(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】毛髪修復組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230529BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230529BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230529BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/42
A61Q5/00
(21)【出願番号】P 2019561872
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2018061495
(87)【国際公開番号】W WO2018206425
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-05
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マビーユ, カロリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カラジャンニ, カチェリーナ
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528386(JP,A)
【文献】米国特許第05756720(US,A)
【文献】特表2012-524038(JP,A)
【文献】特表2016-532651(JP,A)
【文献】特表2001-526199(JP,A)
【文献】特開2008-137990(JP,A)
【文献】Rhodia,JAGUAR C-162 PRODUCT DATA SHEET E 90002010,2008年12月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-99
A61Q1/00-90/00
C08B1/00-37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪の枝毛の補修のための、毛髪のカール保持のための
、又はこれらの組合わせのための組成物であって、
ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グリセリン、及びパンテノールを含む
、組成物。
【請求項2】
パーソナルケアに用いられる、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
毛髪ケア組成物である、請求項
2に記載の組成物。
【請求項4】
リーブオン組成物である、請求項
2又は
3に記載の組成物。
【請求項5】
リンスオフ組成物である、請求項
2又は
3に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の全重量に対して、前記
ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを0.01~10pbw含有する、請求項
2~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物の全重量に対して、前記
ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを0.05~5pbw含有する、請求項
2~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の全重量に対して、前記
ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドを0.1~2pbw含有する、請求項
2~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
毛髪の枝毛を補修する方法であって、枝毛を含む前記毛髪を、
ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グリセリン、及びパンテノールを含む組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項10】
ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グリセリン、及びパンテノールを含む組成物の、枝毛を補修するための薬剤としての使用。
【請求項11】
ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、グリセリン、及びパンテノールを含む組成物の、毛髪のカール保持のための薬剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する新規なカチオン性ポリガラクトマンナンに関する。
【0002】
本発明は、更に、枝毛を補修するための毛髪ケア組成物に関し、より具体的には、枝毛を補修するための薬剤としての、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンの使用に関する。
【0003】
毛髪は、角質物質であり、特に環境要因(紫外線への暴露など)、損傷的な処理(漂白、着色、パーマ、又は熱矯正など)、及び特にグルーミング処置中の機械的ストレス(例えば、頻繁なブラッシング、バックコーミング、又は高い梳毛抵抗に対する梳毛による)を含む様々なストレスを繰り返し受ける。
【0004】
これは、毛髪に様々な種類の構造的損傷をもたらし、キューティクルは持ち上げられ、個々の毛髪繊維は、多孔質になり、互いにもつれ、よじれ、且つ/又は絡み合う傾向を有し得る。
【0005】
毛髪の質感への影響は、例えば、湿潤時及び乾燥時の櫛通りの悪さ、静電荷の増加、脆性の増加、扱いやすさの欠如、最大引裂き力の低下、並びに毛髪及び/又は枝毛の破断伸びによって顕著となり、その結果、毛髪が全体的に不健康に見え(光沢がない、生気がないなど)、櫛で梳くことが困難であり、且つ/又は荒れた感触となる。
【0006】
これらの損傷の中でも、本発明の目的は、枝毛を補修するのに有用な毛髪ケア組成物に対して市場で増加を続ける需要に対処することである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、枝毛を補修するのに有用な成分を提供することである。
【0008】
「枝毛」とは、毛髪の端部が2つ以上の毛幹に分割されている状態を意味する。
【0009】
特に、これは、毛髪の物理的又は化学的損傷の結果として毛髪繊維の端部から保護キューティクルが剥ぎ取られた後に進展する毛髪繊維の長手方向の枝分かれとして定義される。枝毛は、主にグルーミング作業中の機械的ストレス、特に過度の梳毛力によって形成される。
【0010】
潤滑剤は、枝毛の形成を防止するか又は最小限にすることが既に知られている。潤滑化は、梳毛中の毛髪の摩擦を減少させ、ひいては毛髪が受けている研磨力の強さを減少させる。その結果、これは、梳毛プロセス中のもつれの数を減少させる。
【0011】
しかしながら、本発明は、枝毛の損傷を防止しようとするものではない。
【0012】
本発明は、枝毛の補修、即ち枝分かれ部に対する軸方向の結合を回復させる、又は毛幹損傷領域を「充填する」物質を堆積させることによる既存の損傷の修復に関する。
【0013】
従って、本発明の目的は、枝毛を補修する(即ち修復する)のに有効な成分を提供することである。
【0014】
本発明の目的は、毛髪のキューティクルの損傷を修復し、且つ/又は毛髪繊維を整列させるのに更に有効である成分を提供することでもある。
【0015】
本発明の意味における毛髪のキューティクルの損傷の修復とは、毛髪のキューティクルを平滑化することを意味する。視覚的な効果は、例えば、走査電子顕微鏡を介して毛髪繊維を見ることによって観察することができる。
【0016】
米国特許出願公開第2005/0089494号明細書及び同第2006/0251603号明細書は、ポリクォタニウム-28とメチルビニルエーテル/マレイン酸コポリマーとの特定の比での組み合わせが、枝毛を修復するのに有用な高分子電解質錯体を生成することを開示している。
【0017】
しかしながら、このような高分子電解質錯体の安定性は、他の成分が毛髪ケア配合物に添加されると損なわれる場合がある。特に、帯電化合物及びポリマーは、このような高分子電解質錯体の構造を破壊する可能性があることが報告されている。
【0018】
米国特許第6258348号明細書は、グアー、ベタイン系ポリウレタン界面活性剤、及びシリコーンポリウレタンの3つのポリマーを含む枝毛補修組成物を開示している。欧州特許第1552807号明細書に示されているように、米国特許第6258348号明細書に開示された両性又はカチオン性グアーガムは、他の開示されたポリマー置換基の不在下では実質的な枝毛修復を達成しない。
【0019】
本出願人は、今回、予想外にも、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンが、枝毛を補修するための薬剤として有用であることを発見した。
【0020】
従来技術では、本発明に従って定義される、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンが単体で使用されて、実質的な枝毛補修の達成を可能にすることは提案されていない。
【0021】
したがって、本発明の主題は、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで700mPa.s超の、例えば700~1,200mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンである。
【0022】
本発明は、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで700mPa.s超の、例えば700~1,200mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリガラクトマンナンを含むパーソナルケア組成物にも関する。
【0023】
本発明は更に、枝毛を含む毛髪と、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで700mPa.s超の、例えば700~1,200mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリガラクトマンナンを含む組成物と、を接触させることを含む、毛髪の枝毛を補修するための方法、並びに、上述した非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する上記のカチオン性ポリガラクトマンナンを、枝毛を補修するための薬剤として使用することにも関する。
【0024】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンは、高い割合の枝毛補修を提供するだけでなく、枝毛を閉じて持ち上げられたキューティクルのスケールを平滑にし、その結果、特に梳毛後、又は例えば毛髪スタイリング中の他のストレス因子後に耐久性のある補修を確実にすることができるということが判明した。
【0025】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンは、初回の使用以降、梳毛又は洗髪後に認知可能で且つ耐久性のある枝毛修復を提供する。
【0026】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンを含有する組成物の初回の使用以降、毛髪の表面は有利にもより滑らかな外観を示し得、キューティクルは部分的に修復され得、且つ/又は枝毛の部分的なシーリングが達成され得る。
【0027】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンを含有する組成物を数回適用した後に、枝毛は有利にも完全にシーリングされ、キューティクルは寝かせることができる。
【0028】
これらの利益は、例えば、実施例で示すように走査電子顕微鏡を介して実証することができる。
【0029】
有利にも、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンは、更に、高電荷密度及び高分子量を有する従来のカチオン性ポリマーが使用される場合に多くの消費者が経験する脂っぽい外観若しくは感触、べたつき感、光沢の喪失、及び/又は重く被覆された感触といった乾燥した毛髪の欠点を伴うことなく、枝毛の補修及び毛髪のキューティクル修復を提供する。
【0030】
有利にも、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンを使用しても、残留粉末は生じない。これは、例えば、裸眼で見ることのできる毛髪上の有意な残留白色粉末をもたらす場合のある従来技術の高分子電解質錯体を使用することと比べて有利である。
【0031】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンを含有する組成物は、手及び毛髪に対する粘着性のない、快い質感及び塗布性を有する。
【0032】
有利なことに、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンは、更に耐久性のある枝毛修復を提供し、これはつまり、具体的には、枝毛の補修が数回の洗浄及び/又は梳毛サイクルに耐え得ることを意味する。
【0033】
有利なことに、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、毛髪が損傷しているか否かに関わらず、毛髪に適用されたときに、驚くべきスタイリング効果、典型的には毛髪のカール保持力を示す。
【0034】
特定の態様によれば、本発明は、例えば毛髪のカール保持のための、毛髪成形のための薬剤としての、本明細書の上記で定義されたカチオン性ポリガラクトマンナンの使用に関する。
【0035】
有利なことに、着色プロセス後に毛髪に適用されると、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンは、更に耐久性のある色保護を提供することができ、これはつまり、具体的には、色の適用が数回の洗浄サイクルに耐え得ることを意味する。
【0036】
別の特定の態様によれば、本発明は、色保護のための薬剤としての、本明細書の上記で定義されたカチオン性ポリガラクトマンナンの使用に関する。
【0037】
ポリガラクトマンナン
ガラクトマンナンは、主に単糖類のマンノース、及びガラクトースからなる多糖類である。マンノース要素は、由来する植物に応じて、様々な距離の1,6架橋-D-ガラクトピラノシル残留物を含む、数百の(1,4)-β-D-マンノピラノシル残留物からなる鎖を形成する。天然のガラクトマンナンは、グアーガム、グアースプリット(guar splits)、ローカストビーンガム、火炎樹ガム(flame tree gum)、及びカッシアガムを含む多数の供給源から入手できる。
【0038】
更に、ガラクトマンナンは、古典的な合成ルートによっても得ることができ、又は天然ガラクトマンナンの化学修飾によっても得ることができる。
【0039】
グアーガムとは、豆科植物のシアモプシス・テトラゴノロブス(Cyamopsis tetragonolobus)の種から発見された粘液を指す。水溶性画分(85%)は「グアラン」と呼ばれ、これは(1,6)結合によって連結されたα-D-ガラクトピラノシル単位を含む(1,4)-β-Dマンノピラノシル単位の直鎖からなる。グアラン中のD-ガラクトースとD-マンノースとの比率は約1:2である。グアーガムは、典型的には約2,000,000~約5,000,000g/モルの重量平均分子量を有する。例えば約50,000~約2,000,000g/モルなどのより少ない分子量を有するグアーもまた既知である。
【0040】
グアー種子は一対の頑丈で非脆性の胚乳部(以降「グアースプリット」と呼ぶ)から構成され、その間に脆性の胚(胚芽)が挟まれている。脱皮した後に種子を割り、スクリーニングにより胚芽(種子の43~47%)を取り除いて、スプリットをすり潰す。すり潰されたスプリットは、約78~82%のガラクトマンナン多糖類、並びに少量の何らかのタンパク性物質、無機の非界面活性剤塩、不水溶性ガム、及び細胞膜、並びに何らかの残留種皮及び胚を含有していることが報告されている。
【0041】
ローカストビーンガム又はイナゴマメガムは、イナゴマメの木であるセラトニア・シリクア(Ceratonia siliqua)の種子の胚乳を精製したものである。このタイプのガムにおけるガラクトースとマンノースとの比率は約1:4である。ローカストビーンガムは市販されている。
【0042】
上述したように、本発明のポリガラクトマンナンはカチオン性ポリガラクトマンナン、つまり、ポリガラクトマンナンの1つ以上の部位がカチオン性置換基である置換基と置換されたポリガラクトマンナンである。
【0043】
本発明のカチオン性ポリガラクトマンナンは、更に、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有する。換言すると、本発明のカチオン性ポリガラクトマンナンは、ポリガラクトマンナンの1つ以上の部位を非イオン性ヒドロキシアルキル置換基である置換基で更に置換されている。ヒドロキシアルキル置換基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、1~10個の炭素原子、特に1~5個の炭素原子、例えば2~4個の炭素原子を含有してよい。例としては、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、及びヒドロキシブチル基を挙げることができる。
【0044】
本発明の実施形態のいずれかによれば、本発明のポリガラクトマンナンはヒドロキシプロピル基を含有する。
【0045】
本発明の実施形態のいずれかによれば、本発明のガラクトマンナンはグアーである。
【0046】
これは、例えば、ヒドロキシプロピル置換基含有カチオン性グアー、好ましくはヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドであってもよい。
【0047】
本発明のポリガラクトマンナン中のカチオン性又は非イオン性のヒドロキシアルキル置換基の量は、それぞれ、本発明のポリガラクトマンナンの置換度、又はモル置換によって特徴付けられ得る。
【0048】
本明細書で使用するとき、所与のタイプの誘導体化基(derivatizing group)及び所与のポリガラクトマンナンに関連する用語「置換度」は、ポリガラクトマンナンの各モノマー単位に結合したこうした誘導体化基の平均数の数を意味する。一実施形態では、誘導体化されたポリガラクトマンナンは約0.001~約3.0の合計置換度(「DST」)を示し、
DSTは、カチオン性置換基のDS(「DScationic」)と非イオン性置換基のDS(DSnonionic)との和であり、
DScationicは、0~約3、より典型的には約0.001~約2.0、更により典型的には約0.001~約1.0であり、
DSnonionicは、0~約3.0、より典型的には約0.001~約2.5、更により典型的には約0.001~約1.0であり、
DScationic及びDSnonionicは、例えば1H-NMRによって測定され得る。
【0049】
本明細書で使用するとき、用語「モル置換」又は「ms」は、グアーの単糖単位のモル当たりの誘導体化基のモル数を指す。モル置換はツァイゼルGC法によって求めることができる。本発明によって用いられるモル置換は、典型的には約0.001~約3の範囲である。
【0050】
ポリガラクトマンナン誘導体を製造するためのプロセスは知られている。具体的には、グアーガムスプリットの誘導体を製造するためのプロセスは一般に知られている。典型的には、グアースプリットは、適切な反応条件下で1つ以上の誘導体化剤と反応して、所望の置換基を有するグアー多糖を産生する。好適な誘導体化試薬は市販されており、典型的には1分子当たりにエポキシ基、クロロヒドリン基、又はエチレン性不飽和基などの反応性官能基、及びカチオン性、非イオン性、又はアニオン性置換基などの少なくとも1つの他の置換基、若しくはこうした置換基の前駆体を含有し、置換基は、アルキレン又はオキシアルキレン基などの二価連結基によって誘導体化剤の反応性官能基に連結され得る。好適なカチオン性置換基としては、第一級、第二級、若しくは第三級アミノ基、又は第四級アンモニウム、スルホニウム若しくはホスフィニウム(phosphinium)基が挙げられる。好適な非イオン性置換基としては、ヒドロキシプロピル基などのヒドロキシアルキル基が挙げられる。好適なアニオン性基としては、カルボキシメチル基などのカルボキシアルキル基が挙げられる。カチオン性、非イオン性、及び/又はアニオン性置換基は、一連の反応を介して、又はそれぞれの適切な誘導体化剤との並発反応によって、多糖鎖に導入され得る。
【0051】
ポリガラクトマンナン誘導体、例えばグアー誘導体は、水-スプリットプロセスの反応工程で加工助剤として一般に用いられる、例えばホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)などの架橋剤で処理して、グアースプリットの表面を部分的に架橋し、それにより処理中にグアースプリットによって吸収される水の量を低減させることができる。例えばグリオキサール又はチタン酸塩化合物などのその他の架橋剤も知られている。
【0052】
調製後、本発明のポリガラクトマンナンは、例えば、腐食剤;酸;ガラクトースオキシダーゼなどの生化学酸化剤(biochemical oxidants);過酸化水素などの化学酸化剤;及び酵素試薬のいくつかの既知の試薬、又は高速攪拌機を用いた物理的方法;熱的方法;並びにこれらの試薬及び方法の組み合わせで処理することができる。メタ重亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素塩の無機塩などの試薬も任意選択的に含まれてよい。
【0053】
本明細書の上記で説明した処理は、本発明のポリガラクトマンナンに対して誘導体化プロセスの前に実施することもできる。
【0054】
好ましい実施形態では、ポリガラクトマンナンは、過酸化水素又はセルラーゼ酵素などの化学物質を用いることによって解重合された解重合ポリガラクトマンナンである。
【0055】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明のポリガラクトマンナンは、約0.001~約3の範囲のカチオン性置換度DScatを有する。
【0056】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明のポリガラクトマンナンは、約0.001~約3の範囲のヒドロキシアルキルモル置換を有する。
【0057】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明のポリガラクトマンナンは、約2,000~約5,000,000g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。
【0058】
本発明のポリガラクトマンナンの重量平均分子量は、例えばSEC-MALSによって、又はゲル浸透クロマトグラフィを用いることによって測定することができる。
【0059】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明のポリガラクトマンナンは、約0.1~約1のカチオン性置換度DScatと、約0.1~約1のヒドロキシアルキルモル置換と、約500,000g/モル~約4,000,000g/モルの重量平均分子量と、を有するカチオン性グアー誘導体である。
【0060】
ポリガラクトマンナンの代わりとして、例えば、キトサン、ペクチン、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、寒天、キサンタン、デキストリン、澱粉、セルロース、アミロース、アミロペクチン、アルテルナン、ジェラン、レバン、ムタン、デキストラン、プルラン、フルクタン、アラビアゴム、カラギーナン、グリコーゲン、グリコサミノグリカン、ムレイン、キシログルカン類(タマリンドガム及びヒドロキシプロピルタマリンドガムなどのタマリンドガム誘導体)、及び細菌莢膜多糖などのその他の多糖ポリマーを挙げることもできる。
【0061】
粘度
予想外にも、上述の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、相当な枝毛補修の達成を可能にすることが判明した。
【0062】
具体的には、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで700mPa.s超の、例えば700~1,200mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを含む毛髪ケア組成物は、本発明に従って定義される非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンを含まないことを除けば同一の毛髪ケア組成物と比較して、改善された枝毛補修の達成を可能にすることが判明した。
【0063】
更に、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで700mPa.s超の、例えば700~1,200mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを含む毛髪ケア組成物は、本発明に従わない、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、25℃及び20rpmでのブルックフィールドRVT粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを含むことを除けば同一の毛髪ケア組成物と比較して、改善された枝毛補修を達成することを可能にすることも判明した。
【0064】
本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンの粘度は、本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンを1pbwの濃度で含有する水溶液中で、20rpmのスピンドル2を用いたブルックフィールドRVT粘度計を使用して測定した、mPa.s単位の粘度である。
【0065】
粘弾性の測定は、例えば、以下の手順に従って実施されてよい:
396gの脱イオン超純水を600mLのビーカー中に量り分ける;
4gの本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンを量り分けし、これを脱イオン超純水を含む600mLのビーカーに攪拌しながら添加する;
安定なpH値が達成されるまで攪拌を続け、酢酸でpHを5+/-0.1に調整する;
25℃で1時間平衡させた後に、20rpmのスピンドル2を用いたブルックフィールドRVT粘度計を使用して得られた溶液の粘度を測定する。
【0066】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで700~950mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有する。
【0067】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで750~950mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有する。
【0068】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで750~900mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有する。
【0069】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで750~850mPa.sのブルックフィールドRVT粘度を有する。
【0070】
高い粘度は感覚的性能に悪影響を及ぼし得ると考えられる。例えば、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、25℃及び20rpmで1,200mPa.s超、例えば1,500mPa.s超のブルックフィールドRVT粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを使用することは、配合物の質感及び/若しくは塗布性を損なう場合があり、並びに/又は手及び毛髪に対する粘着性を増加させる場合がある。脂っぽい外観若しくは感触、べたつき感、光沢の喪失、重く被覆された感触、及び/又は量感の喪失などの乾燥した毛髪の欠点もまた、こうした高粘度のカチオン性ポリガラクトマンナンを使用することによってもたらされ得る。
【0071】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、当業者に既知の任意の好適なプロセスによって調製することができる。ポリガラクトマンナン誘導体の調製方法は、例えば、米国特許第4,663,159号明細書、同第5,473,059号明細書、同第5,387,675号明細書、同第3,472,840号明細書、同第4,031,307号明細書、同第4,959,464号明細書、及び米国特許出願公開第2010/0029929号明細書に開示されており、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
本発明の組成物は、パーソナルケア組成物、例えば毛髪ケア組成物であり得る。
一実施形態では、本発明の主題は、上記で定義した非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する少なくとも1つのカチオン性ポリガラクトマンナンを含み、枝毛補修剤として機能する任意の他の成分を含まない、枝毛を補修するための毛髪ケア組成物である。
【0073】
換言すると、一実施形態では、本発明の枝毛を補修するための毛髪ケア組成物は、枝毛を補修するための唯一の薬剤として、上記で定義した非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを含み、その目的のための他の成分を全く含まない(0pbw)。
【0074】
有利なことに、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンは、帯電毛髪有益剤を含む広範な他の毛髪有益剤と組み合わせることができる。したがって、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンと、追加の望ましい特性を提供するその他の毛髪ケア成分と、の安定な組み合わせを含む、枝毛を補修するための毛髪ケア組成物を調製することが可能である。
【0075】
有利なことに、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンは、リンスオフ又はリーブオン毛髪ケア組成物中に配合することができる。枝毛補修における性能は、両方の配合物において満足のいくものである。
【0076】
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明の非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを含有する毛髪ケア組成物は、リンスオフ又はリーブオンタイプの製品として配合することができる。
【0077】
本明細書において使用される場合、「リンスオフ組成物」という表現は、塗布後に毛髪から洗い流される組成物を意味する。逆に、「リーブオン組成物」という表現は、塗布後に毛髪から洗い流されない組成物を意味する。
【0078】
リンスオフ製品の非限定的な例としては、シャンプー、コンディショナー、縮毛矯正剤、パーマネントウェーブ、及び毛髪カラー(パーマネント、セミパーマネント、及び一時的毛髪カラーを包含する)が挙げられる。
【0079】
リーブオン型の毛髪ケア製品は、これらに限定されないが、セッティングローション、セラム、毛髪スプレー、ムース、毛髪ラッカー、毛髪ジェル、毛髪ワックス、スタイリングクリーム、ポマード、及びトニックなどの代表例が挙げられる。本明細書において使用される場合、「毛髪スプレー」という用語は、加圧されているか又は加圧されていないかにかかわらず、任意の噴霧(スプレー)形式で送達される毛髪ケア製品を意味することが言及される。
【0080】
2イン1シャンプー、リーブオン及びリンスオフコンディショナー、毛髪パーマ製品、毛髪弛緩剤、パーマネント毛髪染色系、毛髪スタイリングムース、セミパーマネント毛髪染色系、一時的毛髪染色系、毛髪脱色剤、パーマネント毛髪ウェーブ系、毛髪セッティング配合物、無着色毛髪製剤、毛髪縮れ制御ジェル、毛髪リーブインコンディショナー、毛髪縮れほぐし製品、毛髪固定剤、毛髪コンディショニングミスト、毛髪ケアポンプスプレー、並びに他の非エアロゾルスプレー、毛髪キューティクルコートといった、非限定的な種類の毛髪ケア及び/又は毛髪スタイリングベースのエンドユーザー配合物中に、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを使用することも考えられる。
本発明の実施形態のうちのいずれかによれば、本発明の組成物は、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを、組成物の全重量に対して0.01~10pbw、例えば0.05~5pbw、例えば0.1~2pbw含有する。
【0081】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを用いたときに達成される改善された枝毛補修は、毛髪ケア組成物の化学成分の供給者によって使用されるコミュニケーションツール上、例えばアニメーション又は映画、プレゼンテーション、リーフレット、チラシ、ポスター、技術データシート、処方集上、紙及びウェブサイトを含むあらゆる支援物上で強調されてもよい。これは、完全若しくは準完全な組成物、又は組成物を調製するために使用される特定の成分に関連してもよい。本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ特定の粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンを用いたときに達成される改善された枝毛補修は、毛髪ケア組成物を販売するのに使用されるコミュニケーションツール上、例えば商業的主張、ラベル、組成物に関連する文書、コマーシャル、商業的主張を裏付ける科学的研究上、紙、ラベル、ウェブサイト、映画又はアニメーションを含むあらゆる支援物上でも同様に強調されてもよい。商業的主張の例としては、枝毛の治癒、毛髪の深部修復、枝毛のシーリングなどを挙げることができる。映画又はアニメーションは、例えば、枝毛を有する毛髪繊維(又はその表示)及び毛髪繊維の処理に取り組み、枝毛を補修(即ち修復)する製品(又はその表示)を示すことができる。
【0082】
本発明のいくつかの詳細又は利点を、以下の非限定的な実施例で示す。
【実施例】
【0083】
ここで、以下の非限定的な実施例により、本発明を更に詳細に説明する。略語は、当該技術分野における通常の意味を有する。「q.s.」として示されている水の量は、「100pbwまで達成するために必要とされる量」であることが意図される。
【0084】
全ての成分は、配合物全体の重量パーセントで、且つ活性成分の濃度として表す。
【0085】
実施例1
次のセラム組成物を調製した。
【0086】
【0087】
本発明の配合物及び比較配合物に用いられるポリガラクトマンナンは、等価のカチオン性置換度及びヒドロキシアルキルモル置換を有する。これらは、主に、粘度の点で互いに異なる。
【0088】
配合手順
非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンを水中に分散させる。グリセリン及びパンテノールを加える。pHを4.5~5に調整する。保存料を加えてpHを4.7に調整する。エタノールを加えてpH(≦5)を確認する。水を加えてqsp100にする。
【0089】
毛髪房の性能の評価
毛髪房は、Kerling Internationalから購入した。
以下の特徴を有するヨーロッパ人の天然人毛:カラー5/0。全長19cm、17cmの自由毛髪。幅2.5cm。重さ4gの自由毛髪。
【0090】
毛髪前処理プロトコル
流水下で1分間毛髪房を濡らす(又はいくつかの毛髪房を使用している場合には水に10分間浸す)。毛髪房全体に3mLの10pbw活性ナトリウムジエトキシル化硫酸ドデシル(SLE2S)溶液を塗布する。各側30秒ずつで1分間シャンプーする。1分間すすぐ。人差し指と中指との間で絞る。中程度の歯の櫛に続いて細かい歯の櫛を使用してもつれをほどく。一晩、環境制御された室内に置く(RH=50%±10、T=23℃)。
【0091】
枝毛を得るための毛髪損傷プロトコル
カスタムメイドの繰り返しグルーミング装置が使用される。装置は、10個のコンパートメントからなり、10本の毛髪房を同時に梳かすことができる。1つのコンパートメント当たりに4つの櫛が90°の角度で取り付けられており、完全に1回転すると毛髪房を3回梳かすことができる。破断した断片を収集するために収集用引き出しをそれぞれの毛髪房の下に置く。全ての実験を、温度及び湿度が制御された条件下において、環境制御された室内で行った(RH=50%±10、T=23℃)。
【0092】
枝毛を形成するために、前処理された毛髪房は、19rpmで7,5時間の間に繰り返しグルーミングを受ける。
【0093】
修復された枝毛の割合の測定
全ての手順は、環境制御された室内で行われる(RH=50%±10、T=23℃)。前述のプロトコルに従って前処理した後で損傷を受けた4gの毛髪房を使用する。全てが枝毛を有する10本の毛髪繊維を選択し、10本の繊維キットを得るためにスコッチテープでそれらを一体に接着する。点灯している拡大鏡下で枝毛を数える。高精度天びん上で、2mgの生成物(それぞれ対照配合物、本発明の配合物、又は比較配合物)を、容量0.5mLの使い捨てホールピペットスポイトで補助しながら、プラスチック製計量カップ(weighting cup)内で計量する。10本の繊維を、これらの枝毛の近くを保持することによって集め、最大量を収集するためこれらを生成物に浸す。生成物が吸収されるまで、生成物を指で枝毛上に(先端に向かって最後の約1cm上に)広げる。指で繊維をもう一度ならし、10個の繊維キットをオーブン内に1分間置く。必要に応じて繊維をもう一度ならして整列させ、点灯している拡大鏡下で残った枝毛の数を数える。
【0094】
修復された枝毛の割合(修復%)を次のように計算した。
【0095】
結果は、次の通りであった。
【0096】
【0097】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンを含む本発明の配合物は、比較配合物(粘度の点で本発明の範囲外である非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有するカチオン性ポリガラクトマンナンを含む)と比較して、且つ対照配合物(特に枝毛を補修するための薬剤として作用する成分を含有していない)とも比較して、著しく改善された枝毛補修を示す。
【0098】
顕微鏡検査(走査電子顕微鏡)によって立証されるように、毛髪修復は認知可能である。
【0099】
本発明の配合物で処理された毛髪繊維は、初回の使用以降により健康的な外観を示す。
【0100】
図1に示されるように、本発明の配合物を1回適用した後では、毛髪の表面はより滑らかな外観を示し、キューティクルは部分的に修復され、枝毛間に架橋が形成される(枝分かれ部を一体にまとめるのに十分な枝毛の部分的シーリングが達成される)。毛髪端部の直径は、より厚く見え、より健康的な外観を示す。
【0101】
図2に示されるように、本発明の配合物を数回(3回)連続的に適用した後では、枝毛は完全にシーリングされ、キューティクルは寝かせられる。
【0102】
これらの実施例は、本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナン、すなわち、非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有し、且つ水中に1pbwの濃度で、25℃及び20rpmで700~1,200mPa.s(及び好ましくは950mPa.s未満、特には850mPa.s未満)のブルックフィールドRVT粘度を有するカチオン性ポリガラクトマンナンは、枝毛を補修するのに極めて有効であることを例示する。
【0103】
実施例2
本発明による配合物の性能を、基準組成物(すなわち、米国特許出願公開第2005/0089494号明細書及び同第2006/0251603号明細書で教示される、枝毛を補修するための薬剤として高分子電解質錯体を含むTRESemme Split Remedy Split Ends)とも比較した。
【0104】
次のセラム組成物を調製した。
【0105】
【0106】
修復された枝毛の割合を、実施例1で開示されたものと同じ手順及び方法に従って測定した。
【0107】
結果は、次の通りであった。
【0108】
【0109】
本発明による非イオン性ヒドロキシアルキル置換基を含有する特定のカチオン性ポリガラクトマンナンを含む本発明の配合物は、基準配合物(枝毛を補修するための薬剤として、ポリクオタニウム-28とメチルビニルエーテル/マレイン酸コポリマーとを特定の比で組み合わせた高分子電解質錯体を含む)と比較して、且つ対照配合物(特に枝毛を補修するための薬剤として作用する成分を含有していない)と比較して、著しく改善された枝毛補修を示す。
【0110】
試験では更に、本発明の配合物を用いたときに達成された枝毛補修が日次の梳毛(毎日のグルーミング)に耐えたことが確認された。
【0111】
基準配合物と比較して、本発明の配合物はより容易に使用できる(より多用途である)。
【0112】
また、官能評価も、本発明の配合物が、この基準配合物と比較して改善された感覚的性能を示したことを実証した。
【0113】
実施例3
「カール保持」試験を準備した。この試験は、制御気候室(controlled climatic room)内で行われる(RH=50%±10、T=23℃)。前処理で漂白された4グラムの毛髪房を用いる。1つのシステムごとに1つの毛髪房を用いる。
【0114】
配合物
実施例1で説明した「対照配合物」及び「本発明の配合物」を用いる。
毛髪房は、Kerling Internationalから購入した。以下の特徴を有する強漂白されたヨーロッパ人の天然人毛:色10/0、全長19cm、17cmの自由毛髪。幅2.5cm。重さ4gの自由毛髪。
【0115】
毛髪前処理プロトコル
流水下で1分間毛髪房を濡らす(又はいくつかの毛髪の束を使用している場合には水に10分間浸す)。毛髪房全体に3mLの10pbw活性ナトリウムジエトキシル化硫酸ドデシル(SLE2S)溶液を塗布する。各側30秒ずつで1分間シャンプーする。1分間すすぐ。人差し指と中指との間で絞る。中程度の歯の櫛に続いて細かい歯の櫛を使用してもつれをほどく。一晩、環境制御された室内に置く(RH=50%±10、T=23℃)。
【0116】
カール保持特性を評価するための試験プロトコル
1.毛髪房を、大きな歯の櫛で2回、続いて細かい歯の櫛で2回梳く。
2.毛髪房をグリッド背景のマウント上に配置し、初期外観の写真を撮る。
3.500mgの配合物を毛髪房の最後の5cm上に適用し;毛髪房の先端部を、繊維を締め付けることによって保持し、続いて先端部を配合物に対して垂直に浸して先端部を揉む。毛髪房の中程を保持して、毛髪房を容器に擦り付けることによって容器の残りの配合物を回収する。頂部から底部まで30秒間揉む。
4.毛髪房をカーラーに優しく巻き付ける。
5.60℃の通気炉(ventilated oven)内で20分間乾燥させる。
6.カーラーを毛髪房から優しく取り外す。
7.毛髪房をマウント上に配置し、t=0時点の写真を撮影する。
8.3時間、続いて72時間の時点で写真を撮影する。
【0117】
毛髪房1を「対照配合物」で処理し、毛髪房2を「本発明の配合物」で処理した(
図3)。
【0118】
図3に示されるように、「対照配合物」で処理された場合(毛髪房1)、カールは3時間後にほどける。「本発明の配合物」で処理された場合(毛髪房2)、研究条件下では、72時間後であってもカール/形状は維持される。
【0119】
本発明の配合物は、毛髪形状、すなわちカール保持に対する良好な効果を示す。
【0120】
実施例4
修復効果の洗浄に対する耐久性を検証するために、1回の配合物の適用に続いて、数回のシャンプー(洗浄)工程を実施した。各工程で、修復%を評価した。1システムごとに5つの毛髪房を用いた。
【0121】
配合物
実施例1に記載される「本発明の配合物」を使用した。
(中性の)シャンプー配合物は以下の通りであった:SLES(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)12重量%、CAPB(コカミドプロピルベタイン)2重量%、pH=5。
毛髪房は、Kerling Internationalから購入した。以下の特徴を有するヨーロッパの天然人毛:色6/0、全長20cm、18cmの自由毛髪。重さ2gの自由毛髪。
【0122】
毛髪房を前処理した(毛髪前処理プロトコルを参照)。続いて装置Spin Split Hair(登録商標)を用いた機械的作用によって毛髪房を変質させた。
調査対象の各毛髪房を装置に取り付け、続いて毛髪ドライヤーが連続的に熱風を毛髪房へと送る間に2つのブラシの交互するブラッシングに供する。繰り返されるブラッシング及び熱の組み合わせ作用は、毛髪房の劣化、特に枝毛の生成に寄与する。
毛髪房をSpin Split Hair(登録商標)に取り付ける。ユニットを毎分75回転に設定する。各毛髪房を1時間の変質サイクルに供し、これはブラシの約9000ストロークに相当する。
毛髪房を拡大鏡及びピンセットを用いて調査する。各毛髪房を6つの部分(亜群)に分割し、各亜群で50個の毛髪繊維が選択され、技術者が各繊維に対して枝毛の有無を確認する。毛髪房に対して、技術者が毛髪房の亜群当たりの枝毛の数、毛髪房当たりの6個の値、及び最後に生成物当たりで用いられる全ての5つの毛髪房の30個の値を累乗する。最終的に、5つ全ての毛髪房上で1500個の毛髪繊維を調査する。
配合物を適用した(初期修復)後に、連続的に1、3、5、及び10回シャンプーを適用した後で、配合物の修復効果を評価した。
【0123】
適用の規則:
・毛髪房を濡らし、中性シャンプーで全長を45秒間揉む(毛髪房2gに対してシャンプー0.2gを用いる)。
・45秒間十分にすすぎ、人差し指及び中指の間で絞る。毛髪房を風乾させる。枝毛の初期数を数える。
・(2gの毛髪房に対して)Polycare(登録商標)Split Therapyを含有する0.3gの配合物を、毛髪房の最後の8cm(先端部)に適用する。
・揉むことにより生成物を毛髪房上に分散させる。
・毛髪房を風乾させる。枝毛の数を数える。これにより初期修復が入手される。
続いて、追加のシャンプーを行い(上述したとおりに)、その途中で、1回のシャンプー後、3回のシャンプー後、5回のシャンプー後、及び10回のシャンプー後に枝毛の数を数える。これにより、各シャンプー後に保持される初期修復の%が入手される(
図4)。
【0124】
図4に示されるように、性能は10回の中性シャンプー適用後で安定しており、1回のセラム適用後に得られた修復の大半は保持されている。
したがって、本発明の配合物の修復効果は、数回の洗浄サイクルに対して耐久性がある。
【0125】
実施例5
上記で説明したものと同じ配合物及び毛髪房変性プロトコルを用いる。
修復効果の梳毛に対する耐久性を検証するために、1回の配合物の適用に続いて、20回の梳毛を実施した。修復%を計算した。1システムごとに5つの毛髪房を用いた。
【0126】
適用の規則:
・毛髪房を濡らし、中性シャンプーで全長を45秒間揉む(毛髪房2gに対してシャンプー0.2gを用いる)。
・45秒間十分にすすぎ、人差し指及び中指の間で絞る。毛髪房を風乾させる。枝毛の初期数を数える。
・(2gの毛髪房に対して)Polycare(登録商標)Split Therapyを含有する0.3gの配合物を、毛髪房の最後の8cm(先端部)に適用する。
・揉むことにより生成物を毛髪房上に分散させる。
・毛髪房を風乾させる。枝毛の数を数える。これにより初期修復が入手される。
続いて細かい歯の櫛で20回の梳毛を行う。枝毛の数を数える。これにより、20回の梳毛後に保持される初期修復の%が入手される。
本試験は、20回の梳毛後に保持される初期修復が77%であることを示した。
したがって、本発明の配合物の修復効果は、消費者の毎日のグルーミングプロセスを模倣した数回の梳毛に対して耐久性がある。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1】
図1に示されるように、本発明の配合物を1回適用した後では、毛髪の表面はより滑らかな外観を示し、キューティクルは部分的に修復され、枝毛間に架橋が形成される(枝分かれ部を一体にまとめるのに十分な枝毛の部分的シーリングが達成される)。毛髪端部の直径は、より厚く見え、より健康的な外観を示す。
【
図2】
図2に示されるように、本発明の配合物を数回(3回)連続的に適用した後では、枝毛は完全にシーリングされ、キューティクルは寝かせられる。
【
図3】毛髪房1を「対照配合物」で処理し、毛髪房2を「本発明の配合物」で処理した(
図3)。
【
図4】
図4に示されるように、性能は10回の中性シャンプー適用後で安定しており、1回のセラム適用後に得られた修復の大半は保持されている。