(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】半田付け装置、および半田付け装置用ノズル
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20230529BHJP
B23K 3/00 20060101ALI20230529BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H05K3/34 507N
B23K3/00 310B
B23K3/06 K
(21)【出願番号】P 2019065256
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】397065767
【氏名又は名称】株式会社パラット
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【氏名又は名称】西原 広徳
(72)【発明者】
【氏名】中 眞一郎
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092222(JP,A)
【文献】特開2012-038907(JP,A)
【文献】特開2016-124004(JP,A)
【文献】特開2017-087261(JP,A)
【文献】特表平11-514933(JP,A)
【文献】特開2013-120869(JP,A)
【文献】特開2015-115427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B23K 3/00
B23K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体と第2導体とを溶融半田によって半田付けする半田付け装置であって、
半田片を通過させる半田片供給通路を有するノズルと、
前記第1導体と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させて前記第1導体と前記ノズルを近接または当接させる相対距離変化手段と、
前記半田片を前記ノズルの前記半田片供給通路に供給する半田片供給手段と、
前記ノズルの前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させる加熱手段とを備え、
前記半田片供給通路は、
前記半田片供給通路の幅方向の複数方向に複数配置されている
半田付け装置。
【請求項2】
糸半田を先端から送り出す糸半田送り出し機構部と、
前記糸半田送り出し手段より下流側で送り出された前記糸半田を挿通する糸半田供給ガイドとを備え、
前記糸半田供給ガイドの先端は、送り出した前記糸半田の突出部分を切断して半田片とする切断部を有し、
前記半田片供給手段は、
前記糸半田供給ガイドより送り出されて切断された半田片を収容する半田片収納部を複数有する半田片収納体と、
前記半田片収納部に収容された前記半田片を収容している収容状態と前記半田片を前記ノズルの前記半田片供給通路へ供給する解放状態に切り替える収容/解放切替部とを有し、
前記半田片収納体の前記半田片収納部は、少なくとも前記ノズルの前記半田片供給通路と同じ位置で同じ数が設けられている
請求項1記載の半田付け装置。
【請求項3】
前記半田片収納体を前記半田片収納部に前記半田片を収容する方向と直交する平面上の二方向へ移動させる半田片収納体移動手段を備えた
請求項2記載の半田付け装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の半田付け装置を用い、
前記相対距離変化手段により前記第1導体と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させて前記第1導体と前記ノズルを近接または当接させ
前記半田片供給手段により複数の前記半田片を前記ノズルの複数の前記半田片供給通路に一斉に供給し、
前記加熱手段により前記ノズルの前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させ、
前記第1導体と前記第2導体を前記半田片が溶融した溶融半田により半田付けする
半田付け方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載の半田付け装置に用いる半田付け装置用ノズルであって、
前記半田片供給通路を前記
半田片供給通路の幅方向の複数方向に複数配置した
半田付け装置用ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、プリント基板やモータ等の適宜の製品における第1導体(端子、ランド、リード線等)と第2導体(端子、ランド、リード線等)を半田付けする半田付け装置、および半田付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板に電子部品を機械的に半田付けする半田付け装置が提供されている。この半田付け装置には、半田の液面にプリント基板を接触させて半田付けするフロー半田付け法や、予めパターンに合わせてクリーム半田を基板に印刷しておきクリーム半田に熱を加えて溶かすことで半田付けするリフロー半田付け法等、様々な方式が提案されている。
【0003】
ここで、出願人は、半田ごてとして円筒形のノズルを用い、このノズル内にプリント基板のスルーホールに挿通された電子部品のピンを挿入し、内部で半田を溶かして半田付けする方式の半田付け装置を開発し、提供している(特許文献1参照)。
【0004】
そして、ノズルの温度、ノズルの位置、ノズルの荷重および半田の供給量について、装置の起動時や運用中など所定のタイミングで確認することにより、半田付けの信頼性や確実性の更なる向上を図っている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、大量生産が行われる現代では、様々な形状を有する半田付け対象に対して、さらに短時間で半田付けすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-120869号公報
【文献】特開2015-115427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑みて、短時間で半田付けできる半田付け装置と半田付け方法、および様々な半田付け対象に半田付けできる半田付け装置用ノズルと半田付け装置用ノズルの製造方法を提供し、利用者の満足度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、第1導体と第2導体とを溶融半田によって半田付けする半田付け装置であって、半田片を通過させる半田片供給通路を有するノズルと、前記第1導体と前記ノズルとの近接離間方向の相対距離を変化させて前記第1導体と前記ノズルを近接または当接させる相対距離変化手段と、前記半田片を前記ノズルの前記半田片供給通路に供給する半田片供給手段と、前記ノズルの前記半田片供給通路内の前記半田片を加熱して溶融させる加熱手段とを備え、前記半田片供給通路は、前記半田片供給通路の幅方向の複数方向に複数配置されている半田付け装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明により、短時間で半田付けできる半田付け装置と半田付け方法、および様々な半田付け対象に半田付けできる半田付け装置用ノズルと半田付け装置用ノズルの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】半田付け装置の駆動系および制御系の構成を示すブロック図。
【
図5】半田片の切断からノズルへの供給までの動作の説明図。
【
図7】ノズル及び糸半田切断機構部を模式的に示した説明図。
【
図8】半田片の切断からノズルへの供給までの動作手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0012】
図1および
図2は、半田付け装置1の外観構成の説明図であり、
図1は右側面図、
図2は正面図である。
【0013】
図1に示すように、半田付け装置1は、半田付け対象であるプリント基板Pのスルーホールに半田付けを行うノズル60(半田ごて)を有するヘッド部3と、ヘッド部3およびノズル60をフローティング状態にするエアーサスペンションユニット5と、エアーサスペンションユニット5およびノズル60を半田付け対象に近接/離間させる方向(
図1の上下方向)に移動させる近接離間方向移動ユニット6(相対距離変化手段)と、近接離間方向移動ユニット6およびノズル60をプリント基板Pが搬送される搬送方向(
図1の奥行方向,
図2の左右方向)に移動させる搬送方向移動ユニット7と、搬送方向移動ユニット7およびノズル60を搬送方向移動ユニット7の搬送幅方向(
図1の左右方向,
図2の前後方向)に移動させる搬送幅方向移動ユニット8と、を有している。
【0014】
エアーサスペンションユニット5の上部には、リールに巻かれた糸半田2が設けられている。この糸半田2は、φ0.3~φ2.0mmを用いることができ、φ0.6~φ1.6mmのものを用いることが好ましい。
【0015】
ヘッド部3の下部には、ノズル60が設けられ、ノズル60にはヒータ51(加熱手段)が接続されている。
搬送幅方向移動ユニット8の上面は、プリント基板Pを搬送する搬送路9の上面とほぼ同じ高さに構成されている。
【0016】
ヘッド部3の可動範囲は、搬送幅方向移動ユニット8の上方に位置する待機位置(
図1に示すP1の位置)と、プリント基板Pに対して半田付けを行う半田付け領域E1,E2(
図1のE1と
図2のE2で囲まれる領域)とになる。ヘッド部3は、これらの待機位置、及び半田付け領域のどの位置であっても近接離間方向移動ユニット6によって移動される。
【0017】
この構成により、半田付け装置1は、待機時にはノズル60を待機ポジションP1の高さおよび位置に待機しておき、半田付け工程を実行するときは半田付け領域E1,E2内で待機ポジションP1よりも低い(半田付け対象に近い)半田付けポジションP2の高さにて半田付けを行う。
【0018】
図3は、半田付け装置1の駆動系および制御系の構成を示すブロック図である。半田付け装置1は、搬送幅方向移動ユニット8(
図1参照)に固定されて搬送路9(
図1参照)へ向かって真っすぐ伸びるY方向(搬送幅方向,
図2の奥行方向)の搬送ガイド7fと、ステッピングモータ等の駆動機構部7eによりY方向の搬送ガイド7fに沿って移動するX方向(搬送方向,
図2の左右方向)の搬送ガイド7cが設けられている。この駆動機構部7eおよびY方向の搬送ガイド7fは、搬送幅方向移動ユニット8(
図1参照)内に収納されている。X方向の搬送ガイド7cは、搬送路9の搬送方向(X方向)へ向かって真っすぐ伸びている。
【0019】
X方向の搬送ガイド7cの上部には、X方向の搬送ガイド7cに沿ってX方向に移動する移動体7aと、この移動体7aをX方向の搬送ガイド7cに沿ってX方向へ移動させるステッピングモータ等で構成された駆動機構部7bが設けられている。この移動体7a、駆動機構部7b、およびX方向の搬送ガイド7cは、搬送方向移動ユニット7(
図1参照)内に収納されている。この移動体7a、駆動機構部7b、X方向の搬送ガイド7c、駆動機構部7e、およびY方向の搬送ガイド7fは、作業させたい任意の位置へノズル60を移動させるノズル位置移動手段として機能する。
【0020】
移動体7aには、ノズル60がスルーホールに近接/離間する方向に伸びるZ方向(高さ方向)の搬送ガイド5cが設けられている。この搬送ガイド5cには、Z方向に移動するヘッド固定部5a、およびステッピングモータ等で構成される駆動機構部5bが設けられている。ヘッド固定部5a、駆動機構部5b、および搬送ガイド5cは、ノズル60を半田付け対象に近接/離間させる方向へ移動させる近接離間方向移動手段として機能し、近接離間方向移動ユニット6(
図1参照)内に収納されている。
【0021】
このように構成されたY方向の搬送ガイド7fとX方向の搬送ガイド7c、および駆動機構部7b,7eがノズル位置移動手段として機能することにより、ノズル60の位置を半田付けする任意の位置へ移動させることができる。また、Z方向の搬送ガイド5cおよび駆動機構部5bが近接離間方向移動手段として機能することにより、移動させた位置でノズル60を近接方向へ移動させてノズル60の孔(後述の半田片誘導通路63)内に半田付けするピンを挿通しノズル60の先端をスルーホールに当接させる等の半田付け位置にて半田付け対象に当接または近接させ、半田付け後に離間させることができる。また、Z方向の搬送ガイド5cおよび駆動機構部5bにより、ノズルステーション(図示省略)で交換用のノズル60またはヒータ51に近接する方向へ移動させ、ノズル60またはヒータ51を交換した後に離間させることができる。
【0022】
ヘッド固定部5aには、フローティングユニット15が設けられている。このフローティングユニット15は、エアーサスペンションユニット5(
図1)内に設けられ、供給されたエアによってノズル60を持ち上げ、プリント基板Pに対するフローティングユニット15(ノズル60が含まれる)の相対的な重みを軽くするものである。例えば、通常の加重を100とするとフローティングユニット15の加重が10%となるようにするなど、適宜の構成とすることができる。
【0023】
ヘッド部3は、フローティングユニット15に固定され、糸半田2(
図1参照)を挿通する糸半田供給ガイド16と、糸半田供給ガイド16内の糸半田をローラで挟み込んで送り出す糸半田送り出し機構部17が設けられ、底部に糸半田切断機構部40を備えている。この糸半田切断機構部40は、平面視直交する複数方向、換言すればいわゆるXY方向に駆動可能な2つのステッピングモータ等により構成される平面移動機構部19(半田片収納体移動手段)により移動可能に構成されており、糸半田供給ガイド16に供給されてきた糸半田2a(
図1参照)を平面移動機構部19の制御に従って切断する。ここで、本実施形態では上にも示した通り、この平面移動機構部19が、本発明に係る半田片収納体移動手段に相当する。
【0024】
また、これらの構成要素を駆動するべく、各要素は制御部21によって制御される。制御部21には、駆動機構部5b、駆動機構部7b、駆動機構部7e、フローティングユニット15、糸半田送り出し機構部17、平面移動機構部19、ヒータユニット密着確認センサ22、温度センサ23、着脱用エアシリンダ24、カメラ25、及び記憶部26が接続されている。
【0025】
カメラ25は、半田付け対象となるプリント基板のスルーホールおよびピンの位置等を確認して位置決めする際、および、半田付アカメが発生した場合等の半田付け異常を検出する際等に用いられる。
【0026】
記憶部26は、プリント基板等の半田付け対象ワークの画像と、この半田付け対象ワークに使用するツール(ノズル60、若しくはヒータ51)を関連づけた半田付け対象ワーク別ツールデータ、現在装着しているツールの種類、現在装着しているツールの使用回数および使用時間等のデータを記憶している。
【0027】
図4は、糸半田切断機構部40の構成を説明する説明図であり、
図4(A)は糸半田切断機構部40の分解斜視図、
図4(B)は糸半田切断機構部40の縦断面図を示す。
【0028】
糸半田切断機構部40は、下方へ繰り出されてきた糸半田2aを通過させる通路を有する糸半田供給ガイド16と、切断した半田片2bを複数収納する半田片収納体44と、半田片収納体44を移動させる平面移動機構部19(
図3参照)により構成されている。また、半田片収納体44には、収納された半田片2bの貯留/放出を制御するシャッタ36と、シャッタ36を付勢する付勢体35(付勢手段)とが設けられている。また、半田片収納体44とは分離して、シャッタ36を解放操作するシャッタ操作部49(シャッタ移動規制体)が設けられている。なお、半田片収納体44と、平面移動機構部19と、シャッタ36と、シャッタ操作部49は、半田片2bをノズル60の孔(後述の半田片誘導通路63)に供給する半田片供給手段として機能する。このように、この平面移動機構部19は、半田片収納体44を半田片収納部45に半田片2bを収容する方向と直交する平面上の二方向(XY方向)へ移動させるXY移動ステージである。
【0029】
糸半田供給ガイド16は、金属部材によって円筒形に形成されており、内側の孔(通路)に糸半田2aを長手方向へ通過させる。また、糸半田供給ガイド16は、糸半田2aの通過方向と直角の方向(糸半田2aの半径方向)へは移動しないように固定されている。
【0030】
付勢体35は、適宜のバネで構成することができ、この実施例では金属製の鶴巻ばねにて構成されている。
【0031】
シャッタ36は、L字型に屈曲させた金属板により構成されており、L字の底面部が水平状態(近接離間方向に垂直な状態)の貯留/放出制御板部38であり、L字の鉛直面部が付勢体35に押圧される押圧操作部37である。貯留/放出制御板部38は、複数の解放孔38a(貫通孔または貫通溝)が設けられている。この実施例では解放孔38aは都合8つ設けられている。この解放孔38aの隣接部分(解放孔38aと解放孔38aの間部分を含む)は、半田片2bの落下を防止する閉鎖部として機能する。なお、シャッタ36に複数の解放孔38aを設けているが、これに限らず、複数の解放溝を設けて、シャッタ36の貯留/放出制御板部38が平面視櫛状に見える構成としてもよい。この場合も同じ機能を確保できる。すなわち本実施形態では、半田片収納部45に収容された半田片2bを収容している収容状態と半田片2bをノズル60の半田片供給通路63へ供給する解放状態に切り替える、本発明に係る貯留/放出制御板部38を有している。
【0032】
半田片収納体44は、横長の立方体形状のブロック部43の下面に当該ブロック部43の短手方向の幅よりも幅広で長手方向に同じ長さのガイド部48が一体形成されている。ガイド部48には、長手方向に貫通するシャッタ挿入孔47が設けられている。このシャッタ挿入孔47は、高さと幅がシャッタ36の貯留/放出制御板部38の高さと幅よりわずかに大きく形成され、シャッタ36がブレなくスムーズに長手方向へスライド移動できるように構成されている。ブロック部43とガイド部48には、上下方向(近接離間方向)に貫通する半田片収納部45が複数設けられている。この実施形態では上述の通り都合8つ設けられており、シャッタ36の解放孔38aと同じ大きさで同じ間隔で設けられている。
換言すれば、本実施形態に係る半田片収納体44の半田片収納部45は、本実施形態では、少なくともノズル60の半田片供給通路63と同じ位置で同じ数が設けられている。これらの複数の半田片収納部45は、すべて同じ太さで同じ長さの一直線状の孔であり、互いに平行に形成されている。
【0033】
なお、シャッタ36の解放孔38aは、半田片収納部45よりも大きく形成されてもよい。これにより、確実に開放状態のときに半田片2bを落下させることができる。また、半田片収納部45は、孔によって形成されているが、これに限らず、複数部材で周囲を囲まれて半田片2bを囲み内に収容できる囲み形状とするなど、半田片2bを落下可能に収納する適宜の形状とすることができる。
【0034】
半田片収納体44の長手方向の一端上部には、半田片収納体44の長手方向に長いガイド板42の一端が連結されている。ガイド板42の他端には、ネジ止め用の孔41が設けられ、係止板32がネジ31によって孔41にネジ止めされている。
【0035】
係止板32は、上部にネジ41を挿通するネジ孔33が設けられている。係止板32のネジ孔33より下方部分には、シャッタ36の押圧操作部37に対向する押圧対抗面34が設けられている。この押圧対抗面34に付勢体35の一端が当接し、シャッタ36の押圧操作部37に付勢体35の他端が当接することで、押圧対抗面34から押圧操作部37までの距離よりも長く伸びた状態が通常状態である付勢体35は、押圧対抗面34と押圧操作部37が離れる方向へ付勢する。これによって、シャッタ36は、押圧操作部37が半田片収納体44の一端面に当接した状態に維持される。このとき、
図4(B)に示すように、半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の解放孔38aは位置がずれており、半田片収納体44の半田片収納部45がシャッタ36の貯留/放出制御板部38で閉じられた状態となっている。従って、半田片収納部45に存在する半田片2bは、シャッタ36の貯留/放出制御板部38によって下方へ落下しないように貯留されている。すなわち本実施形態に係る貯留/放出制御板部38は、半田片収納部45に収容された半田片2bを収容している収容状態と半田片2bをノズル60の半田片供給通路63へ供給する解放状態に切り替える本発明に係る収容/解放切替部に相当する。
【0036】
半田片収納体44のガイド板42と反対側には、半田片収納体44から離間した位置に半田片収納体44とは独立してシャッタ操作部49が設けられている。このシャッタ操作部49は、シャッタ36の貯留/放出制御板部38の押圧操作部37とは逆側の端面に対向して配置されている。従って、平面移動機構部19(
図3参照)の駆動によって半田片収納体44がシャッタ36と共にシャッタ操作部49側へ移動されていくと、シャッタ36の端面がシャッタ操作部49に当接する。そして、平面移動機構部19(
図3参照)の駆動によって半田片収納体44がさらに移動されると、シャッタ操作部49によってシャッタ36がそれ以上移動しないために半田片収納体44とシャッタ36の相対位置が変化していき、半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の解放孔38aの位置が同じ位置になって解放状態となり、半田片2bが下方へ落下する。
【0037】
半田片収納体44と糸半田供給ガイド16は、互いの対向面が当接して配置され、供給される糸半田2aの半径方向すなわちXY方向の何れの方向へも相対的に移動できるように構成されている。この実施では、糸半田供給ガイド16が固定され、半田片収納体44が糸半田2aの半径方向すなわちXY方向のうち任意の方向へスライド移動できる。従って、糸半田供給ガイド16から繰り出された糸半田2aの一部が半田片収納体44の半田片収納部45に供給されている状態で、半田片収納体44を糸半田2aの半径方向すなわちXY方向のうち任意の方向に移動させると、糸半田2aは、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の相対移動によって半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の互いの当接面で切断される。従って、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16が半田片2bを切断する半田片切断手段となる。切断された半田片2bは、半田片収納体44の半田片収納部45に収納される。
【0038】
また、半田片収納体44の上面と糸半田供給ガイド16の下面、シャッタ36の貯留/放出制御板部38は、全て半田片収納体44の移動方向と平行(特にこの実施例では水平方向)に構成されている。また、半田片収納部45の長手方向(半田片通過方向)とノズル60の半田片誘導通路63(半田片供給通路,
図5(D)参照)の長手方向(半田片通過方向)は、全て半田片収納体44の移動方向と垂直(特にこの実施例では鉛直方向)に構成されている。
【0039】
図5は、半田片収納体44によって糸半田2aを切断して半田片2bを複数貯留し、その後にシャッタ36を開状態にして複数の半田片2bを落下させる動作を断面図により説明する説明図である。この動作は、制御部21(
図3参照)が糸半田送り出し機構部17および平面移動機構部19の駆動を制御して実行される。
【0040】
図5(A)の断面図に示すように、平面移動機構部19(
図3参照)の駆動によって、半田片収納体44は、シャッタ操作部49に最も近い半田片収納部45が糸半田供給ガイド16の下方位置で一直線に連通する状態で停止する。この状態で、巻かれていた糸半田2(
図1参照)の先端側から引き出されて棒状となっている糸半田2aが糸半田送り出し機構部17(
図3参照)によって送り出され、
図5(B)に示すように糸半田2aの先端が半田片収納部45内に収納される。そして、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の対向面部(接触面部)から糸半田2aの先端までの長さが必要な半田片2bの長さとなる状態まで糸半田2aを繰り出すと、糸半田送り出し機構部17(
図3参照)は糸半田2aの供給(繰り出し)を停止する。
【0041】
この状態で平面移動機構部19(
図3参照)の駆動によって、半田片収納体44をスライド移動させると、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の対向面部(接触面部)によって糸半田2aが切断されて半田片2bとなり、
図5(C)に示すように半田片2bが半田片収納部45に収納(貯留)される。
図5(C)は、この切断を半田片収納部45の数だけ(必要な数だけ)繰り返して切断完了した状態を示している。このときの半田片収納体44をスライド移動させる距離は、隣接する半田片収納部45の互いの中心間の距離と同一である。したがって、糸半田供給ガイド16の直下には、その前に対応していた半田片収納部45の隣の半田片収納部45が位置することとなる。
【0042】
平面移動機構部19(
図3参照)の駆動によって半田片収納体44をスライド移動させると、
図5(D)に示すようにシャッタ36の先端がシャッタ操作部49に当接して押圧され、付勢体35が縮み、半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の解放孔38aが全て連通して複数の半田片2bが一斉に落下して下方へ供給される。すなわち平面移動機構部19は、半田片収納体44を半田片収納部45に半田片2bを収容する方向と直交する平面上の二方向へ移動させる半田片収納体移動手段に相当する。なお、半田片2bを落下させる際に、図示省略する押し込みロッドを全ての半田片収納部45に上方から下方へ挿入し、半田片2bを下方へ押し出して、強制的に半田片2bを下方のノズル60(
図3参照)に供給する構成としてもよい。
【0043】
図6は、ノズル60とヒータ51の構成を説明する説明図であり、
図6(A)は分解斜視図、
図6(B)は斜視図、
図6(C)は縦断面図を示す。
図7は、ノズル60、半田片収納体44及び糸半田供給ガイド16の相対的な配置を模式的に示した平面図である。そして
図8は、制御部21が平面移動機構部19を制御することにより半田片収納体44をXY方向に動作させる手順を示すフロー図である。
ノズル60は、複数の第1部材61と第2部材65とを重ね合わせて(当接させて)形成されている。第1部材61と第2部材65は、いずれもセラミックにより形成されている。
すなわち本実施形態に係るノズル60は、
図6及び
図7に示すように、複数の半田片供給通路63を、通路幅方向の平面上で複数方向にそれぞれ形成された構成をなすようにした。これらの複数の半田片供給通路63は、すべて同じ太さで同じ長さの一直線状の孔であり、互いに平行に形成されている。
【0044】
第1部材61は、一部材として一体形成された直方体形状の一面(第2部材65との対向面61a)に鉛直方向(近接離間方向)に一直線の半田片誘導路63a(溝)が単数或いは複数平行に形成されている。また、第1部材61は、半田片誘導路63aが設けられた面の隣となる側面に、固定溝62が設けられている。
【0045】
第2部材65は、外形が第1部材61と対称となる形状で同じ大きさの直方体に形成されている。すなわち、第1部材61と当接する面の大きさおよび形状が同じようになるように形成されている。また、第2部材65は、第1部材61との対向面の隣となる側面に、固定溝66が設けられている。この固定溝66の位置および深さは。第1部材61の固定溝62と同一に形成されている。
【0046】
第2部材65は、第1部材61との対向面に近い位置で、複数の半田片誘導路63aが並べられた並び方向に貫通するヒータ用貫通孔67が設けられている。このヒータ用貫通孔67には、ヒータ51の加熱部52が挿入される。図示の例では、ヒータ用貫通孔67の両端の開口から2つのヒータ51の各加熱部52がそれぞれ挿入されている。2つの加熱部52は、全ての半田片誘導通路63(
図7参照)に対応させて配置されている。これにより、全ての半田片誘導通路63に対してほぼ同一の加熱を行うことができ、半田片誘導通路63毎に半田片誘導通路63の壁面温度や半田片2bの溶融速度に差が出ないようにしている。
【0047】
また、第2部材65は、第1部材61との対向面と反対側の面の中央に孔68が設けられ、この孔68に熱電対57が挿入されている。熱電対57は、温度センサ23(
図3参照)として機能し、ノズル60の温度を測定する。
【0048】
これらがすべて組み合わせされると、
図6(B)に示すように、複数(三つ)の第1部材61と第2部材65の対向面同士が隙間なく当接され、第1部材61の半田片誘導路63a(
図6(A)参照)と、第1部材61、第2部材65の対向面65aのうち半田片誘導路63aと対向している対向部分とで半田片2bを端子Tに当接させる位置まで誘導する半田片誘導通路63が形成される。この半田片誘導通路63は、鉛直方向(近接離間方向)に一直線で、かつ、通路幅方向の平面上で複数方向にそれぞれ配置されている。
【0049】
各半田片誘導通路63(および半田片誘導路63a)は、半田片収納体44(
図5参照)の半田片収納部45と同じ大きさで同じ間隔に形成されている。
【0050】
従って、
図5(D)に示したように一斉に(ほぼ同時に)落下する半田片2bは、その下方位置にて半田片収納部45と半田片誘導通路63が連通するように配置されたノズル60の半田片誘導通路63に、
図6(C)に示すように一斉に(ほぼ同時に)供給される。
【0051】
半田付けをするとき、ノズル60は、下端がプリント基板PのランドRに接触する位置まで下げられており、この位置にて上述した半田片2bの供給を受ける。このとき、半田片2bは、プリント基板Pの電子部品Cの端子Tの先端(若しくは半田片誘導通路63の半田片誘導方向(
図6(C)の下方)に対して最も凸となる端部(
図6(C)の上端))に接触して停止する。図示の例では端子Tの上に半田片2bが乗った状態で停止する。
【0052】
そして、ノズル60の半田片誘導通路63に供給された半田片2bは、ヒータ51の加熱部52からの熱をうけて溶融する。このとき、加熱部52の熱が半田片2bから端子Tに伝達され、この伝達熱によって端子Tも徐々に加熱されていく。また、ランドRについては、ノズル60から直接熱を受け、端子Tよりも先に加熱されている。
【0053】
そうして、半田片2bが溶融温度に達すると、半田片2bが溶融するが、まだ端子Tの上に略球状となって載った状態となる。この間も端子Tを伝達熱で加熱する。そして、さらに端子Tの加熱が進むと、半田片2bが溶融した複数(4つ)の溶融半田が端子Tに沿って流れ出し、複数の端子T(第2導体)とランドR(第1導体)を一斉に(同時に)半付けして電気的に接続する。その後、ノズル60を上方へ移動させて離間させ、溶融半田が冷えて固化することで、複数箇所の半田付けが一斉に(同時に)完了する。
この半田付けの動作について、以下に詳細に説明する。
【0054】
<半田付けの動作>
図6(C)の断面図に示すように、半田付けの母材として、ランドRが形成されたプリント基板Pに、当該プリント基板Pのスルーホールにプリント基板Pの表面側から裏面側(
図6(C)では下面側から上面側)に向けて電子部品Cの端子Tが挿入されたものが準備されている。
【0055】
<位置合わせ工程>
制御部21は、Y方向の搬送ガイド7fとX方向の搬送ガイド7c、および駆動機構部7b,7eにより、ノズル60の複数の半田片誘導通路63の位置をXY平面上で移動させて半田付けする複数のランドRに対向させる。このときの位置は、プリント基板Pの裏面側のランドRの中心と半田片誘導通路63の中心がほぼ一致する位置とする、または、端子Tの先端中心と半田片誘導通路63の中心がほぼ一致する位置とする。
【0056】
<半田片切断収納工程>
制御部21は、糸半田送り出し機構部17によって半田片収納体44内の1つの半田片収納部45に糸半田2aを必要長さまで供給し、平面移動機構部19を駆動させて半田片収納体44を移動させ、糸半田切断機構部40(糸半田切断手段)により糸半田2aを切断して半田片2bを得て半田片収納部45に収納する。このとき、シャッタ36は閉鎖状態となっているため、半田片収納部45から半田片2bが落下することは無い。この動作を繰り返すことで、全ての半田片収納部45に1つずつ必要長さの半田片2bを収納する。なお、この半田片切断収納工程は、前記ノズル近接工程よりも前に実行する、あるいは、ノズル近接工程と並行して実行するなど、適宜のタイミングとすることができる。
当該半田片切断工程では、平面移動機構部19をXY方向に適宜移動させることにより、複数の半田片収納部45に対し一つの糸半田2aから効率よく半田片2bを供給し得るようにしている。平面移動機構部19による当該糸半田切断部40の具体的な動作については、後に詳述する。
【0057】
<ノズル近接工程>
制御部21は、駆動機構部5bにより搬送ガイド5cに沿ってフローティング状態のヘッド部3をランドRとの近接方向へ移動させて、ノズル60の先端面(図示下端面)をプリント基板Pの裏面側のランドRの表面に当接させる。これにより、ノズル60の半田片誘導通路63の内側に端子Tの先端が挿入された状態となる。
【0058】
このとき、端子Tはノズル60の半田片誘導通路63の内壁から等距離だけ離れており、端子Tとノズル60が非接触で離間した状態が保たれている。これにより、ノズル60から端子Tに直接熱が伝達されることを防止しており、端子Tは、輻射熱伝達および対流熱伝達により徐々に加熱される。一方で、プリント基板PのランドRは、接触するノズル60からの直接の熱伝導と、対流熱伝達による伝熱で急速に加熱される。
【0059】
<半田片供給工程>
制御部21は、平面移動機構部19を駆動させて半田片収納体44をさらに移動させ、シャッタ36がシャッタ操作部49に当接して押圧されるまで移動させる。これにより、シャッタ36の複数の解放孔38aが複数の半田片収納部45とそれぞれ連通し、複数の半田片2bが一斉に落下し、ノズル60の複数の半田片誘導通路63に1つずつ供給される。上方から落下するように供給された半田片2bは、半田片誘導通路63を通過中に予熱され、端部が端子Tに当接して当接位置で停止し、位置および落下が規制される。このとき、半田片誘導通路63の内壁は、半田片2bが端子Tの先端の上で垂直または斜めに立っている状態から落下しないように規制する落下規制部として機能する。
【0060】
<溶融工程>
当接位置に案内された溶融前の半田片2bは、その位置から落下することなく、端子Tと反対側の端部などの少なくとも一部が、ヒータ51の加熱部52の近くに位置して半田片誘導通路63の内壁に当接する。このため、当接位置にある溶融前の複数の半田片2bは、半田片誘導通路63の内壁に当接した半田片2bの一端部、両端部、又は側部を介した熱伝導により一斉に溶融される。なお、この半田片2bの溶融のとき、ノズル60と接触しての直接熱伝導に加えて、ノズル60からの輻射熱伝達、および、ノズル60内を対流する熱風による対流熱伝達などの間接熱伝導も行われる。
【0061】
複数の半田片2bは、溶融すると表面張力によりそれぞれ丸まって略球状になろうとするが、ノズル60の半田片誘導通路63の内壁と端子Tの先端に規制されるため真球になれず、端子Tの先端に接触している状態(端子Tの上に載っている状態)で太く短い形状に変形する。この形状は、短い円柱の両端が球面になった形状となっている。
【0062】
こうして溶融すると、ノズル60から複数の半田片2bに熱が伝わり、さらに、複数の半田片2bから複数の端子Tにそれぞれ熱が伝わることで、複数の端子Tは以前にも増して急速に加熱される。この加熱中、溶融した半田片2bは端子Tに接触した状態、すなわち端子Tの上に載った状態で半田片供給方向(下方向)へ移動せずに停止している。尚、半田片2bが溶融するのは、217℃以上である。
【0063】
溶融した半田片2bを介して適正温度にまで端子Tが加熱されると、溶融した複数の半田片2bは、ぬれ始め、端子Tの先端から端子Tの側面を伝って一斉に流れ出す。ここで、溶融しはじめてから流れ出す前の半田片2bは、位置が停止したままで熱の影響等によって形状が変化し続けていても良い。そして、端子Tの側面を伝って流れ出した溶融した半田片2bは、裏面側のランドRに広がり、さらに、毛細管現象により、端子Tの側面とスルーホールに面するランドRとの隙間にも流入する。そして、表面側のランドRにも広がっていく。
【0064】
<ノズル離間工程>
その後、制御部21は、駆動機構部5bにより搬送ガイド5cに沿ってフローティング状態のヘッド部3をランドRとの離間する方向へ移動させ、ノズル60の先端面をプリント基板Pの裏面側のランドRの表面から離隔する。これにより、ランドR、端子T、及び溶融した半田片2bは急速に冷却され、溶融した半田片2bが固化して半田付け動作は終了する。
【0065】
溶融した半田片2bのこのような動きにより、複数の端子Tは複数のランドRにそれぞれ確実に半田付けされる。こうして一斉に(ほぼ同時に)半田付けされた複数箇所の半田の仕上がり外観は美しく、バックフィレット形状も綺麗に形成される。
【0066】
しかして本実施形態では、
図7に示すように、半田片供給通路63は、通路幅方向の平面上で複数方向にそれぞれ形成された構成をなす。加えて本実施形態では、
図8に示すように、制御部21による平面移動機構部19への制御により、半田片切断収納工程において、単一の糸半田2aを備えながら上述のような複数の半田片供給通路63へ一斉に半田片2bを効率よく供給することを可能としている。以下、半田片切断収納工程における動作について詳述する。
【0067】
ステップS1では、制御部21は、任意の半田片収納部45を平面視糸半田供給ガイド16に平面視一致するよう位置決めし、しかる後、上述の通り当該半田片収納部45が有する列に沿って糸半田2aを切断して半田片2bを供給していく処理を行う。
【0068】
ステップS2では、制御部21は、同じ列に未だ半田片2bが供給されていない半田片収納部45が有るか否かの判定を行う処理を行う。当該ステップS2にて半田片2bが供給されていない半田片収納部45があった場合は、ステップS1へ移行する。このようにステップS1を一列の半田片収納部45の数だけ繰り返し、一列の半田片収納部45に対して同方向(一方向)に半田片収納体44を移動させて糸半田2aの切断をしていく。当該ステップS2にて半田片2bが供給されていない半田片収納部45が無くなった場合は、ステップS3へ移行する。
【0069】
ステップS3では、制御部21は、違う列に位置する半田片収納部45に未だ半田片2bが供給されていない半田片収納部45が有るか否かの判定を行う処理を行う。当該ステップS3にて半田片2bが供給されていない半田片収納部45の列が他に無かった場合は、処理を終了する。
当該ステップS3にて半田片2bが供給されていない半田片収納部45の列があった場合は、ステップS4へ移行する。
【0070】
ステップS4では、制御部21は、半田片2bが供給されていない他の列に半田片2bが供給し得るよう半田片収納体44を移動させる処理を行う。そしてしかる後、上記ステップS1へ移行する。このように列を変更したとき、その前の列と同方向に切断していくこともできるが、逆方向に切断することが好ましい。逆方向に切断していくことで、半田片収容体44を移動させる時間を短縮できる。
【0071】
このようにして本実施形態では、平面移動機構部19を制御21によって好適に制御することでステップS1~ステップS4を経て、通路幅方向の平面上で複数方向にそれぞれ形成された構成をなす半田片供給通路63と同じ位置で同じ数が設けられている半田片収納部45へ、順次半田片2bを供給することができる。
【0072】
以上の構成及び動作により、本実施形態によれば、ノズル60に設けた半田片供給通路63を通路幅方向の平面上で複数方向にそれぞれ形成することにより、された構成をなすことにより、1つずつではなく、一直線だけでもない、面での複数の半田付けが可能となる。具体的には、このように複数の半田片誘導通路63を有するノズル60を用いることで、複数の端子T(半田付け箇所)に一斉に(同時に)半田付けをし、短時間で多数の半田付けを完了させることができる。上述した実施形態では、8つの半田片2bを順次切断し、一斉に8ヶ所の半田付けを実施できるため、1か所ずつ半田付けするよりも非常に短時間で半田付け完了できる。
その結果、従来の構成に比べて大幅なタクト短縮(時間短縮)が実現できる。
【0073】
しかも本実施形態によれば、ノズル60自体の平面視の面積が大きくなることによりノズル60の熱容量が大きくなることで、基板への予熱効果が見込め、半田付け時間も従来よりも短縮させることができる。その結果、例えばパワーデバイス等の熱引きが大きなパターンへの半田付けであっても好適に行うことが可能となっている。
【0074】
また本実施形態によれば、半田片収納体44の半田片収納部45を、少なくともノズル60の半田片供給通路63と同じ位置で同じ数が設けられている構成としているので、より正確且つ迅速な半田付けが可能となっている。
【0075】
さらに本実施形態によれば、平面移動機構部19を半田片収納体44を半田片収納部45に半田片2bを収容する方向と直交する平面上の二方向へ移動させる半田片収納体移動手段として機能させることで、単一の糸半田2aのみを有する構成であっても複数方向に複数設けられたノズル60の半田片供給通路63に対して一斉に半田片2bを供給すべく半田片収納体44の半田片収納部45へ正確に安定して半田片2bを供給することを実現している。
【0076】
特に、第1部材61と第2部材65の分割式のノズル60としたことにより、半田片誘導通路63となる半田片誘導路63aを長さや幅や深さにかかわらず容易に形成することができる。しかしながら本発明においては、分割式のノズル60のみならず、一体に形成されたノズルを適用することを否定するものではない。
【0077】
なお、この発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、様々な実施形態とすることができる。本実施形態のように、半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の解放孔38aとノズル60の半田片誘導通路63は、列を更に増やす構成とすることができる。これにより、半田付け対象の配置間隔に合わせて一斉に半田付けができる。
【0078】
また、ノズル60の形状と半田片誘導通路63の数や形状は半田付け対象に合わせて様々構成とすることができ、これに合わせて半田片収納体44の半田片収納部45とシャッタ36の形状を形成することで、様々な半田付け対象に対して複数箇所に一斉に半田付けすることができる。
【0079】
また、半田片収納体44は、一面に一直線の溝を複数平行に配置した2つの部材を互いの溝が対向するように合わせて、この溝が半田片収納部45を形成するように構成してもよい。この場合、2つの部材の対向面は当接していることが好ましいが、半田片2bの厚みよりも小さい隙間だけ離間させて構成してもよい。この場合も半田片2bを半田片収納部45に収納し、シャッタ36を動作させて半田片2bを一斉に落下させることができる。
【0080】
また、ノズル60の半田片誘導通路63は、断面四角の孔としたが、断面正方形、断面長方形、断面円形、断面楕円形、断面半円形など、適宜の形状の孔とすることができる。この場合、第1部材61と第2部材65の両方に半田片誘導路63aを設けて重ね合わせたときにこれらの適宜の形状の孔となるように構成してもよい。
【0081】
また、ノズル60の各半田片誘導通路63から第1部材61と第2部材65の一方または両方に水平方向に伸びる側孔をそれぞれ設け、半田付け時に半田片誘導通路63内で発生するヒュームを外部へ排出する構成としてもよい。この場合、この側孔は、半田片誘導通路63内で端子Tに当接する半田片2bの上端よりも上方に設けることが好ましい。これにより、半田ボールやフラックス等が側孔からノズル60の外へ飛散することを防止できる。
【0082】
また、半田付け対象である第1導体と第2導体は、プリント基板Pの端子TとランドRに限らず、例えば、モータの端子とリード線とする、プリント基板の配線上に寝かした状態で置いた端子と当該配線とする、など、適宜の半田付け対象とすることができる。これらの場合も同様にノズルを第1導体に近接または当接させた状態で第1導体と第2導体を半田付けして電気的に接続することができる。
【0083】
また、上記実施形態では半田片収納体44の半田片収納部45へ半田片2bを供給する順序を、XY何れかの方向に沿った列に沿って順次供給していく手順を一例として説明したが勿論、制御部21による平面移動機構部19への制御により、半田片収納体44の外周から中心へ向けて半田片2bを供給する態様や、その逆の手順にて半田片2bを供給する態様としてもよい。また、任意の一の半田片収納部45から順次最も近接した他の半田片収納部45へ半田片2bを供給する態様など、種々の態様をとることができる。これらの場合、上記
図8のフロー図とは異なるフロー(手順)となることは言うまでもない。
【0084】
また、ステップS2で半田片収納部45が無くなった場合とは、一列全ての半田片収納部45への収納が完了して次の半田片収納部45が無くなった場合とすることもできるが、これに限らない。具体的には、最後の半田片収納部45に糸半田2aを収納した後、平面移動機構部19による半田片収納体44の移動方向を、それまでの方向(一列に切断してきた方向)と別の方向(例えば次に供給する半田片収納部45が存在する方向)へ変更し、ステップS4にてこの別の方向への移動をすることで糸半田2aを切断して半田片2aとしてもよい。この場合、平面移動機構部19による半田片収納体44の移動時間を最小限にし、かつ、各半田片収納部45へ半田片2bを供給することができ、糸半田2aを切断して全ての半田片収納部45へ半田片2bの供給するために要する時間を最小限にすることができる。
【0085】
また、糸半田切断機構部40は、制御部21の制御によって、半田片収納体44を移動させることによって糸半田2aを切断する動作を、XY平面上の2以上の方向で実行できるように構成することが好ましい。これにより、制御部21の制御によって様々な方向へ移動させて切断することができるため、糸半田2aを挿通している半田片収納部45(糸半田供給ガイド16と対向している半田片収納部45)から最も近い半田片収納部45の方向へ向けて半田片収納体44を移動させ、この移動動作によって半田片収納部45と糸半田供給ガイド16の接触面(若しくは近接面)にて糸半田2aが切断されて半田片2bとして半田片収納部45に収容され、次の半田片収納部45に半田片収納部45を対向させて糸半田2aを供給し、また次の近い半田片収納部45と糸半田供給ガイド16を対向させる方向へ移動して糸半田2aを切断して半田年2bを半田片収納部45に収容するという一連の動作を最短時間で完了することができる。
【0086】
また、
図3に示した糸半田供給ガイド16をY方向に複数配置し、各糸半田供給ガイド16に1つずつ糸半田送り出し機構部17および糸半田2(
図1参照)を備えて、制御部21の制御に従って指定された1または複数の糸半田2を一括して繰り出す構成としてもよい。この場合、
図4(A)に示した半田片収納体44にXY方向に設けられた半田片収納部45に対して、X方向に一列に並んだ半田片収納部45の列がY方向に何列あるかに合わせて、この列数と同じ数の糸半田供給ガイド16を備えると良い。そして、平面移動機構部19による半田片収納体44の移動は、X方向のみの移動とし、一方向への移動によって複数の糸半田2を一括して切断する構成とすると良い。すなわち、半田片収納体44がX方向へ移動されてある段(ここで、段とは、X方向の位置の違いを指す)の半田片収納部45が糸半田供給ガイド16に対向する状態で、その段の半田片収納部45に対して糸半田2を一括供給することで、同じ段にあるY方向に複数並んでいる半田片収納部45に糸半田2を供給できる。この状態で半田片収納体44をX方向へ移動させることによって、その段にある複数の半田片収納部45にそれぞれ糸半田2を一括供給できる。このように構成することで、半田片収納体44の移動方向を一方向としつつ、XY方向に複数設けられた半田片収納部45に糸半田2を供給でき、ノズル60にXY方向に複数設けられた半田片誘導路63aに一斉に糸半田2を供給できる。
【0087】
また、平面移動機構部19による半田片収納体44の移動は、X方向のみの移動とし、半田片収納体44と糸半田供給ガイド16の間にシリンダーにてY方向へ移動する切断冶具を備えてもよい。この切断冶具は、円筒形状など、半田片収納部45と同程度の大きさの孔を有する冶具であればよく、孔の軸方向が糸半田供給ガイド16の孔の軸方向および半田片収納体44の半田片収納部45(孔)の軸方向と同方向となる構成にすると良い。これにより、半田片収納体44の半田片収納部45のある1つの段を切断冶具と対応させる位置で、糸半田供給ガイド16から供給される糸半田2を切断冶具の孔内に挿入し、この状態でシリンダを駆動して切断冶具をY方向へ移動させて糸半田2を切断して半田片2aとし、さらに切断冶具を半田片収納部45の上部まで移動させて半田片2aを半田片収納部45へ供給する。そうして、シリンダー駆動により切断冶具を戻して再度糸半田2を切断し、同じ段の違う位置の半田片収納部45へ半田片2aを供給する動作を繰り返す。これにより、1段の半田片収納部45への半田片2aの供給が完了すると、半田片収納体44をX方向へ移動して次の段にセットし、その段の半田片収納部45へ半田片2aを供給していく上述の動作を繰り返す。このように構成することで、切断冶具の一方向(Y方向)への移動によって半田片2aを複数の半田片収納部45にY方向へ供給する動作を、半田片収納体44を別の方向(X方向)へ移動して各段で繰り返すことができ、XY方向に複数設けられた半田片収納部45に半田片2aを供給できる。そして、ノズル60にXY方向に複数設けられた半田片誘導路63aに一斉に糸半田2を供給できる。
【0088】
また、上述した実施例において、X方向を搬送方向(
図2の左右方向)とし、Y方向を搬送幅方向(
図2の奥行方向)としたが、これに限らず、X方向を搬送幅方向としY方向を搬送方向とするなど、適宜の構成とすることができる。これにより、半田片収納体44の駆動方向や制御など様々な形態をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
この発明は、生産設備で半田付けを実行するような産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…半田付け装置
2b…半田片
6…近接離間方向移動ユニット
16…糸半田供給ガイド
17…糸半田送り出し機構部
40…半田片供給手段
44…半田片収納体
45…半田片収納部
51…ヒータ
52,252…加熱部
60…ノズル
63…半田片誘導通路
63a…半田片誘導路
R…ランド
T…端子