(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】車両用の空気吹き出し装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
B60H1/34 651B
B60H1/34 611Z
(21)【出願番号】P 2019077741
(22)【出願日】2019-04-16
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】万徳 善久
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-149830(JP,A)
【文献】特開2016-117475(JP,A)
【文献】特開2018-150011(JP,A)
【文献】実開昭53-111657(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に空気を吹き出す車両用の空気吹き出し装置であって、
車両に搭載の空調装置(5)から送風された空気が流通するダクト(9)と、
前記ダクト(9)に流通する空気を吹き出す吹き出し口(11)が車幅方向に延びるスリット形状に設けられた内装パネル(13)と、
前記吹き出し口(11)から吹き出す空調風の向きを調節する風向板(15)とを備え、
前記風向板(15)は、前記吹き出し口(11)の長手方向に延びる軸部(85)と、該軸部(85)から突出して前記軸部(85)の長手方向に延びる板状のフィン部(87)とを有し、
前記風向板(15)の前記軸部(85)は、前記ダクト(9)または前記内装パネル(13)に対して、前記吹き出し口(11)の長手方向における両側に対応する位置で、前記吹き出し口(11)の長手方向に延びる軸(A)周りに回転可能に支持され、
前記風向板(15)の前記フィン部(87)は、前記吹き出し口(11)から車室内に臨んでおり、
前記ダクト(9)には、前記吹き出し口(11)の長手方向における中程の位置で、前記風向板(15)の前記軸部(85)のうち当該ダクト(9)の内方に臨む背面側を支持する背面支持部(59)が設けられ、
前記内装パネル(13)には、前記吹き出し口(11)の長手方向における中程の位置で、前記風向板(15)の前記軸部(85)のうち前記吹き出し口(11)の外方に臨む正面側を上下方向における両側で支持する一対の正面支持部(81,83)が設けられている
ことを特徴とする車両用の空気吹き出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用の空気吹き出し装置において、
前記風向板(15)の前記フィン部(87)は、前記軸部(85)の周方向における第1の範囲(R1)から先端に向かって薄くなる形状に突出する先細り部(89)と、前記軸部(85)の周方向における前記第1の範囲(R1)よりも狭い第2の範囲(R2)から平板状に突出する平板部(91)と、を有し、
前記一対の正面支持部(81,83)は、前記風向板(15)の前記軸部(85)のうち前記平板部(91)が設けられた部分(92)を支持している
ことを特徴とする車両用の空気吹き出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、車室内に空気を吹き出す車両用の空気吹き出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の車両用の空気吹き出し装置として、空調装置から送風された空気を吹き出す吹き出し口が内装パネルに対して車幅方向に細長く延びるスリット形状に設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような空気吹き出し装置では、車室内に吹き出す空調風の向きを上下方向に調整する風向板が、吹き出し口の内側に所定の角度範囲で回転可能に設けられ、吹き出し口の全長に亘って延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した車両用の空気吹き出し装置では、風向板は、吹き出し口に接続されるダクトの空気の吹き出し部分に支持されるが、吹き出し口の長手方向における両側に対応する位置で、風向板の長手方向における両端部が当該ダクトの空気の吹き出し部分に支持されているだけなので、車両走行時の振動によって繰り返し撓りやすく、そのことで異音を生じさせるおそれがある。
【0005】
そこで、風向板を長手方向に複数に分割し、個々の風向板の両端部をダクトの空気の吹き出し部分にそれぞれ支持させることで、各風向板を短くして撓り難くすることが考えられる。しかし、このような構成では、乗員から吹き出し口の内側に見える風向板の連続感が損なわれてしまい、車両内装の吹き出し口が設けられた部分の見栄えが悪くなる。
【0006】
本開示の技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用の空気吹き出し装置において、乗員から吹き出し口の内側に見える風向板の連続感を損なわずに、車両走行時の振動による風向板の撓りを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、風向板の長手方向における中程を、吹き出し口が設けられた内装パネルと、吹き出し口に接続されるダクトの空気の吹き出し部分とで支持させるようにした。
【0008】
具体的には、本開示の技術に係る第1の態様は、車室内に空気を吹き出す車両用の空気吹き出し装置を対象とする。
【0009】
第1の態様の車両用の空気吹き出し装置は、車両に搭載の空調装置から送風された空気が流通するダクトと、ダクトに流通する空気を吹き出す吹き出し口が車幅方向に延びるスリット形状に設けられた内装パネルと、吹き出し口から吹き出す空調風の向きを調節する風向板とを備える。
【0010】
風向板は、吹き出し口の長手方向に延びる軸部と、軸部から突出して軸部の長手方向に延びる板状のフィン部とを有する。風向板の軸部は、ダクトまたは内装パネルに対して、吹き出し口の長手方向における両側に対応する位置で、吹き出し口の長手方向に延びる軸周りに回転可能に支持される。風向板のフィン部は、吹き出し口から車室内に臨む。
【0011】
そして、ダクトには、吹き出し口の長手方向における中程の位置で、風向板の軸部のうち当該ダクトの内方に臨む背面側を支持する背面支持部が設けられている。また、内装パネルには、吹き出し口の長手方向における中程の位置で、風向板の軸部のうち吹き出し口の外方に臨む正面側を上下方向における両側で支持する一対の正面支持部が設けられている。
【0012】
本開示の技術に係る第2の態様は、第1の態様の車両用の空気吹き出し装置において、風向板のフィン部が、軸部の周方向における第1の範囲から先端に向かって薄くなる形状に突出する先細り部と、軸部の周方向における第1の範囲よりも狭い第2の範囲から平板状に突出する平板部とを有する。そして、一対の正面支持部は、風向板の軸部のうち平板部が設けられた部分を支持している。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様の車両用の空気吹き出し装置によれば、風向板の長手方向における中程部分の背面側を、ダクトに設けられた背面支持部により支持し、風向板の長手方向における中程部分の正面側を、内装パネルに設けられた一対の正面支持部により上下両側で支持するようにしたので、乗員から吹き出し口の内側に見える風向板の連続感を損なわずに、車両走行時の振動による風向板の撓りを抑制することができる。
【0014】
第2の態様の車両用の空気吹き出し装置によれば、風向板のフィン部に先細り部と平板部とを設け、平板部を風向板の軸部の周方向において先細り部が突出する第1の範囲よりも狭い第2の範囲にて突出させ、その風向板の平板部を、内装パネルに設けられた一対の正面支持部に支持させるようにしたので、上記第1の態様の車両用の空気吹き出し装置を実現しながら、風向板の回転が許容される角度範囲を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両用の空気吹き出し装置を含む空調ユニットを備えたインストルメントパネルを車室内から見た正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両用の空気吹き出し装置とインストルメントパネルとを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車両用の空気吹き出し装置の吹き出し口およびその周辺の構成を示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線における車両用の空気吹き出し装置の断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線における車両用の空気吹き出し装置の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る車両用の空気吹き出し装置を構成する空気吹き出し部材および風向板を示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る車両用の空気吹き出し装置を構成する空気吹き出し部材のうち
図6のVIIで囲んだ部分の斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る車両用の空気吹き出し装置を構成する空気吹き出し部材のうち
図6のVIIIで囲んだ部分の斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る車両用の空気吹き出し装置を構成する風向板の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
【0017】
この実施形態では、本開示の技術に係る車両用の空気吹き出し装置について、インストルメントパネルに組み込まれた空気吹き出し装置を説明する。
【0018】
図1は、車両用の空気吹き出し装置1を含む空調ユニット3を備えたインストルメントパネル101(二点鎖線で示す)を車室内から見た正面図である。
図2は、空気吹き出し装置1とインストルメントパネル101とを示す分解斜視図である。
図3は、空気吹き出し装置1の吹き出し口11およびその周辺の構成を示す正面図である。
図4は、
図3のIV-IV線における空気吹き出し装置1の断面図である。
図5は、
図3のV-V線における空気吹き出し装置1の断面図である。
【0019】
図1に示すインストルメントパネル101は、車室前部でエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルの後方側に装備され、車幅方向に延びるインパネレインフォースメント(不図示)に支持されて車体に取り付けられている。図示するインストルメントパネル101は、いわゆる右ハンドル仕様車に用いられるパネルである。
【0020】
空気吹き出し装置1は、インストルメントパネル101のうち助手席の前側でグローブボックス103の上方位置の裏側に設置されている。この空気吹き出し装置1は、車室内空間に調和空気を吹き出す装置であって、車室内の空気の温度を調節する空調ユニット3を構成している。空調ユニット3は、空気吹き出し装置1の他、車両に搭載された空調装置5および送風機7を備えている。
【0021】
空調装置5は、取り込んだ空気の温度を調節する装置であって、インストルメントパネル101のセンターパネル部105の裏側に設置されている。空調装置5は、図示しないが、熱交換器を備え、センターパネル部105に設けられた操作パネルの温度入力部からの入力情報に基づいて調和空気の目標温度を設定し、熱交換器を動作させることで目標温度に見合った温度の調和空気を生成するようになっている。
【0022】
送風機7は、車室内または車外から取り入れた空気を空調装置5に送風する送風源である。この送風機7は、ダクト8を介して空調装置5と接続され、空調装置5を経由して空気吹き出し装置1に空気を送風するようになっている。空気吹き出し装置1は、空調装置5と接続され、空調装置5で温度調節された調和空気を車室内空間に吹き出すようになっている。
【0023】
空気吹き出し装置1は、車室内に吹き出す空調風の向きを上下方向に調整可能に構成されている。この空気吹き出し装置1は、
図2にも示すように、空調装置5から送風された空気が流通するダクト9と、ダクト9に流通する空気を吹き出す吹き出し口11が車幅方向に延びるスリット形状に設けられた内装パネル13と、吹き出し口11から吹き出す空調風の向きを上下方向に調整する風向板15とを備えている。
【0024】
ダクト9は、内装パネル13の吹き出し口11に接続される吹き出しダクト17と、吹き出しダクト17と空調装置5とを接続する中継ぎダクト19とを有している。吹き出しダクト17は、
図4および
図5にも示すように、空調装置5から中継ぎダクト9を経て送風された空気が流通するダクト部材21と、ダクト部材21に流通する空気を内装パネル13の吹き出し口11に吹き送る空気吹き出し部材23とによって構成されている。
【0025】
ダクト部材21は、射出成形などにより成形される樹脂成形部品である。このダクト部材21は、上方に臨む上面壁25と、下方に臨む下面壁27と、前方に臨む背面壁29と、左方に臨む左面壁30とが一体に形成されてなり、後方に開口した流出口31を有している。ダクト部材21の右端部は、流入口33を形成する接続部35を構成し、中継ぎダクト19と接続されている。
【0026】
背面壁29は、車幅方向に対して傾斜した傾斜板部37を有している。この実施形態では、背面壁29は傾斜板部37によって構成されている。ダクト部材21の流路面積は、傾斜板部37が対応する部分において、接続部35側から左面壁30に向かって徐々に小さくなっている。上面壁25および下面壁27のうち流出口31の上下両端縁に沿う部分には、複数(図示する例では4つ)の係止爪39が車幅方向に間隔をあけて設けられている。
【0027】
図6は、空気吹き出し部材23および風向板15を示す正面図である。
図7は、空気吹き出し部材23のうち
図6のVIIで囲んだ部分の斜視図である。
図8は、空気吹き出し部材23のうち
図6のVIIIで囲んだ部分の斜視図である。
【0028】
空気吹き出し部材23は、射出成形などにより成形される樹脂成形部品である。この空気吹き出し部材23は、
図4および
図5に示すように、ダクト部材21の流出口31に一体的に連結されている。当該空気吹き出し部材23は、ダクト部材21から後方に向かって上下方向における中央部位が迫り出すように突出する形状とされている。
【0029】
空気吹き出し部材23は、
図6~
図8に示すように、上下方向において互いに対向する一対の対向壁41と、これら両対向壁41の間の空間を左側で閉塞する左側壁43と、両対向壁41の間の空間の後側部分を右側で閉塞する右側壁45と、右側壁45の前側で両対向壁41の右側に設けられた接続部47とを有している。
【0030】
空気吹き出し部材23における一対の対向壁41は、前側から後側に向かって互いに接近するように延びる傾斜板部49と、傾斜板部49の後端から前方に延びる平行板部51をそれぞれ有している。上下両側の傾斜板部49の後端は、内装パネル13の吹き出し口11に対応するスリット形状の送風口53を形成している。空気吹き出し部材23は、内装パネル13の吹き出し口11と送風口53で接続されている(
図5参照)。
【0031】
上側の対向壁41の後側に臨む外面には、後方に突出する上側突出片55が複数(
図6に示す例では4つ)設けられている。複数の上側突出片55は、車幅方向において互いに間隔をあけて配置されている。下側の対向壁41の後側に臨む外面にも、後方に突出する下側突出片57が複数(
図6に示す例では4つ)設けられている。複数の下側突出片57は、車幅方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0032】
空気吹き出し部材23には、送風口53を経て吹き出し口11から吹き出す空調風の向きを左右方向において調整する複数の縦フィン59が設けられている。これら複数の縦フィン59は、一対の対向壁41と一体に形成され、車幅方向において互いに間隔をあけて配置されている。各縦フィン59は、空気吹き出し部材23の内部を長手方向に区画すると共に、空気吹き出し部材23の剛性を高める役割も果たしている。
【0033】
各縦フィン59は、対向壁41のうち空気吹き出し部材23の内部に臨む内面に沿って延びており、送風口53を上下方向に跨いでいる。個々の縦フィン59は、一対の対向壁41と共に上下方向における中央部位が後方に張り出すブーメランのような形状に形成されている。各縦フィン59のうちダクト部材21側に位置する背面側の端縁は、後方に向けて弓形に湾曲した形状で凹んでいる。
【0034】
このように、各縦フィン59は、上下方向における中程で送風口53に対応する部分が奥行き方向(前後方向)に比較的短くなっている。そのことで、ダクト部材21に流れる空気流を縦フィン59によってなるべく遮蔽しないようになっている。このことは、送風口53の背面側で縦フィン59の傍らに乱流が発生するのを抑制し、当該乱流による渦に起因した通気抵抗を低減することで、吹き出し口11からのスムーズな送風を実現するのに有利である。
【0035】
また、各縦フィン59のうち送風口53に対応する後側部分には、
図7および
図8に示すように、空気吹き出し部材23の内方(前方)に凹んだ収容凹部61が形成されている。この収容凹部61の後方に臨む開口の上下両端縁は、送風口53に連続している。収容凹部61は、
図4および
図5に示すように、吹き出し口11の長手方向における中程の位置で、風向板15の軸部85を受け入れ、その軸部85のうち吹き出しダクト17の内方に臨む背面側を支持する。各縦フィン59は、背面支持部の一例である。
【0036】
上側の対向壁41の平行板部51と下側の対向壁41の平行板部51とには、ダクト部材21の係止爪39に相当する数の係合片63が、車幅方向に互いに間隔をあけてそれぞれ設けられている。これら各係合片63は、係止爪39が係合する係止孔65が形成されている。空気吹き出し部材23は、上下にある各係合片63の係止孔65に係止爪39を引っ掛けることにより、ダクト部材21に対して流出口31を覆う状態に取り付けられる。
【0037】
空気吹き出し部材23の左側壁43および右側壁45のうち送風口53の左右両側に位置する部分には、後方に開放された風向板15を取り付けるための取り付け凹部67がそれぞれ設けられている。空気吹き出し部材23の接続部47は、ダクト部材21の接続部35における流出口31を覆い、ダクト部材21の接続部35と共に中継ぎダクト19に接続される。
【0038】
内装パネル13は、車幅方向に延びる横長のパネルであって、射出成形などにより成形される樹脂成形部品である。
図1および
図2に示すように、内装パネル13は、インストルメントパネル101のうち助手席の前側でグローブボックス103の上方位置からセンターパネル部105にかけての部位に取り付けられる。吹き出し口11は、内装パネル13の長手方向における両端部分を除く略全長に亘って形成されている。
【0039】
吹き出し口11は、送風口53よりも長く、グローブボックス103の上方位置に対応する箇所で送風口53に接続されている。吹き出し口11のうちセンターパネル部105に対応する箇所は、ダミーの開口である。このように、吹き出し口11がダミーで延長されて内装パネル13の長手方向における略全長に延びていることで、内装パネル13の意匠性が高められている。
【0040】
内装パネル13は、
図3~
図5に示すように、吹き出し口11の上側で後方に張り出した上側張り出し部71と、吹き出し口11の下側で後方に張り出した下側張り出し部73と、上側張り出し部71および下側張り出し部73の左右両側の端部同士を連結する一対の連結部75(右側の連結部は不図示)とを有している。吹き出し口11は、これら上側張り出し部71、下側張り出し部73および一対の連結部75により区画されている。
【0041】
吹き出し口11は、上側張り出し部71および下側張り出し部73が張り出していることにより、正面以外からは見え難くなっている。また、空気吹き出し部材23は、送風口53から吹き出た空調風が、コアンダ効果により風向板15の向きに応じて上側張り出し部71または下側張り出し部73の面沿いに沿って流れることで、風向板15の回転角度よりも大きな角度範囲に流せるようになっている。
【0042】
上側張り出し部71の裏面には、前方に突出する上側当て部77が、空気吹き出し部材23の上側突出片55に対応する数だけ設けられている。これら複数の上側当て部77は、それぞれ上側突出片55の後端部を受けている。下側張り出し部73の裏面には、前方に突出する下側当て部79が、空気吹き出し部材23の下側突出片57に対応する数だけ設けられている。これら複数の下側当て部79は、それぞれ下側突出片57の後端部を受けている。
【0043】
上側張り出し部71の下端縁には、吹き出し口11の内方に突出した上側支持突片81が複数(
図3に示す例では2つ)設けられている。複数の上側支持突片81は、車幅方向において互いに間隔をあけて配置されている。これら各上側支持突片81は、吹き出し口11の長手方向における中程の位置で、風向板15の軸部85のうち吹き出し口11の外方に臨む正面側部分を上側で支持している。
【0044】
下側張り出し部71の上端縁には、吹き出し口11の内方に突出した下側支持突片83が複数(
図3に示す例では2つ)設けられている。複数の下側支持突片83は、車幅方向において互いに間隔をあけて配置されている。これら各下側支持突片83は、吹き出し口11の長手方向における中程の位置で、風向板15の軸部85のうち吹き出し口11の外方に臨む正面側部分を下側で支持している。
【0045】
上側支持突片81と下側支持突片83とは、上下方向において一対一で対応する位置関係にある。これら上側支持突片81および下側支持突片83は、送風口53の長さ方向において等間隔に配置されており、空気吹き出し部材23に設けられた複数の縦フィン59と共に風向板15の軸部85を保持している。上側支持突片81および下側支持突片83は、一対の正面側支持部の一例である。
【0046】
図9は、風向板15の構成を示す斜視図である。
図10は、
図9のX-X線における風向板15の断面図である。
図11は、
図9のXI-XI線における風向板15の断面図である。
【0047】
風向板15は、
図9~
図11に示すように、吹き出し口11の長手方向に延びる軸部85と、軸部85からその外周側へ突出して軸部85の長手方向に延びる板状の横フィン部87とを有している。風向板15の軸部85における左右両側の端部88は、円柱状とされており、空気吹き出し部材23の左側壁43および右側壁45に設けられた取り付け凹部67に嵌め込まれて、吹き出し口11の長手方向に延びる軸A周りに回転可能に支持される。
【0048】
風向板15は、上下方向において複数の縦フィン59と重なり合うように配置されている。このような風向板15の配置によれば、複数の縦フィン59と風向板15とを奥行き方向にずらして配置する場合に比べて、複数の縦フィン59と風向板15との占有スペースが少なくて済む。この風向板15の横フィン部87は、送風口53の内側から外方に突出し、吹き出し口11から車室内に臨んでいる。
【0049】
風向板15の横フィン部87は、軸部85の周方向における第1の範囲R1(
図11参照)から先端に向かって薄くなる形状に突出する先細り部89と、軸部85の周方向における第2の範囲R2(
図10参照)から平板状に突出する平板部91とを有している。風向板15の軸部85において、平板部91が設けられた第
2の範囲R
2は、先細り部89が設けられた第
1の範囲R
1よりも狭い。
【0050】
平板部91は、風向板15の横フィン部87に上側支持突片81および下側支持突片83と対応する数(
図9に示す例では2つ)だけ局部的に設けられている。これら複数の平板部91は、風向板15の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。先細り部89は、横フィン部87の左右両側と、横フィン部87における隣り合う平板部91の間とに設けられている。風向板15の軸部85は平板部91が設けられた部分92でも円柱状とされている。
【0051】
風向板15の軸部85は、
図4および
図5に示すように、空気吹き出し部材23の各縦フィン59によって収容凹部61で支持されており、空気吹き出し部材23の内方(前方)への移動が規制されている。風向板15の軸部85のうち平板部91が設けられた各部分92は、
図4に示すように、内装パネル13の上側支持突片81と下側支持突片83によって支持されており、吹き出し口11の正面側(後方)への移動が規制されている。
【0052】
風向板15の横フィン部87、例えば左側の先細り部89の先端には、後方に突出する操作片93が設けられている。操作片93は、内装パネル13の吹き出し口11から車室内に延び出ている。乗員は、この操作片に指を掛けて風向板15を回転させることにより、横フィン部87の向きを手動で上下方向に調整可能であって、吹き出し口11から吹き出す空調風の向きを上下方向に変えられる。
【0053】
この実施形態における車両用の空気吹き出し装置1によれば、風向板15の長手方向における中程部分の背面側を、空気吹き出し部材23に設けられた複数の縦フィン59により支持し、風向板15の長手方向における中程部分の正面側を、内装パネル13に設けられた上側支持突片81および下側支持突片83により上下両側で支持するようにしたので、乗員から吹き出し口11の内側に見える風向板15の連続感を損なわずに、車両走行時の振動による風向板15の撓りを抑制することができる。それにより、車両内装の吹き出し口11が設けられた部分の見栄えを良くしつつ、車両走行時の振動によって異音が生じるのを抑制することができる。
【0054】
また、この実施形態における車両用の空気吹き出し装置1によれば、風向板15の横フィン部87に先細り部89と平板部91とを設け、平板部91を風向板15の軸部85の周方向において先細り部89が突出する第1の範囲R1よりも狭い第2の範囲R2にて突出させ、その風向板15の軸部85のうち平板部91が設けられた部分92を、内装パネル13に設けられた上側支持突片81および下側支持突片83に支持させるようにしたので、風向板15の回転が許容される角度範囲を大きくすることができる。それにより、吹き出し口11から吹き出す空調風の向きの上下方向に調整可能な角度範囲を比較的広く確保することができる。
【0055】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0056】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0057】
風向板15は、ダクト9を構成する空気吹き出し部材23に対して回転可能に支持されているとしたが、これに限らない。風向板15は、内装パネル13に対して、例えば空気吹き出し部材23と同様な構造(取り付け凹部67)を設け、当該構造により回転可能に支持されていてもよい。
【0058】
背面支持部としては、複数の縦フィン59を例示したが、これに限らない。縦フィン59は、背面支持部の一例に過ぎず、背面支持部は、縦フィン59とは別に空気吹き出し部材23に設けられていてもよい。背面支持部には、吹き出し口11の長手方向における中程の位置で、風向板15の軸部85のうち吹き出しダクト17の内方に臨む背面側を支持するものであれば、任意の構成を採用することが可能である。
【0059】
一対の正面支持部としては、上側支持突片81および下側支持突片83を例示したが、これに限らない。上側支持突片81および下側支持突片83は、正面支持部の一例に過ぎず、正面支持部には、吹き出し口11の長手方向における中程の位置で、風向板15の軸部85のうち吹き出し口11の外方に臨む正面側を上下方向における両側で支持するものであれば、任意の構成を採用することが可能である。
【0060】
空気吹き出し装置1は、インストルメントパネル101とは別体の内装パネル13を備えるとしたが、これに限らない、空気吹き出し装置1が備える内装パネルは、吹き出し口11が形成されたインストルメントパネルであってもよい。
【0061】
空気吹き出し装置1は、吹き出し口11の長手方向が左右方向と対応するように設けられているとしたが、これに限らない。空気吹き出し装置1は、吹き出し口11の長手方向が、上下方向に対応するように設けられていてもよく、上下左右方向に対して斜め方向に対応するように設けられていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、空気吹き出し装置1は、インストルメントパネル101における助手席側に設けられているとしたが、インストルメントパネル101の助手席側だけでなく、センターコンソールや運転席側に設けられていてよく、サイドドアや後部座席側など、内装パネルが取り付けられるその他の位置に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本開示の技術は、車室内に空気を吹き出す車両用の空気吹き出し装置について有用である。
【符号の説明】
【0064】
A 軸
R1 第1の範囲
R2 第2の範囲
1 空気吹き出し装置
3 空調ユニット
5 空調装置
7 送風機
8 ダクト
9 ダクト
11 吹き出し口
13 内装パネル
15 風向板
17 吹き出しダクト
19 中継ぎダクト
21 ダクト部材
23 空気吹き出し部材
25 上面壁
27 下面壁
29 背面壁
30 左面壁
31 流出口
33 流入口
35 接続部
37 傾斜板部
39 係止爪
41 対向壁
43 左側壁
45 右側壁
47 接続部
49 傾斜板部
51 平行板部
53 送風口
55 上側突出片
57 下側突出片
59 縦フィン(背面支持部)
61 収容凹部
63 係合片
65 係止孔
67 取り付け凹部
71 上側張り出し部
73 下側張り出し部
75 連結部
77 上側当て部
79 下側当て部
81 上側支持突片(正面支持部)
83 下側支持突片(正面支持部)
85 軸部
87 横フィン部
88 端部
89 先細り部
91 平板部
92 軸部のうち平板部が設けられた部分
93 操作片
101 インストルメントパネル
103 グローブボックス
105 センターパネル部