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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20230529BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20230529BHJP
   F16F 1/373 20060101ALI20230529BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20230529BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
H04R9/02 101A
F16F1/373
B60R11/02 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020051995
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021150934
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 和幸
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 達史
(72)【発明者】
【氏名】重田 朗
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】金澤 正裕
(72)【発明者】
【氏名】熊木 優
(72)【発明者】
【氏名】後藤 望
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 和也
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-225913(JP,A)
【文献】実開平5-041289(JP,U)
【文献】実開平2-133088(JP,U)
【文献】特開平2-113696(JP,A)
【文献】特開2017-060051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 9/02
F16F 1/373
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板および磁気回路を保持するフレームと、
前記フレームに貼り付けられる固定部と、前記フレームに対して移動可能な可動部と、その中間部位である屈曲部と、を有するクッションと、を備え、
前記フレームは、
前記クッションの前記固定部が貼り付けられる接着部と、
前記クッションの前記可動部が接する非接着部と、
前記非接着部に位置して、取付ねじが挿通される貫通孔と、
前記可動部の可動範囲であって、前記貫通孔よりも前記屈曲部側に設けられた突起と、を含む、
スピーカ。
【請求項2】
前記突起は、前記フレームの径方向外側の外周縁部に配置される、
請求項1に記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、フレームが取付ねじを用いて車両の支持部材に取り付けられるスピーカについて記載されている。このスピーカは、フレームに形成された円環状の鍔部と、鍔部に取付ねじを挿通させるための貫通孔と、鍔部に貼り付けされた本体クッション部材と、貫通孔を露出させるように本体クッション部材の一部が分断された分断部と、分断部を塞ぐように着けられて変形により貫通孔が露出可能となる補助クッション部材と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6478885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のスピーカは、本体クッション部材および補助クッション部材によりスピーカの前面と車両の内装板などとの間をシールできる。そして、このスピーカを車両の支持部材に取り付ける場合に、補助クッション部材を変形させることで貫通孔を露出させて取付ねじを挿通できる。
【0005】
しかし、上記スピーカでは、取付ねじを挿通する作業中に工具や取付ねじに対して補助クッション部材が干渉し、工具や取付ねじに巻き込まれた場合は補助クッション部材が千切れてしまうおそれがある。この問題を防ぐには、取付ねじを挿通するときは手で補助クッション部材を押さえる作業を要し、この作業が、取付ねじを挿通する作業と、スピーカを車両の支持部材に対して手で押さえる作業と重なるため作業性が悪い。
【0006】
本発明は、取り付けの作業性を向上することのできるスピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様のスピーカは、振動板および磁気回路を保持するフレームと、前記フレームに貼り付けられる固定部と、前記フレームに対して移動可能な可動部と、その中間部位である屈曲部と、を有するクッションと、を備え、前記フレームは、前記クッションの前記固定部が貼り付けられる接着部と、前記クッションの前記可動部が接する非接着部と、前記非接着部に位置して、取付ねじが挿通される貫通孔と、前記可動部の可動範囲であって、前記貫通孔よりも前記屈曲部側に設けられた突起と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスピーカは、クッションの可動部を、屈曲部で折り曲げて変形し、貫通孔から遠ざけた状態を突起により保持することで、貫通孔を露わにした形態を維持できる。この結果、スピーカは、取付ねじを取り付ける作業を容易に行え、クッションが千切れることなく作業性を向上でき、シールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るスピーカの正面図である。
図2図2は、図1に示すスピーカのA-A断面図である。
図3図3は、実施形態に係るスピーカの部分拡大斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るスピーカの他の形態を示すA-A断面の部分拡大断面図である。
図5図5は、実施形態に係るスピーカの他の形態を示すA-A断面の部分拡大断面図である。
図6図6は、実施形態に係るスピーカの他の形態を示すA-A断面の部分拡大断面図である。
図7A図7Aは、実施形態に係るスピーカの部分拡大正面図である。
図7B図7Bは、実施形態に係るスピーカの部分拡大正面図である。
図8図8は、実施形態に係るスピーカの部分拡大側面図である。
図9図9は、実施形態に係るスピーカの部分拡大斜視図である。
図10図10は、実施形態に係るスピーカの部分拡大正面図である。
図11図11は、実施形態に係るスピーカの部分拡大斜視図である。
図12図12は、実施形態に係るスピーカの部分拡大斜視図である。
図13図13は、実施形態に係るスピーカの部分拡大斜視図である。
図14図14は、実施形態に係るスピーカの部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
図1は、実施形態に係るスピーカの正面図である。図2は、図1に示すスピーカのA-A断面図である。
【0012】
本実施形態において、スピーカ1は、放音がなされる側である放音方向正面側と、放音方向正面側の反対側である放音方向背面側と、に延びる軸線Lを基準に構成される。放音方向は、軸線Lに平行な方向である。なお、放音方向正面側を単に正面側という場合もあり、放音方向背面側を単に背面側という場合もある。そして、軸線Lを中心として円を描く方向を周方向という。また、軸線Lに直交する方向を径方向といい、軸線Lに近づく側を径方向内側とし、軸線Lから遠ざかる側を径方向外側という。
【0013】
スピーカ1は、フレーム2と、振動系3と、磁気回路4と、を備える。
【0014】
フレーム2は、例えば、金属で一体に形成され、スピーカ1の正面側に配置される正面部材21と、スピーカ1の背面側に配置される背面部材22と、正面部材21および背面部材22の間に設けられた連結部材23と、を含む。
【0015】
正面部材21は、フランジ部21Aと、支持部21Bと、リブ21Cと、を有する。フランジ部21Aは、正面側と背面側に板面21Aa,21Abを向けた板体が、軸線Lを中央に配置し周方向に連続して円環状に形成されている。フランジ部21Aは、後述する固定側の板部材50に固定される部分である。支持部21Bは、フランジ部21Aの径方向内側に設けられ、周方向に連続して円環状に形成されている。支持部21Bは、その正面側に振動系3が取り付けられる取付面21Baを有している。リブ21Cは、フランジ部21Aの正面側の板面21Aaから正面側に延びて設けられ、周方向に連続して円環状に形成されている。リブ21Cは、フランジ部21Aの径方向内側に設けられる形態(図1から図4参照)と、フランジ部21Aの径方向外側に設けられる形態(図5および図6参照)とがある。なお、本実施形態においてフランジ部21Aおよび支持部21Bおよびリブ21Cは円環状であるとしたがこれに限定されず、楕円形状や角型形状などの任意の形状を取り得る。後述する背面部材22や振動板31、エッジ32、ボビン33、ダンパ35、マグネット41、プレート42なども同様に、任意の形状であってよい。
【0016】
背面部材22は、正面側と背面側に板面22a,22bを向けた板体が、軸線Lを中央に配置し周方向に連続して円環状に形成されている。背面部材22は、正面部材21に対して径方向寸法が小さく形成されている。背面部材22は、磁気回路4が取り付けられる部分である。
【0017】
連結部材23は、正面部材21および背面部材22を連結する部材である。連結部材23は、本実施形態では、正面側の正面部材21に一端が連結し、背面側の背面部材22に他端が連結した複数の棒状体で構成されている。連結部材23は、この棒状体が、一端からから他端に延びる途中で径方向内側にへこむように湾曲して形成され、かつ他端が一端よりも径方向内側に至るように形成されている。これにより、連結部材23は、周方向全体として正面側から背面側に窄むように形成される。なお、連結部材23は、図には明示しないが、周方向に連続して円環状に形成されていてもよい。
【0018】
振動系3は、主として、振動板31を有し、そのほか、エッジ32と、ボビン33と、ボイスコイル34と、ダンパ35と、を含む。
【0019】
振動板31は、軸線Lを中心とした円筒状をなし、正面側から背面側に漸次窄むように略すり鉢状に形成されている。
【0020】
エッジ32は、軸線Lを中心とした円環状に形成されている。エッジ32は、振動板31の正面側の外周縁部に取り付けられる。エッジ32は、フレーム2に対し正面部材21における支持部21Bの取付面21Baに取り付けられる。
【0021】
ボビン33は、軸線Lを中心とし放音方向に延びる円筒状に形成されている。ボビン33は、正面側の端部が振動板31の背面側の開口部に挿通されて振動板31に取り付けられている。
【0022】
ボイスコイル34は、ボビン33における背面側の端部の外周に巻き回されて設けられている。図示しないが、ボイスコイル34のリードは、フレーム2の連結部材23に固定された接続端子に接続されている。従って、外部から入来する入力音声信号は、接続端子を介してボイスコイル34に供給される。
【0023】
ダンパ35は、軸線Lを中心として中央が開口する円盤状に形成され、かつ軸線Lを中心として径方向に連続して放音方向に蛇行するする凹凸の繰り返しにより蛇腹状に形成されている。ダンパ35は、中央の開口を形成する内周縁部が、ボイスコイル34よりも正面側の位置でボビン33の外周に固定されている。また、ダンパ35は、外周縁部が、フレーム2に対し背面部材22に取り付けられる。
【0024】
振動系3は、振動板31が、エッジ32を介してフレーム2の正面部材21に取り付けられるとともに、ボイスコイル34を巻き回されたボビン33およびダンパ35を介してフレーム2の背面部材22に支持される。
【0025】
磁気回路4は、マグネット41と、プレート42と、ヨーク43と、を含む。
【0026】
マグネット41は、軸線Lを中心として中央が開口する円盤状に形成されている。
【0027】
プレート42は、軸線Lを中心として中央が開口する円盤状に形成されている。プレート42は、マグネット41の正面側に重なるように固定されている。プレート42は、フレーム2に対し背面部材22に固定される。
【0028】
ヨーク43は、マグネット41およびプレート42の中央の開口に背面側から挿通される円柱状のピース43Aと、ピース43Aの背面側の端部の外周から径方向外側に張り出すように形成されたフランジ43Bとを有して構成されている。
【0029】
磁気回路4は、ピース43Aが振動系3におけるボビン33の背面側に挿入される。そして、磁気回路4は、ピース43Aとプレート42との環状の隙間に、振動板31におけるボイスコイル34が、ピース43Aおよびプレート42に接触しないように配置される。
【0030】
従って、スピーカ1は、ボイスコイル34に交流の入力音声信号が供給されると、この入力音声信号に対応してマグネット41との協働により生じるローレンツ力によってボイスコイル34に放音方向への振動が発生する。このため、スピーカ1は、ボイスコイル34が巻き回されたボビン33が振動板31を伴って放音方向に一体的に振動する。これにより、スピーカ1は、振動板31から正面側に放音する。また、スピーカ1は、振動板31と接続されたエッジ32、およびボビン33に接続されたダンパ35が、ボビン33および振動板31を支持し、ボイスコイル34がプレート42およびピース43Aに接触しないようにするとともに、振動に所定の制動を与える。
【0031】
上述したスピーカ1は、図2に示すように、例えば、車両などの固定側の板部材50に取り付けられる。板部材50は、例えば、鉄板であり、スピーカ1の背面側が挿通される開口孔50aが形成されている。スピーカ1は、板部材50における開口孔50aの外周縁部に取付ねじ5により取り付けられる。本実施形態において、スピーカ1は、フレーム2において正面部材21のフランジ部21Aに取付ねじ5を挿通する貫通孔21Acが放音方向に貫通して形成されている。そして、スピーカ1は、フランジ部21Aの貫通孔21Acに挿通された取付ねじ5によって板部材50に取り付けられる。本実施形態のスピーカ1は、板部材50に開口孔50aの外周縁部の正面側に沿って環状のブラケット51が配置される。そして、スピーカ1は、ブラケット51の正面側にフランジ部21Aの背面側の板面21Abを添わせ、正面側の板面21Aaから取付ねじ5をフランジ部21Aおよびブラケット51を貫通させ、開口孔50aの外周縁部の背面側のナット5Aへの相互の締め付けによって板部材50に取り付けられる。ブラケット51は、必須ではなく用いなくてもよい。本実施形態のスピーカ1は、図1に示すように、3か所の取付ねじ5により板部材50に取り付けられる。すなわち、本実施形態のスピーカ1は、正面部材21のフランジ部21Aには、取付ねじ5の数に合わせた3か所に貫通孔21Acが設けられている。
【0032】
また、本実施形態のスピーカ1は、クッション6を有する。クッション6は、弾性を有する材料、例えば、スポンジなどで形成されている。クッション6は、フレーム2において正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに沿って環状に配置されている。クッション6は、その一部が、正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aa、またはリブ21Cに貼り付けにより接着されている。スピーカ1は、板部材50に取り付けられた後、図2に示すように、正面側に内装材52で覆われる場合、内装材52の背面側に延びる筒状のカバー52Aの先端がクッション6に当接して食い込む。内装材52は、スピーカ1の振動系3の正面側に多数の貫通孔52Bが形成され、その他の部分が目隠しされている。このため、スピーカ1は、カバー52Aとクッション6との当接によりカバー52Aの外側への放音の漏れをシールされ、多数の貫通孔52Bからのみ内装材52の正面側に放音を発する。また、フレーム2において正面部材21のフランジ部21Aに設けられたリブ21Cは、カバー52Aに対して径方向で重なり周方向で同心状に配置される。このため、スピーカ1は、リブ21Cおよびカバー52Aにより、カバー52Aの外側への放音の漏れを相乗してシールできる。また、カバー52Aとクッション6との当接、およびリブ21Cおよびカバー52Aの上記重なりは、板部材50の正面側に入った塵埃や水がカバー52Aの筒状内へ入り込こまないようシールすることもできる。
【0033】
図3は、実施形態に係るスピーカの部分拡大斜視図である。
【0034】
本実施形態のスピーカ1は、上記クッション6に関し、図1に示すように軸線Lの図面上の上方に位置する貫通孔21Acに対してはクッション6を避けて配置し、その他の貫通孔21Acの正面側にはクッション6が被さるように構成されている。クッション6が貫通孔21Acの正面側に被さるようにすれば、そうでない構成と比較してスピーカ1の小型化が図れる。なお、全ての貫通孔21Acの正面側にクッション6が被さるように構成してもよい。なお、貫通孔21Acは3か所に限定されず、任意の個数であってよい。
【0035】
クッション6は、図1および図3に示すように、環状を分断した分断部6Aが形成されている。言い換えると、クッション6は複数のクッション61により構成され、それぞれのクッション61の接する点もしくは接する面が、分断部6Aである。分断部6Aは、取付ねじ5が配置される貫通孔21Acの近くのクッション6の位置に形成される。本実施形態では、クッション6は、被さる取付ねじ5が2か所であるため、各取付ねじ5(貫通孔21Ac)の付近の2か所に分断部6Aが形成され、クッション6は2個のクッション61で構成されている。そして、図1に網掛けで示すように、クッション61は、取付ねじ5の正面側に被さる一方の端部を正面部材21に接着せず移動可能とする可動部6Bとし、その他の部分となる他方の端部を正面部材21に接着する固定部6Cとする。クッション61は、可動部6Bと固定部6Cとの境の部分であって可動部6Bの端部の貼り付けられない基となる部分を屈曲部6Dとして、折り曲げて変形できるように構成される。なお、固定部6Cは、クッション61の他方の端部に限定されず、クッション61の所定の部位であってよい。言い換えると、クッション61の両端が可動部6Bであって、その中間部位が固定部6Cであってもよい。
【0036】
なお、正面部材21において、可動部6Bが接する部分をクッション6が貼り付けられていない非接着部を21Eとし、固定部6Cが配置される部分をクッション6が貼り付けられている接着部を21Fとする。非接着部21Eは、フランジ部21Aおよびリブ21Cにおいてクッション6の可動部6Bが接着されない部分である。また、接着部21Fは、フランジ部21Aやリブ21Cにおいてクッション6の固定部6Cが接着されている部分である。以下の説明において、非接着部21Eおよび接着部21Fは、フランジ部21Aの正面側の板面21Aaとして図示する。
【0037】
この構成により、スピーカ1は、図3に示すように、クッション6の可動部6Bを屈曲部6Dで折り曲げて変形し、正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから遠ざけることで、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにすることができる。このため、スピーカ1は、取付ねじ5の正面側に被さる可動部6Bを貫通孔21Acから避け、クッション6の可動部6Bを巻き込むことなく取付ねじ5を取り付ける作業を行える。また、スピーカ1は、取付ねじ5を取り付けた後は、可動部6Bを取付ねじ5の正面側に被せるようにフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに添わせることができる。
【0038】
ここで、クッション6の可動部6Bの可動範囲Sは、分断部6Aから、屈曲部6Dで180°折り曲げて変形させ、最も遠ざかった状態での可動部6Bの端まで、とする。言い換えると、可動部6Bの可動範囲Sとは、屈曲部6Dを中心とする、可動部6Bの長さ分の距離範囲内である。
【0039】
また、本実施形態のスピーカ1は、可動部6Bが位置するフレーム2の正面部材21に突起21Dが形成されている。突起21Dは、図3に示すように、可動部6Bが位置する非接着部21Eの範囲において、周方向で、貫通孔21Acと、可動部6Bの屈曲部6Dとの間に設けられている。突起21Dは、振動板31よりも径方向外側であって、フランジ部21Aの正面側の板面21Aaの径方向外側の外周縁部において正面側に突出して形成されている。スピーカ1の設置後の状態、言い換えるとスピーカ1を設置する際以外の状態においては、突起21Dは可動部6Bの径方向外側に当接し、可動部6Bがフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接した状態を維持するよう、可動部6Bの移動を規制する。また、スピーカ1を設置する際には、突起21Dは、可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから径方向外側に遠ざけた形態で可動部6Bの径方向内側に当接することで、可動部6Bが貫通孔21Acに被さらないよう、可動部6Bの移動を規制する。突起21Dは、フランジ部21Aの正面側の板面21Aaからの突出長さが、可動部6Bに当接してその移動を規制する程度であればよい。突起21Dは、クッション61の可動範囲S内であれば、貫通孔21Acに対して屈曲部6Dよりも遠方に配置されてもよい。このときクッション61は、180°近く屈曲することで突起21Dにより保持され、スピーカ1を設置する際の可動部6Bの移動を規制する。突起21Dは、図1に示す可動部6Bの可動範囲S内に配置されることで、スピーカ1を設置する際に可動部6Bが貫通孔21Acに被さらないよう、可動部6Bの移動を規制することができる。
【0040】
この構成により、スピーカ1は、図3に示すように、可動部6Bを屈曲部6Dで径方向外側に折り曲げて変形し、正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから遠ざけた位置を突起21Dにより保持する。この結果、スピーカ1は、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができる。このため、スピーカ1を設置する際に、取付ねじ5の正面側に被さる可動部6Bを貫通孔21Acから避け、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが干渉することがなく取付ねじ5を取り付ける作業を容易に行える。さらに、スピーカ1は、取付ねじ5を取り付ける際に、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが巻き込まれて損傷する事態を防止できる。また、スピーカ1は、取付ねじ5を取り付けた後は、可動部6Bを取付ねじ5の正面側に被せるようにフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに添わせた位置を突起21Dにより保持する。この結果、スピーカ1は、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。また、スピーカ1は、突起21Dが振動板31の径方向外側の外周縁部に設けられているため、可動部6Bを取付ねじ5の正面側に被せるようにフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに添わせた形態で、振動板31寄りの径方向内側に向けて可動部6Bを保持する。この結果、スピーカ1は、シール性能をより向上できる。
【0041】
なお、本実施形態のスピーカ1は、分断部6Aが2か所設けられ、2つの可動部6Bが屈曲部6Dを基準に同方向に変形できるように構成されている。このように、複数の可動部6Bを屈曲部6Dを基準に同方向に変形させると、取付ねじ5を取り付ける作業を一方向から行えるため作業性がよい。
【0042】
図4から図6は、実施形態に係るスピーカの他の形態を示す部分拡大断面図である。
【0043】
図4に示すスピーカ1は、図1から図3に示す構成に対し、突起21Daの形態が異なる。突起21Daは、フレーム2において正面部材21の径方向内側に設けられたリブ21Cの正面側に延びた端部に設けられ、径方向外側に突出して形成されている。突起21Daは、非接着部21Eの範囲において、周方向で、貫通孔21Acと、可動部6Bの屈曲部6Dとの間に設けられている。スピーカ1の設置後の状態、言い換えるとスピーカ1を設置する際以外の状態においては、突起21Daは可動部6Bの正面側に当接し、可動部6Bがフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接した状態を維持するよう、可動部6Bの移動を規制する。また、スピーカ1を設置する際には、突起21Daは、可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから正面側に遠ざけた形態で可動部6Bの背面側に当接することで、可動部6Bが貫通孔21Acに被さらないよう、可動部6Bの移動を規制する。突起21Daは、リブ21Cからの突出長さが、可動部6Bに当接してその移動を規制する程度であればよい。さらに、突起21Daは、軸線L方向から正面を見た場合に、可動部が孔21Acに被らない状態になる周方向の位置に配置される(図示しない)。この図4に示すスピーカ1は、突起21Daにより、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができ、また、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。突起12Daが上にあるとネジ頭の分だけクッションが持ち上がることを防ぎ、シール性能を向上できる。突起21Dは、図3に示される例と同様に、図1に示す可動部6Bの可動範囲S内であれば、貫通孔21Acに対して屈曲部6Dよりも遠方に配置されてもよい。
【0044】
図5に示すスピーカ1は、図1から図3に示す構成に対し、リブ21Caおよび突起21Dbの形態が異なる。リブ21Caは、フレーム2において正面部材21の径方向外側に設けられ、正面側に延びて形成されている。突起21Dbは、このリブ21Caの正面側に延びた端部に設けられ、径方向内側に突出して形成されている。突起21Dbは、非接着部21Eの範囲において、周方向で、貫通孔21Acと、可動部6Bの屈曲部6Dとの間に設けられている。スピーカ1の設置後の状態、言い換えるとスピーカ1を設置する際以外の状態においては、突起21Dbは可動部6Bの正面側に当接し、可動部6Bがフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接した状態を維持するよう、可動部6Bの移動を規制する。またスピーカ1を設置する際には、突起21Dbは、可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから正面側に遠ざけた形態で(図5に二点鎖線で示す)、可動部6Bの背面側に当接することで、可動部6Bが貫通孔21Acに被さらないよう、可動部6Bの移動を規制する。突起21Dbは、リブ21Caからの突出長さが、可動部6Bに当接してその移動を規制する程度であればよい。さらに、突起21Daは、軸線L方向から正面を見た場合に、可動部が孔21Acに被らない状態になる周方向の位置に配置される(図示しない)。この図5に示すスピーカ1は、突起21Dbにより、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができ、また、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。突起12Daが上にあるとネジ頭の分だけクッションが持ち上がることを防ぎ、シール性能を向上できる。突起21Dは、図3に示される例と同様に、図1に示す可動部6Bの可動範囲S内であれば、貫通孔21Acに対して屈曲部6Dよりも遠方に配置されてもよい。
【0045】
図6に示すスピーカ1は、図1から図3に示す構成に対し、リブ21Caおよび突起21Dcの形態が異なる。リブ21Caは、フレーム2において正面部材21の径方向外側に設けられ、正面側に延びて形成されている。突起21Dcは、正面部材21においてリブ21Caと対向する径方向内側となる支持部21Bの近傍にて、正面側に突出して形成されている。突起21Dcは、非接着部21Eの範囲において、周方向で、貫通孔21Acと、クッション61の屈曲部6Dとの間に設けられている。スピーカ1の設置後の状態、言い換えるとスピーカ1を設置する際以外の状態においては、突起21Dcは可動部6Bの径方向内側に当接し、可動部6Bがフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接した状態を維持するよう、可動部6Bの移動を規制する。またスピーカ1を設置する際には、突起21Dcは、可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから正面側および径方向内側に遠ざけた形態で(図6に二点鎖線で示す)、可動部6Bの径方向外側に当接することで、可動部6Bが貫通孔21Acに被さらないよう、可動部6Bの移動を規制する。突起21Dcは、正面側への突出長さが、可動部6Bに当接してその移動を規制する程度であればよい。この図6に示すスピーカ1は、突起21Dcにより、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができ、また、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。突起21Dは、図3に示される例と同様に、図1に示す可動部6Bの可動範囲S内であれば、貫通孔21Acに対して屈曲部6Dよりも遠方に配置されてもよい。
【0046】
図7Aから図14は、本実施形態のスピーカの部分拡大図である。図7Aおよび図7Bおよび図10は、正面図で示し、図8は、側面図で示し、図9図11から図14は、斜視図で示している。
【0047】
図7Aから図14に示すスピーカ1は、クッション6の分断部6Aに嵌合部6Eが設けられている。嵌合部6Eは、接着部21Fに固定されるひとつのクッション61の固定部6Cと、非接着部21Eに接して移動可能とする他のクッション61の可動部6Bとの相互の端6Ca,6Baを嵌合する。なお、図8から図14において、分断部6Aは、相互の端6Ca,6Baが接触している構成であるが、説明の便宜上、端6Ca,6Baを離して示している。なお、クッション6がひとつのクッション61で構成される場合は、クッション61の一方の端部である可動部6Bと、他方の端部である固定部6Cとを篏合する構成となる。
【0048】
図7Aに示すスピーカ1は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caとが、相互に面で接触する接触面として構成されている。各接触面である各端6Ba,6Caは、平坦面として図示しているが、平坦でなくてもよい。図7Aに示すように、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caの接触面が互いに嵌合しており、固定部6Cが可動部6Bの径方向外側への動きを規制する構造を有する。言い換えると、可動部6Bは固定部6Cとリブ21Caに径方向に挟まれるように抑えられている。そして、図7Aに示すスピーカ1において、嵌合部6Eは、各接触面である端6Ba,6Caにおいて、固定部6Cの端6Caの径方向外側部6Cabが、径方向内側部6Caaよりも周方向で突出して形成されている。固定部6Cの端6Caの径方向外側部6Cabや径方向内側部6Caaは、接触面である端6Caの縁として図示しているが、径方向外側部6Cabが径方向内側部6Caaよりも径方向外側に位置する関係であればよい。また、可動部6Bの接触面である端6Baの径方向内側部6Baaが、径方向外側部6Babよりも周方向で突出して形成されている。可動部6Bの端6Baの径方向内側部6Baaや径方向外側部6Babは、接触面である端6Baの縁として図示しているが、径方向外側部6Babが径方向内側部6Baaよりも径方向外側に位置する関係であればよい。
【0049】
図7Aに示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接して配置した状態において、嵌合部6Eにて、各接触面である各端6Ba,6Caが嵌合する。このとき、クッション6は、可動部6Bと固定部6Cとの相互の接触面である各端6Ba,6Caが径方向に対して斜めに接触する。さらに、クッション6は、固定部6Cの端6Caの径方向外側部6Cabが、径方向内側部6Caaよりも周方向で突出して形成され、可動部6Bの接触面である端6Baの径方向内側部6Baaが、径方向外側部6Babよりも周方向で突出して形成されているため、固定部6Cの端6Caにより、可動部6Bの端6Baの、径方向外側への移動が規制される。このように、図7Aに示すスピーカ1は、嵌合部6Eにより、クッション6の固定部6Cと可動部6Bとの嵌合部6Eにおける相互の端6Ba,6Caを嵌合する。この結果、図7Aに示すスピーカ1は、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。
【0050】
なお、図7Bに示すように、スピーカ1は、クッション6の可動部6Bを屈曲部6Dで径方向外側に折り曲げて変形し、正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから遠ざけた場合、可動部6Bの端6Baの径方向内側部6Baaが、固定部6Cの端6Caの径方向外側部6Cabに引っ掛かって保持される。言い換えると、可動部6Bは、固定部6Cの突出した径方向外側部6Cabよりも、径方向外側に保持される。この結果、スピーカ1を設置する際には、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができる。このため、スピーカ1は、取付ねじ5の正面側に被さる可動部6Bを貫通孔21Acから避け、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが干渉することがなく取付ねじ5を取り付ける作業を容易に行える。さらに、スピーカ1は、取付ねじ5を取り付ける際に、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが巻き込まれて損傷する事態を防止できる。また、図7Aには突起21Dが記載されているが、突起21Dが無い状態であっても、上述したように可動部6Bが貫通孔21Acに被さらない状態を保持することができるため、突起21Dは無くてもよい。
【0051】
図8に示すスピーカ1は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caとが、相互に面で接触する接触面として構成されている。各接触面である各端6Ba,6Caは、平坦面として図示しているが、平坦でなくてもよい。図8に示すクッション6は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caの接触面が、可動部6Bの放音方向正面側への動きを規制する構造を有する。そして、図8に示すスピーカ1において、嵌合部6Eは、各接触面である端6Ba,6Caにおいて、固定部6Cの端6Caの放音方向正面側部6Cacが、放音方向背面側部6Cadよりも周方向で突出して形成されている。固定部6Cの端6Caの放音方向正面側部6Cacや放音方向背面側部6Cadは、接触面である端6Caの縁として図示しているが、放音方向正面側部6Cacが放音方向背面側部6Cadよりも放音方向正面側に位置する関係であればよい。また、可動部6Bの接触面である端6Baの放音方向背面側部6Badが、放音方向正面側部6Bacよりも周方向で突出して形成されている。可動部6Bの端6Baの放音方向正面側部6Bacや放音方向背面側部6Badは、接触面である端6Baの縁として図示しているが、放音方向正面側部6Bacが放音方向背面側部6Badよりも放音方向正面側に位置する関係であればよい。
【0052】
この図8に示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接して配置した状態において、嵌合部6Eにて、各接触面である各端6Ba,6Caが接触する。このとき、クッション6は、可動部6Bと固定部6Cとの相互の接触面である各端6Ba,6Caが放音方向に対して斜めに接触する。さらに、クッション6は、固定部6Cの端6Caの放音方向正面側部6Cacが、放音方向背面側部6Cadよりも周方向で突出して形成され、可動部6Bの接触面である端6Baの放音方向背面側部6Badが、放音方向正面側部6Bacよりも周方向で突出して形成されているため、固定部6Cの端6Caにより、可動部6Bの端6Baの、放音方向正面側への移動が規制される。このように、図8に示すスピーカ1は、嵌合部6Eにより、クッション6の固定部6Cと可動部6Bとの嵌合部6Eにおける相互の端6Ba,6Caを嵌合する。この結果、図8に示すスピーカ1は、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。さらに、この実施例の嵌合部6Eの形状によってネジ頭の分だけクッションが持ち上がることを防ぎ、シール性能を向上できる。また、突起21Dを配置することによって、さらに可動部6Bが貫通孔21Acに被さらない状態を保持することができる。
【0053】
なお、図9に示すように、図8に示すスピーカ1の上記構成と、図7Aに示すスピーカ1の上記構成とを組み合わせてもよい。この場合、嵌合部6Eは、略平行四辺形の面となる。詳しくは、クッション6の可動部6Bの径方向内側(径方向内側部6Baa)、かつ、放音方向背面側(放音方向背面側6Bab)が周方向に最も突出し、クッション6の可動部6Bの径方向外側(径方向外側部6Bad)、かつ、放音方向正面側(放音方向正面側部6Bac)が周方向に最も引っ込んでおり、これらを通る面によって傾斜状に切られた面(端6Ba)が嵌合面となる。同様にクッション6の固定部6Cは、径方向外側(径方向外側部6Cab)、かつ、放音方向正面側(放音方向正面側部6Cac)が周方向に最も突出し、クッション6の固定部6Cの径方向内側(径方向内側部6Caa)、かつ、放音方向背面側(放音方向背面側部6Cad)が周方向に最も引っ込んだ形状となり、これらを通る面によって傾斜状に切られた面(端6Ca)が嵌合面となる。これにより、クッション6は、可動部6Bが径方向および放音方向への移動を規制されることとなる。この結果、スピーカ1は、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。また、図9に示すスピーカ1のように、図8に示すスピーカ1の上記構成と、図7Aに示すスピーカ1の上記構成とを組み合わせた場合、可動部6Bの端6Baの径方向内側部6Baaが、固定部6Cの端6Caの径方向外側部6Cabに引っ掛かって保持するため、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持できる。
【0054】
図10に示すスピーカ1は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caとが、相互に面で接触する接触面として構成されている。図10に示すクッション6は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caの接触面が、可動部6Bの径方向外側への動きを規制する構造を有する。そして、図10に示すスピーカ1において、嵌合部6Eは、各接触面である端6Ba,6Caにおいて、凸部6Beと凹部6Ceとからなる。凸部6Beは、可動部6Bの端6Baの径方向内側において固定部6Cに向かって周方向に突出して形成されている。可動部6Bの凸部6Beは、径方向外側に向く径方向外面6Beaを有する。凹部6Ceは、固定部6Cの端6Caの径方向内側において可動部6Bから遠ざかるように周方向でへこんで形成されている。固定部6Cの凹部6Ceは、径方向内側に向く径方向内面6Ceaを有する。凸部6Beと凹部6Ceとは、互いに嵌め合う。凸部6Beと凹部6Ceとが嵌め合うことで、可動部6Bの端(接触面)6Baと、固定部6Cの端(接触面)6Caとが接触する。また、凸部6Beと凹部6Ceとが嵌め合うことで、凸部6Beの径方向外面6Beaと凹部6Ceの径方向内面6Ceaとが径方向で相互に向き合って当接する。
【0055】
この図10に示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接して配置した状態において、嵌合部6Eにて、各接触面である各端6Ba,6Caが接触する。このとき、クッション6は、可動部6Bの凸部6Beが固定部の凹部6Ceに嵌り、凸部6Beの径方向外面6Beaが凹部6Ceの径方向内面6Ceaに当接することで、可動部6Bの端6Baの、径方向外側への移動が規制される。このように、図10に示すスピーカ1は、嵌合部6Eにより、クッション6の固定部6Cと可動部6Bとの嵌合部6Eにおける相互の端6Ba,6Caを嵌合する。この結果、図10に示すスピーカ1は、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。
【0056】
なお、図10に示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bを屈曲部6Dで径方向外側に折り曲げて変形し、正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから遠ざけた場合、可動部6Bの端6Baの凸部6Beが、固定部6Cの端6Caの径方向外側部分に引っ掛かって保持される。言い換えると、可動部6Bは、固定部6Cの端6Caよりも、径方向外側に保持される。この結果、スピーカ1を設置する際には、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができる。このため、スピーカ1は、取付ねじ5の正面側に被さる可動部6Bを貫通孔21Acから避け、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが干渉することがなく取付ねじ5を取り付ける作業を容易に行える。さらに、スピーカ1は、取付ねじ5を取り付ける際に、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが巻き込まれて損傷する事態を防止できる。また、図10には突起21Dが記載されているが、突起21Dが無い状態であっても、上述したように可動部6Bが貫通孔21Acに被さらない状態を保持することができるため、突起21Dは無くてもよい。
【0057】
図11に示すスピーカ1は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caとが、相互に面で接触する接触面として構成されている。図11に示すクッション6は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caの接触面が、可動部6Bの放音方向正面側への動きを規制する構造を有する。そして、図11に示すスピーカ1において、嵌合部6Eは、各接触面である端6Ba,6Caにおいて、凸部6Beと凹部6Ceとからなる。凸部6Beは、可動部6Bの端6Baの放音方向背面側において固定部6Cに向かって周方向に突出して形成されている。可動部6Bの凸部6Beは、放音方向正面側に向く放音方向正面6Bebを有する。凹部6Ceは、固定部6Cの端6Caの放音方向背面側において可動部6Bから遠ざかるように周方向でへこんで形成されている。固定部6Cの凹部6Ceは、放音方向背面側に向く放音方向背面6Cebを有する。凸部6Beと凹部6Ceとは、互いに嵌め合う。凸部6Beと凹部6Ceとが嵌め合うことで、可動部6Bの端(接触面)6Baと、固定部6Cの端(接触面)6Caとが接触する。また、凸部6Beと凹部6Ceとが嵌め合うことで、凸部6Beの放音方向正面6Bebと凹部6Ceの放音方向背面6Cebとが放音方向で相互に向き合って当接する。
【0058】
この図11に示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接して配置した状態において、嵌合部6Eにて、各接触面である各端6Ba,6Caが接触する。このとき、クッション6は、可動部6Bの凸部6Beが固定部の凹部6Ceに嵌り、凸部6Beの放音方向正面6Bebが凹部6Ceの放音方向背面6Cebに当接することで、可動部6Bの端6Baの、放音方向正面側への移動が規制される。このように、図11に示すスピーカ1は、嵌合部6Eにより、クッション6の固定部6Cと可動部6Bとの嵌合部6Eにおける相互の端6Ba,6Caを嵌合する。この結果、図11に示すスピーカ1は、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。
【0059】
なお、図11に示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bを屈曲部6Dで径方向外側に折り曲げて変形し、正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから遠ざけた場合、可動部6Bの端6Baの凸部6Beが、固定部6Cの端6Caの径方向外側部6Caに引っ掛かって保持される。言い換えると、可動部6Bは、固定部6Cの端6Caよりも、径方向外側に保持される。この結果、スピーカ1を設置する際には、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができる。このため、スピーカ1は、取付ねじ5の正面側に被さる可動部6Bを貫通孔21Acから避け、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが干渉することがなく取付ねじ5を取り付ける作業を容易に行える。さらに、スピーカ1は、取付ねじ5を取り付ける際に、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが巻き込まれて損傷する事態を防止できる。また、図11には突起21Dが記載されているが、突起21Dが無い状態であっても、上述したように可動部6Bが貫通孔21Acに被さらない状態を保持することができるため、突起21Dは無くてもよい。
【0060】
図12に示すスピーカ1は、可動部6Bの端6Baと、固定部6Cの端6Caとが、相互に面で接触する接触面として構成されている。そして、図12に示すスピーカ1において、嵌合部6Eは、各接触面である端6Ba,6Caにおいて、凸部6Beと凹部6Ceとからなる。凸部6Beは、可動部6Bの端6Baの放音方向背面側および径方向内側において固定部6Cに向かって周方向に突出して形成されている。可動部6Bの凸部6Beは、放音方向正面側に向く放音方向正面6Bebを有する。また、可動部6Bの凸部6Beは、径方向外側に向く径方向外面6Beaを有する。凹部6Ceは、固定部6Cの端6Caの放音方向背面側および径方向内側において可動部6Bから遠ざかるように周方向でへこんで形成されている。固定部6Cの凹部6Ceは、放音方向背面側に向く放音方向背面6Cebを有する。また、固定部6Cの凹部6Ceは、径方向内側に向く径方向内面6Ceaを有する。凸部6Beと凹部6Ceとは、互いに嵌め合う。凸部6Beと凹部6Ceとが嵌め合うことで、可動部6Bの端(接触面)6Baと、固定部6Cの端(接触面)6Caとが接触する。また、凸部6Beと凹部6Ceとが嵌め合うことで、凸部6Beの放音方向正面6Bebと凹部6Ceの放音方向背面6Cebとが放音方向で相互に向き合って当接する。さらに、凸部6Beと凹部6Ceとが嵌め合うことで、凸部6Beの径方向外面6Beaと凹部6Ceの径方向内面6Ceaとが径方向で相互に向き合って当接する。
【0061】
この図12に示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bをフランジ部21Aの正面側の板面21Aaに接して配置した状態において、嵌合部6Eにて、各接触面である各端6Ba,6Caが接触する。このとき、クッション6は、可動部6Bの凸部6Beが固定部の凹部6Ceに嵌り、凸部6Beの放音方向正面6Bebが凹部6Ceの放音方向背面6Cebに当接することで、可動部6Bの端6Baが放音方向正面側への移動を規制される。さらに、クッション6は、可動部6Bの凸部6Beが固定部の凹部6Ceに嵌り、凸部6Beの径方向外面6Beaが凹部6Ceの径方向内面6Ceaに当接することで、可動部6Bの端6Baの、径方向外側への移動が規制される。このように、図12に示すスピーカ1は、嵌合部6Eにより、クッション6の固定部6Cと可動部6Bとの嵌合部6Eにおける相互の端6Ba,6Caを嵌合する。この結果、図12に示すスピーカ1は、内装材52のカバー52Aとクッション6との当接状態を良好に確保してシール性能を向上できる。
【0062】
なお、図12に示すスピーカ1は、クッション6の可動部6Bを屈曲部6Dで径方向外側に折り曲げて変形し、正面部材21のフランジ部21Aの正面側の板面21Aaから遠ざけた場合、可動部6Bの端6Baの凸部6Beが、固定部6Cの端6Caの径方向外側部分に引っ掛かって保持される。言い換えると、可動部6Bは、固定部6Cの端6Caよりも、径方向外側に保持される。この結果、スピーカ1を設置する際には、正面部材21のフランジ部21Aの貫通孔21Acを露わにした形態を維持することができる。このため、スピーカ1は、取付ねじ5の正面側に被さる可動部6Bを貫通孔21Acから避け、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが干渉することがなく取付ねじ5を取り付ける作業を容易に行える。さらに、スピーカ1は、取付ねじ5を取り付ける際に、工具や取付ねじ5に対して可動部6Bが巻き込まれて損傷する事態を防止できる。また、図12には突起21Dが記載されているが、突起21Dが無い状態であっても、上述したように可動部6Bが貫通孔21Acに被さらない状態を保持することができるため、突起21Dは無くてもよい。
【0063】
なお、図12の実施例において、可動部6Bの凸部の構造は、凸部の位置については、径方向内側、放音方向背面側でなくともよく、凸部の大きさについては、クッション6の径方向の幅の半分、放音方向の厚みの半分でなくともよく、嵌合時に可動部6Bの凸部の構造が、径方向外側、放音方向正面側に移動しないよう、可動部6Bの凸部の構造と、固定部6Cの凹部とが嵌合していればよい。この構造においては、可動部6Bの凸部の構造は、クッション6の径方向外側の面と、クッション6の放音方向正面側の面よりも少なくとも一部が内側にあればよい。さらに、クッション6を屈曲部6Dで径方向外側に折り曲げて開いた際に貫通孔21Acが露わになるような大きさ位置で嵌合部の面内にある場合が可動部6Bが貫通孔21Acに被さらない状態を保持することができるため、作業性がもっともよい。
【0064】
なお、図10に示すスピーカ1の変形例として、図13に示すように、可動部6Bの端6Baの径方向中程に凸部6Beを形成し、固定部6Cの端6Caの径方向中程に凹部6Ceを形成して、この凸部6Beと凹部6Ceとを嵌め合うようにしてもよい。スピーカ1を設置する際に可動部6Bが貫通孔21Acに被さらないよう、可動部6Bの移動を規制するためには、可動部6Bの端6Baに形成される凸部6Beおよび固定部6Cの端6Caに形成される凹部6Ceは、可動部6Bの径方向内側に配置されることが好ましい。
【0065】
また、図11に示すスピーカ1の変形例として、図14に示すように、可動部6Bの端6Baの放音方向中程に凸部6Beを形成し、固定部6Cの端6Caの放音方向中程に凹部6Ceを形成して、この凸部6Beと凹部6Ceとを嵌め合うようにしてもよい。スピーカ1を設置する際に可動部6Bが貫通孔21Acに被さらないよう、可動部6Bの移動を規制するためには、可動部6Bの端6Baに形成される凸部6Beおよび固定部6Cの端6Caに形成される凹部6Ceは、可動部6Bの径方向内側に配置されることが好ましい。
【0066】
上述した実施形態のスピーカ1において、嵌合部6Eの形状を様々なものとすることでクッション6の径方向または放音方向への移動を規制するものとしたが、これに限定されず、可動部6Bと固定部6Cの分断部6Aにおいて、摩擦によりクッション6の径方向または放音方向への移動を規制してもよい。より詳しくは、分断部6Aにおいて、クッション6が周方向に長めの形状を有することで、通常状態においては可動部6Bの端6Baと固定部6Cの端6Caとの接触においてクッション6を周方向に押圧して摩擦を生じさせ、クッション6の径方向または放音方向への移動を規制する。スピーカ1を設置する際には、可動部6Bの内側面を固定部6Cの外側面と接触させることで、可動部6Bが貫通孔21Acに被さらない状態を保持し、可動部6Bの移動を規制する。
【0067】
上述した実施形態のスピーカ1は、クッション6が分断部6Aで分断された一方を可動部6Bとし、分断された他方を固定部6Cとして構成されている。このため、分断部6Aが1か所の場合、クッション6は、振動板31を囲むように一繋ぎに形成される。言い換えると、このときクッション6は、ひとつのクッション61で構成される。本実施形態のスピーカ1は、図1に示すように、分断部6Aが2か所であるため、クッション6が2つのクッション61で構成されている。例えば、可動部を固定部とは別部材で構成する場合、1か所の分断部につき1つの可動部と2つの固定部との3つの部材に分けられる。従って、本実施形態のスピーカ1は、クッション6の部材点数を削減することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 スピーカ
2 フレーム
21D 突起
21Da 突起
21Db 突起
21Dc 突起
21E 非接着部
21F 接着部
31 振動板
4 磁気回路
6 クッション
6A 分断部
6B 可動部
6Ba 端
6Baa 径方向内側部
6Bab 径方向外側部
6Bac 放音方向正面側部
6Bad 放音方向背面側部
6Be 凸部
6Bea 径方向外面
6Beb 放音方向正面
6C 固定部
6Ca 端
6Caa 径方向内側部
6Cab 径方向外側部
6Cac 放音方向正面側部
6Cad 放音方向背面側部
6Ce 凹部
6Cea 径方向内面
6Ceb 放音方向背面
6D 屈曲部
6E 嵌合部
S 可動範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14