(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】コーナーカバーとその取り付け方法
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
E04F19/04 101D
E04F19/04 102D
(21)【出願番号】P 2019121174
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】杉本 統彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳真
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160744(JP,A)
【文献】特開2016-084613(JP,A)
【文献】特開2014-070360(JP,A)
【文献】特開2016-084685(JP,A)
【文献】特開2017-197959(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1015001(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出隅もしくは入隅を形成する二つの壁面に取り付けられる一対の幅木もしくは廻り縁である壁縁用板材であり、壁面に当接される裏面において該壁面の幅方向に延設する裏面嵌り溝条を備え、表面において該壁面の幅方向に延設する釘打ち溝条を備えている、一対の壁縁用板材を覆う、コーナーカバーであって、
一対の前記壁縁用板材の表面を覆う平面視L型の表板と、
前記表板に交差する側板であって、前記壁縁用板材の前記表面に交差する端面を覆う側板と、
前記表板の裏面から張り出して前記釘打ち溝条に嵌まる裏面突条と、
前記表板の裏面から張り出して、一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌まる係合突起と、を有
し、
一対の前記表板の一方の裏面には、両面接着テープが取り付けられており、離型紙を剥がすことにより該両面接着テープの一方の接着面が露出自在となっており、
前記両面接着テープの広幅面に交差する方向に前記係合突起が延設していることを特徴とする、コーナーカバー。
【請求項2】
前記表板の裏面から、一対の前記壁縁用板材を仕切る仕切り板が張り出し、該仕切り板から前記係合突起が張り出していることを特徴とする、請求項1に記載のコーナーカバー。
【請求項3】
前記表板と前記側板の間に、テーパー状もしくは湾曲状の遷移板が介在していることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のコーナーカバー。
【請求項4】
前記壁縁用板材は、その表面における天井もしくは床との取り合い角部において角部溝条をさらに備えており、
前記表板の裏面から壁面側に張り出して前記角部溝条に係合する裏面角部突条をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のコーナーカバー。
【請求項5】
出隅を形成する二つの壁面に取り付けられる一対の幅木もしくは廻り縁である壁縁用板材であって、壁面に当接される裏面において壁面の幅方向に延設する裏面嵌り溝条を備え、表面において壁面の幅方向に延設する釘打ち溝条を備えている、一対の壁縁用板材を前記二つの壁面に取り付ける、壁縁用板材取り付け工程と、
前記一対の壁縁用板材を覆うようにしてコーナーカバーを取り付ける、コーナーカバー取り付け工程と、を有し、
前記コーナーカバーは、
一対の前記壁縁用板材の表面を覆う平面視L型の表板と、
前記表板の端部から屈曲する側板であって、前記壁縁用板材の前記表面に交差する端面を覆う側板と、
前記表板の裏面から張り出して前記釘打ち溝条に嵌まる裏面突条と、
前記表板の裏面から張り出して、一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌まる係合突起と、
一対の前記表板の一方の裏面に取り付けられている両面接着テープと、を備え、
前記コーナーカバー取り付け工程では、前記係合突起を一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌め、前記両面接着テープの一方の接着面を他方の前記壁縁用板材の備える前記表面に接着させることを特徴とする、コーナーカバーの取り付け方法。
【請求項6】
入隅を形成する二つの壁面に取り付けられる一対の幅木もしくは廻り縁である壁縁用板材であって、壁面に当接される裏面において壁面の幅方向に延設する裏面嵌り溝条を備え、表面において壁面の幅方向に延設する釘打ち溝条を備えている、一対の壁縁用板材のうち、一方の前記壁縁用板材を一つの壁面に取り付ける、一方の壁縁用板材取り付け工程と、
他方の前記壁縁用板材に対してコーナーカバーを取り付け、他方の前記壁縁用板材を他の一つの壁面に取り付けるとともに前記コーナーカバーを一方の前記壁縁用板材に取り付ける、コーナーカバー取り付け工程と、を有し、
前記コーナーカバーは、
一対の前記壁縁用板材の表面を覆う平面視L型の表板と、
前記表板の端部から屈曲する側板であって、前記壁縁用板材の前記表面に交差する端面を覆う側板と、
前記表板の裏面から張り出して前記釘打ち溝条に嵌まる裏面突条と、
前記表板の裏面から張り出して、一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌まる係合突起と、
一対の前記表板の一方の裏面に取り付けられている両面接着テープと、を備え、
前記コーナーカバー取り付け工程では、前記係合突起を他方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌め、他方の前記壁縁用板材と前記コーナーカバーをスライドさせて他方の前記壁縁用板材を他の一つの壁面に取り付け、前記両面接着テープの一方の接着面を一方の前記壁縁用板材の備える前記表面に接着させることを特徴とする、コーナーカバーの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーナーカバーとその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建ての住宅や集合住宅等の居室や廊下、階段においては、壁面と床面の取り合い角部に見切り材となる幅木(もしくは巾木)が一般に取り付けられる。幅木により、壁面と床面の間に生じ得る隙間が閉塞されることから、室内の冷暖房の熱が隙間に逃げることが抑制され、室内の埃や塵が壁面の内側に入ることが抑制される。さらに、幅木は、居住者の足や掃除機等が壁面に当たった際に壁面を防護する防護材として機能する他、壁面と床面が個別に動いた場合に力を逃がす緩衝材としても機能する。
【0003】
住宅等の壁面には、室内側に角部が張り出す出隅や、角部が壁面側に窪む入隅が存在し、これら出隅や入隅においては、二つの壁面に取り付けられている幅木に跨るコーナーカバー(もしくはコーナーキャップ)が一般に取り付けられ、コーナーカバーを介して出隅や入隅における幅木の連続性が保たれている。
【0004】
ここで、壁隅を挟んで配置された一対の幅木に容易に取り付けることができ、長期間使用しても脱落することがないコーナーカバーが提案されている。具体的には、幅方向に沿って凹溝が形成された面が表面となり、壁面に対向する面が裏面となるように、壁隅を挟んで壁縁に配置された一対の幅木又は廻り縁である壁縁用板材を覆うコーナーカバーである。このコーナーカバーは、床に端縁部を対向配置することにより一対の幅木の表面を被覆する表面被覆部と、幅木の裏面と壁面の間に配置することにより表面被覆部と共働して幅木を挟持する板状の挟持羽根部と、幅木の端面を仕切るように鉛直方向に延在し、挟持羽根部に接合することにより挟持羽根部を支持する羽根支持部とを備える。表面被覆部には凹溝に係合する係合凸部が形成されており、挟持羽根部と羽根支持部との接合部分は、鉛直方向において係合凸部よりも端縁部側にある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコーナーカバーは、出隅や入隅を形成する二つの壁面に取り付けられている左右の幅木(壁縁用板材の一例)に対して、例えば上方から挿入することにより取り付けられる形態である。仮に、係合凸部と挟持羽根部が対向するように配設されていると、係合凸部が幅木の表面に乗り上げた際に、係合凸部に対向する位置にある挟持羽根部に過度の力が作用してしまい、挟持羽根部が破損することが懸念される。そこで、このコーナーカバーでは、挟持羽根部とこれを支持する羽根支持部の接合部分を、鉛直方向において係合凸部よりも端縁部側に配置するようにし、係合凸部に対向する位置に羽根支持部に接合された挟持羽根部の接合部分が存在しないようにしている。この構成により、コーナーカバーを鉛直方向から壁縁用板材に取り付けるに当たり、表面被覆部に形成された係合凸部が壁縁用板材の凹溝に係合する前に壁縁用板材の表面に乗り上げたとしても、係合凸部に対向する位置に挟持羽根部が存在しないことから、過度の力が作用することによる挟持羽根部の破損がなくなり、スムーズにコーナーカバーを壁隅に配置することができるというものである。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のコーナーカバーでは、一部の構成要素が破損しないように複数の構成要素の相対的な位置関係を規定する必要があることから、構造自由度が規制され、製作手間がかかり易い。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の構成要素の相対的な位置関係を規定する必要がないコーナーカバーとその取り付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明によるコーナーカバーの一態様は、
出隅もしくは入隅を形成する二つの壁面に取り付けられる一対の幅木もしくは廻り縁である壁縁用板材であり、壁面に当接される裏面において該壁面の幅方向に延設する裏面嵌り溝条を備え、表面において該壁面の幅方向に延設する釘打ち溝条を備えている、一対の壁縁用板材を覆う、コーナーカバーであって、
一対の前記壁縁用板材の表面を覆う平面視L型の表板と、
前記表板に交差する側板であって、前記壁縁用板材の前記表面に交差する端面を覆う側板と、
前記表板の裏面から張り出して前記釘打ち溝条に嵌まる裏面突条と、
前記表板の裏面から張り出して、一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌まる係合突起と、を有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、壁縁用板材の裏面にある裏面嵌り溝条に対して、コーナーカバーの係合突起が側方から嵌まって固定される構成を有することにより、コーナーカバーを構成する複数の構成要素間において相対的な位置関係が規定される必要がなく、幅木に対してコーナーカバーを取り付ける際にコーナーカバーの一部が破損する恐れもない。
【0011】
ここで、壁縁用板材の有する裏面嵌り溝条が二つ設けられてもよいし、ある程度の幅を有する裏面嵌り溝条が一つ設けられてもよく、裏面嵌り溝条に対応した位置において対応した数の係合突起がコーナーカバーに設けられる。例えば、裏面嵌り溝条と係合突起がそれぞれ二つ(二組)設けられ、裏面突条の上下に二つの係合突起が設けられている場合は、二組の裏面嵌り溝条及び係合突起が裏面突条の上下に配置されることにより、コーナーカバーが鉛直方向に脱落することを抑止できる。
【0012】
係合突起は、例えば、コーナーカバーの裏面から直接張り出してもよいし、コーナーカバーの裏面から張り出す他の構成要素に取り付けられ、従ってコーナーカバーの裏面から間接的に張り出してもよい。また、壁縁用板材の表面に交差する端面に関し、壁縁用板材が幅木の場合、当該端面は幅木の天端面となり、壁縁用板材が廻り縁の場合、当該端面は廻り縁の下端面となり、コーナーカバーの有する側板がこれら天端面や下端面を覆う。さらに、「壁面の幅方向」とは、壁面の水平方向もしくは横方向を意味している。
【0013】
また、本発明によるコーナーカバーの他の態様は、前記表板の裏面から、一対の前記壁縁用板材を仕切る仕切り板が張り出し、該仕切り板から前記係合突起が張り出していることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、コーナーカバーの裏面から仕切り板が張り出し、仕切り板から係合突起が張り出すことにより、係合突起の長さを可及的に短くして係合突起の根元に作用する力を低減することができ、係合突起の耐久性を高めることができる。また、例えば係合突起が二本ある場合、仕切り板によって二本の係合突起を繋ぐことにより、係合突起の剛性を高めることができる。さらに、仕切り板により、二つの壁縁用板材の端部のコーナーカバーへの納まりが良好になる。
【0015】
また、本発明によるコーナーカバーの他の態様において、一対の前記表板の一方の裏面には、両面接着テープが取り付けられており、離型紙を剥がすことにより該両面接着テープの一方の接着面が露出自在となっており、
前記両面接着テープの広幅面に交差する方向に前記係合突起が延設していることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、一対の表板の一方の裏面に両面接着テープが取り付けられ、両面接着テープの広幅面に交差する方向に係合突起が延設していることにより、係合突起が一方の壁縁用板材の裏面嵌り溝条に嵌った状態で、両面接着テープが他方の壁縁用板材の表面に接着される。このことにより、出隅もしくは入隅を形成する二つの壁面に取り付けられている二つの壁縁用板材に対して、スムーズかつ強固にコーナーカバーを取り付けることができる。
【0017】
また、本発明によるコーナーカバーの他の態様は、前記表板と前記側板の間に、テーパー状もしくは湾曲状の遷移板が介在していることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、壁縁用板材が遷移面を有している場合に、この遷移面に遷移板の裏面が当接するようにしてコーナーカバーを取り付けることができる。ここで、壁縁用板材の有する遷移面は、壁縁用板材が幅木の場合は表面と天端面を繋ぐ面であり、壁縁用板材が廻り縁の場合は表面と下端面を繋ぐ面となり、テーパー状もしくは湾曲状の形態を有する。例えば、壁縁用板材が幅木の場合に幅木がこの遷移面を有することにより、例えば水平面である天端面の壁面までの寸法を可及的に少なくでき、天端面の埃溜りを低減しながら、幅木全体としては所定の厚みを備えて所定の剛性を確保できる。
【0019】
また、本発明によるコーナーカバーの他の態様において、前記壁縁用板材は、その表面における天井もしくは床との取り合い角部において角部溝条をさらに備えており、
前記表板の裏面から壁面側に張り出して前記角部溝条に係合する裏面角部突条をさらに有することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、壁縁用板材が角部溝条を有している場合に、この角部溝条に裏面角部突条の裏面が当接するようにしてコーナーカバーを取り付けることができる。ここで、例えば壁縁用板材が幅木である場合に、表面における床面との取り合い角部に角部溝条が設けられていることにより、床面と幅木との見切りを角部溝条に納めることができる。
【0021】
また、本発明によるコーナーカバーの取り付け方法の一態様は、
出隅を形成する二つの壁面に取り付けられる一対の幅木もしくは廻り縁である壁縁用板材であって、壁面に当接される裏面において壁面の幅方向に延設する裏面嵌り溝条を備え、表面において壁面の幅方向に延設する釘打ち溝条を備えている、一対の壁縁用板材を前記二つの壁面に取り付ける、壁縁用板材取り付け工程と、
前記一対の壁縁用板材を覆うようにしてコーナーカバーを取り付ける、コーナーカバー取り付け工程と、を有し、
前記コーナーカバーは、
一対の前記壁縁用板材の表面を覆う平面視L型の表板と、
前記表板の端部から屈曲する側板であって、前記壁縁用板材の前記表面に交差する端面を覆う側板と、
前記表板の裏面から張り出して前記釘打ち溝条に嵌まる裏面突条と、
前記表板の裏面から張り出して、一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌まる係合突起と、
一対の前記表板の一方の裏面に取り付けられている両面接着テープと、を備え、
前記コーナーカバー取り付け工程では、前記係合突起を一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌め、前記両面接着テープの一方の接着面を他方の前記壁縁用板材の備える前記表面に接着させることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、出隅を形成する二つの壁面に取り付けられている二つの壁縁用板材に対して、スムーズかつ強固にコーナーカバーを取り付けることができる。
【0023】
また、本発明によるコーナーカバーの取り付け方法の他の態様は、
入隅を形成する二つの壁面に取り付けられる一対の幅木もしくは廻り縁である壁縁用板材であって、壁面に当接される裏面において壁面の幅方向に延設する裏面嵌り溝条を備え、表面において壁面の幅方向に延設する釘打ち溝条を備えている、一対の壁縁用板材のうち、一方の前記壁縁用板材を一つの壁面に取り付ける、一方の壁縁用板材取り付け工程と、
他方の前記壁縁用板材に対してコーナーカバーを取り付け、他方の前記壁縁用板材を他の一つの壁面に取り付けるとともに前記コーナーカバーを一方の前記壁縁用板材に取り付ける、コーナーカバー取り付け工程と、を有し、
前記コーナーカバーは、
一対の前記壁縁用板材の表面を覆う平面視L型の表板と、
前記表板の端部から屈曲する側板であって、前記壁縁用板材の前記表面に交差する端面を覆う側板と、
前記表板の裏面から張り出して前記釘打ち溝条に嵌まる裏面突条と、
前記表板の裏面から張り出して、一方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌まる係合突起と、
一対の前記表板の一方の裏面に取り付けられている両面接着テープと、を備え、
前記コーナーカバー取り付け工程では、前記係合突起を他方の前記壁縁用板材の備える前記裏面嵌り溝条に嵌め、他方の前記壁縁用板材と前記コーナーカバーをスライドさせて他方の前記壁縁用板材を他の一つの壁面に取り付け、前記両面接着テープの一方の接着面を一方の前記壁縁用板材の備える前記表面に接着させることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、入隅を形成する二つの壁面に取り付けられている二つの壁縁用板材に対して、スムーズかつ強固にコーナーカバーを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明のコーナーカバーとその取り付け方法によれば、複数の構成要素の相対的な位置関係を規定する必要がないコーナーカバーを提供することができ、出隅や入隅を形成する二つの壁面に取り付けられている二つの壁縁用板材に対して、スムーズかつ強固にコーナーカバーを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】出隅と入隅を形成する二つの壁面に取り付けられている幅木に対して、実施形態に係るコーナーカバーが取り付けられている状態を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】出隅に適用される第1の実施形態に係るコーナーカバーを、コーナーカバーの裏面側から見た斜視図である。
【
図4】出隅に適用される第1の実施形態に係るコーナーカバーを、コーナーカバーの表面側から見た斜視図である。
【
図5】入隅に適用される第2の実施形態に係るコーナーカバーを、コーナーカバーの裏面側から見た斜視図である。
【
図6】入隅に適用される第2の実施形態に係るコーナーカバーを、コーナーカバーの表面側から見た斜視図である。
【
図7】(a)、(b)の順に、第1の実施形態に係るコーナーカバーの取り付け方法を説明する工程図である。
【
図8】(a)、(b)の順に、第2の実施形態に係るコーナーカバーの取り付け方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、各実施形態に係るコーナーカバーとその取り付け方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態]
<出隅と入隅における幅木とコーナーカバーの取り付け状態>
はじめに、
図1及び
図2を参照して、出隅と入隅における幅木とコーナーカバーの取り付け状態について説明する。ここで、
図1は、出隅と入隅を形成する二つの壁面に取り付けられている幅木に対して、実施形態に係るコーナーカバーが取り付けられている状態を斜め上方から見た斜視図である。また、
図2は、幅木の一例の縦断面図である。尚、図示例の壁縁用板材は幅木であり、幅木に取り付けられるコーナーカバーとして説明するが、壁縁用板材が廻り縁であり、廻り縁に取り付けられるコーナーカバーであってもよい。
【0029】
図1に示すように、室内に面する複数の壁材40の壁面により、室内側に角部が張り出す出隅と、壁面側に角部が窪む入隅が形成される。壁材40は例えば石膏ボードにより形成され、壁材40の室内側の壁面にはクロスがクロス糊を介して接着されている。一方、フローリング材である床材50は、複数の床パネルを不図示の根太等の上に敷き並べることにより形成される。そして、床材50の床面と壁材40の下端の間には、若干の隙間(図示せず)が設けられた状態で壁材40が建て込まれる。床材50と壁材40の間に隙間があることにより、床材50と壁材40が個別に動いた場合であっても、隙間に力を逃がすことができる。
【0030】
壁面40と床面50の取り合い角部において、隙間を閉塞するとともに見切り材となる幅木30(壁縁用板材の一例)が取付けられる。幅木30は、壁面40に裏面34が当接されて接着され、かつ床面50の上に載置されることにより隙間を閉塞する。尚、床材50と壁材40の間に隙間が存在しない場合においても、双方の取り合い角部の見切り材として、幅木30が取付けられることに変わりはない。
【0031】
出隅を形成する二つの壁面40に取り付けられている一対の幅木30に対して、出隅用コーナーカバー10(第1の実施形態に係るコーナーカバー)が取り付けられる。より具体的には、幅木30の有する表面33、天端面35、遷移面36、釘打ち溝条38、及び角部溝条37に対してそれぞれ、コーナーカバー10の有する表板11、側板12、遷移板13、裏面突条14、及び裏面角部突条15(
図3参照)が当接するようにして配設され、出隅における幅木30の連続性を保っている。
【0032】
同様に、入隅を形成する二つの壁面40に取り付けられている一対の幅木30に対して、入隅用コーナーカバー20(第2の実施形態に係るコーナーカバー)が取り付けられる。より具体的には、幅木30の有する表面33、天端面35、遷移面36、釘打ち溝条38、及び角部溝条37に対してそれぞれ、コーナーカバー20の有する表板21、天端板22、遷移板23、裏面溝条24、及び裏面角部突条25(
図6参照)が当接するようにして配設され、入隅における幅木30の連続性を保っている。
【0033】
次に、
図2を参照して幅木30の構成について詳説する。
【0034】
幅木30は、芯材31と、芯材31の表面から裏面の一部にかけて接着されている化粧シート32とを有する。
【0035】
芯材31は、合板やパーティクルボード、ケイ酸カルシウム板、中質繊維板(MDF:ミディアム・デンシティ・ファイバーボード(Medium density fiberboard))等により形成される。また、化粧シート32は、化粧紙、化粧合成樹脂シート、樹脂含浸化粧紙等により形成される。
【0036】
幅木30は、室内側に面して鉛直方向に延設する表面33と、同様に室内側に面して表面33と交差する水平方向に延設する天端面35と、表面33と天端面35の間にあって水平方向から傾斜して延設するテーパー状の遷移面36とを有する。
【0037】
幅木30はさらに、表面33における床面50との取り合い角部において、幅木30の幅方向(壁面40の幅方向と同方向)に延設する角部溝条37を有する。
【0038】
幅木30の裏面34は壁面40に当接する面であり、裏面34には、上下に二本の裏面嵌り溝条39が設けられている。この裏面嵌り溝条39には、出隅用コーナーカバー10の有する係合突起17や入隅用コーナーカバー20の有する係合突起27が嵌り込むようになっている。
【0039】
幅木30において、表面33の上下端の途中には、幅木30の幅方向に延設する釘打ち溝条38が設けられている。図示例の釘打ち溝条38は、縦断面形状が半円形もしくは半円形に近い円弧状を呈しており、このような形状により釘打ち溝条38における埃溜りが防止されるようになっている。
【0040】
表面33と天端面35の間にテーパー状の遷移面36を有することにより、水平方向に延設する天端面35の壁面40までの寸法t1を可及的に少なくでき、天端面35の埃溜りを低減しながら、幅木30全体としては所定の厚みt2を備えて所定の剛性を確保できる。
【0041】
また、表面33と天端面35が直接交差して隅角を形成せず、遷移面36によって所謂面取りがなされていることにより、隅角が破損したり隅角で足を傷付けるといったことが解消される。
【0042】
さらに、表面33における床面50との取り合い角部に角部溝条37が設けられていることにより、床面50と幅木30との見切りを角部溝条37に納めることができる。このように、本来的には床面50との間で見切りを形成する幅木30において、見切りを室内側から視認できないようにすることにより、床面50が不陸を有する場合に見切りが逆に意匠性を阻害してしまうといった課題を解消することができる。実際には、床面50は複数の床パネルを並べて形成され、施工誤差や床パネルの製品誤差等に起因して隣接する床パネルの表面は厳密には面一にならないことが往々にしてある。そのため、室内側から床面50と幅木30の間の見切りを敢えて見せないことによる効果は大きい。
【0043】
<第1の実施形態に係るコーナーカバー>
次に、
図3及び
図4を参照して、第1の実施形態に係るコーナーカバー(出隅用コーナーカバー)について説明する。ここで、
図3及び
図4はそれぞれ、出隅に適用される第1の実施形態に係るコーナーカバーを、コーナーカバーの裏面側及び表面側から見た斜視図である。
【0044】
コーナーカバー10は、一対の幅木30の表面33を覆う平面視L型の表板11と、表板11に交差する側板12であって幅木30の天端面35(端面の一例)を覆う側板12と、表板11の裏面から張り出して釘打ち溝条38に嵌まる裏面突条14と、表板11の裏面から張り出して、一方の幅木30の備える二つの裏面嵌り溝条39に嵌まる二本の係合突起17とを有する。
【0045】
表板11の裏面からは、一対の幅木30を仕切る仕切り板16が張り出しており、仕切り板16から上下に間隔を置いて配設された二本の係合突起17が張り出している。尚、裏面嵌り溝条がある程度の幅を有する一つの溝条からなり、仕切り板16からこの一つの溝条に嵌まる一本の係合突起が張り出す形態であってもよい。
【0046】
また、二本の係合突起17は、裏面突条14の上下に配置されている。このように、二つの裏面嵌り溝条39に対して二本の係合突起17が嵌り、これが裏面突条14の上下に配置されていることにより、コーナーカバー10が鉛直方向に脱落することを抑止できる。
【0047】
また、仕切り板16によって二本の係合突起17を繋ぐことにより、係合突起17の剛性を高めることができる。
【0048】
さらに、図示するように、ある程度の厚みを有する棒状を呈した係合突起17を適用することにより、このこともコーナーカバー10の脱落抑止と係合突起17の剛性向上に寄与する。
【0049】
表板11と側板12の間には、テーパー状の遷移板13が介在している。尚、幅木30が湾曲状の遷移面を有する場合は、この遷移面に対応する湾曲状の遷移板が適用される。
【0050】
また、表板11の裏面には、壁面側に張り出して角部溝条37に係合する裏面角部突条15が設けられている。尚、幅木30が角部溝条37を備えていない場合は、裏面角部突条15は不要となる。
【0051】
コーナーカバー10は、例えばASA樹脂(アクリロニトリル スチレン アクリル酸エステル(Acrylate Styrene Acrylonitrile))等の樹脂材により形成される。
【0052】
一対の表板11のうち、係合突起17が張り出していない側の表板11の裏面には、両面接着テープ18が取り付けられ、離型紙18aを剥がすことにより両面接着テープ18の一方の接着面が露出自在となっている。
図3は、離型紙18aの一部が剥がされている状態を示している。
【0053】
図示するコーナーカバー10が一対の廻り縁に適用される場合は、
図3及び
図4に示すコーナーカバー10を上下反転させ、天端面35を下端面とした状態で廻り縁に取り付けられる。
【0054】
幅木30の裏面にある裏面嵌り溝条39に対して、コーナーカバー10の係合突起17が側方から嵌まって固定される構成を有することにより、コーナーカバー10を構成する複数の構成要素間において相対的な位置関係が規定される必要がなく、幅木30に対してコーナーカバー10を取り付ける際にコーナーカバー10の一部が破損する恐れもない。
【0055】
また、コーナーカバー10の裏面から仕切り板16が張り出し、仕切り板16から係合突起17が張り出すことにより、係合突起17の長さを可及的に短くして係合突起17の根元に作用する力を低減することができ、係合突起17の耐久性を高めることができる。さらに、仕切り板16により、二つの幅木30の端部のコーナーカバー10への納まりが良好になる。
【0056】
尚、表板11の幅(壁面40の幅方向の幅で、表板11の見付け部分の幅)を可及的に小さくすることにより、コーナーカバー10の外観意匠性を高めることができる。さらに、係合突起17の長さを表板11の幅よりも長くし、係合突起17を表板11の端部から側方に突出させて裏面嵌り溝条39に嵌めることにより、コーナーカバー10を幅木30からより一層外れ難くすることができる。
【0057】
<第2の実施形態に係るコーナーカバー>
次に、
図5及び
図6を参照して、第2の実施形態に係るコーナーカバー(入隅用コーナーカバー)について説明する。ここで、
図5及び
図6はそれぞれ、入隅に適用される第2の実施形態に係るコーナーカバーを、コーナーカバーの裏面側及び表面側から見た斜視図である。
【0058】
コーナーカバー20は、一対の幅木30の表面33を覆う平面視L型の表板21と、表板21に交差する側板22であって幅木30の天端面35(端面の一例)を覆う側板22と、表板21の裏面から張り出して釘打ち溝条38に嵌まる裏面突条24と、表板21の裏面から張り出して、一方の幅木30の備える二つの裏面嵌り溝条39に嵌まる二本の係合突起27とを有する。
【0059】
表板21の裏面からは、一対の幅木30を仕切る仕切り板26が張り出しており、仕切り板26から上下に間隔を置いて配設された二本の係合突起27が張り出している。
【0060】
表板21と側板22の間には、テーパー状の遷移板23が介在している。
【0061】
また、表板21の裏面には、壁面側に張り出して角部溝条37に係合する裏面角部突条25が設けられている。
【0062】
コーナーカバー20も、例えばASA樹脂等の樹脂材により形成される。
【0063】
一対の表板21のうち、係合突起27が張り出していない側の表板21の裏面には、両面接着テープ28が取り付けられ、離型紙28aを剥がすことにより両面接着テープ28の一方の接着面が露出自在となっている。
図5も、離型紙28aの一部が剥がされている状態を示している。
【0064】
幅木30の裏面にある裏面嵌り溝条39に対して、コーナーカバー20の係合突起27が側方から嵌まって固定される構成を有することにより、コーナーカバー20を構成する複数の構成要素間において相対的な位置関係が規定される必要がなく、幅木30に対してコーナーカバー20を取り付ける際にコーナーカバー20の一部が破損する恐れもない。
【0065】
<第1の実施形態に係るコーナーカバーの取り付け方法>
次に、
図7を参照して、出隅用コーナーカバーの取り付け方法の一例を説明する。ここで、
図7は、
図7(a)、(b)の順に、第1の実施形態に係るコーナーカバーの取り付け方法を説明する工程図である。
【0066】
まず、
図7(a)に示すように、出隅を形成する二つの壁面40に対して、一対の幅木30を取り付ける。
【0067】
壁面40に幅木30を取り付けるに当たり、幅木30の裏面34には接着剤(図示せず)を塗布し、幅木30の下端を床面50に載置させながら壁面40に幅木30を貼り付ける。この幅木30の貼り付けはあくまでも仮固定に相当する。
【0068】
接着剤を介して幅木30を壁面40に貼り付けた後、壁材の壁面40にクロス(図示せず)を貼り付け、クロスの下端を切断することにより、幅木30の天端面35との取り合い角部にクロスの端部が揃うようにしてクロスが施工される。
【0069】
次に、釘打ち溝条38に釘打ち機(図示せず)の先端を当接させ、釘(図示せず)を幅木30を貫通させて壁材40の内部まで打ち付けることにより、壁面40に対する幅木30の取り付けが完了する。尚、壁面40の幅方向に延設する釘打ち溝条38において、所定のピッチで複数の釘を打ち付けることにより、長尺な幅木30が壁面40に固定される(以上、壁縁用板材取り付け工程)。
【0070】
次に、両面接着テープ18から離型紙18aを剥がすことにより両面接着テープ18の一方の接着面を露出させ、
図7(a)に示すように、コーナーカバー10を一方の幅木30側にスライドさせて、二本の係合突起17を一方の幅木30の備える二つの裏面嵌り溝条39に対してそれぞれX1方向に嵌めていく。
【0071】
そして、
図7(b)に示すように、二本の係合突起17をそれぞれ対応する二つの裏面嵌り溝条39に嵌めることにより、同時に両面接着テープ18の一方の接着面は他方の幅木30の表面33に接着され、一対の幅木30に対してコーナーカバー10の取り付けが完了する(以上、コーナーカバー取り付け工程)。
【0072】
図示するコーナーカバーの取り付け方法によれば、出隅を形成する二つの壁面40に取り付けられている二つの幅木30に対して、スムーズかつ強固にコーナーカバー10を取り付けることができる。
【0073】
<第2の実施形態に係るコーナーカバーの取り付け方法>
次に、
図8を参照して、出隅用コーナーカバーの取り付け方法の一例を説明する。ここで、
図8は、
図8(a)、(b)の順に、第2の実施形態に係るコーナーカバーの取り付け方法を説明する工程図である。
【0074】
まず、
図8(a)に示すように、入隅を形成する二つの壁面40のうち、一方の壁面40(図では右側の壁面40)に対して幅木30を取り付ける。尚、この幅木30の取り付け方法は
図7(a)において説明した方法と同様である(一方の壁縁用板材取り付け工程)。
【0075】
次に、両面接着テープ28から離型紙28aを剥がすことにより両面接着テープ28の一方の接着面を露出させ、
図8(a)に示すように、コーナーカバー20を壁面40に取り付けられていない他方の幅木30側にスライドさせて、二本の係合突起27を他方の幅木30の備える二つの裏面嵌り溝条39に対してそれぞれX2方向に嵌めていく。
【0076】
そして、コーナーカバー20が係合された他方の幅木30をスライドさせて他方の幅木30を他の一つの壁面40に取り付けることにより、同時に、両面接着テープ28の一方の接着面は既に壁面40に取り付けられている一方の幅木30の備える表面33に接着され、一対の幅木30に対してコーナーカバー20の取り付けが完了する(以上、コーナーカバー取り付け工程)。
【0077】
ここで、他方の幅木30を他の一つの壁面40に取り付ける際には、他方の幅木30の裏面34に接着剤を塗布しておき、他の一つの壁面40に仮固定された後、釘打ち溝条38に所定のピッチで複数の釘を打ち付けることにより、その固定を図る。
【0078】
図示するコーナーカバーの取り付け方法によれば、入隅を形成する二つの壁面40に対して、幅木30とコーナーカバー20をスムーズかつ強固に取り付けることができる。
【0079】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0080】
10:コーナーカバー(出隅用コーナーカバー)
11:表板
12:側板
13:遷移板
14:裏面突条
15:裏面角部突条
16:仕切り板
17:係合突起
18:両面接着テープ
18a:離型紙
20:コーナーカバー(入隅用コーナーカバー)
21:表板
22:側板
23:遷移板
24:裏面突条
25:裏面角部突条
26:仕切り板
27:係合突起
28:両面接着テープ
28a:離型紙
30:幅木(壁縁用板材)
31:芯材
32:化粧シート
33:表面
34:裏面
35:天端面(端面)
36:遷移面
37:角部溝条
38:釘打ち溝条
39:裏面嵌り溝条
40:壁材(壁面)
50:床材(床面)