給されると、当該固定部31内の圧力が上昇し、可動部32の下面は上方へと押圧される。これによって、
図6に示すように、可動部32は、固定部31に対して上方へ摺動する。こうして、昇降部30は、可動部32に固定された打ち込み部80を上昇させる。
【0060】
作業者は、このようなレバー62の操作(握る動作)により、打ち込み部80のスライド部82が点Pと同じ高さ位置となるまで、当該打ち込み部80を上昇させる。
【0061】
次に、作業者は、
図7に示すように、打ち込み部80を前方へ移動させる。このとき、作業者は、例えば、支持部20(脚部22)の下端を中心に昇降部30を前方へ傾斜させることで、打ち込み部80を前方へ移動させる。これにより、打ち込み部80をボードC1へ接近させてスライド部82をボードC1(点P)と当接させる。この状態から打ち込み部80をさらに前方へ移動させると、打ち込み部80のスライド部82はボードC1に押し付けられる。これによって、作業者は点PへビスAを打ち込むことができる。
【0062】
前述の如く、スライド部82がボードC1に押し付けられると、貯溜部83からスライド部82内へビスAが供給される。これにより、ビスAをスライド部82にセットする手間を省くことができるため、作業者は、打ち込み部80の上昇とスライド部82の押し付けとを繰り返し行うことができる。これによって、下から上へと連続してビスAを打ち込むことができ、ビス打ちの作業を効率的に行うことができる。
【0063】
本実施形態に係る打ち込み装置1によれば、昇降部30により打ち込み部80を上昇させることができるため、脚立等を昇らなくてもボードC1の高いところ(例えば、手が届かないところ)にビスAを打ち込むことができる。これによれば、ボードC1にビスを打ち込む作業において作業者が脚立等を昇り降りしなくて済む。このため、ビスAを打ち込む作業の負担を軽減することができると共に、ビスAを打ち込む作業を効率的に行うことができる。
【0064】
なお、打ち込み部80を下降させる場合、作業者は、レバー62を離して当該レバー62を初期位置に戻す。これにより、作業者は、エアーコンプレッサ50と固定部31との連通状態を解除して、固定部31への圧縮エアの供給を停止する。固定部31内の圧縮エアは、固定部31の内周と可動部32の外周との隙間(摺動のための微細な隙間)等から僅かに漏れる。このため、圧縮エアの供給を停止すると、固定部31内の圧力が徐々に低下し、可動部32は、当該圧力の低下に伴って徐々に下方へ摺動する。こうして、作業者は、打ち込み部80を下降させることができる。このように、調整部60は、エアーコンプレッサ50から固定部31への圧縮エアの供給及び供給停止を切り替えることで、打ち込み部80の昇降量(昇降部30の伸縮量)を調整することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る駆動部40は、エアーコンプレッサ50によって昇降部30を昇降させている。当該エアーコンプレッサ50は、一般的に、建築現場において昇降部30の昇降とは異なる他の用途(例えば、圧縮エアを利用してビスAを打ち出すエアー工具の駆動源等)に用いられる。このため、建築現場には、一般的にエアーコンプレッサ50が持ち込まれている。本実施形態に係る打ち込み装置1は、このような建築現場に一般的に持ち込まれるものを昇降部30の駆動源としている。これによれば、建築現場に別途駆動源を持ち込まなくて済むため、打ち込み装置1の実用性を向上させることができる。
【0066】
また、駆動部40は、エアーコンプレッサ50を用いることで、油圧で可動部32を上昇させる場合よりも反応速度を速めることができる。これにより、レバー62の操作で可動部32を速やかに上昇させることができ、ビスAを打ち込む作業を効率的に行うことができる。また、仮に本実施形態とは異なり、油圧で昇降部30を昇降させると、流体(作動油)の漏れに起因して床B等が汚れてしまう可能性があるところ、本実施形態では圧縮エアで昇降部30を昇降させている。これによれば、流体の漏れに起因して床B等が汚れるのを防止することができる。
【0067】
また、作業者は、把持部70(軸部材71)を把持することで、打ち込み部80の近傍を支えることができる。これにより、打ち込み装置1のバランスを取ることができるため、打ち込み部80の移動を安定して行うことができる。これによって、安定してビスAを打ち込むことができる。
【0068】
また、把持部70は、可動部32に揺動可能に構成されることで、打ち込み部80の移動に応じて軸部材71を最適な向きにすることができる。具体的には、把持部70は、打ち込み部80の上昇に応じて上昇する(
図6参照)。この場合、軸部材71を下方へ揺動させれば、軸部材71が縦(略上下方向)を向くようになって、軸部材71の下端の位置を下げることができる。これによって、作業者は、軸部材71を握り易くなる。また、打ち込み部80を前方へ移動させる場合、軸部材71を上方へ揺動させれば、軸部材71が横(略前後方向)を向くようになって、スライド部82をボードC1に押し付け易くなる。このように、打ち込み部80の移動に応じて軸部材71を最適な向きにすることで、ビス打ちの作業性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る軸部材71は、伸張することで長さが固定部31の長さよりも長くなるように構成されている(
図3参照)。当該構成によれば、軸部材71は、下端の高さ位置をある程度下げることができる。このため、打ち込み部80が上昇したとしても、作業者の手の届く範囲に軸部材71の下端を位置させ易くすることができる。これにより、作業者が軸部材71をより握り易くなる。
【0070】
また、本実施形態に係る打ち込み装置1は、台車部10を移動させることにより、打ち込み部80を水平方向に簡単に移動させることができる。これにより、効率的にビスAを打ち込むことができる。
【0071】
以上の如く、本実施形態に係る打ち込み装置1は、建物のボードC1(壁)にビスA(止め具)を打ち込む打ち込み部80と、前記打ち込み部80を昇降させる昇降部30と、前記昇降部30を駆動させる駆動部40と、を具備するものである。
【0072】
このように構成することにより、ボードC1にビスAを打ち込む作業を効率的に行うことができる。具体的には、打ち込み部80を昇降させることで、ボードC1の高いところに簡単にビスAを打ち込むことができる。これにより、脚立等を昇り降りしなくてもボードC1の高いところにビスAを打ち込むことができる。
【0073】
また、前記昇降部30は、前記駆動部40からの動力によって伸縮することで前記打ち込み部80を昇降させるものであり、前記駆動部40は、前記昇降部30の伸縮量を調整する調整部60を具備するものである。
【0074】
このように構成することにより、調整部60により昇降部30の伸縮量を調整しながらビスAを打ち込むことができる。このため、ビスAを打ち込む作業をより効率的に行うことができる。
【0075】
また、前記昇降部30は、前記駆動部40からの動力で駆動しない固定部31(非可動部)と、前記駆動部40からの動力で駆動して前記固定部31に対して移動可能に構成されると共に、前記打ち込み部80が取り付けられる可動部32と、を具備し、前記打ち込み装置1は、前記固定部31の上部、又は、前記可動部32に取り付けられる把持部70をさらに具備するものである。
なお、本実施形態において、固定部31の上部とは、少なくとも固定部31の上下中央部よりも上方であることを指す。
【0076】
このように構成することにより、ビス打ちの精度を向上させることができる。具体的には、把持部70を把持することで、打ち込み装置1のバランスを取りながらビスAを打ち込むことができる。これにより、安定してビスAを打ち込むことができる。
特に、把持部70を可動部32に取り付けることにより、ビスAを打ち込む高さに関わらず、打ち込み部80と把持部70との高さの位置関係を維持することができる。これにより、把持部70を把持した状態でビスAを打ち込み易くすることができる。
【0077】
また、前記把持部70は、前記昇降部30に対して上下に揺動可能に構成されるものである。
【0078】
このように構成することにより、昇降部30の昇降時及びビスAの打ち込み時(打ち込み部80の移動時)に把持部70を最適な向きにすることができるため、ビス打ちの作業性を向上させることができる。
【0079】
また、前記駆動部40は、空気圧によって(圧縮エアの供給と供給停止とが切り替えられることで)前記昇降部30を駆動させるエアーコンプレッサ50を具備するものである。
【0080】
このように構成することにより、調達し易いエアーコンプレッサ50を用いて昇降部30を駆動可能となるため、実用性を向上させることができる。
【0081】
また、前記打ち込み部80は、前記ビスAを回転させて前記ボードC1に前記ビスAを打ち込むように構成されるものである。
【0082】
このように構成することにより、ビスAの回転により当該ビスAをボードC1に対して前方へ移動させることができる。これによれば、ビスAを打ち込むときにボードC1から受ける反力を低減させることができるため、ビスAを安定して打ち込むことができる。
【0083】
また、前記打ち込み部80は、前記ビスAを保持するスライド部82(先端部)を前記ボードC1に押し付けることで前記ビスAの回転を開始するものである。
【0084】
このように構成することにより、昇降部30を移動させて打ち込み部80のスライド部82をボードC1に押し付ければ、打ち込み部80を直接操作しなくても(例えば、打ち込み部本体81に設けられたスイッチ等を押さなくても)ビスAを打ち込み可能となる。このため、ビス打ちの作業性を向上させることができる。
【0085】
なお、本実施形態に係る固定部31は、本発明に係る非可動部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るスライド部82は、本発明に係る打ち込み部の先端部の実施の一形態である。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0087】
例えば、本実施形態に係る打ち込み装置1は、内壁CのボードC1にビスAを打ち込むものとしたが、ビスAを打ち込む部材はボードC1に限定されるものではなく、壁を構成する他の部材であってもよい。
【0088】
また、昇降部30は、伸縮することで打ち込み部80を昇降させるものとしたが、昇降部30の構成はこれに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。具体的には、昇降部30は、例えば、床B及び天井に支持されたレールと、当該レールを昇降することで打ち込み部80を昇降させる移動体と、を具備する構成等であってもよい。なお、昇降部30は、本実施形態のように伸縮可能に構成されることで、構成を簡素化することができる。このため、打ち込み装置1のコストを低減することができると共に、実用性を向上させることができる。
【0089】
また、駆動部40は、空気圧によって(エアーコンプレッサ50を用いて)昇降部30を昇降させるものとしたが、昇降部30を昇降させる手段は空気圧に限定されるものではなく、他の手段、例えば、油圧等であってもよい。
【0090】
また、調整部60は、レバー62によって昇降部30の伸縮量を調整するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、押しボタン式のスイッチ等によって昇降部30の伸縮量を調整してもよい。
【0091】
また、把持部70は、可動部32に取り付けられるものとしたが、打ち込み装置1のバランスを取ることができれば、把持部70が取り付けられる箇所はこれに限定されるものではない。例えば、
図8に示す変形例に係る把持部170のように、昇降部30の固定部31(上下中央部よりも上方、
図8では上端)に取り付けられるものであってもよい。この場合、把持部170は、第一金具72と連結される第二金具173が固定部31に固定される構成であればよい。また、把持部70は、昇降部30以外の部材(例えば、打ち込み部80等)に取り付けられていてもよい。
【0092】
また、把持部70は、必ずしも昇降部30に対して揺動可能に構成されている必要はなく、昇降部30に固定されていてもよい。
【0093】
また、本実施形態において、止め具はビスAであるものとしたが、止め具の種類はこれに限定されるものではなく、ボルトや釘等であってもよい。また、止め具が釘である場合のように、止め具に雄ネジ部が形成されていない場合、打ち込み部80は、必ずしも止め具を回転させる必要はなく、止め具を回転させずにボードC1に打ち込むものであってもよい。
【0094】
また、打ち込み装置1は、打ち込み部80を昇降可能であればよく、必ずしも台車部10、支持部20及び把持部70を具備していなくてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 打ち込み装置
30 昇降部
40 駆動部
80 打ち込み部
C1 ボード(壁)
A ビス(止め具)