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  • 特許-封口ガスケット、及び電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】封口ガスケット、及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20230529BHJP
   H01M 6/08 20060101ALI20230529BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20230529BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M6/08 A
H01M50/184 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019114266
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021002438
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 龍也
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181825(JP,A)
【文献】特開2015-026477(JP,A)
【文献】特開昭62-145645(JP,A)
【文献】特開2016-177877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/30-50/392
H01M 6/00- 6/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の電池缶と当該電池缶の開口を封止する封口体とを絶縁する円筒形のアルカリ乾電池用の封口ガスケットであって、
前記電池缶内において、発電要素が収納される領域を密閉しつつ、当該発電要素が収納される領域と前記封口体側の領域とを隔絶させる膜状の隔壁部を備え、
前記隔壁部は、棒状の負極集電子が挿通される中空円筒状のボス部の外周に接続する円盤状であり、
前記隔壁部には溝状の薄肉部が形成され、
前記薄肉部は、前記ボス部に対する同心円に沿って形成され、
前記薄肉部において、溝の底に相当する領域の厚さt1と、溝の縁に相当する領域の厚さt2との比t2/t1が、5.0以上8.0以下である、
封口ガスケット。
【請求項2】
発電要素が収納された有底筒状の電池缶の開口が、請求項1に記載の封口ガスケットを介して封口体によって封止されてなる電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封口ガスケット、及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒型のアルカリ乾電池など、電池には、有底筒状の電池缶内に発電要素が収納されているとともに、電池缶の開口が樹脂製の封口ガスケットを介して封口体によって封止されているものがある。図1は、LR6型のアルカリ乾電池1を示す図であり、図1では、円筒状の電池缶2の円筒軸100の方向を上下(縦)方向としたときのアルカリ乾電池1の縦断面図が示されている。
【0003】
図1に示したように、アルカリ乾電池1は、有底筒状の金属製電池缶2、環状に成形された正極合剤3、この正極合剤3の内側に配設された有底円筒状のセパレーター4、亜鉛合金を含んでセパレーター4の内側に充填される負極ゲル5、この負極ゲル5中に挿入された棒状の金属からなる負極集電子6、皿状の金属製負極端子板7、樹脂からなる封口ガスケット10などにより構成される。この構造において、正極合剤3、セパレーター4、負極ゲル5が、電解液の存在下でアルカリ乾電池1の発電要素を形成する。なお、以下では、電池缶2の底部側を下方として上下方向を規定することとする。
【0004】
電池缶2は、電池ケースを兼ねるとともに、正極合剤3に直接接触することにより、正極集電体として機能する。この電池缶2の底面には正極端子8が形成されている。皿状の負極端子板7は、電池缶2の開口を封止する封口体であり、フランジ状の縁がある皿状の形状を有している。そして、皿状の負極端子板7は、皿を伏せたように、底面を上にした状態で電池缶2の開口に封口ガスケット10を介してかしめられている。
【0005】
図2は、アルカリ乾電池1における封口構造を示す図であり、ここでは、アルカリ乾電池1の上端側の縦断面を拡大図にして示している。封口ガスケット10は、円板状で、表面に同心円状の凹凸がある隔壁部13の周囲に上方に立設する壁面(以下、外周部14と言うことがある)が巡るカップ状である。
【0006】
上下方向から見たときの封口ガスケット10の中心には、上下方向に貫通するボス孔12を有する中空円筒状のボス部11が形成されており、ボス部11を上下方向に貫通するボス孔12には、棒状の負極集電子6が圧入状態で挿通されている。棒状の負極集電子6は、上端側に円板状の頭部61が形成された釘状で、下端側が負極ゲル5内に挿入されている。そして、頭部61の上面が負極端子板7の下面71に溶接されている。
【0007】
アルカリ乾電池1を組み立てる際には、負極端子板7、負極集電子6、及び封口ガスケット10を、あらかじめ一体に組み合わせておき、電解液を含む発電要素(3、4、5)が収納された電池缶2の開口端側に、負極端子板7、負極集電子6、及び封口ガスケット10が一体化されてなる部品を挿入するとともに、この電池缶2の開口を内方に縮径加工する。それによって、封口ガスケット10の外周部14が、電池缶2の開口端側の内面と、負極端子板7におけるフランジ状の縁の外周との間に挟持され、電池缶2が密閉状態で封止される。
【0008】
なお、封口ガスケット10は、ボス孔12に負極集電子6が圧入状態で挿通されつつ、外周部14の外面が電池缶2の内面に密着している。それによって、封口ガスケット10は、電池缶2内における開口端側から底部に至る発電要素の収納空間を密閉しつつ、当該発電要素の収納空間と負極端子板7側の空間21とを隔絶させている。
【0009】
封口ガスケット10の隔壁部13には、ボス部11と同心円をなす薄肉部15が形成されている。図示した例では、ボス部11の外周に沿って薄肉部15が形成されている。薄肉部15は、隔壁部13において、放射方向に所定の幅を有する環状の溝からなる領域である。したがって、隔壁部13は、放射外方向から内方向に向かって所定の厚さ以上の肉厚を維持しつつ、薄肉部15の形成領域において、急激に厚さが減少する。
【0010】
そして、電池缶2内の圧力が異常に上昇すると、薄肉部15において最も薄い領域16の一部、すなわち薄肉部15を形成する溝の底に相当する領域16の一部が、封口ガスケット10の他の部位に先行して破断する。それによって、内圧の原因となったガスが負極端子板7に設けられた通気孔9を介して大気開放される。このように、封口ガスケット10における薄肉部15は、アルカリ乾電池1の防爆安全機構として機能する。
【0011】
また、封口ガスケット10の隔壁部13には、封口時に封口ガスケット10に加わる放射内方向の応力を吸収する応力緩衝部17が設けられている。応力緩衝部17は、ボス部11から外周部14に至る途上に形成され、大きく上下方向に屈曲した断面形状を有している。そして、応力緩衝部17は、放射内方向に応力が隔壁部13に加わった際に、隔壁部13の円盤形状を均一に変形させて、応力の偏りによる薄肉部15の不用意な破断を抑止する機能を担っている。図1図2に示したアルカリ乾電池1における封口ガスケット10の応力緩衝部17は、U字状の縦断面形状を有し、電池缶2の封口時に、電池缶2の開口部が縮径されて封口ガスケット10がかしめられる際、U字の開口が閉塞するように撓むことで、隔壁部13に対する縮径方向の応力を吸収する。なお、アルカリ乾電池の構造や製造方法については以下の非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】FDK株式会社、”アルカリ電池のできるまで”、[online]、[令和1年5月8日検索]、インターネット<URLttp://www.fdk.co.jp/denchi_club/denchi_story/arukari.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図1、及び図2に示したアルカリ乾電池1など、電池缶2内における発電要素(3、4、5)の収納領域が封口ガスケット10によって密閉されている電池では、防爆安全機構として、封口ガスケット10に溝状の薄肉部15が形成されていた。薄肉部15における最も薄い領域16は、溝状の薄肉部15の底に相当する領域16であり、その最も薄い領域16の厚さは、電池缶2内が所定の圧力に達した時点で破断するように設定されている。そして、薄肉部15が形成された封口ガスケット10を備えた電池1では、圧力が上昇すると、隔壁部13において最も薄い領域16である溝状の薄肉部の底(以下、破断領域16と言うことがある)の一部が破断し、隔壁部13には、薄肉部15の円環形状に沿って線状の開口が形成される。
【0014】
しかし、一次電池であるアルカリ乾電池1が誤って充電されるなどして電池缶2内に多量のガスが瞬間的に発生し、電池缶2の内圧が急激に上昇すると、破断領域に加えてその周辺にも亀裂が波及して穴が開いてしまい、負極ゲル5などの電池1の内容物が隔壁部13の上方の空間21に噴出し、その内容物によって通気孔9が閉塞されてしまう場合があった。通気孔9が閉塞されれば、電池缶2内のガスが外方に放出されず、電池缶2の開口に嵌着されている負極端子板7が飛散する「破裂」に至る可能性もある。
【0015】
そこで、本発明は、電池缶内の圧力が急激に上昇した場合であっても、電池缶の封口体が飛散するのを抑止できる封口ガスケットと、その封口ガスケットを備えた電池とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、有底筒状の電池缶と当該電池缶の開口を封止する封口体とを絶縁する円筒形のアルカリ乾電池用の封口ガスケットであって、
前記電池缶内において、発電要素が収納される領域を密閉しつつ、当該発電要素が収納される領域と前記封口体側の領域とを隔絶させる膜状の隔壁部を備え、
前記隔壁部は、棒状の負極集電子が挿通される中空円筒状のボス部の外周に接続する円盤状であり、
前記隔壁部には溝状の薄肉部が形成され、
前記薄肉部は、前記ボス部に対する同心円に沿って形成され、
前記薄肉部において、溝の底に相当する領域の厚さt1と、溝の縁に相当する領域の厚さt2との比t2/t1が、5.0以上8.0以下である、
封口ガスケットである。
【0017】
本発明のその他の態様は、発電要素が収納された有底筒状の電池缶の開口が、請求項1に記載の封口ガスケットを介して封口体によって封止されてなる電池である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電池缶内の圧力が急激に上昇した場合であっても、電池缶の封口体が飛散するのを抑止できる封口ガスケットと、その封口ガスケットを備えた電池とが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一般的なアルカリ乾電池の構造を示す図である。
図2】一般的なアルカリ乾電池の封口構造を示す図である。
図3】実施例に係る封口ガスケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
===防爆安全機構の動作について===
図1及び図2に示したアルカリ乾電池1など、防爆安全機構を有する封口ガスケット10を備えた電池(以下、電池1と言うことがある)では、電池缶2内の内圧の上昇が急激である場合、防爆安全機構が動作するものの、電池缶2内の内容物が噴出して通気孔9を塞ぎ、ガスが効果的に排出されず、破裂に至る可能性があった。
【0021】
そこで、本発明者が、アルカリ乾電池1を用い、電池缶2内の内圧を急激に上昇させて防爆安全機構を作動させる実験を行い、破裂に至ったアルカリ乾電池1の封口ガスケット10を調べてみたところ、隔壁部13に、破断箇所を起点とした放射状の亀裂が発生している場合が多かった。本発明者が、隔壁部13において放射状の亀裂が発生するメカニズムについて考察してみたところ、内圧が急激に上昇すると、破断領域16に瞬間的に大きな応力がわり、その応力が破断によって一気に開放されると、破断時の衝撃が薄肉部15の形成領域を超えて、隔壁部13の他の領域にまで広がるとのメカニズムに想到した。さらに、そのメカニズムを前提にすれば、破断領域16の厚さに対して、薄肉部15を構成する溝の深さ、すなわち、溝の縁に相当する領域(以下、縁部18と言うことがある)の厚さが十分に大きければ、亀裂を薄肉部15の形成領域内に止めておくことができると考えた。しかし、縁部18の厚さが過大であると、破裂とは異なる不具合が電池1に発生する可能性もある。
【0022】
そして、隔壁部13が総体的に厚くなると、電池缶2内の隔壁部13の下方の領域の容積が減少する。すなわち、電池缶2の底部を下方に向けてアルカリ乾電池1を正立させたときに、負極ゲル5の上面51から隔壁部13の下面20までの空間22の体積が小さくなる。それによって、従来であれば、電池缶2内のガスの量が、防爆安全機構が動作しないような場合であっても、電池缶2内が、防爆安全機構の動作する圧力に達してしまう可能性がある。そして、防爆安全機構が動作すれば、電池缶2内の電解液などが隔壁部13における破断箇所と通気孔9とを経由して電池缶2の外方に漏出し、所謂「漏液」が発生する。
【0023】
そこで、実施例に係る封口ガスケット10では、隔壁部13における破断領域16と、溝状の薄肉部15において溝の縁に相当する部分(以下、縁部と言うことがある)の厚さとが適切に設定されて、電池1の破裂や無用な防爆安全機構の動作を防止できるようになっている。
【0024】
====実施例===
実施例に係る封口ガスケット10として、図1に示したLR6型のアルカリ乾電池1に用いられる封口ガスケット10を挙げる。そして、以下では、実施例に係る封口ガスケット10について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一または類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面では、その部分に符号を付さない場合もある。
【0025】
図3に、実施例に係る封口ガスケット10の縦断面図を示した。図3に示したように、実施例に係る封口ガスケット10は、図1、及び図2に示した一般的なアルカリ乾電池1が備える封口ガスケット10と同様の素材を用いて作製されて同様の形状を有している。すなわち、ボス部11の外周に沿う円環溝状の薄肉部15を備える。なお、隔壁部13は、縁部18から放射外方向に向かって縁部18の厚さt2を維持したのち、電池缶2内において、セパレーター4の先端に対応する位置23から応力緩衝部17の起点19に向かって段階的に厚さや断面形状が変化していくように形成されている。
【0026】
しかし、実施例に係る封口ガスケット10は、溝状の薄肉部15の底に対応し、隔壁部13において最も厚さが薄い破断領域16の厚さt1と、溝状の薄肉部15の縁部18の厚さt2との比(以下、板厚比t2/t1と言うことある)が適切に設定されており、それによって、実施例に係る封口ガスケット10を備えたアルカリ乾電池1は、電池缶2の破裂を確実に抑止できるものとなっている。
【0027】
<板厚比t2/t1の最適化>
次に、封口ガスケット10における板厚比t2/t1の最適化について、図1図3を参照しながら説明する。まず、隔壁部13における、板厚比t2/t1の適切な範囲を求めるために、板厚比t2/t1の値が異なる封口ガスケット10を用意し、その封口ガスケット10を用いたLR6型アルカリ乾電池1をサンプルとして作製した。封口ガスケット10は、樹脂からなる一体成形品であり、ここでは6,12ナイロンを樹脂材料として用いた。また、破断領域16の厚さt1は、各サンプルの封口ガスケット10で共通であり、封口ガスケット10を構成する素材の機械特性(引張強度、圧縮強度、曲げ強度など)に基づいて、所定の圧力範囲内で破断するように設定されている。
【0028】
そして、各サンプルについて、所定数(例えば、10個)の個体を用意し、全個体を150mAの電流で充電して防爆安全機構を作動させる充電試験を行った。そして、充電試験後にサンプルを分解し、封口ガスケット10に放射状の亀裂が発生しているか否かを目視により確認した。また、充電試験に用いた個体とは別に、各サンプルについて、所定数(例えば、10個)の個体を用意し、全個体を90℃の高温環境下に30日間保存する保存試験を行った。そして、保存後に漏液の有無を目視により確認した。
【0029】
以下の表1に各サンプルにおける充電試験の結果と保存試験の結果とを示した。
【0030】
【表1】
表1に示した充電試験の結果では、各サンプルについて作製した所定数の個体のうち、封口ガスケット10に放射状の亀裂が発生した個体が一つもなければ合格「○」とし、封口ガスケット10に亀裂が発生した個体が一つでもあれば不合格「×」としている。保存試験の結果についても、各サンプルについて作製した所定数の個体のうち、漏液が発生した個体がなければ合格「○」とし、漏液が発生した個体が一つでもあれば不合格「×」としている。
【0031】
表1に示した充電試験の結果では、隔壁部13の板厚比t2/t1が4.0以下のサンプル1、2において、放射状の亀裂が発生した。これは、サンプル1、2では、薄肉部15の縁部18の厚さが薄く、破断領域16で発生した破断箇所を起点とした亀裂を薄肉部15の形成領域内に止まらせるのに必要な強度が得られていなかったためと考えることができる。一方、板厚比t2/t1が5.0以上のサンプル3~8では、亀裂が発生しなかった。したがって、板厚比t2/t1は、5.0以上であることが必要である。
【0032】
一方、保存試験では、板厚比t2/t1が8.0以下のサンプル1~6において漏液が発生しなかった。しかし、板厚比t2/t1が9.0以上のサンプル7、8では、漏液が発生した。これは薄肉部15の縁部18の厚さでもある隔壁部13において負極ゲル5に対向する領域の厚さが厚過ぎたため、電池缶2内における隔壁部13より下方の領域の空間21の体積が小さくなり、結果として、板厚比t2/t1が8.0以下では電池缶内の圧力が上昇して防爆安全機構が動作したためと考えることができる。以上により、封口ガスケット10の隔壁部13における適切な板厚比t2/t1は、5.0以上8.0以下であることが分かった。
【0033】
===その他の実施例===
上記実施例における封口ガスケット10では、ボス部11の外周に沿って薄肉部15が形成されていたが、薄肉部15は、隔壁部13において、ボス部11の外周に対して放射外方向に離隔した位置にボス部11と同心円となるように形成されていてもよい。すなわち、隔壁部13において、応力緩衝部20から放射内方向に向かって厚さがt2になる位置23からボス部11の外周に至るまでの領域内に薄肉部15が形成されていればよい。
【0034】
また、薄肉部15は、ボス部11に対する同心円に沿って円弧状に散在して形成されていてもよい。さらに、薄肉部15は、ボス部11に対して放射外方向に向かって直線状に形成されていてもよい。いずれにしても、実施例に係る封口ガスケット10は、隔壁部13に所定の幅を有する溝状の薄肉部15が形成されているとともに、薄肉部15において、溝の底に相当する破断領域16の厚さt1と溝の縁に相当する縁部18の厚さt2との板厚比t2/t1が、5.0以上8.0以下であればよい。
【0035】
上記実施例に係る封口ガスケット10は、亀裂の発生を抑止するための条件が、所定の圧力で破断する破断領域16の厚さt1と、破断領域16を底とした溝状に形成されている薄肉部15の縁部18の厚さt2との比で規定されている。したがって、実施例に係る封口ガスケット10の板厚比t2/t1は、LR6型に限らず、他のサイズのアルカリ乾電池1の封口ガスケット10にとっても適正なものとなる。もちろん、実施例に係る封口ガスケット10は、アルカリ乾電池1用に限らず、発電要素が収納される領域が密閉される電池であれば適用可能である。
【0036】
封口ガスケット10は、ナイロン系の樹脂(6,12ナイロンなど)の他に、例えば、フッ素系樹脂(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)など)でできていてもよい。なお、ナイロン系の樹脂は、他の樹脂に対して裂け易い、すなわち、亀裂が発生し易いことが分かっている。したがって、放射状の亀裂の発生を防止する効果は、特に、ナイロン系樹脂性の封口ガスケット10を用いた電池において絶大なものとなる。
【符号の説明】
【0037】
1 アルカリ乾電池、2 電池缶、3 正極合剤、4 セパレーター、5 負極ゲル、
6 負極集電子、7 負極端子板、8 正極端子、9 通気孔、10 封口ガスケット、
11 ボス部、12 ボス孔、13 隔壁部、14 外周部、15 薄肉部、
17 応力緩衝部、16 破断領域、18 薄肉部の縁部、
図1
図2
図3