(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】制震装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20230529BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230529BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
E04H9/02 311
F16F15/02 E
F16F7/08
(21)【出願番号】P 2019141097
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】石井 大吾
(72)【発明者】
【氏名】半澤 徹也
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-42974(JP,A)
【文献】特開平11-247488(JP,A)
【文献】特開平11-141174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
E04B 1/18
E04B 1/58
F16F 7/08
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対変位可能な第1構造部と第2構造部との間に並列に配置される第1制震ダンパーおよび第2制震ダンパーと、
前記第1制震ダンパーと前記第2制震ダンパーとを連結する第3制震ダンパーと、を有し、
前記第1制震ダンパーおよび前記第2制震ダンパーは、それぞれ前記第1構造部と前記第2構造部の第1方向の相対変位を減衰可能に構成され、
前記第3制震ダンパーは、前記第1制震ダンパーと前記第2制震ダンパーとの前記第1方向の相対変位を減衰可能に構成されていることを特徴とする制震装置。
【請求項2】
前記第3制震ダンパーは、前記第1制震ダンパーと前記第2制震ダンパーとの前記第1方向の相対変位が所定値以上となると、前記相対変位を減衰可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の制震装置。
【請求項3】
前記第1制震ダンパー、前記第2制震ダンパーおよび第3制震ダンパーは、摩擦ダンパーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の制震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超高層建物の制震構造計画において、制震装置を設置できる箇所が限られている場合などに、設計上必要な性能を満足するために、制震装置の高耐力化が求められることがある。制震装置の高耐力化を図るために、複数の制震ダンパーが設けられた制震装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
複数の制震ダンパーが設けられた制震装置では、複数の制震ダンパーがシアリンク部材を介してV字形状に設置されていたり、複数の制震ダンパーが交差して設置されていたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の制震ダンパーがシアリンク部材を介してV字形状に設置された制震装置は、必要鋼材量が増加し、設置作業に手間がかかるとともに、コストがかかるという問題がある。
また、複数の制震ダンパーが交差して設置された制震装置では、交差する制震ダンパー間の干渉を避けるために、互いに交差する一方の制震ダンパーに貫通孔を設け、この貫通孔に他方の制震ダンパーを挿通させる必要がある。このため、複数の制震ダンパーが交差して設置された制震装置においても、設置作業に手間がかかるという問題がある。
さらに、いずれの場合においても、設置構面が大きく閉鎖されるため、出入口などの開口部の位置が規制されるなど設計の自由度がなくなるという問題もある。
【0005】
そこで本発明は、複数の制震ダンパーを容易に設置することができるとともに、制震装置が設けられる構面における設計の自由度を高めることができる制震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る制震装置は、相対変位可能な第1構造部と第2構造部との間に並列に配置される第1制震ダンパーおよび第2制震ダンパーと、前記第1制震ダンパーと前記第2制震ダンパーとを連結する第3制震ダンパーと、を有し、前記第1制震ダンパーおよび前記第2制震ダンパーは、それぞれ前記第1構造部と前記第2構造部の第1方向の相対変位を減衰可能に構成され、前記第3制震ダンパーは、前記第1制震ダンパーと前記第2制震ダンパーとの前記第1方向の相対変位を減衰可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、第1構造部と第2構造部との第1方向の相対変位を減衰可能な第1制震ダンパーおよび第2制震ダンパーが並列して設けられている。さらに、本発明では、第1制震ダンパーと第2制震ダンパーとの間に第1制震ダンパーと第2制震ダンパーとの第1方向の相対変位を減衰可能な第3制震ダンパーが設けられている。
これにより、制震装置における第1構造部と第2構造部の第1方向の相対変位の減衰力を増大させることができ、制震装置の高耐力化を図ることができる。
第1制震ダンパーと第2制震ダンパーとは、並列に配置されていることにより、第1制震ダンパーと第2制震ダンパーとが干渉することが無く、容易に設置することができる。第3制震ダンパーは、第1制震ダンパーと第2制震ダンパーとの間に設けられていることにより、第1制震ダンパーおよび第2制震ダンパーと接合部以外で干渉することがなく、容易に設置することができる。
また、第1制震ダンパーと第2制震ダンパーとは並列に設けられ、第3制震ダンパーは第1制震ダンパーと第2制震ダンパーとの間に設けられたコンパクトな形状であるため、制震装置が設置構面を大きく閉鎖することが無く、設計上の自由度を高めることができる。
【0008】
また、本発明に係る制震装置では、前記第3制震ダンパーは、前記第1制震ダンパーと前記第2制震ダンパーとの前記第1方向の相対変位が所定値以上となると、前記相対変位を減衰可能に構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、第1構造部と第2構造部との相対変位が所定値となるまでは、第1制震ダンパーおよび第2制震ダンパーが、第1構造部と第2構造部との相対変位を減衰させる。第1構造部と第2構造部との相対変位が所定値以上となると、第1制震ダンパー、第2制震ダンパーおよび第3制震ダンパーが、第1構造部と第2構造部との相対変位を減衰させる。このため、所定のレベルまでの地震では、第1制震ダンパーおよび第2制震ダンパーを作用させ、それ以上のレベルの地震では、てすべての制震ダンパーを作用させて過度な相対変位を抑えることができる。
【0009】
また、本発明に係る制震装置では、前記第1制震ダンパー、前記第2制震ダンパーおよび第3制震ダンパーは、摩擦ダンパーであってもよい。
このような構成とすることにより、制震装置を安価に設置することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の制震ダンパーを容易に設置することができるとともに、制震装置が設けられる構面における設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による制震装置の一例を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態による制震装置のモデル図である。
【
図3】本発明の実施形態の変形例による制震装置の第3制震装置を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態の変形例による制震装置の荷重変形関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による制震装置について、
図1-
図4に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による制震装置1は、建物の柱12,13と梁14,15とによって囲まれる架構11(設置構面)に配置されている。
架構11の両側に位置する柱12,13のうちの架構11の一方側に設けられた柱を第1柱12とし、架構11の他方側に設けられた柱を第2柱13とする。架構の上側および下側に位置する梁14,15のうち、架構11の下側に設けられた梁を第1梁14とし、架構11の上側に設けられた梁を第2梁15とする。
第1梁14および第2梁15は、それぞれ一方の端部が第1柱12に接合され、他方の端部が第2柱13に接合されている。
【0013】
制震装置1は、架構11に並列に配置される第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3と、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3との間に配置され、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3とをそれぞれ連結する3つの第3制震ダンパー4と、を有している。
第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3は、ブレース型の摩擦ダンパーで構成されている。第1制震ダンパー2、第1柱12側から第2柱13側に向かって漸次上側に向かう斜め方向(第1方向、以下、第1斜め方向とする)に延びて、架構11における対角となる2つの角部それぞれに接合されている。
第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3は、第1柱12と第1梁14との第1柱梁接合部16(第1構造部)に設けられた第1ガセットプレート161、および第2柱13と第2梁15との第2柱梁接合部17(第2構造部)に設けられた第2ガセットプレート171のそれぞれに接合されている。
本実施形態では、第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3は、第1制震ダンパー2が第2制震ダンパー3よりも上側に配置されるように並列に配置されている。
【0014】
第1制震ダンパー2は、第1軸材21と、第2軸材22と、を有し、第1軸材21と第2軸材22とが相対変位可能に接続されている。
第1軸材21は、例えば、鋼管や形鋼などの長尺の部材で、軸線が第1斜め方向に延びる向きに設置される。
第1軸材21は、一方の端部近傍が第1ガセットプレート161にボルト接合などによって剛接合され、他方の端部近傍が第2軸材22と接続されている。第1軸材21における他方の端部近傍を第1軸材接続部23とする。
【0015】
第2軸材22は、例えば、鋼管や形鋼などの長尺の部材で、軸線が第1斜め方向に延びる向きに設置される。第2軸材22は、第1軸材21よりも短く形成されている。
第2軸材22は、一方の端部側が第2ガセットプレート171にボルト接合などによって剛接合され、他方の端部側が第1軸材21と接続されている。第2軸材22における他方の端部近傍を第2軸材接続部24とする。
第1軸材21と第2軸材22とは、同軸に配列されていて、第1軸材接続部23と第2軸材接続部24とが重なって配置されている。第1軸材21と第2軸材22とは、軸線方向(第1斜め方向)に相対変位可能に構成されている。
【0016】
第1軸材接続部23には、摩擦材25が設けられている。第2軸材接続部24には、摩擦材25と当接する摺動部26が設けられている。第1軸材接続部23の摩擦材25と第2軸材接続部24の摺動部26とは圧接されている。
第1制震ダンパー2は、第1軸材21と第2軸材22とが軸線方向に相対変位すると、摩擦材25と摺動部26との間に摩擦力が生じ、第1軸材21と第2軸材22との相対変位を減衰するように構成されている。
第1制震ダンパー2における第1軸材21と第2軸材22との接続部(摩擦材25および摺動部26が設けられている部分、以下、第1接続部27とする)は、第1制震ダンパー2の上部側に設けられている。
【0017】
第2制震ダンパー3は、第1制震ダンパー2と同様に構成され、第1制震ダンパー2とは、架構11に設置される向きが異なっている。
第2制震ダンパー3は、第1軸材21の一方の端部が第2ガセットプレート171に接合され、第2軸材22の一方の端部が第1ガセットプレート161に接合されている。
第2制震ダンパー3における第1軸材21と第2軸材22との接続部(摩擦材25および摺動部26が設けられている部分、以下、第2接続部28とする)は、第2制震ダンパー3の上部側に設けられている。
このため、第1接続部27は、第2接続部28よりも第1斜め方向に沿った斜め上方に間隔をあけて配置されている。
本実施形態では、第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3それぞれの最大耐力を2MNとしている。
【0018】
第3制震ダンパー4は、間柱型の摩擦ダンパーで構成されている。第3制震ダンパー4は、第1制震ダンパー2の第1軸材21と、第2制震ダンパー3の第1軸材21との間に設けられている。
第3制震ダンパー4は、第1板材41と、第2板材42と、を有し、第1板材41と第2板材42とが相対変位可能に接続されている。
【0019】
第1板材41は、例えば、鋼板などの平板状の部材で、板面が長尺の長方形となっている。
第1板材41において、板面の長辺が延びる方向を長手方向とし、板面の短辺が延びる方向を短手方向とする。
第1板材41は、長手方向が第1斜め方向となる向きで、かつ板面が架構11に沿った向きに設置される。
第1板材41は、短手方向の一方側が第1制震ダンパー2の第1軸材21にボルト接合などによって剛接合され、他方側が第2制震ダンパー3側に突出して、第2板材42と接続されている。第1板材41における短手方向の他方側の部分を第1板材接続部43とする。
【0020】
第2板材42は、例えば、鋼板などの平板状の部材で、板面が長尺の長方形となっている。
第2板材42において、板面の長辺が延びる方向を長手方向とし、板面の短辺が延びる方向を短手方向とする。
第2板材42は、長手方向が第1斜め方向となる向きで、かつ板面が架構11に沿った向きに設置される。
第2板材42は、短手方向の一方側が第1制震ダンパー2の第1軸材21にボルト接合などによって剛接合され、他方側が第1制震ダンパー2側に突出して、第1板材41と接続されている。第2板材42における短手方向の他方側の部分を第2板材接続部44とする。
第1板材41と第2板材42とは、第1板材接続部43と第2板材接続部44とが平行に重なって配置されている。第1板材41と第2板材42とは、長手方向(第1斜め方向)に相対変位可能に構成されている。
【0021】
第1板材接続部43には、摩擦材45が設けられている。第2板材接続部44には、摩擦材45と当接する摺動部46が設けられている。第1板材接続部43の摩擦材45と第2板材接続部44の摺動部46とは圧接されている。第3制震ダンパー4は、第1板材41と第2板材42とが軸線方向に相対変位すると、摩擦材45と摺動部46との間に摩擦力が生じ、第1板材41と第2板材42との相対変位を減衰するように構成されている。
本実施形態の制震装置1には、第3制震ダンパー4が第1斜め方向に3つ並んで設けられている。3つの第3制震ダンパー4は、第1斜め方向における第1接続部27と第2接続部28との間となる位置に第1斜め方向に配列して設置されている。
本実施形態では、3つの第3制震ダンパー4それぞれの最大耐力を1MNとしている。
【0022】
本実施形態による制震装置1は、建物に層間変位が生じて、第1柱梁接合部16と第2柱梁接合部17とが第1斜め方向に相対変位すると、この相対変位に追従して第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3それぞれの第1軸材21と第2軸材22とが第1斜め方向(軸線方向)に相対変位する。
第1軸材21と第2軸材22とが第1斜め方向に相対変位することにより、摩擦材25と摺動部26との間に摩擦が生じ、第1軸材21と第2軸材22との相対変位を減衰させる。これにより、層間変位が減衰される。
【0023】
第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3とは、それぞれ第1軸材21と第2軸材22とが第1斜め方向に相対変位するが、異なる挙動となるため、第1制震ダンパー2の第1軸材21と第2制震ダンパー3の第1軸材21とが第1斜め方向に相対変位する。これにより、第3制震ダンパー4の第1板材41と第2板材42とが第1斜め方向に相対変位し、これにより、摩擦材45と摺動部46との間に摩擦が生じ、第1板材41と第2板材42との相対変位が減衰される。これにより、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3との相対変位が減衰される。
【0024】
本実施形態による制震装置1のモデルを
図2に示す。本実施形態による制震装置1では、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3とが第1斜め方向に相対変位しようとすると、第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3の相対変位が第3制震ダンパー4に入力される。これにより、第3制震ダンパー4の第1板材41と第2板材42とが相対変位する。
上述しているが、第3制震ダンパー4の第1板材41と第2板材42とが第1斜め方向に相対変位することにより、摩擦材45と摺動部46との間に摩擦が生じ、第1板材41と第2板材42との相対変位を減衰させることができる。このため、制震装置1の最大耐力は、第1制震ダンパー2の最大耐力、第2制震ダンパー3の最大耐力、および3つの第3制震ダンパー4の最大耐力を合わせた値となり、7MNとなる。
【0025】
次に、上述した本実施形態による制震装置1の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態による制震装置1では、建物の層間における第1斜め方向の相対変位を減衰可能な第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3が並列して設けられている。さらに本実施形態による制震装置1では、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3との間に第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3との第1斜め方向の相対変位を減衰可能な第3制震ダンパー4が設けられている。
これにより、制震装置1における層間変位(第1斜め方向の相対変位)の減衰力を増大させることができ、制震装置1の高耐力化を図ることができる。
【0026】
第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3とは、並列に配置されていることにより、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3とが干渉することが無く、容易に設置することができる。第3制震ダンパー4は、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3との間に設けられていることにより、第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3と接合部以外で干渉することがなく、容易に設置することができる。
また、本実施形態による制震装置1では、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3とは並列に設けられ、第3制震ダンパー4は第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3との間に設けられたコンパクトな形状である。このため、制震装置1が架構11を大きく閉鎖することが無く、設計上の自由度を高めることができる。
【0027】
また、第1制震ダンパー2、第2制震ダンパー3および第3制震ダンパー4は、それぞれ摩擦ダンパーであるため、制震装置1を安価に設置することができる。
【0028】
以上、本発明による制震装置1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、制震装置1は、第1柱梁接合部16と、第2柱梁接合部17との間に設けられているが、相対変位可能な2つの構造部(第1構造部、第2構造部)との間に設けられていればよい。例えば、2つの柱の間や、柱と梁との間、柱と床との間、梁と壁との間などに設けられていてもよい。
【0029】
上記の実施形態による制震装置1では、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3とが第1斜め方向に相対変位すると、第3制震ダンパー4の第1板材41と第2板材42とが第1斜め方向に相対変位して、摩擦材25と摺動部26との間に摩擦が生じるように構成されている。
これに対し本発明では、制震装置は、第1制震ダンパー2と第2制震ダンパー3との第1斜め方向の相対変位が所定値以上、または所定値を超えた場合に、第3制震ダンパー4の第1板材41と第2板材42とが第1斜め方向に相対変位するように構成されていてもよい。
【0030】
図3に示すように、このような制震装置1Bにおいて、例えば、第3制震ダンパー4Bの第1板材41と第1制震ダンパー2の第1軸材21とがボルト接合されている場合には、第3制震ダンパー4の第1板材41および第1制震ダンパー2の第1軸材21のいずれか一方または両方のボルト孔を第1斜め方向に延びる長孔とする。
図3では、第3制震ダンパー4の第1板材41のボルト孔411を長孔としている。
そして、ボルト46は、長孔のボルト孔411に沿って変位可能に構成されている。
第3制震ダンパー4の第1板材41と第1制震ダンパー2の第1軸材21とが第1斜め方向に相対変位しても、ボルト46が長孔のボルト孔411の端部に位置するまでは、第1制震ダンパー2の第1軸材21の変位が第3制震ダンパー4の第1板材41に伝達しない。
【0031】
同様に、第3制震ダンパー4の第2板材42および第2制震ダンパー3の第1軸材21のいずれか一方または両方のボルト孔を第1斜め方向に延びる長孔とする。
図3では、第3制震ダンパー4の第2板材42のボルト孔421を長孔としている。
そして、第3制震ダンパー4の第2板材42と第2制震ダンパー3の第1軸材21とが第1斜め方向に相対変位しても、ボルト46が長孔のボルト孔421の端部に位置するまでは、第2制震ダンパー3の第1軸材21の変位が第3制震ダンパー4の第1板材41に伝達しない。
【0032】
このような制震装置1Bでは、層間変位(第1柱梁接合部16と、第2柱13と第2梁15との接合部との相対変位)が所定値となるまでは(または所定値未満では)、第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3が層間変位を減衰させる。層間変位が所定値以上となったら(また、所定値を超えたら)、第1制震ダンパー2、第2制震ダンパー3および第3制震ダンパー4が層間変位を減衰させる。これにより、制震装置1Bは、所定のレベルまでの地震では、第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3を作用させ、それ以上のレベルの地震では、すべての制震ダンパーを作用させて過度な相対変位を抑えることができる剛性可変な制震装置とすることができる。
【0033】
図4に、上記のような制震装置1Bの荷重変形関係のイメージを示す。
図4は、制震装置1Bを建物構面内に設置した例であるが、この制震装置1Bを免震建物の免震層に設置すれば、極大地震時に建物が擁壁に衝突するような被害を抑えることができるという効果が得られる。
【0034】
また、上記の実施形態では、第1制震ダンパー2、第2制震ダンパー3および第3制震ダンパー4は、摩擦ダンパーであるが、オイルダンパー、ボールねじ機構を利用した回転慣性質量ダンパー、粘弾性ダンパーなどを採用してもよい。
例えば、第1制震ダンパー2および第2制震ダンパー3に摺動部26が明確なオイルダンパーや回転慣性質量ダンパーを採用し、第3制震ダンパー4に壁型の粘弾性ダンパーを採用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1,1B 制震装置
2 第1制震ダンパー
3 第2制震ダンパー
4 第3制震ダンパー
16 第1柱梁接合部(第1構造部)
17 第2柱梁接合部(第2構造部)