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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】電力需要予測システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230529BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230529BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J3/00 170
G06Q50/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019112289
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020205692
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】門脇 昌作
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-295680(JP,A)
【文献】特開2012-205432(JP,A)
【文献】特開2014-010683(JP,A)
【文献】特開2014-107950(JP,A)
【文献】特開2017-076227(JP,A)
【文献】特開2018-055650(JP,A)
【文献】特開2018-165859(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測対象施設の電力需要を予測する電力需要予測システムであって、
前記予測対象施設とは異なる学習対象施設の過去の消費電力を含む学習用データに基づいて予測モデルを作成する予測モデル作成部と、
前記予測モデルを用いて、前記予測対象施設の過去の消費電力に基づいて、当該予測対象施設の予測対象時間における電力需要を予測する電力需要予測部と、
を具備し、
前記予測対象施設の過去の消費電力を、第一の時間間隔で取得する情報取得部と、
前記情報取得部に取得された前記消費電力の前記第一の時間間隔での変動量を、当該消費電力が取得された時点を含み、前記第一の時間よりも長い第二の時間での前記消費電力の移動平均との比較により算出する変動量算出部と、
を具備し、
前記電力需要予測部は、
前記予測対象時間のうち、前記変動量の絶対値が、所定の閾値以上の時間帯においては、前記第一の時間間隔での前記消費電力をそのまま用いて前記電力需要を予測し、前記変動量の絶対値が前記閾値を下回る時間帯においては、前記第二の時間間隔での前記消費電力の平均値を用いて前記電力需要を予測する、
電力需要予測システム。
【請求項2】
前記予測対象施設の過去の消費電力は、
第一の過去消費電力と、
前記第一の過去消費電力よりも過去の第二の過去消費電力と、
を含む、
請求項1に記載の電力需要予測システム。
【請求項3】
前記第一の過去消費電力は、
前記予測対象時間の前日の消費電力であり、
前記第二の過去消費電力は、
前記予測対象時間の一週間前の消費電力である、
請求項2に記載の電力需要予測システム。
【請求項4】
前記閾値は、
所定の期間における前記予測対象施設の消費電力の平均値である、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電力需要予測システム。
【請求項5】
前記閾値は、
予め設定された固定値である、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電力需要予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力需要を予測する電力需要予測システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、対象地域の電力需要の予測値を算出する電力需要予測システムが記載されている。上記電力需要予測システムは、対象地域における過去の消費電力の実績値に基づいて、電力需要の予測値を算出する構成とされている。また、特許文献1には、上記予測値を算出する過程において、機械学習処理を用いる構成の記載がある。
【0004】
ここで、上記予測値を算出する過程において機械学習処理を用いる場合には、予測の精度を向上させるために、過去の消費電力の実績値(学習用データ)を蓄積する必要がある。従って、対象地域において上記学習用データが十分に蓄積されなければ、電力需要を精度よく予測し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-55650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、予測対象施設に学習用データが十分に蓄積されていなくとも、当該予測対象施設の電力需要を精度よく予測することができる電力需要予測システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、予測対象施設の電力需要を予測する電力需要予測システムであって、前記予測対象施設とは異なる学習対象施設の過去の消費電力を含む学習用データに基づいて予測モデルを作成する予測モデル作成部と、前記予測モデルを用いて、前記予測対象施設の過去の消費電力に基づいて、当該予測対象施設の予測対象時間における電力需要を予測する電力需要予測部と、を具備し、前記予測対象施設の過去の消費電力を、第一の時間間隔で取得する情報取得部と、前記情報取得部に取得された前記消費電力の前記第一の時間間隔での変動量を、当該消費電力が取得された時点を含み、前記第一の時間よりも長い第二の時間での前記消費電力の移動平均との比較により算出する変動量算出部と、を具備し、前記電力需要予測部は、前記予測対象時間のうち、前記変動量の絶対値が、所定の閾値以上の時間帯においては、前記第一の時間間隔での前記消費電力をそのまま用いて前記電力需要を予測し、前記変動量の絶対値が前記閾値を下回る時間帯においては、前記第二の時間間隔での前記消費電力の平均値を用いて前記電力需要を予測するものである。
【0009】
請求項2においては、前記予測対象施設の過去の消費電力は、第一の過去消費電力と、前記第一の過去消費電力よりも過去の第二の過去消費電力と、を含むものである。
【0010】
請求項3においては、前記第一の過去消費電力は、前記予測対象時間の前日の消費電力であり、前記第二の過去消費電力は、前記予測対象時間の一週間前の消費電力であるものである。
【0012】
請求項においては、前記閾値は、所定の期間における前記予測対象施設の消費電力の平均値であるものである。
【0013】
請求項においては、前記閾値は、予め設定された固定値であるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、予測対象施設に学習用データが十分に蓄積されていなくとも、当該予測対象施設の電力需要を精度よく予測することができる。また、電力需要の予測精度を向上させながらも、予測に用いるデータ量の増大を抑制することができる。
【0016】
請求項2においては、予測対象施設の電力需要をより精度よく予測することができる。
【0017】
請求項3においては、予測対象施設の電力需要をより精度よく予測することができる。
【0019】
請求項においては、電力需要の予測精度を向上させることができる。
【0020】
請求項においては、処理を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る電力需要予測システム、予測対象住宅及び学習対象住宅の構成を示したブロック図。
図2】電力需要予測システムが実行する処理を示したフローチャート。
図3】学習用データの特長量を示した表。
図4】電力需要予測処理を示したフローチャート。
図5】消費電力の変動量を示したグラフ。
図6】予測用データを示した表。
図7】決定係数とデータ量との関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る電力需要予測システム1について説明する。
【0023】
電力需要予測システム1は、所定の住宅(以下では「予測対象住宅10」と称する)の将来の電力需要を予測するものである。ここで、電力需要とは、予測対象住宅10において、要求される電力を指す。
【0024】
電力需要予測システム1は、予測対象住宅10に関する情報である予測用データと、当該予測対象住宅10とは異なる住宅である学習対象住宅20に関する情報である学習用データと、を用いて、予測対象住宅10の電力需要を予測する。なお、予測用データ及び学習用データの詳細な説明については後述する。
【0025】
本実施形態では、予測対象住宅10を、比較的新しい(建てられてから経過した時間が比較的短い)住宅としている。具体的には、予測対象住宅10を、建てられてから経過した時間が1週間以上1年未満の住宅としている。
【0026】
学習対象住宅20は、予測対象住宅10とは異なる住宅である。学習対象住宅20は、学習用データの取得の対象となる。学習対象住宅20は、建てられてから経過した時間が比較的長い住宅である。具体的には、学習対象住宅20は、建てられてから経過した時間が、予測対象住宅10が建てられてから経過した時間よりも長い住宅である。本実施形態では、学習対象住宅20を、建てられてから経過した時間が1年以上の住宅としている。また、本実施形態では、複数の学習対象住宅20があるものとしている。
【0027】
学習対象住宅20としては、予測対象住宅10を含む所定の地域(市町村や都道府県等)に位置する住宅を採用可能である。また、学習対象住宅20としては、予測対象住宅10の世帯と概ね同規模の世帯の住宅を採用可能である。なお、学習対象住宅20としては、上述したものに限られず、種々の住宅を採用可能である。
【0028】
上記予測対象住宅10及び学習対象住宅20は、適宜のセンサ等により、当該予測対象住宅10及び学習対象住宅20の消費電力を測定可能とされている。ここで、消費電力とは、上記予測対象住宅10及び学習対象住宅20において、電化製品等の負荷により実際に消費された電力である。
【0029】
電力需要予測システム1は、主として、情報取得部2、記憶部3、制御部4、表示部5及び入力部6を具備する。
【0030】
情報取得部2は、予測用データ及び学習用データ等、予測対象住宅10の電力需要を予測するための情報を取得するものである。
【0031】
記憶部3は、各種のプログラムや情報取得部2により取得された情報を含むデータ等が記憶されるものである。記憶部3は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
【0032】
制御部4は、記憶部3に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部4は、CPUにより構成される。
【0033】
表示部5は、各種の情報を表示するものである。表示部5は、液晶ディスプレイ等により構成される。
【0034】
入力部6は、各種の情報を入力するためのものである。入力部6は、キーボード、マウス等により構成される。
【0035】
このように、電力需要予測システム1としては、一般的なパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
【0036】
電力需要予測システム1は、図2に示すように、学習用データに基づいて予測モデルを作成する予測モデル作成処理(ステップS10)と、予測モデルを用いて予測対象住宅10の電力需要を予測する電力需要予測処理(ステップS11)と、を上記した順番で実行可能である。
【0037】
以下では、予測モデル作成処理(ステップS10)について説明する。
【0038】
予測モデル作成処理は、学習用データに基づいて、予測対象住宅10の電力需要を予測するための予測モデルを作成する処理である。
【0039】
予測モデル作成処理において、制御部4は、学習用データに基づいて予測モデルを作成する。予測モデルは、後述する予測用データに基づいて、当該予測対象住宅10の電力需要の予測結果を算出するものである。予測モデルは、機械学習により作成される。予測モデルは、記憶部3に記憶され、制御部4により実行可能とされる。
【0040】
学習用データは、予測モデルの作成に用いられる、学習対象住宅20に関する情報である。学習用データには、学習対象住宅20において所定時間ごとに測定される消費電力や、上記消費電力の測定時の時間や気象のデータ等、学習対象住宅20に関する種々のデータが含まれる。上記学習用データは、上記各データの供給元から、適宜の通信手段を介して記憶部3に記憶されることで蓄積される。学習用データは、所定の期間(例えば一年間)に亘って蓄積される。
【0041】
ここで、機械学習とは、学習用データを解析し、当該学習用データから抽出された特徴量のパターンを学習して適宜の処理を可能とするモデルを作成することを指す。また、機械学習においては、上記学習用データに含まれる電力実績と特徴量のパターンとの関係を学習することで上記モデルを作成する。また、本実施形態では、機械学習の手法として、決定木を採用している。なお、機械学習の手法としては、上述したものに限られず、例えば、ニューラルネットワークや、ランダムフォレストを採用してもよく、種々の手法を採用可能である。
【0042】
ここで、電力実績とは、ある時(以下では、「基準時間」と称する)の学習対象住宅20の消費電力である。電力実績は、予測モデルにおける予測結果(予測される電力需要)に対応する。電力実績は、所定時間ごとに測定される。本実施形態では、電力実績を、60分ごとに測定されたものとする。なお、電力実績を測定する間隔としては、60分に限られず、種々の間隔を採用可能である。
【0043】
また、特徴量とは、学習用データから抽出した当該学習用データの特徴(特性)を定量的に示したものである。本実施形態においては、学習用データから、図3に示す特徴量を抽出する。
【0044】
図3に示す特徴量には、「学習対象消費電力」、「学習用気象データ」及び「学習用時間データ」が含まれる。
【0045】
「学習対象消費電力」(W)は、基準時間よりも過去に測定された学習対象住宅20の消費電力である。「学習対象消費電力」は、電力実績の取得に応じて、記憶部3に蓄積された学習用データから取得される。本実施形態においては、60分ごとの「学習対象消費電力」が取得される。「学習対象消費電力」は、「一日前消費電力」及び「一週間前消費電力」を含む。
【0046】
「一日前消費電力」(W)は、基準時間の一日前の学習対象住宅20の消費電力であって、当該基準時間の時刻と同時刻の消費電力である。
【0047】
「一週間前消費電力」(W)は、基準時間の一週間前の学習対象住宅20の消費電力であって、当該基準時間の時刻と同時刻の消費電力である。
【0048】
「学習用気象データ」は、基準時間における、学習対象住宅20が位置する地域の気象に関する情報である。「学習用気象データ」は、「外気温」及び「天気」を含む。
【0049】
「外気温」(℃)は、学習対象住宅20が位置する地域の外気温を示すものである。「外気温」は、基準時間における外気温を示す。
【0050】
「天気」は、学習対象住宅20が位置する地域の天気を示すものである。「天気」は、基準時間における天気を示す。
【0051】
上記「学習用気象データ」としては、気象に関する公共の機関から発信された天気予報等の情報を採用可能である。また、「学習用気象データ」としては、学習対象住宅20が備える適宜のセンサが計測した情報を採用可能である。
【0052】
「学習用時間データ」は、基準時間に関する情報である。「学習用時間データ」は、「日時」、「曜日」及び「経過日数」を含む。
【0053】
「日時」は、基準時間の日付及び時刻を示すものである。本実施形態では、「日時」における時刻として、0時から23時までの時刻を1時間(60分)単位(例えば13時)で示すものとする。なお、「日時」としては、上述したものに限られず、分単位や秒単位で示すようにしてもよい。
【0054】
「曜日」は、基準時間の曜日を示すものである。「曜日」は、日曜日から土曜日までのいずれかの曜日で示される。
【0055】
「経過日数」は、所定の時から基準時間までに経過した日数を示すものである。「経過日数」によって、制御部4は、基準時間における季節を把握することができる。本実施形態では、「経過日数」を、基準時間が属する年の1月1日から経過した日数としている。
【0056】
上記「学習用時間データ」は、所定の計測手段が計測した情報を採用可能である。
【0057】
上記特徴量は、上記電力実績とセットとなるように記憶部3に記憶される。こうして、ある時(基準時間)の電力実績に対して、一日前の同時刻の学習対象住宅20の消費電力や、一週間前の同時刻の学習対象住宅20の消費電力等(特徴量)が、互いに紐付けされた状態で記憶部3に記憶される。
【0058】
制御部4は、記憶部3に記憶された電力実績及び特徴量に基づいて機械学習を行うことで、予測モデルを作成する。また、制御部4は、複数の学習対象住宅20の学習用データを取得し、上記複数の学習対象住宅20の電力実績及び特徴量に基づいて予測モデルを作成する。
【0059】
次に、電力需要予測処理(ステップS11)について説明する。
【0060】
電力需要予測処理は、予測モデルを用いて、電力需要の予測の対象となる時(以下では、「予測対象時間」と称する)における予測対象住宅10の電力需要を予測するものである。本実施形態では、電力需要予測処理の一例として、ある日の24時間の電力需要を10分間隔で予測するものとする。すなわち、本実施形態では、複数の(10分ごとの)予測対象時間における電力需要が予測される。
【0061】
以下では、図4のフローチャートを用いて、電力需要予測処理において制御部4が行う処理について説明する。
【0062】
ステップS20において、制御部4は、当該処理が実行されている時における予測対象住宅10の消費電力を所定の時間間隔で取得する。上記消費電力の取得における時間間隔は、電力需要の予測における時間間隔と対応する。すなわち、本実施形態では、予測対象住宅10の消費電力を10分間隔で取得する。上記消費電力は、予測対象住宅10から、適宜の通信手段を介して情報取得部2により取得される。制御部4は、ステップS20の処理を実行した後、ステップS21の処理へ移行する。
【0063】
ステップS21において、制御部4は、10分間隔で取得した消費電力について、変動量を算出する。
【0064】
ここで、変動量とは、図5に示すように、所定の時間間隔での消費電力の変動を示すものである。本実施形態では、10分間隔での消費電力と、当該消費電力の前後60分間以内(当該消費電力の時刻を基準として30分前から30分後までの範囲)の値の移動平均の値と、の差を算出した値を、変動量としている。制御部4は、ステップS21の処理を実行した後、ステップS22の処理へ移行する。
【0065】
ステップS22において、制御部4は、変動量が所定の閾値αを下回るか否かを判断する。本実施形態では、閾値αを、ある日(例えば前日)の一日の消費電力の平均値としている。この場合、閾値αは、一日ごとに更新される。
【0066】
制御部4は、変動量の絶対値が閾値αを下回ると判断した場合(変動量がα未満であり、かつ-αを超える場合)(ステップS22:YES)には、ステップS23の処理へ移行する。一方、制御部4は、変動量の絶対値が閾値α以上であると判断した場合(変動量がα以上、または-α以下である場合)(ステップS22:NO)には、ステップS25の処理へ移行する。
【0067】
ステップS23において、制御部4は、60分間隔での消費電力の期間平均値(60分間の消費電力の平均値)を算出する。本実施形態では、0:00から6:00までの間と、9:00から18:00までの間と、の変動量が閾値αを下回る。従って、制御部4は、当該時間帯において、60分間隔での消費電力の期間平均値を算出する。制御部4は、ステップS23の処理を実行した後、ステップS24の処理へ移行する。
【0068】
ステップS24において、制御部4は、60分間隔での消費電力の期間平均値を、入力データとして記憶部3に記憶させる。ここで、入力データとは、消費電力に基づく値であって、予測モデルを用いて電力需要を算出する処理に実際に用いられる値である。制御部4は、ステップS24の処理を実行した後、ステップS26の処理へ移行する。
【0069】
ステップS22において、変動量の絶対値が閾値α以上であると判断した場合に移行するステップS25において、制御部4は、10分間隔での消費電力を、入力データとして記憶部3に記憶させる。
【0070】
本実施形態では、概ね6:00から9:00までの間と、18:00から24:00までの間と、の変動量の絶対値が閾値α以上である。従って、制御部4は、当該時間帯において、10分間隔での消費電力を入力データとして記憶部3に記憶させる。制御部4は、ステップS25の処理を実行した後、ステップS26の処理へ移行する。
【0071】
上述したように、本実施形態では、10分間隔で取得した消費電力を、そのまま、比較的短い時間間隔(短時間間隔)の入力データとして用いる場合と、60分間隔での消費電力の期間平均値を、比較的長い時間間隔(長時間間隔)の入力データとして用いる場合と、を使い分ける構成としている。
【0072】
ステップS26において、制御部4は、予測実行時間を経過したか否かを判断する。ここで、予測実行時間とは、電力需要予測処理において、予測モデルを用いて電力需要を算出する処理(後述するステップS27)を実行する時間である。電力需要予測処理においては、予測実行時間が経過するまで、記憶部3に入力データを記憶させる構成としている。制御部4は、予測実行時間を経過したと判断した場合(ステップS26:YES)には、ステップS27の処理へ移行する。一方、制御部4は、予測実行時間を経過していないと判断した場合(ステップS26:NO)には、再度、ステップS20の処理へ移行する。
【0073】
ステップS27において、制御部4は、予測モデルを用いて、電力需要を算出する処理を実行する。制御部4は、予測用データに基づいて電力需要を算出する。以下では、予測用データについて説明する。
【0074】
図6に示す予測用データは、予測対象住宅10に関する情報である。予測用データは、学習用データの特徴量(「学習対象消費電力」、「学習用気象データ」及び「学習用時間データ」)に対応する情報である。予測用データには、「過去入力データ」、「予測用気象データ」及び「予測用時間データ」が含まれる。
【0075】
「過去入力データ」(W)は、予測対象時間を基準とした場合の過去の日の予測対象住宅10の入力データであって、当該予測対象時間の時刻と同時刻の入力データである。「過去入力データ」は、「一日前入力データ」及び「一週間前入力データ」を含む。
【0076】
「一日前入力データ」(W)は、予測対象時間の一日前の予測対象住宅10の入力データであって、当該予測対象時間の時刻と同時刻の入力データである。
【0077】
「一週間前入力データ」(W)は、予測対象時間の一週間前の予測対象住宅10の入力データであって、当該予測対象時間の時刻と同時刻の入力データである。
【0078】
「予測用気象データ」は、予測対象時間における、予測対象住宅10が位置する地域の気象に関する情報である。「予測用気象データ」は、「外気温」及び「天気」を含む。
【0079】
「外気温」(℃)は、予測対象住宅10が位置する地域の外気温を示すものである。「外気温」は、電力需要予測処理を実行する時点において予測される予測対象時間の外気温を示す。
【0080】
「天気」は、予測対象住宅10が位置する地域の天気を示すものである。「天気」は、電力需要予測処理を実行する時点において予測される予測対象時間における天気を示す。
【0081】
上記「予測用気象データ」としては、気象に関する公共の機関から発信された天気予報等の情報を採用可能である。この場合、上記天気予報等の情報が、適宜の通信手段を介して情報取得部2により取得されると共に、記憶部3に記憶される。また、「予測用気象データ」としては、予測対象住宅10が備える適宜のセンサが計測した情報を採用可能である。この場合、上記センサからの情報が、適宜の通信手段を介して情報取得部2により取得されると共に、記憶部3に記憶される。
【0082】
「予測用時間データ」は、予測対象時間の日時に関する情報である。「予測用時間データ」は、「日時」、「曜日」及び「経過日数」を含む。
【0083】
「日時」は、予測対象時間の日付及び時刻を示すものである。本実施形態では、「日時」における時刻として、0時から23時50分までの時刻を10分単位(例えば13時10分)で示すものとする。
【0084】
「曜日」は、予測対象時間の曜日を示すものである。「曜日」は、日曜日から土曜日までのいずれかの曜日で示される。
【0085】
「経過日数」は、所定の時から予測対象時間までの日数を示すものである。「経過日数」によって、制御部4は、予測対象時間における季節を把握することができる。本実施形態では、「経過日数」を、予測対象時間が属する年の1月1日から経過した日数としている。
【0086】
上記「予測用時間データ」としては、所定の計測手段が計測した情報を採用可能である。この場合、上記計測手段からの情報が、情報取得部2により取得されると共に、記憶部3に記憶される。
【0087】
上述の如く、予測用データの「過去入力データ」(「一日前入力データ」及び「一週間前入力データ」)、「予測用気象データ」及び「予測用時間データ」は、特徴量の「学習対象消費電力」(「一日前消費電力」及び「一週間前消費電力」)、「学習用気象データ」及び「学習用時間データ」にそれぞれ対応する。
【0088】
本実施形態においては、ある日の24時間の電力需要を予測することから、ステップS27の処理においては、24時間分の「一日前入力データ」及び「一週間前入力データ」を用いて、電力需要が予測される。上記処理による予測結果(算出結果)は、表示部5に表示される。制御部4は、ステップS27の処理を実行した後、電力需要予測処理を終了する。
【0089】
上述の如き電力需要予測システム1は、学習対象住宅20の学習用データに基づいた機械学習により、汎用の予測モデルを作成し、上記予測モデルを用いた予測対象住宅10の電力需要の予測が可能となる。これにより、予測対象住宅10が比較的新しい住宅であり、長期に亘った学習データが蓄積されておらず、予測モデルを作成し難い場合であっても、長期的な学習用データに基づく予測モデルを用いた電力需要の予測が可能となる。
【0090】
また、電力需要予測システム1は、電力需要予測処理において、「一日前入力データ」及び「一週間前入力データ」を含む予測用データに基づいて、予測モデルを用いた算出を行う構成としている。これにより、汎用の予測モデルを用いながらも、予測対象住宅10の消費電力を反映させた電力需要の予測が可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、電力需要予測処理において、変動量に応じて短時間間隔(10分間隔)と、長時間間隔(60分間隔)と、の二つの時間間隔を使い分けて入力データを記憶させる構成としている。
【0092】
これにより、電力需要の予測精度を向上させながらも、予測に用いるデータ量の増大を抑制することができる。すなわち、電力需要予測処理においては、当該処理に用いられる入力データの時間間隔が短くなるほど予測精度は向上する一方、データ量も増大する。また、消費電力の変動量が比較的大きい場合には、予測精度の観点から、短い時間間隔の入力データを用いることが望ましい。そこで、本実施形態では、変動量の絶対値が閾値α以上の場合には、短時間間隔の入力データを用い、変動量の絶対値が閾値αを下回る場合には、長時間間隔の入力データを用いる構成としている。これにより、電力需要の予測精度を向上させながらも、予測に用いるデータ量の増大を抑制することができる。以下では、図7を参照して上記効果を説明する。
【0093】
図7に示すグラフは、上記予測モデルによる予測結果A~Dの決定係数と、電力需要予測処理に用いられる入力データの一日あたりのデータ量(kB)と、の関係を示したものである。ここで、決定係数とは、予測モデルによる予測の精度を表す指標である。決定係数は、1.0に近いほど予測の精度が高いことを示す。
【0094】
図7において、予測結果Aは、10分間隔の入力データを用いて予測を実行した場合、予測結果Bは、30分間隔の入力データを用いて予測を実行した場合、予測結果Cは、60分間隔の入力データを用いて予測を実行した場合をそれぞれ示す。また、予測結果Dは、上述した実施形態の如く、10分間隔の入力データと60分間隔の入力データを使い分けて予測を実行した場合を示す。なお、図7においては、棒グラフが決定係数を示し、折れ線グラフがデータ量を示す。
【0095】
図7に示すように、予測結果Aでは、決定係数は0.9程度であり、データ量は150(kB)程度である。また、予測結果Bでは、決定係数は0.8弱であり、データ量は50(kB)程度である。また、予測結果Cでは、決定係数は0.7弱であり、データ量は20(kB)程度である。以上から、予測モデルの処理に用いられる入力データの時間間隔が短くなるほど予測精度は向上する一方、データ量も増大する傾向があることが示された。
【0096】
ここで、予測結果Dでは、決定係数は0.9程度であり、データ量は70(kB)弱である。このことから、本実施形態においては、予測結果Aと概ね同等の予測精度を維持しながらも、データ量を半減できることが示された。
【0097】
なお、上述した実施形態は一例であり、電力需要予測処理は、上述した構成に限られない。例えば、本実施形態では、閾値αを、予測対象住宅10の一日の消費電力の平均値とし、閾値αを一日ごとに更新する構成としたが、閾値αとしてはこのようなものに限られない。
【0098】
例えば、閾値αを、所定期間(複数日)に亘って固定する(更新しない)ようにしてもよい。この場合には、例えば、閾値αを予測対象住宅10の消費電力の一ヶ月の平均値としてもよい。また、閾値αを、春(3月から5月)、夏(6月から8月)、秋(9月から11月)、冬(12月から2月)の季節ごとの平均値としてもよい。
【0099】
上記構成によれば、長時間間隔の入力データと短時間間隔の入力データとを使い分ける基準となる閾値αを、所定期間において固定することができるので、閾値αの算出に関する処理を簡略化することができる。
【0100】
なお、閾値αとしては、所定期間の平均値に限られない。例えば、閾値αを、操作者により予め設定された固定値としてもよい。上記構成によっても、閾値αの算出に関する処理を簡略化することができる。
【0101】
また、本実施形態では、消費電力の変動量の大小により、長時間間隔の入力データと短時間間隔の入力データとを使い分ける判断を行う例を示したが、このような態様に限られない。例えば、変動量の変化を示すグラフの勾配(傾斜角度)により長時間間隔の入力データと短時間間隔の入力データとを使い分ける判断を行うようにしてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、予測対象住宅10の消費電力を取得するごとに変動量を算出し、当該変動量に基づいて長時間間隔の入力データと、短時間間隔の入力データと、を使い分ける構成としたが、このような態様に限られない。例えば、変動量を所定期間(複数日)に亘って固定してもよい。これによれば、変動量の算出に関する処理を簡略化することができる。
【0103】
また、本実施形態では、長時間間隔の入力データを用いる時間帯と、短時間間隔の入力データを用いる時間帯と、を所定の日の変動量の大きさに基づいて決定する例を示したが、このような態様に限られない。例えば、上記各時間帯を、所定期間(複数日)に亘って固定してもよい。これによれば、上記各時間帯を決定するために記憶させる消費電力のデータ量の削減を図ることができる。
【0104】
以上のように、本発明の一実施形態に係る電力需要予測システム1は、
予測対象住宅10(予測対象施設)の電力需要を予測する電力需要予測システム1であって、
前記予測対象住宅10とは異なる学習対象住宅20(学習対象施設)の過去の消費電力(学習対象消費電力)を含む学習用データに基づいて予測モデルを作成する(ステップS10)予測モデル作成部(制御部4)と、
前記予測モデルを用いて、前記予測対象住宅10の過去の消費電力(過去入力データ)に基づいて、当該予測対象住宅10の予測対象時間における電力需要を予測する(ステップS11)電力需要予測部(制御部4)と、
を具備するものである。
【0105】
このような構成により、予測対象住宅10に学習用データが十分に蓄積されていなくとも、当該予測対象住宅10の電力需要を精度よく予測することができる。すなわち、学習対象住宅20の学習用データに基づいて作成した予測モデルを用いて、予測対象住宅10の電力需要の予測を可能としている。これにより、予測対象住宅10が比較的新しい住宅であり、学習用データの蓄積が予測モデルを作成するには不十分であっても、学習用データに基づく予測モデルを用いた電力需要の予測が可能となる。
【0106】
また、電力需要予測部(制御部4)を、予測対象住宅10の過去の消費電力(過去入力データ)を含む予測用データに基づいて、予測モデルを用いた電力需要の予測を行う構成としている。これにより、学習対象住宅20の学習用データに基づいた予測モデルを用いながらも、予測対象住宅10で実際に消費された消費電力を予測に反映させることで、予測対象住宅10の電力需要を精度よく予測することができる。
【0107】
また、前記予測対象住宅10の過去の消費電力(過去入力データ)は、
第一の過去消費電力(一日前入力データ)と、
前記第一の過去消費電力(一日前入力データ)よりも過去の第二の過去消費電力(一週間前入力データ)と、
を含むものである。
【0108】
このような構成により、予測対象住宅10の電力需要をより精度よく予測することができる。すなわち、第一の過去消費電力(一日前入力データ)と、第二の過去消費電力(一週間前入力データ)と、の二つのデータ用いて電力需要の予測を行うことで、より精度の高い予測が可能となる。
【0109】
また、前記第一の過去消費電力は、
前記予測対象時間の前日の消費電力(一日前入力データ)であり、
前記第二の過去消費電力は、
前記予測対象時間の一週間前の消費電力(一週間前入力データ)であるものである。
【0110】
このような構成により、予測対象住宅10の電力需要をより精度よく予測することができる。すなわち、予測対象時間の直近の日の消費電力である一日前入力データと、予測対象時間と同じ曜日であって、予測対象時間に比較的近い日の消費電力である一週間前入力データと、を用いて電力需要の予測を行うことで、より精度の高い予測が可能となる。
【0111】
また、電力需要予測システム1は、
前記予測対象住宅10の過去の消費電力を、第一の時間間隔(短時間間隔)で取得する(ステップS20)情報取得部(制御部4)と、
前記情報取得部(制御部4)に取得された前記消費電力の前記第一の時間間隔(短時間間隔)での変動量を算出する(ステップS21)変動量算出部(制御部4)と、
を具備し、
前記電力需要予測部(制御部4)は、
前記変動量の絶対値が、所定の閾値α以上の場合(ステップS22:NO)は、前記第一の時間間隔(短時間間隔)での前記消費電力を用いて前記電力需要を予測し、前記変動量の絶対値が前記閾値αを下回る場合(ステップS22:YES)は、前記第一の時間間隔(短時間間隔)よりも長い第二の時間間隔(長時間間隔)での前記消費電力を用いて前記電力需要を予測するものである。
【0112】
このような構成により、電力需要の予測精度を向上させながらも、予測に用いるデータ量の増大を抑制することができる。すなわち、変動量が、閾値αを超える場合には、短時間間隔での消費電力を用いることで、電力需要の予測精度を向上させることができる。また、変動量が閾値α以下の場合には、長時間間隔での消費電力を用いることで、データ量の増大を抑制することができる。
【0113】
また、前記閾値αは、
所定の期間における前記予測対象住宅10の消費電力の平均値であるものである。
【0114】
このような構成により、電力需要の予測精度を向上させることができる。すなわち、閾値αを、消費電力を反映させたものとすることで、電力需要の予測精度を向上させることができる。
【0115】
また、前記閾値αは、
予め設定された固定値であるものである。
【0116】
このような構成により、処理を簡略化することができる。すなわち、閾値αを固定値としたことで、閾値αの算出に関する処理を簡略化することができる。
【0117】
なお、本実施形態に係る制御部4は、本発明に係る予測モデル作成部、電力需要予測部及び変動量算出部の一形態である。
また、本実施形態に係る予測対象住宅10は、本発明に係る予測対象施設の一形態である。
また、本実施形態に係る学習対象住宅20は、本発明に係る学習対象施設の一形態である。
また、本実施形態に係る一日前入力データは、本発明に係る第一の過去消費電力の一形態である。
また、本実施形態に係る一週間前入力データは、本発明に係る第二の過去消費電力の一形態である。
また、本実施形態に係る短時間間隔は、本発明に係る第一の時間間隔の一形態である。
また、本実施形態に係る長時間間隔は、本発明に係る第二の時間間隔の一形態である。
【0118】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0119】
例えば、本実施形態では、学習用データ及び予測用データにおける過去の消費電力(「学習対象消費電力」及び予測用データの「過去入力データ」)の例を、一日前及び一週間前のものとしたが、このような態様に限られない。上記消費電力としては、例えば、一ヶ月前の消費電力を用いてもよく、種々の日の消費電力を採用可能である。
【0120】
また、本実施形態では、学習用データ及び予測用データについて、「一日前消費電力」及び「一週間前消費電力」の二日分の消費電力を用いる構成としたが、このような態様に限られない。例えば、過去一週間の消費電力を用いる構成としてもよく、消費電力を取得する日数としては、種々の日数を採用可能である。
【0121】
また、本実施形態では、電力需要予測処理において、予測用データの消費電力を10分間隔で取得する構成としたが、このような態様に限られない。消費電力を取得する間隔としては、種々の間隔を採用可能であり、例えば、30分間隔としてもよく、60分間隔としてもよい。
【0122】
また、本実施形態では、複数の学習対象住宅20から学習用データを取得する構成としたが、このような態様に限られない。例えば、一つの学習対象住宅20から学習用データを取得する構成としてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、予測対象施設及び学習対象施設を、住宅(予測対象住宅10及び学習対象住宅20)としたが、このような態様に限られない。予測対象施設及び学習対象施設としては、住宅に限られず、商業施設や工場などの事業所、役所や公園などの公共施設などが含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1 電力需要予測システム
2 情報取得部
4 制御部
10 予測対象住宅(予測対象施設)
20 学習対象住宅(学習対象施設)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7