(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】繊維機械
(51)【国際特許分類】
D01D 7/00 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
D01D7/00 C
(21)【出願番号】P 2019073238
(22)【出願日】2019-04-08
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】利山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 研志
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/193803(WO,A1)
【文献】特開平03-216465(JP,A)
【文献】特開平05-246623(JP,A)
【文献】特開平05-319696(JP,A)
【文献】米国特許第04023339(US,A)
【文献】特開2017-082379(JP,A)
【文献】特開2017-082381(JP,A)
【文献】特開2018-087067(JP,A)
【文献】中国実用新案第208234289(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00ー13/02
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向と交差する所定方向に並べて設置された複数の糸処理装置と、
前記所定方向に沿って延びた1本のレール部材と、
前記1本のレール部材に吊り下げられた状態で前記所定方向に移動し、前記複数の糸処理装置に対して所定の作業を行う作業ロボットと、を備える繊維機械であって、
前記複数の糸処理装置が設置された床面から離れた位置に固定配置された固定部を有し、
前記作業ロボットは、
前記レール部材に吊り下げられた本体部と、
前記本体部を前記所定方向に移動させる移動部と、
前記本体部に設けられた、前記移動部の動作が停止しているときに前記所定の作業を行うための作業部と、
前記本体部に設けられ、鉛直方向及び前記所定方向の両方と直交する直交方向における前記本体部の揺動を抑制する揺動抑制部と、を有し、
前記揺動抑制部及び前記固定部の何れか一方は、
前記作業部の動作中に、少なくとも前記直交方向において、前記揺動抑制部及び前記固定部のうち残りの他方を挟むように位置している規制部を有
し、
前記揺動抑制部は、
前記揺動抑制部及び前記固定部のうち前記他方と前記規制部とが互いに接触している接触状態と、これらが互いに接触していない非接触状態との間で状態を切り換える状態切換部を有し、
前記揺動抑制部が前記接触状態であるとき、前記規制部によって前記揺動抑制部及び前記固定部のうち前記他方が前記直交方向において挟まれて把持されることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
前記固定部は、前記レール部材であることを特徴とする
請求項1に記載の繊維機械。
【請求項3】
前記揺動抑制部が、前記規制部を有することを特徴とする
請求項2に記載の繊維機械。
【請求項4】
前記規制部は、
鉛直方向に対して傾きを有し、前記レール部材の前記直交方向における一方側の端部に当接可能な第1面と、同じく鉛直方向に対して傾きを有し、前記レール部材の前記直交方向における他方側の端部に当接可能な第2面と、が形成された接触部材を有し、
前記揺動抑制部は、
前記接触部材を少なくとも鉛直方向に移動駆動することにより、前記接触部材と前記レール部材とが互いに接触している接触状態と、これらが互いに接触していない非接触状態との間で状態を切り換える駆動装置を有することを特徴とする
請求項3に記載の繊維機械。
【請求項5】
前記揺動抑制部は、前記本体部の下端よりも上側に配置されていることを特徴とする
請求項1~4のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項6】
前記揺動抑制部は、
鉛直方向から見たとき、前記本体部の外郭線の内側に配置されていることを特徴とする
請求項1~5のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項7】
鉛直方向と交差する所定方向に並べて設置された複数の糸処理装置と、
前記所定方向に沿って延びた1本のレール部材と、
前記1本のレール部材に吊り下げられた状態で前記所定方向に移動し、前記複数の糸処理装置に対して所定の作業を行う作業ロボットと、を備える繊維機械であって、
前記複数の糸処理装置が設置された床面から離れた位置に固定配置された固定部を有し、
前記作業ロボットは、
前記レール部材に吊り下げられた本体部と、
前記本体部を前記所定方向に移動させる移動部と、
前記本体部に設けられた、前記移動部の動作が停止しているときに前記所定の作業を行うための作業部と、
前記本体部に設けられ、鉛直方向及び前記所定方向の両方と直交する直交方向における前記本体部の揺動を抑制する揺動抑制部と、を有し、
前記固定部は、
前記直交方向に沿うように配置された一対の接触面を有し、
前記揺動抑制部は、
前記作業部の動作中に、前記一対の接触面に接触して前記固定部を挟持している挟持部を有
し、
前記揺動抑制部は、
前記一対の接触面と前記挟持部とが互いに接触している接触状態と、前記一対の接触面の一方の接触面と前記挟持部とが互いに接触していない非接触状態との間で状態を切り換える状態切換部を有することを特徴とする繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の紡糸巻取設備(繊維機械)においては、紡糸を引き取ってボビンに巻き取る複数の引取ユニット(糸処理装置)に対し、糸掛ロボット(作業ロボット)が糸掛けを行う。作業ロボットは、引取ユニットの配列方向に延設された2本のガイドレールに車輪を介して吊り下げられた状態で、ガイドレール(レール部材)に沿って移動可能に構成されている。作業ロボットは、ある糸処理装置の前で停止してロボットアーム(作業部)を動作させることにより、当該糸処理装置への糸掛作業(所定の作業)を行う。
【0003】
ところで、近年、上記作業ロボットの小型化を目的として、1本のレール部材に沿って走行可能な作業ロボットの製造が検討されている。このような作業ロボットは、1本のレール部材の上に車輪が乗るように構成されるため、2本のレール部材を介して吊り下げられる構成と比べて、車輪の軸方向(レール部材に直交する直交方向)に揺れやすいという問題がある。例えば、作業部が動作したときに、上記直交方向における重量のバランスが変化することにより作業ロボットが揺れる。その結果、周りの部材との干渉、或いは、糸掛作業に支障が生じる等のおそれがある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献2に記載の玉揚装置における位置決め機構を作業ロボットに適用することが考えられる。具体的には、作業本体部から下方に延びるように設けられた柱状部材を、床面に形成されたガイドに沿わせる。このようにすることで、レール部材と垂直な方向における作業ロボットの揺れの抑制が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-82381号公報
【文献】CN208234289U
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような位置決め機構が設けられた構成では、レール部材に沿って移動する作業ロボットが、鉛直方向においてレール部材から床面に亘って空間を占有することとなる。このため、作業スペースが狭くなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、吊り下げられた状態で移動する作業ロボットの鉛直方向における大型化を回避しつつ、作業部の動作中における作業ロボットの揺れを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の繊維機械は、鉛直方向と交差する所定方向に並べて設置された複数の糸処理装置と、前記所定方向に沿って延びた1本のレール部材と、前記1本のレール部材に吊り下げられた状態で前記所定方向に移動し、前記複数の糸処理装置に対して所定の作業を行う作業ロボットと、を備える繊維機械であって、前記複数の糸処理装置が設置された床面から離れた位置に固定配置された固定部を有し、前記作業ロボットは、前記レール部材に吊り下げられた本体部と、前記本体部を前記所定方向に移動させる移動部と、前記本体部に設けられた、前記移動部の動作が停止しているときに前記所定の作業を行うための作業部と、前記本体部に設けられ、鉛直方向及び前記所定方向の両方と直交する直交方向における前記本体部の揺動を抑制する揺動抑制部と、を有し、前記揺動抑制部及び前記固定部の何れか一方は、前記作業部の動作中に、少なくとも前記直交方向において、前記揺動抑制部及び前記固定部のうち残りの他方を挟むように位置している規制部を有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、作業部の動作に伴い作業ロボットが意図せず揺動しようとしたとき、揺動抑制部及び固定部の何れか一方に配置された規制部が、揺動抑制部及び固定部のうち残りの他方に接触することで、本体部が直交方向においてそれ以上揺動することを抑制できる。ここで、固定部は、床面から離れた位置に固定配置されているので、揺動抑制部を床面まで延ばす必要がない。したがって、吊り下げられた状態で移動する作業ロボットの鉛直方向における大型化を回避しつつ、作業部の動作中における作業ロボットの揺れを抑制できる。
【0010】
第2の発明の繊維機械は、前記第1の発明において、前記揺動抑制部は、前記揺動抑制部及び前記固定部のうち前記他方と前記規制部とが互いに接触している接触状態と、これらが互いに接触していない非接触状態との間で状態を切り換える状態切換部を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、状態切換部によって、揺動抑制部及び固定部のうち残りの他方と規制部とを積極的に接触させる(言い換えると、揺動抑制部と固定部とを積極的に接触させる)ことにより、直交方向における作業ロボットの揺れを効果的に抑制できる。また、作業ロボットを移動させるときには、揺動抑制部と固定部との接触を解除する(すなわち、非接触状態にする)ことにより、部材の破損を防止できる。
【0012】
第3の発明の繊維機械は、前記第1又は第2の発明において、前記固定部は、前記レール部材であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、作業ロボットが移動するために必要なレール部材を固定部として兼用できるので、レール部材とは別の固定部を新たに設ける必要がない。したがって、部材コストの増大を抑制できる。
【0014】
第4の発明の繊維機械は、前記第3の発明において、前記揺動抑制部が、前記規制部を有することを特徴とするものである。
【0015】
一般的に、レール部材には、他の部材を直交方向に挟むように配置される規制部は設けられていない。このため、レール部材に規制部を新たに設ける場合、加工の手間やコストがかかるという問題がある。本発明では、規制部が揺動抑制部側に設けられているので、レール部材の加工の手間やコストを省くことができる。
【0016】
第5の発明の繊維機械は、前記第4の発明において、前記規制部は、鉛直方向に対して傾きを有し、前記レール部材の前記直交方向における一方側の端部に当接可能な第1面と、同じく鉛直方向に対して傾きを有し、前記レール部材の前記直交方向における他方側の端部に当接可能な第2面と、が形成された接触部材を有し、前記揺動抑制部は、前記接触部材を少なくとも鉛直方向に移動駆動することにより、前記接触部材と前記レール部材とが互いに接触している接触状態と、これらが互いに接触していない非接触状態との間で状態を切り換える駆動装置を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明では、接触部材を駆動装置によって移動させて第1面及び第2面を固定部に当接させることにより、本体部の直交方向における揺動を規制できる。したがって、単純な構成によって、作業部の動作中における作業ロボットの揺れを効果的に抑制できる。
【0018】
第6の発明の繊維機械は、前記第1~第5のいずれかの発明において、前記揺動抑制部は、前記本体部の下端よりも上側に配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明では、揺動抑制部が、前記本体部の下端よりも上側に配置されている。言い換えると、揺動抑制部が本体部から下側にはみ出していない。したがって、作業ロボットの鉛直方向における大型化を回避できる。
【0020】
第7の発明の繊維機械は、前記第1~第6のいずれかの発明において、前記揺動抑制部は、鉛直方向から見たとき、前記本体部の外郭線の内側に配置されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明では、鉛直方向から見たとき、揺動抑制部が本体部の外郭線の内側に配置されている。言い換えると、揺動抑制部が水平方向において本体部からはみ出していない。したがって、作業ロボットの水平方向における大型化を回避できる。
【0022】
第8の発明の繊維機械は、鉛直方向と交差する所定方向に並べて設置された複数の糸処理装置と、前記所定方向に沿って延びた1本のレール部材と、前記1本のレール部材に吊り下げられた状態で前記所定方向に移動し、前記複数の糸処理装置に対して所定の作業を行う作業ロボットと、を備える繊維機械であって、前記複数の糸処理装置が設置された床面から離れた位置に固定配置された固定部を有し、前記作業ロボットは、前記レール部材に吊り下げられた本体部と、前記本体部を前記所定方向に移動させる移動部と、前記本体部に設けられた、前記移動部の動作が停止しているときに前記所定の作業を行うための作業部と、前記本体部に設けられ、鉛直方向及び前記所定方向の両方と直交する直交方向における前記本体部の揺動を抑制する揺動抑制部と、を有し、前記固定部は、前記直交方向に沿うように配置された一対の接触面を有し、前記揺動抑制部は、前記作業部の動作中に、前記一対の接触面に接触して前記固定部を挟持している挟持部を有することを特徴とするものである。
【0023】
本発明では、揺動抑制部の挟持部が一対の接触面に接触して固定部を挟持することにより、挟持部と接触面との間に摩擦力を発生させることができる。この摩擦力は、本体部が直交方向に揺動しようとしたときに、揺動を抑制する向きに働く。また、固定部は、床面から離れた位置に固定配置されているので、揺動抑制部を床面まで延ばす必要がない。したがって、吊り下げられた状態で移動する作業ロボットの鉛直方向における大型化を回避しつつ、作業部の動作中における作業ロボットの揺れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る紡糸引取機の正面図である。
【
図3】(a)~(c)は、糸掛ロボットの概略的な構造を示す説明図である。
【
図4】紡糸引取機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】(a)、(b)は、ゴデットローラへの糸掛けを示す説明図である。
【
図6】(a)~(c)は、揺動抑制部の構造を示す説明図である。
【
図7】(a)~(c)は、変形例に係る揺動抑制部の構造を示す説明図である。
【
図8】(a)、(b)は、別の変形例に係る揺動抑制部の構造を示す説明図である。
【
図9】(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る揺動抑制部の構造を示す説明図である。
【
図10】(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る揺動抑制部の構造を示す説明図である。
【
図11】(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る揺動抑制部の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、
図1及び
図2に示す方向を上下方向、左右方向及び前後方向とする。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。左右方向(本発明の所定方向)は、上下方向と直交し、後述の引取ユニット3が並べて配置された方向である。前後方向(本発明の直交方向)は、上下方向及び左右方向の両方と直交する方向である。左右方向及び前後方向は、水平方向と平行である。
【0026】
(紡糸引取機の概略構成)
図1は、本実施形態に係る紡糸引取機1(本発明の繊維機械)の正面図である。紡糸引取機1は、複数の引取ユニット3(本発明の糸処理装置)と、糸掛ロボット4(本発明の作業ロボット)とを備える。複数の引取ユニット3は、左右方向に配列され、各々が、上方に配置された不図示の紡糸装置から紡出される糸Yを引き取り、複数のボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。糸掛ロボット4は、左右方向に移動可能に構成され、引取ユニット3によるパッケージ形成の前に、引取ユニット3を構成する部材に糸Yを掛ける糸掛作業を行う。
【0027】
(引取ユニット)
次に、各引取ユニット3の構成について、
図2を参照しつつ説明する。
図2は、引取ユニット3の側面図である。
【0028】
図2に示すように、引取ユニット3は、第1ゴデットローラ12と、第2ゴデットローラ13と、巻取部14とを備える。第1ゴデットローラ12は、軸方向が左右方向と略平行なローラであり、巻取部14の前端部の上方に配置されている。第1ゴデットローラ12は、第1ゴデットモータ111(
図4参照)によって回転駆動される。第2ゴデットローラ13は、軸方向が左右方向と略平行なローラであり、第1ゴデットローラ12よりも上方且つ後方に配置されている。第2ゴデットローラ13は、第2ゴデットモータ112(
図4参照)によって回転駆動される。
【0029】
第2ゴデットローラ13は、ガイドレール15に移動可能に支持されている。ガイドレール15は、上方且つ後方に向かって斜めに延びている。第2ゴデットローラ13は、例えば、モータ113(
図4参照)、不図示のプーリ対及びベルト等によって、ガイドレール15に沿って移動可能に構成されている。これにより、第2ゴデットローラ13は、糸Yの巻取りを行うときの位置(
図2の実線参照)と、第1ゴデットローラ12に近接して配置される、糸掛けを行うときの位置(
図2の一点鎖線参照)との間で移動可能となっている。
【0030】
巻取部14は、複数の糸Yを複数のボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する巻取動作を行うように構成されている。巻取部14は、第1ゴデットローラ12及び第2ゴデットローラ13の下方に配置されている。巻取部14は、複数の支点ガイド21と、複数のトラバースガイド22と、ターレット23と、2本のボビンホルダ24と、コンタクトローラ25とを備える。
【0031】
複数の支点ガイド21は、糸Yが各トラバースガイド22によって綾振りされる際の支点となるガイドである。複数の支点ガイド21は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に配列されている。複数の支点ガイド21は、前後方向に互いに離れて配置される、糸Yを巻き取るときの位置と、前側に集まるように配置される、糸掛けが行われるときの位置との間で移動可能に構成されている(図示省略)。
【0032】
複数のトラバースガイド22は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に並べて配置されている。各トラバースガイド22は、トラバースモータ114(
図4参照)によって駆動され、前後方向に往復移動する。これにより、トラバースガイド22に掛けられた糸Yが、支点ガイド21を中心に綾振りされる。
【0033】
ターレット23は、軸方向が前後方向と平行な円板状の部材である。ターレット23は、不図示のターレットモータによって回転駆動される。2本のボビンホルダ24は、それぞれ、軸方向が前後方向と平行であり、ターレット23の上端部及び下端部に回転自在に支持されている。各ボビンホルダ24には、複数の糸Yに対して個別に設けられた複数のボビンBが前後方向(ボビン軸方向)に並べて装着されている。2つのボビンホルダ24は、それぞれ、個別の巻取モータ115(
図4参照)によって回転駆動される。
【0034】
コンタクトローラ25は、軸方向が前後方向と略平行なローラであり、上側のボビンホルダ24のすぐ上方に配置されている。コンタクトローラ25は、上側のボビンホルダ24に支持された複数のパッケージPの表面に接触することで、巻取中のパッケージPの表面に接圧を付与して、パッケージPの形状を整える。
【0035】
以上の構成を有する巻取部14において、上側のボビンホルダ24が回転駆動されると、トラバースガイド22によって綾振りされた糸YがボビンBに巻き取られて、パッケージPが形成される。また、パッケージPが満巻きになった場合、ターレット23が回転させられることにより、2本のボビンホルダ24の上下の位置が入れ換わる。これにより、下側に位置していたボビンホルダ24が上側に移動し、このボビンホルダ24に装着されたボビンBに糸Yを巻き取ってパッケージPを形成することができる。また、満巻きになったパッケージPが装着されたボビンホルダ24は下側に移動し、例えば不図示のパッケージ回収装置によってパッケージPが回収される。
【0036】
(糸掛ロボット)
次に、糸掛ロボット4について
図3(a)~(c)を参照しつつ説明する。
図3(a)は、糸掛ロボット4全体の側面図である。
図3(b)は、
図3(a)の拡大図であり、糸掛ロボット4の上端部を示す説明図である。
図3(c)は、糸掛ロボット4の上端部を後方から見た図である。
【0037】
糸掛ロボット4は、引取ユニット3による巻取動作の前に、第1ゴデットローラ12、第2ゴデットローラ13、複数の支点ガイド21等に糸Yを掛ける糸掛作業(本発明の所定の作業)を行うように構成されている。糸掛ロボット4は、本体部31と、ロボットアーム32と、糸掛ユニット33と、移動部34とを備える。ロボットアーム32及び糸掛ユニット33が、本発明の作業部に相当する。
【0038】
本体部31は、概ね直方体形状に構成された部材である。一例として、
図3(a)に示すように、本体部31は、略直方体形状の枠体31aと、枠体31aの上面31bの前端部から上方へ突出するように設けられた板状の突出部31cとを有する。枠体31aの内部には、ロボットアーム32等の動作を制御する糸掛制御装置102(
図4参照)が設けられている。突出部31cには、移動部34の車輪36(後述)が回転可能に支持されている。
【0039】
ここで、複数の引取ユニット3の前側には、左右方向に延びたレール部材35(本発明の固定部)が配置されている。レール部材35は、例えば断面I字形状の部材である(
図3(b)参照)。レール部材35は、引取ユニット3が設置された床面5(
図1、2参照)から離れた位置に固定配置されている。従来は、レール部材35は前後方向に2本並べて配置されていた(例えば特開2017-82381号公報参照)が、本実施形態では、レール部材35は1本のみ配置されている。本体部31は、車輪36を介してレール部材35に吊り下げられている。
【0040】
ロボットアーム32は、例えば、本体部31の下面31dに取り付けられている。ロボットアーム32は、複数のアーム32aと、アーム32a同士を連結する複数の関節部32bとを有する。各関節部32bには、アームモータ122(
図4参照)が内蔵されている。アームモータ122(
図4参照)が駆動されると、アーム32aが関節部32bを中心に揺動する。
【0041】
糸掛ユニット33は、ロボットアーム32の先端部に取り付けられている。糸掛ユニット33は、不図示のサクション等を有し、糸Yを一時的に保持可能に構成されている。
【0042】
移動部34は、本体部31をレール部材35に沿って左右方向に移動させるように構成されている。移動部34は、本体部31の突出部31cに回転可能に取り付けられた車輪36を有する。車輪36は、1本のレール部材35の上面に乗るように配置されている(
図3(b)参照)。車輪36は、左右方向において2つ設けられている(
図3(c)参照)。車輪36は、移動用モータ121(
図4参照)によって駆動される。ここで、移動部34は、従来のように前後方向において2本並べて配置されたレール部材35に乗るように構成されるものではなく、従来と比べて前後方向において小型化されている。また、これに伴い、本体部31も、従来と比べて前後方向において小型化されている(すなわち、上下方向に細長くなっている)。
【0043】
(紡糸引取機の電気的構成)
次に、紡糸引取機1の電気的構成について、
図4のブロック図を参照しつつ説明する。
図4に示すように、紡糸引取機1では、各引取ユニット3に引取ユニット制御装置101が設けられ、引取ユニット制御装置101が、第1ゴデットモータ111、第2ゴデットモータ112、モータ113、トラバースモータ114、巻取モータ115等の動作を制御する。なお、各引取ユニット3は、トラバースモータ114を複数備え、巻取モータ115を2つ備えているが、
図4では、これらのモータをそれぞれ1つだけ図示している。
【0044】
また、紡糸引取機1では、糸掛ロボット4に糸掛制御装置102が設けられている。糸掛制御装置102は、移動用モータ121、アームモータ122、糸掛ユニット33、シリンダ42(後述)等の動作を制御する。なお、ロボットアーム32は、複数の関節部32bを有し、複数の関節部32bに対応する複数のアームモータ122を有しているが、
図4では、アームモータ122を1つだけ図示している。
【0045】
さらに、紡糸引取機1は、装置全体の制御を行うための制御装置100を備えている。制御装置100は、複数の引取ユニット3に設けられた複数の引取ユニット制御装置101、及び、糸掛制御装置102と接続されており、複数の引取ユニット制御装置101及び糸掛制御装置102の動作を制御することによって、紡糸引取機1全体の動作を制御する。
【0046】
(糸掛作業の概略)
次に、糸掛ロボット4による糸掛作業の概略について説明する。
図5(a)、(b)は、第1ゴデットローラ12及び第2ゴデットローラ13への糸掛けの動作を示す説明図である。糸掛けを開始する前に、糸掛けの対象である引取ユニット3の引取ユニット制御装置101は、モータ113を制御して、第2ゴデットローラ13を第1ゴデットローラ12に近接させておく(
図2の一点鎖線参照)。
【0047】
糸掛制御装置102は、移動用モータ121を制御して車輪36を駆動させ、糸掛けの対象となる引取ユニット3と前後方向に重なる位置まで糸掛ロボット4を移動させる。次に、糸掛制御装置102は、ロボットアーム32及び糸掛ユニット33を制御し、紡糸装置から紡出された複数の糸Yを保持させる。さらに、糸掛制御装置102は、ロボットアーム32を駆動させ、糸掛ユニット33に糸掛作業を行わせる。具体的には、糸掛制御装置102は、まず第1ゴデットローラ12への糸掛け(
図5(a)参照)を糸掛ユニット33に行わせ、次に第2ゴデットローラ13への糸掛け(
図5(b)参照)を糸掛ユニット33に行わせる。さらに、糸掛制御装置102は、複数の支点ガイド21への糸掛けを糸掛ユニット33に行わせる(図示省略)。
【0048】
ここで、上述したように、移動部34及び本体部31は、従来と比べて前後方向において小型化されている。つまり、従来と比べて細長い形状となっている。このため、糸掛作業中、ロボットアーム32及び糸掛ユニット33の動作に伴い、前後方向(すなわち、車輪36の軸方向)における重量のバランスが大きく変化しやすく、糸掛ロボット4が前後方向に意図せず揺動しやすい(
図5(a)、(b)の矢印参照)。このため、周りの部材との干渉、或いは、糸掛作業に支障が生じる等のおそれがある。
【0049】
そうかといって、例えば、床面5(
図1、2参照)に溝等のガイドを左右方向に延びるように設け、糸掛ロボット4の本体部31に下方へ延びる柱状部材を取り付けて、柱状部材をガイドに沿わせるようにしたのでは、以下のような問題が生じる。すなわち、糸掛ロボット4が、鉛直方向においてレール部材35から床面5に亘って空間を占有することとなり、作業スペースが狭くなるという問題がある。そこで、本実施形態では、糸掛ロボット4の鉛直方向における大型化を回避しつつ、ロボットアーム32等の動作中における糸掛ロボット4の揺れを抑制するため、紡糸引取機1が、以下のような揺動抑制部40を備える。
【0050】
(揺動抑制部)
揺動抑制部40について、
図6(a)~(c)を参照しつつ説明する。
図6(a)、(b)は、糸掛ロボット4の上側部分の側面図である。
図6(c)は、糸掛ロボット4の平面図である。なお、
図6(c)においては、図面の見やすさのため、レール部材35を二点鎖線で示している。
【0051】
揺動抑制部40は、糸掛ロボット4の本体部31に設けられ、本体部31の前後方向への動きを規制することによって本体部31の揺動を抑制するように構成されている。
図6(a)~(c)に示すように、揺動抑制部40は、例えば、本体部31の上面31bの上に設けられ、レール部材35の真下に配置されている。言い換えると、揺動抑制部40は、本体部31の下面31d(本体部31の下端)よりも上側に配置されている。また、
図6(c)に示すように、揺動抑制部40は、上下方向から見たときに、本体部31の外郭線31eの内側に配置されている。揺動抑制部40は、例えば、Vブロック41(本発明の規制部及び接触部材)と、シリンダ42(本発明の状態切換部及び駆動装置)とを有する。
【0052】
Vブロック41は、概ね直方体状のブロックに三角柱状の切欠きが形成された部材である。Vブロック41は、上側且つ後側(斜め上後方)を向いた平面状の第1面41aと、上側且つ前側(斜め上前方)を向いた平面状の第2面41bとを有する。Vブロック41を左右方向から見たときに、第1面41a及び第2面41bによってV字が形成されている(
図6(a)、(b)参照)。第1面41aは、前側(本発明の直交方向における一方側)に向かうほど上側に延びている。第1面41aは、レール部材35の下側部分の前端部35aの下方に位置している。第2面41bは、第1面41aの後側に配置され、後側(本発明の直交方向における他方側)に向かうほど上側に延びている。つまり、第1面41a及び第2面41bは、鉛直方向に対して傾きを有している。第2面41bは、レール部材35の下側部分の後端部35bの下方に位置している。Vブロック41の下面は、シリンダ42に接続されている。
【0053】
シリンダ42は、例えば圧縮空気の圧力により、Vブロック41を上下方向に移動駆動するためのものである。シリンダ42は、図示しない圧空源に接続されている。シリンダ42は、上下方向に伸縮可能なピストンロッド42aを有する。ピストンロッド42aの先端(上端)には、Vブロック41が接続されている。
【0054】
シリンダ42に圧縮空気が供給されていないとき、Vブロック41の第1面41a及び第2面41bは、レール部材35に接触していない(非接触状態。
図6(a)参照)。このとき、本体部31の前後方向における揺動は規制されていない。つまり、Vブロック41がレール部材35と干渉しないので、移動部34によって本体部31を移動させることができる。一方、シリンダ42に圧縮空気が供給されたとき、Vブロック41がピストンロッド42aと一体的に上昇する(
図6(b)の矢印参照)。このとき、Vブロック41の第1面41aがレール部材35の前端部35aに当接し、Vブロック41の第2面41bがレール部材35の後端部35bに当接する(接触状態。
図6(b)参照)。このように、揺動抑制部40は、シリンダ42によって、接触状態と非接触状態との間で状態を切換可能である。
【0055】
揺動抑制部40が接触状態であるとき、Vブロック41によってレール部材35が前後方向において挟まれる(把持される)ことにより、Vブロック41及びシリンダ42が取り付けられた本体部31の前後方向における揺動が規制される。すなわち、Vブロック41がレール部材35の前後方向における両端部に接触しているため、上述した糸掛作業中に本体部31が前後方向に意図せず揺動しようとしたとき、本体部31の揺動が効果的に抑えられる。これにより、糸掛ロボット4の前後方向における揺動が抑制される。
【0056】
以上のように、ロボットアーム32等の動作に伴い糸掛ロボット4が意図せず揺動しようとしたとき、揺動抑制部40に配置されたVブロック41が、レール部材35に接触することにより、本体部31の直交方向における揺動を規制できる。ここで、レール部材35は、床面5から離れた位置に固定配置されているので、揺動抑制部40を床面まで延ばす必要がない。したがって、吊り下げられた状態で移動する糸掛ロボット4の鉛直方向における大型化を回避しつつ、ロボットアーム32等の動作中における糸掛ロボット4の揺れを抑制できる。
【0057】
また、シリンダ42によって、レール部材35とVブロック41とを積極的に接触させることにより、前後方向における糸掛ロボット4の揺れを効果的に抑制できる。また、糸掛ロボット4を移動させるときには、揺動抑制部40とレール部材35との接触を解除する(すなわち、非接触状態にする)ことにより、部材の破損を防止できる。
【0058】
また、固定配置されたレール部材35を固定部としてそのまま利用できるので、レール部材35とは別の固定部を新たに設ける必要がない。したがって、部材コストの増大を抑制できる。
【0059】
また、揺動抑制部40が、レール部材35を挟むVブロック41(規制部)を有する。つまり、規制部が揺動抑制部40側に設けられているので、レール部材35に規制部を新たに設ける場合と比べて、レール部材35の加工の手間やコストを省くことができる。
【0060】
また、Vブロック41をシリンダ42によって移動させて第1面41a及び第2面41bをレール部材35に当接させることにより、本体部31の前後方向(直交方向)における揺動を規制できる。したがって、単純な構成によって、ロボットアーム32等の動作中における糸掛ロボット4の揺れを効果的に抑制できる。
【0061】
また、揺動抑制部40が、本体部31の下端(下面31d)よりも上側に配置されている。言い換えると、揺動抑制部40が本体部31から下側にはみ出していない。したがって、糸掛ロボット4の鉛直方向における大型化を回避できる。
【0062】
また、鉛直方向から見たとき、揺動抑制部40が本体部31の外郭線31eの内側に配置されている。言い換えると、揺動抑制部40が水平方向において本体部31からはみ出していない。したがって、糸掛ロボット4の水平方向における大型化を回避できる。
【0063】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0064】
(1)前記実施形態において、糸掛ロボット4に1つの揺動抑制部40が設けられているものとしたが、これには限られない。揺動抑制部40は、複数設けられていても良い。
【0065】
(2)前記までの実施形態において、シリンダ42によってVブロック41が上下方向に移動させられるものとしたが、Vブロック41の移動方向は、鉛直方向に対して傾きを有していても良い。例えば、Vブロック41の移動方向が左右方向に多少傾いていても良い。また、Vブロック41の第1面41a及び第2面41bは平面状であるものとしたが、これには限られない。例えば、これらの面は湾曲していても良い。
【0066】
(3)前記までの実施形態において、Vブロック41をシリンダ42によって移動させて第1面41a及び第2面41bをレール部材35に当接させることにより、本体部31の前後方向における揺動を規制するものとしたが、これには限られない。以下、
図7(a)~(c)を参照しつつ説明する。
図7(a)は、糸掛ロボット4aの上側部分の側面図である。
図7(b)、(c)は、糸掛ロボット4aの平面図である。
図7(a)~(c)に示すように、糸掛ロボット4aは、揺動抑制部50を有する。揺動抑制部50は、例えば、本体部31の上面31bの上に設けられたモータ51と、モータ51の回転軸51aに接続された回転テーブル52と、回転テーブル52の径方向外側端部に立設された一対のカムフォロア53とを有する。モータ51の回転軸51aは、モータ51の本体から上側へ延びている。回転テーブル52の回転中心は、回転軸51aの回転中心と一致している。一対のカムフォロア53は、少なくとも前後方向においてレール部材35の下端部を挟むように配置されている。一対のカムフォロア53は、回転テーブル52の回転中心を挟んで互いに反対側に配置され、略垂直に立っている。
【0067】
モータ51の回転軸51aを回転させると、回転テーブル52及び一対のカムフォロア53が回転軸51aと一体的に回転する。これにより、一対のカムフォロア53とレール部材35との前後方向における間隔を変更できる。つまり、カムフォロア53がレール部材35の前端面35c、後端面35dに接触していない非接触状態(
図7(b)参照)と、カムフォロア53が前端面35c、後端面35dに接触している接触状態(
図7(c)参照)との間で、揺動抑制部50の状態を切り換えることができる。なお、揺動抑制部50が接触状態であるとき、一対のカムフォロア53の左右方向における位置が互いにずれていても良い。すなわち、一対のカムフォロア53は、少なくとも前後方向においてレール部材35を挟んでいれば良い。このようにすることで、本体部31の前後方向における揺動を規制できる。モータ51が、本発明の状態切換部に相当する。一対のカムフォロア53が、本発明の規制部に相当する。
【0068】
(4)前記までの実施形態において、レール部材35が揺動抑制部40或いは揺動抑制部50によって挟まれるものとしたが、挟まれる対象物はレール部材35に限られない。以下、具体例について
図8(a)、(b)を参照しつつ説明する。
図8(a)、(b)は、糸掛ロボット4bの上側部分の側面図である。糸掛ロボット4bは、揺動抑制部60を有する。また、糸掛ロボット4bの近傍には、例えば、固定配置された梁部材37にピン部材38が取り付けられている。ピン部材38は、下側へ延び、且つ、床面5(
図1等参照)から離れた位置に配置されている。揺動抑制部60は、シリンダ61と、ブロック62とを有する。シリンダ61は、本体部31の枠体31aの前面に取り付けられている。つまり、揺動抑制部60は、水平方向において本体部31からはみ出していても良い。シリンダ61のピストンロッド61aは、シリンダ61の本体から上向きに延びており、上下方向に伸縮可能である。ブロック62は、例えば、ピン部材38の真下に配置されている。ブロック62の上面には、下方へ延びた溝62aが形成されており、溝62aにピン部材38を相対的に入り込ませることができるようになっている。ブロック62は、ピストンロッド61aの上端に取り付けられている。
【0069】
シリンダ61に圧縮空気が供給されていない状態では、
図8(a)に示すように、ブロック62とピン部材38は、上下方向において互いに離隔している。一方、シリンダ61に圧縮空気が供給されてピストンロッド61aが上側へ延びると、
図8(b)に示すように、ブロック62が上昇し、溝62aにピン部材38が入り込む。つまり、ブロック62が、前後方向においてピン部材38を挟むように配置される。ここで「挟むように配置される」とは、揺動抑制部60とピン部材38とが互いに接触していても良く、或いは互いにわずかに隙間を空けて配置されていても良いことを意味する。これは、前記までの実施形態においても同様である。このような構成により、本体部31が前後方向に揺動しようとしたとき、ブロック62がピン部材38に接触することで、本体部31がそれ以上揺動することが規制される。ブロック62が、本発明の規制部に相当する。ピン部材38が、本発明の固定部に相当する。
【0070】
(5)前記(4)の変形例において、ブロック62がシリンダ61に取り付けられ、ピン部材38が梁部材37に取り付けられているものとしたが、これには限られない。例えば、
図9(a)、(b)に示すように、梁部材37にブロック62が下向きに取り付けられていても良い。さらに、糸掛ロボット4cの揺動抑制部70において、シリンダ61のピストンロッド61aにピン部材38が取り付けられていても良い。そして、シリンダ61に圧縮空気を供給してピストンロッド61aを上側へ伸ばすことにより、ピン部材38をブロック62の溝62aに入り込ませても良い。この場合、ブロック62が、本発明の固定部に相当し、且つ、規制部に相当する。
【0071】
(6)前記までの実施形態の他にも、様々な変形例が考えられる。例えば、レール部材35の下面に穴が形成され、糸掛ロボットが当該穴に差込可能なピン部材(不図示)を有していても良い。さらに、ピン部材が鉛直方向に移動可能に構成され、ピン部材が前後方向においてレール部材35によって挟まれるように移動しても良い。
【0072】
(7)前記までの実施形態において、例えば揺動抑制部40は、糸掛ロボット4の本体部31の上面31bの上に(すなわち、本体部31の下端よりも上側に)配置されているものとしたが、これには限られない。揺動抑制部40は、枠体31aの中に入り込むように配置されていても良い。或いは、揺動抑制部40は、本体部31の下面31d(
図3(a)参照)よりも下側に配置されていても良い。
【0073】
(8)前記までの実施形態において、揺動抑制部40等が、シリンダ42等の駆動装置を有するものとしたが、これには限られない。以下、
図10(a)、(b)を参照しつつ説明する。
図10(a)は、糸掛ロボット4dの上側部分の側面図である。
図10(b)は、糸掛ロボット4dの平面図である。
図10(a)、(b)に示すように、レール部材35の下面には、例えば上述したようなピン部材38が、左右方向において所定の間隔を空けて取り付けられていても良い。また、糸掛ロボット4bの揺動抑制部80として、例えば本体部31の上面31bの上に、上述したようなブロック62が配置されていても良い。この場合、ブロック62は、糸掛ロボット4dが左右方向における所定位置(糸掛作業を行うための位置)に停止しているときに、ピン部材38を前後方向において挟むように配置される(
図10(b)参照)。このような構成では、糸掛ロボット4dが上記所定位置で停止し、ロボットアーム32等によって糸掛作業を行っているときに、本体部31が前後方向に揺動しようとすると、ブロック62がピン部材38に接触し、本体部31の揺動が規制される。このように、揺動抑制部80は、必ずしも駆動装置を有していなくても良い。
【0074】
(9)前記までの実施形態において、揺動抑制部及び固定部のうち一方が他方を前後方向において挟むように位置することにより、本体部31の前後方向における揺動を規制するものとしたが、他の手段によって本体部31の前後方向における揺動を抑制しても良い。以下、具体例について
図11(a)、(b)を参照しつつ説明する。糸掛ロボット4eの揺動抑制部90は、シリンダ42のピストンロッド42aの先端に取り付けられた直方体状のブロック91と、上述した車輪36とを有する。ここで、レール部材35は、前後方向及び左右方向に沿って互いに平行に形成された上面35e及び下面35fを有する。上面35e及び下面35fは、本発明の一対の接触面に相当する。上面35eには車輪36の外周面36aが接触している。ブロック91は、レール部材35の真下に配置されている。シリンダ42に圧縮空気が供給されていない状態では、ブロック91の上面91aとレール部材35の下面35fとが互いに離れている(
図11(a)参照)。シリンダ42に圧縮空気が供給されると、ピストンロッド42aが延びてブロック91が上方へ移動し、ブロック91の上面91aがレール部材35の下面35fに接触する(
図11(b)参照)。このように、車輪36及びブロック91がレール部材35を挟持する。車輪36及びブロック91は、本発明の挟持部に相当する。これにより、外周面36aと上面35eとの間、及び、上面91aと下面35fとの間に摩擦力を発生させることができる。この摩擦力は、本体部31が前後方向に揺動しようとしたときに、揺動を抑制する向きに働く。したがって、レール部材35を強く挟み込むことにより、ロボットアーム32等の動作中における糸掛ロボット4eの揺れを抑制できる。なお、摩擦力による揺動抑制のための構成は上述したものに限られない。例えば、車輪36を用いずにレール部材35を挟持するような構成を適用しても良い。また、レール部材35の代わりに、床面から離れた位置に固定配置された固定部を挟持する挟持部が設けられていても良い。固定部は、前後方向に沿って形成された一対の接触面を有していれば良い。
【0075】
(10)前記までの実施形態において、レール部材35が左右方向に延在している(すなわち、鉛直方向と直交している)ものとしたが、これには限られない。レール部材35は、鉛直方向と交差する方向に延びていても良い(つまり、水平方向に対して傾きを有していても良い)。
【0076】
(11)本発明は、上述した紡糸引取機1に限られず、糸掛ロボット4のような作業ロボットを備える様々な繊維機械に適用可能である。例えば、特開2017-190210号公報に記載されているように、レールに吊り下げられた状態で移動し、複数のワインダユニットにより形成された満巻のパッケージを玉揚げする玉揚台車を備える自動ワインダに本発明を適用しても良い。この場合、自動ワインダが本発明の繊維機械に相当し、玉揚台車が本発明の作業ロボットに相当する。或いは、特開平9-104565号公報に記載されているように、レールに吊り下げられた状態で移動し、複数の糸引き出しステーションにボビンを配備する装置(配備装置)を備えるテクスチャリング機械に本発明を適用しても良い。この場合、テクスチャリング機械が本発明の繊維機械に相当し、配備装置が本発明の作業ロボットに相当する。
【符号の説明】
【0077】
1 紡糸引取機(繊維機械)
3 引取ユニット(糸処理装置)
4 糸掛ロボット(作業ロボット)
5 床面
31 本体部
31e 外郭線
32 ロボットアーム(作業部)
33 糸掛ユニット(作業部)
34 移動部
35 レール部材(固定部)
35e 上面(接触面)
35f 下面(接触面)
36 車輪(挟持部)
40 揺動抑制部
41 Vブロック(規制部、接触部材)
41a 第1面
41b 第2面
42 シリンダ(状態切換部、駆動装置)
91 ブロック(挟持部)