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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】建設機械のフレーム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/08 20060101AFI20230529BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
E02F9/08 Z
B62D21/18 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019097266
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020190161
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】恒吉 剛
(72)【発明者】
【氏名】田村 将人
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-049695(JP,A)
【文献】特開2014-097513(JP,A)
【文献】特開2002-097667(JP,A)
【文献】特開2014-214510(JP,A)
【文献】特開2018-009416(JP,A)
【文献】実開平06-087454(JP,U)
【文献】特開2002-339404(JP,A)
【文献】特開2011-179165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/08
B62D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、幅方向に間隔をおいて前記底板の上面に配置され前後方向および上下方向に延びる一対の縦板と、前記一対の縦板の幅方向外側面から幅方向外側に延びる複数のサポート部材とを備え、
前記複数のサポート部材の少なくとも1個は前記底板に対して垂直な垂直壁を含み、前記垂直壁の幅方向内側端部は前記一対の縦板の一方の幅方向外側面に溶接され、
前記一対の縦板の下端は前記底板の上面に断続的に溶接され、前記垂直壁の幅方向内側端部の下方に前記縦板の下端が前記底板の上面に溶接されていない非溶接部が存在する建設機械のフレーム。
【請求項2】
前記垂直壁の幅方向内側部分には切り欠きが形成されている、請求項1に記載の建設機械のフレーム。
【請求項3】
前記底板の下面には環状の旋回ベアリングが連結され、前記非溶接部は上下方向に見て前記一対の縦板と前記旋回ベアリングとが交差する部分以外に位置する、請求項1または2に記載の建設機械のフレーム。
【請求項4】
前記非溶接部における前記底板の上面には凹所が形成されている、請求項1から3までのいずれかに記載の建設機械のフレーム。
【請求項5】
前記非溶接部における前記底板には貫通開口が形成されている、請求項1から3までのいずれかに記載の建設機械のフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に用いられるフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、下部走行体と、下部走行体に旋回自在に搭載された上部旋回体と、上部旋回体に作動自在に装着された作業腕装置とを備える。上部旋回体のフレームは、底板と、幅方向に間隔をおいて底板の上面に配置され前後方向および上下方向に延びる一対の縦板と、一対の縦板の幅方向外側面から幅方向外側に延びる複数のサポート部材とを備える。複数のサポート部材には、キャブや各種コンポーネント(たとえば燃料タンクや作動油タンク等)が搭載される。
【0003】
上部旋回体のフレームが製造される際は、底板の上面に一対の縦板の下端が溶接され、次いで底板の上面または下面を基準としてサポート部材の上端位置が調整された後、サポート部材の幅方向内側端部が縦板の幅方向外側面に溶接される。この際、サポート部材の上端位置調整のため、サポート部材の下端が底板の上面に溶接されないことがある(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-105499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上部旋回体のフレームにおいては、底板の上面と縦板の下端との溶接部にサポート部材の下端が干渉するのを回避する必要があるためサポート部材の下端位置が制限されている。また、上部旋回体のフレームにおいては、キャブ内のオペレータの視認性悪化を防止するためコンポーネントの上端位置が制限されていると共に、昨今はコンポーネントが大型化していることに加えて、建設機械の輸送寸法の制限があることから、サポート部材の上端位置も制限されている。
【0006】
このため、サポート部材の上下方向寸法が制限されることに起因してサポート部材と縦板との溶接部の上下方向寸法が制限されるので、上記特許文献1に記載されているフレームのようにサポート部材の下端が底板の上面に溶接されていないと、サポート部材の剛性を確保するのが困難であるという問題がある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、サポート部材の剛性を向上させることができる建設機械のフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために以下の建設機械のフレームを提供する。すなわち、底板と、幅方向に間隔をおいて前記底板の上面に配置され前後方向および上下方向に延びる一対の縦板と、前記一対の縦板の幅方向外側面から幅方向外側に延びる複数のサポート部材とを備え、前記複数のサポート部材の少なくとも1個は前記底板に対して垂直な垂直壁を含み、前記垂直壁の幅方向内側端部は前記一対の縦板の一方の幅方向外側面に溶接され、前記一対の縦板の下端は前記底板の上面に断続的に溶接され、前記垂直壁の幅方向内側端部の下方に前記縦板の下端が前記底板の上面に溶接されていない非溶接部が存在する建設機械のフレームを本発明は提供する。
【0009】
好ましくは、前記垂直壁の幅方向内側部分には切り欠きが形成されている。前記底板の下面には環状の旋回ベアリングが連結され、前記非溶接部は上下方向に見て前記一対の縦板と前記旋回ベアリングとが交差する部分以外に位置するのが好適である。前記非溶接部における前記底板の上面には凹所が形成されているのが好都合である。前記非溶接部における前記底板には貫通開口が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフレームにおいては、垂直壁の幅方向内側端部の下方に縦板の下端が底板の上面に溶接されていない非溶接部が存在するので、底板の上面と縦板の下端との溶接部に垂直壁の下端が干渉するおそれがなく、垂直壁の下端位置を下方に延ばして垂直壁の上下方向寸法を増大させることができると共に、垂直壁の幅方向内側端部と縦板の幅方向外側面との溶接部の長さも増大させることができる。したがって、本発明のフレームによれば、サポート部材の剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に従って構成されたフレームを後方から見た斜視図。
図2図1に示すフレームを前方から見た斜視図。
図3図1に示すフレームからサポート部材等を除いた状態における平面図。
図4図1におけるA部拡大斜視図。
図5図2におけるB部拡大斜視図。
図6】底板に凹所が形成されている場合の図5に相当する斜視図。
図7】底板に貫通開口が形成されている場合の図5に相当する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された建設機械のフレームの好適実施形態について、油圧ショベルの上部旋回体のフレーム(旋回フレーム)を例に挙げ、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1および図2に示すとおり、全体を符号2で示すフレームは、鋼材等の適宜の金属材料から形成されており、底板4と、幅方向に間隔をおいて底板4の上面に配置され前後方向および上下方向に延びる一対の縦板6と、一対の縦板6の幅方向外側面から幅方向外側に延びる複数のサポート部材8とを備える。なお、前後方向および幅方向(左右方向)については、図1および図2に前後左右の文字および矢印で示す前後方向および幅方向(左右方向)である。
【0014】
図3に示すとおり、底板4は、前後方向および幅方向に延びており、比較的幅広の前部10と、前部10よりも幅が狭い後部12とを有する。前部10の下面には、環状の旋回ベアリング(図示していない。)が連結され、フレーム2は旋回ベアリングを介して下部走行体のフレーム(図示していない。)に旋回自在に搭載される。前部10の下面に旋回ベアリングが連結される部分を図3に二点鎖線で示す。
【0015】
図1および図2を参照して説明すると、三角形状の縦板6の頂部には作業腕装置(図示していない。)のブームの基端部が作動自在にピン連結されるブーム連結ピン穴14が形成されている。縦板6の前端部には、ブームを作動させるブームシリンダ(図示していない。)の基端部がピン連結されるブームシリンダ連結ピン穴16が形成されている。縦板6の後側には、作業腕装置に対してつり合いを取るためのカウンタウエイト(図示していない。)が取り付けられる一対のカウンタウエイト取り付け部18が設けられている。底板4および縦板6は、作業腕装置やカウンタウエイトから大きな荷重が作用する構造部材であり、比較的厚肉の板材から形成されている。また、各縦板6の下端は幅方向内側および幅方向外側から底板4の上面に断続的に溶接されている。縦板6の下端が底板4の上面に溶接されていない非溶接部については後述する。
【0016】
サポート部材8には、キャブや各種コンポーネント(いずれも図示していない。)が搭載され、搭載される部材に応じてサポート部材8は種々の形状に形成されている。本明細書では、右前側のサポート部材8aおよび左後側のサポート部材8bについて詳細に説明する。
【0017】
図1図2および図4を参照して右前側のサポート部材8aについて説明する。サポート部材8aは、底板4に対して垂直な第1の垂直壁20と、第1の垂直壁20の前方に配置され底板4に対して垂直な第2の垂直壁22と、第1の垂直壁20の上端から第2の垂直壁22の上端まで延びる上面壁24とを含む。図示の実施形態のサポート部材8aにおいては、第1の垂直壁20と上面壁24とは、直角に折り曲げられた1枚の板材から構成されているが、別個の板材から構成されていてもよい。また、第1の垂直壁20、第2の垂直壁22および上面壁24が1枚の板材から構成されていてもよい。
【0018】
第1の垂直壁20、第2の垂直壁22および上面壁24のそれぞれの幅方向内側端部は、右側の縦板6の幅方向外側面に溶接されている。第1の垂直壁20および上面壁24のそれぞれと縦板6との溶接部を図4に符号26で示す。一方、第1の垂直壁20および第2の垂直壁22のそれぞれの下端は底板4の上面には溶接されていない。
【0019】
図4に示すとおり、第1の垂直壁20の幅方向内側部分の下端には弧状の切り欠き28が形成され、第2の垂直壁22の幅方向内側部分の下端にも弧状の切り欠き30が形成されている。また、サポート部材8aには、第1の垂直壁20の幅方向内側部分の上端側から上面壁24の幅方向内側部分の後端側まで延びる切り欠き32が形成されている。このように図示の実施形態のサポート部材8aにおいては、3個の切り欠き28、30、32が形成されていることによって、溶接部26に応力が集中するのが緩和され、溶接部26に亀裂が発生することが防止される。また、第1および第2の垂直壁20、22の下端側の切り欠き28、30に油圧管路や電線等を通過させることもできる。
【0020】
上述したとおり、縦板6の下端は底板4の上面に断続的に溶接されているところ、図4に示すとおり、サポート部材8aの第1の垂直壁20および第2の垂直壁22のそれぞれの幅方向内側端部の下方には、底板4の上面と右側の縦板6の下端とが溶接されていない非溶接部34が存在する。これによって、底板4の上面と右側の縦板6の下端との幅方向外側の溶接部36に第1および第2の垂直壁20、22のそれぞれの下端が干渉するおそれがない。このため、図示の実施形態のフレーム2においては、第1および第2の垂直壁20、22のそれぞれの下端位置を下方に延ばして、第1および第2の垂直壁20、22のそれぞれの上下方向寸法を増大させることができると共に溶接部26の長さも増大させることができる。したがって、図示の実施形態のフレーム2によれば、サポート部材8aの剛性を向上させることができる。
【0021】
非溶接部34は、上下方向に見て一対の縦板6と旋回ベアリングとが交差する部分38(図3参照。)以外に位置するのが好ましい。上部旋回体のフレーム2と下部走行体のフレームとが旋回ベアリングを介して連結されることから、交差部分38には比較的高い応力が発生する。このため、フレーム2の十分な剛性および疲労強度を確保する観点から、交差部分38では底板4の上面と縦板6の下端とが溶接され、非溶接部34は交差部分38以外に位置しているのが好適である。
【0022】
次に、図5を参照して左後側のサポート部材8bについて説明する。サポート部材8bは、底板4に対して垂直な垂直壁40と、垂直壁40の上端に接続された上面壁42とを含む。垂直壁40および上面壁42のそれぞれの幅方向内側端部は、左側の縦板6の幅方向外側面に溶接されている。垂直壁40と縦板6との溶接部を図5に符号44で示し、上面壁42と縦板6との溶接部を図5に符号46で示す。一方、垂直壁40の下端は底板4の上面には溶接されていない。また、垂直壁40の幅方向内側部分の下端には、溶接部44、46への応力集中を緩和するための切り欠き48が形成されている。
【0023】
図5に示すとおり、サポート部材8bの垂直壁40の幅方向内側端部の下方には、底板4の上面と左側の縦板6の下端とが溶接されていない非溶接部50が存在する。これによって、底板4の上面と左側の縦板6の下端との幅方向外側の溶接部52に垂直壁40の下端が干渉するおそれがない。このため、図示の実施形態のフレーム2においては、垂直壁40の下端位置を下方に延ばして、垂直壁40の上下方向寸法を増大させることができると共に溶接部44の長さも増大させることができる。したがって、図示の実施形態のフレーム2によれば、サポート部材8bの剛性を向上させることができる。
【0024】
図6に示すとおり、非溶接部50における底板4の上面には凹所54が形成されていてもよい。あるいは、図7に示すとおり、非溶接部50における底板4には貫通開口56が形成されていてもよい。底板4に凹所54または貫通開口56が形成されていることによって、垂直壁40の下端位置をさらに下方に延ばして、垂直壁40の上下方向寸法および溶接部44の長さも一層増大させることができる。
【0025】
なお、図示の実施形態のフレーム2においては、右前側のサポート部材8aの第1および第2の垂直壁20、22ならびに左後側のサポート部材8bの垂直壁40のそれぞれの下方に非溶接部34、50が存在する例を説明したが、複数のサポート部材8の少なくとも1個の垂直壁の下方に非溶接部が存在すればよく、非溶接部の位置は特定のサポート部材8の垂直壁の下方に限定されるものではない。
【0026】
図示の実施形態の右前側のサポート部材8aには3個の切り欠き28、30、32が形成されているが、切り欠きの数量は任意であり、切り欠きは形成されていなくてもよい。左後側のサポート部材8bの垂直壁40においても、切り欠きの数量は任意であり、切り欠きは形成されていなくてもよい。
【0027】
図示の実施形態のフレーム2においては、左後側のサポート部材8bの垂直壁40の下方に位置する底板4に凹所54または貫通開口56が形成されている場合についても説明したが、右前側のサポート部材8aの第1または第2の垂直壁20、22の下方に位置する底板4に凹所または貫通開口が形成されていてもよい。
【0028】
非溶接部34、50が交差部分38に位置する場合、底板4に貫通開口が形成されていると旋回ベアリングへ雨水等が浸入するおそれがあるため、このような場合には底板4の上面に凹所が形成され得る。また、非溶接部34、50が交差部分38に位置するか否かに関わらず、非溶接部34、50における底板4の上面に凹所が形成されている場合には、凹所に溜まった雨水等が錆の原因となり得るため、凹所内の雨水等を排出するため、凹所の底面から下方に延びる穴が形成されていてもよく、あるいは、凹所から底板4の端部まで延びる溝が底板4の上面に形成されていてもよい。
【0029】
非溶接部34、50における凹所や貫通開口の形状については、非溶接部34、50の直下のみを含む形状には限定されない。凹所や貫通開口の少なくとも一部が非溶接部34、50の直下に位置していればよい。非溶接部34、50における凹所や貫通開口の形状は、たとえば、非溶接部34、50の直下から底板4の端部まで延びる溝や長穴のような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
2:フレーム
4:底板
6:縦板
8:サポート部材
8a:右前側のサポート部材
8b:左後側のサポート部材
20:第1の垂直壁(右前側のサポート部材)
22:第2の垂直壁(右前側のサポート部材)
28:切り欠き
30:切り欠き
32:切り欠き
34:非溶接部
38:縦板と旋回ベアリングとが交差する部分
40:垂直壁(左後側のサポート部材)
48:切り欠き
50:非溶接部
54:凹所
56:貫通開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7