(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】信号読取システムおよび信号読取方法
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
H04L25/02 303Z
H04L25/02 V
(21)【出願番号】P 2019126587
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 浩一
(72)【発明者】
【氏名】池田 大桂
(72)【発明者】
【氏名】笠井 真
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智春
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-232492(JP,A)
【文献】特開2013-162159(JP,A)
【文献】特表2018-519703(JP,A)
【文献】特開2019-146141(JP,A)
【文献】特開2020-25256(JP,A)
【文献】特開2020-31423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2線差動電圧方式のロジック信号が伝送される通信路を構成する一対の被覆導線にそれぞれ近接した状態で配設される一対の電極に接続されて、当該一対の電極と容量結合する前記一対の被覆導線にそれぞれ伝送されている電圧に応じて電圧が変化する一対の電圧信号を生成すると共に、当該一対の電圧信号の差分電圧に基づいて前記ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成回路と、
前記符号特定用信号を前記ロジック信号の通信方式に準拠した通信方式の信号に変換して出力コネクタから外部へ出力する信号変換回路と、
前記信号生成回路および前記信号変換回路を収容するケースとを備え、
前記信号生成回路および前記信号変換回路は、それぞれの基準電位が同電位に規定されると共に、当該基準電位を基準とする作動用電圧に基づいてそれぞれ動作する信号読取システムであって、
前記ケースには、前記基準電位を接地電位に規定するための接地用端子が配設されている信号読取システム。
【請求項2】
2線差動電圧方式のロジック信号が伝送される通信路を構成する一対の被覆導線のうちの対応する1つの被覆導線に近接した状態で配設される1つの電極に接続されて、当該1つの電極と容量結合する前記1つの被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する電圧信号を生成すると共に、当該電圧信号に基づいて前記ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成回路と、
前記符号特定用信号を前記ロジック信号の通信方式に準拠した通信方式の信号に変換して出力コネクタから外部へ出力する信号変換回路と、
前記信号生成回路および前記信号変換回路を収容するケースとを備え、
前記信号生成回路および前記信号変換回路は、それぞれの基準電位が同電位に規定されると共に、当該基準電位を基準とする作動用電圧に基づいてそれぞれ動作する信号読取システムであって、
前記ケースには、前記基準電位を接地電位に規定するための接地用端子が配設されている信号読取システム。
【請求項3】
前記ケースは、前記信号生成回路を収容する第1ケースおよび前記信号変換回路を収容する第2ケースで構成され、
前記第1ケースおよび前記第2ケースは、接続ケーブルで接続され、
前記信号生成回路の前記基準電位および前記信号変換回路の前記基準電位は、前記接続ケーブルを構成する基準電位線を介して接続されて同電位に規定され、
前記信号生成回路は、前記接続ケーブルを構成する電源線を介して前記第2ケース側から供給される前記作動用電圧に基づいて動作し、
前記接地用端子は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうちの少なくとも一方のケースに配設されている請求項1または2記載の信号読取システム。
【請求項4】
前記ケースに配設された前記接地用端子は、コンデンサを介して前記基準電位に接続されている請求項1または2記載の信号読取システム。
【請求項5】
前記接地用端子が前記第1ケースに配設されているときには、当該接地用端子は、コンデンサを介して前記信号生成回路の前記基準電位に接続されている請求項3記載の信号読取システム。
【請求項6】
前記ケースには、前記信号生成回路および前記信号変換回路のうちの少なくとも当該信号生成回路をシールドするシールド壁が配設され、
前記接地用端子は、前記シールド壁に配設されている請求項1、2および4のいずれかに記載の信号読取システム。
【請求項7】
前記少なくとも一方のケースには、前記信号生成回路および前記信号変換回路のうちの当該ケースに収容されている回路をシールドするシールド壁が配設され、
前記接地用端子は、前記シールド壁に配設されている請求項3または5記載の信号読取システム。
【請求項8】
前記電極は、カップリングコンデンサを介して前記信号生成回路と接続されている請求項1から7のいずれかに記載の信号読取システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の信号読取システムを用いて、車両に配設された前記通信路としてのCANバスに伝送されている前記ロジック信号についての前記符号特定用信号を生成させると共に、当該符号特定用信号を前記通信方式の前記信号に変換して前記出力コネクタから出力させることで、当該ロジック信号を読み取る読取ステップを実行する信号読取方法であって、
前記接地用端子を前記車両のボディに接続する接続ステップを実行した状態において、前記読取ステップを実行する信号読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本の通信路または一対の通信路を介して伝送されるロジック信号(一対の通信路の場合には、2線差動電圧方式のロジック信号)に基づいてロジック信号に対応する符号を特定すると共に、予め規定された通信方式の信号に変換して出力する信号読取システム、およびこの信号読取システムを用いた信号読取方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、CAN通信用のシリアルバス(車内LANなどの車両内ネットワーク(通信路))を介して伝送されている各種CANフレーム(制御データ)を収集して記録可能に構成された車両データ収集装置(以下、単に「収集装置」ともいう)の発明が開示されている。この収集装置は、故障診断やメンテナンスなどを目的として外部機器を接続可能にシリアルバスに設けられているダイアグコネクタ(診断機器接続用コネクタ:以下、単に「コネクタ」ともいう)に接続可能に構成されている。このコネクタには、シリアルバスを構成する一対の被覆導線のうちのCANHigh(CANH)の被覆導線に接続されたピンと、この一対の被覆導線のうちのCANLow(CANL)の被覆導線に接続されたピンと、ボディやシャーシなどの車両における金属製の構成部材(バッテリのマイナス端子が接続される金属製構成部材(以下では、ボディアースともいう))に接続されたピンと、バッテリのプラス端子に接続されたピンとが配置されている。これにより、この収集装置では、上記のコネクタに接続することでコネクタを介してバッテリから供給される電源によって動作し、シリアルバス(一対の被覆導線)からのCANフレームの収集の開始/停止をイグニッションスイッチの操作に連動して自動的に実行する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-70133号公報(第4-11頁、第1-17図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、収集装置が上記のようにコネクタを介してシリアルバスに直接接続される構成では、車両の製造者(製造メーカ)が想定している収集装置を接続することでは問題は生じないが、想定していない収集装置を接続したときには、その車両において想定外のトラブル(シリアルバスにおけるロジック信号の伝送や、シリアルバスに接続されている機器の動作を阻害するなどのトラブル)が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本願出願人は、上記の診断機器接続用コネクタを使用せずに、シリアルバス(通信路)に容量結合するプローブを介してシリアルバスに接続されて、上記のトラブルを生じさせることなく、シリアルバスを介して伝送されるCANフレーム(符号列)を構成する符号を特定可能な符号特定用信号を生成して出力する信号生成装置を種々開発した。この信号生成装置を介して収集装置をシリアルバスに接続することで、車両の製造者が想定している収集装置であっても、また想定していない収集装置であっても、シリアルバスからのCANフレームの収集が可能となる。
【0006】
ところで、この信号生成装置は、シリアルバスに容量結合によって接続される構成であって、上記の診断機器接続用コネクタを介してシリアルバスに直接接続される構成ではないことから、車両のバッテリから電源の供給を直接受けることはできない。このため、この信号生成装置は、車両のバッテリ以外の電源装置から電源の供給を受けて動作する構成を採用している。
【0007】
また、この信号生成装置では、上記のように診断機器接続用コネクタを使用しない構成のため、信号生成装置側の基準電位は、車両側の基準電位(ボディアース)に対して直流的にも交流的にも独立している(フローティングされている)。これにより、この2つの基準電位間には、電位差が生じた状態となっている。
【0008】
一方、このように電位差が生じている状態において、信号生成装置を移動させたり、信号生成装置に振動が加わったりしたときには、この電位差が変化し、この電位差の変化に起因したノイズが信号生成装置内において発生することから、信号生成装置が符号特定用信号を正確に生成できないことがあるという改善すべき課題が存在している。
【0009】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、通信路に容量結合される構成において、通信路を介して伝送されるロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を正確に生成し得る信号読取システム、およびこの信号読取システムを用いた信号読取方法を提供することを主目的とする
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく請求項1記載の信号読取システムは、2線差動電圧方式のロジック信号が伝送される通信路を構成する一対の被覆導線にそれぞれ近接した状態で配設される一対の電極に接続されて、当該一対の電極と容量結合する前記一対の被覆導線にそれぞれ伝送されている電圧に応じて電圧が変化する一対の電圧信号を生成すると共に、当該一対の電圧信号の差分電圧に基づいて前記ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成回路と、前記符号特定用信号を前記ロジック信号の通信方式に準拠した通信方式の信号に変換して出力コネクタから外部へ出力する信号変換回路と、前記信号生成回路および前記信号変換回路を収容するケースとを備え、前記信号生成回路および前記信号変換回路は、それぞれの基準電位が同電位に規定されると共に、当該基準電位を基準とする作動用電圧に基づいてそれぞれ動作する信号読取システムであって、前記ケースには、前記基準電位を接地電位に規定するための接地用端子が配設されている。
【0011】
また、請求項2記載の信号読取システムは、2線差動電圧方式のロジック信号が伝送される通信路を構成する一対の被覆導線のうちの対応する1つの被覆導線に近接した状態で配設される1つの電極に接続されて、当該1つの電極と容量結合する前記1つの被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する電圧信号を生成すると共に、当該電圧信号に基づいて前記ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成回路と、前記符号特定用信号を前記ロジック信号の通信方式に準拠した通信方式の信号に変換して出力コネクタから外部へ出力する信号変換回路と、前記信号生成回路および前記信号変換回路を収容するケースとを備え、前記信号生成回路および前記信号変換回路は、それぞれの基準電位が同電位に規定されると共に、当該基準電位を基準とする作動用電圧に基づいてそれぞれ動作する信号読取システムであって、前記ケースには、前記基準電位を接地電位に規定するための接地用端子が配設されている。
【0012】
また、請求項3記載の信号読取システムは、請求項1または2記載の信号読取システムにおいて、前記ケースは、前記信号生成回路を収容する第1ケースおよび前記信号変換回路を収容する第2ケースで構成され、前記第1ケースおよび前記第2ケースは、接続ケーブルで接続され、前記信号生成回路の前記基準電位および前記信号変換回路の前記基準電位は、前記接続ケーブルを構成する基準電位線を介して接続されて同電位に規定され、前記信号生成回路は、前記接続ケーブルを構成する電源線を介して前記第2ケース側から供給される前記作動用電圧に基づいて動作し、前記接地用端子は、前記第1ケースおよび前記第2ケースのうちの少なくとも一方のケースに配設されている。
【0013】
また、請求項4記載の信号読取システムは、請求項1または2記載の信号読取システムにおいて、前記ケースに配設された前記接地用端子は、コンデンサを介して前記基準電位に接続されている。
【0014】
また、請求項5記載の信号読取システムは、請求項3記載の信号読取システムにおいて、前記接地用端子が前記第1ケースに配設されているときには、当該接地用端子は、コンデンサを介して前記信号生成回路の前記基準電位に接続されている。
【0015】
また、請求項6記載の信号読取システムは、請求項1、2および4のいずれかに記載の信号読取システムにおいて、前記ケースには、前記信号生成回路および前記信号変換回路のうちの少なくとも当該信号生成回路をシールドするシールド壁が配設され、前記接地用端子は、前記シールド壁に配設されている。
【0016】
また、請求項7記載の信号読取システムは、請求項3または5記載の信号読取システムにおいて、前記少なくとも一方のケースには、前記信号生成回路および前記信号変換回路のうちの当該ケースに収容されている回路をシールドするシールド壁が配設され、前記接地用端子は、前記シールド壁に配設されている。
【0017】
また、請求項8記載の信号読取システムは、請求項1から7のいずれかに記載の信号読取システムにおいて、前記電極は、カップリングコンデンサを介して前記信号生成回路と接続されている。
【0018】
また、請求項9記載の信号読取方法は、請求項1から8のいずれかに記載の信号読取システムを用いて、車両に配設された前記通信路としてのCANバスに伝送されている前記ロジック信号についての前記符号特定用信号を生成させると共に、当該符号特定用信号を前記通信方式の前記信号に変換して前記出力コネクタから出力させることで、当該ロジック信号を読み取る読取ステップを実行する信号読取方法であって、前記接地用端子を前記車両のボディに接続する接続ステップを実行した状態において、前記読取ステップを実行する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1,2記載の信号読取システム、および請求項9記載の信号読取方法によれば、ケースに配設された接地用端子を接地電位に規定(接続)することにより、信号読取システム(信号生成回路および信号変換回路)側の基準電位を、通信路が配設されている側の基準電位と同電位にすることができる。これにより、この信号読取システムおよびこの信号読取方法によれば、信号読取システム側の基準電位と通信路側の基準電位との間に電位差が生じた状態において生じる課題(この電位差の変化に起因したノイズの影響を受けて符号特定用信号を正確に生成し得ないという課題)の発生を回避しつつ、既存の電子機器を、信号読取システムを介して通信路に容量結合によって接続して(つまり、ダイアグコネクタを介さずに通信路に接続して)、この既存の電子機器で通信路に伝送されているロジック信号に対応する符号の正確な列を収集したり観測したりすることができる。
【0020】
請求項3記載の信号読取システムおよび請求項9記載の信号読取方法によれば、信号変換装置と別体に構成されることで、一体化された構成(1つのケースに収容される構成)と比較して、信号生成装置を小型化することができる。したがって、例えば、通信路が設置されている機器(例えば、車両などの通信路側機器)内に信号生成装置を搬入する使用方法において、通信路側装置内の狭いスペースにも信号生成装置を設置できることから使い勝手を向上させることができる。
【0021】
請求項4,5記載の信号読取システムおよび請求項9記載の信号読取方法によれば、接地用端子を、車両などの通信路側機器側の基準電位とは異なる電位の部位(例えば、車両では、バッテリのプラス端子に接続されている部位)に誤って接触させたとしても、接地用端子がコンデンサによって信号読取システム側の基準電位から直流的に分離されているため、通信路側機器側の基準電位とは異なる電位の部位から信号読取システムに過大な直流電流が流れる事態の発生を防止することができる。
【0022】
請求項6,7記載の信号読取システムおよび請求項9記載の信号読取方法によれば、シールド壁を配設すると共に、シールド壁に接地用端子を配設し、接地用端子を車両などの通信路側機器側の基準電位(車両の場合には基準電位となるボディアース)に接続するようにしたことにより、信号読取システム内への外部ノイズの侵入、および信号読取システム内のノイズの外部への漏洩を十分に低減することができる。
【0023】
請求項8記載の信号読取システムおよび請求項9記載の信号読取方法によれば、車両などの通信路側機器側の基準電位とは異なる電位の部位(例えば、車両では、バッテリのプラス端子に接続されている部位)に各電極を誤って接触させる可能性のある場合において、仮に接触させたとしても、通信路側機器側から信号読取システムに好ましくない直流電流が流れる事態の発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】信号読取システム1Aの構成を示す構成図である。
【
図2】信号生成装置2Aの構成を示す構成図である。
【
図4】符号Cs、電圧Va,Vb、電圧信号Vc1,Vc2、第1電圧信号Vd1、第2電圧信号Vd2、差分電圧Vd0および符号特定用信号Sfの波形図である。
【
図5】信号生成装置2Bの構成を示す構成図である。
【
図6】信号生成装置2Aを備えた信号読取システム1Aの構成を簡易に表す構成図である。
【
図7】信号生成装置2Aを備えた信号読取システム1Aの他の構成を簡易に表す構成図である。
【
図8】信号生成装置2Aを備えた信号読取システム1Aの他の構成を簡易に表す構成図である。
【
図9】信号読取システム1Bの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、信号読取システム、およびこの信号読取システムを用いた信号読取方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1に示すように、信号読取システムとしての信号読取システム1Aは、信号生成装置2Aおよび信号変換装置3を備えて構成されている。また、信号読取システム1Aは、後述する通信路SBを構成する一対の被覆導線La,Lbに信号生成装置2Aを接続するための一対の金属非接触型のプローブPLa,PLbを備えている。
【0027】
まず、信号読取システム1Aの概要について説明する。この信号読取システム1Aでは、
図1に示すように、信号生成装置2Aが第1ケースCA1に収容された形態で構成され、かつ信号変換装置3が第1ケースCA1とは異なる第2ケースCA2に収容された形態(信号変換装置3が信号生成装置2Aとは別体となる形態)で構成されて、信号生成装置2Aと信号変換装置3とが接続ケーブルCBで接続される構成を採用している。この接続ケーブルCBは、
図2,3に示すように、一対の信号伝送線Ls1,Ls2、電源線Lpおよび基準電位線(グランド線)Lg1を有している。
【0028】
また、信号読取システム1Aでは、信号生成装置2Aが、プローブPLa,PLbを介して通信路SBを構成する一対の被覆導線La,Lbに接続されて、通信路SBを介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号(被覆導線La,Lbに伝送されている各電圧Va,Vbの差分で規定されるロジック信号Sa)に基づき、このロジック信号Saに対応する符号を特定可能な符号特定用信号Sfを生成する。また、信号生成装置2Aは、生成した符号特定用信号Sfを後述する差動信号Strに変換すると共に、接続ケーブルCBの信号伝送線Ls1,Ls2を介して信号変換装置3へ出力する。
【0029】
また、信号生成装置2Aは、2線差動電圧方式のロジック信号Saとして、「CAN(登録商標)プロトコル」、「CAN FD」、「FlexRay(登録商標)」などの各種通信プロトコルに準拠した各種の「2線差動電圧方式のロジック信号」や、「LVDS」による小振幅低消費電力通信が可能な各種通信プロトコルに準拠した各種の「2線差動電圧方式のロジック信号」を対象とすることができる。この場合、「CANプロトコル」および「CAN FD」の「CAN通信用のシリアルバス」では、「高電位側信号線(CANH)/低電位側信号線(CANL)」が「ロジック信号を伝送するための一対の被覆導線」に相当し、「FlexRay通信用のシリアルバス」では、「正側信号線(BP)/負側信号線(BM)」が「ロジック信号を伝送するための一対の被覆導線」に相当し、「LVDSによる通信を行うシリアルバス」では、「正論理側信号線/負論理側信号線」が「ロジック信号を伝送するための一対の被覆導線」に相当する。
【0030】
信号変換装置3は、信号生成装置2Aから出力された差動信号Strを、接続ケーブルCBoを介して接続される電子機器の入力仕様に合致した通信方式の信号に変換して電子機器へ出力する。
【0031】
したがって、車両(自動車)に配設されているCAN通信用のシリアルバスを例に挙げて説明すると、この信号読取システム1Aを使用することにより、本来であればダイアグコネクタを介して一対の被覆導線La,Lbの各芯線(導線自体)に直接接続されて使用される既存の電子機器(背景技術で説明した収集装置を含む種々の電子機器)を、ダイアグコネクタを使用することなく、被覆導線La,Lbの各芯線に容量結合で接続して、この電子機器でロジック信号Saに対応する符号を特定可能な符号特定用信号Sfを読み取ることが可能となる。
【0032】
以下では、通信路の一例として、この「CAN通信用のシリアルバス」(以下、単にCANバスともいう)を対象として、このCANバスで構成される通信路SBに接続されて、この通信路SBから各種CANフレーム(2線差動電圧方式のロジック信号によって示されている符号Csの列(以下、符号列ともいう)。
図4参照)を取得(収集)する既存の電子機器(データ収集装置など)に接続されて使用される信号読取システム1Aを例に挙げて説明する。したがって、この信号読取システム1Aでは、信号変換装置3は、信号生成装置2Aから受信した上記の受信信号(符号特定用信号Sf)をCAN通信方式に準拠した2線差動電圧方式の信号(符号特定用信号Sfに基づく信号Vcva,Vcvb。いずれも、被覆導線La,Lbに伝送されている各Va,Vbと同じ仕様の信号)に変換して、接続ケーブルCBoを介して接続されている電子機器(CAN通信対応機器)に出力するように構成されている。このため、接続ケーブルCBoは、
図3に示すように、少なくとも一対の信号伝送線Ls3,Ls4および基準電位線(グランド線)Lg2を有して構成されている。また、信号変換装置3は、変換した信号Vcva,Vcvbを、電子機器側の基準電位に規定されたグランド線Lg2の電位を基準とする信号として、一対の信号伝送線Ls3,Ls4を経由して電子機器に出力する。
【0033】
CANバスで構成される通信路SBには、
図1,2に示すように、CANフレームを構成する各符号Cs(
図4参照)を表すロジック信号Saが、通信路SBにおける2本の被覆導線のうちのCANHigh(CANH)の被覆導線Laに伝送される電圧信号の電圧Va(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vaともいう)と、2本の被覆導線のうちのCANLow(CANL)の被覆導線Lbに伝送される電圧信号の電圧Vb(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vbともいう)との間の電位差(Va-Vb)である差動信号として伝送される。
【0034】
なお、通信路SBを介してのロジック信号Saの伝送原理については公知のため、詳細な説明を省略するが、CANHigh(CANH)の電圧信号VaおよびCANLow(CANL)の電圧信号Vbの仕様について簡単に説明する。
図4に示すように、電圧信号Va,Vbは、ベースになる電圧(+2.5V)から逆方向に変化する電圧信号であって、電圧信号Vaがこのベースの電圧のときには、電圧信号Vbも同じ期間に亘り同じベースの電圧になって、電位差(Va-Vb)がゼロ(最小)となるこの期間に伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)は「1」を示すものとなる。一方、電圧信号Vaがこのベースの電圧よりも高電圧の規定電圧(+3.5V)のときには、電圧信号Vbは同じ期間に亘り、逆にベースの電圧よりも低電圧の他の規定電圧(+1.5V)になって、電位差(Va-Vb)が最大となるこの期間に伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)は「0」を示すものとなる。また、通信路SBにおいて差動信号を伝送するための基準電位となる信号線(グランド線)である「SG」や、差動信号の伝送の用途以外に配設されている信号線および電力線等の図示および説明を省略する。
【0035】
次いで、信号生成装置2Aおよび信号変換装置3の具体的な構成について説明する。
【0036】
信号生成装置2Aは、一例として
図2に示すように、入力端子部11a,11b、第1検出部12、第2検出部13、信号生成部14、送信部15、第1コネクタ部16および接地用端子17(区別のため、第1接地用端子17ともいう)を備えて構成されている。また、信号生成装置2Aでは、第1コネクタ部16に接続された接続ケーブルCBの電源線Lpおよびグランド線Lg1を介して信号変換装置3から供給される作動用電圧Vp1(グランド線Lg1の電位(グランド線Lg1が接続された信号生成装置2Aの部位(グランドG)の電位(基準電位))を基準とする1種類または2種以上(例えば、DC±5VおよびDC±12Vなどの種々の直流電圧のうちの少なくとも1種)の電圧)に基づいて上記の各構成要素(第1検出部12、第2検出部13、信号生成部14、送信部15)で構成された信号生成回路が動作する。
【0037】
また、信号生成装置2Aは、入力端子部11aに接続された対応する第1プローブPLa、および入力端子部11bに接続された対応する第2プローブPLbを介して一対の被覆導線La,Lbで構成される対応する通信路SBに接続されて(
図1に示すように、対応するプローブPLa,PLbを介して被覆導線La,Lbで構成される対応する通信路SBに接続されて)、この通信路SBを介して伝送されるロジック信号Saに基づき、
図4に示すように、電圧信号Va,Vbに対応する符号Cs(電位差(Va-Vb)である差動信号に対応する符号Cs(「1」または「0」))を特定可能な符号特定用信号Sfを生成する。
【0038】
第1プローブPLaおよび第2プローブPLbは、シールドケーブル(一例として、同軸ケーブル)を用いて同一に構成されている。また、第1プローブPLaは、基部側が対応する信号生成装置2Aの入力端子部11aに接続される(固定的、または取り外し自在に接続される)と共に、被覆導線Laに取り外し自在に接続される先端部に電極部21aが設けられている。本例では、第1プローブPLaは金属非接触型のプローブとして構成されている。このため、電極部21aは、被覆導線Laに接続された状態において、被覆導線Laの不図示の絶縁被覆部(以下、単に「被覆部」ともいう)に接触(当接)して、被覆導線Laの不図示の芯線(導体自体(金属部))と容量結合する電極22aと、被覆導線Laの被覆部における電極22aの接触部位をこの電極22aを含めて覆うことで、電極22aの他の金属部(被覆導線Laの芯線以外の金属部)との容量結合を防止するためのシールド23aとを備えている。また、電極22aは、第1プローブPLaを構成するシールドケーブルの芯線および入力端子部11aの一の端子を介して第1検出部12に接続されている。また、シールド23aは、このシールドケーブルのシールドおよび入力端子部11aの他の端子を介して、信号生成装置2Aにおける基準電位の部位(グランドG)に接続されている。
【0039】
第2プローブPLbも第1プローブPLaと同様に金属非接触型のプローブとして構成されて、基部側が対応する信号生成装置2Aの入力端子部11bに接続されると共に、被覆導線Lbに取り外し自在に接続される先端部に電極部21bが設けられている。また、電極部21bは、被覆導線Lbの金属部(芯線)と容量結合する電極22bと、被覆導線Lbの被覆部における電極22bの接触部位をこの電極22bを含めて覆うことで、電極22bの他の金属部(被覆導線Lbの芯線以外の金属部)との容量結合を防止するためのシールド23bとを備えている。また、電極22bは、第2プローブPLbを構成するシールドケーブルの芯線および入力端子部11bの一の端子を介して第2検出部13に接続されている。また、シールド23bは、このシールドケーブルのシールドおよび入力端子部11bの他の端子を介して、グランドGに接続されている。この場合、シールド23a,23bは、グランドGに直流的にまたは交流的に接続される後述のシールド壁SH1に接続される構成を採用することもできる。また、被覆導線La,Lbは同一構造(外径や断面構造が同一)の電線で構成されているため、この被覆導線La,Lbに接続される電極部21a,21bは同一に構成されている。
【0040】
なお、各電極22a,22bについては、対応するプローブPLa,PLbに表面が露出する状態で配設される構成(つまり、電極22a,22bの各表面が、対応する被覆導線La,Lbの被覆部に直接接触する構成)であってもよいし、対応するプローブPLa,PLbに表面が露出しない状態(例えば、表面が電気的絶縁性を有する絶縁皮膜で覆われた状態)で配設される構成(つまり、電極22a,22bの各表面が、対応する被覆導線La,Lbの被覆部に直接接触せずに、この絶縁皮膜を介して接触する構成)であってもよい。
【0041】
また、各プローブPLa,PLbについては、符号Csを正しく特定可能な符号特定用信号Sfを生成するために、
図2に示すように、第1検出部12が、入力端子部11aに接続された第1プローブPLaを介して被覆導線La(CANHの信号線)に接続され、第2検出部13が、入力端子部11bに接続された第2プローブPLbを介して被覆導線Lb(CANLの信号線)に接続されるものとする。
【0042】
第1検出部12は、一例として、
図2に示すように、インピーダンス素子12a、およびアンプ12bを備えて、入力端子部11aおよび第1プローブPLaを介して接続された被覆導線Laに伝送されている電圧Vaに応じて電圧が変化する第1電圧信号Vd1を出力する。
【0043】
一例として、インピーダンス素子12aは、抵抗31a(高抵抗値の抵抗(少なくとも数MΩ程度の高インピーダンス抵抗))、および抵抗31aに並列接続されたコンデンサ32aを備えて構成されている。インピーダンス素子12aは、その一端(抵抗31aの一端)が入力端子部11aの一の端子を介して第1プローブPLaを構成するシールドケーブルの芯線に接続され、その他端(抵抗31aの他端)がグランドGに接続されている。この構成により、インピーダンス素子12aは、電極部21aの電極22aと容量結合する被覆導線Laに伝送されている電圧信号Vaの電圧Vaに応じて電圧が変化する電圧信号Vc1を、両端間に発生させる。この場合、インピーダンス素子12aは、電圧Vaがベースの電圧のときに低電圧となり、電圧Vaが高電圧の規定電圧のときに高電圧となるように変化する電圧信号Vc1を発生させる。
【0044】
アンプ12bは、一例として、この電圧信号Vc1を非反転増幅して、第1電圧信号Vd1として出力する。なお、この構成に代えて、アンプ12bが、この電圧信号Vc1を反転増幅して、第1電圧信号Vd1として出力する構成を採用することもできる。また、アンプ12bは、電圧信号Vc1に含まれる交流成分と共に直流成分も併せて増幅する構成とすることもできるが、電圧信号Vc1に含まれる交流成分のみを増幅する構成(交流アンプとする構成)を採用して、アンプ12bの出力が飽和する(第1電圧信号Vd1がアンプ12bの作動用電圧Vp1で頭打ちとなる)事態の発生を軽減するのが好ましい。
【0045】
第2検出部13は、一例として、
図2に示すように、第1検出部12の上記したインピーダンス素子12aおよびアンプ12bと同等のインピーダンス素子13a(抵抗31bおよびコンデンサ32b)およびアンプ13bを備えて、第1検出部12と同等に構成されて、入力端子部11bおよび第2プローブPLbを介して接続された被覆導線Lbに伝送されている電圧Vbに応じて電圧が変化する電圧信号Vc2(電圧Vbがベースの電圧のときに高電圧となり、電圧Vbが低電圧の規定電圧のときに低電圧となるように変化する電圧信号)、および第2電圧信号Vd2を生成して出力する。
【0046】
信号生成部14は、一例として、差動アンプ14aおよびコンパレータ14bを備えて構成されて、第1電圧信号Vd1および第2電圧信号Vd2に基づいて符号特定用信号Sfを生成して出力する。この信号生成部14では、差動アンプ14aが、第1電圧信号Vd1および第2電圧信号Vd2を入力して、各電圧信号Vd1,Vd2の差分電圧Vd0(=Vd1-Vd2)を出力する。また、コンパレータ14bが、差分電圧Vd0を予め規定された閾値電圧Vth(不図示の閾値生成部で生成される電圧)と比較することにより、符号特定用信号Sfを生成して出力する。
【0047】
この場合、信号生成部14は、第1プローブPLaが被覆導線Laに接続され、かつ第2プローブPLbが被覆導線Lbに接続されて、
図4に示すように、電圧Vaがベースの電圧のときに低電圧となり、かつ電圧Vaが高電圧の規定電圧のときに高電圧となるように電圧信号Vc1が発生し、また電圧Vbがベースの電圧のときに高電圧となり、かつ電圧Vbが低電圧の規定電圧のときに低電圧となるように電圧信号Vc2が発生している状態において、電圧信号Vc1と同相の第1電圧信号Vd1および電圧信号Vc2と同相の第2電圧信号Vd2の差分電圧Vd0に基づいて、通信路SBにCANフレーム(符号列)を構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において高電位側電圧(レセッシブ)となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において低電位側電圧(ドミナント)となる符号特定用信号Sfを正しく生成して出力する。
【0048】
送信部15は、ラインドライバ(例えば、差動電圧方式の差動ラインドライバ(LVDS(Low Voltage Differential Signal )ドライバなど))で構成されて、入力した符号特定用信号Sfを送信信号としての差動信号(差動電圧信号)Strに変換して第1コネクタ部16に送信(出力)する。第1コネクタ部16は、接続される接続ケーブルCBの上記の構成(一対の信号伝送線Ls1,Ls2、電源線Lpおよびグランド線Lgを少なくとも有する構成)に対応したピン数のコネクタで構成されている。
【0049】
また、本例の信号生成装置2Aは、
図2に示すように、第1ケースCA1(例えば、電気的絶縁性を有する樹脂材料で構成されたボックス状のケース)、および第1ケースCA1の内面のほぼ全域に亘って配設されたシールド壁SH1(磁気シールド効果を有する部材(金属材などの導電性を有する部材)。以下、区別するときには第1シールド壁SH1ともいう)を備えている。この第1ケースCA1には、内部に第1検出部12、第2検出部13、信号生成部14および送信部15(信号生成回路の各構成要素)が収容されると共に、壁面に入力端子部11a,11b、第1コネクタ部16および第1接地用端子17が配設されている。また、シールド壁SH1は、グランドGに直接接続(直流的に接続)されている。この構成により、ケースCA1に収容された第1検出部12、第2検出部13、信号生成部14および送信部15は、シールド壁SH1によって覆われた状態(磁気シールドされた状態)となっている。また、第1接地用端子17は、シールド壁SH1(つまり、グランドG)に接続されている。
【0050】
信号変換装置3は、一例として
図3に示すように、第2コネクタ部41、受信部42、変換処理部43、電源部44、出力コネクタとしての第3コネクタ部45および接地用端子46(区別のため、第2接地用端子46ともいう)を備えて構成されている。
【0051】
この場合、第2コネクタ部41は、接続される接続ケーブルCBの上記の構成(一対の信号伝送線Ls1,Ls2、電源線Lpおよびグランド線Lgを少なくとも有する構成)に対応したピン数のコネクタ(第1コネクタ部16と同じピン数で、かつ同じ構成のコネクタ)で構成されている。
【0052】
電源部44は、例えば二次電池およびコンバータ(いずれも図示せず)を備えて構成されて、二次電池に蓄電されている電力に基づいて、信号生成装置2A内の上記の信号生成回路のための作動用電圧Vp1、および信号変換装置3内の受信部42および変換処理部43で構成される信号変換回路のための作動用電圧Vp2(グランドGの電位を基準とする1種類または2種以上(例えば、DC±5VおよびDC±12Vなどの種々の直流電圧のうちの少なくとも1種)の電圧)を生成して出力する。作動用電圧Vp2は、作動用電圧Vp1と同種の電圧で構成されるときもあるし、少なくとも一部が異なる電圧で構成されるときもある。電源部44は、作動用電圧Vp1については、第2コネクタ部41に接続された接続ケーブルCBの電源線Lpおよびグランド線Lgを介して信号生成装置2Aに出力(供給)する。
【0053】
なお、本例の信号変換装置3は、電源部44を内部に備える構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、図示はしないが、信号変換装置3にACアダプタ(商用電源に基づいて作動用電圧Vp1,Vp2を生成する外部電源)を接続し得るコネクタを配置して、このコネクタを介してACアダプタから作動用電圧Vp1,Vp2を入力する構成を採用することもできる。また、信号変換装置3が電源部としてのコンバータ(1種の直流電圧から作動用電圧Vp1,Vp2を生成して出力する電源装置)のみを備えると共に、ACアダプタ(商用電源に基づいてこの1種の直流電圧を生成する外部電源)用のコネクタを備え、このコネクタを介してACアダプタからこの1種の直流電圧を入力すると共に、このコンバータがこの1種の直流電圧に基づいて作動用電圧Vp1,Vp2を生成する構成を採用することもできる。
【0054】
受信部42は、ラインレシーバ(信号生成装置2Aの送信部15から出力される信号を受信し得るラインレシーバ。本例では、差動電圧方式の差動ラインレシーバ(LVDSレシーバなど))で構成されて、第2コネクタ部41に接続された接続ケーブルCBの一対の信号伝送線Ls1,Ls2を介して入力される受信信号としての差動信号Strを非差動信号Sreに変換する。また、受信部42は、変換した非差動信号Sreを変換処理部43へ出力する。
【0055】
変換処理部43は、非差動信号Sre(信号生成装置2Aから出力される符号特定用信号Sfを示す信号(信号生成装置2Aから受信した受信信号))を予め規定された通信方式の信号(信号変換装置3に接続される既存の電子機器の入力仕様に合致した通信方式の信号)に変換して出力する。本例では、信号変換装置3は、上記したように、信号生成装置2Aから受信した受信信号(符号特定用信号Sf)をCAN通信方式の信号Vcva,Vcvbに変換して出力する構成が採用されている。このため、変換処理部43は、CANドライバで構成されて、符号特定用信号SfをCAN通信方式の信号Vcva,Vcvbに変換して第3コネクタ部45に送信(出力)する。
【0056】
第3コネクタ部45は、接続される接続ケーブルCBoの上記の構成(一対の信号伝送線Ls3,Ls4および基準電位線(グランド線)Lg2を少なくとも有する構成)に対応したピン数のコネクタで構成されている。この第3コネクタ部45におけるグランド線Lg2に対応するピンは、
図3に示すように、信号変換装置3のグランドGに接続されている。また、第3コネクタ部45における信号伝送線Ls3,Ls4に対応する各ピンは変換処理部43に接続されて、この各ピンには、変換処理部43から信号Vcva,Vcvbが出力される。この構成により、信号変換装置3は、信号生成装置2Aから受信した受信信号としての符号特定用信号Sfを、信号変換装置3に接続ケーブルCBoを介して接続された既存の電子機器の入力仕様に合致した通信方式の信号(本例では、グランド線Lg2の電位を基準とするCAN通信方式の信号Vcva,Vcvb)に変換して、接続ケーブルCBoの信号伝送線Ls3,Ls4を経由して電子機器に出力する。
【0057】
また、本例の信号変換装置3は、
図3に示すように、第2ケースCA2(例えば、電気的絶縁性を有する樹脂材料で構成されたボックス状のケース)、および第2ケースCA2の内面のほぼ全域に亘って配設されたシールド壁SH2(磁気シールド効果を有する部材(金属材などの導電性を有する部材)。以下、区別するときには第2シールド壁SH2ともいう)を備えている。この第2ケースCA2には、受信部42および変換処理部43(信号変換回路)と、電源部44とが内部に収容されると共に、第2コネクタ部42、第3コネクタ部45および第2接地用端子46が壁面に配設されている。また、シールド壁SH2は、グランドGに直接接続(直流的に接続)されている。この構成により、第2ケースCA2に収容された受信部42、変換処理部43および電源部44は、シールド壁SH2によって覆われた状態(磁気シールドされた状態)となっている。また、第2接地用端子46は、シールド壁SH2(つまり、グランドG)に接続されている。
【0058】
次に、信号読取システム1Aの使用例(信号読取方法)、およびその際の信号読取システム1Aの動作について、図面を参照して説明する。一例として、車両(自動車)に配設されているCAN通信用のシリアルバス(通信路SB)に信号読取システム1Aを使用する例を挙げて説明する。なお、車両では、通信路SBに接続されて互いに通信する複数の電子制御装置(ECU)は、車両に搭載されたバッテリから供給される直流電圧(例えば、DC+12V)で動作する。この場合、バッテリのマイナス端子(DC+12Vの基準電位となる端子)は車両のボディ(シャーシ)に接続されることで、ボディは、車両の基準電位(ボディアース)として機能する。このため、複数の電子制御装置は、このボディアースを共通のリターン路とする作動用電圧(直流電圧)を、バッテリから直接、またはバッテリの直流電圧に基づいて動作する電源装置(コンバータ)から供給されることで動作する。
【0059】
一方、信号読取システム1Aは、
図1に示すように、信号生成装置2Aと信号変換装置3とが接続ケーブルCBを介して互いに接続され、かつ信号変換装置3が接続ケーブルCBoを介して電子機器(CAN通信対応機器)に接続された状態で使用される。この接続状態では、上記したように、接続ケーブルCBの基準電位線(グランド線)Lg1を介して信号生成装置2Aと信号変換装置3の各グランドG同士が直流的に接続され、また接続ケーブルCBoの基準電位線(グランド線)Lg2を介して信号変換装置3のグランドGが電子機器のグランド(基準電位)に直流的に接続されている。したがって、信号読取システム1Aは、電子機器のグランドを基準とする作動用電圧Vp1,Vp2で動作する。また、信号読取システム1Aでは、
図1,2に示すように、信号生成装置2Aが、第1プローブPLaを介して通信路SBを構成する被覆導線Laに容量結合によって接続されると共に、第2プローブPLbを介して通信路SBを構成する他の被覆導線Lbに容量結合によって接続される。
【0060】
これにより、信号読取システム1Aは、車両の基準電位(ボディアース)に対してフローティングされた状態で動作する構成となることから、この状態のままでは、発明が解決しようとする課題で述べた課題と同じ課題が生じることになる。そこで、この信号読取システム1Aを用いた信号読取方法では、信号読取システム1Aを用いた読取ステップを実行する前に、信号生成装置2Aに配設されている第1接地用端子17、および信号変換装置3に配設されている第2接地用端子46のうちの少なくとも一方を、車両のボディ(シャーシ)に配線を介して接続する接続ステップを実行する。これにより、信号読取システム1Aでは、信号生成装置2Aおよび信号変換装置3の各グランドGは、車両の基準電位(ボディアース)に直流的に接続されて、車両の基準電位と直流的にも交流的にも同電位(電位差が生じていない状態)となることから、上記の課題の発生が回避されている。
【0061】
この信号読取システム1Aでは、信号生成装置2Aに接続された第1プローブPLaおよび第2プローブPLbが通信路SBを構成する被覆導線La,Lbに接続されている状態において、信号生成装置2Aの第1検出部12を構成するインピーダンス素子12aが、
図4に示すように、入力端子部11aおよび第1プローブPLaを介して接続された通信路SBの被覆導線Laについての電圧Vaに応じて電圧が変化する(つまり、電圧Vaがベースの電圧のときに低電圧となり、電圧Vaが高電圧の規定電圧のときに高電圧となるように変化する)電圧信号Vc1を発生させ、アンプ12bが、
図4に示すように、この電圧信号Vc1を非反転増幅して第1電圧信号Vd1を出力する。これにより、第1検出部12は、通信路SBにCANフレームを構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において低電圧となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において高電圧となる第1電圧信号Vd1を生成して出力する。
【0062】
また、信号生成装置2Aの第2検出部13を構成するインピーダンス素子13aが、
図4に示すように、入力端子部11bおよび第2プローブPLbを介して接続された通信路SBの被覆導線Lbについての電圧Vbに応じて電圧が変化する(つまり、電圧Vbがベースの電圧のときに高電圧となり、電圧Vbが低電圧の規定電圧のときに低電圧となるように変化する)電圧信号Vc2を発生させ、アンプ13bが、
図4に示すように、この電圧信号Vc2を非反転増幅して第2電圧信号Vd2を出力する。これにより、第2検出部13は、通信路SBにCANフレームを構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において高電圧となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において低電圧となる第2電圧信号Vd2を生成して出力する。
【0063】
また、信号生成装置2Aの信号生成部14は、第1電圧信号Vd1および第2電圧信号Vd2を入力すると共に、各電圧信号Vd1,Vd2の差分電圧Vd0(=Vd1-Vd2)に基づいて符号特定用信号Sfを生成して出力する。具体的には、信号生成部14は、
図4に示すように、この差分電圧Vd0に基づいて、通信路SBにCANフレーム(符号列)を構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において高電位側電圧(レセッシブ)となり、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において低電位側電圧(ドミナント)となる正しい符号特定用信号Sfを生成して出力する。また、信号生成装置2Aの送信部15は、入力する符号特定用信号Sfを差動信号Strに変換して第1コネクタ部16に出力する。これにより、信号生成装置2Aから信号変換装置3に、符号特定用信号Sfを示す差動信号Strが接続ケーブルCBを介して送信される。
【0064】
信号変換装置3では、受信部42が、接続ケーブルCB内の一対の信号伝送線Ls1,Ls2を介して接続される信号生成装置2Aの送信部15から送信(出力)される差動信号Strを受信すると共に非差動信号Sreに変換して、変換処理部43へ出力する。
【0065】
変換処理部43は、信号生成装置2Aから出力される符号特定用信号Sfを示す信号である非差動信号Sreを、予め規定された通信方式の信号(信号変換装置3に接続される既存の電子機器の入力仕様に合致した通信方式の信号(本例ではCAN通信方式の信号Vcva,Vcvb))に変換して、この電子機器へ接続ケーブルCBoを介して出力する。
【0066】
これにより、この電子機器では、通信路SBに伝送されているCANフレームを構成する符号Csの列を収集したり観測したりすることが可能となっている。
【0067】
このように、この信号読取システム1Aでは、信号生成装置2Aには、グランドGの電位を基準とする作動用電圧Vp1で動作する信号生成回路(第1検出部12、第2検出部13、信号生成部14、送信部15)を収容する第1ケースCA1に、グランドGに接続された第1接地用端子17が配設されている。また、信号変換装置3には、グランドGの電位を基準とする作動用電圧Vp2で動作する信号変換回路(受信部42および変換処理部43)を収容する第2ケースCA2に、グランドGに接続された第2接地用端子46が配設されている。
【0068】
したがって、この信号読取システム1A、および信号読取システム1Aを用いた信号読取方法によれば、信号読取システム1Aのケースに配設された接地用端子(本例では、第1ケースCA1に配設された第1接地用端子17、および第2ケースCA2に配設された第2接地用端子46(接続ケーブルCBのグランド線Lg1を介して第1接地用端子17と直流的に接続されている接地用端子)のうちの少なくとも一方の接地用端子)を接地電位(本例では、実質的に接地電位として機能する車両の基準電位(ボディアース))に接続することにより、信号読取システム1A(信号生成装置2Aおよび信号変換装置3)側の基準電位(グランドGの電位)を、通信路SBが配設されている車両側の基準電位(ボディアース)に規定する(車両側の基準電位と同電位にする)ことができる。
【0069】
これにより、この信号読取システム1Aおよびこの信号読取方法によれば、信号読取システム1A側の基準電位と車両側の基準電位との間に電位差が生じた状態において生じる上記した課題(この電位差の変化に起因したノイズの影響を受けて符号特定用信号Sfを正確に生成し得ないという課題)の発生を回避しつつ、既存の電子機器(例えば、ダイアグコネクタを介して通信路SBに接続する形態の電子機器)を、金属非接触型のプローブPLa,PLbが接続された信号読取システム1Aを介して通信路SBに容量結合によって接続して(つまり、ダイアグコネクタを介さずに通信路SBに接続して)、この既存の電子機器で通信路SBに伝送されているCANフレームを構成する符号Csの正確な列を収集したり観測したりすることができる。
【0070】
また、信号読取システム1Aによれば、信号生成装置2Aでは、内部の信号生成回路をシールドするシールド壁SH1を配設し、かつ信号変換装置3では、内部の信号変換回路をシールドするシールド壁SH2を配設すると共に、シールド壁SH1に第1接地用端子17を配設し、かつシールド壁SH2に第2接地用端子46を配設して、第1接地用端子17および第2接地用端子46の少なくとも一方を車両側の基準電位(ボディアース)に接続するようにしたことにより、信号生成回路および信号変換回路を車両側の基準電位(ボディアース)と同電位のシールド壁SH1,SH2でシールドすることができることから、信号読取システム1A内への外部ノイズの侵入、および信号読取システム1A内のノイズの外部(車両側)への漏洩を十分に低減することができる。
【0071】
なお、シールド壁SH1,SH2については、上記の構成のように、対応する回路(シールド壁SH1については信号生成回路、シールド壁SH2については信号変換回路)を収容する構成(対応するケースCA1,CA2の形状に準じた構成)とするのが好ましいが、ケースCA1,CA2における各接地用端子17,46を配設する壁面の内面にのみ平板形状に形成して配設する構成を採用することもできる。また、シールド壁SH1,SH2は配設せずに、ケースCA1,CA2に配設した各接地用端子17,46については、信号生成回路および信号変換回路の各グランドGに配線を介して接続する構成を採用することもできる。
【0072】
また、上記の信号読取システム1Aでは、信号生成装置2Aが、金属非接触型の一対のプローブPLa,PLbを介して通信路SBを構成する一対の被覆導線La,Lbに接続された状態において、被覆導線La,Lbの各電圧Va,Vbに対応する第1電圧信号Vd1および第2電圧信号Vd2を生成し、かつこれらの差分電圧Vd0(=Vd1-Vd2)に基づいて符号特定用信号Sfを生成するという構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。
【0073】
例えば、信号読取システム1Aは、
図5に示す信号生成装置2Bを備えて構成することもできる。この信号生成装置2Bは、上記した信号生成装置2Aが第1検出部12および第2検出部13の2つの検出部を備えている(この構成に対応して、入力端子部11a,11bも2つ備えている)のに対して、1つの入力端子部および1つの検出部のみを備えている点と、上記した信号生成装置2Aの信号生成部14が差動アンプ14aおよびコンパレータ14bで構成されているのに対して、信号生成部14がコンパレータ14bで構成されている点とで、信号生成装置2Aと相違している。以下において、
図5を参照して信号生成装置2Bについて説明する。なお、後述する各実施例において、上記した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0074】
図5に示す信号生成装置2Bは、一例として、1つの入力端子部および1つの検出部として信号生成装置2Aにおける第1検出部12およびこれに対応する入力端子部11aを備え、入力端子部11aに接続された1本のプローブPLaを介して、対応する被覆導線Laに容量結合によって接続される。
【0075】
この信号生成装置2Bでは、第1検出部12が、信号生成装置2Aと同様にして、被覆導線Laに伝送されている電圧Vaに応じて電圧が変化する第1電圧信号Vd1を出力する。また、信号生成部14のコンパレータ14bが、第1電圧信号Vd1を、第1電圧信号Vd1に対応して予め規定された閾値電圧Vth(不図示の閾値生成部で生成される電圧)と比較することにより、信号生成装置2Aで生成される符号特定用信号Sfと同等の符号特定用信号Sfを生成して出力する。
【0076】
したがって、この信号生成装置2Bを備えた信号読取システム1A、およびこの信号読取システム1Aを用いた信号読取方法によっても、信号生成装置2Aを備えた信号読取システム1Aと同様にして、信号読取システム1Aのケースに配設された接地用端子(本例では、第1ケースCA1に配設された第1接地用端子17、および第2ケースCA2に配設された第2接地用端子46のうちの少なくとも一方の接地用端子)を接地電位(本例では、車両の基準電位(ボディアース))に接続することにより、信号読取システム1A(信号生成装置2Bおよび信号変換装置3)側の基準電位(グランドGの電位)を、通信路SBが配設されている車両側の基準電位(ボディアース)に規定すること(車両側の基準電位と同電位にすること)ができる。
【0077】
これにより、この信号読取システム1Aおよびこの信号読取方法においても、信号生成装置2Aを備えた信号読取システム1Aと同様の効果を奏することができる。
【0078】
また、信号生成装置2Aを備えた信号読取システム1Aの構成を簡易に表すと、
図6に示す構成図で表されるが、この
図6の構成図を基準として、信号読取システム1Aが採用し得る他の構成について説明する。
【0079】
例えば、
図6の構成図で示されるように、上記した信号読取システム1Aでは、信号生成装置2A側の信号生成回路の基準電位であるグランドGと、信号変換装置3側の信号変換回路の基準電位であるグランドGとは、接続ケーブルCBのグランド線Lg1を介して直流的に接続されて互いに同電位に規定されている。また、信号生成装置2A側のシールド壁SH1は、信号生成回路のグランドGに直接接続(直流的に接続)され、さらに第1接地用端子17は、このシールド壁SH1に接続されている。また、信号変換装置3側のシールド壁SH2は、信号変換回路のグランドGに直接接続(直流的に接続)され、さらに第2接地用端子46は、このシールド壁SH2に接続されている。
【0080】
例えば、車両に配設されているCAN通信用のシリアルバス(通信路SB)にこの信号読取システム1Aを使用する場合には、上記したように、信号読取システム1AのグランドGに接続されている第1接地用端子17および第2接地用端子46のうちの少なくとも一方を、車両の基準電位(ボディアース)に接続するが、この際に、車両に搭載されているバッテリのプラス端子に接続されている部位(車両の部位)に誤って接触させたときには、バッテリのプラス端子から信号読取システム1A(信号生成装置2Aや信号変換装置3)に過大な直流電流が流れることがあることから、この直流電流の発生を未然に防止し得る構成を採用するのが好ましい。
【0081】
この好ましい構成を採用した信号読取システム1Aについて、
図7を参照して説明する。この信号読取システム1Aでは、信号生成装置2Aについては、第1接地用端子17が配設されたシールド壁SH1をグランドGに、直流的ではなく交流的に接続する(具体的には、直接接続ではなく、コンデンサ18aを介して接続する)。また、信号変換装置3についても、第2接地用端子46が配設されたシールド壁SH2をグランドGに、直流的ではなく交流的に接続する(具体的には、直接接続ではなく、コンデンサ47aを介して接続する)。
【0082】
この
図7に示す構成を採用した信号読取システム1Aによれば、同図では図示は省略している第1ケースCA1から露出している第1接地用端子17や、第2ケースCA2から露出している第2接地用端子46を、車両に搭載されているバッテリのプラス端子に接続されている部位(車両の部位)に誤って接触させたとしても、第1接地用端子17およびこの第1接地用端子17が配置されたシールド壁SH1がコンデンサ18aによって信号生成装置2A側のグランドGから直流的に分離され、また第2接地用端子46およびこの第2接地用端子46が配置されたシールド壁SH2がコンデンサ47aによって信号変換装置3側のグランドGから直流的に分離されているため、バッテリのプラス端子から信号読取システム1Aに過大な直流電流が流れる事態の発生を防止することができる。
【0083】
また、この構成の信号読取システム1Aによれば、各シールド壁SH1,SH2自体がグランドGから直流的に分離されている構成であることから、例えば、プローブPLa,PLbや接続ケーブルCBを信号生成装置2Aに接続するための接続コネクタのハウジングが金属製であって、このハウジングがシールド壁SH1に電気的に接続される構成であったり、接続ケーブルCBや接続ケーブルCBoを信号変換装置3に接続するための接続コネクタのハウジングが金属製であって、このハウジングがシールド壁SH2に電気的に接続される構成であったりして、かつこれらのハウジングが対応するケースCA1,CA2から露出する構成のときにも、この露出するハウジングが車両に搭載されているバッテリのプラス端子に接続されている部位に誤って接触させたときの過大な直流電流の発生を防止することができる。
【0084】
なお、この信号読取システム1Aで読み取り対象である通信路SBのロジック信号は、交流信号であることから、信号読取システム1AのグランドGは、車両の基準電位(ボディアース)に交流的に接続されることで、信号読取システム1A側の基準電位(グランドGの電位)と車両側の基準電位(ボディアース)との間に電位差が生じない状態に維持される。
【0085】
また、この信号読取システム1Aのように、信号生成装置2Aと信号変換装置3とが別体に形成されて、互いに接続ケーブルCBを介して接続される構成のときには、信号変換装置3については車両の外部に配設し、信号生成装置2Aだけを車両内に搬入する使用方法が採用されることがある。この構成では、信号変換装置3と別体に構成されることで、一体化された構成(1つのケースに収容される構成)と比較して、信号生成装置2Aの小型化が可能となっている。したがって、例えば、信号生成装置2Aを車両内に搬入する使用方法において、車両内の狭いスペースにも信号生成装置2Aを設置できることから使い勝手の向上が図られる。この場合には、信号生成装置2A側の第1接地用端子17だけを車両側の基準電位(ボディアース)に接続する構成となることから、この信号生成装置2A側についてだけ、車両に搭載されているバッテリのプラス端子に接続されている部位との誤接触を配慮するだけでよい。したがって、この場合には、信号生成装置2A側にのみ第1接地用端子17と上記のコンデンサ18aとを設け、信号変換装置3側については第2接地用端子46とコンデンサ47aとを設けずに、シールド壁SH2を信号変換装置3側のグランドGに直流的に接続する構成とすることもできるし、シールド壁SH2自体を設けない構成とすることもできる。
【0086】
また、各プローブPLa,PLbにおいて、各電極22a,22bが、対応するプローブPLa,PLbに表面が露出する状態で配設される構成のときには、各電極22a,22bが、車両に搭載されているバッテリのプラス端子に接続されている部位と誤って接触したときにも、バッテリのプラス端子から信号読取システム1Aに好ましくない直流電流が流れる事態が発生するおそれがある。この事態の発生を回避するために、
図8に示す信号読取システム1Aのように、第1プローブPLaを構成するシールドケーブルの芯線と第1検出部12との間にカップリングコンデンサ18bを配設し、かつ第2プローブPLbを構成するシールドケーブルの芯線と第2検出部13との間にカップリングコンデンサ18cを配設する構成を採用してもよい。さらに、
図8に示すように、シールド23aを、シールドケーブルのシールドを介してシールド壁SH1(コンデンサ18aを介してグランドGに交流的に接続されたシールド壁SH1)に接続し、シールド23bを、シールドケーブルのシールドを介してシールド壁SH1に接続する構成を採用してもよい。
【0087】
また、上記の信号読取システム1Aでは、信号生成装置2Aと信号変換装置3とが別体に形成されて、互いに接続ケーブルCBを介して接続される構成を採用しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、
図9に示す信号読取システム1Bのように、信号生成装置2A側の信号生成回路と信号変換装置3側の信号変換回路とを1つのケースCAに収容すると共に、このケースCAの内面のほぼ全域に亘ってシールド壁SHを配設し、かつシールド壁SHに1つの接地用端子17を配設する構成を採用することもできる。
【0088】
また、この信号読取システム1Bでは、信号生成回路および信号変換回路の共通の基準電位の部位(グランドG)と、シールド壁SHとをコンデンサ18aを介して接続する構成(直流的には分離する一方で、交流的には接続する構成)を採用しているが、図示はしないが、グランドGとシールド壁SHとをコンデンサ18aを介さずに直接接続(直流的に接続)する構成を採用してもよいのは勿論である。
【0089】
この信号読取システム1B、およびこの信号読取システム1Bを用いた信号読取方法によっても、上記した信号読取システム1Aと同様にして、信号読取システム1Bに配設された接地用端子17を接地電位(本例では、車両の基準電位(ボディアース))に接続することにより、信号読取システム1B側の基準電位(グランドGの電位)を、通信路SBが配設されている車両側の基準電位(ボディアース)と同電位にすることができる。
【0090】
これにより、この信号読取システム1Bおよびこの信号読取方法においても、信号読取システム1Aと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0091】
1A,1B 信号読取システム
2A,2B 信号生成装置
3 信号変換装置
16 第1コネクタ部
17,46 接地用端子
22a,22b 電極
41 第2コネクタ部
45 第3コネクタ部
CA1 第1ケース
CA2 第2ケース
CB,CBo 接続ケーブル
La,Lb 被覆導線
PLa,PLb プローブ
Sa ロジック信号
SB 通信路
Sf 符号特定用信号
Str 差動信号
Va,Vb 電圧(被覆導線に伝送される電圧)
Vcva,Vcvb CAN通信方式に準拠した信号