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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】電力管理装置及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230529BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/00 B
H02J7/00 L
H02J7/00 303C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019070438
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020171102
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】下田 英介
(72)【発明者】
【氏名】野津 剛
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130106(JP,A)
【文献】特開2013-247795(JP,A)
【文献】特開2014-036538(JP,A)
【文献】特開2016-052170(JP,A)
【文献】特開2016-063717(JP,A)
【文献】特表2017-504300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0190821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記複数のエネルギー貯蔵装置から合計で所定の電力を放電させる場合には、充電率が最も大きい前記エネルギー貯蔵装置から優先的に放電させていき、前記複数のエネルギー貯蔵装置のうち、一部の前記エネルギー貯蔵装置が前記所定の電力よりも余剰に放電可能であれば、前記余剰分の電力を前記充電率が最も小さい前記エネルギー貯蔵装置に優先的に充電させることを特徴とする電力管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記各エネルギー貯蔵装置の充電率が同一になるように前記各エネルギー貯蔵装置の出力分担を調整することを特徴とする、請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記各エネルギー貯蔵装置の充電率及び定格出力に応じて前記出力分担を決定することを特徴とする、請求項2に記載の電力管理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力管理装置が、並列接続された複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップでは、前記電力管理装置が、前記各エネルギー貯蔵装置の充電率が同一になるように、前記各エネルギー貯蔵装置の充放電を制御することを特徴とする電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理装置及び電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力全面自由化後の社会動向として、分散型電源(天然ガスコージェネレーションや燃料電池)がエネルギー供給設備として建物内に進出してくる可能性が高い。これら太陽光発電や風力発電等の分散型電源に代表される新エネルギーを、いかに商用系統(電力会社の電力網)に負担をかけることなく接続するかが課題となっている。その対策として、分散型電源の負荷追従運転によって商用系統への負担を軽減した「マイクログリッド」への取り組みが活発化している。
【0003】
マイクログリッドの思想を取り込んだ分散型電源によるエネルギー供給システム(以下、単に「マイクログリッド」とする)では、通常時は商用系統と連携してピークカット運転を行い、商用系統の電源が停電するなどの非常時において、BCP(business Continuity Plan:事業継続用計画)用の電源として利用することが考えられる。しかし、太陽光や風力などの自然エネルギーを用いた自然エネルギー発電は、天候や環境の変化により、発電する電力が大きく変動するため、連系運転時に確実なピークカット運転を行うためには、変動に応じて蓄電池の出力を制御する必要がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
マイクログリッドを運用するためには、十分な容量のエネルギー貯蔵装置が不可欠となる。現状ではエネルギー貯蔵装置が高いため、十分な容量のエネルギー貯蔵装置が導入できず、マイクログリッドが100%の機能を発揮できない場合が想定される。
【0005】
例えば、太陽光発電と、エネルギー貯蔵装置としての蓄電池と、によるマイクログリッドにおいて、電力負荷が最大デマンド付近で安定した場合、蓄電池の容量不足によって十分なピークカット効果が期待できないことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-247795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの問題を解決するための一手段として、比較的安価な小容量の蓄電池を複数台組み合わせて使用することで、あたかも一つの大容量の蓄電池と見なす、すなわち、複数の蓄電池の出力を一体として制御する方法が考えられる。
【0008】
しかしながら、小容量の蓄電池は、運用状況などにより、SOC(State Of Charge:充電率)がまちまちであるため、所望の出力が得られず、ピークカット効果の減少が生じる可能性がある。
なお、このような問題は蓄電池に限られた問題ではなく、蓄電池を含めた様々なエネルギー貯蔵装置に共通する問題である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御してピークカット効果の減少を防止することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、並列接続された複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御する制御部を備え、前記制御部は、前記複数のエネルギー貯蔵装置から合計で所定の電力を放電させる場合には、充電率が最も大きい前記エネルギー貯蔵装置から優先的に放電させていき、前記複数のエネルギー貯蔵装置のうち、一部の前記エネルギー貯蔵装置が前記所定の電力よりも余剰に放電可能であれば、前記余剰分の電力を前記充電率が最も小さい前記エネルギー貯蔵装置に優先的に充電させることを特徴とする電力管理装置である。
【0011】
本発明の一態様は、上述の電力管理装置であって、前記制御部は、前記各エネルギー貯蔵装置の充電率が同一になるように前記各エネルギー貯蔵装置の出力分担を調整する。
【0012】
本発明の一態様は、上述の電力管理装置であって、前記制御部は、前記各エネルギー貯蔵装置の充電率及び定格出力に応じて前記出力分担を決定する。
【0014】
本発明の一態様は、並列接続された複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御する制御ステップを含み、前記制御ステップは、前記各エネルギー貯蔵装置の充電率が同一になるように、前記各エネルギー貯蔵装置の充放電を制御することを特徴とする電力管理方法である。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御してピークカット効果の減少を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムAの概略構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電力管理装置5の概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る充放電制御部8の蓄電池3-1及び蓄電池3-2の出力分担を制御する制御ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る複数の蓄電池3を一つの蓄電池にまとめる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る電力管理装置及び電力管理方法を、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力供給システムAの概略構成の一例を示す図である。
【0020】
電力供給システムAは、本発明の一実施形態に係る電力管理装置5を備え負荷Fとする需要家の需要電力量を平準化するシステムである。本実施形態では、電力供給システムAは、分散型電源11と出力調整が可能な複数の蓄電池3とを組み合わせて、分散型電源11の発電電力及び負荷Fの負荷変動に応じで複数の蓄電池3の出力を変化させることで、安定的にエネルギーを供給する、例えばマイクログリッドである。なお、負荷Fは、電力供給を受けて動作する機器や設備などを一括して示したものである。
以下、電力供給システムAの構成について、具体的に説明する。
【0021】
図1に示すように、電力供給システムAは、分散型電源装置1、複数のインバータ2(2-1,2-2)、複数の蓄電池3(3-1,3-2)、複数の測定部4、及び電力管理装置5を備える。なお、蓄電池3は、エネルギー貯蔵装置の一例である。
【0022】
分散型電源装置1は、分散型電源11及びインバータ12を備える。
分散型電源11は、自然エネルギー由来の電源、すなわち自然エネルギーを用いた発電機である。例えば、分散型電源11は、太陽光発電、風力発電、又は水力発電等による発電機である。分散型電源11は、インバータ2を介して電力系統Lに発電出力を供給する。
【0023】
インバータ12は、交流と直流との間を双方向に電力変換する双方向型の電力変換装置である。インバータ12は、電力系統Lと分散型電源11との間に設けられている。インバータ12は、分散型電源11が発電した発電電力を交流に変換して電力系統Lに供給する。
【0024】
インバータ2は、交流と直流との間を双方向に電力変換する双方向型の電力変換装置である。インバータ2は、電池用のインバータであって、複数の蓄電池3に対応してそれぞれ設けられている。具体的には、インバータ2は、電力系統Lと蓄電池3との間にそれぞれ設けられている。本実施形態では、インバータ2-1は、蓄電池3-1と電力系統Lとの間に設けられている。また、インバータ2-2は、蓄電池3-2と電力系統Lとの間に設けられている。
【0025】
各インバータ2は、電力管理装置5により制御され、蓄電池3に充電するための電力の交流直流変換、又は蓄電池3から放電により出力される電力の直流交流変換を行う。
【0026】
複数の蓄電池3(3-1,3-2)は、それぞれ並列に接続されており、充電のために入力される電力を蓄積し、また蓄積した電力を放電して出力する。例えば、蓄電池3は、コンデンサ又は二次電池である。各蓄電池3は、インバータ2を介して電力系統Lに接続される。
複数の蓄電池3は、それぞれ電力系統Lに接続された商用電源S又は分散型電源11により適宜充電されてもよい。また、複数の蓄電池3は、それぞれ他の蓄電池3から適宜充電されてもよい。
【0027】
蓄電池3は、電力系統Lを介して負荷Fに対して自身に蓄電された電力を設定された出力範囲内で放電する。なお、出力範囲とは、蓄電池3に蓄えられた電力が放電可能であるときの電力の充電率(SOC:State Of Charge)の範囲を示す。蓄電池3の充電率は、0%で蓄電池3の電力が蓄積されていないことを示し、100%で満充電状態を示す。
なお、蓄電池3-1及び蓄電池3-2は、それぞれ定格出力や電池容量が異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0028】
各測定部4は、複数の蓄電池3に対応してそれぞれ設けられている。この測定部4は、電流測定部及び電圧測定部を備える。この電流測定部は、蓄電池3に流れる電流値を測定する。この蓄電池3に流れる電流値とは、充電時において蓄電池3に入力される電流(充電電流)の電流値でもよいし、放電時において放電される電流(放電電流)の電流値でもよい。以下、蓄電池3に流れる電流値を「充放電電流値」と称す。
【0029】
また、上記電圧測定部は、対応する蓄電池3の端子電圧値を測定する。すなわち、電圧測定部は、充電時における蓄電池3の端子電圧値を測定してもよいし、放電時における蓄電池3の端子電圧値を測定してもよい。
【0030】
したがって、測定部4-1は、蓄電池3-1の充放電電流値I及び端子電圧値Vを測定して、電力管理装置5に出力する。また、測定部4-2は、蓄電池3-2の充放電電流値I及び端子電圧値Vを測定して、電力管理装置5に出力する。
【0031】
電力管理装置5は、並列接続された複数の蓄電池3の出力を一体として制御する。すなわち、電力管理装置5は、並列接続された複数の蓄電池3の出力をそれぞれ独立に制御するのではなく、一体として制御することで、複数の蓄電池3をあたかも一つの大容量の蓄電池として制御する。ただし、単に複数の蓄電池3の出力を一体に制御したのでは、複数の蓄電池3全体から所望の電力が得られない場合がある。そのため、電力管理装置5は、各蓄電池3のSOC(充電率)が同一になるように、各蓄電池3の充放電を制御する。
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る電力管理装置5について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る電力管理装置5の概略構成図である。
【0033】
電力管理装置5は、充電率算出部6、記憶部7、及び充放電制御部8を備える。なお、充放電制御部8は、本発明の「制御部」の一例である。
【0034】
充電率算出部6は、蓄電池3-1,3-2のそれぞれのSOCを取得する。例えば、充電率取得部51は、測定部4-1から取得した蓄電池3-1の充放電電流値Iの時間積算値Qを算出して、その算出した時間積算値Qを蓄電池3-1の電池容量Wで除算することで蓄電池3-1のSOC(=Q/W)を算出する。なお、蓄電池3-1,3-2の電池容量W,W2は、予め記憶部7に記憶されている。
【0035】
同様に、充電率取得部51は、測定部4-2から取得した蓄電池3-2の充放電電流値Iの時間積算値Qを算出して、その算出した時間積算値Qを蓄電池3-2の電池容量Wで除算することで蓄電池3-2のSOC(=Q/W)を算出する。
ただし、本発明のSOCの算出方法は、これに限定されず、SOCが算出できればこれら以外の方法であっても構わない。
【0036】
充電率算出部6は、上記蓄電池3-1,3-2のSOC,SOCの算出を一定周期毎に行い、充放電制御部8に出力する。
【0037】
記憶部7には、蓄電池3-1及び蓄電池3-2の電池容量W,W、蓄電池制御有効電力指令値EPC、蓄電池3-1及び3-2の蓄電池定格出力RO,蓄電池定格出力ROが予め格納されている。
【0038】
蓄電池制御有効電力指令値EPCは、演算値であり、複数の蓄電池3-1,3-2から合計で電力系統Lに放電させる電力の値を示す。すなわち、蓄電池制御有効電力指令値EPCは、複数の蓄電池3-1,3-2を一つの蓄電池と見なした時に電力系統Lに出力したい電力の値である。
蓄電池定格出力ROは、蓄電池3-1が出力可能な電力の上限値である。また、蓄電池定格出力ROは、蓄電池3-2が出力可能な電力の上限値である。
【0039】
充放電制御部8は、並列接続された複数の蓄電池3の出力を一体として制御するものであって、充電率算出部6が算出するSOC及びSOCが同一になるように蓄電池3-1及び蓄電池3-2の充放電を制御する。
【0040】
例えば、蓄電池3-1のSOCが60%、蓄電池3-2のSOCが40%である場合において、この2台の蓄電池3-1及び蓄電池3-2で合計10kW(=EPC)を電力系統Lに放電したい場合を考える。この場合、充放電制御部8は、蓄電池3-1から優先的に放電させる。そして、充放電制御部8は、蓄電池3-1から放電された電力では10kWを賄えない電力の不足分を蓄電池3-2から放電させる。これにより、蓄電池3-1,3-2から電力系統Lに10kWが供給されるとともに、SOC及びSOCが同一の値に近づいていく。
【0041】
また、充放電制御部8は、蓄電池3-1が電力系統Lに対して10kW(=EPC)よりも余剰に放電可能であれば、その余剰分の電力を蓄電池3-2に充電させる。これにより、蓄電池3-1,3-2から電力系統Lに10kWを供給されるとともに、SOC及びSOCが同一の値に近づいていく。
【0042】
このように、充放電制御部8は、各蓄電池3のSOC及びSOCが同一になるように蓄電池3-1,3-2の出力分担をそれぞれ調整する。そして、充放電制御部8は、各蓄電池3-1,3-2の出力分担を時間経過とともに徐々に持ち替えていき、SOC及びSOCが同一になるように維持する。例えば、蓄電池3-1の電池容量Wが20kWh、蓄電池3-2の電池容量Wが5kWhであれば、最終的には蓄電池3-1が8kW、蓄電池3-2が2kWの電力を放電するように出力分担が維持される。
【0043】
なお、蓄電池3-1は蓄電池3-2に対して4倍の電池容量を有するため、出力も4倍になる。これにより、各蓄電池3-1,3-2の電池容量に比例して電池出力が決定されるので、各蓄電池3-1,3-2の容量に対する出力負担が等しくなり、特定の蓄電池3に負担が偏らない運用が可能となる。
【0044】
以下に、本発明の一実施形態に係る充放電制御部8の蓄電池3-1及び蓄電池3-2の出力分担を制御する制御ブロックを、図3を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る充放電制御部8の蓄電池3-1及び蓄電池3-2の出力分担を制御する制御ブロック図である。
【0045】
充放電制御部8は、減算器81,82、PID83、ゲイン部84、max85、加算器86、min87、制限部88、及び減算器89を備える。
【0046】
減算器81は、充電率算出部6から蓄電池3-1のSOC及び蓄電池3-2のSOCを取得する。そして、減算器81は、SOCからSOCを減算して、その減算した差分値X(=SOC-SOC)をPID83に出力する。
【0047】
減算器82は、記憶部7から蓄電池定格出力RO及び蓄電池制御有効電力指令値EPCを読み出す。そして、減算器81は、蓄電池制御有効電力指令値EPCから蓄電池定格出力ROを減算して、その減算した差分値Y(=EPC-RO)をmax85に出力する。
【0048】
PID83は、PID制御を行い、差分値Xが0(ゼロ)に近づくような制御指令信号を生成する。この制御指令信号とは、蓄電池3から放電させる電力の値を示すものである。PID83は、この制御指令信号を制限部88に出力する。
【0049】
ゲイン部84は、記憶部7から蓄電池定格出力ROを読み出し、その読み出した蓄電池定格出力ROに「-1」を乗算して、その乗算値「-RO」をmax85に出力する。
【0050】
max85は、減算器82から取得した差分値Yと、ゲイン部84から取得した乗算値「-RO」とを比較して、大きい方の値を制限部88に出力する。
【0051】
加算器86は、記憶部7から蓄電池定格出力RO及び蓄電池制御有効電力指令値EPCを読み出す。そして、加算器86は、蓄電池制御有効電力指令値EPC及び蓄電池定格出力ROを加算して、その加算値D(=EPC+RO)をmin87に出力する。
【0052】
min87は、記憶部7から蓄電池定格出力ROを読み出す。そして、min87は、加算器86から取得した加算値Dと、記憶部7から読み出した蓄電池定格出力ROとを比較して、小さい方の値を制限部88に出力する。
【0053】
制限部88は、PID83から出力された制御指令信号を、min87から出力された値を上限値とし、max85から出力された値を下限値とした範囲(以下、「制限範囲」という。)内に制限する。制限部88に入力された制御指令信号の振幅が制限範囲内の場合には、入力された制御指令信号はそのまま制限部88から出力される。一方、制限部88に入力された制御指令信号の振幅が上限値を超えた場合には、制限部88は、その上限値を制御指令信号として出力する。また、制限部88に入力された制御指令信号の振幅が下限値を下回った場合には、制限部88は、その下限値を制御指令信号として出力する。
【0054】
制限部88から出力された制御指令信号は、蓄電池3-2から出力させる電力値CDとして設定される。また、制限部88から出力された制御指令信号は、減算器89に出力される。
【0055】
減算器89は、記憶部7から蓄電池制御有効電力指令値EPCを読み出す。そして、減算器89は、その蓄電池制御有効電力指令値EPCから、制限部88から取得した制御指令信号を減算して、その減算した差分値(=EPC-制御指令信号)を蓄電池3-1から出力させる電力値CDとして設定する。
なお、上記制御ロジック内においては、放電は正の値、充電は負の値で演算される。
【0056】
充放電制御部8は、上述した制御ロジックによって求めた電力値CDを蓄電池3-1から放電させるように、インバータ2-1を制御する。これにより、蓄電池3-1から電力値CDが放電される。
また、充放電制御部8は、上述した制御ロジックによって求めた電力値CDを蓄電池3-2から放電させるように、インバータ2-2を制御する。これにより、蓄電池3-2から電力値CDが放電される。
【0057】
このように、充放電制御部8は、複数の蓄電池3のそれぞれのSOCが同一になるように各蓄電池3の出力分担をそれぞれ調整する。したがって、充放電制御部8は、複数の蓄電池3から電力系統Lに対して蓄電池制御有効電力指令値EPCの電力値を供給しながら、各蓄電池3のSOCが同一になるように制御することができる。
【0058】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0059】
(変形例1)
上記実施形態では、蓄電池3が2つの場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、蓄電池3が複数であれば、その数には特に限定されない。例えば、蓄電池3が3つ以上であっても、本発明を適用可能である。
【0060】
例えば、電力供給システムAに、3つの蓄電池30-1,30-2,30-3が備えられている場合を考える。この場合には、まず蓄電池30-2と蓄電池30-3をまとめて1つの蓄電池40と見なして、上述した制御ロジックにおいて、蓄電池30-1と蓄電池40との2つの蓄電池の各出力を決定する。次に、蓄電池40を蓄電池30-2,30-3に再度分解し、蓄電池40の出力を蓄電池制御有効電力指令値EPCに適用して、蓄電池30-2,30-3の各出力をそれぞれ上述した制御ロジックで求めればよい。なお、一例として、複数の蓄電池を一つの蓄電池にまとめる方法(蓄電池30-2と蓄電池30-3とを1つの蓄電池40と見なす方法)を、図4に記載する。蓄電池40の定格出力は、各蓄電池30-2,30-3の定格出力の合計とする。また、蓄電池40のSOCは、各蓄電池30-2,30-3の電池容量およびSOCから貯蔵量を計算し、合計の電容量と貯蔵量とから算出すればよい。
【0061】
(変形例2)
上記実施形態では、電力供給システムAは、エネルギー貯蔵装置として蓄電池3を備える場合を例として説明したが、本発明はこれに限定されず、蓄電池3以外のエネルギー貯蔵であってもよい。例えば、電気を使って電気分解により水素を製造する水電解装置、水素を貯蔵する高圧ガスタンクや液水タンクや水素吸蔵合金タンク、貯蔵した水素から発電を行う燃料電池を組み合わせたエネルギー貯蔵システムであってもよい。この場合には、図3に示す制御ロジック中の上限値の演算に用いている定格出力RO,ROに、エネルギー貯蔵装置の燃料電池の定格出力(定格電力)を適用し、下限値の演算に用いている定格出力RO,ROにエネルギー貯蔵装置の水電解装置の定格消費電力を用いればよい。
【0062】
また、制御指令信号が正の場合には燃料電池の発電指令値とし、制御指令信号が負の場合には、マイナスを乗じて水電解装置の消費電力指令値とすればよい。
【0063】
このように本制御はエネルギー入出力の単位(例えば、kW)と貯蔵量の単位(%)さえ合わせられれば、電気だけでなく、水素や熱に対しても適用可能であり、またこれらのエネルギー貯蔵媒体は混在していても構わない。このように、電気、熱、水素などの複数種類のエネルギー貯蔵装置を併用することができる。
【0064】
(変形例3)
また、上記実施形態において、充放電制御部8は、複数の蓄電池3から合計で所定の電力(=蓄電池制御有効電力指令値EPC)を放電させる場合には、SOCが最も大きい蓄電池3から優先的に放電させていき、複数の蓄電池3のうち、一部の蓄電池3が所定の電力よりも余剰に放電可能であれば、その余剰分の電力をSOCが最も小さい蓄電池3から優先的に充電させてもよい。
【0065】
(変形例4)
また、上記実施形態において、例えば、充放電制御部8は、蓄電池3が4つ以上であっても、その4つの蓄電池3が2つの蓄電池としてみなすように各蓄電池3を合成して、図3に示す制御ロジックで計算してもよい。すなわち、蓄電池100-1~100-n(nは3以上の整数)である場合には、蓄電池100-1~100-m(mは2以上の整数であって、n未満の整数である)を1つの蓄電池200-1として合成し、100-(m+1)~100-nを1つの蓄電池200-2として合成する合成処理を実施する。そして、この2つの蓄電池200-1と蓄電池200-2とのそれぞれで放電する電力値を図3に示す制御ロジックで求める。そして、充放電制御部8は、制御ロジックで求めた蓄電池200-1が放電する電力値から、その蓄電池200-1を合成する蓄電池100-1~100-mの各蓄電池の放電量を求める。また、充放電制御部8は、制御ロジックで求めた蓄電池200-2が放電する電力値から、その蓄電池200-2を合成する蓄電池100-(m+1)~100-nの各蓄電池の放電量を求める。その際には、充放電制御部8は、再度、蓄電池100-1~100-mの中で上記合成処理を実施して図3に示す制御ロジックで放電量を求めてもよい。同様に、充放電制御部8は、蓄電池100-(m+1)~100-nの中で上記合成処理を実施して図3に示す制御ロジックで放電量を求めてもよい。このように、蓄電池3が4つ以上であっても、それらの蓄電池3を2つの蓄電池とみなして図3に示す制御ロジックを適用して、SOCが同一になるような放電量を求めていく放電量算出処理を、各蓄電池3の放電量が求まるまで実施してもよい。
【0066】
(変形例5)
上記実施形態では、充放電制御部8は、複数の蓄電池3から合計で所定の電力を放電させる場合には、SOCが最も大きい蓄電池3から優先的に放電させていき、複数の蓄電池3のうち、一部の蓄電池3が所定の電力よりも余剰に放電可能であれば、余剰分の電力をSOCが最も小さい蓄電池3に優先的に充電させる。ただし、本発明はこれに限定されず、充放電制御部8は、複数の蓄電池3から所定の電力を充電させる場合(EPCが負)にも適用可能である。例えば、充放電制御部8は、夜間充電時や再生可能エネルギーの出力制御対策として充電を行う場合において、複数の蓄電池3のSOCを平準化する場合に上記制御を適用可能である。すなわち、充放電制御部8は、SOCが最も小さい蓄電池3から優先的に充電させていき、複数の蓄電池3のうち、一部の蓄電池3が所定の電力よりも余剰に充電可能であれば、当該余剰分の電力をSOCが最も大きい蓄電池3に優先的に放電させてもよい。
【0067】
上述したように、本発明の実施形態に係る電力管理装置5は、並列接続された複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御する充放電制御部8を備えている。そして、この充放電制御部8は、各エネルギー貯蔵装置の充電率が同一になるように、各エネルギー貯蔵装置の充放電を制御する。
【0068】
このような構成によれば、複数のエネルギー貯蔵装置のSOCを同一になるように制御するため、所望の電力を得ることが可能となり、複数のエネルギー貯蔵装置の出力を一体として制御してピークカット効果の減少を防止することができる。
【0069】
また、本発明の実施形態に係る電力管理装置5は、充放電する電力量を予測することなくSOCを同一にすることが可能となる。
【0070】
また、充放電制御部8は、各エネルギー貯蔵装置の充電率が同一になるように各エネルギー貯蔵装置の出力分担を調整してもよい。
【0071】
その際には、充放電制御部8は、各エネルギー貯蔵装置の充電率及び定格出力に応じて出力分担を決定してもよい。
【符号の説明】
【0072】
A 電力供給システム
1 分散型電源装置
2 インバータ
3 蓄電池(エネルギー貯蔵装置)
5 電力管理装置
6 充電率算出部
7 記憶部
8 充放電制御部(制御部)
図1
図2
図3
図4