(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20230529BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20230529BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/84
G03F7/20 503
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020184028
(22)【出願日】2020-11-03
(62)【分割の表示】P 2018509085の分割
【原出願日】2017-03-21
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2016072287
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016190721
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴弘
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/129527(WO,A1)
【文献】特開2013-179270(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141230(WO,A1)
【文献】特開2009-251412(JP,A)
【文献】特開2015-088742(JP,A)
【文献】Y. Pei-yang,EUVL ML mask blank fiducial mark application for ML defect mitigation,Proceedings of SPIE,米国,SPIE,2009年09月29日,7488,748819,doi: 10.1117/12.831127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 - 1/86
G03F 7/20
H01L 21/027
SPIE Digital Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜を有する多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板上に、EUV光を吸収する吸収体膜とが少なくとも形成されている反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記多層反射膜付き基板は、パターン形成領域の外周縁領域に対応する主表面上に第1の基準マークを3個以上有し、
該第1の基準マークは、欠陥検査光の走査方向に対して30nm以上1000nm以下の幅の部分を有し、
前記吸収体膜は、第2の基準マークを3個以上有し、各々の第1の基準マークと第2の基準マークとが10mm×10mmで囲む領域内に含まれる位置関係にあり、
前記第2の基準マークの断面形状の深さ又は高さが前記第1の基準マークの断面形状の深さ又は高さよりも大きく、
100nmよりも短い波長の前記欠陥検査光を用いた欠陥検査装置によって得られた前記多層反射膜付き基板
の欠陥情報に基づいて作成された前記第1の基準マークを基準とした第1の欠陥マップを用いて、
少なくとも1つの前記10mm×10mmで囲む領域内にある前記第1の基準マーク及び前記第2の基準マークを
座標計測器で検査することにより、前記第2の基準マークを基準とした前記第1の基準マークの座標を検出し、前記多層反射膜付き基板の前記第1の欠陥マップを前記第2の基準マークを基準とした第2の欠陥マップに変換する工程を含む
ことを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項2】
前記多層反射膜付き基板は、前記多層反射膜上に保護膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項3】
前記第2の基準マークを
前記座標計測器で計測することにより、電子線描画工程の基準座標に変換することを特徴とする請求項1
又は2に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項4】
前記反射型マスクブランクの表面の欠陥検査を全面検査で行うことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法により得られる反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜をパターニングして、吸収体膜パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の反射型マスクの製造方法により得られる反射型マスクを用いて、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することにより、半導体装置を製造する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造に用いられる反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクブランク、反射型マスクの製造方法および反射型マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚ものフォトマスクと呼ばれている転写用マスクが使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィ法が用いられている。
【0003】
フォトリソグラフィ法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造は、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン描画を施す描画工程と、描画後、前記レジスト膜を現像して所望のレジストパターンを形成する現像工程と、このレジストパターンをマスクとして前記薄膜をエッチングするエッチング工程と、残存するレジストパターンを剥離除去する工程とを経て行われている。上記現像工程では、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン描画を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング又はウェットエッチングによって、レジストパターンの形成されていない薄膜が露出した部位を除去し、これにより所望のマスクパターンを透光性基板上に形成する。こうして、転写用マスクが出来上がる。
【0004】
転写用マスクの種類としては、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリ型マスクのほかに、位相シフト型マスクが知られている。
また、近年、半導体産業において、半導体デバイスの高集積化に伴い、従来の紫外光を用いたフォトリソグラフィ法の転写限界を上回る微細パターンが必要とされてきている。このような微細パターン形成を可能とするため、極紫外(Extreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2~100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィにおいて用いられるマスクとして反射型マスクが提案されている。このような反射型マスクは、基板上に露光光であるEUV光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上にEUV光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。
【0005】
以上のように、リソグラフィ工程での微細化に対する要求が高まることにより、そのリソグラフィ工程での課題が顕著になりつつある。その1つが、リソグラフィ工程で用いられるマスクブランク用基板等の欠陥情報に関する問題である。
従来は、ブランクス検査等において、基板の欠陥の存在位置を、基板センターを原点(0,0)とし、欠陥検査装置が管理する座標を用いて、原点からの距離で特定していた。このため、絶対値座標の基準が明確でなく、位置精度が低く、装置間でも検出のばらつきがあり、パターン描画時に、欠陥を避けてパターン形成用薄膜にパターニングする場合でもμmオーダーでの回避は困難であった。このため、パターンを転写する方向を変えたり、転写する位置をmmオーダーでラフにずらしたりして欠陥を回避していた。
【0006】
このような状況下、欠陥位置の検査精度を上げることを目的に、例えばマスクブランク用基板に基準マークを形成し、これを基準位置として欠陥の位置を特定する提案がなされている。
特許文献1には、球相当直径で30nm程度の微小な欠陥の位置を正確に特定できるように、EUVリソグラフィ用反射型マスクブランク用基板の成膜面に、大きさが球相当直径で30~100nmの少なくとも3つのマークを形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示されているような欠陥の位置を特定するための基準マークを使用する方法によりマスクブランクの欠陥位置の検査精度を上げることは可能である。
ところで、EUV光を露光光として使用する反射型マスクにおいては、特に多層反射膜に存在する欠陥は、修正が殆ど不可能である上に、転写パターン上で重大な位相欠陥となり得るので、転写パターン欠陥を低減させるためには多層反射膜上の欠陥情報が重要である。従って、少なくとも多層反射膜成膜後に欠陥検査を行い、欠陥情報を取得することが望ましい。そのためには、基板上に多層反射膜を成膜して作製した多層反射膜付き基板の、例えば多層反射膜に基準マークを形成することが好ましいと考えられる。
【0009】
しかし、基準マークを多層反射膜に形成する場合、多層反射膜に形成した基準マークを基準にして多層反射膜上での欠陥検査を行い、その後のマスク製造における電子線描画工程では、吸収体膜が成膜された後の基準マークでアライメントを行うため、凹形状の基準マーク上に吸収体膜が成膜されることによるマーク形状の変化がアライメント誤差となる可能性がある。また、多層反射膜付き基板の欠陥情報に加えて、反射型マスクブランクの欠陥検査を行って反射型マスクブランクの欠陥情報を取得する場合、上記の吸収体膜が成膜された後の基準マークでアライメントを行うとアライメント誤差が発生し、基準マークを基準にした高精度の欠陥検査を行っても、反射型マスクブランクの欠陥位置情報(欠陥座標)の精度が悪化するおそれがある。
【0010】
一方、EUV光を使用したリソグラフィにおける急速なパターンの微細化に伴い、反射型マスクであるEUVマスクに要求される欠陥サイズ(Defect Size)も年々微細になり、このような微細欠陥を発見するために、欠陥検査で使用する検査光源波長は露光光(例えばEUV光)の光源波長に近づきつつある。
【0011】
例えば、EUVマスクや、その原版であるEUVマスクブランク、多層反射膜付き基板、及び基板(サブストレート)の欠陥検査装置としては、たとえば、検査光源波長が266nmであるレーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICSM7360」、検査光源波長が193nmであるKLA-Tencor社製のEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron600シリーズ、例えばTeron610」などが普及している。そして、近年では、検査光源波長を露光光源波長の13.5nmとするABI(Actinic Blank Inspection)装置が提案されている。
【0012】
しかしながら、多層反射膜に基準マークを設けた場合の上記問題に対して、吸収体膜形成後に吸収体膜の上部に基準マークを形成し、該基準マークを基準にして反射型マスクブランクの欠陥検査を行うことが考えられる。しかし、例えば上記のABI装置を用いて反射型マスクブランクの欠陥検査を行うとした場合、吸収体膜は13.5nmの波長に対する反射率が低いため高感度に欠陥検出できないという別の問題が生じてしまう。
【0013】
そこで本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、第1に、多層反射膜における欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得し、反射型マスクブランクの欠陥管理を高精度に行うことが可能な反射型マスクブランク及びその製造方法を提供することである。
本発明の目的とするところは、第2に、この反射型マスクブランクを使用し、欠陥を低減させた反射型マスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するため、基板上に多層反射膜を成膜し、多層反射膜に対して欠陥検査を行い、その後、多層反射膜上に吸収体膜を成膜し、パターン形成領域の外周縁領域の吸収体膜の一部を除去して、多層反射膜上の欠陥情報の基準となる、例えば第1の基準マークを含む領域の多層反射膜が露出したアライメント領域が形成された反射型マスクブランクとし、その後、このアライメント領域を用いて反射型マスクブランクの欠陥管理を行うことにより上記課題を解決することが可能であることを見出した。
【0015】
本発明者は、上記の解明事実に基づき、鋭意研究を続けた結果、以下の構成1~13による発明を完成した。
(構成1)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜が少なくとも形成されている反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基板上に、前記多層反射膜を成膜して多層反射膜付き基板を形成する工程と、前記多層反射膜付き基板に対して欠陥検査を行う工程と、前記多層反射膜付き基板の前記多層反射膜上に、前記吸収体膜を成膜する工程と、パターン形成領域の外周縁領域に、前記吸収体膜を除去して、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となるものを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域が形成された反射型マスクブランクを形成する工程と、前記アライメント領域を用いて前記反射型マスクブランクの欠陥管理を行う工程と、を含むことを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法である。
【0016】
(構成2)
前記反射型マスクブランクの欠陥管理は、前記アライメント領域内に形成された第1の基準マークを用いて行うことを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
(構成3)
前記吸収体膜に前記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークを形成する工程を備え、前記反射型マスクブランクの欠陥管理は、前記第2の基準マークを基準とした前記第1の基準マークの座標を検出し、前記多層反射膜付き基板の欠陥情報を前記第2の基準マークを基準に変換することを含むことを特徴とする構成2に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0017】
(構成4)
前記第2の基準マークを基準とした前記第1の基準マークの座標の検出は、100nmよりも短い波長の検査光を用いて行うことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0018】
(構成5)
前記多層反射膜付き基板の欠陥検査は、100nmよりも短い波長の検査光を用いて行うことを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0019】
(構成6)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜が少なくとも形成されている反射型マスクブランクであって、パターン形成領域の外周縁領域に、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となるものを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域が形成されていることを特徴とする反射型マスクブランクである。
【0020】
(構成7)
前記アライメント領域内に前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となるものとして第1の基準マークが形成されていることを特徴とする構成6に記載の反射型マスクブランクである。
(構成8)
前記吸収体膜における前記アライメント領域の近傍に前記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークが形成されていることを特徴とする構成7に記載の反射型マスクブランクである。
【0021】
(構成9)
構成1乃至5のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法により得られる反射型マスクブランクまたは構成6乃至8のいずれかに記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜をパターニングして、吸収体膜パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
【0022】
(構成10)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜パターンが少なくとも形成されている反射型マスクであって、パターン形成領域の外周縁領域に、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となるものを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域が形成されていることを特徴とする反射型マスクである。
【0023】
(構成11)
前記アライメント領域内に前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となるものとして第1の基準マークが形成されていることを特徴とする構成10に記載の反射型マスクである。
(構成12)
前記吸収体膜パターンにおける前記アライメント領域の近傍に前記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークが形成されていることを特徴とする構成11に記載の反射型マスクである。
【0024】
(構成13)
構成10乃至12のいずれかに記載の反射型マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することにより、半導体装置を製造する半導体装置の製造方法である。
【0025】
本発明者は更に、上記課題を解決するため、基板上に多層反射膜を成膜し、多層反射膜に対して欠陥検査を行い、その後、多層反射膜上に吸収体膜を成膜するが、パターン形成領域の外周縁領域には吸収体膜を成膜せずに、多層反射膜上の欠陥情報の基準となる第1の基準マークを含む領域の多層反射膜が露出したアライメント領域が形成され、かつ、吸収体膜における上記アライメント領域のパターン形成領域側近傍には上記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークが形成された反射型マスクブランクとし、その後、このアライメント領域を用いて反射型マスクブランクの欠陥管理を行うことにより上記課題を解決することが可能であることを見出した。
【0026】
本発明者は、上記の解明事実に基づき、以下の構成14~23による発明を完成した。
(構成14)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜が少なくとも形成されている反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基板上に、前記多層反射膜を成膜して多層反射膜付き基板を形成する工程と、前記多層反射膜付き基板に対して欠陥検査を行う工程と、前記多層反射膜付き基板の前記多層反射膜上に、前記吸収体膜を成膜して反射型マスクブランクを形成する工程と、を含み、前記吸収体膜の成膜は、パターン形成領域の外周縁領域に、前記吸収体膜を成膜せずに、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となる第1の基準マークを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域を形成する工程を含み、該製造方法は更に、前記吸収体膜における前記アライメント領域のパターン形成領域側近傍に、前記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークを形成する工程と、前記アライメント領域を用いて前記反射型マスクブランクの欠陥管理を行う工程と、を含むことを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法である。
【0027】
(構成15)
前記アライメント領域を形成する工程において、前記吸収体膜が成膜されずに前記多層反射膜が露出するように遮蔽部材を設けて前記吸収体膜を成膜することを特徴とする構成14に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0028】
(構成16)
前記反射型マスクブランクの欠陥管理は、前記アライメント領域内に形成された前記第1の基準マークを用いて行うことを特徴とする構成14又は15に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0029】
(構成17)
前記反射型マスクブランクの欠陥管理は、前記第2の基準マークを基準とした前記第1の基準マークの座標を検出し、前記多層反射膜付き基板の欠陥情報を前記第2の基準マークを基準に変換することを含むことを特徴とする構成14乃至16のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0030】
(構成18)
前記第2の基準マークを基準とした前記第1の基準マークの座標の検出は、100nmよりも短い波長の検査光を用いて行うことを特徴とする構成17に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0031】
(構成19)
前記多層反射膜付き基板の欠陥検査は、100nmよりも短い波長の検査光を用いて行うことを特徴とする構成14乃至18のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0032】
(構成20)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜が少なくとも形成されている反射型マスクブランクであって、パターン形成領域の外周縁領域に、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となる第1の基準マークを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域が形成され、かつ、前記吸収体膜における前記アライメント領域のパターン形成領域側近傍に前記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークが形成されていることを特徴とする反射型マスクブランクである。
【0033】
(構成21)
構成14乃至19のいずれかに記載の反射型マスクブランクの製造方法により得られる反射型マスクブランクまたは構成20に記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜をパターニングして、吸収体膜パターンを形成することを特徴とする反射型マスクの製造方法である。
【0034】
(構成22)
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜パターンが少なくとも形成されている反射型マスクであって、パターン形成領域の外周縁領域に、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となる第1の基準マークを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域が形成され、かつ、前記吸収体膜パターンにおける前記アライメント領域のパターン形成領域側近傍に前記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークが形成されていることを特徴とする反射型マスクである。
【0035】
(構成23)
構成22に記載の反射型マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することにより、半導体装置を製造する半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、多層反射膜における欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得し、反射型マスクブランクの欠陥管理を高精度に行うことが可能な反射型マスクブランク及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、この反射型マスクブランクを使用し、これらの欠陥情報に基づき、描画データの修正を行なうことで欠陥を低減させた反射型マスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランクを示す平面図である。
【
図2】
図1に示された反射型マスクブランクを構成する多層反射膜付き基板の平面図である。
【
図5】第2の基準マークと欠陥検査光等の走査方向との関係を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランクを示す平面図である。
【
図8】
図7に示された反射型マスクブランクを構成する多層反射膜付き基板の平面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る反射型マスクブランクを示す平面図である。
【
図10】本発明の第2、第3の実施形態に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
【
図11】第2、第3の実施形態において、パターン形成領域の外周縁領域にアライメント領域を形成する方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を詳述する。
[第1の実施形態に係る反射型マスクブランク]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランクを示す平面図である。また、
図2は、
図1に示された反射型マスクブランクを構成する多層反射膜付き基板の平面図である。さらに、
図6は、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。
【0039】
図1、
図6に示されるように、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク30は、基板10上に、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜21と、該多層反射膜21上に、同じくEUV光を吸収する吸収体膜31が少なくとも形成されている(
図6(c)参照)。この反射型マスクブランク30主表面上のパターン形成領域(
図1に破線で示す領域内)の外周縁領域に、複数のアライメント領域32が形成されている。パターン形成領域は、吸収体膜31において転写パターンを形成する領域であり、6インチ角の基板では、例えば132mm×132mmの領域である。アライメント領域32は、上記多層反射膜21上の欠陥情報の基準となるものを含む領域の多層反射膜21が露出した領域(抜き領域)である。本実施形態では、上記の欠陥情報の基準となるものの一例として、第1の基準マーク22が上記多層反射膜21に形成されている。また、アライメント領域32の近傍の吸収体膜31上に、上記第1の基準マーク22の基準となると共に、マスク製造における電子線描画工程においてアライメントを行うための第2の基準マーク42が形成されている。第2の基準マーク42と、アライメント領域32内の第1の基準マークとは、例えば、10mm×10mmで囲む領域内に含まれる位置関係であればよい。
また、第2の基準マーク42は、第1の基準マーク22よりも相対的に大きく形成されることが望ましい。即ち、第2の基準マーク42の幅又は長さが第1の基準マーク22のそれよりも大きい、及び/又は第2の基準マーク42の断面形状の深さ又は高さが第1の基準マーク22のそれよりも大きいことが好ましい。
【0040】
また、本実施形態では、上記のアライメント領域32及び第2の基準マーク42は、一例として、反射型マスクブランク30のパターン形成領域の外周縁領域であって、具体的にはパターン形成領域のコーナー近傍の4箇所に形成されているが、これに限定されるものではない。本実施形態では、アライメント領域32は、上記多層反射膜21上に形成されている第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出した領域であるため、アライメント領域32が形成されている位置や個数は、多層反射膜21に形成されている上記第1の基準マーク22の位置や個数によっても異なる。なお、後でも説明するが、本発明においては、第1及び第2の基準マークの個数は特に限定されない。第1及び第2の基準マークについては、最低3個必要であるが、3個以上であっても構わない。
【0041】
また、上記アライメント領域32は、少なくとも多層反射膜21に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域が露出し、多層反射膜付き基板20の欠陥検査を行う際に用いた欠陥検査装置で上記第1の基準マーク22を検出することができればよいので、その限りにおいて、上記アライメント領域32の形状や大きさ等は特に制約される必要はない。
アライメント領域32は、例えば
図1に示すように、パターン形成領域のコーナーに隣接したL字型とすることができ、L字型の外周部の横方向の長さL
1が4.0mm~8.0mm、縦方向の長さL
2が4.0mm~8.0mmとすることができる。また、L字型の幅Wは、1.0mm~4.0mmとすることができる。
【0042】
このような本実施形態の反射型マスクブランク30においては、パターン形成領域の外周縁領域に、たとえば吸収体膜31の一部を除去して、多層反射膜21に形成された第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32が形成されているため、このアライメント領域32を用いて反射型マスクブランク30の欠陥管理を行うことが可能である。すなわち、このアライメント領域32内に形成された上記第1の基準マーク22を用いて、上記第1の基準マーク22と後述の第2の基準マーク42との相対座標の管理を行うことができる。その結果、上記第1の基準マーク22を基準にした欠陥情報(第1の欠陥マップ)から、上記第2の基準マーク42を基準にした欠陥情報(第2の欠陥マップ)を得ることが可能となる。
【0043】
また、ABI(Actinic Blank Inspection)装置を用いて反射型マスクブランク30の欠陥管理を行う場合、このアライメント領域32は多層反射膜21が露出しているため、上記第1の基準マーク22を高精度で検出することが可能となる。したがって、上記第1の基準マーク22と第2の基準マーク42との相対座標の管理を高精度で行うことができ、その結果、上記第2の基準マーク42を基準にした反射型マスクブランク30の欠陥管理を良好に行うことができる。本発明の第1の実施形態の反射型マスクブランク30は、例えば100nmよりも短い波長(露光光(例えばEUV光)の光源波長に近い波長)の検査光を用いる上記のABI装置のような欠陥検査装置を用いて第1の基準マーク22及び第2の基準マーク42の検査を行うことが好適である。
【0044】
また、上記吸収体膜31がまだ形成されていない多層反射膜付き基板20(
図2、
図6(a)参照)に対しては、上記第1の基準マーク22を含めて多層反射膜付き基板20の欠陥検査を行うことができる。これによって、多層反射膜付き基板20の欠陥検査で得られる欠陥座標と、第2の基準マーク42を基準として得られた第1の基準マーク22の座標とを一致させることができるので、両者の欠陥情報間での座標変換を行う必要がなく有利である。
【0045】
次に、上記第1及び第2の基準マーク22、42について説明する。
図3は、第1の基準マーク22の形状を示す図であり、
図4は、第2の基準マーク42の形状を示す図であり、また
図5は、第2の基準マーク42を用いた基準点を決定する方法を説明するための図である。
【0046】
上述の実施形態では、一例として反射型マスクブランク30のコーナー近傍の4箇所にアライメント領域32を形成している。そして、上記第1の基準マーク22は、アライメント領域32内の多層反射膜21上に形成されている。第1の基準マーク22はいずれも反射型マスクブランク30主表面上のパターン形成領域に対応する多層反射膜付き基板20主表面上の破線Aで示す領域(
図2参照)の境界線上、あるいはこの領域より外側に形成することが好適である。但し、第1の基準マーク22が基板外周縁に近すぎると、他の種類の認識マークと交差する可能性があるので好ましくない。
【0047】
上記第1の基準マーク22は、欠陥情報における欠陥位置の基準となるものである。そして、上記第1の基準マーク22は、点対称の形状であることが好ましい。さらには、例えば100nmよりも短い短波長光を欠陥検査光とする前述のABI装置などを欠陥検査に用いる場合、第1の基準マーク22は欠陥検査光の走査方向に対して30nm以上1000nm以下の幅の部分を有することが好ましい。
【0048】
図3には、第1の基準マーク22のいくつかの形状を示しているが、
図3(a)のような円形の基準マークが代表的な例である。また、例えば
図3(b)に示すような菱型、
図3(c)に示すような八角形の形状や、
図3(d)に示すような十字形状であってもよい。また、図示していないが、上記第1の基準マークは、正方形や正方形の角部が丸みを帯びた形状とすることもできる。なお、本発明はこのような第1の基準マークの実施形態に限定されるわけではない。
【0049】
上記第1の基準マーク22は点対称の形状を有することで、例えば欠陥検査光の走査によって決定される欠陥位置の基準点のずれを小さくすることができ、第1の基準マーク22を元に検査した欠陥検出位置のばらつきを小さくすることができる。
【0050】
図4には、第2の基準マーク42のいくつかの形状を示しているが、
図4(a)のような十字形の基準マークが代表的な例である。また、例えば
図4(b)に示すようなL字形状や、
図4(c)に示すようにメインマーク42aの周囲に4つの補助マーク42b~42eを配置したものや、
図4(d)に示すようにメインマーク42aの周囲に2つの補助マーク42b,42cを配置した基準マークとすることもできる。なお、本発明はこのような第2の基準マークの実施形態に限定されるわけではない。
【0051】
また、
図4(a)の十字形状や
図4(b)のL字形状、
図4(c)や
図4(d)のように上記メインマーク42aの周囲に配置される補助マーク42b~42e(42b、42c)は、欠陥検査光又は電子線描画装置の走査方向に沿って配置されることが好ましく、特に欠陥検査光又は電子線描画装置の走査方向に対して垂直な長辺と平行な短辺を有する矩形状を含むことが好適である(例えば
図5参照)。第2の基準マークが、欠陥検査光又は電子線の走査方向に対して垂直な長辺と平行な短辺を有する矩形状を含むことにより、欠陥検査装置又は電子線描画装置の走査により第2の基準マークを確実に検出できるため、第1の基準マークに対する第2の基準マークの位置を容易に特定することができる。この場合、第2の基準マークの長辺は、欠陥検査装置又は電子線描画装置のできるだけ最小回数の走査により検出可能な長さであることが望ましく、前述のABI装置などを欠陥検査に用いる場合、例えば、100μm以上1500μm以下の長さを有することが望ましい。
【0052】
また、本実施形態では、上記第1、第2の基準マーク22、42は、例えば微小圧子によるインデンテーション(パンチ)や集束イオンビームで多層反射膜21又は吸収体膜31に所望の深さを持つ、凹形状(断面形状)を形成している。しかし、第1、第2の基準マーク22、42の断面形状は、凹形状に限られず、凸形状でもよく、欠陥検査装置や電子線描画装置で精度良く検出可能な断面形状であればよい。
図3~
図5を参照しての第1、第2の基準マーク22、42に関する上記説明は、後述される第2、第3の実施形態にも適用される。
【0053】
上述の実施形態では、上記アライメント領域32内に、欠陥情報の基準となる第1の基準マーク22が形成されている場合を説明したが、欠陥情報の基準となるものは、基準マークに限られるものではない。上記アライメント領域32内に、欠陥検査装置の検査光でアライメント可能な実欠陥が存在していれば、アライメント領域32を検査した時に、第2の基準マーク42を基準とした実欠陥の座標を検出することが可能である。この実施形態の場合、多層反射膜付き基板20に対して欠陥検査を行い、パターン形成領域の外周縁領域に実欠陥が検出されれば、吸収体膜31を形成した後、多層反射膜21上の実欠陥を含む領域をアライメント領域32として形成すればよい。
【0054】
前述したように、従来は、微細欠陥を検出可能な例えば前記ABI装置のような欠陥検査装置を用いて、高精度な欠陥検査を行おうとしても、吸収体膜上のEUV光の反射率が低いため、欠陥の信号強度が小さく、たとえば吸収体膜における欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得することが困難であった。
これに対し、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランクは、以上説明したように、パターン形成領域の外周縁領域に、多層反射膜上に形成された欠陥情報の基準となる、例えば上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32が形成されている。このため、反射型マスクブランクの欠陥管理は、このアライメント領域32を用いて、より具体的には、例えばこのアライメント領域32内に形成された上記第1の基準マーク22を用いてアライメントすれば、反射型マスクブランクの高精度な欠陥管理を行うことが可能である。
【0055】
[第1の実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法]
次に、上述の本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法について説明する。
本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法は、前記構成1に記載したように、基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜が少なくとも形成されている反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基板上に、前記多層反射膜を成膜して多層反射膜付き基板を形成する工程と、前記多層反射膜付き基板に対して欠陥検査を行う工程と、前記多層反射膜付き基板の前記多層反射膜上に、前記吸収体膜を成膜する工程と、パターン形成領域の外周縁領域に、前記吸収体膜を除去して、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となるものを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域が形成された反射型マスクブランクを形成する工程と、前記アライメント領域を用いて前記反射型マスクブランクの欠陥管理を行う工程と、を含むことを特徴としている。
【0056】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造工程を示す断面図である。以下、
図6に示された工程に従って説明する。
【0057】
まず、ガラス基板10上に、露光光の例えばEUV光を反射する多層反射膜21を成膜して、多層反射膜付き基板20を作製する(
図6(a)参照)。
EUV露光用の場合、基板としてはガラス基板10が好ましく、特に、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、0±1.0×10
-7/℃の範囲内、より好ましくは0±0.3×10
-7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO
2-TiO
2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることが出来る。
【0058】
上記ガラス基板10の転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を向上させる観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光用の場合、ガラス基板10の転写パターンが形成される側の主表面142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時に静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下である。
【0059】
また、上記ガラス基板10としては、上記のとおり、SiO2-TiO2系ガラスなどの低熱膨張係数を有する素材が好ましく用いられるが、このようなガラス素材は、精密研磨により、表面粗さとして例えば二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.1nm以下の高平滑性を実現することが困難である。そのため、ガラス基板10の表面粗さの低減、若しくはガラス基板10表面の欠陥を低減する目的で、ガラス基板10の表面に下地層を形成してもよい。このような下地層の材料としては、露光光に対して透光性を有する必要はなく、下地層表面を精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好となる材料が好ましく選択される。例えば、Si又はSiを含有するケイ素化合物(例えばSiO2、SiONなど)は、精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好なため、下地層の材料として好ましく用いられる。下地層の材料は、特にSiが好ましい。
【0060】
下地層の表面は、反射型マスクブランク用基板として要求される平滑度となるように精密研磨された表面とすることが好適である。下地層の表面は、二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.15nm以下、特に好ましくは0.1nm以下となるように精密研磨されることが望ましい。また、下地層の表面は、下地層上に形成する多層反射膜21の表面への影響を考慮すると、最大高さ(Rmax)との関係において、Rmax/Rqが2~10であることが良く、特に好ましくは、2~8となるように精密研磨されることが望ましい。
下地層の膜厚は、例えば10nm~300nmの範囲が好ましい。
【0061】
上記多層反射膜21は、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層させた多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40~60周期程度積層された多層膜が用いられる。
例えば、波長13~14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。その他に、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長に応じて、材質を適宜選択すればよい。
【0062】
通常、吸収体膜のパターニング或いはパターン修正の際に多層反射膜を保護する目的で、上記多層反射膜21上には、保護膜(キャッピング層あるいはバッファ膜とも呼ばれることがある。)を設けることが好ましい。このような保護膜の材料としては、ケイ素のほか、ルテニウムや、ルテニウムにニオブ、ジルコニウム、ロジウムのうち1以上の元素を含有するルテニウム化合物が用いられ、この他には、クロム系材料が用いられることもある。
また、保護膜の膜厚としては、例えば1nm~5nm程度の範囲が好ましい。
【0063】
以上の下地層、多層反射膜21、及び保護膜の成膜方法は特に限定されないが、通常、イオンビームスパッタリング法や、マグネトロンスパッタリング法などが好適である。
【0064】
なお、以下では、上記多層反射膜付き基板20の一実施形態として、上記のとおり、
図6(a)に示すようなガラス基板10上に多層反射膜21を成膜したものについて説明する。しかし、本発明では、多層反射膜付き基板は、ガラス基板10上に、上記多層反射膜21、及び保護膜を順に成膜した態様や、ガラス基板10上に、上記下地層、多層反射膜21、及び保護膜をこの順に成膜した態様を含むものとする。
【0065】
次に、以上のようにして作製した多層反射膜付き基板20に前述の第1の基準マーク22を形成する。前にも説明したように、この多層反射膜付き基板20に形成する第1の基準マーク22は、この多層反射膜付き基板から作製される反射型マスクブランクのアライメント領域内に形成される。第1の基準マーク22についてはすでに詳しく説明したので、ここでは重複した説明は省略する。
【0066】
ここでは、多層反射膜付き基板20の多層反射膜21上の所定の位置に、例えば微小圧子によるインデンテーション(パンチ)を用いて、例えば前述の
図3(a)に示すような形状の第1の基準マーク22を形成している(
図6(a)参照)。
上記第1の基準マーク22を形成する方法は上述の微小圧子を用いる方法には限定されない。例えば基準マークの断面形状が凹形状の場合、集束イオンビーム、フォトリソ法、レーザー光による凹部形成、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、インプリント法による型押しなどで形成することができる。
【0067】
なお、基準マークの断面形状が凹形状の場合、欠陥検査光による検出精度を向上させる観点から、凹形状の底部から表面側へ向かって広がるように形成された断面形状であることが好ましい。
【0068】
また、上記第1の基準マーク22は、前述のとおり、多層反射膜付き基板20の主表面上のパターン形成領域の境界線上、あるいはパターン形成領域より外側の任意の位置に形成されることが好適である(
図1、
図2参照)。この場合、エッジ基準で基準マークを形成したり、或いは基準マークを形成後、座標計測器で基準マーク形成位置を特定してもよい。
【0069】
例えば、第1の基準マーク22を集束イオンビーム(FIB)で加工する場合、多層反射膜付き基板のエッジは、2次電子像、2次イオン像、あるいは光学像で認識することができる。また、基準マークをその他の方法(例えば圧痕)で加工する場合は、光学像で認識することができる。例えば多層反射膜付き基板の四辺の8箇所のエッジ座標を確認し、チルト補正して、原点(0,0)出しを行う。この場合の原点は任意に設定可能であり、基板の角部でも中心でもよい。このようにエッジ基準で設定した原点からの所定の位置にFIBで基準マークを形成する。
このようなエッジ基準で形成した基準マークを欠陥検査装置で検出する際、基準マークの形成位置情報、つまりエッジからの距離がわかっているため、基準マーク形成位置を容易に特定することが可能である。
【0070】
また、多層反射膜21上の任意の位置に第1の基準マーク22を形成した後、座標計測器で基準マーク形成位置を特定する方法を適用することもできる。この座標計測器は、基準マークの形成座標をエッジ基準で計測するものであり、例えば高精度パターン位置測定装置(KLA-Tencor社製LMS-IPRO4)を使用することができ、特定した基準マーク形成座標が基準マークの形成位置情報となる。
【0071】
次に、以上のようにして作製した第1の基準マーク22が形成された多層反射膜付き基板20に対して欠陥検査を行う。すなわち、多層反射膜付き基板20に対して、欠陥検査装置により、上記第1の基準マーク22を含めて欠陥検査を行い、欠陥検査により検出された欠陥と位置情報とを取得し、第1の基準マーク22を含めた欠陥情報を得る。また、この場合の欠陥検査は、少なくともパターン形成領域の全面に対して行う。
【0072】
次に、上記多層反射膜付き基板20における上記多層反射膜21(多層反射膜の表面に上記保護膜を有する場合には、その保護膜)上の全面に、EUV光を吸収する吸収体膜31を成膜し、反射型マスクブランクを作製する(
図6(b)参照)。
なお、図示していないが、ガラス基板10の多層反射膜等が形成されている側とは反対側に裏面導電膜を設けてもよい。
【0073】
上記吸収体膜31は、露光光である、例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、反射型マスクブランクを使用して作製される反射型マスク40(
図6(d)参照)において、上記多層反射膜21(多層反射膜の表面に上記保護膜を有する場合には、その保護膜)による反射光と、吸収体膜パターン31aによる反射光との間で所望の反射率差を有するものであればよい。例えば、EUV光に対する吸収体膜31の反射率は、0.1%以上40%以下の間で選定される。また、上記反射率差に加えて、上記多層反射膜21(多層反射膜の表面に上記保護膜を有する場合には、その保護膜)による反射光と、吸収体膜パターン31aによる反射光との間で所望の位相差を有するものであってもよい。なお、上記多層反射膜21(多層反射膜の表面に上記保護膜を有する場合には、その保護膜)による反射光と、吸収体膜パターン31aによる反射光との間で所望の位相差を有する場合、反射型マスクブランクにおける吸収体膜31を位相シフト膜と称する場合がある。上記多層反射膜21(多層反射膜の表面に上記保護膜を有する場合には、その保護膜)による反射光と、吸収体膜パターン31aによる反射光との間で所望の位相差を設けて、コントラストを向上させる場合、位相差は180度±10度の範囲に設定するのが好ましく、吸収体膜31の反射率は、3%以上40%以下に設定するのが好ましい。
【0074】
上記吸収体膜31は、単層でも積層構造であってもよい。積層構造の場合、同一材料の積層膜、異種材料の積層膜でもよい。積層膜は、材料や組成が膜厚方向に段階的及び/又は連続的に変化したものとすることができる。
【0075】
上記吸収体膜31の材料としては、例えば、タンタル(Ta)単体又はTaを含む材料が好ましく用いられる。Taを含有する材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも一方を含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、TaとPdを含む材料、TaとRuを含む材料等が用いられる。また、Ta以外の材料としては、Cr単体又はCrを含有する材料、Ru単体又はRuを含有する材料、Pd単体又はPdを含有する材料、Mo単体又はMoを含有する材料であってもよい。吸収体膜31が積層膜の場合、上述した材料を組み合わせた積層構造とすることができる。
上記吸収体膜31の膜厚としては、例えば30nm~100nm程度の範囲が好ましい。吸収体膜31の成膜方法は特に限定されないが、通常、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などが好適である。
【0076】
次に、上記反射型マスクブランクの表面の所定の箇所、具体的には、上記多層反射膜付き基板20に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域に、吸収体膜31を除去してアライメント領域32を形成する(
図6(c)参照)。このアライメント領域32は、多層反射膜21上に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出するような形状、大きさに形成する。また、吸収体膜31の上部の上記第1の基準マーク22の近傍に第2の基準マーク42を形成する(
図6(c)参照)。
【0077】
このアライメント領域32及び第2の基準マーク42を形成するため、その領域に相当する吸収体膜31を除去する方法としては、例えばフォトリソ法を適用することが好適である。具体的には、吸収体膜31上に、所定のレジストパターン(アライメント領域及び第2の基準マークに対応する領域にレジストが形成されていないパターン)を形成し、このレジストパターンをマスクとして、アライメント領域及び第2の基準マークに対応する吸収体膜に対してドライエッチングを行い、その領域に相当する吸収体膜31を除去してアライメント領域32及び第2の基準マーク42を形成する。この場合のエッチングガスとしては、吸収体膜31のパターニング時に使用するものと同じエッチングガスを用いればよい。
【0078】
このようにして、パターン形成領域の外周縁領域に、上記吸収体膜31を除去して、上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32、及び第2の基準マーク42が形成された反射型マスクブランク30を作製する(
図6(c)参照)。
【0079】
次に、以上のようにして作製した第1の基準マーク22を含むアライメント領域32と第2の基準マーク42とに対して、上記多層反射膜上の欠陥検査を行った検査装置と同様の検査光を用いて検査を行う。
この場合、上記第2の基準マーク42を基準として上記のアライメント領域32内に形成された上記第1の基準マーク22を検査し、第2の基準マーク42を基準とする第1の基準マーク22の位置座標を検出する。その後、上述の欠陥検査によって得られた多層反射膜付き基板20の欠陥情報に基づいて、上記第1の基準マーク22を基準とした欠陥情報(第1の欠陥マップ)を作成する。続いて、上記第2の基準マーク42を基準とした第1の基準マーク22の座標を用いて、上記欠陥情報(第1の欠陥マップ)を第2の基準マークを基準とした欠陥情報(第2の欠陥マップ)に変換する。この第1の基準マーク22と第2の基準マーク42は、前述のABI装置のような微細欠陥を高精度で検出可能な欠陥検査装置を用いて検査を行うことが好適である。
【0080】
このような本実施形態の反射型マスクブランク30においては、パターン形成領域の外周縁領域に、上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32が形成されているため、このアライメント領域32を用いて反射型マスクブランク30の欠陥管理を行うことが可能である。すなわち、このアライメント領域32を用いて、上記第1の基準マーク22と第2の基準マーク42との相対座標の管理を行うことができ、その結果、上記第1の基準マーク22を基準にした欠陥情報(第1の欠陥マップ)から、上記第2の基準マーク42を基準にした欠陥情報(第2の欠陥マップ)を得ることが可能となる。吸収体膜31は多層反射膜21上に形成されるため、多層反射膜21の欠陥は吸収体膜31にも反映されるので、アライメント領域32を介して上記第2の基準マーク42を基準として多層反射膜21上の欠陥を高精度に管理できることになる。反射型マスクブランク30の欠陥管理を行う場合、特に上記ABI装置を用いることにより微細欠陥でも高精度で検出することができ、しかも精度の良い欠陥情報を得ることが可能である。
【0081】
また、反射型マスクブランク30表面の欠陥検査については、行わなくてもよいが、より高精度の欠陥管理を行うために、全面検査や検査時間を短縮した部分検査を行うことも可能である。
【0082】
上述の実施形態では、上記アライメント領域32内に、欠陥情報の基準となる第1の基準マーク22が形成されている反射型マスクブランクについて説明した。しかし、前にも説明したように、上記アライメント領域32内に、欠陥検査装置の検査光でアライメント可能な実欠陥が存在していれば、アライメント領域32を検査した時に、第2の基準マーク42を基準とした実欠陥の座標を検出することが可能である。
【0083】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る製造方法により得られる反射型マスクブランク30は、パターン形成領域の外周縁領域に、例えば上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜が露出したアライメント領域32が形成されている。このため、反射型マスクブランク30の欠陥管理は、このアライメント領域32を用いて、具体的には、このアライメント領域32内に形成された例えば上記第1の基準マーク22を用いて、高精度な欠陥管理を行うことが可能であり、その結果、欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得することができる。
【0084】
また、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク30には、上記吸収体膜31上に、ハードマスク膜(エッチングマスク膜とも言う。)を形成した態様も含まれる。ハードマスク膜は、吸収体膜31をパターニングする際にマスク機能を有するものであり、吸収体膜31の最上層の材料とエッチング選択性が異なる材料により構成する。例えば、吸収体膜31がTa単体又はTaを含む材料の場合、ハードマスク膜は、クロムやクロム化合物、若しくはケイ素やケイ素化合物などの材料を使用することができる。クロム化合物としては、CrとN、O、C、Hから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料が挙げられる。ケイ素化合物としては、SiとN、O、C、Hから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料や、ケイ素やケイ素化合物に金属を含む金属ケイ素(金属シリサイド)や金属ケイ素化合物(金属シリサイド化合物)などの材料が挙げられる。金属ケイ素化合物としては、金属、SiとN、O、C、Hから選ばれる少なくとも一つの元素を含む材料が挙げられる。また、吸収体膜31が、多層反射膜21側からTaを含む材料と、Crを含む材料の積層膜の場合、ハードマスク膜の材料は、Crを含む材料とエッチング選択性が異なるケイ素、ケイ素化合物、金属シリサイド、金属シリサイド化合物などを選択することができる。
【0085】
また、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク30は、吸収体膜を、互いにエッチング選択性が異なる材料からなる最上層とそれ以外の層との積層膜で構成し、最上層がそれ以外の層に対するハードマスク膜としての機能を有するようにした構成とすることもできる。
【0086】
以上のとおり、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク30における吸収体膜31は、単層膜には限られず、同一材料の積層膜、異種材料の積層膜で構成することができ、さらには、上記のような積層膜あるいは単層膜の吸収体膜とハードマスク膜との積層膜の構成とすることができる。
また、本発明の第1の実施形態に係る反射型マスクブランク30には、上記吸収体膜31上にレジスト膜を形成した態様も含まれる。このようなレジスト膜は、反射型マスクブランクにおける吸収体膜をフォトリソ法によりパターニングする際に用いられる。
また、吸収体膜31上に上記ハードマスク膜を介して又は介さずにレジスト膜を設けた場合、第2の基準マーク42の形状は、レジスト膜に転写されることになる。そして、レジスト膜に転写された第2の基準マーク42は、電子線描画装置による電子線走査に対してコントラストを有し、電子線にて検出することができる。このとき、第1の基準マーク22と第2の基準マーク42とで相対座標の管理を行っているため、第2の基準マーク42よりも相対的に小さい第1の基準マーク22の形状がレジスト膜に転写されなくても高精度の描画が可能となる。
なお、電子線走査に対するコントラストをより向上させるために、第2の基準マーク42を含む領域の上にレジスト膜を形成しない、又は第2の基準マーク42を含む領域の上のレジスト膜を除去する構成としてもよい。
【0087】
[第1の実施形態に係る反射型マスク]
本発明は、上記構成の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた反射型マスク及びその製造方法も提供する。
すなわち、上述の反射型マスクブランク30上に電子線描画用レジストを塗布し、ベーキングすることによりレジスト膜を形成し、電子電描画装置を用いてレジスト膜を描画、現像し、レジスト膜に転写パターンに対応したレジストパターン形成する。その後、レジストパターンをマスクにして吸収体膜31をパターニングして吸収体膜パターン31aを形成することにより反射型マスク40が作製される(
図6(d)参照)。
反射型マスクブランク30における、転写パターンとなる上記吸収体膜31をパターニングする方法は、フォトリソ法が最も好適である。なお、上述のハードマスク膜を含む構成の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する場合、ハードマスク膜は最終的には除去してもよいが、残存していても反射型マスクとしての機能に影響がなければ、特に除去しなくてもよい。
【0088】
上記反射型マスク40は、基板10上に、EUV光を反射する多層反射膜21と、該多層反射膜21上に、EUV光を吸収する吸収体膜パターン31aが少なくとも形成されている。そして、この反射型マスク40主表面上のパターン形成領域の外周縁領域に、多層反射膜21上の欠陥情報の基準となるものを含む領域の前記多層反射膜21が露出したアライメント領域32が形成されている。また、アライメント領域32の近傍の吸収体膜31上に、第1の基準マーク22の基準となると共に、マスク製造における電子線描画工程においてアライメントを行うための第2の基準マーク42が形成されている。第2の基準マーク42は、第1の基準マーク22よりも相対的に大きく形成される。
上述した第2の基準マーク42を基準とした欠陥情報に基づいて、第2の基準マーク42を基準として、吸収体膜31をパターニングする。
【0089】
本発明では、上述したように、多層反射膜における欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得し、反射型マスクブランクの欠陥管理を高精度に行うことができる。このため、マスクの製造においては、この欠陥情報に基づいて、予め設計しておいた描画データ(マスクパターンデータ)と照合し、欠陥による影響が低減するように描画データを高い精度で修正(補正)することが可能になり、その結果として、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を低減させたものが得られる。
さらに、上述の本発明の反射型マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することにより、欠陥の少ない高品質の半導体装置を製造することができる。
【0090】
[実施例]
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
両面研磨装置を用い、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨し、低濃度のケイフッ酸で基板表面を表面処理したSiO2-TiO2系のガラス基板(大きさが約152.0mm×約152.0mm、厚さが約6.35mm)を準備した。得られたガラス基板の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.25nmであった。なお、表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)にて測定し、測定領域は1μm×1μmとした。
【0091】
次に、ガラス基板の主表面に、イオンビームスパッタリング装置を用いて、Si膜(膜厚:4.2nm)とMo膜(膜厚:2.8nm)を一周期として、40周期積層し、最後にSi膜(膜厚:4nm)を形成し、さらにその上に、Ruからなる保護膜(膜厚:2.5nm)を成膜して、多層反射膜付き基板を得た。
【0092】
次に、上記多層反射膜付き基板の多層反射膜表面の所定の箇所に以下の表面形状で断面形状が凹形状の第1の基準マークを形成した。第1の基準マークの形成は微小圧子によるインデンテーション(パンチ)により行った。具合的には、微小圧子を多層反射膜に所定の圧力で押し付けることにより、第1の基準マークを形成した。第1の基準マークの形成後、洗浄を行った。
本実施例では、第1の基準マークとして、前述の
図3(a)に示す形状とし、大きさが直径500nmの円形、深さは60nmとした。
【0093】
次に、多層反射膜付き基板表面を前述のABI装置で、上記第1の基準マークを含めて欠陥検査を行った。この欠陥検査では、凸部、凹部の欠陥位置情報と、欠陥サイズ情報を取得し、第1の基準マークを含めた欠陥情報を得た。
また、この多層反射膜付き基板の保護膜表面の反射率を、EUV反射率計により評価したところ、64%±0.2%と良好であった。
【0094】
次に、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、上記多層反射膜付き基板の保護膜上に、TaBN膜(膜厚:56nm)とTaBO膜(膜厚:14nm)の積層膜からなる吸収体膜を形成し、また、多層反射膜付き基板の裏面にCrN導電膜(膜厚:20nm)を形成して反射型マスクブランクを得た。
【0095】
次に、上記反射型マスクブランクの表面の所定の箇所に、吸収体膜を除去したアライメント領域と第2の基準マークとを形成した。また、アライメント領域は、多層反射膜に形成された上記第1の基準マークを含む領域の多層反射膜が露出するような形状、大きさに形成した。第2の基準マークとして、前述の
図4(a)に示す十字形状を形成した。第2の基準マークは、大きさが幅5μmで長さが550μmの十字形状、深さは吸収体膜を全て除去したので、約70nmとした。
アライメント領域の吸収体膜を除去すると共に、上記第2の基準マークを形成するために、フォトリソ法を適用した。具体的には、吸収体膜を成膜した反射型マスクブランク上に電子線描画用レジストをスピンコーティング法により塗布し、ベーキングしてレジスト膜を形成した。吸収体膜上に、アライメント領域及び第2の基準マークを除く領域に対応する所定のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとし、露出した吸収体膜に対してフッ素系ガス(CF
4ガス)によりTaBO膜を、塩素系ガス(Cl
2ガス)によりTaBN膜をエッチング除去して、アライメント領域及び第2の基準マークを形成した。さらに、吸収体膜上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、アライメント領域及び第2の基準マークが形成された反射型マスクブランクを得た。
【0096】
得られた反射型マスクブランクについて、多層反射膜付き基板の欠陥検査と同様の前述のABI装置でアライメント領域内の第1の基準マークと第2の基準マークの検査を行った。この際、第2の基準マークを基準に第1の基準マークを検査し、第2の基準マークを基準とする第1の基準マークの位置座標を検出した。第2の基準マークと第1の基準マークの相対座標の管理を行うことで、多層反射膜上の欠陥を第2の基準マーク基準で、高精度に管理できる。
【0097】
こうして、第2の基準マークを基準にした反射型マスクブランクの欠陥情報を得た。
さらに、第2の基準マークを座標測定器(KLA-Tencor社製LMS-IPRO4)で計測することにより、電子線描画工程の基準座標に変換する補正を行った。
【0098】
次に、この欠陥情報を取得したEUV反射型マスクブランクを用いて、EUV反射型マスクを作製した。
まず、EUV反射型マスクブランク上に電子線描画用レジストをスピンコーティング法により塗布し、ベーキングしてレジスト膜を形成した。
【0099】
その際、第2の基準マークに基づいてアライメントを行った。そして、EUV反射型マスクブランクの欠陥情報に基づいて、予め設計しておいたマスクパターンデータと照合し、露光装置を用いたパターン転写に影響のないマスクパターンデータに修正するか、パターン転写に影響があると判断した場合には、例えば欠陥をパターンの下に隠すように修正パターンデータを追加したマスクパターンデータに修正するかして、上述のレジスト膜に対して電子線によりマスクパターンを描画、現像を行い、レジストパターンを形成した。本実施例では、精度の高い欠陥位置情報を含む欠陥情報が得られていたので、マスクパターンデータの修正を高精度で行うことができた。
【0100】
このレジストパターンをマスクとし、吸収体膜に対してフッ素系ガス(CF4ガス)によりTaBO膜を、塩素系ガス(Cl2ガス)によりTaBN膜をエッチング除去して、保護膜上に吸収体膜パターンを形成した。
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、EUV反射型マスクを得た。
【0101】
こうして得られた反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができた。
【0102】
(参考例1)
上記実施例1において、第1の基準マークを形成した多層反射膜付き基板上に上記吸収体膜を形成した後、上述のアライメント領域は形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして反射型マスクブランクを作製した。
【0103】
実施例1と同様に、ABI装置で多層反射膜付き基板の欠陥検査を行い、欠陥位置情報、欠陥サイズ情報を取得した。また、第1の基準マークが形成されている吸収体膜上の領域に対してABI装置で検査したところ、多層反射膜に形成された第1の基準マークは、EUV光でのコントラストが低く、精度良く検出することができなかったため、取得した欠陥座標の精度が悪く、反射型マスクブランクの欠陥情報を得ることが困難であった。
【0104】
次に、実施例1と同様にして、このEUV反射型マスクブランクを用いて、EUV反射型マスクを作製した。
得られたEUV反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、反射型マスク起因の転写パターン欠陥が見られた。この原因は、上記のとおり、第1の基準マークの欠陥座標の精度が悪く、反射型マスクブランクの欠陥情報を得ることが困難であったため、パターン描画工程で、EUV反射型マスクブランクの欠陥情報に基づくマスクパターンデータの修正を高い精度で行えず、多層反射膜上の欠陥を精度よく吸収体膜パターン下に隠すことができなかったことによるものと考えられる。
【0105】
なお、上述の実施例1では、第1の基準マークを微小圧子によるインデンテーションにより形成した例を挙げて説明したが、これに限定されない。前にも説明したとおり、この方法以外にも、集束イオンビーム、フォトリソ法、レーザー光等による凹部形成、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、インプリント法による型押しなどで形成することができる。また、上述の実施例1では、アライメント領域に第1の基準マークが形成されている例を挙げて説明したが、第1の基準マークの代わりに擬似欠陥が形成されていてもよい。また、アライメント領域に存在する実欠陥であってもよい。
【0106】
次に、本発明の第2の実施形態を詳述する。
[第2の実施形態に係る反射型マスクブランク]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランクを示す平面図である。また、
図8は、
図7に示された反射型マスクブランクを構成する多層反射膜付き基板の平面図である。さらに、
図10は、本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造工程を示す概略断面図である。なお、以降の説明において、第1の実施形態において説明した構成要素と同じ構成要素には同じ参照番号を付し、詳しい説明を省略する場合がある。
【0107】
図7、
図10に示されるように、本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランク30´は、基板10上に、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜21と、該多層反射膜21上に、同じくEUV光を吸収する吸収体膜31が少なくとも形成されており(
図10(c)参照)、この反射型マスクブランク30´主表面上のパターン形成領域(
図7に破線で示す領域A内)の外周縁領域に、複数のアライメント領域32´が形成されている。パターン形成領域は、吸収体膜31において転写パターンを形成する領域であり、6インチ角(約152.0mm×約152.0mm)の基板では、例えば132mm×132mmの領域である。上記アライメント領域32´は、上記多層反射膜21上の欠陥情報の基準となる第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出した領域である。本実施形態では、上記第1の基準マーク22は上記多層反射膜21に形成されている。また、上記アライメント領域32´のパターン形成領域側近傍の吸収体膜31に、上記第1の基準マーク22の基準となるとともに、マスク製造における電子線描画工程においてアライメントを行うための第2の基準マーク42が形成されている。この第2の基準マーク42は、第1の基準マーク22よりも相対的に大きく形成されることが望ましい。即ち、第2の基準マーク42の電子線の幅又は長さが第1の基準マーク22のそれよりも大きい、及び/又は第2の基準マーク42の断面形状における深さ又は高さが第1の基準マーク22のそれよりも大きいことが好ましい。
【0108】
また、本実施形態では、上記のアライメント領域32´及び第2の基準マーク42は、一例として、反射型マスクブランク30´のパターン形成領域の外周縁領域であって、具体的には反射型マスクブランク30´のコーナー近傍の4箇所に形成されているが、パターン形成領域の外周縁領域であればよく、コーナー近傍に限定されるものではない。本実施形態では、アライメント領域32´は、上記多層反射膜21上に形成されている第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出した領域である。このため、アライメント領域32´が形成されている位置や個数は、多層反射膜21に形成されている上記第1の基準マーク22の位置や個数によっても異なる。なお、第1の実施形態と同様、第1及び第2の基準マークの個数は特に限定されない。第1及び第2の基準マークについては、最低3個必要であるが、本実施形態のように3個以上であっても構わない。
【0109】
また、上記アライメント領域32´は、少なくとも多層反射膜21に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域が露出し、多層反射膜付き基板20´の欠陥検査を行う際に用いた欠陥検査装置で上記第1の基準マーク22を検出することができればよいので、その限りにおいて、上記アライメント領域32´の形状や大きさ等は特に制約される必要はない。但し、上記多層反射膜21上に上記吸収体膜31を成膜して反射型マスクブランクとする際、アライメント領域32´には吸収体膜31が成膜されずに多層反射膜21が露出するように、例えば遮蔽部材を設けて吸収体膜31を成膜することにより上記アライメント領域32´が形成される。このため、反射型マスクブランクのパターン形成領域の外周縁領域であって、特に基板外周縁を含む領域に上記アライメント領域32´が形成されることが好適である。
【0110】
たとえば本実施形態では、アライメント領域32´は、
図7に示すように、反射型マスクブランク30´のコーナーの4箇所に、それぞれコーナーの二辺を含む三角形状としている。この三角形状の外周部の横方向の長さL
3は例えば6.0mm~18.0mm、縦方向の長さL
4は例えば6.0mm~18.0mmとすることができる。
【0111】
このような本実施形態の反射型マスクブランク30´においては、パターン形成領域の外周縁領域に、吸収体膜31が成膜されずに、多層反射膜21に形成された第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´が形成されている。また、上記したようにこのアライメント領域32´のパターン形成領域側近傍の吸収体膜31に、上記第1の基準マーク22の基準となるとともに、マスク製造における電子線描画工程においてアライメントを行うための第2の基準マーク42が形成されている。従って、このアライメント領域32´を用いて反射型マスクブランク30´の欠陥管理を行うことが可能である。すなわち、このアライメント領域32´内に形成された上記第1の基準マーク22を用いて、上記第1の基準マーク22と上記第2の基準マーク42との相対座標の管理を行うことができる。その結果、上記第1の基準マーク22を基準にした欠陥情報(第1の欠陥マップ)から、上記第2の基準マーク42を基準にした欠陥情報(第2の欠陥マップ)を得ることが可能となる。
【0112】
また、前述のABI装置を用いて反射型マスクブランク30´の欠陥管理を行う場合、このアライメント領域32´は多層反射膜21が露出しているため、上記第1の基準マーク22を高精度で検出することが可能となる。したがって、上記第1の基準マーク22と第2の基準マーク42との相対座標の管理を高精度で行うことができ、その結果、上記第2の基準マーク42を基準にした反射型マスクブランク30´の欠陥管理を良好に行うことができる。本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランク30´は、例えば100nmよりも短い波長(露光光(例えばEUV光)の光源波長に近い波長)の検査光を用いる上記ABI装置のような欠陥検査装置を用いて第1の基準マーク22及び第2の基準マーク42の検査を行うことが好適である。
【0113】
また、上記吸収体膜31がまだ形成されていない多層反射膜付き基板20´(
図8、
図10(a)参照)に対しては、上記第1の基準マーク22を含めて多層反射膜付き基板20´の欠陥検査を行うことができる。これによって、多層反射膜付き基板20´の欠陥検査で得られる欠陥座標と、第2の基準マーク42を基準として得られた第1の基準マーク22の座標とを一致させることができるので、両者の欠陥情報間での座標変換を行う必要がなく有利である。
【0114】
上記第1の基準マーク22及び第2の基準マーク42については、第1の実施形態において
図3~
図5を参照して説明した通りであるので、重複する説明は省略する。
第2の実施形態では、一例として反射型マスクブランク30´のコーナーの4箇所にアライメント領域32´を形成している。そして、上記第1の基準マーク22は、アライメント領域32´内の多層反射膜21に形成されている。上記したように、アライメント領域32´は、反射型マスクブランクのパターン形成領域の外周縁領域であって、特に基板外周縁を含む領域に形成されることが好適である。このため、このアライメント領域32´内の多層反射膜21に形成される上記第1の基準マーク22についても、反射型マスクブランク30´主表面上のパターン形成領域に対応する多層反射膜付き基板20´主表面上の破線Aで示す領域(
図8参照)より外側に形成することが好適である。但し、第1の基準マーク22が基板外周縁に近すぎると、他の種類の認識マークと交差する可能性があるので好ましくない。このような観点からは、上記第1の基準マーク22(または当該基準マークを含むアライメント領域32´)は、6インチ角(約152.0mm×約152.0mm)の基板では、例えば134mm×134mm~146mm×146mmの領域内に形成されることが望ましい。
【0115】
第1の実施形態において説明した通り、上記第1の基準マーク22は、欠陥情報における欠陥位置の基準となるものである。そして、上記第1の基準マーク22は、点対称の形状であることが好ましい。さらには、例えば100nmよりも短い短波長光を欠陥検査光とする前述のABI装置などを欠陥検査に用いる場合、その欠陥検査光の走査方向に対して30nm以上1000nm以下の幅の部分を有することが好ましい。
【0116】
本実施形態では、パターン形成領域の外周縁領域に第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´が形成されている。そのため、このアライメント領域32´のパターン形成領域側の近傍の吸収体膜31に、上記第1の基準マーク22の基準となる第2の基準マーク42が形成されている。本実施形態では、第2の基準マーク42は、具体的な一例として、基板コーナーの近傍であってパターン形成領域のコーナーの外側近傍に形成されている。しかし、第2の基準マーク42が形成される位置は、アライメント領域32´のパターン形成領域側の近傍であればよく、
図7の実施形態に限定されるものではない。例えば、第2の基準マーク42と、アライメント領域32´内の第1の基準マーク22とが、10mm×10mmで囲む領域内に含まれる位置関係であればよい。
【0117】
上述の第2の実施形態でも、上記アライメント領域32´内に、欠陥情報の基準となる第1の基準マーク22が形成されている場合を説明したが、上記アライメント領域32´内に、欠陥検査装置の検査光でアライメント可能な実欠陥が存在していれば、アライメント領域32´を検査した時に、第2の基準マーク42を基準とした実欠陥の座標を検出することが可能である。つまり、第2の実施形態においては、上記第1の基準マーク22は、アライメント領域32´内に存在する実欠陥とすることもできる。この実施形態の場合、多層反射膜付き基板に対して欠陥検査を行い、パターン形成領域の外周縁領域に実欠陥が検出されれば、多層反射膜21上に吸収体膜31を形成する際、この多層反射膜21上の実欠陥を含む領域には吸収体膜31を成膜せずに、アライメント領域32´として形成すればよい。
【0118】
第1の実施形態でも説明したように、従来は、微細欠陥を検出可能な例えば前記ABI装置のような欠陥検査装置を用いて、高精度な欠陥検査を行おうとしても、吸収体膜上のEUV光の反射率が低いため、欠陥の信号強度が小さく、たとえば吸収体膜における欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得することが困難であった。
【0119】
これに対し、本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランクも、以上説明したように、パターン形成領域の外周縁領域に、多層反射膜上に形成された欠陥情報の基準となる上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜が露出したアライメント領域32´が形成されている。このため、反射型マスクブランクの欠陥管理は、このアライメント領域32´を用いて、より具体的には、例えばこのアライメント領域32´内に形成された上記第1の基準マーク22を用いてアライメントすれば、反射型マスクブランクの高精度な欠陥管理を行うことが可能である。たとえば、このアライメント領域32´内に形成された上記第1の基準マーク22を用いて、上記第1の基準マーク22と上記第2の基準マーク42との相対座標の管理を行うことができるので、上記第1の基準マーク22を基準にした欠陥情報(第1の欠陥マップ)から、上記第2の基準マーク42を基準にした欠陥情報(第2の欠陥マップ)を得ることが可能となる。
【0120】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る反射型マスクブランクを示す平面図である。
図9に示される実施形態では、第1の基準マーク22を含むアライメント領域33は、基板のコーナーの4箇所に、それぞれコーナーの二辺を含む矩形状としている。この矩形状の領域の横方向の長さは例えば3.0mm~9.0mm、縦方向の長さについても例えば3.0mm~9.0mmとすることができる。
【0121】
前にも説明したように、欠陥検査装置で上記第1の基準マーク22を検出することができればよいので、その限りにおいて、上記アライメント領域33の形状や大きさ等は上記実施形態に制約される必要はない。
【0122】
そして、本実施形態においても、このアライメント領域33のパターン形成領域側近傍の吸収体膜31に、上記第1の基準マーク22の基準となる第2の基準マーク42が形成されている。
これ以外の構成に関しては、上述した
図7の第2の実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0123】
本実施形態においても、上記アライメント領域33を用いて反射型マスクブランク30´の欠陥管理を行うことが可能である。すなわち、このアライメント領域33内に形成された上記第1の基準マーク22を用いて、上記第1の基準マーク22と上記第2の基準マーク42との相対座標の管理を行うことができる。その結果、上記第1の基準マーク22を基準にした欠陥情報(第1の欠陥マップ)から、上記第2の基準マーク42を基準にした欠陥情報(第2の欠陥マップ)を得ることが可能となる。
【0124】
また、前記ABI装置を用いて反射型マスクブランク30´の欠陥管理を行う場合、このアライメント領域33は多層反射膜21が露出しているため、上記第1の基準マーク22を高精度で検出することが可能となる。そのため、上記第1の基準マーク22と第2の基準マーク42との相対座標の管理を高精度で行うことができ、上記第2の基準マーク42を基準にした反射型マスクブランク30´の欠陥管理を良好に行うことができる。
【0125】
[第2、第3の実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法]
次に、上述の本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法について説明する。この説明は、第3の実施形態にも適用され得る。
本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランクの製造方法は、前記構成14にあるように、
基板上に、EUV光を反射する多層反射膜と、該多層反射膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜が少なくとも形成されている反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記基板上に、前記多層反射膜を成膜して多層反射膜付き基板を形成する工程と、
前記多層反射膜付き基板に対して欠陥検査を行う工程と、
前記多層反射膜付き基板の前記多層反射膜上に、前記吸収体膜を成膜して反射型マスクブランクを形成する工程と、を含み、
前記吸収体膜の成膜は、パターン形成領域の外周縁領域に、前記吸収体膜を成膜せずに、前記多層反射膜上の欠陥情報の基準となる第1の基準マークを含む領域の前記多層反射膜が露出したアライメント領域を形成する工程(以下「アライメント領域形成工程」と呼ぶこともある。)を含み、
該製造方法は更に、
前記吸収体膜における前記アライメント領域のパターン形成領域側近傍に、前記第1の基準マークの基準となる第2の基準マークを形成する工程と、
前記アライメント領域を用いて前記反射型マスクブランクの欠陥管理を行う工程と、
を含むことを特徴としている。
【0126】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造工程を示す断面図である。以下、
図10に示された工程に従って説明する。
【0127】
まず、基板としてガラス基板10上に、露光光の例えばEUV光を反射する多層反射膜21を成膜して、多層反射膜付き基板20´を作製する(
図10(a)参照)。
EUV露光用の場合、基板としてはガラス基板が好ましく、特に、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、第1の実施形態と同様、0±1.0×10
-7/℃の範囲内、より好ましくは0±0.3×10
-7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO
2-TiO
2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることが出来る。
【0128】
第1の実施形態で説明したように、上記ガラス基板10の転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を向上させる観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光用の場合、ガラス基板10の転写パターンが形成される側の主表面の142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時に静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下である。
【0129】
また、上記ガラス基板10としては、上記のとおり、SiO2-TiO2系ガラスなどの低熱膨張係数を有する素材が好ましく用いられるが、このようなガラス素材は、精密研磨により、表面粗さとして、例えば二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.1nm以下の高平滑性を実現することが困難である。そのため、ガラス基板10の表面粗さの低減、若しくはガラス基板10表面の欠陥を低減する目的で、ガラス基板10の表面に下地層を形成してもよい。このような下地層の材料としては、露光光に対して透光性を有する必要はなく、下地層表面を精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好となる材料が好ましく選択される。例えば、Si又はSiを含有するケイ素化合物(例えばSiO2、SiONなど)は、精密研磨した時に高い平滑性が得られ、欠陥品質が良好なため、下地層の材料として好ましく用いられる。下地層は、特にSiが好ましい。
【0130】
下地層の表面は、反射型マスクブランク用基板として要求される平滑度となるように精密研磨された表面とすることが好適である。下地層の表面は、二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.15nm以下、特に好ましくは0.1nm以下となるように精密研磨されることが望ましい。また、下地層の表面は、下地層上に形成する多層反射膜21の表面への影響を考慮すると、最大高さ(Rmax)との関係において、Rmax/Rqが2~10であることが良く、特に好ましくは、2~8となるように精密研磨されることが望ましい。
下地層の膜厚は、例えば10nm~300nmの範囲が好ましい。
【0131】
第1の実施形態で説明したように、上記多層反射膜21は、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層させた多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40~60周期程度積層された多層膜が用いられる。多層反射膜21の具体例は第1の実地形態において説明した通りであるので、説明は省略する。
【0132】
第1の実施形態と同様、通常、吸収体膜のパターニング或いはパターン修正の際に多層反射膜を保護する目的で、上記多層反射膜21上には、保護膜(キャッピング層あるいはバッファ膜とも呼ばれることがある。)を設けることが好ましい。このような保護膜の材料としては、ケイ素のほか、ルテニウムや、ルテニウムにニオブ、ジルコニウム、ロジウムのうち1以上の元素を含有するルテニウム化合物が用いられ、この他には、クロム系材料が用いられることもある。また、保護膜の膜厚としては、例えば1nm~5nm程度の範囲が好ましい。
【0133】
第1の実施形態で説明したように、以上の下地層、多層反射膜21、及び保護膜の成膜方法は特に限定されないが、通常、イオンビームスパッタリング法や、マグネトロンスパッタリング法などが好適である。
【0134】
以下では、上記多層反射膜付き基板20´の実施形態として、上記のとおり、
図10(a)に示すようなガラス基板10上に多層反射膜21を成膜したものについて説明するが、本実施形態でも、多層反射膜付き基板20´は、ガラス基板10上に、上記多層反射膜21、及び保護膜を順に成膜した態様や、ガラス基板10上に、上記下地層、多層反射膜21、及び保護膜をこの順に成膜した態様を含むものとする。また、基板端部での発塵抑制の観点から、ガラス基板10上に多層反射膜21を成膜する際、基板外周端部から内側へ所定の幅(例えば数mm程度)の領域には多層反射膜21を成膜しないようにすることもできる。本実施形態ではこのような態様も含むものとする。
【0135】
次に、以上のようにして作製した多層反射膜付き基板20´に前述の第1の基準マーク22を形成する。前にも説明したように、この多層反射膜付き基板20´に形成する第1の基準マーク22は、この多層反射膜付き基板から作製される反射型マスクブランクのアライメント領域内に形成されるわけである。第1の基準マーク22についてはすでに詳しく説明したので、ここでは重複した説明は省略する。
【0136】
ここでは、多層反射膜付き基板20´の多層反射膜21上の所定の位置に、例えば微小圧子によるインデンテーション(パンチ)を用いて、例えば前述の
図3(a)に示すような形状の第1の基準マーク22を形成している(
図10(a)参照)。
第1の実施形態と同様、上記第1の基準マーク22を形成する方法は上述の微小圧子を用いる方法には限定されない。例えば基準マークの断面形状が凹形状の場合、集束イオンビーム、フォトリソ法、レーザー光による凹部形成、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、インプリント法による型押しなどで形成することができる。
【0137】
なお、第1の基準マーク22の断面形状が凹形状の場合、欠陥検査光による検出精度を向上させる観点から、凹形状の底部から表面側へ向かって広がるように形成された断面形状であることが好ましい。
【0138】
また、上記第1の基準マーク22は、前述のとおり、多層反射膜付き基板20´の主表面上のパターン形成領域より外周縁側の領域の任意の位置に形成されるが(
図7、
図8、
図9参照)、この場合、エッジ基準で第1の基準マークを形成したり、或いは第1の基準マークを形成後、座標計測器で基準マーク形成位置を特定してもよい。
【0139】
例えば、第1の基準マーク22を集束イオンビーム(FIB)で加工する場合、多層反射膜付き基板20´のエッジは、2次電子像、2次イオン像、あるいは光学像で認識することができる。また、第1の基準マーク22をその他の方法(例えば圧痕)で加工する場合は、光学像で認識することができる。例えば多層反射膜付き基板20´の四辺の8箇所のエッジ座標を確認し、チルト補正して、原点(0,0)出しを行う。この場合の原点は任意に設定可能であり、基板の角部でも中心でもよい。このようにエッジ基準で設定した原点からの所定の位置にFIBで第1の基準マーク22を形成する。
このようなエッジ基準で形成した第1の基準マーク22を欠陥検査装置で検出する際、基準マークの形成位置情報、つまりエッジからの距離がわかっているため、基準マーク形成位置を容易に特定することが可能である。
【0140】
また、多層反射膜21上の任意の位置に第1の基準マーク22を形成した後、座標計測器で基準マーク形成位置を特定する方法を適用することもできる。この座標計測器は、第1の基準マークの形成座標をエッジ基準で計測するものであり、例えば高精度パターン位置測定装置(KLA-Tencor社製LMS-IPRO4)を使用することができ、特定した基準マーク形成座標が基準マークの形成位置情報となる。
【0141】
次に、以上のようにして作製した第1の基準マーク22が形成された多層反射膜付き基板20´に対して欠陥検査を行う。すなわち、多層反射膜付き基板20´に対して、欠陥検査装置により、上記第1の基準マーク22を含めて欠陥検査を行い、欠陥検査により検出された欠陥と位置情報とを取得し、第1の基準マーク22を含めた欠陥情報を得る。また、この場合の欠陥検査は、少なくともパターン形成領域の全面に対して行う。多層反射膜付き基板20´の欠陥検査装置としては、前記のたとえば、検査光源波長が266nmであるレーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」、検査光源波長が193nmであるKLA-Tencor社製のEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron600シリーズ、例えばTeron610」、検査光源波長を露光光源波長の13.5nmとするABI装置などを好ましく用いることができる。特に、微細欠陥を検出可能な上記ABI装置のような欠陥検査装置を用いて高精度な欠陥検査を行うことが好適である。
【0142】
次に、上記多層反射膜付き基板20´における上記多層反射膜21(多層反射膜の表面に上記保護膜を有する場合には、その保護膜)上に、EUV光を吸収する吸収体膜31を成膜し、反射型マスクブランクを作製する(
図10(b)参照)。
なお、図示していないが、ガラス基板10の多層反射膜等が形成されている側とは反対側に裏面導電膜を設けてもよい。
【0143】
本実施形態においては、上述の多層反射膜21上に吸収体膜31を成膜する際、上記多層反射膜付き基板20´の主表面の所定の箇所、具体的には、上記多層反射膜付き基板20´に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域には吸収体膜31を成膜せずに、第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´を形成する(
図10(b)参照)。このアライメント領域32´は、多層反射膜21に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出するような形状、大きさに形成する。
【0144】
このアライメント領域32´を形成する工程では、上記吸収体膜31が成膜されずに上記多層反射膜21が露出するように遮蔽部材を設けて吸収体膜31を成膜する。例えば、
図11に示すように、アライメント領域32´を形成する多層反射膜付き基板20´主表面の所定の箇所において、基板周縁部から離間して遮蔽部材50を設置し、例えばスパッタリング法により吸収体膜31を成膜する。基板周縁部近傍において、第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21上を遮蔽部材50が覆うようにするので、遮蔽部材50の形状、大きさ、遮蔽長さdについては、形成するアライメント領域32´の形状、大きさ等を考慮して、決定されればよい。また、ガラス基板10主表面と遮蔽部材50との離間距離hについても適宜調節すればよいが、通常は9mm程度とすることが好適である。
【0145】
以上の成膜方法によるアライメント領域形成工程によって、上記多層反射膜付き基板20´に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域には吸収体膜31が成膜されずに、第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´が形成される。このアライメント領域32´を除く多層反射膜付き基板20´上には、上記吸収体膜31が成膜されることになる。
【0146】
なお、アライメント領域32´の形成方法としては、たとえば、多層反射膜付き基板の全面に吸収体膜を成膜しておき、アライメント領域とする領域の吸収体膜を除去(剥離)することにより、基準マークを含む領域の多層反射膜が露出したアライメント領域を形成する方法も考えられる。しかし、この方法では、アライメント領域の吸収体膜を除去することによる基準マークの変形等のリスクがある。また、吸収体膜を除去する際の発塵のおそれもある。これに対し、上述したような本実施形態におけるアライメント領域形成工程によれば、多層反射膜付き基板20´に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域には吸収体膜31を成膜せずに、第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´を形成するので、基準マークの変形等のリスクは避けられ、上記の発塵の問題も生じない。
【0147】
吸収体膜31については第1の実施形態とまったく同じであるので重複する説明は省略する。
【0148】
次に、上記吸収体膜31に第2の基準マーク42を形成する(
図10(c)参照)。
この第2の基準マーク42は、上記第1の基準マーク22との相対座標管理をする上での基準となるものであり、上記アライメント領域32´のパターン形成領域側の近傍の吸収体膜31に形成される。
図7の実施形態では、第2の基準マーク42は、具体的な一例として、基板コーナーの第1の基準マーク22の近傍であって、パターン形成領域のコーナーの外側近傍に形成されている。第2の基準マーク42についてはすでに詳しく説明したので、ここでは重複した説明は省略する。
【0149】
この第2の基準マーク42を形成するため、その領域に相当する吸収体膜31を除去する方法としては、例えば集束イオンビームを適用することが好適である。また、フォトリソ法を適用することもできる。この場合には、吸収体膜31上に、所定のレジストパターン(第2の基準マークに対応する領域にレジストが形成されていないパターン)を形成し、このレジストパターンをマスクとし、第2の基準マークに相当する領域が露出する吸収体膜に対してドライエッチングを行い、その領域に相当する吸収体膜31を除去して第2の基準マーク42を形成する。この場合のエッチングガスとしては、吸収体膜31のパターニング時に使用するものと同じエッチングガスを用いればよい。
【0150】
以上のようにして、パターン形成領域の外周縁領域に、上記吸収体膜31を成膜せずに、上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´、及び第2の基準マーク42が形成された反射型マスクブランク30´を作製する(
図10(c)参照)。
【0151】
次に、以上のようにして作製した第1の基準マーク22を含むアライメント領域32´と第2の基準マーク42とに対して、欠陥検査装置を用いて検査を行う。この場合、前述の多層反射膜上の欠陥検査を行った検査装置と同様の検査光を用いて検査を行うことが好適である。これは、両者の検査装置による座標精度を一致させることができるからである。
【0152】
この場合、上記第2の基準マーク42を基準として上記のアライメント領域32´内に形成された上記第1の基準マーク22を検査し、第2の基準マーク42を基準とする第1の基準マーク22の位置座標を検出する。その後、前述の欠陥検査によって得られた多層反射膜付き基板20´の欠陥情報に基づいて、上記第1の基準マーク22を基準とした欠陥情報(第1の欠陥マップ)を作成し、上記第2の基準マーク42を基準とした第1の基準マーク22の座標を用いて、上記欠陥情報(第1の欠陥マップ)を第2の基準マークを基準とした欠陥情報(第2の欠陥マップ)に変換する。この第1の基準マーク22と第2の基準マーク42は、前述のABI装置のような微細欠陥を高精度で検出可能な欠陥検査装置を用いて検査を行うことが好適である。
【0153】
なお、このような第1の基準マーク22を含むアライメント領域32´と第2の基準マーク42とに対して、欠陥検査装置を用いる代わりに、前述の座標計測器で検査を行い、第2の基準マーク42を基準とする第1の基準マーク22の位置座標を検出するようにしてもよい。
【0154】
このような本実施形態により得られる反射型マスクブランク30´においては、パターン形成領域の外周縁領域に、上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´が形成されているため、このアライメント領域32´を用いて反射型マスクブランク30´の欠陥管理を行うことが可能である。すなわち、このアライメント領域32´を用いて、上記第1の基準マーク22と第2の基準マーク42との相対座標の管理を行うことができる。その結果、上記第1の基準マーク22を基準にした欠陥情報(第1の欠陥マップ)から、上記第2の基準マーク42を基準にした欠陥情報(第2の欠陥マップ)を得ることが可能となる。吸収体膜31は多層反射膜21上に形成されるため、多層反射膜21の欠陥は吸収体膜31にも反映されるので、アライメント領域32´を介して上記第2の基準マーク42を基準として多層反射膜21上の欠陥を高精度に管理できることになる。反射型マスクブランク30の欠陥管理を行う場合、特に上記のABI装置を用いることにより微細欠陥でも高精度で検出することができ、しかも精度の良い欠陥情報を得ることが可能である。また、本実施形態によれば、上記アライメント領域32´の形成に起因する第1の基準マーク22の変形等は起こらないため、第1の基準マーク22を用いたアライメント誤差は生じない。
【0155】
また、反射型マスクブランク30´表面の欠陥検査については、行わなくてもよいが、より高精度の欠陥管理を行うために、全面検査や検査時間を短縮した部分検査を行うことも可能である。
【0156】
上述の第2、第3の実施形態では、上記アライメント領域32´内に、欠陥情報の基準となる第1の基準マーク22が形成されている反射型マスクブランクについて説明した。しかし、前にも説明したように、上記アライメント領域32´内に、欠陥検査装置の検査光でアライメント可能な実欠陥が存在していれば、上記第1の基準マーク22はこのような実欠陥であってもよく、アライメント領域32´を検査した時に、第2の基準マーク42を基準とした実欠陥の座標を検出することが可能である。
【0157】
以上説明したように、本発明の第2、第3の実施形態に係る製造方法により得られる反射型マスクブランク30´は、パターン形成領域の外周縁領域に、上記第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´が形成されている。このため、反射型マスクブランク30´の欠陥管理は、このアライメント領域32´を用いて、具体的には、このアライメント領域32´内に形成された上記第1の基準マーク22を用いて、高精度な欠陥管理を行うことが可能である。その結果、欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得することができる。また、このアライメント領域32´と第2の基準マーク42を用いて、上記第1の基準マーク22と第2の基準マーク42との相対座標の管理を行うことができる。
【0158】
また、第1の実施形態と同様、本発明の第2、第3の実施形態に係る反射型マスクブランク30´には、上記吸収体膜31上に、ハードマスク膜(エッチングマスク膜とも言う。)を形成した態様も含まれる。ハードマスク膜は、吸収体膜31をパターニングする際にマスク機能を有するものであり、吸収体膜31の最上層の材料とエッチング選択性が異なる材料により構成する。ハードマスク膜の材料は第1の実施形態で説明した通りである。
【0159】
また、本発明の第2、第3の実施形態に係る反射型マスクブランク30´は、吸収体膜を、互いにエッチング選択性が異なる材料からなる最上層とそれ以外の層との積層膜で構成し、最上層がそれ以外の層に対するハードマスク膜としての機能を有するようにした構成とすることもできる。
【0160】
以上のとおり、本発明の第2、第3の実施形態に係る反射型マスクブランク30´における吸収体膜31は、単層膜には限られず、同一材料の積層膜、異種材料の積層膜で構成することができ、さらには、上記のような積層膜あるいは単層膜の吸収体膜とハードマスク膜との積層膜の構成とすることができる。
また、本発明の第2、第3の実施形態に係る反射型マスクブランク30´には、上記吸収体膜31上にレジスト膜を形成した態様も含まれる。このようなレジスト膜は、反射型マスクブランクにおける吸収体膜をフォトリソ法によりパターニングする際に用いられる。
また、吸収体膜31上に上記ハードマスク膜を介して又は介さずにレジスト膜を設けた場合、第2の基準マーク42の形状は、レジスト膜に転写されることになる。そして、レジスト膜に転写された第2の基準マーク42は、電子線描画装置による電子線走査に対してコントラストを有し、電子線にて検出することができる。このとき、第1の基準マーク22と第2の基準マーク42とで相対座標の管理を行っているので、第2の基準マーク42よりも相対的に小さい第1の基準マーク22の形状がレジスト膜に転写されなくても高精度の描画が可能となる。
なお、電子線走査に対するコントラストをより向上させるために、第2の基準マーク42を含む領域の上にレジスト膜を形成しない、又は第2の基準マーク42を含む領域の上のレジスト膜を除去する構成としてもよい。
【0161】
[第2、第3の実施形態に係る反射型マスク]
本発明は、上記
図7の構成の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた反射型マスク及びその製造方法についても提供するものである。この説明は、第3の実施形態にも適用され得る。
すなわち、上述の反射型マスクブランク30´上に電子線描画用レジストを塗布して、ベーキングすることによりレジスト膜を形成する。次いで、電子線描画装置を用いてレジスト膜を描画、現像し、レジスト膜に、転写パターンに対応したレジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをマスクにして吸収体膜31をパターニングして吸収体膜パターン31aを形成することにより反射型マスク40´が作製される(
図10(d)参照)。
本実施形態においては、たとえば上述した反射型マスクブランク30´における第2の基準マーク42を基準とした欠陥情報に基づいて描画パターンを修正し、吸収体膜31をパターニングすることができる。
【0162】
反射型マスクブランク30´における転写パターンとなる上記吸収体膜31をパターニングする方法は、上記のようなフォトリソ法が最も好適である。なお、上述のハードマスク膜を含む構成の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する場合、ハードマスク膜は最終的には除去してもよいが、残存していても反射型マスクとしての機能に影響がなければ、特に除去しなくてもよい。
【0163】
以上のようにして得られる上記反射型マスク40´は、基板10上に、EUV光を反射する多層反射膜21と、該多層反射膜21上に、EUV光を吸収する吸収体膜パターン31aが少なくとも形成されており、この反射型マスク40´主表面上のパターン形成領域の外周縁領域に、吸収体膜31が成膜されずに第1の基準マーク22を含む領域の多層反射膜21が露出したアライメント領域32´が形成され、かつ、アライメント領域32´のパターン形成領域側近傍に第2の基準マーク42が形成されている。
【0164】
第2、第3の実施形態では、上述したように、多層反射膜における欠陥位置情報を含む精度の良い欠陥情報を取得し、反射型マスクブランクの欠陥管理を高精度に行うことができる。このため、マスクの製造においては、この欠陥情報に基づいて、予め設計しておいた描画データ(マスクパターンデータ)と照合し、欠陥による影響が低減するように描画データを高い精度で修正(補正)することが可能になる。その結果として、最終的に製造される上記反射型マスク40´において欠陥を低減させたものが得られる。
【0165】
さらに、上述の反射型マスク40´を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することにより、欠陥の少ない高品質の半導体装置を製造することができる。
【0166】
[実施例]
以下、実施例により、本発明の第2、第3の実施形態を更に具体的に説明する。
(実施例2)
両面研磨装置を用い、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨し、低濃度のケイフッ酸で基板表面を表面処理したSiO2-TiO2系のガラス基板(大きさが約152.0mm×約152.0mm、厚さが約6.35mm)を準備した。得られたガラス基板の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.25nmであった。なお、表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)にて測定し、測定領域は1μm×1μmとした。
【0167】
次に、ガラス基板の主表面に、イオンビームスパッタリング装置を用いて、Si膜(膜厚:4.2nm)とMo膜(膜厚:2.8nm)を一周期として、40周期積層し、最後にSi膜(膜厚:4nm)を形成し、さらにその上に、Ruからなる保護膜(膜厚:2.5nm)を成膜して、多層反射膜付き基板を得た。
【0168】
次に、上記多層反射膜付き基板の多層反射膜表面の所定の箇所(前述の
図8に示す位置)に以下の表面形状で断面形状が凹形状の第1の基準マークを形成した。第1の基準マークの形成は微小圧子によるインデンテーション(パンチ)により行った。具体的には、微小圧子を多層反射膜に所定の圧力で押し付けることにより、第1の基準マークを形成した。第1の基準マークの形成後、洗浄を行った。
本実施例2では、第1の基準マークとして、前述の
図3(a)に示す形状とし、大きさが直径500nmの円形、深さは60nmとした。
【0169】
次に、多層反射膜付き基板表面を前述のABI装置で、上記第1の基準マークを含めて欠陥検査を行った。この欠陥検査では、凸、凹の欠陥位置情報と、欠陥サイズ情報を取得し、第1の基準マークを含めた欠陥情報を得た。
また、この多層反射膜付き基板の保護膜表面の反射率を、EUV反射率計により評価したところ、64%±0.2%と良好であった。
【0170】
次に、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、上記多層反射膜付き基板の保護膜上に、TaBN膜(膜厚:56nm)とTaBO膜(膜厚:14nm)の積層膜からなる吸収体膜を成膜し、また、多層反射膜付き基板の裏面にCrN導電膜(膜厚:20nm)を成膜して反射型マスクブランクを得た。
【0171】
なお、上述の吸収体膜31を成膜する際、上記多層反射膜付き基板20´の主表面の所定の箇所、具体的には、上記多層反射膜付き基板20´に形成された上記第1の基準マーク22を含む領域には吸収体膜31が成膜されないようにするため、
図11で説明したように基板周縁部に離間して遮蔽部材を設置し、吸収体膜31を成膜した。第1の基準マークを含む領域の多層反射膜上を遮蔽部材で覆うようにするため、遮蔽部材の形状、大きさ、遮蔽長さdについては、形成するアライメント領域の形状、大きさ等を考慮して決定した。本実施例2では
図11で説明した形状、大きさと同様にした。また、ガラス基板主表面と遮蔽部材との離間距離hについても適宜調節した。
【0172】
以上の方法により、上記第1の基準マークを含む領域には吸収体膜が成膜されずに、第1の基準マークを含む領域の多層反射膜が露出したアライメント領域が形成され、このアライメント領域を除く多層反射膜付き基板上には、上記吸収体膜が成膜された。なお、アライメント領域内に形成されている第1の基準マークの変形等は生じなかった。
【0173】
次に、上記反射型マスクブランクの表面の所定の箇所(前述の
図7に示す位置)に、第2の基準マークを形成した。第2の基準マークとして、前述の
図4(a)に示す十字形状となるように形成した。第2の基準マークは、大きさが幅5μmで長さが550μmの十字形状、深さは吸収体膜を全て除去したので、約70nmとした。
【0174】
上記第2の基準マークを形成するために、集束イオンビームを用いた。この時の条件は加速電圧50kV、ビーム電流値20pAとした。第2の基準マークの形成後、洗浄を行った。このようにして、第2の基準マークが形成された反射型マスクブランクを得た。
【0175】
得られた反射型マスクブランクについて、多層反射膜付き基板の欠陥検査と同様の前述のABI装置でアライメント領域内の第1の基準マークと第2の基準マークの検査を行った。この際、第2の基準マークを基準に第1の基準マークを検査し、第2の基準マークを基準とする第1の基準マークの位置座標を検出した。アライメント領域では多層反射膜が露出しているため、ABI装置でアライメント領域内の第1の基準マークを精度良く検出することができた。第2の基準マークと第1の基準マークの相対座標の管理を行うことで、多層反射膜上の欠陥を第2の基準マーク基準で、高精度に管理できる。
【0176】
こうして、第2の基準マークを基準にした反射型マスクブランクの欠陥情報を得た。
さらに、第2の基準マークを座標測定器(KLA-Tencor社製LMS-IPRO4)で計測することにより、電子線描画工程の基準座標に変換する補正を行った。
【0177】
次に、この欠陥情報を取得したEUV反射型マスクブランクを用いて、EUV反射型マスクを作製した。
まず、EUV反射型マスクブランク上に電子線描画用レジストをスピンコーティング法により塗布し、ベーキングしてレジスト膜を形成した。
【0178】
その際、第2の基準マークに基づいてアライメントを行った。そして、EUV反射型マスクブランクの欠陥情報に基づいて、予め設計しておいたマスクパターンデータと照合し、露光装置を用いたパターン転写に影響のないマスクパターンデータに修正するか、パターン転写に影響があると判断した場合には、例えば欠陥をパターンの下に隠すように修正パターンデータを追加したマスクパターンデータに修正するかして、上述のレジスト膜に対して電子線によりマスクパターンを描画、現像し、レジストパターンを形成した。本実施例2では、精度の高い欠陥位置情報を含む欠陥情報が得られていたので、マスクパターンデータの修正を高精度で行うことができた。
【0179】
このレジストパターンをマスクとし、吸収体膜に対してフッ素系ガス(CF4ガス)によりTaBO膜を、塩素系ガス(Cl2ガス)によりTaBN膜をエッチング除去して、保護膜上に吸収体膜パターンを形成した。
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、EUV反射型マスクを得た。
【0180】
こうして得られた反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、反射型マスク起因の転写パターンの欠陥も無く、良好なパターン転写を行うことができた。
【0181】
(参考例2)
上記実施例2において、第1の基準マークを形成した多層反射膜付き基板上に上記吸収体膜を形成する際、全面に吸収体膜を成膜して、上述のアライメント領域は形成しなかったこと以外は、実施例2と同様にして反射型マスクブランクを作製した。
【0182】
実施例2と同様に、ABI装置で多層反射膜付き基板の欠陥検査を行い、欠陥位置情報、欠陥サイズ情報を取得した。また、反射型マスクブランクにおいて、第1の基準マークが形成されている吸収体膜上の領域に対してABI装置で検査したところ、多層反射膜に形成された第1の基準マークは、EUV光でのコントラストが低く、精度良く検出することができなかった。このため、取得した欠陥座標の精度が悪く、反射型マスクブランクの欠陥情報を得ることが困難であった。
【0183】
次に、実施例2と同様にして、このEUV反射型マスクブランクを用いて、EUV反射型マスクを作製した。
得られたEUV反射型マスクを露光装置にセットし、レジスト膜を形成した半導体基板上へのパターン転写を行ったところ、反射型マスク起因の転写パターン欠陥が見られた。この原因は、上記のとおり、第1の基準マークの欠陥座標の精度が悪く、反射型マスクブランクの欠陥情報を得ることが困難であったため、パターン描画工程で、EUV反射型マスクブランクの欠陥情報に基づくマスクパターンデータの修正を高い精度で行えず、多層反射膜上の欠陥を精度よく吸収体膜パターン下に隠すことができなかったことによるものと考えられる。
【0184】
なお、実施例1と同様、実施例2でも、第1の基準マークを微小圧子によるインデンテーションにより形成した例を挙げて説明したが、これに限定されない。前にも説明したとおり、この方法以外にも、集束イオンビーム、フォトリソ法、レーザー光等による凹部形成、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、インプリント法による型押しなどで形成することができる。また、実施例2でも、アライメント領域に第1の基準マークが形成されている例を挙げて説明したが、アライメント領域に存在する実欠陥であってもよい。
【符号の説明】
【0185】
10 ガラス基板
20、20´ 多層反射膜付き基板
21 多層反射膜
22 第1の基準マーク
30、30´ 反射型マスクブランク
31 吸収体膜
32、32´、33 アライメント領域
40、40´ 反射型マスク
42 第2の基準マーク
42a メインマーク
42b、42c、42d、42e 補助マーク
50 遮蔽部材