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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
H01L21/304 651M
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019239589
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108348
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博史
(72)【発明者】
【氏名】小林 健司
(72)【発明者】
【氏名】村元 僚
(72)【発明者】
【氏名】根來 世
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】酒井 渉
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185805(JP,A)
【文献】特開2017-183634(JP,A)
【文献】特開2019-050427(JP,A)
【文献】特開2014-112652(JP,A)
【文献】特開2015-211201(JP,A)
【文献】特開2017-201728(JP,A)
【文献】特開2012-222254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
B08B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に保持された基板の上面であってパターンが形成された上面に処理液を供給して、前記処理液を含む液膜を、前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、
前記基板の上面の中央部に前記液膜の上方から光を照射して前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない加熱領域を加熱して、前記加熱領域に接する前記処理液を蒸発させることによって、前記基板の上面の中央部に、前記処理液と前記基板の上面との間に蒸気層が形成されかつ前記蒸気層上に前記液膜が保持された蒸気層形成部を形成する蒸気層形成部形成工程と、
前記蒸気層形成部が上面の中央部に形成されている前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線回りに回転させることにより、前記蒸気層形成部を、前記液膜に形成された穴を内側に有する円環状にする基板回転工程と、
前記基板回転工程に並行して、前記基板の外周に向けて前記加熱領域を移動させて前記蒸気層形成部の外周を拡げ、かつ前記穴を拡げることにより、円環状の前記蒸気層形成部を前記基板の外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記蒸気層形成部形成工程が、前記基板の上面の中央部に光を照射して、前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない第1の加熱領域を加熱して前記蒸気層形成部を形成する工程を含み、
前記蒸気層形成部移動工程に並行して、前記基板の上面に光を照射して、前記基板の上面において前記基板の回転方向に関して前記第1の加熱領域と少なくとも一部が重複しない第2の加熱領域を加熱して、前記蒸気層形成部への加熱を補助する補助加熱工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記蒸気層形成部移動工程が、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域の少なくとも一方を前記基板の外周に向けて移動させる工程を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記蒸気層形成部移動工程が、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域の双方を前記基板の外周に向けて移動させる工程を含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記蒸気層形成部移動工程が、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された吹き付け領域に向けて気体を吹き付ける吹き付け工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記吹き付け領域が、前記加熱領域に対し、前記基板の回転方向の上流側に設定されている、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記吹き付け領域が、前記加熱領域よりも小さく、
前記吹き付け領域の全域が、前記加熱領域の外縁の内側に配置されている、請求項5または6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記吹き付け工程に並行して、前記吹き付け領域を、前記基板の外周に向けて移動させる吹き付け領域移動工程をさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記吹き付け工程が、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された第1の吹き付け領域に向けて気体を吹き付ける第1の吹き付け工程と、前記第1の吹き付け工程に並行して、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定され、前記基板の回転方向に関して前記第1の吹き付け領域と離隔する第2の吹き付け領域に向けて気体を吹き付ける第2の吹き付け工程と、を含み、
前記吹き付け領域移動工程が、前記第1の吹き付け工程に並行して前記第1の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第1の吹き付け領域移動工程と、前記第2の吹き付け工程に並行して前記第2の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第2の吹き付け領域移動工程と、を含む、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板回転工程に並行して、前記蒸気層形成部の前記液膜に気体を吹き付けて前記処理液を部分的に排除することによって前記蒸気層形成部の前記液膜に前記穴を形成する工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記加熱領域に照射される光が前記処理液を透過可能な波長を有している、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
表面にパターンが形成された基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持されている前記基板を、当該基板の中央部を通る鉛直な回転軸線回りに回転させるための基板回転ユニットと、
処理液ノズルを有し、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に、前記処理液ノズルから処理液を供給するための処理液供給ユニットと、
発光部を有し、上方から見て前記基板保持ユニットに保持されている基板よりも小さく設けられ、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に向けて前記発光部から光を照射するためのランプヒータと、
前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面において前記ランプヒータによる光の照射により加熱される加熱領域を、前記基板の上面内で移動させるための加熱領域移動ユニットと、
気体吐出口を有する気体ノズルを有し、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に、前記気体ノズルから気体を吹き付けるための吹き付けユニットと、
前記基板回転ユニット、前記処理液供給ユニット、前記ランプヒータ、前記加熱領域移動ユニットおよび前記吹き付けユニットを制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置が、前記処理液供給ユニットによって前記表面である前記基板の上面に前記処理液を供給して、前記処理液を含む液膜を、前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記基板の上面の中央部に前記ランプヒータによって前記液膜の上方から光を照射して前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない加熱領域を加熱して、前記加熱領域に接する前記処理液を蒸発させることによって、前記基板の上面の中央部に、前記処理液と前記基板の上面との間に蒸気層が形成されかつ前記蒸気層上に前記液膜が保持された蒸気層形成部を形成する蒸気層形成部形成工程と、前記蒸気層形成部が上面の中央部に形成されている前記基板を、前記基板回転ユニットによって、前記回転軸線回りに回転させることにより、前記蒸気層形成部を、前記液膜に形成された穴を内側に有する円環状にする基板回転工程と、前記基板回転工程に並行して、前記加熱領域移動ユニットによって前記基板の外周に向けて前記加熱領域を移動させて前記蒸気層形成部の外周を拡げ、かつ前記吹き付けユニットおよび前記基板回転ユニットの少なくとも一方によって前記穴を拡げることにより、円環状の前記蒸気層形成部を前記基板の外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程と、を実行する、基板処理装置。
【請求項13】
前記ランプヒータが、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に向けて光を照射するための第1のランプヒータと、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に向けて光を照射するための第2のランプヒータと、を含み、
前記制御装置が、前記蒸気層形成部形成工程において、前記第1のランプヒータによって前記基板の上面の中央部に光を照射して、前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない第1の加熱領域を加熱して前記蒸気層形成部を形成する工程を実行し、
前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程に並行して、前記第2のランプヒータによって前記基板の上面に光を照射して、前記基板の上面において前記基板の回転方向に関して前記第1の加熱領域と少なくとも一部が重複しない第2の加熱領域を加熱して、前記蒸気層形成部への加熱を補助する補助加熱工程をさらに実行する、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記加熱領域移動ユニットが、
前記第1の加熱領域を、前記基板の上面内で移動させるための第1の加熱領域移動ユニットと、
前記第2の加熱領域を、前記基板の上面内で移動させるための第2の加熱領域移動ユニットと、を含み、
前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程において、前記第1の加熱領域移動ユニットによって前記第1の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程および前記第2の加熱領域移動ユニットによって前記第2の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程の少なくとも一方を実行する、請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程において、前記第1の加熱領域移動ユニットによって前記第1の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程および前記第2の加熱領域移動ユニットによって前記第2の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程の双方を実行する、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程において、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された吹き付け領域に向けて前記吹き付けユニットによって気体を吹き付ける吹き付け工程を実行する、請求項12~15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記吹き付け領域が、前記加熱領域に対し、前記基板の回転方向の上流側に設定されている、請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記吹き付け領域が、前記加熱領域よりも小さく、
前記吹き付け領域の全域が、前記加熱領域の外縁の内側に配置されている、請求項16または17に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記吹き付け領域を、前記基板の上面内で移動させるための吹き付け領域移動ユニットをさらに含み、
前記制御装置が、前記吹き付け工程に並行して、前記吹き付け領域を、前記吹き付け領域移動ユニットによって移動させる吹き付け領域移動工程をさらに実行する、請求項16~18のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記吹き付けユニットが、前記基板の上面に設定された第1の吹き付け領域に気体を吹き付ける第1の吹き付けユニットと、前記第1の吹き付けユニットとは別の第2の吹き付けユニットであって、前記基板の上面に設定された第2の吹き付け領域に気体を吹き付ける第2の吹き付けユニットと、を含み、
前記吹き付け領域移動ユニットが、前記第1の吹き付け領域を前記基板の上面内で移動させるための第1の吹き付け領域移動ユニットと、前記第2の吹き付け領域を前記基板の上面内で移動させるための第2の吹き付け領域移動ユニットと、を含み、
前記制御装置が、前記吹き付け工程において、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された前記第1の吹き付け領域に向けて、前記第1の吹き付けユニットによって気体を吹き付ける第1の吹き付け工程と、前記第1の吹き付け工程に並行して、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定され、前記基板の回転方向に関して前記第1の吹き付け領域と離隔する前記第2の吹き付け領域に向けて、前記第2の吹き付けユニットによって気体を吹き付ける第2の吹き付け工程と、を実行し、
前記制御装置が、前記吹き付け領域移動工程において、前記第1の吹き付け工程に並行して、前記第1の吹き付け領域移動ユニットによって前記第1の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第1の吹き付け領域移動工程と、前記第2の吹き付け工程に並行して、前記第2の吹き付け領域移動ユニットによって前記第2の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第2の吹き付け領域移動工程と、を実行する、請求項19に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記制御装置が、前記基板回転工程に並行して、前記吹き付けユニットによって前記蒸気層形成部の前記液膜に気体を吹き付けて前記処理液を部分的に排除することによって前記蒸気層形成部の前記液膜に前記穴を形成する工程をさらに実行する、請求項12~20のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項22】
前記ランプヒータから前記基板に照射される光が、前記処理液を透過可能な波長を有している、請求項12~21のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項23】
前記発光部および前記気体吐出口が水平方向に同伴移動可能に設けられている、請求項12~22のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項24】
前記気体ノズルが、前記ランプヒータに取り付けられかつ当該ランプヒータに支持されており、
前記気体吐出口が、下方から見て前記発光部に隣り合っている、請求項23に記載の基板処理装置。
【請求項25】
前記気体ノズルが前記ランプヒータに一体化されており、
前記発光部が、下方から見て前記気体吐出口の周囲を環状に取り囲んでいる、請求項23に記載の基板処理装置。
【請求項26】
前記気体ノズルおよび前記ランプヒータが互いに異なるハウジングを有し、前記気体ノズルが、前記ランプヒータではなく、前記ランプヒータを支持するアームに支持されている、請求項23に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板の例には、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やFPDなどの製造工程では、半導体ウエハやFPD用ガラス基板などの基板に対して必要に応じた処理が実行される。
従来から、パターンの倒壊を抑制しながら基板を乾燥する手法として、種々の手法が提案されている。
下記特許文献1の先行技術では、リンス液によるリンス処理の後、チャックピンによって水平に保持されている基板上のリンス液が有機溶剤に置換され、基板の上面の全域を覆う有機溶剤の液膜が形成される。そして、水平に保持されている基板の下方において高温状態にあるホットプレートを上昇させ、ホットプレートによって基板を持ち上げる。これにより、チャックピンからホットプレートに基板が受け渡され、ホットプレートによって基板が支持される。この状態において、ホットプレートが基板の下面に接しているので、基板は、ホットプレートの上で静止しながらホットプレートからの輻射熱または伝熱によって加熱される。
【0003】
基板の加熱により、基板の上面に接触する有機溶剤が蒸発して基板の上面上にパターン高さよりも厚い蒸気層を形成し、この蒸気層の上に有機溶剤の液膜が保持される。その状態から、有機溶剤の液膜に気体を吹き付けて、有機溶剤の液膜に穴が開けられる。そして、その穴を広げることにより、有機溶剤の液膜が蒸気層上で移動し、基板の外周に向けて移動する。これにより、気液界面がパターンに接しない状態で液膜を排液できるので、有機溶剤の表面張力に起因するパターンの倒壊を抑制しながら、基板の上面を乾燥できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-183634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、ホットプレートによって基板を支持しながら基板を静止状態で加熱するので、乾燥時において、基板の回転による遠心力を基板に働かせることができない。そのため、基板の上面に液残りが発生するおそれがある。また、特許文献1に記載の装置では、チャックピンとホットプレートとの間で基板を受け渡すために、ホットプレートの外径が基板径よりも小さく設定されている。そのため、乾燥時において、基板の外周部を良好に加熱できない。それらにより、基板の上面の外周部に有機溶剤の液体が残留するおそれがある。乾燥処理後の基板の上面の外周部に有機溶剤の液体が残留していると、基板の外周部における欠陥(外周部欠陥)が発生するおそれがある。
【0006】
また、特許文献1に記載の手法では、基板に対し加熱処理を行っていないときでも、ホットプレートは退避位置において高温状態に保たれている。そのため、乾燥の前に実施される処理(たとえば薬液を用いた薬液処理)がホットプレートからの輻射熱の熱影響を受けるおそれがある。
そのため、本願発明者らは、ホットプレートを用いることなく基板を加熱し、パターンの倒壊を抑制することを検討している。
【0007】
そこで、この発明の目的の一つは、パターンの倒壊を抑制できる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、水平に保持された基板の上面であってパターンが形成された上面に処理液を供給して、前記処理液を含む液膜を、前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記基板の上面の中央部に前記液膜の上方から光を照射して前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない加熱領域を加熱して、前記加熱領域に接する前記処理液を蒸発させることによって、前記基板の上面の中央部に、前記処理液と前記基板の上面との間に蒸気層が形成されかつ前記蒸気層上に前記液膜が保持された蒸気層形成部を形成する蒸気層形成部形成工程と、前記蒸気層形成部が上面の中央部に形成されている前記基板を、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線回りに回転させることにより、前記蒸気層形成部を、前記液膜に形成された穴を内側に有する円環状にする基板回転工程と、前記基板回転工程に並行して、前記基板の外周に向けて前記加熱領域を移動させて前記蒸気層形成部の外周を拡げ、かつ前記穴を拡げることにより、円環状の前記蒸気層形成部を前記基板の外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、基板の上面の中央部に液膜の上方から光が照射されることにより、基板の上面の中央部に設定されかつ基板の上面の外周部に設定されていない加熱領域が加熱される。これにより、加熱領域に接する処理液が蒸発して蒸気層が形成され、その蒸気層の上に液膜が保持される。すなわち、処理液と基板の上面との間に蒸気層が形成されかつ蒸気層上に液膜が保持された蒸気層形成部が、基板の上面の中央部に形成される。蒸気層形成部において、液膜が基板の上面から浮上している。
【0010】
その状態で基板が回転することにより穴が形成され、蒸気層形成部の液膜と穴との間、すなわち、蒸気層形成部の液膜の内周に気液界面が形成される。また、基板の回転により、蒸気層形成部が円環状をなす。そして、円環状の蒸気層形成部の外周が拡げられかつ穴が拡げられることにより、円環状の蒸気層形成部が基板の外周に向かって移動する。円環状の蒸気層形成部の移動によって、蒸気層形成部の液膜の内周にある気液界面をパターンに接触させることなく、蒸気層形成部の液膜を移動させることができる。蒸気層形成部の内周が基板の外周まで拡げられることにより、基板の上面の全域から、液膜を良好に排除できる。基板上のパターンに及ぼす処理液の表面張力を抑制しながら基板上から液膜を排除できるので、パターンの倒壊を抑制または防止できる。
【0011】
また、基板を回転させながら蒸気層形成部を移動させるので、基板の外周部に達した蒸気層形成部に対し、基板の回転による遠心力を働かせることが可能である。基板の外周部に働く遠心力によって基板の外周部における処理液の残留を抑制または防止できるから、基板の外周部における欠陥の発生を抑制または防止できる。
また、光の照射開始により基板への加熱が開始されるため、光を照射する以外の期間において基板が加熱されない。そのため、基板の加熱を要しない処理における熱影響を排除または低減できる。
【0012】
また、基板の上面の中央部に加熱領域を設けることにより基板の上面の中央部に蒸気層形成部を形成し、その蒸気層形成部を基板の外周に向けて移動させる。加熱領域が基板の上面の一部のみに設定されているので、基板の上面の全域を加熱する場合と比較して加熱領域が小面積で足りる。そのため、加熱領域の全域を良好に加熱することが可能である。これにより、蒸気層形成部の全域において液膜を良好に浮上させることが可能である。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記蒸気層形成部形成工程が、前記基板の上面の中央部に光を照射して、前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない第1の加熱領域を加熱して前記蒸気層形成部を形成する工程を含む。そして、前記基板処理方法が、前記蒸気層形成部移動工程に並行して、前記基板の上面に光を照射して、前記基板の上面において前記基板の回転方向に関して前記第1の加熱領域と少なくとも一部が重複しない第2の加熱領域を加熱して、前記蒸気層形成部への加熱を補助する補助加熱工程をさらに含む。
【0014】
この方法によれば、第1の加熱領域が加熱されることにより、基板の上面の中央部に蒸気層形成部が形成される。基板の外周部では基板の周速が速いため、第1の加熱領域を基板の外周部に配置すると、光の照射によって基板に付与される単位面積当たりの熱量が低下する。蒸気層形成部を基板の外周に向けて移動させるべく、第1の加熱領域を基板の外周に向けて移動させると、基板に付与される単位面積当たりの熱量が低下して、蒸気層形成部の全域における液膜の浮上を実現できないおそれがある。蒸気層形成部のうち少なくとも内周全域において液膜が浮上していないと、蒸気層形成部の液膜の内周にある気液界面がパターンに接触して、パターンが倒壊するおそれがある。
【0015】
この方法では、光の照射により、基板の回転方向に関して少なくとも一部が重複しない第1の加熱領域および第2の加熱領域が加熱される。すなわち、加熱領域の合計面積を増やすことができる。これにより、基板に付与される単位面積当たりの熱量を高く保つことができる。ゆえに、蒸気層形成部が基板の外周に向けて移動している場合であっても、蒸気層形成部の全域において液膜が浮上している状態を保つことが可能である。蒸気層形成部の内周全域において液膜を浮上させながら蒸気層形成部を移動させるので、気液界面がパターンに接触してパターンが倒壊することを確実に防止できる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記蒸気層形成部移動工程が、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域の少なくとも一方を前記基板の外周に向けて移動させる工程を含む。
この方法によれば、第1の加熱領域および第2の加熱領域の少なくとも一方が基板の外周に向けて移動することにより、蒸気層形成部の外周が拡げられる。これにより、蒸気層形成部の外周を良好に拡げることができる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記蒸気層形成部移動工程が、前記第1の加熱領域および前記第2の加熱領域の双方を前記基板の外周に向けて移動させる工程を含む。
この方法によれば、第1の加熱領域および第2の加熱領域の双方が基板の外周に向けて移動することにより、蒸気層形成部の外周が拡げられる。この場合、第1の加熱領域および第2の加熱領域の双方を加熱することによって蒸気層形成部を加熱しながら、その蒸気層形成部を基板の外周に向けて移動できる。これにより、蒸気層形成部の全域において液膜が浮上している状態を保ちながら、蒸気層形成部の外周を拡げることができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記蒸気層形成部移動工程が、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された吹き付け領域に向けて気体を吹き付ける吹き付け工程を含む。
この方法によれば、蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された吹き付け領域に気体が吹き付けられることにより、蒸気層形成部の内周が基板の外周に向けて押される。蒸気層形成部では、基板上の液膜に働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、気体の流れによる小さな押し力によって、蒸気層形成部の内周、すなわち穴の外縁を、基板の外周に向けてスムーズに移動させることができる。これにより、穴をスムーズに拡げることができる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記吹き付け領域が、前記加熱領域に対し、前記基板の回転方向の上流側に設定されている。
この方法によれば、吹き付け領域が加熱領域に対し基板の回転方向の上流側に設定されているので、発生する気流の影響を最小限に抑制しながら、蒸気層形成部の内周に気体を吹き付けることができる。これにより、蒸気層形成部の内周を良好に拡大させることができる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記吹き付け領域が、前記加熱領域よりも小さく、前記吹き付け領域の全域が、前記加熱領域の外縁の内側に配置されている。
この方法によれば、吹き付け領域の全域が加熱領域の外縁の内側に配置されているので、加熱領域の加熱によって形成された蒸気層形成部に確実に気体を吹き付けることができる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記吹き付け工程に並行して、前記吹き付け領域を、前記基板の外周に向けて移動させる吹き付け領域移動工程をさらに含む。
この方法によれば、吹き付け領域を移動させることにより、蒸気層形成部の内周が基板の外周に向けて押される。吹き付け領域への吹き付けを行いながら吹き付け領域を移動させるので、蒸気層形成部の内周位置、すなわち穴の外縁位置を高精度に制御できる。これにより、穴の外縁を高精度に制御しながら、穴を拡げることができる。
【0022】
この発明の一実施形態では、前記吹き付け工程が、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された第1の吹き付け領域に向けて気体を吹き付ける第1の吹き付け工程と、前記第1の吹き付け工程に並行して、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定され、前記基板の回転方向に関して前記第1の吹き付け領域と離隔する第2の吹き付け領域に向けて気体を吹き付ける第2の吹き付け工程と、を含む。そして、前記吹き付け領域移動工程が、前記第1の吹き付け工程に並行して前記第1の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第1の吹き付け領域移動工程と、前記第2の吹き付け工程に並行して前記第2の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第2の吹き付け領域移動工程と、を含む。
【0023】
この方法によれば、蒸気層形成部の移動において、第1の吹き付け領域および第2の吹き付け領域の双方が基板の外周に向けて移動される。基板の回転方向に離隔する複数の領域において気体が吹き付けられることにより穴が拡大するので、蒸気層形成部の内周位置、すなわち穴の外縁位置をより一層高精度に制御しながら、穴を拡げることができる。
また、この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板回転工程に並行して、前記蒸気層形成部の前記液膜に気体を吹き付けて前記処理液を部分的に排除することによって前記蒸気層形成部の前記液膜に前記穴を形成する工程をさらに含む。
【0024】
この方法によれば、蒸気層形成部の液膜に気体が吹き付けられることにより、蒸気層形成部の液膜から処理液が部分的に排除されて穴が形成される。気体の吹き付けにより穴を確実に形成することができる。
また、この発明の一実施形態では、前記加熱領域に照射される光が前記処理液を透過可能な波長を有している。この場合、光を、前記基板の上面に良好に届かせることができる。処理液が有機溶剤(たとえばIPA(isopropyl alcohol))である場合、このような波長として、200nm~1100nmを挙げることができる。
【0025】
また、この発明は、表面にパターンが形成された基板を水平に保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板を、当該基板の中央部を通る鉛直な回転軸線回りに回転させるための基板回転ユニットと、処理液ノズルを有し、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に、前記処理液ノズルから処理液を供給するための処理液供給ユニットと、発光部を有し、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に向けて前記発光部から光を照射するためのランプヒータと、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面において前記ランプヒータによる光の照射により加熱される加熱領域を、前記基板の上面内で移動させるための加熱領域移動ユニットと、気体吐出口を有する気体ノズルを有し、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に、前記気体ノズルから気体を吹き付けるための吹き付けユニットと、前記基板回転ユニット、前記処理液供給ユニット、前記ランプヒータ、前記加熱領域移動ユニットおよび前記吹き付けユニットを制御する制御装置と、を含み、前記制御装置が、前記処理液供給ユニットによって前記表面である前記基板の上面に前記処理液を供給して、前記処理液を含む液膜を、前記基板の上面に形成する液膜形成工程と、前記基板の上面の中央部に前記ランプヒータによって前記液膜の上方から光を照射して前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない加熱領域を加熱して、前記加熱領域に接する前記処理液を蒸発させることによって、前記基板の上面の中央部に、前記処理液と前記基板の上面との間に蒸気層が形成されかつ前記蒸気層上に前記液膜が保持された蒸気層形成部を形成する蒸気層形成部形成工程と、前記蒸気層形成部が上面の中央部に形成されている前記基板を、前記基板回転ユニットによって、前記回転軸線回りに回転させることにより、前記蒸気層形成部を、前記液膜に形成された穴を内側に有する円環状にする基板回転工程と、前記基板回転工程に並行して、前記加熱領域移動ユニットによって前記基板の外周に向けて前記加熱領域を移動させて前記蒸気層形成部の外周を拡げ、かつ前記吹き付けユニットおよび前記基板回転ユニットの少なくとも一方によって前記穴を拡げることにより、前記蒸気層形成部を前記基板の外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程と、を実行する、基板処理装置を提供する。
【0026】
この発明の一実施形態では、前記ランプヒータが、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に向けて光を照射するための第1のランプヒータと、前記基板保持ユニットに保持されている前記基板の上面に向けて光を照射するための第2のランプヒータと、を含む。そして、前記制御装置が、前記制御装置が、前記蒸気層形成部形成工程において、前記第1のランプヒータによって前記基板の上面の中央部に光を照射して、前記基板の上面の中央部に設定されかつ前記基板の上面の外周部に設定されていない第1の加熱領域を加熱して前記蒸気層形成部を形成する工程を実行する。そして、前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程に並行して、前記第2のランプヒータによって前記基板の上面に光を照射して、前記基板の上面において前記基板の回転方向に関して前記第1の加熱領域と少なくとも一部が重複しない第2の加熱領域を加熱して、前記蒸気層形成部への加熱を補助する補助加熱工程をさらに実行する。
【0027】
この発明の一実施形態では、前記加熱領域移動ユニットが、前記第1の加熱領域を、前記基板の上面内で移動させるための第1の加熱領域移動ユニットと、前記第2の加熱領域を、前記基板の上面内で移動させるための第2の加熱領域移動ユニットと、を含む。そして、前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程において、前記第1の加熱領域移動ユニットによって前記第1の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程および前記第2の加熱領域移動ユニットによって前記第2の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程の少なくとも一方を実行する。
【0028】
この発明の一実施形態では、前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程において、前記第1の加熱領域移動ユニットによって前記第1の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程および前記第2の加熱領域移動ユニットによって前記第2の加熱領域を前記基板の外周に向けて移動させる工程の双方を実行する。
この発明の一実施形態では、前記制御装置が、前記蒸気層形成部移動工程において、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された吹き付け領域に向けて前記吹き付けユニットによって気体を吹き付ける吹き付け工程を実行する。
【0029】
この発明の一実施形態では、前記吹き付け領域が、前記加熱領域に対し、前記基板の回転方向の上流側に設定されている。
この発明の一実施形態では、前記吹き付け領域が、前記加熱領域よりも小さく、前記吹き付け領域の全域が、前記加熱領域の外縁の内側に配置されている。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記吹き付け領域を、前記基板の上面内で移動させるための吹き付け領域移動ユニットをさらに含む。そして、前記制御装置が、前記吹き付け工程に並行して、前記吹き付け領域を、前記吹き付け領域移動ユニットによって移動させる吹き付け領域移動工程をさらに実行する。
【0030】
この発明の一実施形態では、前記吹き付けユニットが、前記基板の上面に設定された第1の吹き付け領域に気体を吹き付ける第1の吹き付けユニットと、前記第1の吹き付けユニットとは別の第2の吹き付けユニットであって、前記基板の上面に設定された第2の吹き付け領域に気体を吹き付ける第2の吹き付けユニットと、を含む。また、前記吹き付け領域移動ユニットが、前記第1の吹き付け領域を前記基板の上面内で移動させるための第1の吹き付け領域移動ユニットと、前記第2の吹き付け領域を前記基板の上面内で移動させるための第2の吹き付け領域移動ユニットと、を含む。そして、前記制御装置が、前記吹き付け工程において、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定された前記第1の吹き付け領域に向けて、前記第1の吹き付けユニットによって気体を吹き付ける第1の吹き付け工程と、前記第1の吹き付け工程に並行して、前記蒸気層形成部の内周に対し内側に設定され、前記基板の回転方向に関して前記第1の吹き付け領域と離隔する前記第2の吹き付け領域に向けて、前記第2の吹き付けユニットによって気体を吹き付ける第2の吹き付け工程と、を実行する。また、前記制御装置が、前記吹き付け領域移動工程において、前記第1の吹き付け工程に並行して、前記第1の吹き付け領域移動ユニットによって前記第1の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第1の吹き付け領域移動工程と、前記第2の吹き付け工程に並行して、前記第2の吹き付け領域移動ユニットによって前記第2の吹き付け領域を前記基板の外周に向けて移動させる第2の吹き付け領域移動工程と、を実行する。
【0031】
また、この発明の一実施形態では、前記制御装置が、前記基板回転工程に並行して、前記吹き付けユニットによって前記蒸気層形成部の前記液膜に気体を吹き付けて前記処理液を部分的に排除することによって前記蒸気層形成部の前記液膜に前記穴を形成する工程をさらに実行する。
また、この発明の一実施形態では、前記加熱領域に照射される光が前記処理液を透過可能な波長を有している。
【0032】
また、この発明の一実施形態では、前記発光部および前記気体吐出口が、水平方向に同伴移動可能に設けられている。
この構成によれば、発光部および気体吐出口を、互いに一定の距離を保ちながら移動させることができる。そのため、発光部および気体吐出口をそれぞれ個別に移動させる場合と比較して、これらの個々の位置制御を良好に行うことができる。
【0033】
また、発光部および気体吐出口を1つのアームによって保持することも可能である。この場合、アームやそのアーム駆動機構の数を削減でき、コストダウンを図ることができる。
また、この発明の一実施形態では、前記気体ノズルが、前記ランプヒータに取り付けられかつ当該ランプヒータに支持されており、前記気体吐出口が、下方から見て前記発光部に隣り合っている。
【0034】
この構成によれば、気体吐出口が、下方から見て発光部に隣り合っているので、発光部によって加熱される加熱領域によって形成される円環状の蒸気層形成部の内周に、気体を吹き付けることが可能である。
また、この発明の一実施形態では、前記気体ノズルが前記ランプヒータに一体化されており、前記発光部が、下方から見て前記気体吐出口の周囲を環状に取り囲んでいる。
【0035】
この構成によれば、発光部が、下方から見て気体吐出口の周囲を環状に取り囲んでいるので、ランプヒータによる加熱領域の加熱によって形成された蒸気層形成部の外縁の内側に気体を吹き付けることが可能である。
また、この発明の一実施形態では、前記気体ノズルおよび前記ランプヒータが互いに異なるハウジングを有し、前記気体ノズルが、前記ランプヒータではなく、前記ランプヒータを支持するアームに支持されている。
【0036】
この構成によれば、アームやそのアーム駆動機構の数を削減でき、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A図1Aは、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
図1B図1Bは、前記基板処理装置を側方から見た模式図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図3図3は、図2に示すスピンベースおよびこれに関連する構成を上から見た模式図である。
図4図4は、図2に示す上面ヘッドの模式的な縦断面図である。
図5図5は、前記上面ヘッドを下から見た模式図である。
図6図6は、図2に示す第2のランプヒータの模式的な縦断面図である。
図7図7は、前記第2のランプヒータを下から見た模式図である。
図8図8は、図1Aに示す制御装置のハードウェアを示すブロック図である。
図9図9は、前記基板処理装置による処理対象の基板の表面を拡大して示す断面図である。
図10図10は、前記基板処理装置によって実行される第1の基板処理例について説明するための工程図である。
図11A-11B】図11A,11Bは、前記第1の基板処理例が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図11C-11D】図11C,11Dは、図11Bの次の状態を示す模式図である。
図11E-11F】図11E,11Fは、図11Dの次の状態を示す模式図である。
図12A-12B】図12A,12Bは、それぞれ図11B,11Cに示す状態の基板を上から見た模式図である。
図12C-12D】図12C,12Dは、それぞれ図11D,11Fに示す状態の基板を上から見た模式図である。
図13図13は、前記基板処理装置によって実行される第2の基板処理例について説明するための工程図である。
図14A-14B】図14A,14Bは、前記第2の基板処理例が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図14C-14D】図14C,14Dは、図14Bの次の状態を示す模式図である。
図15図15は、前記基板処理装置によって実行される第3の基板処理例について説明するための工程図である。
図16A-16B】図16A,16Bは、前記第3の基板処理例が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図16C図16Cは、図16Bの次の状態を示す模式図である。
図17図17は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図18図18は、図17に示す上面ヘッドを下から見た模式図である。
図19図19は、前記基板処理装置によって実行される第4の基板処理例について説明するための工程図である。
図20A-20B】図20A,20Bは、前記第4の基板処理例が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図20C-20D】図20C,20Dは、図20Bの次の状態を示す模式図である。
図20E-20F】図20E,20Fは、図20Dの次の状態を示す模式図である。
図21図21は、前記基板処理装置によって実行される第5の基板処理例について説明するための工程図である。
図22A-22B】図22A,22Bは、前記第5の基板処理例が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図22C-22D】図22C,22Dは、図22Bの次の状態を示す模式図である。
図23A-23B】図23A,23Bは、第5の基板処理例の変形例が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図23C図23Cは、図23Bの次の状態を示す模式図である。
図24図24は、この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図25図25は、図24に示すスピンベースおよびこれに関連する構成を上から見た模式図である。
図26図26は、前記基板処理装置によって実行される基板処理例について説明するための工程図である。
図27図27は、本発明に係る第1の変形例を説明するための模式的な底面図である。
図28図28は、本発明に係る第2の変形例を説明するための模式的な底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。図1Bは、基板処理装置1を側方から見た模式図である。
図1Aに示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCAを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCAと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボット(IR,CR)と、基板処理装置1を制御する制御装置3と、を備えている。
【0039】
搬送ロボットは、ロードポートLP上のキャリアCAに対して基板Wの搬入および搬出を行うインデクサロボットIRと、複数の処理ユニット2に対して基板Wの搬入および搬出を行うセンターロボットCRと、を含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送し、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、基板Wを支持するハンドH1を含み、インデクサロボットIRは、基板Wを支持するハンドH2を含む。
【0040】
複数の処理ユニット2は、平面視でセンターロボットCRの回りに配置された複数のタワーTWを形成している。図1Aは、4つのタワーTWが形成されている例を示している。センターロボットCRは、いずれのタワーTWにもアクセス可能である。図1Bに示すように、各タワーTWは、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2を含む。
【0041】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。図3は、スピンベース16およびこれに関連する構成を上から見た模式図である。図4は、図2に示す上面ヘッド30の模式的な縦断面図である。図5は、上面ヘッド30を下から見た模式図である。図6は、第2のランプヒータ72の模式的な縦断面図である。図7は、第2のランプヒータ72を下から見た模式図である。
【0042】
図2に示すように、処理ユニット2は、基板Wに処理液を供給するウェット処理ユニットである。処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1回りに回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wに向けて処理流体(処理液および処理ガス)を吐出する複数のノズル(31~35)と、基板Wを上方から光の照射によって加熱するための加熱ユニット(51,52)と、回転軸線A1回りにスピンチャック5を取り囲む筒状の処理カップ7と、を含む。
【0043】
図2に示すように、チャンバー4は、基板Wが通過する搬入搬出口11bが設けられた箱型の隔壁11と、搬入搬出口11bを開閉するシャッタ12と、を含む。FFU13(ファン・フィルター・ユニット)は、隔壁11の上部に設けられた送風口11aの上に配置されている。FFU13は、クリーンエア(フィルタによってろ過された空気)を送風口11aからチャンバー4の内部に常時供給する。チャンバー4内の気体は、処理カップ7の底部に接続された排気ダクト14を通じてチャンバー4から排除される。これにより、クリーンエアーのダウンフローがチャンバー4の内部に常時形成される。排気ダクト14に排除される排気の流量は、排気ダクト14内に配置された排気バルブ15の開度に応じて変更される。
【0044】
図2に示すように、スピンチャック5は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース16と、スピンベース16の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン17と、スピンベース16の中央部から回転軸線A1に沿って鉛直下方に延びるスピン軸18と、を含む。スピン軸18は、スピンモータ(基板回転ユニット)19によって、回転軸線A1回りに回転される。それにより、スピンベース16および複数のチャックピン17を回転させると、複数のチャックピン17が回転軸線A1回りに回転する。複数のチャックピン17は、スピンベース16の上面16uの外周部に、周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン17は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。複数のチャックピン17は、開状態において、基板Wの外周部の下面に接触して、基板Wを下方から支持する。
【0045】
チャックピン17には、チャックピン17を開閉駆動するためのチャックピン駆動ユニット20が結合されている。チャックピン駆動ユニット20は、たとえば、スピンベース16の内部に収容されたリンク機構と、スピンベース16の外に配置された駆動源と、を含む。駆動源は、電動モータを含む。チャックピン駆動ユニット20の具体的な構成例は、特開2008-034553号公報などに記載されている。
【0046】
また、スピンチャック5としては、把持式のものに限らず、たとえば、基板Wの裏面を真空吸着することにより、基板Wを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線回りに回転することにより、スピンチャック5に保持されている基板Wを回転させる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル31と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル32と、基板Wの上面に向けて、有機溶剤を吐出する有機溶剤ノズル(処理液ノズル)33と、基板Wの上面に向けて気体を吐出する第1の気体ノズル34と、基板Wの上面に向けて気体を吐出する第2の気体ノズル35と、を含む。
【0047】
薬液ノズル31は、薬液ノズル31に薬液を案内する薬液配管36に接続されている。薬液配管36に介装された薬液バルブ37が開かれると、薬液が、薬液ノズル31の吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル31から吐出される薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の処理液であってもよい。
【0048】
図2および図3の例では、薬液ノズル31は、移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2は、薬液ノズル31が先端部に取り付けられた第1のアーム40と、第1のアーム40を移動させることにより、薬液ノズル31を移動させる第1の移動装置39と、を含む。
図3に示すように、第1の移動装置39は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる回動軸線A2回りに第1のアーム40を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って薬液ノズル31を水平に移動させる。第1の移動装置39は、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、薬液ノズル31が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置(図3に示す位置)との間で、薬液ノズル31を移動させる。第1の移動装置39は、たとえば電動モータを含む。
【0049】
図2に示すように、リンス液ノズル32は、リンス液ノズル32にリンス液を案内するリンス液配管41に接続されている。リンス液配管41に介装されたリンス液バルブ42が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル32の吐出口から下方に連続的に吐出される。リンス液ノズル32から吐出されるリンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)のアンモニア水のいずれかであってもよい。
【0050】
図2および図3の例では、リンス液ノズル32は、移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2は、リンス液ノズル32が先端部に取り付けられた第2のアーム43と、第2のアーム43を移動させることにより、リンス液ノズル32を移動させる第2の移動装置44と、を含む。
図3に示すように、第2の移動装置44は、スピンチャック5の周囲で鉛直方向に延びる回動軸線A3回りに第2のアーム43を回動させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿ってリンス液ノズル32を移動させる。第2の移動装置44は、リンス液ノズル32から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、リンス液ノズル32が平面視でスピンチャック5の周囲に退避した退避位置(図3に示す位置)との間で、リンス液ノズル32を移動させる。第2の移動装置44は、電動モータを含む。
【0051】
図2に示すように、有機溶剤ノズル33は、有機溶剤ノズル33に有機溶剤を案内する有機溶剤配管45に接続されている。有機溶剤配管45に介装された有機溶剤バルブ46が開かれると、有機溶剤が、有機溶剤ノズル33の有機溶剤吐出口33aから下方に連続的に吐出される。有機溶剤ノズル33から吐出される有機溶剤は、たとえばIPA(isopropyl alcohol)である。使用可能な有機溶剤として、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、EG(エチレングリコール)、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブチルアルコールおよび2-ブタノールを例示できる。また、有機溶剤としては、単体成分のみからなるものだけでなく、他の成分と混合した液体も使用できる。有機溶剤ノズル33、有機溶剤配管45および有機溶剤バルブ46によって、有機溶剤供給ユニット(処理液供給ユニット)が構成されている。有機溶剤ノズル33は、この実施形態では、後述する第1のランプヒータ52に一体化されている。
【0052】
第1の気体ノズル34は、第1の気体ノズル34に気体を案内する第1の気体配管47に接続されている。第1の気体配管47に介装された第1の気体バルブ48が開かれると、気体の流量を変更する第1の流量調整バルブ49の開度に対応する流量で、第1の気体ノズル34の第1の気体吐出口34aから下方に気体が連続的に吐出される。第1の気体ノズル34に供給される気体は、窒素ガス等の不活性ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外の気体であってもよい。第1の気体ノズル34、第1の気体配管47、第1の気体バルブ48および第1の流量調整バルブ49によって、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に気体を吹き付けるための第1の吹き付けユニットが構成されている。第1の気体ノズル34は、後述する第1のランプヒータ52に取り付けられ、かつ第1のランプヒータ52に支持されている。
【0053】
第2の気体ノズル35は、第2の気体ノズル35に気体を案内する第2の気体配管97に接続されている。第2の気体配管97に介装された第2の気体バルブ98が開かれると、気体の流量を変更する第2の流量調整バルブ99の開度に対応する流量で、第2の気体ノズル35の第2の気体吐出口35aから下方に気体が連続的に吐出される。第2の気体ノズル35に供給される気体は、窒素ガス等の不活性ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外の気体であってもよい。第2の気体ノズル35、第2の気体配管97、第2の気体バルブ98および第2の流量調整バルブ99によって、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に気体を吹き付けるための第2の吹き付けユニットが構成されている。第2の気体ノズル35は、後述する第2のランプヒータ72に取り付けられ、かつ第2のランプヒータ72に支持されている。
【0054】
加熱ユニットは、第1の加熱ユニット51と、第2の加熱ユニット71と、を含む。
第1の加熱ユニット51は、第1のランプヒータ52と、第1のランプヒータ52を移動させる第1のヒータ移動ユニット(63)と、を含む。
図4に示すように、第1のランプヒータ52は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光を基板Wに向けて照射して、輻射によって基板Wを加熱する輻射加熱ヒータである。第1のランプヒータ52は、第1のランプ54と、第1のランプ54を収容する第1のランプハウジング55と、第1のランプハウジング55の内部を冷却するための第1のヒートシンク56と、を含む。
【0055】
図4および図5に示すように、第1のランプ54は、円板状の第1のランプ基板57と、第1のランプ基板57の下面に実装された複数(図5の例では、52個)の第1の光源58と、を含む。個々の第1の光源58は、たとえばLED(発光ダイオード)である。図5に示すように、複数の第1の光源58は、第1のランプ基板57の下面の全域に分散して配置されている。図5の例では、52個の第1の光源58が、3重円環状に並べられている。第1のランプ基板57における第1の光源58の配置密度は略一様である。複数の第1の光源58によって、水平方向に広がりを有する円環状の第1の発光部54Aが構成されている。第1の発光部54Aは、下方から見て有機溶剤吐出口33aの周囲を環状に取り囲んでいる。
【0056】
個々の第1の光源58から発せられる光は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む。個々の第1の光源58から発せられる光の波長は、200nm~1100nmの範囲の波長、より好ましくは、390nm~800nmの範囲の波長である。
図4に示すように、第1のランプハウジング55は、円筒状の第1のハウジング本体59と、円板状の第1の底壁60と、を含む。第1のハウジング本体59は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐薬性を有する材料で形成されている。第1の底壁60は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。第1のランプハウジング55は、平面視で基板Wよりも小さい。
【0057】
第1のヒートシンク56は、第1のヒートシンク本体61と、第1のヒートシンク本体61に冷却流体を供給して、第1のヒートシンク本体61を冷却する第1の冷却機構62と、を含む。第1のヒートシンク本体61は、高い伝熱特性を有する金属(たとえばアルミニウム、鉄、銅等)を用いて容器状に所定の形状に形成されている。第1の冷却機構62は、冷却流体の供給源62aと、供給源62aから冷却流体を第1のヒートシンク本体61に供給する冷却流体供給配管62bと、第1のヒートシンク本体61に供給された冷却流体を供給源62aに戻す冷却流体戻り配管62cと、を含む。
【0058】
図4の例では、第1の冷却機構62として、冷却水等の冷却液体を冷却流体として第1のヒートシンク本体61に供給している。すなわち、第1のヒートシンク56は、水冷式のヒートシンクである。複数の第1の光源58の発光に伴い、第1のランプ54およびその周囲が加熱される。しかしながら、第1のヒートシンク56により第1のランプハウジング55内が冷却されるので、第1のランプハウジング55内が過度に昇温することを防止できる。第1のヒートシンク56において、冷却流体として冷却気体が用いられてもよい。
【0059】
図3に示すように、処理ユニット2は、第1のランプヒータ52が先端部に取り付けられた第3のアーム64をさらに備えている。第1のヒータ移動ユニットは、第1のランプヒータ52を移動させるべく、第3のアーム64を移動させる第3の移動装置(第1の加熱領域移動ユニット、第1の吹き付け領域移動ユニット)63、を含む。具体的には、第3の移動装置63は、スピンチャック5の周囲で上下方向に延びる回動軸線A4回りに第3のアーム64を回動させる。第3の移動装置63は、電動モータを含む。
【0060】
第3の移動装置63は、第1のランプヒータ52を所定の高さで保持している。第3の移動装置63は、回動軸線A4回りに第3のアーム64を回動させることにより、第1のランプヒータ52を水平に移動させる。第3の移動装置63が、第1のランプヒータ52を鉛直方向に移動可能な構成であってもよい。具体的には、第3の移動装置63が、第3のアーム64に結合されており、第3のアーム64を昇降させるアーム移動ユニットを備えていてもよい。
【0061】
第1のランプヒータ52は、基板Wの上面に、基板Wの上面を覆う処理液の液膜LF(有機溶剤の液膜)が形成されている状態で使用される。
図4に示すように、第1のランプ54が発光すると、すなわち複数の第1の光源58が発光すると、第1のランプ54から発せられた光(近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光)は、第1のランプハウジング55を透過し、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面内の第1の照射領域R1に照射される。前述のように有機溶剤としてIPAが採用されている。IPAは、200nm~1100nmの波長の光を略全て透過させる。第1のランプ54から発せられた光の波長が200nm~1100nm(より好ましくは、390nm~800nm)であるため、第1のランプ54から放出された光は、液膜LFに吸収されずに、液膜LFを透過する。そのため、第1のランプハウジング55の外表面から放射された光は、液膜LFを透過し、第1の照射領域R1に照射される。これにより、基板Wの上面(基板Wの表面Wa)において第1の照射領域R1およびその周囲の部分(以下、「第1の加熱領域RH1」という。)が輻射により加熱され、昇温する。基板Wの表面Wa(図9参照)にはパターンP1(図9参照)が形成されているので、昇温する基板Wの表面Waからの伝熱によりパターンP1が温められ、昇温する。第1の加熱領域RH1に形成されているパターンP1が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温することにより、第1の加熱領域RH1に接する有機溶剤が温められ、この有機溶剤が蒸発する。
【0062】
この状態において、図3に示すように、第3の移動装置63は、回動軸線A4回りに第3のアーム64を回動させることにより、第1のランプヒータ52を水平に移動させる。これにより、第1の加熱領域RH1が基板Wの上面内で移動する。
図4に示すように、第1のランプヒータ52に有機溶剤ノズル33が一体化されている。すなわち、第1のランプヒータ52および有機溶剤ノズル33が、上面ヘッド30に含まれている。上面ヘッド30は、第1のランプヒータ52に、有機溶剤ノズル33が一体化された構成を有している。上面ヘッド30は、処理液としての有機溶剤を吐出する処理液ノズルとしての機能と、ランプヒータとしての機能と、の双方を備えている。また、上面ヘッド30には、第1の気体ノズル34が取り付けられている。
【0063】
上面ヘッド30は、ハウジングとして、第1のランプハウジング55を含む。第1のランプハウジング55の内部を有機溶剤ノズル33が鉛直方向に挿通している。また、第1の気体ノズル34が、第1のランプハウジング55の外周55aに鉛直方向に沿う姿勢で取り付けられている。
第1のヒートシンク56によって、有機溶剤ノズル33と第1のランプ54とが断熱されており、そのため、有機溶剤ノズル33を流れる有機溶剤は、第1のランプ54からの熱影響を最低限に抑えられている。
【0064】
図3に示すように、第1の気体ノズル34は、第1のランプヒータ52に対し、第3のアーム64の先端側に配置されている。図5に示すように、第1の気体ノズル34の第1の気体吐出口34aは、下方から見て、第1のランプヒータ52の第1の発光部54Aに隣接している。
図3に二点鎖線で示すように、第1のランプヒータ52が基板Wの上面の外周部に対応して配置されている場合において、第1の気体ノズル34が、第1のランプヒータ52に対し基板Wの回転方向Rの上流側に配置されている。すなわち、基板Wの上面において、第1の気体ノズル34からの気体が吹き付けられる第1の吹き付け領域RB1(図11E等参照)が、第1のランプヒータ52から光の照射によって加熱される第1の加熱領域RH1に対し、基板Wの回転方向Rの上流側に設定されている。
【0065】
図2に示すように、第2の加熱ユニット71は、第2のランプヒータ72と、第2のランプヒータ72を移動させる第2のヒータ移動ユニット(39)と、を含む。
図6に示すように、第2のランプヒータ72は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光を基板Wに向けて照射して、輻射によって基板Wを加熱する輻射加熱ヒータである。第2のランプヒータ72は、第2のランプ74と、第2のランプ74を収容する第2のランプハウジング75と、第2のランプハウジング75の内部を冷却するための第2のヒートシンク76と、を含む。また、第2の気体ノズル35が、第2のランプハウジング75の外周75aに鉛直方向に沿う姿勢で取り付けられている。
【0066】
第2のランプ74は、円板状の第2のランプ基板77と、第2のランプ基板77の下面に実装された複数(図7の例では、6個)の第2の光源78と、を含む。個々の第2の光源78は、200nm~1100nmの範囲の波長の光(近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光)を発する。個々の第2の光源78は、たとえばLEDである。図7に示すように、複数の第2の光源78は、第2のランプ基板77の下面に配置されている。図7の例では、6個の第2の光源78が、第1のアーム40の延びる方向に3つずつ2列で並べられている。第2のランプ基板77における第2の光源78の配置密度は略一様であり、第1の光源58の配置密度と略同等である。第2のランプ基板77は、次に述べる第2の底壁80によって連結具90を介して下方から支持されている。複数の第2の光源78によって、水平方向に広がりを有する第2の発光部74Aが構成されている。第2の発光部74Aは、第1の発光部54Aよりも小さい。
【0067】
個々の第2の光源78から発せられる光は、近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む。個々の第2の光源78から発せられる光の波長は、200nm~1100nmの範囲の波長、より好ましくは、390nm~800nmの範囲の波長である。
図6に示すように、第2のランプハウジング75は、略角筒状の第2の側壁79と、略長方形状の第2の底壁80と、を含む。第2の側壁79は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐薬性を有する材料で形成されている。第2の底壁80は、石英などの光透過性および耐熱性を有する材料で形成されている。第2のランプハウジング75は、平面視で基板Wよりも小さい。
【0068】
第2のヒートシンク76は、第2のヒートシンク本体81と、第2のヒートシンク本体81に冷却流体を供給して、第2のヒートシンク本体81を冷却する第2の冷却機構82と、を含む。第2のヒートシンク本体81は、高い伝熱特性を有する金属(たとえばアルミニウム、鉄、銅等)を用いて容器状に所定の形状に形成されている。第2の冷却機構82は、冷却流体の供給源82aと、供給源82aから冷却流体を第2のヒートシンク本体81に供給する冷却流体供給配管82bと、第2のヒートシンク本体81に供給された冷却流体を供給源82aに戻す冷却流体戻り配管82cと、を含む。
【0069】
図6の例では、第2の冷却機構82として、冷却気体を冷却流体として第2のヒートシンク本体81に供給している。すなわち、第2のヒートシンク76は、空冷式のヒートシンクである。複数の第2の光源78の発光に伴い、第2のランプ74およびその周囲が加熱される。しかしながら、第2のヒートシンク76により第2のランプハウジング75内が冷却されるので、第2のランプハウジング75内が過度に昇温することを防止できる。第2のヒートシンク76において、冷却流体として、冷却水等の冷却液体が用いられてもよい。
【0070】
図3に示すように、第2のランプヒータ72は、第1のアーム40に取り付けられている。第2のランプヒータ72は、薬液ノズル31よりも、回動軸線A2寄りに配置されている。すなわち、第2のランプヒータ72を移動する第2のヒータ移動ユニットは、第1の移動装置(第2の加熱領域移動ユニット、第2の吹き付け領域移動ユニット)39を含む。第1の移動装置39は、第2のランプヒータ72を所定の高さで保持している。第1の移動装置39は、回動軸線A2回りに第1のアーム40を回動させることにより、第2のランプヒータ72を水平に移動させる。
【0071】
第2のランプ74が発光すると、すなわち複数の第2の光源78が発光すると、図6に示すように、第2のランプ74から発せられた光(近赤外線、可視光線、紫外線のうちの少なくとも一つを含む光)は、第2のランプハウジング75を透過し、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面内の第2の照射領域R2に照射される。前述のように有機溶剤としてIPAが採用されている。IPAは、200nm~1100nmの波長の光を略全て透過させる。第2のランプ74から発せられた光の波長が200nm~1100nm(より好ましくは、390nm~800nm)であるため、第2のランプ74から放出された光は、液膜LFに吸収されずに、液膜LFを透過する。そのため、第2のランプハウジング75の外表面から放射された光は、液膜LFを透過し、第2の照射領域R2に照射される。これにより、基板Wの上面において第2の照射領域R2およびその周囲の部分(以下、「第2の加熱領域RH2」という)に形成されているパターンP1(図9参照)が輻射により加熱され、昇温する。基板Wの表面Wa(図9参照)にはパターンP1が形成されているので、昇温する基板Wの表面Waからの伝熱によりパターンP1が温められ、昇温する。第2の加熱領域RH2に形成されているパターンP1が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温することにより、第2の加熱領域RH2に接する有機溶剤が温められ、この有機溶剤が蒸発する。第2の加熱領域RH2は、第1の加熱領域RH1(図4等参照)よりも小さい。
【0072】
この状態において、図3に示すように、第1の移動装置39は、回動軸線A2回りに第1のアーム40を回動させることにより、第2のランプヒータ72を水平に移動させる。これにより、基板Wの上面内の一部に形成される第2の加熱領域RH2が基板Wの上面内で移動する。
図3に示すように、第2の気体ノズル35は、第2のランプヒータ72に対し、第3のアーム64の先端側に配置されている。図3に二点鎖線で示すように、第2のランプヒータ72が基板Wの上面の外周部に対応して配置されている場合において、第2の気体ノズル35が、第2のランプヒータ72に対し基板Wの回転方向Rの上流側に配置されている。すなわち、基板Wの上面において、第2の気体ノズル35からの気体が吹き付けられる第2の吹き付け領域RB2(図14B等参照)が、第2のランプヒータ72から光の照射によって加熱される第2の加熱領域RH2に対し、基板Wの回転方向Rの上流側に設定されている。
【0073】
図2に示すように、処理カップ7は、基板Wから外方に排除された処理液を受け止める複数のガード84と、複数のガード84によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ83と、複数のガード84および複数のカップ83を取り囲む円筒状の外壁部材88と、を含む。図2は、4つのガード84と3つのカップ83とが設けられており、最も外側のカップ83が上から3番目のガード84と一体である例を示している。
【0074】
ガード84は、スピンチャック5を取り囲む円筒部85と、円筒部85の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部86と、を含む。複数の天井部86は、上下に重なっており、複数の円筒部85は、同心円状に配置されている。天井部86の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース16を取り囲むガード84の上端84uに相当する。複数のカップ83は、それぞれ、複数の円筒部85の下方に配置されている。カップ83は、ガード84によって下方に案内された処理液を受け止める環状の受液溝を形成している。
【0075】
処理ユニット2は、複数のガード84を個別に昇降させるガード昇降ユニット87を含む。ガード昇降ユニット87は、上位置から下位置までの任意の位置にガード84を位置させる。図2は、2つのガード84が上位置に配置されており、残り2つのガード84が下位置に配置されている状態を示している。上位置は、ガード84の上端84uがスピンチャック5に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード84の上端84uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0076】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード84が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液は、基板Wから外方に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード84の内面に衝突し、このガード84に対応するカップ83に案内される。これにより、基板Wから排除された処理液がカップ83に集められる。
【0077】
図8は、制御装置3のハードウェアを示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dと、を含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置3cと、を含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取る読取装置3fと、ホストコンピュータHC等の他の装置と通信する通信装置3gと、を含む。
【0078】
制御装置3は、入力装置3jおよび表示装置3kに接続されている。入力装置3jは、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置3kの画面に表示される。入力装置3jは、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置3jおよび表示装置3kを兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられてもよい。
【0079】
CPU3bは、補助記憶装置3eに記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置3fを通じてリムーバブルメディアRMから補助記憶装置3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピュータHCなどの外部装置から通信装置3gを通じて補助記憶装置3eに送られたものであってもよい。
【0080】
補助記憶装置3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置3eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体である。
【0081】
補助記憶装置3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータHCによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。
【0082】
図2および図8に示すように、制御装置3のCPU3bは、プログラムPに従って、処理ユニット2の各部を制御する。具体的には、CPU3bは、プログラムPに従って、スピンモータ19、チャックピン駆動ユニット20、第1の移動装置39、第2の移動装置44、第3の移動装置63、ガード昇降ユニット87等の動作を制御する。また、制御装置3は、第1のランプヒータ52、第2のランプヒータ72等に供給される電力を調整する。さらに、制御装置3は、薬液バルブ37、リンス液バルブ42、有機溶剤バルブ46、第1の気体バルブ48等の開閉を制御するとともに、第1の流量調整バルブ49のアクチュエータを制御して、当該第1の流量調整バルブ49の開度を制御する。制御装置3は、以降に述べる基板処理例を実行するようにプログラムされている。
【0083】
図9は、基板処理装置1による処理対象の基板Wの表面Waを拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハ等の半導体ウエハであり、基板Wの表面Waは、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが形成されるデバイス形成面に相当する。パターン形成面である基板Wの表面Waに、パターンP1が形成されている。パターンP1は、たとえば微細パターンである。パターンP1は、図9に示すように、凸形状を有する構造体Sが行列状に配置されたものであってもよい。この場合、構造体Sの線幅W1はたとえば1nm~45nm程度に、パターンP1の隙間W2はたとえば1nm~数μm程度であってもよい。パターンP1の高さ(膜厚)は、たとえば、10nm~1μm程度である。また、パターンP1は、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する高さTの比)が、たとえば、5~100程度であってもよい(典型的には、5~30程度である)。また、パターンP1は、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターンP1は、薄膜に、複数の微細穴(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
【0084】
次に、基板処理例について説明する。
以下では、表面WaにパターンP1が形成された基板Wを処理する場合について説明する。
図10は、基板処理装置1によって実行される第1の基板処理例について説明するための工程図である。図11A図11Fは、第1の基板処理例が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。図12A~12Dは、各状態の基板Wを上から見た模式図である。以下では、図1図10を参照しながら、第1の基板処理例について説明する。図11A図11Fおよび図12A図12Dについては適宜参照する。
【0085】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、チャンバー4の内部に基板Wを搬入する搬入工程(図10のS1)が実行される。
具体的には、全てのガード84が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、センターロボットCR(図1A参照)が、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面Waが上に向けられた状態でハンドH1上の基板Wを複数のチャックピン17の上に置く。その後、複数のチャックピン17が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック5の上に置いた後、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。
【0086】
次に、制御装置3は、スピンモータ19を制御して、基板Wの回転を開始させる(図10のS2)。これにより、基板Wが薬液供給速度(100rpm以上、1000rpm未満)で回転する。
次に、薬液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜を形成する薬液供給工程(図10のS3)が実行される。具体的には、制御装置3は、第1の移動装置39を制御して、薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、薬液バルブ37が開いて、薬液ノズル31からの薬液の吐出を開始する。薬液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、薬液バルブ37を閉じる。これにより、薬液ノズル31からの薬液の吐出が停止される。その後、制御装置3は、第1の移動装置39を制御して、薬液ノズル31を待機位置に移動させる。
【0087】
薬液ノズル31から吐出された薬液は、薬液供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成される。薬液ノズル31が薬液を吐出しているとき、制御装置3は、第1の移動装置39を制御して、基板Wの上面に対する薬液の着液位置を中央部と外周部との間で移動させてもよいし、基板Wの上面の中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0088】
次に、リンス液の一例であるリンス液を基板Wの上面に供給して、基板W上の薬液を洗い流すリンス液供給工程(図10のS4)が実行される。
具体的には、少なくとも一つのガード84が上位置に位置している状態で、制御装置3は、第2の移動装置44を制御して、リンス液ノズル32を待機位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3がリンス液バルブ42を開いて、リンス液ノズル32からのリンス液の吐出を開始する。リンス液の吐出が開始される前に、基板Wから排除された処理液を受け止めるガード84を切り換えるために、制御装置3はガード昇降ユニット87を制御して少なくとも一つのガード84を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ42が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3はリンス液バルブ42を閉じ、リンス液ノズル32からのリンス液の吐出を停止する。その後、制御装置3は、第2の移動装置44を制御して、リンス液ノズル32を待機位置に移動させる。
【0089】
次に、基板Wの上面上のリンス液を有機溶剤に置換するために、有機溶剤を基板Wの上面に供給する有機溶剤供給工程(図10のS5)が実行される。
具体的には、少なくとも一つのガード84が上位置に位置している状態で、制御装置3は、スピンチャック5を制御して、基板Wを置換速度で回転させる(基板回転工程)。置換速度は、リンス液供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、制御装置3は、第3の移動装置63を制御して、有機溶剤ノズル33を含む上面ヘッド30を、待機位置から処理位置に移動させる。有機溶剤ノズル33が処理位置に配置されている状態で、制御装置3は、有機溶剤バルブ46を開いて、有機溶剤ノズル33からの有機溶剤の吐出を開始する。有機溶剤の吐出が開始される前に、制御装置3は、基板Wから排除された処理液を受け止めるガード84を切り換えるために、ガード昇降ユニット87を制御して、少なくとも一つのガード84を鉛直に移動させてもよい。
【0090】
有機溶剤ノズル33から吐出された有機溶剤は、置換速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上のリンス液は、有機溶剤ノズル33から吐出された有機溶剤に置換される。これにより、図11Aに示すように、基板Wの上面全域を覆う有機溶剤の液膜LFが形成される(液膜形成工程)。第1の基板処理例では、上面ヘッド30を、有機溶剤ノズル33から吐出された有機溶剤が基板Wの上面の中央部に衝突する中央処理位置で静止させた状態で、有機溶剤の供給が実行される。しかし、制御装置3が第3の移動装置63を制御して、基板Wの上面に対する有機溶剤の着液位置を中央部と外周部との間で移動させてもよい。
【0091】
その後、液膜LFを基板Wの上面上に保持する有機溶剤パドル工程(図10のS6)が実行される。具体的には、上面ヘッド30が中央処理位置で静止している状態で、制御装置3が、スピンモータ19を制御して、基板Wの回転速度を置換速度からパドル速度に低下させる。パドル速度は、たとえば、0を超える50rpm以下の速度である。置換速度からパドル速度までの減速は、段階的に実行される。基板Wの回転速度がパドル速度に低下した後、制御装置3は、有機溶剤バルブ46を閉じて、有機溶剤の吐出を停止する。
【0092】
基板Wの回転速度がパドル速度に低下すると、基板W上の有機溶剤に加わる遠心力が弱まる。そのため、有機溶剤は基板Wの上面から排除されない、もしくは、微量しか排除されない。したがって、有機溶剤の吐出が停止された後も、基板Wの上面全域を覆う液膜LFが基板W上に保持される。リンス液を液膜LFに置換した後に、微量のリンス液がパターンP1(図9参照)の間に残っていたとしても、このリンス液は、液膜LFを構成する有機溶剤に溶け込み、有機溶剤中に拡散する。これにより、パターンP1の間に残留するリンス液を減らすことができる。
【0093】
次いで、液膜LFが基板Wの上面に形成された後は、上面ヘッド30に含まれる第1のランプヒータ52からの光の照射によって基板Wを加熱することにより、蒸気層形成部VFを、基板Wの上面の中央部に形成する蒸気層形成部形成工程(図10のS7)が実行される。蒸気層形成部VFは、図11Bに示すように、有機溶剤と基板Wの上面との間に蒸気層VLが形成されかつ蒸気層VL上に液膜LFが保持された領域である。
【0094】
具体的には、上面ヘッド30が中央処理位置で静止している状態で、制御装置3は、パドル速度での基板Wの回転を維持しながら第1のランプヒータ52への電力の供給を開始して、第1のランプヒータ52に含まれる複数の第1の光源58の発光を開始させる。複数の第1の光源58が発光すると、図11Bに示すように、第1のランプヒータ52から光が放出される。第1のランプヒータ52から放出された光は、液膜LFに吸収されずに、液膜LFを透過し、第1の照射領域R1に照射される。これにより、第1の加熱領域RH1が輻射により加熱される。そして、第1の加熱領域RH1のパターンP1が第1の加熱領域RH1によって温められ、このパターンP1が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温させられる。これにより、第1の加熱領域RH1のパターンP1に接する有機溶剤が温められる。第1の加熱領域RH1は、基板Wの上面の中央部に設定され、かつ基板Wの上面の外周部に設定されていない。
【0095】
また、第1の加熱領域RH1の温度(すなわち、第1の加熱領域RH1に形成されているパターンP1の温度)が、有機溶剤の沸点以上である場合には、有機溶剤が液膜LFと基板Wとの界面で蒸発し、多数の小さな気泡が有機溶剤と基板Wの上面との間に介在する。有機溶剤が液膜LFと基板Wとの界面のあらゆる場所で蒸発することにより、有機溶剤の蒸気を含む蒸気層VL(図11B参照)が液膜LFと基板Wとの間に形成される。これにより、有機溶剤が基板Wの上面から離れ、液膜LFが基板Wの上面から浮上する。そして、液膜LFが蒸気層VL上に保持される。このとき、基板W上の液膜LFに働く摩擦抵抗は、零と見なせるほど小さい。すなわち、第1のランプヒータ52による第1の加熱領域RH1の加熱により、図12Aに示すように、基板Wの上面の中央部に蒸気層形成部VFが形成される。蒸気層形成部VFは、有機溶剤と基板Wの上面との間に蒸気層VLが形成されかつ蒸気層VL上に液膜LFが保持された領域である。
【0096】
一方、基板Wの上面において第1の加熱領域RH1の外側の領域は、加熱温度まで達していない。そのため、蒸気層VLが全く形成されないか、形成される蒸気層VLの量が不十分であり、蒸気層VLによって液膜LFを十分な高さ位置に保つことができない。そのため、基板Wの上面において第1の加熱領域RH1の外側の領域には、蒸気層形成部VFは形成されない。基板Wが回転しているため、蒸気層形成部VFは、基板Wの上面の中央部を覆うほぼ円形の領域である。
【0097】
基板Wが回転しているため、蒸気層形成部VFの液膜LFには遠心力が加わる。また、基板Wの上面において、第1の加熱領域RH1と、第1の加熱領域RH1の外側の領域との間には大きな温度差が生じる。この温度差に起因して、基板Wの上面には、中央部から外周部に向けて流れる熱対流が形成される。これら遠心力や熱対流によって蒸気層形成部VFの液膜LFの中央部に穴Hが形成される(図10のS8)。
【0098】
基板Wの回転速度がパドル速度であるため、蒸気層形成部VFの液膜LFに加わる遠心力は弱い。また、基板Wの上面に発生する熱対流も比較的弱い。しかし、蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜LFに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、これら遠心力および熱対流によって、液膜LFに含まれる有機溶剤が気体の圧力で外方に押し退けられる。これにより、液膜LFの中央部の厚みが減少し、図11Cおよび図12Bに示すように、液膜LFの中央部にほぼ円形の穴Hが形成される。穴Hは、基板Wの上面を露出させる露出穴である。穴Hの形成によって液膜LFが部分的に除去されることにより、蒸気層形成部VFが円環状を呈する。そして、蒸気層形成部VFの液膜LFと穴Hとの間、すなわち蒸気層形成部VFの液膜LFの内周に気液界面GLが形成される。
【0099】
次いで、図11Dおよび図12Cに示すように、蒸気層形成部VFを基板Wの外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程(図10のS9)が実行される。この蒸気層形成部移動工程(図10のS9)は、蒸気層形成部VFの外周を拡げる外周拡大工程と、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)を拡げる穴拡大工程と、を含む。穴拡大工程は、外周拡大工程に並行して実行される。
【0100】
蒸気層形成部移動工程(図10のS9)の開始に先立って、制御装置3が、スピンモータ19を制御して、基板Wの回転速度をパドル速度から形成部移動速度に調整する。形成部移動速度は、たとえば、0を超える100rpm以下の速度である。形成部移動速度は、パドル速度と同じ速度であってもよい。
蒸気層形成部移動工程(図10のS9)の開始に先立って、制御装置3は第1の気体バルブ48を開いて、第1の気体ノズル34の第1の気体吐出口34aからの気体の吐出を開始する(第1の吹き付け工程)。第1の気体ノズル34に供給される気体の温度は、室温であってもよいし、室温より高くてもよい。第1の気体ノズル34から吐出された気体は、基板Wの上面の中央部に設定された第1の吹き付け領域RB1において液膜LFに衝突した後、液膜LFの表面に沿ってあらゆる方向に外方に流れる。これにより、基板Wの上面の中央部から外方に流れる気流が形成される。第1の気体ノズル34に供給される気体の流量は、たとえば5L/minである。蒸気層形成部VFの内周に対し内側に設定された第1の吹き付け領域RB1に気体が吹き付けられることにより、蒸気層形成部VFの内周が基板Wの外周に向けて押される。
【0101】
蒸気層形成部移動工程(図10のS9)において、制御装置3は、第1の気体ノズル34からの気体を吐出しながらかつ第1のランプヒータ52からの光を照射しながら、第3の移動装置63を制御して、第1のランプヒータ52を含む上面ヘッド30を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。これにより、第1の加熱領域RH1が基板Wの上面内を、平面視で基板Wの中心を通る円弧状の軌跡に沿って、基板Wの外周に向けて移動する。基板Wが回転している状態で、第1の加熱領域RH1を基板Wの外周に向けて移動するので、第1のランプヒータ52によって基板Wの内周全域を良好に加熱できる。第1の加熱領域RH1の移動に伴って、円環状の蒸気層形成部VFの外周が拡大する(外周拡大工程)。
【0102】
また、第1の気体ノズル34が第1のランプヒータ52に同伴移動可能に設けられているので、第1の吹き付け領域RB1が、第1の加熱領域RH1との間で一定の距離を保ちながら移動する(第1の吹き付け領域移動工程)。第1の加熱領域RH1の基板Wの外周への移動に同伴して、第1の吹き付け領域RB1が基板Wの外周に向けて移動する。第1の吹き付け領域RB1を基板Wの外周に向けて移動させることにより、穴Hの外縁すなわち蒸気層形成部VFの内周が拡げられる(穴拡大工程)。蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜LFに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、気体の流れによる小さな押し力によって、蒸気層形成部VFの内周を基板Wの外周に向けてスムーズに移動させることができる。第1の吹き付け領域RB1に気体を吹き付けながら、第1の吹き付け領域RB1を基板Wの外周に向けて移動させることによって、蒸気層形成部VFの内周位置を高精度に制御しながら蒸気層形成部VFの内周を拡げることができる。蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターンP1の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
【0103】
また、第1の吹き付け領域RB1が第1の加熱領域RH1に対し、基板Wの回転方向Rの上流側に設定されている。そのため、発生する気流の影響を最小限に抑制しながら、蒸気層形成部VFの内周に気体を吹き付けることができる。これにより、蒸気層形成部VFの内周を良好に拡大させることができる。
また、第1の気体吐出口34aが、下方から見て第1の発光部54Aに隣り合っているので、第1の発光部54Aによって加熱される第1の加熱領域RH1によって形成される円環状の蒸気層形成部VFの内周に、気体を吹き付けることができる。
【0104】
また、穴拡大工程における穴Hの拡大は、気体の吹き付けだけでなく、基板Wの上面上の有機溶剤に、基板Wの回転による遠心力が働くことによっても促進される。そして、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFは、基板Wの中央部側から移動してくる有機溶剤によって外方に押され、基板W外に排出される。
第1の基板処理例では、蒸気層形成部移動工程(図10のS9)の途中から、第1のランプヒータ52からの光の照射のみによらず、第2のランプヒータ72からの光の照射によっても基板Wを加熱する(図10のS9)。この第2のランプヒータ72を用いた基板Wの加熱は、第1のランプヒータ52からの光の照射による基板Wの加熱を補助(アシスト)している(補助加熱工程)。
【0105】
第2のランプヒータ72からの光の照射の開始に先立って、制御装置3は、第1の移動装置39を制御して、第2のランプヒータ72を待機位置から処理位置に移動させ、第2のランプヒータ72を所定の照射開始位置PS1に配置する。
第1のランプヒータ52の照射開始から所定の期間が経過して、図11Dに示すように第1の加熱領域RH1が所定の基準位置RPに達すると、制御装置3は、第2のランプヒータ72への電力の供給を開始して、第2のランプヒータ72に含まれる複数の第2の光源78の発光を開始する(図10のS10)。これにより、第2のランプヒータ72による基板Wの加熱が開始される。複数の第2の光源78が発光すると、第2のランプヒータ72から光が放出され、第2のランプヒータ72の下方の領域に光が照射される。第2のランプヒータ72から放出された光は、液膜LFに吸収されずに、液膜LFを透過し、第2の照射領域R2に照射される。これにより、第2の加熱領域RH2が輻射により加熱される。そして、第2の加熱領域RH2のパターンP1が第2の加熱領域RH2によって温められ、このパターンP1が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温させられる。これにより、第2の加熱領域RH2のパターンP1に接する有機溶剤が温められる。
【0106】
照射開始位置PS1に配置された第2のランプヒータ72による第2の加熱領域RH2が、基準位置RPに位置する第1の加熱領域RH1と回転方向Rに関して離隔している。また、照射開始位置PS1に配置された第2のランプヒータ72による第2の加熱領域RH2の内周端と回転軸線A1との間の距離が、基準位置RPに位置する第1の加熱領域RH1の内周端と回転軸線A1との間の距離と、略同距離である。
【0107】
また、第2の加熱領域RH2は、第1の加熱領域RH1と離隔していることが望ましいが、第1の加熱領域RH1と全部が重複していなければ、一部が重複していてもよい。すなわち、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2の少なくとも一部が重複しなくてもよい。
そして、制御装置3は、第2のランプヒータ72によって基板Wを加熱しながら、第1の移動装置39を制御して、第2のランプヒータ72を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。これにより、第2の照射領域R2が基板Wの上面内を所定の円弧状の軌跡に沿って基板Wの外周に向けて移動する。
【0108】
このとき、第1のアーム40の旋回速度は、第3のアーム64の旋回速度と同等である。そのため、第2の加熱領域RH2の基板Wの径方向の移動速度が、第1の加熱領域RH1の基板Wの径方向の移動速度と同じである。すなわち、第2の加熱領域RH2の内周端と回転軸線A1との間の距離が第1の加熱領域RH1の内周端と回転軸線A1との間の距離と略同距離に保たれながら、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2が移動する。基板Wが回転している状態で、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2を基板Wの外周に向けて移動するので、第1のランプヒータ52および第2のランプヒータ72によって基板Wの上面全域を走査しながら良好に加熱できる。
【0109】
蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁が拡大することにより、蒸気層形成部VFの全域において液膜LFが良好に浮上しながら、蒸気層形成部VFが基板Wの外周に向けて移動する。このとき、蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターンP1の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁がさらに拡大することにより、図11Eおよび図12Dに示すように、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFが基板Wから排除され、円環状の蒸気層形成部VFのみが基板Wの上面上に残留する。そして、図11Fに示すように、第1の吹き付け領域RB1が基板Wの外周部に達することにより、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)が基板Wの上面の外周まで広がり、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出される。
【0110】
これにより、基板Wの上面から液がなくなり、基板Wの上面全域が露出する。穴Hが全域に広がった後の基板Wの上面には、液滴が存在しない。これにより、基板Wの乾燥が完了する。
円環状の蒸気層形成部VFの移動によって、蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLをパターンP1に接触させることなく、液膜LFを基板Wから排除できる。これにより、有機溶剤が基板W上のパターンP1に及ぼす表面張力を抑制できるので、パターンP1の倒壊を抑制または防止できる。
【0111】
第1のランプヒータ52の照射開始から予め定める加熱期間が経過すると、制御装置3は、第1のランプヒータ52および第2のランプヒータ72への電力の供給を停止して第1のランプヒータ52および第2のランプヒータ72の発光を停止させる。
また、制御装置3は、スピンモータ19を制御して、基板Wの回転を停止させる(図10のS11)。
【0112】
基板Wの回転停止後に、チャンバー4から基板Wを搬出する搬出工程(図10のS12)が実行される。
具体的には、制御装置3は、ガード昇降ユニット87を制御して、全てのガード84を下位置まで下降させる。また、制御装置3は、第1の気体バルブ48を閉じて第1の気体ノズル34からの気体の吐出を停止する。また、制御装置3は、第3の移動装置63を制御して、上面ヘッド30を、待機位置まで退避させる。また、制御装置3は、第1の移動装置39を制御して、第2のランプヒータ72を、待機位置まで退避させる。
【0113】
その後、センターロボットCRが、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。チャックピン駆動ユニット20が複数のチャックピン17による基板Wの把持を解除した後、センターロボットCRは、スピンチャック5上の基板WをハンドH1で支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0114】
図13は、基板処理装置1によって実行される第2の基板処理例について説明するための工程図である。図14A図14Dは、第2の基板処理例が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。第2の基板処理例において、第1の基板処理例と同等の工程には、図13において図10と同一の参照符号を付している。
第2の基板処理例が第1の基板処理例(図10参照)と相違する第1の相違点は、蒸気層形成部VFの液膜LFに気体を吹き付けて有機溶剤を部分的に排除することによって、液膜LFに穴Hを開ける(穴Hを形成する)ようにした点である。第2の基板処理例では、第1の基板処理例(図10参照)のS8の工程に代えて、図13のS18の工程が実行される。
【0115】
また、第2の基板処理例が第1の基板処理例(図10参照)と相違する第2の相違点は、蒸気層形成部VFの内周の内側に向けて、第1の気体ノズル34からだけでなく第2の気体ノズル35からも気体を吹き付けるようにした点である。そして、蒸気層形成部VFの移動において、第1の気体ノズル34からの第1の吹き付け領域RB1だけでなく、第2の気体ノズル35からの第2の吹き付け領域RB2も、基板Wの外周に向けて移動される。第2の基板処理例では、第1の基板処理例(図10参照)のS10の工程に代えて、図13のS20の工程が実行される。
【0116】
以下、具体的に説明する。基板Wの上面の中央部における蒸気層形成部VFの形成(図13のS7)の後、次いで、蒸気層形成部VFの液膜LFに気体を吹き付けて有機溶剤を部分的に排除することによって蒸気層形成部VFの液膜LFに穴Hを開ける穴形成工程(図13のS18)が実行される。具体的には、図11Bに示す状態から、制御装置3は第3の移動装置63を制御して、第1の気体ノズル34を含む上面ヘッド30を水平に移動させ、図14Aに示すように、第1の気体ノズル34の第1の気体吐出口34aを回転軸線A1上またはその近傍に配置させる。その後、制御装置3は第1の気体バルブ48を開いて、図14Aに示すように、第1の気体ノズル34の第1の気体吐出口34aからの気体の吐出を開始する(第1の吹き付け工程)。第1の気体ノズル34から吐出された気体は、基板Wの上面の中央部に設定された第1の吹き付け領域RB1において液膜LFに衝突した後、液膜LFの表面に沿ってあらゆる方向に外方に流れる。これにより、基板Wの上面の中央部から外方に流れる気流が形成される。
【0117】
液膜LFの中央部に気体が吹き付けられると、液膜LFに含まれる有機溶剤が気体の圧力で外方に押し退けられる。さらに、気体の供給によって有機溶剤の蒸発が促進される。これにより、液膜LFの中央部の厚みが減少し、図11Cおよび図12Bに示すように、液膜LFの中央部にほぼ円形の穴Hが形成される。穴Hは、基板Wの上面を露出させる露出穴である。穴Hの形成のために、第1の気体ノズル34に供給される気体の流量は、たとえば5L/minである。
そして、蒸気層形成部移動工程(図10のS9)において、制御装置3は、第1の気体ノズル34からの気体を吐出しながらかつ第1のランプヒータ52からの光を照射しながら、第3の移動装置63を制御して、第1のランプヒータ52を含む上面ヘッド30を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。
【0118】
第2の基板処理例では、第1の基板処理例と同様、蒸気層形成部移動工程(図13のS9)の途中から、第1のランプヒータ52からの光の照射のみによらず、第2のランプヒータ72からの光の照射によっても基板Wを加熱する。この第2のランプヒータ72を用いた基板Wの加熱は、第1のランプヒータ52からの光の照射による基板Wの加熱を補助(アシスト)している(補助加熱工程)。
【0119】
第2のランプヒータ72からの光の照射の開始に先立って、制御装置3は、第1の移動装置39を制御して、第2のランプヒータ72を待機位置から処理位置に移動させ、第2のランプヒータ72を所定の照射開始位置PS1に配置している。
第2のランプヒータ72の照射開始から所定の期間が経過して、図14Bに示すように、第1の加熱領域RH1が所定の基準位置RPに達すると、制御装置3は、第2のランプヒータ72への電力の供給を開始して、第2のランプヒータ72に含まれる複数の第2の光源78の発光を開始する(図13のS20)。これにより、第2のランプヒータ72による基板Wの加熱が開始される。複数の第2の光源78が発光すると、第2のランプヒータ72から光が放出され、第2のランプヒータ72の下方の領域に光が照射される。第2のランプヒータ72から放出された光は、液膜LFに吸収されずに、液膜LFを透過し、第2の照射領域R2に照射される。これにより、第2の加熱領域RH2が輻射により加熱される。そして、第2の加熱領域RH2のパターンP1が第2の加熱領域RH2によって温められ、このパターンP1が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温させられる。これにより、第2の加熱領域RH2のパターンP1に接する有機溶剤が温められる。
【0120】
また、第2のランプヒータ72の照射開始から所定の期間が経過して第1の加熱領域RH1が所定の基準位置RPに達すると、蒸気層形成部VFの内周の内側に向けて、気体が吹き付けられる。制御装置3は第2の気体バルブ98を開いて、第2の気体ノズル35の第2の気体吐出口35aからの気体の吐出を開始する(第2の吹き付け工程)。第2の気体ノズル35に供給される気体の温度は、室温であってもよいし、室温より高くてもよい。第2の気体ノズル35から吐出された気体は、基板Wの上面に設定された第2の吹き付け領域RB2に衝突した後、基板Wの上面に沿ってあらゆる方向に外方に流れる。これにより、基板Wの上面の中央部から外方に流れる気流が形成される。
【0121】
そして、制御装置3は、第2のランプヒータ72からの光を照射しながら、第1の移動装置39を制御して、第2のランプヒータ72を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。第2の気体ノズル35が第2のランプヒータ72に同伴移動可能に設けられているので、第2の吹き付け領域RB2は、第2の加熱領域RH2との間で一定の距離を保ちながら移動する(第2の吹き付け領域移動工程)。これにより、第2の加熱領域RH2の基板Wの外周への移動に同伴して、第2の吹き付け領域RB2も基板Wの外周に向けて移動する。
【0122】
このとき、第1のアーム40の旋回速度は、第3のアーム64の旋回速度と同等である。そのため、第2の照射領域R2の基板Wの径方向の移動速度が、第1の照射領域R1の基板Wの径方向の移動速度と同じである。すなわち、第2の加熱領域RH2の内周端と回転軸線A1との間の距離が第1の加熱領域RH1の内周端と回転軸線A1との間の距離と略同距離に保たれながら、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2が移動する。基板Wが回転している状態で、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2を基板Wの外周に向けて移動するので、第1のランプヒータ52および第2のランプヒータ72によって基板Wの上面全域を走査しながら良好に加熱できる。また、第2の吹き付け領域RB2と回転軸線A1との間の距離が第1の吹き付け領域RB1と回転軸線A1との間の距離と略同距離に保たれながら、第1の吹き付け領域RB1および第2の吹き付け領域RB2が移動する。
【0123】
蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁が拡大することにより、蒸気層形成部VFの内周全域において液膜LFが浮上しながら、蒸気層形成部VFが基板Wの外周に向けて移動する。このとき、蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターンP1の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁がさらに拡大することにより、図14Cに示すように、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFが基板Wから排除され、円環状の蒸気層形成部VFのみが基板Wの上面上に残留する。そして、図14Dに示すように、第1の吹き付け領域RB1および第2の吹き付け領域RB2が基板Wの外周部に達することにより、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)が基板Wの上面の外周まで広がり、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出される。
【0124】
これにより、基板Wの上面から液がなくなり、基板Wの上面全域が露出する。穴Hが全域に広がった後の基板Wの上面には、液滴が存在しない。これにより、基板Wの乾燥が完了する。
第2の基板処理例によれば、蒸気層形成部VFの液膜LFに気体を吹き付けることより、液膜LFに穴Hが形成される。蒸気層形成部VFの液膜LFには遠心力が加わり、また、基板Wの上面に熱対流が発生しているのであるが、基板Wのパドル速度の大きさや、第1の加熱領域RH1の加熱温度の大きさによっては、これらの力だけでは、蒸気層形成部VFの液膜LFに上手く穴Hを形成できないこともある。蒸気層形成部VFの液膜LFへの気体の吹き付けにより、蒸気層形成部VFの液膜LFに穴Hを確実に形成することができる。
【0125】
図15は、基板処理装置1によって実行される第3の基板処理例について説明するための工程図である。図16A図16Cは、第3の基板処理例が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。第3の基板処理例において、第1の基板処理例と同等の工程には、図15において図10と同一の参照符号を付している。
第3の基板処理例では、蒸気層形成部移動工程において、第2のランプヒータ72を用いずに、第1のランプヒータ52からの光の照射のみによって基板Wを加熱している。すなわち、図15には、図10のS10に相当する工程が存在しない。
【0126】
穴Hの形成後、第1の基板処理例と同様に、蒸気層形成部VFを基板Wの外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程(図15のS9)が実行される。第1の基板処理例において説明したように、この蒸気層形成部移動工程(図15のS9)は、蒸気層形成部VFの外周を拡げる外周拡大工程と、穴Hの外縁を拡げる穴拡大工程と、を含む。穴拡大工程は、外周拡大工程に並行して実行される。
【0127】
図16Aに示すように、第1の加熱領域RH1および第1の吹き付け領域RB1が基板Wの外周に向けて移動させられる。これにより、蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁が拡大する。蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁の拡大がさらに進行すると、図16Bに示すように、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFが基板Wから排除され、円環状の蒸気層形成部VFのみが基板Wの上面上に残留する。そして、図16Cに示すように、第1の吹き付け領域RB1が基板Wの外周部に達することにより、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)が基板Wの上面の外周まで広がり、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出される。
【0128】
これにより、基板Wの上面から液がなくなり、基板Wの上面全域が露出する。穴Hが全域に広がった後の基板Wの上面には、液滴が存在しない。これにより、基板Wの乾燥が完了する。
以上により第1~第3の基板処理例によれば、基板Wの上面の中央部に液膜LFの上方から光が照射されることにより、基板Wの上面の中央部に設定されかつ基板Wの上面の外周部に設定されていない第1の加熱領域RH1が加熱される。これにより、第1の加熱領域RH1に接する有機溶剤が蒸発して蒸気層VLが形成され、その蒸気層VLの上に液膜LFが保持される。すなわち、有機溶剤と基板Wの上面との間に蒸気層VLが形成されかつ蒸気層VL上に液膜LFが保持された蒸気層形成部VFが、基板Wの上面の中央部に形成される。蒸気層形成部VFにおいて、液膜LFは、基板Wの中央部において基板Wの上面から浮上している。
【0129】
その状態で蒸気層形成部VFの液膜LFに気体が吹き付けられることにより穴Hが形成され、蒸気層形成部VFの液膜LFと穴Hとの間、すなわち蒸気層形成部VFの液膜LFの内周に気液界面GLが形成される。そして、円環状の蒸気層形成部VFの外周が拡げられかつ穴Hを拡げられることにより、円環状の蒸気層形成部VFが基板Wの外周に向かって移動する。円環状の蒸気層形成部VFの移動によって、蒸気層形成部VFの液膜LFの内周にある気液界面GLをパターンP1に接触させることなく、液膜LFを移動させることができる。蒸気層形成部VFの内周が基板Wの外周まで拡げられることにより、基板Wの上面の全域から、液膜LFを良好に排除できる。有機溶剤が基板W上のパターンP1に及ぼす表面張力を抑制しながら基板W上から液膜LFを排除できるので、パターンP1の倒壊を抑制または防止できる。
【0130】
また、基板Wを回転させながら蒸気層形成部VFを移動させるので、基板Wの外周部に達した蒸気層形成部VFに対し、基板Wの回転による遠心力を働かせることが可能である。これにより、基板Wの外周部における有機溶剤の残留を抑制または防止できるから、基板Wの外周部における欠陥の発生を抑制または防止できる。
また、光の照射開始により基板Wへの加熱が開始されるため、光を照射する以外の期間において基板Wが加熱されない。そのため、特許文献1のようにホットプレートを用いて基板Wを加熱する場合と比較して、薬液供給工程(S1)における熱影響(処理レートの変化等)を排除または低減できる。
【0131】
また、基板Wの上面の中央部に第1の加熱領域RH1を設けることにより基板Wの上面の中央部に蒸気層形成部VFを形成し、その蒸気層形成部VFを基板Wの外周に向けて移動させる。第1の加熱領域RH1が基板Wの上面の一部のみに設定されているので、基板Wの上面の全域に蒸気層形成部VFを形成すべく基板Wの上面の全域を加熱する場合と比較して、第1の加熱領域RH1が小面積で足りる。そのため、第1の加熱領域RH1の全域を良好に加熱することが可能である。これにより、蒸気層形成部VFの全域において液膜LFが良好に浮上させることができる。
【0132】
また、第1の加熱領域RH1を基板Wの全域に設けるためには、第1のランプヒータ52を大径化したり、ランプヒータの個数を増やしたりする必要がある。この場合、チャンバー4内の他の周囲部材を不必要に加熱したり、消費電力が増大したりするおそれがある。
これに対し、この実施形態では第1の加熱領域RH1を基板Wの一部のみに設けるので、他の周囲部材の不必要な加熱や消費電力の増大を抑制または防止できる。
【0133】
また、基板W外周部では基板Wの周速が速いため、第1の加熱領域RH1を基板Wの外周部に配置すると、光の照射によって基板Wに付与される単位面積当たりの熱量が低下する。蒸気層形成部VFを基板Wの外周に向けて移動させるべく、第1の加熱領域RH1を基板Wの外周に向けて移動させると、基板Wに付与される単位面積当たりの熱量が低下して、蒸気層形成部VFの全域における液膜の浮上を実現できないおそれがある。蒸気層形成部VFのうち少なくとも内周全域において液膜LFが浮上していないと、蒸気層形成部VFの液膜LFの内周にある気液界面GLがパターンに接触して、パターンP1が倒壊するおそれがある。
【0134】
これに対し、第1および第2の基板処理例では、光の照射により、基板Wの回転方向Rに関して離隔する第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2が加熱される。すなわち、加熱領域の合計面積を増やすことができる。これにより、基板Wに付与される単位面積当たりの熱量を高く保つことができる。ゆえに、蒸気層形成部VFが基板Wの外周に向けて移動している場合であっても、蒸気層形成部VFの全域において液膜LFが浮上している状態を保つことが可能である。蒸気層形成部VFの内周全域において液膜LFを浮上させながら蒸気層形成部VFを移動させるので、気液界面GLがパターンP1に接触してパターンP1が倒壊することを確実に防止できる。
【0135】
また、第1および第2の基板処理例では、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2の双方を基板Wの外周に向けて移動させることにより、蒸気層形成部VFの外周が拡げられる。この場合、第1の加熱領域RH1および第2の加熱領域RH2への光の照射によって蒸気層形成部VFを加熱しながら、その蒸気層形成部VFを基板Wの外周に向けて移動できる。これにより、蒸気層形成部VFの全域において液膜LFが浮上している状態を保ちながら、蒸気層形成部VFの外周を拡げることができる。
【0136】
また、第2の基板処理例によれば、蒸気層形成部VFの移動において、第1の吹き付け領域RB1および第2の吹き付け領域RB2の双方が基板Wの外周に向けて移動される。基板Wの回転方向Rに離隔する複数の領域において気体が吹き付けられることにより穴Hが拡大するので、蒸気層形成部VFの内周位置、すなわち穴Hの外縁位置を高精度に制御しながら、穴Hを拡げることができる。
【0137】
図17は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置201に備えられた処理ユニット202の内部を水平に見た模式図である。図18は、上面ヘッド230を下から見た模式図である。第2の実施形態において、前述の第1の実施形態と共通する部分には、それぞれ、図1図16Cの場合と同一の参照符号を付し説明を省略する。
第2の実施形態に係る基板処理装置201が、第1の実施形態に係る基板処理装置1と相違する主たる点は、第1のランプヒータ52において第1の気体ノズル234が第1のランプヒータ52に一体化されており、第1の発光部54Aが、下方から見て第1の気体吐出口234aの周囲を環状に取り囲んでいる点である。以下、具体的に説明する。
【0138】
処理ユニット202は、第1の実施形態の上面ヘッド30に代えて、上面ヘッド230を備えている。上面ヘッド230は、第1のランプヒータ52に、有機溶剤ノズル33および第1の気体ノズル234が一体化された構成を有している。すなわち、第1のランプヒータ52および有機溶剤ノズル33が、上面ヘッド230に含まれている。上面ヘッド230は、処理液としての有機溶剤を吐出する処理液ノズルとしての機能と、ランプヒータとしての機能と、気体を吐出する気体ノズルとしての機能と、を備えている。上面ヘッド230は、ハウジングとして、第1のランプハウジング55を含む。第1のランプハウジング55の内部を有機溶剤ノズル33および第1の気体ノズル234が鉛直方向に挿通している。第1の気体ノズル234には、第1の気体配管47が接続されている。第1の気体バルブ48が開かれると、気体の流量を変更する第1の流量調整バルブ49の開度に対応する流量で、第1の気体ノズル234の第1の気体吐出口234aから下方に気体が連続的に吐出される。第1の気体ノズル234に供給される気体の温度は、室温であってもよいし、室温より高くてもよい。
【0139】
第1のランプヒータ52の第1の発光部54Aは、下方から見て有機溶剤吐出口33aおよび第1の気体吐出口234aの周囲を環状に取り囲んでいる。そのため、基板Wの上面において、第1の気体吐出口234aからの気体が吹き付けられる第1の吹き付け領域RB3(図20C参照)が、第1のランプヒータ52による第1の加熱領域RH1(図20C参照)よりも小さい。また、基板Wの上面において第1の吹き付け領域RB3の全域が第1の加熱領域RH1の外縁の内側に配置されている。
【0140】
図19は、基板処理装置201によって実行される第4の基板処理例について説明するための工程図である。図20A図20Fは、基板処理装置201によって実行される第4の基板処理例が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。
チャンバー4の内部に基板Wが搬入され(図19のS21)、複数のチャックピン17によって基板Wが把持される。その後、基板Wの回転を開始させられ(図19のS22)、基板Wが薬液供給速度(100rpm以上、1000rpm未満)で回転する。その後、薬液供給工程(図19のS23)、リンス液供給工程(図19のS24)および有機溶剤供給工程(図19のS25)がこの順で実行される。図19のS21~S25の工程は、それぞれ、第1の基板処理例(図10参照)のS1~S5の工程と同等の工程である。
【0141】
有機溶剤供給工程(図19のS25)では、上面ヘッド230に含まれる有機溶剤ノズル33から有機溶剤が吐出される。これにより、図20Aに示すように、基板Wの上面全域を覆う液膜LFが形成される。その後、液膜LFを基板Wの上面上に保持する有機溶剤パドル工程(図19のS26)が実行される。この工程は、第1の基板処理例(図10参照)のS6の工程と同等の工程である。
【0142】
次いで、液膜LFが基板Wの上面に形成された後は、蒸気層形成部VFを基板Wの上面の中央部に形成する蒸気層形成部形成工程(図19のS27)が実行される。この蒸気層形成部形成工程(図19のS27)は、上面ヘッド230に含まれる第1のランプヒータ52からの光の照射によって基板Wを加熱することにより実行される。
具体的には、上面ヘッド230が中央処理位置で静止している状態で、制御装置3は、パドル速度での基板Wの回転を維持しながら第1のランプヒータ52への電力の供給を開始して、第1のランプヒータ52に含まれる複数の第1の光源58の発光を開始させる。複数の第1の光源58が発光すると、図20Bに示すように、第1のランプヒータ52から光が放出される。第1のランプヒータ52から放出された光は、液膜LFに吸収されずに、液膜LFを透過し、第1の照射領域R1に照射される。これにより、第1の加熱領域RH1に形成されているパターンP1が輻射により加熱され、このパターンP1が有機溶剤の沸点以上の所定の加熱温度まで昇温させられる。これにより、第1の加熱領域RH1に接する有機溶剤が温められる。第1の加熱領域RH1は、基板Wの上面の中央部に設定され、かつ基板Wの上面の外周部に設定されていない。
【0143】
また、第1の加熱領域RH1の温度(すなわち、第1の加熱領域RH1に形成されているパターンP1の温度)が、有機溶剤の沸点以上である場合には、有機溶剤が液膜LFと基板Wとの界面で蒸発し、多数の小さな気泡が有機溶剤と基板Wの上面との間に介在する。有機溶剤が液膜LFと基板Wとの界面のあらゆる場所で蒸発することにより、有機溶剤の蒸気を含む蒸気層VL(図20B参照)が液膜LFと基板Wとの間に形成される。これにより、蒸気層形成部VFが第1の加熱領域RH1に形成される。一方、基板Wの上面において第1の加熱領域RH1の外側の領域には、蒸気層形成部は形成されない。基板Wが回転しているため、蒸気層形成部VFは、基板Wの上面の中央部を覆うほぼ円形の領域である。
【0144】
基板Wが回転しているため、蒸気層形成部VFの液膜LFには遠心力が加わる。また、基板Wの上面において、第1の加熱領域RH1と、第1の加熱領域RH1の外側の領域との間には大きな温度差が生じる。この温度差に起因して、基板Wの上面には、中央部から外周部に向けて流れる熱対流が形成される。これら遠心力や熱対流によって蒸気層形成部VFの液膜LFの中央部に穴Hが形成される(図19のS28)。
【0145】
基板Wの回転速度がパドル速度であるため、蒸気層形成部VFの液膜LFに加わる遠心力は弱い。また、基板Wの上面に発生する熱対流も比較的弱い。しかし、蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜LFに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、これら遠心力および熱対流によって、液膜LFに含まれる有機溶剤が気体の圧力で外方に押し退けられる。これにより、液膜LFの中央部の厚みが減少し、図20Cに示すように、液膜LFの中央部にほぼ円形の穴Hが形成される。穴Hは、基板Wの上面を露出させる露出穴である。
【0146】
第1の発光部54Aが、下方から見て第1の気体吐出口234aの周囲を環状に取り囲んでいるので、第1のランプヒータ52による第1の加熱領域RH1への加熱によって形成された蒸気層形成部VFの外縁の内側に気体を吹き付けることが可能である。これにより、蒸気層形成部VFに穴Hを良好に設けることができる。
穴Hの形成によって液膜LFが部分的に除去されることにより、蒸気層形成部VFが円環状を呈する。そして、蒸気層形成部VFの液膜LFと穴Hとの間、すなわち蒸気層形成部VFの液膜LFの内周に気液界面GLが形成される。
【0147】
次いで、図20Dに示すように、蒸気層形成部VFを基板Wの外周に向けて移動させる蒸気層形成部移動工程(図19のS29)が実行される。この蒸気層形成部移動工程(図19のS29)は、蒸気層形成部VFの外周を拡げる外周拡大工程と、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)を拡げる穴拡大工程と、を含む。穴拡大工程は、外周拡大工程に並行して実行される。
【0148】
蒸気層形成部移動工程(図19のS29)の開始に先立って、制御装置3は第1の気体バルブ48を開いて、第1の気体ノズル234の第1の気体吐出口234aからの気体の吐出を開始する(第1の吹き付け工程)。第1の気体ノズル234に供給される気体の温度は、室温であってもよいし、室温より高くてもよい。第1の気体ノズル234から吐出された気体は、基板Wの上面の中央部に設定された第1の吹き付け領域RB3において液膜LFに衝突した後、液膜LFの表面に沿ってあらゆる方向に外方に流れる。これにより、基板Wの上面の中央部から外方に流れる気流が形成される。第1の気体ノズル234に供給される気体の流量は、たとえば5L/minである。蒸気層形成部VFの内周に対し内側に設定された第1の吹き付け領域RB3に気体が吹き付けられることにより、蒸気層形成部VFの内周が基板Wの外周に向けて押される。
【0149】
蒸気層形成部移動工程(図19のS29)において、制御装置3は、第1の気体ノズル234からの気体を吐出しながらかつ第1のランプヒータ52からの光を照射しながら、第3の移動装置63(図3参照)を制御して、第1のランプヒータ52を含む上面ヘッド230を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。これにより、第1の加熱領域RH1が基板Wの上面内を、平面視で基板Wの中心を通る円弧状の軌跡に沿って、基板Wの外周に向けて移動する。第1の加熱領域RH1の移動に伴って、円環状の蒸気層形成部VFの外周が拡大する(外周拡大工程)。
【0150】
蒸気層形成部VFの内周に対し内側に設定された第1の吹き付け領域RB3に蒸気層形成部VFの内周が基板Wの外周に向けて押される。第1の気体ノズル234が第1のランプヒータ52に一体化されているので、第1の吹き付け領域RB3が、第1の加熱領域RH1との間で一定の距離を保ちながら移動する(第1の吹き付け領域移動工程)。第1の加熱領域RH1の基板Wの外周への移動に同伴して、第1の吹き付け領域RB3が基板Wの外周に向けて移動する。第1の吹き付け領域RB3を基板Wの外周に向けて移動させることにより、穴Hの外縁すなわち蒸気層形成部VFの内周が拡げられる(穴拡大工程)。蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜LFに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、気体の流れによる小さな押し力によって、蒸気層形成部VFの内周を基板Wの外周に向けてスムーズに移動させることができる。第1の吹き付け領域RB3に気体を吹き付けながら、第1の吹き付け領域RB3を基板Wの外周に向けて移動させることによって、蒸気層形成部VFの内周位置を高精度に制御しながら、蒸気層形成部VFの内周を拡げることができる。蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターンP1の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
【0151】
また、穴拡大工程における穴Hの拡大は、気体の吹き付けだけでなく、基板Wの上面上の有機溶剤に、基板Wの回転による遠心力が働くことによっても促進される。そして、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFは、基板Wの中央部側から移動してくる有機溶剤によって外方に押され、基板W外に排出される。
第4の基板処理例においても、第1の基板処理例(図10参照)と同様に、蒸気層形成部移動工程の途中から、第1のランプヒータ52からの光の照射のみによらず、第2のランプヒータ72からの光の照射によっても基板Wが加熱される(図19のS30。補助加熱工程)。第2のランプヒータ72からの光の照射の態様については、第1の基板処理例(図10参照)の場合と同等であるので、説明を省略する。
【0152】
蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁がさらに拡大することにより、図20Eに示すように、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFが基板Wから排除され、円環状の蒸気層形成部VFのみが基板Wの上面上に残留する。そして、図20Fに示すように、第1の吹き付け領域RB3が基板Wの外周部に達することにより、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)が基板Wの上面の外周まで広がり、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出される。
【0153】
これにより、基板Wの上面から液がなくなり、基板Wの上面全域が露出する。穴Hが全域に広がった後の基板Wの上面には、液滴が存在しない。これにより、基板Wの乾燥が完了する。
円環状の蒸気層形成部VFの移動によって、蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLをパターンP1に接触させることなく、液膜LFを基板Wから排除できる。これにより、有機溶剤が基板W上のパターンP1に及ぼす表面張力を抑制できるので、パターンP1の倒壊を抑制または防止できる。
【0154】
第1のランプヒータ52の照射開始から予め定める加熱期間が経過すると、制御装置3は、第1のランプヒータ52および第2のランプヒータ72への電力の供給を停止して第1のランプヒータ52および第2のランプヒータ72の発光を停止させる。
また、制御装置3は、スピンモータ19を制御して、基板Wの回転を停止させる(図19のS31)。
【0155】
基板Wの回転停止後に、チャンバー4から基板Wを搬出する搬出工程(図19のS32)が実行される。図19のS32の工程は、第1の基板処理例(図10参照)のS12と同等の工程である。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態に関連して述べた作用効果に加えて、次のような作用効果を奏する。
【0156】
すなわち、基板Wの上面において、第1の吹き付け領域RB3が、第1の加熱領域RH1よりも小さい。そして、基板Wの上面において、第1の吹き付け領域RB3の全域が第1の加熱領域RH1の外縁の内側に配置されている。そのため、加熱領域の加熱によって形成された蒸気層形成部VFに確実に気体を吹き付けることができる。これにより、蒸気層形成部VFに穴Hを容易に形成できる。
【0157】
また、第4の基板処理例において、第1の実施形態の第2の基板処理例のように、蒸気層形成部VFの移動において、第1の吹き付け領域RB3だけでなく第2の吹き付け領域RB2に気体を吹き付け、第1の吹き付け領域RB3の移動に併せて第2の吹き付け領域RB2を移動させるようにしてもよい。
また、第4の基板処理例において、第1の実施形態の第3の基板処理例のように、蒸気層形成部VFの移動において、第2のランプヒータ72からの第2の加熱領域RH2を行わず、第1のランプヒータ52からの第1の加熱領域RH1の加熱のみによって基板Wを加熱してもよい。
【0158】
図21は、基板処理装置201によって行われる第5の基板処理例について説明するための工程図である。図22A図22Dは、第5の基板処理例が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。第5の基板処理例において、第4の基板処理例と同等の工程には、図21において同一の参照符号を付している。
第5の基板処理例では、第2のランプヒータ72からの光の照射開始後に、蒸気層形成部移動工程(図21のS40)が開始される。また、蒸気層形成部移動工程(図21のS40)において、上面ヘッド230は水平方向に移動しない。すなわち、上面ヘッド230を中央処理位置で静止させた状態で、蒸気層形成部VFが基板Wの外周に向けて移動させられる。
【0159】
第5の基板処理例では、液膜LFに穴Hを開ける穴形成工程(図21のS28)の実行後、第2のランプヒータ72による基板Wの加熱が開始される(図21のS39)。第2のランプヒータ72の発光開始に先立って、第2のランプヒータ72が、第1の実施形態に係る第1~第3の基板処理例における照射開始位置PS1よりも回転軸線A1寄りの照射開始位置PS2に配置されている。そして、穴Hの形成後、所定のタイミングになると、制御装置3は第2のランプヒータ72への電力の供給を開始して、第2のランプヒータ72の発光を開始させる。第2のランプヒータ72による基板Wの加熱によって、第2の加熱領域RH2が形成される。また、第2のランプヒータ72による基板Wの加熱は、穴Hの形成前から開始されていてもよい。照射開始位置PS2に配置された第2のランプヒータ72による第2の加熱領域RH2の内周端と回転軸線A1との間の距離が、基板Wの中央部に配置されている第1の加熱領域RH1の外周端と回転軸線A1との間の距離よりも短い。
【0160】
また、穴形成工程(図21のS28)によって形成された穴Hが拡大される。穴Hの拡大は、制御装置3がスピンモータ19を制御して基板Wの回転速度を一時的に上昇させることにより行う。そして、制御装置3は、第2の気体バルブ98を開いて、第2の気体ノズル35の第2の気体吐出口35aからの気体の吐出を開始する(第2の吹き付け工程)。第2の気体ノズル35に供給される気体の温度は、室温であってもよいし、室温より高くてもよい。これにより、図22Aに示すように、穴Hの外径が拡大する。
【0161】
蒸気層形成部移動工程(図21のS40)の実行に先立って、第2のランプヒータ72よる基板Wの加熱が開始される(図21のS39)。
次いで、蒸気層形成部移動工程(図21のS40)が行われる。この蒸気層形成部移動工程(図21のS40)は、蒸気層形成部VFの外周を拡げる外周拡大工程と、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)を拡げる穴拡大工程と、を含む。穴拡大工程は、外周拡大工程に並行して実行される。
【0162】
第5の基板処理例では、図22Bに示すように、蒸気層形成部移動工程(図21のS40)において、上面ヘッド230を中央処理位置で静止させた状態で、蒸気層形成部VFが基板Wの外周に向けて移動させられる。
蒸気層形成部移動工程(図21のS40)において、制御装置3は、第2の気体ノズル35からの気体を吐出しながらかつ第2のランプヒータ72から光を照射しながら、第1の移動装置39(図3参照)を制御して、第2のランプヒータ72および第2の気体ノズル35を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。これにより、第2の加熱領域RH2が基板Wの上面内を基板Wの外周に向けて移動する。第2の加熱領域RH2の移動に伴って、円環状の蒸気層形成部VFの外周が拡大する(外周拡大工程)。
【0163】
また、蒸気層形成部VFの内周に対し内側に設定された第2の吹き付け領域RB2に気体が吹き付けられることにより、蒸気層形成部VFの内周が基板Wの外周に向けて押される。第2の気体ノズル35が第2のランプヒータ72に同伴移動可能に設けられているので、第2の吹き付け領域RB2が、第2の加熱領域RH2との間で一定の距離を保ちながら移動する(第2の吹き付け領域移動工程)。第2の加熱領域RH2の基板Wの外周への移動に同伴して、第2の吹き付け領域RB2が基板Wの外周に向けて移動する。第2の吹き付け領域RB2を基板Wの外周に向けて移動させることにより、穴Hの外縁すなわち蒸気層形成部VFの内周が拡げられる(穴拡大工程)。蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜LFに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、気体の流れによる小さな押し力によって、蒸気層形成部VFの内周を基板Wの外周に向けてスムーズに拡げることができる。第2の吹き付け領域RB2に気体を吹き付けながら、第2の吹き付け領域RB2を基板Wの外周に向けて移動させることによって、蒸気層形成部VFの内周位置を高精度に制御しながら蒸気層形成部VFの内周を拡げることができる。蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターンP1の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
【0164】
また、穴拡大工程における穴Hの拡大は、気体の吹き付けだけでなく、基板Wの上面上の有機溶剤に、基板Wの回転による遠心力が働くことによっても促進される。そして、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFは、基板Wの中央部側から移動してくる有機溶剤によって外方に押され、基板W外に排出される。
蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁がさらに拡大することにより、図22Bに示すように、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFが基板Wから排除され、円環状の蒸気層形成部VFのみが基板Wの上面上に残留する。そして、図22Cに示すように、第2の吹き付け領域RB2が基板Wの外周部に達することにより、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)が基板Wの上面の外周まで広がり、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出される。
【0165】
これにより、基板Wの上面から液がなくなり、図22Dに示すように、基板Wの上面全域が露出する。穴Hが全域に広がった後の基板Wの上面には、液滴が存在しない。これにより、基板Wの乾燥が完了する。
図23A図23Cは、第5の基板処理例の変形例が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。
【0166】
図23A図23Cに示す変形例では、蒸気層形成部VFの内周の内側への第2の気体ノズル35による気体の吹き付けは行わない。蒸気層形成部移動工程(図21のS40)における穴Hの拡大は、専ら、基板Wの上面上の有機溶剤に、基板Wの回転による遠心力が働くことによって行われる。
この変形例では、図23Aに示すように、蒸気層形成部移動工程(図21のS40)において、制御装置3は、第2のランプヒータ72から光を照射しながら、第1の移動装置39を制御して、第2のランプヒータ72を、基板Wの外周に向けて水平に移動させる。これにより、第2の加熱領域RH2が基板Wの上面内を基板Wの外周に向けて移動する。第2の加熱領域RH2の移動に伴って、円環状の蒸気層形成部VFの外周が拡大する(外周拡大工程)。
【0167】
また、蒸気層形成部移動工程(図21のS40)における形成部移動速度が、基板Wの上面の中央部に配置されている蒸気層形成部VFに基板Wの回転による遠心力が働くような速度に設定される。基板Wの回転による遠心力により、蒸気層形成部VFの内周が基板Wの外周に向けて押される。基板Wの回転による遠心力により、穴Hの外縁すなわち蒸気層形成部VFの内周が拡げられる(穴拡大工程)。蒸気層形成部VFでは、基板W上の液膜LFに働く摩擦抵抗が零と見なせるほど小さいので、基板Wの回転による遠心力という小さな力によって、蒸気層形成部VFの内周を基板Wの外周に向けてスムーズに拡げることができる。蒸気層形成部VFの内周に形成される気液界面GLが、その高さ位置をパターンP1の上端よりも高く保ちながら、基板Wの外周に向けて移動する。
【0168】
蒸気層形成部VFの外周および穴Hの外縁がさらに拡大することにより、図23Bに示すように、蒸気層形成部VFの外側の液膜LFが基板Wから排除され、円環状の蒸気層形成部VFのみが基板Wの上面上に残留する。そして、図23Cに示すように、第2の吹き付け領域RB2が基板Wの外周部に達することにより、穴Hの外縁(すなわち蒸気層形成部VFの内周)が基板Wの上面の外周まで広がり、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出される。
【0169】
これにより、基板Wの上面から液がなくなり、基板Wの上面全域が露出する。穴Hが全域に広がった後の基板Wの上面には、液滴が存在しない。これにより、基板Wの乾燥が完了する。
図21図23Cに示す第5の基板処理例およびその変形例では、蒸気層形成部VFの移動開始後に、制御装置3が第1の気体バルブ48を閉じて第1の気体ノズル234からの気体の吐出を停止している。しかし、蒸気層形成部VFの移動開始後にも第1の気体ノズル234からの気体吐出を続行し、基板W上から液膜LFが除去されるまでその吐出が行われてもよい。
【0170】
また、図21図23Cに示す第5の基板処理例およびその変形例では、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出されるまで、第1のランプヒータ52による第1の加熱領域RH1の加熱を継続しているが、蒸気層形成部VFの移動開始後の所定のタイミングで、第1の加熱領域RH1による第1の加熱領域RH1の加熱が停止されてもよい。
また、図23A図23Cに示す第5の基板処理例の変形例において、第1の気体ノズル234から吐出される気体の流量を増大させることにより、穴Hの外縁(すなわち、蒸気層形成部VFの内周)を拡大させてもよい。具体的には、制御装置3は、第1の流量調整バルブ49の開度を大きくして、第1の気体ノズル234から吐出される気体の流量を漸次的に(段階的にまたは連続的に)増大させる。これにより、穴Hの外縁(すなわち、蒸気層形成部VFの内周)が、漸次的に広がる。
【0171】
図24は、この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置301に備えられた処理ユニット302の内部を水平に見た模式図である。図25は、スピンベース16およびこれに関連する構成を上から見た模式図である。図26は、基板処理装置301によって実行される基板処理例について説明するための工程図である。
第3の実施形態に係る基板処理装置301が、第1の実施形態に係る基板処理装置1と相違する主たる点は、第1の気体ノズル334および第1のランプヒータ352が互いに異なるハウジングを有している点である。第1の気体ノズル334は、第1のランプヒータ352に支持されているのではなく、第1のランプヒータ352を支持する第3のアーム64に支持されている。以下、具体的に説明する。
【0172】
処理ユニット302は、第1の実施形態に係る有機溶剤ノズル33、第1の気体ノズル34および第1のランプヒータ52に代えて、それぞれ、有機溶剤ノズル(処理液ノズル)333、第1の気体ノズル334および第1のランプヒータ352を備えている。有機溶剤ノズル333、第1の気体ノズル334および第1のランプヒータ352は、それぞれ個別に第3のアーム64に支持されている。図25には、第3のアーム64およびそれに関連する構成を示し、第1のアーム40および第2のアーム43ならびにそれらに関連する構成の図示を省略している。
【0173】
有機溶剤ノズル333には、有機溶剤配管45が接続されている。有機溶剤バルブ46が開かれると、有機溶剤が、有機溶剤ノズル33の吐出口から下方に連続的に吐出される。有機溶剤ノズル333、有機溶剤配管45および有機溶剤バルブ46によって、有機溶剤供給ユニット(処理液供給ユニット)が構成されている。
第1の気体ノズル334には、第1の気体配管47が接続されている。第1の気体バルブ48が開かれると、気体の流量を変更する第1の流量調整バルブ49の開度に対応する流量で、第1の気体ノズル334の第1の気体吐出口334aから下方に気体が連続的に吐出される。
【0174】
第1のランプヒータ352は、第2のランプヒータ72(図6図7等参照)と同等の構成を有している。第1のランプヒータ352からの光の照射によって基板Wを加熱することにより、基板Wの上面の第1の加熱領域RH3が加熱される。第1の加熱領域RH3は、第1のランプヒータ52による第1の加熱領域RH1よりも小さい。
図25に二点鎖線で示すように、第1のランプヒータ352が基板Wの上面の外周部に対応して配置されている場合において、第1の気体ノズル334が、第1のランプヒータ352に対し基板Wの回転方向Rの上流側に配置されている。
【0175】
すなわち、基板Wの上面において、第1の気体ノズル334からの気体が吹き付けられる第4の吹き付け領域RB4(図26参照)が、第1のランプヒータ352から光の照射によって加熱される第1の加熱領域RH3(図26参照)に対し、基板Wの回転方向Rの上流側に設定されている。
処理ユニット302では、前述の各基板処理例と同等の処理が実行される。
【0176】
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の実施形態で実施することもできる。
たとえば、前述の各基板処理例において、蒸気層形成部VFの液膜LFが基板Wから排出された後に、振り切り乾燥処理が行われていてもよい。具体的には、制御装置3は、スピンモータ19を制御して、薬液供給速度、リンス液供給速度および置換速度よりも大きい高回転速度(たとえば数千rpm)で基板Wを回転させる。仮に、基板Wの上面上に、有機溶剤の液滴が残っている場合であっても、これらの液滴が基板Wの上面から除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ19を制御して、基板Wの回転を停止させる。
【0177】
また、前述の各基板処理例の蒸気層形成部VFの移動において、基板Wの外周に向かうに従って、第1の加熱領域RH1,RH3および/または第2の加熱領域RH2に付与される熱量が増大されるようになっていてもよい。具体的には、基板Wの外周に向かうに従って第1のランプヒータ52,352および/または第2のランプヒータ72の出力を増大してもよいし、基板Wの外周に向かうに従って第1のランプヒータ52,352および第2のランプヒータ72の高さ位置を降下させて、基板Wに近づけるようにしてもよい。また、出力の増大と高さ位置の降下との両方が行われてもよい。これらにより、基板Wに付与される単位面積当たりの熱量を高く保つことができる。
【0178】
また、第2の実施形態の第5の基板処理例およびその変形例を、第1および第3の実施形態に組み合わせてもよい。すなわち、上面ヘッド30および第1のランプヒータ352を中央処理位置で静止状態に保ったまま、第2のランプヒータ72によって加熱されている第2の加熱領域RH2を基板Wの外周に向けて移動させることにより、蒸気層形成部VFの外周を拡大するようにしてもよい。
【0179】
第1の実施形態の第1の基板処理例や第2の実施形態の第4の基板処理例では、
蒸気層形成部形成工程(図10のS7)および蒸気層形成部形成工程(図19のS27)の後穴Hが形成される(図10のS8、図19のS28)として説明したが、蒸気層形成部VFの形成の際から穴Hが形成されていてもよい。すなわち、蒸気層形成部形成工程(図10のS7)および蒸気層形成部形成工程(図19のS27)においてリング状の蒸気層形成部VFが形成されてもよい。
【0180】
また、第1の実施形態の第2の基板処理例では、蒸気層形成部VFの液膜LFに気体を吹き付けて有機溶剤を部分的に排除することによって、蒸気層形成部VFの液膜LFに穴Hを形成するようにした。しかし、第1の実施形態の第1の基板処理例等と同様に、蒸気層形成部VFの液膜LFに加わる遠心力や基板Wの上面に生じる熱対流によって、蒸気層形成部VFの液膜LFの中央部に穴Hを形成するようにしてもよい。
【0181】
また、第1の実施形態の第1および第3の基板処理例、第2の実施形態ならびに第3の実施形態において、蒸気層形成部VFの液膜LFに気体を吹き付けて有機溶剤を部分的に排除することによって、蒸気層形成部VFの液膜LFの中央部に穴Hを形成するようにしてもよい。
また、第1~第3の実施形態において、第2の気体ノズル35を、第2のランプヒータ72を支持する第1のアーム40によって支持する構成を例に挙げたが、第2の気体ノズル35が第2のランプヒータ72を支持するアームとは別のアームによって支持されていてもよい。すなわち、第2の気体ノズル35が、第2のランプヒータ72と同伴移動可能に設けられていなくてもよい。
【0182】
また、第1~第3の実施形態において、第1の気体ノズル34,234,334および/または第2の気体ノズル35から吐出される気体の吐出方向が、基板Wの上面に対し、外向きに傾斜していてもよい。すなわち、第1の気体ノズル34,234,334および/または第2の気体ノズル35から吐出される気体は、基板Wの上面に近づくに従って基板Wの外方に向かう。この場合、第1の気体ノズル34,234,334および/または第2の気体ノズル35から吐出された気体を、蒸気層形成部VFの内周の内側に良好に吹き付けることができる。
【0183】
また、第1~第3の実施形態において、蒸気層形成部VFの移動において第2の吹き付け領域RB2に気体を吹き付けない場合には、第2の気体ノズル35およびそれに関連する構成(第2の気体配管97、第2の気体バルブ98および第2の流量調整バルブ99等)を廃止してもよい。
また、第1~第3の実施形態において、第2のランプヒータ72を、薬液ノズル31を支持する第1のアーム40によって支持する構成を例に挙げたが、第2のランプヒータ72が薬液ノズル31を支持するアームとは別のアームによって支持されていてもよい。
【0184】
また、第1~第3の実施形態において、蒸気層形成部VFの移動において第2のランプヒータ72によって基板Wを加熱しない場合には、第2のランプヒータ72を廃止してもよい。
また、第1~第3の実施形態において、第1の気体ノズル34,234,334が、第1のランプヒータ52,352を支持する第3のアーム64とは別のアームに支持されていてもよい。すなわち、第1の気体ノズル34,234,334が、第1のランプヒータ52,352と同伴移動可能に設けられていなくてもよい。
【0185】
また、第1~第3の実施形態において、第1のランプヒータ52,352および第2のランプヒータ72の合計2つのランプヒータを採用する場合を例に挙げたが、ランプヒータの個数は3つ以上であってもよい。
また、第1~第3の実施形態において、第1のランプヒータ52,352や第2のランプヒータ72に用いられる光源(第1の光源58や第2の光源78)が高出力のLEDであってもよい。この場合、高出力のLEDとして大型のLEDを例示できる。高出力のLEDを採用することにより、蒸気層形成部VFにおいて液膜LFを良好に浮上させることができる。ゆえに、パターンP1の倒壊を効果的に抑制または防止できる。
【0186】
また、第2の実施形態に係る上面ヘッド230が、スピンチャック5に保持されている基板Wの一部分だけでなく、基板Wの上面の全域を覆うことが可能なサイズに設けられていてもよい。すなわち、上面ヘッド230下面の径が、基板Wの径と同等かそれ以上であってもよい。
また、ランプヒータの態様として、前述の第1のランプヒータ52,352および第2のランプヒータ72とは異なる態様を採用することもできる。たとえば、図27および図28に示すランプヒータ401,501では、ランプヒータ401,501の底部に、2つの発光部401A,501Aが移動方向D1に沿って並べられており、底面視で、2つの発光部401A,501Aの間に気体吐出口403,503が形成されている。
【0187】
図27に示すランプヒータ401では、円形の底面を4分割した領域のうち移動方向D1に沿う2つの領域にのみ、複数の光源402を含む発光部401Aが形成されている。
図28に示すランプヒータ501では、各発光部501Aに含まれる光源502は、底面視で移動方向D1に直交する配列方向D2に沿って配列されている。気体吐出口503は、配列方向D2に沿って長尺状に延びている。
【0188】
また、液膜LFに含まれる処理液として有機溶剤を例示したが、処理液として、有機溶剤以外の液体を用いてもよい。
前述の各実施形態において、第1のランプヒータ52,352の第1の光源58および第2のランプヒータ72の第2の光源78は、LED光源以外であってもよい。第1の光源58および第2の光源78の例としては、蛍光灯、水銀灯、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、クセノンランプ、Naランプ、UVランプ等を例示できる。また、第1の光源58および第2の光源78が、点発光体ではなく面状発光体によって構成されていてもよい。
【0189】
また、前述の実施形態において、基板処理装置1,201,301が半導体ウエハからなる基板Wを処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置が、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板を処理する装置であってもよい。
【0190】
前述の全ての構成のうちの2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程のうちの2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0191】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御装置
5 :スピンチャック(基板保持ユニット)
19 :スピンモータ(基板回転ユニット)
33 :有機溶剤ノズル(処理液ノズル)
34 :第1の気体ノズル
34a :第1の気体吐出口
35 :第2の気体ノズル
35a :第2の気体吐出口
39 :第1の移動装置(第2の加熱領域移動ユニット、第2の吹き付け領域移動ユニット)
52 :第1のランプヒータ
54A :第1の発光部
63 :第3の移動装置(第1の加熱領域移動ユニット、第1の吹き付け領域移動ユニット)
64 :第3のアーム
72 :第2のランプヒータ
74A :第2の発光部
201 :基板処理装置
202 :処理ユニット
234 :第1の気体ノズル
234a:第1の気体吐出口
301 :基板処理装置
302 :処理ユニット
333 :有機溶剤ノズル(処理液ノズル)
334 :第1の気体ノズル
334a:第1の気体吐出口
352 :第1のランプヒータ
401A:発光部
501A:発光部
RH1 :第1の加熱領域
RH2 :第2の加熱領域
RH3 :第1の加熱領域
W :基板
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A-11B】
図11C-11D】
図11E-11F】
図12A-12B】
図12C-12D】
図13
図14A-14B】
図14C-14D】
図15
図16A-16B】
図16C
図17
図18
図19
図20A-20B】
図20C-20D】
図20E-20F】
図21
図22A-22B】
図22C-22D】
図23A-23B】
図23C
図24
図25
図26
図27
図28