(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】高出力モードロックレーザシステム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/16 20060101AFI20230529BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20230529BHJP
H01S 3/042 20060101ALI20230529BHJP
H01S 3/11 20230101ALI20230529BHJP
G02F 1/37 20060101ALI20230529BHJP
G02F 1/39 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H01S3/16
H01S3/00 F
H01S3/042
H01S3/11
G02F1/37
G02F1/39
(21)【出願番号】P 2019529894
(86)(22)【出願日】2017-12-02
(86)【国際出願番号】 US2017064369
(87)【国際公開番号】W WO2018102791
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-09-08
(32)【優先日】2016-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507159407
【氏名又は名称】ニューポート コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】シャール ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】チエン チン-ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ボギー リチャード
(72)【発明者】
【氏名】カフカ ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ダイナー アディ
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0055844(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0200912(US,A1)
【文献】特表2013-502725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0141340(US,A1)
【文献】特開平11-289120(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102605425(CN,A)
【文献】Saraceno C.J., et al.,Sub-100 femtosecond pulses from a SESAM modelocked thin disk laser,Applied Physics B,米国,Springer,2012年01月26日,Vol. 106,P. 559-562,DOI https://doi.org/10.1007/s00340-012-4900-5
【文献】Ge Wenqi et al.,High Power Continuous-Wave Operation and Dynamics of Soliton Mode-Locked Yb,Na:CaF2 Lasers at Room Temperature,IEEE Journal of Quantum Electronics,米国,IEEE,2011年07月,Vol. 47, No. 7,p. 977-983,DOI 10.1109/JQE.2011.2147759
【文献】Pugzlys A., et al,Multi-mJ, 200-fs, cw-pumped, cryogenically cooled, Yb,Na:CaF2 amplifier ,Optics Letters,米国,Optical Society of America,2009年07月01日,Vol.34, No. 13,p. 2075-2077,DOI https://doi.org/10.1364/OL.34.002075
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポンプ信号を出力するように構成された少なくとも1つのポンプ源と、
少なくとも1つの高反射器と少なくとも1つの出力カプラとによって形成された少なくとも1つのレーザキャビティと、
前記少なくとも1つのレーザキャビティ内に位置決めされた少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶であって、前記少なくとも1つのポンプ信号と通信してそれによってポンピングされ、かつ20W又はそれよりも高い出力電力と200fs又はそれ未満のパルス幅とを有する少なくとも1つの出力信号を出力するように構成された前記少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶と、
を含むことを特徴とする高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポンプ信号は、連続波ポンプ信号を含むことを特徴とする請求項1に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの出力信号は、連続波モードロック信号を含むことを特徴とする請求項1に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポンプ源は、単一光ファイバデバイスに結合された単一ダイオードパッケージ内に位置付けられた複数のレーザダイオードエミッタを含み、各エミッタが、光信号を該単一光ファイバデバイス内に出力するように構成され、該単一光ファイバデバイスは、該複数のレーザダイオードエミッタから該光信号を受信して前記少なくとも1つのポンプ信号を出力するように構成され、前記少なくとも1つのポンプ信号は単一ポンプ信号であることを特徴とする請求項1に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのレーザキャビティ内に位置決めされた少なくとも1つの結晶マウントを更に含み、
前記少なくとも1つの結晶マウントは、前記少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶を前記少なくとも1つのレーザキャビティ内で支持して位置決めするように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの結晶マウントは、該少なくとも1つの結晶マウント上に位置決めされた前記少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶の対流冷却を強化するように構成された少なくとも1つの熱制御特徴を含むことを特徴とする請求項5に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶の冷却を支援するように構成された少なくとも1つの熱制御システムを更に含むことを特徴とする請求項6に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの熱制御システムは、空冷システムを含むことを特徴とする請求項7に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのレーザキャビティ内に位置付けられた結晶マウント上に位置決めされたイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶を更に含み、
前記結晶マウントは、それに結合された熱制御システムを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶は、<111>カット結晶を含むことを特徴とする請求項1に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの出力信号は、前記出力電力のダイナミックレンジの上側領域の少なくとも50パーセント(50%)にわたる連続モードロッキング範囲を有することを特徴とする請求項1に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項12】
少なくとも1つのポンプ源と、
少なくとも1つの高反射器と少なくとも1つの出力カプラとで形成された少なくとも1つのレーザキャビティと、
前記少なくとも1つのレーザキャビティ内に位置決めされて前記少なくとも1つのポンプ源と連通する少なくとも1つの
イッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶であって、前記少なくとも1つの出力カプラから出力されるように構成された20W又はそれよりも高いかつ200fs又はそれ未満の少なくとも1つの出力信号を出力するように構成された前記少なくとも1つの
イッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶と、
を含むことを特徴とする高出力バルクレーザシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのポンプ源から出力された少なくとも1つのポンプ信号が、連続波ポンプ信号を含むことを特徴とする請求項12に記載の高出力バルクレーザシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの出力信号は、連続波モードロック信号を含むことを特徴とする請求項12に記載の高出力バルクレーザシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのポンプ源は、単一ダイオードベースのポンプ源と光学連通して結合された少なくとも1つの光ファイバデバイスを含むことを特徴とする請求項12に記載の高出力バルクレーザシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのポンプ源は、単一光ファイバデバイスに結合された単一ダイオードパッケージ内に位置付けられた複数のレーザダイオードエミッタを含み、各エミッタが、少なくとも1つの光信号を該単一光ファイバデバイス内に出力するように構成され、該単一光ファイバデバイスは、該複数のレーザダイオードエミッタから該少なくとも1つの光信号を受信して単一ポンプ信号を出力するように構成されることを特徴とする請求項12に記載の高出力バルクレーザシステム。
【請求項17】
少なくとも1つの高出力バルクレーザシステムが、空冷式レーザシステムを含むことを特徴とする請求項12に記載の高出力バルクレーザシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの
イッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶の冷却を支援するように構成された少なくとも1つの熱制御システムを更に含むことを特徴とする請求項12記載の高出力バルクレーザシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの出力信号は、出力電力のダイナミックレンジの上側領域の少なくとも50パーセント(50%)にわたる連続モードロッキング範囲を有することを特徴とする請求項12に記載の高出力バルクレーザシステム。
【請求項20】
多光子顕微鏡システムに使用するための高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステムであって、
少なくとも1つのポンプ信号を出力するように構成された少なくとも1つのポンプ源と、
少なくとも1つの高反射器と少なくとも1つの出力カプラとによって形成された少なくとも1つのレーザキャビティと、
少なくとも1つの光パラメトリック発振器内に位置決めされた少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶であって、前記少なくとも1つのポンプ信号と連通してそれによってポンピングされ、かつ20W又はそれよりも高い出力電力と200fs又はそれ未満のパルス幅とを有する少なくとも1つの出力信号を出力するように構成された前記少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶と、
少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザと光学連通する少なくとも1つの高調波発生システムであって、光パラメトリック発振器出力信号を受信して少なくとも1つの高調波出力信号を出力するように構成された前記少なくとも1つの高調波発生システムと、
前記少なくとも1つの高反射器と前記少なくとも1つの出力カプラとによって形成されて前記少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザと光学連通する前記少なくとも1つの光パラメトリック発振器と、
前記光パラメトリック発振器の少なくとも1つと光学連通する少なくとも1つの多光子顕微鏡システムと、
を含むことを特徴とする高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つのポンプ源は、単一光ファイバデバイスに結合された単一ダイオードパッケージ内に位置付けられた複数のレーザダイオードエミッタを含み、各エミッタが、少なくとも1つの光信号を該単一光ファイバデバイス内に出力するように構成され、該単一光ファイバデバイスは、該複数のレーザダイオードエミッタから該少なくとも1つの光信号を受信して
前記少なくとも1つのポンプ信号を出力するように構成され、前記少なくとも1つのポンプ信号は単一ポンプ信号であることを特徴とする請求項20に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項22】
前記少なくとも1つの高調波発生システムは、前記光パラメトリック発振器出力信号の照射に反応して第2高調波を出力するように構成されていることを特徴とする請求項20に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【請求項23】
前記少なくとも1つの高調波発生システムは、前記光パラメトリック発振器出力信号の照射に反応して第3高調波を出力するように構成されていることを特徴とする請求項20に記載の高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、引用により本明細書にその内容全体が組み込まれている2016年12月4日出願の「高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムモードロックレーザ及び使用方法」という名称の米国仮特許出願第62/429、830号に対する優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
高出力モードロックレーザシステムは、多光子顕微鏡及びデバイス製造のような様々な用途で現在使用されている。現在、これらの用途に関して3つのタイプの高出力モードロックレーザシステム:薄型ディスクレーザシステム、チャープパルスファイバ増幅器システム、及びバルクレーザシステムが市販されている。薄型ディスクレーザシステムは、ヒートシンク上に位置決めされた活性利得材料の薄層を含むダイオードポンプ式固体レーザシステムである。ダイオードポンプ源からのポンプ信号は、活性利得材料上に複数回入射し、これは、それに応答して出力信号を生成する。歴史的に、ディスクレーザシステムは、高い平均電力を生成することが可能である。しかし、ディスクレーザシステムは、約500フェムト秒(以下、「fs」)未満のパルス幅を有して高い平均電力及び高い繰返し速度での出力信号を確実に生成することがほとんど不可能である。更に、ディスクレーザシステムは、複雑で高価な光ポンピング構成及び熱管理システムを必要とする。ピーク電力限界に起因して、ファイバベースの高出力モードロックレーザは、発振器と、増幅の前のパルスの延伸及び次に増幅の後のその後の圧縮を含むチャープパルス増幅器とを必要とし、従って、システムにコストと複雑さを追加する。
【0003】
対照的に、バルク高出力モードロックレーザシステムは、利得材料としてYb:YAG、Yb:CALGO、Yb:KYW、又はYb:KGWのような光学結晶を使用する。従来技術のバルク高出力モードロックレーザシステムは、従来から有用であることが判明しているが、いくつかの欠点が確認されている。多くの場合に、光学結晶の高電力光ポンピングは、光学結晶内に1又は2以上の望ましくない熱効果をもたらす。例えば、1又は2以上の熱レンズが光学結晶内に生成され、それによってレーザシステムの出力電力を低減する場合がある。典型的に、これらの従来技術のバルクレーザシステムの平均出力電力は、約15W未満である。
図1は、連続波モードロック(CW-ML)信号が従来技術レーザキャビティ内でレーザから出力される範囲をポンプ源からの平均ポンプ電力に対する平均出力電力の関数としてグラフに示している。図示のように、狭いCW-MLレジームは、望ましくない不安定レジームによって終わる。従って、CW-ML信号を必要とする作動又はシステムは、比較的低い光学平均電力用途に制限される。これに加えて、現在利用可能なバルク高出力モードロックレーザシステムは、複数のポンプ源及び複合熱管理システムなどを必要とする複合システムである傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
すなわち、上記に照らして、高い平均電力で短いパルスを生成することができる簡単で廉価な高出力モードロックレーザシステムに対する継続する必要性が存在する。20Wよりも高い平均電力でサブ200fsパルス持続時間を生成することができる簡単で廉価な高出力モードロックレーザシステムに対する更に別の必要性が存在する。更に、用途に十分な繰返し速度でこれらの短いパルス持続時間及び高い平均電力を生成することができる簡単で廉価な高出力モードロックレーザシステムに対する継続する必要性が存在する。更に、製造の容易さ及びロバスト性に関して拡張CW-ML範囲を有する簡単で廉価な高出力モードロックレーザシステムに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、高出力モードロックレーザシステム及び使用方法の様々な実施形態を開示する。一実施形態では、本出願は、高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステムを開示する。高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステムは、少なくとも1つのポンプ信号を提供するように構成された少なくとも1つのポンプ源を含むことができる。ポンプ信号は、少なくとも1つの高反射器と少なくとも1つの出力カプラとによって形成された少なくとも1つのレーザキャビティ内に向けることができる。更に、少なくとも1つのイッテルビウムドープフッ化カルシウム光学結晶は、少なくとも1つのレーザキャビティ内に位置決めすることができる。ポンプ源からのポンプ信号と通信してそれによってポンピングされるイッテルビウムドープフッ化カルシウムレーザシステムは、20W又はそれよりも高い出力電力と約200fs又はそれ未満のパルス幅とを有する少なくとも1つの出力信号を出力するように構成することができる。
【0006】
別の実施形態では、本出願は、高出力バルクレーザシステムに関する。前の実施形態と同様に、高出力バルクレーザは、少なくとも1つのポンプ源を含む。少なくとも1つの高反射器と少なくとも1つの出力カプラとで形成された少なくとも1つのレーザキャビティは、ポンプ源からポンプ信号を受信するように構成することができる。少なくとも1つのバルク光学結晶は、レーザキャビティ内に位置決めすることができ、かつポンプ源と連通している。バルク光学結晶は、出力カプラから出力することができる少なくとも1つの出力信号20W及び200fsを出力するように構成することができる。
【0007】
更に別の実施形態では、本出願は、高出力レーザを開示する。高出力レーザは、少なくとも1つのポンプ源を含む。少なくとも1つの高反射器と少なくとも1つの出力カプラとによって形成された少なくとも1つのレーザキャビティは、ポンプ信号を受信するように構成することができる。少なくとも1つの利得媒体は、レーザキャビティ内に位置決めすることができ、かつポンプ源と連通している場合がある。利得媒体は、少なくとも1つの出力カプラからの200fs又はそれ未満のパルス幅と少なくとも40MHzの繰返し速度とを有する少なくとも20Wの少なくとも1つの出力信号を出力するように構成することができる。
【0008】
本明細書に説明するような高出力モードロックレーザシステム及び使用方法の他の特徴及び利点は、以下の詳細説明の考察からより明らかになるであろう。
【0009】
本明細書に開示するような高出力モードロックレーザシステム及び使用方法の新規な態様は、以下の図面を精査することによってより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来技術の高出力レーザシステムのモードロッキングレジームを示すグラフである。
【
図2】光ファイバデバイスを通じてポンプ信号をレーザキャビティに送出する単一ダイオードポンプ源を有する高出力モードロックレーザシステムの実施形態の概略図である。
【
図3】複数のポンプ信号をレーザキャビティに送出する単一ダイオードポンプ源を有する高出力モードロックレーザシステムの別の実施形態の概略図である。
【
図4】複数のポンプ信号をレーザキャビティに送出する複数のダイオードポンプ源を有する高出力モードロックレーザシステムの実施形態の概略図である。
【
図5】本明細書に説明する新規のバルクYb:CaF
2レーザシステムの性能を従来技術レーザの性能に対して比較する表である。
【
図6】本明細書に開示するYb:CaF
2モードロックレーザシステムの実施形態によって達成される性能の改善とモードロッキングレジームの増大とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願は、様々な光学システムと共に使用するための高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウム(以下、「Yb:CaF
2」)モードロックレーザシステムの様々な実施形態に関する。高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムの様々な実施形態は、Yb:CaF
2のようなYbドープ光学結晶の独特な光熱特性を利用してレーザシステムの出力電力のダイナミックレンジの上側領域の約50パーセント(50%)にわたる連続モードロック範囲を有する一方で共鳴している最低又はほぼ最低程度の横断方向空間ガウスビーム(TEM
00)を有しながらモードロッキング窓の上側領域でスペクトル不安定性を低減又は排除する出力信号を提供するように構成された新規のキャビティ設計を含む。一実施形態では、本明細書に説明する高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、約50MHzよりも高い繰返し速度で約20Wを超える平均出力電力を有するほぼ変換限界のサブ300fsパルスを送出するように構成することができる。例えば、一実施形態では、本明細書に説明するバルクYb:CaF
2レーザシステムは、約70MHzよりも高い繰返し速度で約25Wを超える平均出力電力を有するほぼ変換限界のサブ200fsパルスを送出するように構成することができる。別の実施形態では、本明細書に説明するバルクYb:CaF
2レーザシステムは、約80MHzよりも高い繰返し速度で約30W又はそれよりも高いものを超える平均出力電力を有するほぼ変換限界のサブ150fsパルスを送出するように構成することができる。本明細書に開示する高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、高調波結晶、光パラメトリック発振器、及び様々な多光子顕微鏡用途のための類似のデバイスと併せて使用することができる。任意的に、本明細書に開示する高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、例えばデュアルコム分光法用途を含むレーザベースの分光法用途に使用するように構成することができる。別の実施形態では、本明細書に開示する高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、そこに位置決めされた又はそれに結合された少なくとも1つの増幅器モジュールを含み、それによって高出力モードロックレーザシステムを提供することができる。任意的に、高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、近赤外線光パラメトリック発振器(以下、「OPO」)、及び/又は中赤外線OPO、及び/又は遠赤外線OPO、及び/又は光パラメトリック発生器をポンピングするためのポンプ源として使用することができる。別の用途では、本明細書に説明する高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、書込導波路などのような様々なデバイスを製造するのに使用することができる。更に別の用途では、本明細書に説明する高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、スーパーコンティニウム発生システム及びデバイスを生成するためにファイバベースの非線形光学デバイス及び/又はサファイア、YAG、又はダイヤモンドのようなバルク非線形デバイスを含む非線形光学材料と併せて使用することができる。更に別の用途では、本明細書に説明する高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムは、分光法用途に関してデュアルコム光源を生成するのに使用することができる。
図2は、高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステム(以下、「レーザシステム」)の実施形態の概略図を示している。図示のように、レーザシステム200は、少なくとも1つのポンプ信号204を出力するように構成された少なくとも1つのポンプ源202を含む。一実施形態では、ポンプ信号204は、約850nmから約995nmの波長を有する。例えば、一実施形態では、ポンプ信号204は、約979nmの波長を有する。別の実施形態では、ポンプ信号204は、約940nmの波長を有する。任意的に、ポンプ信号204は、約976nmの波長を有することができる。更に別の実施形態では、ポンプ信号204は、約917nmの波長を有する。別の実施形態では、ポンプ信号204は、そこに複数の波長を含むことができる。更に、ポンプ源202は、連続波ポンプ信号204を出力するように構成することができる。別の実施形態では、ポンプ源202は、少なくとも1つのパルスポンプ信号204を出力するように構成することができる。
【0012】
図示の実施形態では、ポンプ源202は、複数のエミッタをそこに有する単一ダイオードベースのポンプ源を含み、各エミッタは光信号を出力するように構成される。例えば、一実施形態では、単一ダイオードポンプ光源は、単一ダイオードパッケージ又はデバイス内に位置付けられた複数のレーザダイオードエミッタを含み、各エミッタは、光信号を単一光ファイバデバイス内に出力するように構成される。従って、単一光ファイバデバイスは、複数のレーザダイオードエミッタから光信号を受信して単一ポンプ信号を出力するように構成することができる。任意的に、本発明のシステムでは、複数のダイオードベースのポンプ源を使用することができる。更に、いずれの様々な代替ポンプ源もレーザシステム200と共に使用することができる。例えば、ファイバレーザは、ポンプ源202として使用することができる。図示のように、少なくとも1つの光ファイバデバイス206は、単一ダイオードベースのポンプ光源202に結合されるか又は他にそれと光学連通し、ポンプ光源202内の複数のエミッタから複数の光信号を受信してそこから単一ポンプ信号204を出力するように構成することができる。一実施形態では、光ファイバデバイス206は、単一モード混合式ポンプ信号204を出力するように構成される。任意的に、光ファイバデバイス206は、非モード混合式ポンプ信号204を出力するように構成することができる。更に、光ファイバデバイス206は、ポンプ源202内の少なくとも1つのエミッタからの少なくとも1つのポンプ信号の偏光を変えるように構成することができる。例えば、光ファイバデバイス206は、単一直線偏光を有するポンプ信号204を出力するように構成することができる。これに代えて、光ファイバデバイス206は、楕円偏光を有するポンプ信号204を出力するように構成することができる。別の代替例では、光ファイバデバイス206は、偏光解消ポンプ信号204を出力するように構成することができる。任意的に、光ファイバデバイス206は、ポンプ源202内に位置決めされた少なくとも2つのエミッタから受信した少なくとも2つの光信号のモード、偏光、及び強度などを混合するように構成することができる。当業者は、光ファイバデバイス206があらゆる様々な長さ及び横断方向寸法などで製造することができることを認めるであろう。更に、一実施形態では、光ファイバデバイス206は、100ミクロン又は200ミクロンのようなコアサイズを有する多モードファイバ、単一モードファイバ、段階的インデックスファイバ、ホーリーファイバ、及び光子的結晶ファイバなどを有することができる。
【0013】
再び
図2を参照すると、ポンプ信号204は、少なくとも1つの光学システム210に向けることができる。図示の実施形態では、光学システム210は、第1のレンズ212と任意的な第2のレンズ214とを含む。従って、
図2は、テレスコープポンプ信号204をレーザに集束させるように構成されたレンズデバイス又はシステムのテレスコープを有するレーザシステム200を示している。当業者は、光学システム210ではあらゆる数又はタイプの光学構成要素又はデバイスを使用することができることを認めるであろう。例えば、
図2に示すように、少なくとも1つの任意的な光学構成要素216を光学システム210内に又はその近くに位置決めすることができる。例示的な任意的光学要素216は、レンズ、格子、スペクトルフィルタ、ビームスプリッタ、センサ、空間開口、シャッター、変調器、減衰器、ホモジナイザー、及び偏光子などを含むがこれらに限定されない。
【0014】
図2に示すように、ポンプ信号204は、高反射器220及び/又は出力カプラ260のうちの少なくとも一方を通って横断することができ、レーザキャビティ290内に位置決めされた少なくとも1つの光学結晶システム230に入射することができる。図示の実施形態では、高反射器220は、キャビティ内信号236(すなわち、約1000nmから約1700nmの波長を有する光)の実質的に全て(すなわち、約99.9%を超える)を反射する一方、実質的に全てのポンプ信号204(すなわち、約850nmから約995nmの波長を有する光)を透過させるように構成された少なくとも1つの光学コーティングを含む。図示の実施形態では、高反射器220は少なくとも1つの平面本体を有する。別の実施形態では、高反射器220は、湾曲又は弓形本体を有する。更に、高反射器220は、少なくとも1つの光学ステージ又はマウントに結合させることができる。任意的に、高反射器220を支持する光学ステージは、調節可能ミラーマウントを有することができる。これに代えて、高反射器220を支持する光学ステージは、調節不能ミラーマウントを有することができる。
【0015】
再び
図2を参照すると、少なくとも1つの光学結晶システム230は、レーザキャビティ290内に位置決めされ、そこにポンプ信号204の少なくとも一部分を受信するように構成することができる。一実施形態では、光学結晶システム230は、少なくとも1つの結晶マウント234上に位置決めされた少なくとも1つの光学結晶232を有する。一実施形態では、光学結晶232は、少なくとも1つのバルク光学材料を有する。例示的バルク光学材料は、イッテルビウムドープフッ化カルシウム(以下、「Yb:CaF
2」)単結晶材料、Yb:CaF
2セラミック材料、Yb:CALGO、及び他のイッテルビウムドープ利得媒体などを含むがこれらに限定されない。任意的に、本明細書に説明するYb:CaF
2材料は、当業技術で公知の1又は2以上の追加ドーパントを含むことができる。例えば、一実施形態では、本明細書に説明するYb:CaF
2材料は、約880nmから約1100nmにわたる吸収スペクトルを有することができる。更に、Yb:CaF
2材料は、ポンプ信号204によってポンピングされることに応答して約1000nmから約1700nm又はそれを超える波長を有する少なくとも1つのキャビティ内信号236を発生させるように構成することができる。任意的に、複数の光学結晶232は、レーザキャビティ290内に位置決めすることができる。光学結晶232は、入射ポンプ信号204に直交する少なくとも1つのファセット、又は入射ポンプ信号204に対して角度を成す少なくとも1つのファセットを含むことができる。更に、ポンプ信号204は、光学結晶232のあらゆる方向に沿って伝播することができる。従って、光学結晶232は、<100>カット結晶を有することができる。別の実施形態では、光学結晶232は、<110>カット結晶を有することができる。任意的に、光学結晶232は、<111>カット結晶を有することができる。任意的に、結晶は、他の伝播方向にカットすることができる。
【0016】
図2に示すように、光学結晶232は、レーザキャビティ290内に光学結晶232を確実かつ正確に位置決めするように構成された少なくとも1つの結晶マウント234上に位置決めすることができる。例示的実施形態では、レーザキャビティ290は、線形キャビティを有する。任意的に、レーザキャビティ290は、折り返しキャビティ、Z-キャビティ、及びリングキャビティなどを有することができる。従って、レーザシステム200は、ユーザが望むようにそのキャビティアーキテクチャを構成することができるように構成された1又は2以上の追加の固定及び/又は調節可能折り返しミラー、平面ミラー、曲面ミラー、ダイクロイックミラー、及び分散管理ミラーなどを含むことができる。図示の実施形態では、結晶マウント234は、少なくとも1つの熱制御システム238と連通することができる。例えば、存在する場合に、熱制御システム238は、1又は2以上の熱電チラー、流体源、加熱器、熱電対、及びセンサなどを含むことができる。使用中に、熱制御システム238は、結晶マウント234と結晶マウント234上に位置決めされた光学結晶232との温度をモニタ及び制御するように構成することができる。従って、結晶マウント234は、高い熱伝導係数を有する材料を含むあらゆる様々な材料から製造することができる。任意的に、熱制御システム238は、対流によって結晶マウント234上に位置決めされた光学結晶232を冷却するように構成された1又は2以上のファン又は類似のデバイスを有することができ、それにより、多くのレーザで現在使用されている複雑な水ベースの伝導熱制御システムが不要になる。従って、結晶マウント234は、光学結晶232の対流冷却を支援するように構成されたフィン及びヒートシンクなどのような1又は2以上の特徴又は要素を含むことができる。更に、熱制御システム238は、光学結晶232をモニタして望ましい温度に維持するように構成された少なくとも1つの内部又は外部プロセッサと通信することができる。任意的に、レーザシステム200は、熱制御システム238なしで作動させる場合がある。
【0017】
再び
図2を参照すると、光学結晶232は、ポンプ信号204によってポンピングされることに応答して少なくとも1つのキャビティ内信号236を発生させるように構成される。キャビティ内信号236は、レーザキャビティ290内に又はその近くに位置決めされた少なくとも1つのモードロッキングシステム240に向けることができる。一実施形態では、モードロッキングシステム240は、少なくとも1つのKerrレンズモードロッキングシステム(以下、「KLMシステム」)を有する。別の実施形態では、モードロッキングシステム240は、自己始動型モードロッキングを可能にするように構成された少なくとも1つの可飽和吸収体、半導体可飽和吸収体ミラー(以下「SESAM」)、及び/又は混成型KLM/SESAMシステムを有する。別の実施形態では、モードロッキングシステム240は、意図的位相不整合式高調波発生が自己始動型モードロッキングを提供する非線形光学結晶を有する。当業者は、レーザシステム200と共にあらゆる様々な代替モードロッキングシステム及びデバイスを使用することができることを認めるであろう。
【0018】
図2に示すように、少なくとも1つのキャビティ内光学構成要素250は、レーザキャビティ290内に位置決めすることができる。図示の実施形態では、2つのキャビティ内光学構成要素250がレーザキャビティ290内に位置決めされているが、いずれの数のデバイスもレーザキャビティ290内の様々な場所に使用することができることを当業者は認めるであろう。一実施形態では、キャビティ内光学構成要素250は、空間フィルタを含む。別の実施形態では、キャビティ内光学構成要素250は、偏光子を含む。例えば、レーザシステム200は、直線偏光状態で作動させることができ、その場合に、キャビティ内光学構成要素250は、キャビティ内偏光選択要素を含む。従って、レーザシステム200は、共線構成での2つの直交する直線偏光状態で同時に作動させることができる。更に、2つの偏光状態は、同じキャビティ容積を占有しながら僅かに異なる繰返し速度で作動し、出力信号280上の共通モードノイズのレベルを低減することができる。
【0019】
任意的に、レンズ、ビームスプリッタ、ミラー、光学フィルタ、開口、絞り、虹彩、センサ、プリズム、分散補償デバイス又はシステム、群遅延分散デバイス及びシステム、Gires-Tournois干渉計ミラー、変調器、光学平面、及びブリュースター窓などを含むがこれらに限定されないあらゆる様々な光学構成要素をキャビティ内光学構成要素250として使用することができる。別の実施形態では、キャビティ内光学構成要素250は、少なくとも1つの高調波発生デバイス又は結晶を含む。例えば、キャビティ内光学構成要素250は、ポンプ信号204及び/又はキャビティ内信号236のうちの少なくとも一方でポンピングされた時に少なくとも1つの第2高調波信号、第3高調波信号、又は第4高調波信号などを生成するように構成された少なくとも1つの高調波発生デバイスを含むことができる。
【0020】
再び
図2を参照すると、レーザシステム200は、少なくとも1つの出力カプラ260を含み、それは高反射器220と併せてレーザキャビティ290を定める。一実施形態では、出力カプラ260は、キャビティ内信号236の約5パーセント~約50パーセントを透過し、それによってキャビティ内信号236の少なくとも一部分がレーザキャビティ290から出て、それによって約1000nmから約1700nmの波長を有する出力信号280を生成するように構成される。例えば、一実施形態では、出力信号280は、約1000nmから1100nmの波長を有する。別の実施形態では、出力カプラ260は、キャビティ内信号236の約5パーセント(5%)を超えて約50パーセント(50%)未満を透過するように構成される。更に、本明細書に説明する独特なバルクYb:CaF
2レーザシステム200(及び以下に説明して
図3及び4に示すレーザシステム)は、平均出力電力が約20Wよりも高いほぼ変換限界のサブ300fsパルスを約50MHzよりも高い繰返し速度で送出するように構成することができる。例えば、一実施形態では、本明細書に説明するバルクYb:CaF
2レーザシステムは、平均出力電力が約25Wよりも高いほぼ変換限界のサブ200fsパルスを約70MHzよりも高い繰返し速度で送出するように構成することができる。任意的に、出力信号280の入力ピーク電力が制限される用途、例えば、自己集束が1MW未満のピーク電力でファイバの損傷をもたらすファイバ内の連続体発生が存在する。そのような用途では、パルスエネルギとパルス持続時間の両方(従って、ピーク電力)を一定に保ちながら、レーザシステム200の繰返し速度を上げることによってレーザシステム200の平均電力を上げることができる。従って、100fsの持続時間を有する100nJのパルスの場合に、100MHzの繰返し速度は平均電力10Wのレーザをもたらすのに対して、200MHzの繰返し速度は20Wの平均電力を生成することになり、共に1MWのピーク電力を有する。このように繰返し速度の高いレーザほど平均電力の高い連続体源を生成し、物理的に短く、従ってより小型である。
【0021】
別の実施形態では、本明細書に説明するバルクYb:CaF
2レーザシステムは、平均出力電力が約30Wよりも高いほぼ変換限界のサブ150fsパルスを約80MHzよりも高い繰返し速度で送出するように構成することができる。別の実施形態では、本明細書に開示する様々なレーザシステムは、200fs又はそれ未満のパルス幅と少なくとも300MHzの繰返し速度とを有する少なくとも20Wの少なくとも1つの出力信号を出力するように構成することができる。任意的に、本明細書に開示する様々なレーザシステムは、200fs又はそれ未満のパルス幅と少なくとも400MHzの繰返し速度とを有する少なくとも20Wの少なくとも1つの出力信号を出力するように構成することができる。更に、
図2に示すように、キャビティ内光学構成要素250は、ポンプ信号204の少なくとも一部分を反射して光学結晶232に戻すように構成されたミラーとすることができる。任意的に、出力カプラ260は、それに付与されたあらゆる追加又は代替光学コーティングを含むことができる。例示的追加コーティングは、偏光コーティング、帯域通過フィルタコーティング、ノッチフィルタコーティング、及び波長選択コーティングなどを含むことができるがこれらに限定されない。
【0022】
図3は、高出力イッテルビウムドープフッ化カルシウムモードロックレーザシステム(以下、「レーザシステム」)の別の実施形態の概略図を示している。前の実施形態と同様に、レーザシステム300は、少なくとも1つのポンプ信号304を出力するように構成された単一ダイオードベースのポンプ源302を含む。前の実施形態と同様に、このレーザシステムは、単一ダイオードベースのポンプ源302に結合されるか又は他にそれと光学連通する少なくとも1つの光ファイバデバイス306を含む。ポンプ信号304は、約850nmから約995nmの波長を有することができる。例えば、一実施形態では、ポンプ信号304は、約979nmの波長を有する。別の実施形態では、ポンプ信号304は、約940nmの波長を有する。別の実施形態では、ポンプ信号304は、約976nmの波長を有する。更に別の実施形態では、ポンプ信号304は、約917nmの波長を有する。別の実施形態では、ポンプ信号304は、そこに複数の波長を含むことができる。更に、単一ダイオードベースのポンプ源302は、連続波ポンプ信号304を出力するように構成することができる。別の実施形態では、単一ダイオードベースのポンプ源302は、少なくとも1つのパルスポンプ信号304を出力するように構成することができる。
【0023】
再び
図3を参照すると、単一ダイオードベースのポンプ源302に結合された光ファイバデバイス306によって出力されたポンプ信号304は、上述のように少なくとも1つの光学システム310に向けることができる。例えば、光学システム310は、少なくとも1つのテレスコープ及びコリメータなどを有することができる。図示の実施形態では、光学システム310は、ポンプ信号304を受信し、第1のポンプビーム308aと少なくとも第2のポンプビーム308bとを形成するように構成されたビームスプリッタを含む。任意的に、光学システム310は、第1及び第2のポンプビーム308a、308bのうちの少なくとも一方をあらゆる望ましい場所でレーザキャビティ390に挿入することを可能にする様々な光ファイバデバイス、導波路、レンズ、及びミラーなどを含むことができる。
【0024】
図3に示すように、レーザキャビティ390は、高反射器320及び出力カプラ360によって定めることができる。当業者は、レーザキャビティ390を線形構成、折り返しキャビティ、Z-キャビティ、及びリングキャビティなどを含むがこれらに限定されないあらゆる様々な構成で形成することができることを認めるであろう。従って、あらゆる数の平面又は曲面の折り返しミラー、反射器、及び光学マウントなどを使用してあらゆる望ましいキャビティアーキテクチャを形成することができる。図示のように、高反射器320は、第1のポンプビーム308aの少なくとも一部分がそこを通って横断することができるように構成される。従って、先の実施形態と同様に、高反射器320は、それに付与された1又は2以上の光学コーティングを含むことができる。第1のポンプビーム308aは、高反射器320を通って横断することができ、レーザキャビティ390内に位置決めされた少なくとも1つの光学結晶330及び/又は光学結晶332に入射することができる。図示の実施形態では、高反射器320は、キャビティ内信号336(すなわち、約1000nmから約1700nmの波長を有する光)の実質的に全て(すなわち、約99.9%を超える)を反射する一方、実質的に全ての第1ポンプビーム308a(すなわち、約850nmから約995nmの波長を有する光)を透過させるように構成された少なくとも1つの光学コーティングを含む。図示の実施形態では、高反射器320は、少なくとも1つの平面本体を有する。別の実施形態では、高反射器320は、湾曲又は弓形本体を有する。更に、高反射器320は、少なくとも1つの光学ステージ又はマウントに結合させることができる。任意的に、高反射器320を支持する光学ステージは、調節可能ミラーマウントを有することができる。これに代えて、高反射器320を支持する光学ステージは、調節不能ミラーマウントを有することができる。
【0025】
第1のポンプビーム308aと同様に、第2のポンプビーム308bは、レーザキャビティ390に向けられ、レーザキャビティ390内に位置決めされた光学結晶システム330に入射させることができる。図示の実施形態では、第2のポンプビーム308bは、出力カプラ360を通して誘導される。任意的に、第2のポンプビーム308bは、1又は2以上の光ファイバ、導波路、ミラー、及び自由空間伝播システムなどを使用して出力カプラ360を通してそこに向けることができる。例えば、1又は2以上の光ファイバ導管は、光学システム310から第2のポンプビーム308bを受信し、その第2のポンプビーム308bを出力カプラ360を通じてレーザキャビティ390に向けるように構成することができる。別の実施形態では、1又は2以上のミラーは、光学システム310から第2のポンプビーム308bを受信し、その第2のポンプビーム308bの少なくとも一部分をレーザキャビティ390内に向けるように構成することができる。
【0026】
再び
図3を参照すると、少なくとも1つの光学結晶システム330は、レーザキャビティ390内に位置決めされ、そこに第1のポンプビーム308a及び/又は第2のポンプビーム308bの少なくとも一部分を受信するように構成することができる。先の実施形態と同様に、光学結晶システム330は、少なくとも1つの結晶マウント334上に位置決めされた少なくとも1つの光学結晶332を有する。任意的に、光学結晶は、少なくとも1つのバルク光学材料を有することができる。例示的バルク光学材料は、イッテルビウムドープフッ化カルシウム「Yb:CaF
2」単結晶材料、Yb:CaF
2セラミック材料、Yb:CALGO、Yb:KGW、Yb:KYW、Yb:ガラス、Yb:LuO、YCOB、Yb:LuScO、及び他のYbドープ利得媒体などを含むがこれらに限定されない。任意的に、本明細書に説明するYb:CaF
2材料は、当業技術で公知の1又は2以上の追加ドーパントを含むことができる。例えば、一実施形態では、本明細書に説明するYb:CaF
2材料は、約880nmから約1100nmにわたる吸収スペクトルを有することができる。更に、Yb:CaF
2材料は、第1及び第2のポンプビーム308a、308bのうちの少なくとも一方によってポンピングされることに応答して約1000nmから約1700nm又はそれを超える波長を有する少なくとも1つのキャビティ内信号336を生成するように構成することができる。任意的に、複数の光学結晶332をレーザキャビティ390内に位置決めすることができる。
【0027】
図3に示すように、光学結晶332は、レーザキャビティ390内に光学結晶332を確実かつ正確に位置決めするように構成された少なくとも1つの結晶マウント334上に位置決めすることができる。一実施形態では、光学結晶システム330は、上述の熱制御システム(上述の段落[0008]、
図2を参照)と類似の1又は2以上の熱制御システム(図示せず)に連通することができる。例えば、存在する場合に、熱制御システムは、1又は2以上の熱電クーラー、チラー、流体源、加熱器、熱電対、及びセンサなどを含むことができる。コスト及び簡単さのために、多くの場合に光学結晶332の水冷を排除し、それによってチラーのようなそのような熱制御システムに使用される部品を排除することが望ましい。図示の実施形態では、光学結晶システム330は空冷結晶マウントシステム334を含む。当業者は、本出願に説明する様々なレーザシステムが高温でも平均電力の実質的な劣化なしに公知の損傷閾値を超えて良好に作動可能であることを認めるであろう。更に、キャビティモード(キャビティ内信号336のレーザモード)は、他の活性光学材料で生成される強い熱レンズと比べて使用中にYb:CaF
2光学結晶内に生成される弱い熱レンズに起因して温度に対して相対的に鈍感である。従って、本出願に開示するレーザシステムは、性能を実質的に低減することなく30℃又はそれよりも高い温度で作動させることができる。従って、結晶マウント334は、その結晶マウント334の対流冷却、及び従って光学結晶332の冷却を強化するように構成された1又は2以上の特徴部、フィン、及び要素などを含むことができる。
【0028】
再び
図3を参照すると、光学結晶332は、第1及び第2のポンプビーム308a、308bによってポンピングされることに応答して少なくとも1つのキャビティ内信号336を生成するように構成される。キャビティ内信号236は、レーザキャビティ390内に又はその近くに位置決めされた少なくとも1つのモードロッキングシステム340に向けることができる。キャビティ内光学構成要素350は、空間フィルタを含むことができる。別の実施形態では、キャビティ内光学構成要素350は、偏光子を含む。任意的に、レンズ、ビームスプリッタ、ミラー、光学フィルタ、開口、絞り、虹彩、センサ、プリズム、分散補償デバイス又はシステム、群遅延分散デバイス及びシステム、Gires-Tournois干渉計ミラー、変調器、光学平面、及びブリュースター窓などを含むがこれらに限定されないあらゆる様々な光学構成要素をキャビティ内光学構成要素350として使用することができる。別の実施形態では、キャビティ内光学構成要素350は、少なくとも1つの高調波発生デバイス又は結晶を含む。例えば、キャビティ内光学構成要素350は、第1のポンプビーム308a、第2のポンプビーム308b、及び/又はキャビティ内信号336のうちの少なくとも1つでポンピングされた時に少なくとも1つの第2高調波信号、第3高調波信号、及び第4高調波信号などを生成するように構成された少なくとも1つの高調波発生デバイスを含むことができる。任意的に、レーザシステムは、キャビティダンプされてパルスエネルギを増大させることができる。
【0029】
再び
図3を参照すると、レーザシステム300は、少なくとも1つの出力カプラ360を含み、それは、上述のように高反射器320と併せてレーザキャビティ390を定める。一実施形態では、出力カプラ360は、キャビティ内信号336の約5パーセント~約50パーセントを反射し、それによってキャビティ内信号336の少なくとも一部分がレーザキャビティ390から出ることにより、約1000nmから約1700nmの波長を有する出力信号380を生成するように構成される。例えば、一実施形態では、出力信号380は、約1000nmから1100nmの波長を有する。任意的に、出力カプラ360は、それに付与されたあらゆる追加又は代替光学コーティングを含むことができる。例示的追加コーティングは、偏光コーティング、帯域通過フィルタコーティング、ノッチフィルタコーティング、及び波長選択コーティングなどを含むことができるがこれらに限定されない。
【0030】
図3に示すように、少なくとも1つの光学システム又はデバイス392は、レーザキャビティ390と結合されるか又はそれと光学連通するように位置決めされ、出力信号380を受信して使用前にその出力信号380を誘導する、修正する、測定する、又は他に調整するように構成することができる。例えば、一実施形態では、外部光学システム392は、少なくとも1つの修正出力信号394を出力するように構成される。任意的に、外部光学システム392は、出力信号380による照射に応答して1又は2以上の高調波光信号を出力するように構成された少なくとも1つの高調波発生システムを有する。例えば、外部光学システム392は、そこに少なくとも1つの第2高調波発生デバイスを含むことができる。別の実施形態では、外部光学システム392は、そこに少なくとも1つの第3高調波発生デバイスを含むことができる。別の実施形態では、外部光学システム392は、そこに少なくとも1つの周波数倍加デバイスと少なくとも1つの光パラメトリック発振器とを有する。更に、外部光学システム392は、1又は2以上の増幅器を有することができる。別の実施形態では、外部光学システム392は、出力信号380によって直接ポンピングされるように構成することができる赤外線光パラメトリック発振器を有する。従って、外部光パラメトリック発振器392は、PPLN、PPLT、PPKTP、KTP、BBO、及びLBOなどのような1又は2以上の非線形材料を含むことができる。任意的に、赤外線光パラメトリック発振器は、キャビティダンプされてパルスエネルギを増大させる及び/又はキャビティ内周波数を倍加して同調範囲を拡大することができる。赤外線光パラメトリック発振器の同調範囲は、信号とOPOからのアイドラーとを使用する差周波数混合によって中赤外線へ、又は信号とポンプ又はアイドラーとポンプを使用する和周波数混合によって可視へ更に拡大することができる。当業者は、本明細書に説明するレーザシステムのいずれもが上述の1又は2以上の外部光学システムを含むことができることを認めるであろう。
【0031】
図4は、高出力Yb:CaF
2モードロックレーザシステムの別の実施形態の概略図を示している。図示のように、レーザシステム400は、第1のポンプ源402aと少なくとも第2のポンプ源402bとを含む。先の実施形態と同様に、第1のポンプ光源402a及び第2のポンプ光源402bは、ダイオードベースのポンプデバイスを有することができるが、当業者は、本出願に説明するレーザシステムと共にあらゆる様々なポンプ光源を使用することができることを認めるであろう。更に、第1のポンプ源402aは、第1の光ファイバデバイス406aに結合することができる。同様に、第2のポンプ源402bは、第2の光ファイバデバイス406bに結合することができる。第1のポンプ源402aは、少なくとも1つのポンプ信号404aを生成するように構成されるのに対して、第2のポンプ源402bは、少なくとも第2のポンプ信号404bを生成するように構成される。一実施形態では、第1及び第2のポンプ信号404a、404bのうちの少なくとも一方は、約850nmから約995nmの波長を有する。例えば、一実施形態では、第1及び第2のポンプ信号404a、404bのうちの少なくとも一方は、約979nmの波長を有する。別の実施形態では、第1及び第2のポンプ信号404a、404bのうちの少なくとも一方は、約976nmの波長を有する。別の実施形態では、第1及び第2のポンプ信号404a、404bのうちの少なくとも一方は、約940nmの波長を有する。更に別の実施形態では、第1及び第2のポンプ信号404a、404bのうちの少なくとも一方は、約917nmの波長を有する。任意的に、第1及び第2のポンプ信号404a、404bは、同じか又は異なる波長、偏光、繰返し速度、及び電力などを有することができる。更に、第1及び第2のポンプ源402a、402bのうちの少なくとも一方は、連続波ポンプ信号を出力するように構成することができる。別の実施形態では、第1及び第2のポンプ源402a、402bのうちの少なくとも一方は、少なくとも1つのパルスポンプ信号を出力するように構成することができる。
【0032】
再び
図4を参照すると、第1及び第2のポンプ信号404a、404bは、少なくとも1つの光学システム410に向けることができる。当業者は、光学システム410ではあらゆる数又はタイプの光学要素又はデバイスを使用することができることを認めるであろう。例えば、
図4に示すように、光学システム420の少なくとも1つは、第2のポンプ信号404bの実質的に全てを透過させる一方、出力信号480の実質的に全てを反射するように構成されたビーム誘導器を有する。光学システム410に使用するための例示的な他の任意的な光学要素は、レンズ、格子、フィルタ、ビームスプリッタ、センサ、開口、シャッター、変調器、減衰器、ホモジナイザー、及び偏光子などを含むがこれらに限定されない。
【0033】
図4に示すように、第1のポンプ信号404aは、少なくとも1つの高反射器420を通って横断することができ、レーザキャビティ490内に位置決めされた少なくとも1つの光学結晶システム430に入射することができる。同様に、第2のポンプ信号404bは、少なくとも1つの出力カプラ460を通って横断することができ、レーザキャビティ490内に位置決めされた光学結晶システム430に入射することができる。先の実施形態と同様に、高反射器420及び出力カプラ460は、それに付与された上述の1又は2以上のコーティングを含むことができる。更に、高反射器420及び/又は出力カプラ460は、平面本体又は湾曲本体を有することができる。
【0034】
再び
図4を参照すると、少なくとも1つの光学結晶システム430は、レーザキャビティ490内に位置決めされ、そこに第1及び/又は第2のポンプ信号404a、404bの少なくとも一部分を受信するように構成することができる。一実施形態では、光学結晶システム430は、少なくとも1つの結晶マウント434上に位置決めされた少なくとも1つの光学結晶432を有する。一実施形態では、光学結晶432は、少なくとも1つのバルク光学材料を有する。例示的バルク光学材料は、Yb:CaF
2単結晶材料、Yb:CaF
2セラミック材料、Yb:CALGO、及び他のYbドープ利得媒体などを含むがこれらに限定されない。任意的に、本明細書に説明するYb:CaF
2材料は、当業技術で公知の1又は2以上の追加ドーパントを含むことができる。例えば、一実施形態では、本明細書に説明するYb:CaF
2材料は、約880nmから約1100nmにわたる吸収スペクトルを有することができる。更に、Yb:CaF
2材料は、第1及び第2のポンプ信号404a、404bによってポンピングされることに応答して約1000nmから約1700nm又はそれを超える波長を有する少なくとも1つのキャビティ内信号436を生成するように構成することができる。任意的に、複数の光学結晶432は、レーザキャビティ490内に位置決めすることができる。任意的に、光学結晶432を支持する結晶マウント434は、空冷式及び流体冷却式などであるように構成することができる。従って、結晶マウント434は、少なくとも1つのファン、チラー、熱電クーラー、及びセンサなどと連通することができる。
【0035】
再び
図4を参照すると、光学結晶432は、第1及び第2のポンプ信号404a、404bによってポンピングされることに応答して少なくとも1つのキャビティ内信号436を生成するように構成される。キャビティ内信号436は、レーザキャビティ490内に又はその近くに位置決めされた少なくとも1つのモードロッキングシステム440に向けることができる。一実施形態では、モードロッキングシステム440は、少なくとも1つのKerrレンズモードロッキングシステム(以下、「KLMシステム」)を有する。別の実施形態では、モードロッキングシステム440は、自己始動型モードロッキングを可能にするように構成された少なくとも1つの可飽和吸収体、半導体可飽和吸収体ミラー(以下「SESAM」)、及び/又は混成型KLM/SESAMシステムを有する。別の実施形態では、モードロッキングシステム240は、意図的位相不整合高調波発生(例えば、第2高調波発生、第3高調波発生など)が自己始動型モードロッキングを提供する非線形光学結晶を有する。当業者は、レーザシステム400と共にあらゆる様々な代替モードロッキングシステム及びデバイスを使用することができることを認めるであろう。
【0036】
図4に示すように、少なくとも1つのキャビティ内光学構成要素450は、レーザキャビティ490内に位置決めすることができる。一実施形態では、キャビティ内光学構成要素450は空間フィルタを含む。別の実施形態では、キャビティ内光学構成要素450は偏光子を含む。任意的に、レンズ、ビームスプリッタ、ミラー、光学フィルタ、開口、絞り、虹彩、センサ、プリズム、分散補償デバイス又はシステム、群遅延分散デバイス及びシステム、Gires-Tournois干渉計ミラー、変調器、光学平面、及びブリュースター窓などを含むがこれらに限定されないあらゆる様々な光学構成要素をキャビティ内光学構成要素450として使用することができる。別の実施形態では、キャビティ内光学構成要素450は、少なくとも1つの高調波発生デバイス又は結晶を含む。
【0037】
再び
図4を参照すると、レーザシステム400は、少なくとも1つの出力カプラ460を含み、それは高反射器420と併せてレーザキャビティ490を定める。一実施形態では、出力カプラ460は、約1000nmから約1700nmの波長を有する出力信号480を出力するように構成される。例えば、一実施形態では、出力信号480は、約1000nmから1100nmの波長を有する。任意的に、出力カプラ460は、それに付与されたあらゆる追加又は代替光学コーティングを含むことができる。例示的追加コーティングは、偏光コーティング、帯域通過フィルタコーティング、ノッチフィルタコーティング、及び波長選択コーティングなどを含むことができるがこれらに限定されない。
【0038】
図5は、本明細書に説明する新規のバルクYb:CaF
2レーザシステムの性能を多光子顕微鏡用途、光遺伝学、微小機械加工、及び類似の用途で一般的に使用される従来技術のレーザシステムの性能と比較した表を示している。図示のように、本明細書に説明する新規のバルクYb:CaF
2レーザシステムは、約20Wよりも高い平均電力を有する出力信号280を約60MHzよりも高い繰返し速度及びサブ200fsパルス幅で提供することができる。任意的に、本明細書に説明する新規のバルクYb:CaF
2レーザシステムは、約25Wよりも高い平均電力を有する出力信号を約60MHzよりも高い繰返し速度及びサブ200fsパルス幅で提供することができる。別の実施形態では、本明細書に説明する新規のバルクYb:CaF
2レーザシステムは、約30Wよりも高い平均電力を有する出力信号280を約60MHzよりも高い繰返し速度及びサブ200fsパルス幅で提供することができる。正確には、競合する従来技術のレーザシステムの大部分は、複雑な薄型ディスクレーザシステムを含み、それは定義上バルクレーザシステムではない。更に、これらのディスクレーザシステムは、約50MHzよりも高い繰返し速度及びサブ200fsパルス幅で高電力出力信号を供給することができない。対照的に、
図5に示すように、従来技術のバルクレーザシステムは、本明細書に説明する新規のバルクYb:CaF
2レーザシステムと比較して同等の繰返し速度及びパルス幅を提供することができる。しかし、残念なことに、従来技術のバルクレーザシステムは、20W又はそれよりも高い出力電力を供給することができない。
【0039】
図6は、本明細書に開示するYb:CaF
2モードロックレーザシステムの実施形態によって達成される性能の改善をグラフに示している。より具体的には、
図6は、本明細書に説明するレーザキャビティの出力カプラから連続波モードロック信号が出力される範囲をポンプ源からのポンプ電力に対する出力電力の関数としてグラフに示している。上述のように、本明細書に説明するレーザシステムのキャビティは、あらゆる様々な光学結晶と共に使用することができるが、これらのキャビティは、そこにイッテルビウムドープの光学結晶を組み込むのに特に適している。全てのモードロック発振器は、安定した単一超高速パルス列をその範囲にわたって生成する作動範囲が限られている。
図1に示す挙動は、半導体可飽和吸収体ミラーを使用してモードロックされた発振器を表すが、他のモードロッキング技術も類似の結果を生じる。低ポンプ電力では、発振器は、最初に閾値に達し、次に全くパルスのないcw出力を生成する。より高いポンプ電力では、更に高いポンプ電力で望ましいcwモードロック(CW-ML)性能が達成されるまでqスイッチモードロック(Q-ML)作動の領域が観察される。このcwモードロック作動の領域は制限され、より高いポンプ電力では不安定なレジームが常に生じることになる。これらの不安定性は、多重パルシング、スペクトル不安定性、空間的不安定性、及び/又は時間的不安定性を含む場合がある。
図6に示すように、本発明のレーザキャビティ内に位置決めされたYb:CaF
2結晶のCW-ML作動レジームは、
図1に示す従来技術のレーザシステムのCW-ML作動レジームよりもかなり大きい。その結果、従来技術のシステムよりも高電力で安定したキャビティ内信号236(
図2参照)がYb:CaF
2レーザによって出力され、それにより、より高い出力信号280を発生させることができる。この広いcwモードロック範囲は、弱い熱レンズ効果、最適なキャビティ設計、及び最適な可飽和吸収体設計の結果であり、レーザシステムのロバスト性及び製造可能性の改善をもたらす。不安定レジームで作動するリスクなしに出力電力を一定に保つために、ポンプ電力を修正する光ループを使用してレーザを作動させることができる。
【0040】
本明細書に開示する実施形態は、本発明の原理を例示するものである。本発明の範囲に入る他の修正を使用することもできる。従って、本出願に開示するデバイスは、本明細書に図示して説明する通りのものに限定されない。
【符号の説明】
【0041】
CW-ML cwモードロック
Q-ML qスイッチモードロック
W ワット