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特許7286628少なくとも1つのパイプ又はケーブルが延びる導管及びそのような導管を封止する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】少なくとも1つのパイプ又はケーブルが延びる導管及びそのような導管を封止する方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20230529BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20230529BHJP
   F16L 5/14 20060101ALI20230529BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20230529BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20230529BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
F16L5/04
F16L5/02 D
F16L5/14
H02G3/22
H02G3/04
A62C3/16 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020514589
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2018074395
(87)【国際公開番号】W WO2019048691
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】1042540
(32)【優先日】2017-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】515055166
【氏名又は名称】ベール エンジニアリング ベー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ベール,ヨハネス アルフレッド
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-530945(JP,A)
【文献】特表2010-519490(JP,A)
【文献】特開2016-223279(JP,A)
【文献】国際公開第2006/097290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/04
F16L 5/02
F16L 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのパイプ又はケーブルが延びる導管であって、
当該導管は、内壁を有し、前記少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない当該導管空間内のシーリングのためのシステムを備え、
該システムは、前記少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない前記空間内にクランプされる支持構造を当該導管内に提供するためのゴム要素と、前記内壁と前記少なくとも1つのパイプ又はケーブルとの間で当該導管の少なくとも1つの端を封止するための前記支持構造に対するシール材層とを含み、前記ゴム要素は、熱的に実質的に非膨張性のタイプの耐火性加硫ゴムで作られ、前記シール材は、同様に熱的に実質的に非膨張性のタイプである耐火性ポリマで作られ、該ポリマは、湿気への曝露を受けて室温で加硫可能であるか或いは加硫され、前記ゴム要素は、長手方向要素であり、前記ゴム要素のうちの少なくとも1つは、マントル壁を含み、該マントル壁のうちの少なくとも1つは、それ自体で閉塞され、前記ゴム要素のうちの少なくとも1つは、前記少なくとも1つのパイプ又はケーブルを取り囲む、
導管。
【請求項2】
前記マントル壁の少なくとも1つは、前記ゴム要素の全長に亘って延びるスリットを備える、請求項に記載の導管。
【請求項3】
前記熱的に実質的に非膨張性のタイプのゴム又はポリマは、前記ゴム又は前記ポリマ自体が加熱後に膨張するよりも大きい程度まで加熱後に前記ゴム又は前記ポリマを膨張させる成分のない、ゴム又はポリマを含む、請求項2に記載の導管。
【請求項4】
前記ゴムは、シリコーンベースのゴムを含む、請求項1又は2又は3に記載の導管。
【請求項5】
前記ポリマは、シリコーンベースのポリマを含む、請求項1乃至4のうちの1つに記載の導管。
【請求項6】
前記長手方向ゴム要素は、管状要素であり、或いは、多数の長手方向ゴム要素が、1つの管状要素を一緒に形成する、請求項1乃至5のうちの1つに記載の導管。
【請求項7】
前記ゴムは、70~78ショアAの範囲内の、好ましくは、約74ショアAの硬さを有する、請求項1乃至6のうちの1つに記載の導管。
【請求項8】
前記ゴム要素は、円筒形状である、請求項1乃至7のうちの1つに記載の導管。
【請求項9】
前記円筒形状のゴム要素のうちの少なくとも1つが、16mm~40mmの範囲内の外径を有する、請求項8に記載の導管。
【請求項10】
前記円筒形状のゴム要素は、10mm~32mmの範囲内の内径を有する管状要素である、請求項8又は9に記載の導管。
【請求項11】
前記シール材は、加硫後に、35~50ショアAの範囲内の、好ましくは、40~45ショアAの範囲内の硬さを有する、請求項1乃至10のうちの1つに記載の導管。
【請求項12】
前記ゴム要素及び/又は前記シール材は、400℃の温度で発火しない、請求項1乃至11のうちの1つに記載の導管。
【請求項13】
前記ゴム要素及び/又は前記シール材は、45%以上の酸素指数を有する、請求項1乃至12のうちの1つに記載の導管。
【請求項14】
前記ゴム要素及び/又は前記シール材は、黒色と対照的な色を有する、請求項1乃至13のうちの1つに記載の導管。
【請求項15】
前記色は、赤褐色又は白色である、請求項14に記載の導管。
【請求項16】
当該導管は、軸方向において、15~17cmの範囲内の長さを有し、好ましくは、16cmの長さを有する、請求項1乃至15のうちの1つに記載の導管。
【請求項17】
当該導管は、金属又は金属合金で作られる、請求項1乃至16のうちの1つに記載の導管。
【請求項18】
当該導管は、コンクリート壁又は天井に貫通穴を含む、請求項1乃至17のうちの1つに記載の導管。
【請求項19】
当該導管は、好ましくは、難燃性コーティングで被覆された、水和性フィロ珪酸塩ミネラル材料を含む内壁を有する、請求項1乃至18のうちの1つに記載の導管。
【請求項20】
当該導管は、ガラス充填硬質エンジニアリングプラスチックを含む内壁を有する、請求項1乃至19のうちの1つに記載の導管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つのパイプ又はケーブルが延びる導管(conduit)に関し、そのような導管を封止(シール)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリングシステム(sealing system)は、通常、導管内に適用され、導管自体は、1つの又は他の方法で、例えば、2つの区画(compartments)を分割する構造要素に組み込まれる。パイプ又はケーブルが、導管を通じて2つの区画の一方から他方に延びることがある。そのような導管は、しばしば、船舶の船上(on board)及び/又は石油リグのような他の沖合用途に存在する。これらの導管は、しばしば、パイプ又はケーブル貫通部(penetrations)又は輸送システム(transit systems)と呼ばれる。これらの貫通部は、そのような構造において歓迎されない必需品として見られる。例えば、配水システム及び水消耗システム、空調システム、液圧及び空圧制御装置、スプリンクラなどのためのパイプのみならず、ガス又はオイルの輸送のためのパイプも、たとえ区画の分離部(separation)に「弱点(weak spot)」を導入することを伴うとしても、そのような構造を通じて延在する必要がある。パイプの代わりに、ケーブルも、導管を通じて延在することができる。そのようなケーブルは、例えば、電力ケーブルであることができる。よって、この開示においてパイプが言及されるとき、これは等しくケーブルへの言及であり得る。
【0003】
そのような弱点は、構造物の機械的強度には大きく現れないが、構造物に亘る物理的現象の望ましくない輸送により一層多く現れる。これらの物理的現象の1つは、火災の制御及び消火を可能にするためのみならず、火災が更に拡大する前に火災から安全な距離に到達するよう火災の近くの区画に存在する人々に時間を提供するためにも、可能な限り1つの区域に閉じ込められる必要がある火災の場合である。煙及び/又は火災が、1つの区画から別の区画へ導管を通じて進むのを防止するために、導管は、通常、導管が火災の故に熱に曝されるときに、少なくとも暫くの間、導管を閉じる材料を備える。
【0004】
上述は、導管を有し且つ2つの区画を分割する構造要素に言及するが、構造要素が、区画を周囲環境から分離することも可能である。よって、構造要素の片側が大気条件に曝される可能性がある。
【0005】
導管を通じて延びるパイプ、導管自体、及び導管が組み込まれる構造要素は、それぞれ、通常、熱伝導性材料、例えば、アルミニウム又は鋼で作られることが理解されるであろう。このような状況では、熱は、火に曝される側から導管内に延びるパイプ又は複数のパイプを介して、依然として導管スリーブに入るだけであることが多い。同じことが、しばしば金属コアを有するケーブルにも当て嵌まる。導管が作られる材料を通じる熱の進入は、しばしば、導管の外壁と導管が組み込まれる構造要素とに対して設けられる断熱ライニングによって阻止される。
【0006】
しかしながら、今日、断熱ライニングは、必ずしも導管の周囲に適用(塗布)されず、その結果、熱は、導管材料を通じて導管の外側から内側へ伝導され得る。従って、熱は、少なくとも2つのルートを介して導管の内部空間に供給され得る。第1のルートは、導管内に延びるパイプ又はケーブルを介した供給であり、第2のルートは、導管が作られる熱伝導性材料による導管の内部空間への熱の供給である。熱は、2つのルートを介して供給されることがあるので、熱は、導管スリーブの内部空間に非常に急速に供給されることがある。これらの条件は、沖合構造物及び船舶において頻繁に見られ、その場合、構造材料は、実際には金属、即ち、熱伝導性材料で作られる。例えば、陸上構造物のような、沖合構造物及び船舶以外の構造物において、第2のルートを介した熱の進入は、発生する以上は、はるかに少ない頻度で発生する。
【0007】
特許文献1は、上述のように導管内に配置するのにある程度適したシステムを記載している。そのシステムは、熱膨張性ゴムスリーブを含む。ゴムは、そのゴムに熱膨張性グラファイトを組み込むことによって熱膨張性にされる。システムは、導管の両端を封止するための耐火及び/又は水密シール材(シーラント)を更に含む。付近の火に曝されると、導管内に伝達される熱は、膨張性スリーブを膨張させ、よって、シーリングに機械的安定性を与えることなく、柔らかく、ほぼ粉末状の塊を形成することによって、導管を封止する。膨張は、シール材層を破断させることがある。この破断自体は、問題ではない。何故ならば、膨張したスリーブは、シール材層が破断する前に導管を封止しているからである。時には、シール材は、熱膨張可能にも作られる。
【0008】
急速かつ抑制されていない熱膨張を可能にするために、ゴムスリーブの構成要素は、スリーブの寸法内に一緒に保持されるが、剛性の内部構造内に確実には捕捉されない。結果的に、スリーブは、むしろ柔らかい。人はどれぐらいの熱入力がシーリングシステムに提供されるかを決して知らないので、並びにそれが適時に十分に応答することを保証するために、システムは、たとえ比較的小さな温度上昇のみを受けるときでさえも、システムの一部が膨張し、導管の閉塞が起こるようにされる。換言すれば、シーリングシステムに到達する熱の量の不確実性の故に、システムは、非常に敏感にされる。その結果、熱の「過剰」は、導管の外側にさえも、過剰応答膨張を引き起こす。
【0009】
そのようなシステムは、満足に使用され、多くの火災安全試験に合格するが、代替的な、おそらくは更に一層改良されたシステムが、依然として望ましい。何故ならば、沖合構造物及び/又は船舶の船上での安全は、実際には、常に、貫通部が貫通部の片側での火災に耐えなければならない時間とコストとの間の妥協だからである。
【0010】
引用文献2は、導管を通じて延びる少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない導管空間内を封止するためのシステムを記載している。システムは、内壁と少なくとも1つのパイプ又はケーブルとの間にクランプ可能な支持構造を導管内に提供するための少なくとも1つのゴム要素と、支持構造に適用(塗布)するための並びに内壁と少なくとも1つのパイプ又はケーブルとの間の導管の少なくとも1つの端をシールするためのシール材とを含む。各ゴム要素は、熱的に実質的に非膨張性のタイプの耐火性加硫ゴムで作られる。シール材は、湿気への曝露を受けて室温で加硫可能であり、熱的に実質的に非膨張性のタイプである、耐火性ポリマで作られる。
【0011】
加硫ゴムの1つ又はそれよりも多くのゴム要素は、導管内にクランプされるときに、高い機械的安定性を有する。このため、シール材は、構造物に塗布されると、臭い及び煙に対する障壁のみならず、水に対する障壁も形成する。
【0012】
付近の火災に曝される前に、シール材は、支持構造によって支持されるので、露出側での導管内へのシール材の膨出を引き起こすことなく、7バールの圧力に容易に耐えることができることが判明した。シーリングが熱絶縁性であることが更に判明した。更に、使用中に、付近の火災に曝されると、そのようなシステムは、そのような僅かな熱膨張を受けるので、導管内にクランプされる1つ又はそれよりも多くのゴム要素によって提供されるような支持構造、シール材によって提供されるようなゴムシールは、所定の場所に留まり、適切なシーリングを提供し続けることが明らかになった。近くの火災に曝された後に、多量のシーリングは未消費のままであり、依然としてある程度シーリングとしての機能を果たす。
【0013】
引用文献2に開示されているシステムの大きな利点は、システムを設置する作業者がシーリングの十分性を「現場で」容易に評価できることである。熱管理の考慮事項及び/又は熱膨張の考慮事項、即ち、モデル化された火災の下での封止システムの性能を決定する要因に基づいて、コンピュータを使用するオフィス内で、設置前に設計することは、必要でない。封止システムの安定性が、付近の火災に曝される前に、即ち、シーリングの設置中にひとたび確立されると、付近の火災に曝される間の安定性は殆ど変化しない。換言すれば、機械的安定性及び熱絶縁性は、付近の火災に曝される間に、おおむね維持される。シーリングシステムは、所定の場所に留まり、シーリングシステムとして機能し続ける。導管から外れるシーリングシステムの部分はない。
【0014】
特許文献2に開示されているシステムは、熱絶縁が導管又は導管を組み込む構造要素に適用されない状況にも適用可能である。シーリングシステムは非常に高温に耐え得ることが判明した。
【0015】
しかしながら、既知の適用されているシステムは、比較的長い設置時間を必要とし、通常、18cmの長さの大きな導管を最低限必要とする。
【発明の概要】
【0016】
本開示の第1の態様によれば、より速い設置の結果であり且つ現在使用されている導管よりも小さい導管を提供することが目的である。
【0017】
本開示のこの第1の態様によれば、少なくとも1つのパイプ又はケーブルが延びる導管が提供される。導管は、内壁を有し、少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない導管空間内のシーリングのためのシステムを備える。システムは、少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない空間内にクランプされる支持構造を導管内に提供するための少なくとも1つのゴム要素と、内壁と少なくとも1つのパイプ又はケーブルとの間で導管の少なくとも1つの端を封止するための支持構造に対するシール材層とを含む。各ゴム要素は、耐火性加硫ゴムで作られ、熱的に実質的に非膨張性のタイプである。シール材は、耐火性ポリマで作られ、同様に熱的に実質的に非膨張性のタイプである。シール材は、湿気への曝露を受けて加硫可能であるか、或いは加硫される。シール材層は、14~16mmの範囲内の厚さを有し、好ましくは、15mmの厚さを有し、各ゴム要素は、長手方向要素であり、各長手方向要素は、12~14cmの範囲内の長さを有し、好ましくは、13cmの長さを有する。有利には、耐火性ポリマの加硫は、通常20mm以上の当該技術分野で知られており、承認されており、且つ塗布(適用)されている層の厚さと比較して、層の厚さが減少した結果、より一層速く起こった。驚いたことには、シーリング層が塗布後により急速に硬化するのみならず、それはより良いスール材にもなった。よって、期待に反して、減少された厚さは、より厚いシール材層と比較して、より良いシール材層をもたらす。効果は14~16mmの範囲内の任意の厚さで顕著であるが、本開示に至った開発は、シール材層の最適厚さが15mmであることを示した。
【0018】
結果的に、これは、導管が各端で20mmのシール材層を収容するように長いことを必要としないことを意味する。シール材層の厚さのあらゆる減少は、シール材層が導管の両端に塗布(適用)されるならば、導管の長さの2倍の減少をもたらし得る。
【0019】
シール材層は、シール材としてより良いので、支持構造も、導管の軸方向においてより小さい寸法を有し得る。第1に、シール材層とその支持構造は、互いにより良く接着し、従って、より強力な接続を有し、導管内のシーリングシステムの安定性を全体的に高める。第2に、以下により詳細に説明するように、支持構造へのシール材の接着性がより良いので、支持構造内に捕捉される空気は、たとえあるとしても、極めて僅かの環境との相互作用を有し、従って、先行技術の類似の導管内に存在する空気ポケットと比較して、より一層良い熱絶縁体である。
【0020】
より短い支持構造(導管の長さ方向における短さ)及びより薄いシール材層の可能性の結果として、導管の長さ寸法を減少させることも可能である。即ち、軸方向において、導管はより短くあることができ、よって、導管が組み込まれる構造要素によって分割される区画内の空間をより少ない程度で占有することができる。
【0021】
試験は、付近の火災に曝されると、シール材層が支持構造を保護することを示した。シール材層は炭化層中で変化したことがあるが、支持構造上では、たとえあったとしても、顕著な炭化は殆ど見られなかった。
【0022】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、「シール材層が厚ければ厚いほど、シーリングの完全性はより良い」という従来的な見識に反して、より薄いシール材層が実際により良い結果をもたらすことが見出された。それは、より薄い層を所与とすると、加硫に必要な時間が短い結果であると考えられる。更に、より良いシール材層を備えるならば、より短い支持構造を有することも可能である。より長い支持構造はより強力にクランプされると常に考えられていた。しかしながら、従来的な見識に基づく期待に反して、より短い支持構造、より薄いシール材層、よって、より短い導管で、より長い支持構造、より暑いシール材層、よって、より長い導管と同等又はより良い結果を達成し得ることが判明した。
【0023】
本開示の第2の態様に従った目的は、熱がパイプ又はケーブルを通じて導管内に進むときに、より高い持続性を有する、導管を提供することである。
【0024】
本開示の第2の態様によれば、少なくとも1つのパイプ又はケーブルが延びる導管が提供される。導管は、内壁を有し、少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない導管空間内のシーリングのためのシステムを備える。システムは、少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない空間内にクランプされる支持構造を導管内に提供するための少なくとも1つのゴム要素と、内壁と少なくとも1つのパイプ又はケーブルとの間で導管の少なくとも1つの端を封止するための支持構造に対するシール材層とを含む。各ゴム要素は、熱的に実質的に非膨張性のタイプの耐火性加硫ゴムで作られる。シール材は、同様に熱的に実質的に非膨張性のタイプである耐火性ポリマで作られる。ポリマは、湿気への曝露及び室温で加硫可能であるか或いは加硫される。ゴム要素の少なくとも1つは、マントル壁を含む。マントル壁の少なくとも1つは、ゴム要素の全長に亘って延びるスリットを備える。このゴム要素は、スリットの長さに亘って導管内のパイプ又はケーブルを取り囲み、よって、導管内のパイプ又はケーブルと密接に接触することができる。そのような耐火性加硫ゴム要素は、導管内に捕捉される空気に対して、ヒートシンクとして働くことが判明した。従って、熱は、熱的に非常に安定したゴム要素内に吸収される。これは導管内のシーリングシステムの全体的な熱絶縁性を向上させる。この理由により、導管は、導管の軸方向において減少させられた長さを有することができる。よって、導管は、導管が部分的に延びる区画内のそれほど多くの空間を必ずしも占めない。
【0025】
本開示の第3の態様によれば、方法がより短い導管を可能にするように、内壁を有し且つ導管を通じて延びる少なくとも1つのパイプ又はケーブルを有する導管をシールする方法を提供することが目的である。
【0026】
本開示の第3の態様によれば、請求項8に従った方法が提供される。
【0027】
本開示の第4の態様によれば、方法がより短い導管の使用を可能にするように、内壁を有し且つ導管を通じて延びる少なくとも1つのパイプ又はケーブルを有する導管を封止する方法を提供することが目的である。
【0028】
本開示の第4の態様によれば、請求項9に従った方法が提供される。
【0029】
明瞭性のために、熱的に実質的に非膨張性のタイプのゴム又はポリマは、ゴム又はポリマ自体が加熱時に膨張する程度よりも大きい程度までゴム又はポリマを加熱時に膨張させる成分のないゴム又はポリマを含むことが指摘される。
【0030】
本開示は、添付の非限定的な図面を参照して、より詳細な例を更に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示に従った導管の例を断面で概略的に示している。
図2】本開示に従った導管の例を断面で概略的に示している。
図3】シーリングシステムを設置する間の本開示に従った方法の例のステップを斜視半分解図で示している。
図4】シーリングシステムを設置する間の本開示に従った方法のステップの例を斜視図で示している。
図5】シーリングシステムを設置する最終段階における本開示に従った方法のステップの例を斜視図で示している。
図6】本開示に従った導管の例を斜視半分解図で示している。
図7】本開示に従った導管の例を断面で概略的に示している。
図8】本開示に従った導管の例を断面で概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面において、同等の部品は、同等の参照符号を備える。
【0033】
図1は、本明細書において通過システムTS(transit system)と呼ぶ導管の断面の例を概略的に示している。通過システムTSは、通常、実質的に板形状の構造要素Pに組み込まれる。この板形状の構造要素Pは、構造要素Pによって分離されるような2つの空間SI、SIIの間に位置することができる。板形状の構造要素は、例えば、隔壁の一部、船内若しくは船上の壁若しくはデッキ、又は例えば実質的に鋼のような金属で構成される他の構造物であってよい。通過システムTSは、この例では熱伝導性を有する材料で作られた、導管壁1を含む。導管壁1は、構造要素Pの開口内に溶接されてよい。この例に示すように、導管は実質的に板形状の構造要素Pに組み込まれるが、導管が、例えば、コンクリート壁又は任意の他の材料で作られた分離部に組み込まれることも可能である。
【0034】
導管を通じてパイプ2が延びる。後に議論するように、パイプ2の代わりに、1つ又はそれよりも多くのケーブルが開口を通じて延びることも可能である。パイプ2は、鋼、銅、銅ニッケル合金、又は、例えば、いわゆるガラス繊維強化プラスチック(GRP)パイプで作られてよい。パイプ2によって占有されていない空間(通常、導管1の内壁3とパイプ2との間の環状空間)内にある導管内に設置されるようなシステムは、導管1内に支持構造を提供するための少なくとも1つのゴム要素4を含む。1つ又はそれよりも多くのゴム要素4は、内壁3とパイプ2との間でクランプ可能である。実際には、よって、支持構造は、導管1内にクランプされる(clamped-in)。クランプされるようなゴム要素4の各々は、全て支持構造の部分である。システムは、支持構造に対して塗布(適用)するための並びに内壁3とパイプ2との間で導管1の少なくとも一端6を封止するためのシール材層5(sealant layer)を更に含む。図示のように、好ましくは、両端6は、シール材層5によって封止される。シール材層5は、14~19mmの範囲の、好ましくは、14~16mmの範囲の、最も好ましくは、15mmの厚さを有する。この開示において、層の厚さは、導管内でクランプされるような支持構造の端と導管の最も近い端との間の距離によって規定されてもよい。
【0035】
各ゴム要素4は、熱的に実質的に非膨張性のタイプの耐火性加硫ゴムで作られる。ゴムは、好ましくは、シリコンベースのゴムである。このゴムは、広く商業的に入手可能な成分に基づいて当業者に知られている標準的な方法によって作られることができる。シール材層5は、湿気への曝露を受けて室温で加硫可能であり且つ熱的に実質的に非膨張性のタイプでもある耐火性ポリマで作られる。ポリマは、好ましくは、シリコンベースのポリマである。また、そのようなシール材(シーラント)は、当業者に知られている標準的な方法によって、広く商業的に入手可能な成分に基づいて、作られることができる。熱的に実質的に非膨張性のタイプのゴムは、加熱時にゴム自体がそのような加熱時に膨張する程度よりも大きい程度までゴムを膨張させる成分のないゴムを含む。同様に、熱的に実質的に非膨張性のタイプのポリマは、加熱時にポリマ自体がそのような加熱時に膨張する程度よりも大きい程度までポリマを膨張させる成分のないポリマを含む。
【0036】
本開示の技術における使用に適したスリーブの形態のゴム要素の例は、商品名NOFIRNOの下で出願人から入手可能である。同様に、シール材は、商品名NOFIRNO Sealantで入手可能である。
【0037】
好ましくは、各ゴム要素4は、10~16cmの範囲、好ましくは、12~14cmの範囲内の長さlを有する長手方向要素である。最も好ましくは、長さlは、13cmである。これはそのような要素をパイプ2に平行に導管内に容易に配置することを可能にする。シーリングシステム(sealing system)が1つのゴム要素を含むとき、これはパイプ2と同軸の配置を可能にするように長手方向スリットを備える実質的に環状の要素であり得る。しかしながら、ゴム要素は、パイプ2の周りに巻き付けられ、パイプ2及び導管の長手方向に押し込まれ、内壁3とパイプ2との間の空間に押し込まれ得る、要素であることも可能である。図1に示すように整列させられた長手方向ゴム要素4は、シール材層5を塗布(適用)し得る支持構造を提供する。圧力が導管及びパイプ2の長手方向に加えられると、1つ又はそれよりも多くのゴム要素4によって提供されるような支持構造は、シール材5に対する良好な支持をもたらす。
【0038】
図2は、本開示に従った導管を構造要素Pに対して非対称に位置付け得ることも示している。
【0039】
図3図5は、内壁を有し且つ導管を通じて延びる少なくとも1つのパイプ又はケーブルを有する導管を封止する方法の例として、本開示に従ったシーリングシステムをパイプ2が延びる導管内にどのように設置し得るかを示している。
【0040】
そのような方法は、少なくとも1つのパイプ又はケーブルによって占有されていない導管内の空間内に少なくとも1つのゴム要素を配置することを含むので、それによって、クランプされる支持構造が提供される。この支持構造は、導管のそれぞれの端を封止するために支持構造に対して導管内にシール材層を塗布(適用)するために、支持構造の各側で、空間が利用可能なままであるようにされる。方法は、導管のそれぞれの端を封止するために、支持構造に対してシール材層を塗布(適用)することを更に含む。シーリング層(sealing layer)は、14~19mmの範囲、好ましくは、14~17mmの範囲、最も好ましくは、15mmの厚さを有する。先に示したように、シール材層の厚さは、導管内でクランプされるような支持構造の端と導管の最も近い端との間の最短距離によって規定されることもある。
【0041】
これらの図には、ゴム要素4が管形状を有する長手方向ゴム要素であってよいことが示されている。ゴム要素4の各々は、好ましくは、マントル壁を含む。マントル壁自体が閉じられるとき、即ち、非分割(non-split)にあるとき、管状ゴム要素の強度は、マントル壁が長手方向スリットを備える状況に比べてより強力である。マントル壁の厚さは、好ましくは、2~5mmの範囲であり、更に良好には、3~4mmである。例えば、断面が正方形、三角形、又は異なる角度の形状であるように、管状要素4を提供することが可能であるが、楕円形又は円形の断面のような、より丸い断面を有することも可能である。好ましくは、ゴム要素の各々は、円筒形である。この形状は、管状要素4が各横方向において等しく強いのを助ける。導管1がそのような長手方向の円筒形の管状ゴム要素でひとたび充填されると、これらの要素4で形成されるような支持構造は、導管1の内壁3とパイプ2との間の空間にそれ自体によってクランプされることができる。これは支持構造の強度及び剛性を高める。よって、支持構造は、導管1を通じて延びるようなパイプを支持することもできる。この支持構造を構築するために使用される材料のまさに性質の故に、この支持構造によって機械的衝撃を容易に吸収することができる。特に横方向における振動は、支持構造によって完全に減衰される可能性が最も高い。同時に、長手方向において支持構造によってもたらされる強度は極めて高い。本発明に従ったシーリングシステムによって、音を鈍らせることができ、よって、吸収することができる。
【0042】
強度は、ゴム要素4が内壁3とパイプ2との間の空間内にクランプされる堅固さ(tightness)に伴って増大する。ゴム要素4の軸方向におけるゴム要素の相対運動は、それらの接触面で生じる比較的高い摩擦力によって抑制される。また、ゴム要素は、低圧縮セット(low compression set)を有し、ゴムが受けることができ且つゴムがその元の寸法に依然として完全に緩和して戻ることができる最大変形に関連する特性を有する。圧縮セットは、比較的低く、約40%であるので、もたらされる締付け(クランピング)は、シーリングシステムの耐用寿命の間で維持されることができる。
【0043】
支持構造の良好な機械的特性の他に、そのような構造は、互いに完全に隔離され、特にシール材層5が導管1の両端6で塗布(適用)されるときに、支持構造も非常に良好な熱絶縁体になるように両端で封止される、多数のチャネルを含むことも理解されなければならない。接続されないチャネルによって形成される空気キャビティも、支持構造自体の高い熱絶縁性を増す。
【0044】
多数の円筒形状のゴム要素が16~40mmの範囲内の外径を有するときに、最適な支持構造を形成し得ることが判明した。この外径に依存して、内径は、10~32mmの範囲内にあることが好ましい。難燃性加硫シリコンゴムは、70~78ショアAの範囲内の硬度を有することが好ましい。非常に適した硬度は、74ショアAである。これらのゴム要素の容易な製造、注文、貯蔵、設置のために、要素は、全て同じ形状を有することが好ましい。しかしながら、要素は、2つのタイプのゴム要素を含むことが可能である。全ての要素は、長手方向に類似の寸法を有することがあるが、2つのタイプの一方の部材及び2つのタイプの他方の部材は、横方向寸法が異なることがある。これは、容易な取付けに関してのみならず、最適な特性を備える支持構造を得ることに関しても、最適な方法において導管をゴム要素4で充填することを可能にする。
【0045】
管状ゴム要素の使用から以下のような構造的特性を有する支持構造は、例えば、特許文献3の図2に示すような形状を有する長手方向要素を使用することによって達成されることがあることも指摘される。
【0046】
図4に示すように、ひとたび内壁3とパイプ2との間の空間がゴム要素4で完全に充填されると、耐火性ポリマ、好ましくは、シリコンベースのポリマで作られ、湿気への曝露を受けて室温で加硫可能な、シール材層5が、ゴム要素4によって形成されるような支持構造に対して、内壁3とパイプ2との間の導管の端6に塗布(適用)される。
【0047】
シール材層は、シール材の外層8が、約1~2時間の期間内に、しばしばより速く、大気湿度への曝露を受けて硬化させられるように、作られることができる。導管1の端6を封止するために塗布(適用)されるときに、並びに1~2時間以内(又は更に速く)に大気湿度への曝露を受けて加硫されると、シール材は、約40~45ショアAの硬度を有する。
【0048】
図5に示すように、シール材層5が完全に硬化させられる、即ち、加硫される前に、シーリング材料が管状要素4内に並びに管状要素4の間に行き着くように、シール材を手動で導管内に更に押し込むことが可能である。もちろん、構造に対して塗布(適用)されときには、特にシール材を塗布(適用)するためにいわゆる高圧アプリケータが使用されるときには、シール材は、支持構造のキャビティ内に既に行き着いていることがある。これは図6にある程度示されている。導管1内へのシール材のこの押込みは、シール材が導管の外端6と面一になるまで継続してよい。シール材層5の硬化後、支持構造及びシール材層5は、機械的に単一構造であることができる。支持構造を形成するゴム要素4及び導管1の内壁3の両方へのシール材層5の付着は、非常に良好である。
【0049】
導管の一方の側で付近の火災が導管のその側を膨大な量の熱に曝しているときのシーリングシステムの性能も非常に良好である。先ず、付近の火災への曝露後の最初の1時間以内に、火災が発生した側面からシーリングを通る煙はない。同様のことが臭いにも当て嵌まる。実際には、付近の火災への導管の一方の側の曝露後の最初の1時間以内に、火災が導管の他方の側で発生していることを明らかにするのは、金属導管及び鋼構造要素Pの赤熱色(red-hot colour)のみである。
【0050】
火災に曝されていない側では、1時間後に、シーリングシステムは、(両方とも鋼の)導管1の内壁3とパイプ2との間の中間で、約160℃だけ上昇した。シリコンゴム及びシール材は400℃以下の温度では発火しないので、シーリングシステムのこの部分は完全に無傷のままである。シーリングの機械的安定性も、大部分は導管の他の側で発生するような火災によって影響されない。各ゴム要素4及びシール材層は、45%以上の酸素指数を有することが好ましい。既述のような条件の間に、本発明に従ったシーリングシステムのそのような実施形態は、導管の両側で付近の火災への曝露の間に消耗されないことが判明した。(熱が構造要素P及びパイプ2を介して導管に入ることができるように)導管及び/又は構造要素Pに如何なる絶縁も適用することなく、シーリングシステムは、導管を通過する如何なる煙又は臭いも有することなく並びに導管を貫通して非曝露側に至る如何なる火炎も有することなく、導管の1つの端で火災への曝露に1時間よりも長く耐えることができる。シーリングシステムによって提供されるようなそのような優れた絶縁を維持することができる時間は、絶縁材料を導管及び/又は構造要素Pに対して適用するときに長くすることができる。そのような材料は、図6に参照番号8によって示されており、通常、ミネラルウールの形態にある。しかしながら、このシステムは、絶縁されていない構造要素Pにおける使用のために主に発明されている。絶縁が適用されることが確実であるならば、導管は長手方向においてより短くあることができる。
【0051】
シーリングシステムは、好ましくは、ゴム要素4及び/又はシール材5が黒色と対照的な色を有するようなものである。これは、導管1の一方の側が付近の火災に曝された後に、シーリングシステムの迅速な識別を可能にする。これは、火災の重篤度を評価することを可能にし、シーリングシステムが非常に高い温度に曝される時間を評価することを可能にする。換言すれば、それは熱曝露に関して火災の間に何が起きたかを理解することを可能にする。黒色と対照的な色は、好ましくは、赤褐色であり、テラコッタ(terracotta)のようなものである。この色は、完全に黒くされて燃え尽きた区画内でさえ、非常に容易に遡って調べられる。
【0052】
図7は、本開示に従った導管の別の例を示している。
【0053】
通過システムTSは、ケーブル2が延びる導管の例として示されている。導管は、導管壁1と、内壁とを有する。導管は、ケーブル2によって占有されていない導管空間内のシーリングのためのシステムを備える。システムは、ケーブル2によって占有されていない空間にクランプされる支持構造を導管内に提供するための少なくとも1つのゴム要素4を含む。システムは、内壁とケーブル2との間の導管の少なくとも1つの端6を封止するために、支持構造に対するシール材層5を更に含む。各ゴム要素4は、熱的に実質的に非膨張性のタイプの耐火性加硫ゴムで作られる。シール材は、室温及び湿気への曝露で加硫可能であるか或いは加硫された耐火性ポリマで作られる。ポリマは、熱的に実質的に非膨張性のタイプのものでもある。ゴム要素10は、マントル壁を含む。マントル壁は、ゴム要素10の全長に亘って延在するスリット(図示せず)を備える。ゴム要素10は、好ましくは、長手方向要素であり、好ましくは、管状である。理想的には、ゴム要素10とケーブル2のシーティング9(sheeting)との間で接触が得られるように、ゴム要素10をケーブル2の周りに配置することができる。
【0054】
図8は、本開示に従ったシーリングシステムを備える導管又は通過システムTSを示している。シーリングシステムは、「複数の貫通部」、即ち、1つよりも多くのパイプ(又はケーブル)が伸びる導管に適している。もちろん、より多くのケーブル2が導管を通じて延びることが可能である。要素11は、ケーブル2の周りのスリーブの配置を可能にするように、スリーブの長さに亘って延びるスリットを有する単一スリーブのタイプであってよい。ゴム要素4は、接合されたゴム要素4のユニットで提供されてよい。単一のゴム要素は、接合された要素のユニットから容易に引き離されてよい。そのようなゴム要素は、依然としてスリーブの形状を有してよい、即ち、長手であり且つ管状であってよい。スリーブ部材の1つのユニットに一緒に接合される耐火性スリーブ部材の例は、特許文献4に開示されている。
【0055】
図7及び図8に示すような導管は、以下の方法を用いて提供される。ゴム要素の全長に亘ってスリットを有するマントル壁を備えるゴム要素が、導管を通じて延びるケーブルのうちの1つ又はそれよりも多くの周りに配置される。更に、多数のゴム要素が、1つ又はそれよりも多くのパイプ又は1つ又はそれよりも多くのケーブルによって占有されていない導管内の空間内に配置される。パイプ又はケーブルによって占有されていない空間内により多くのゴム要素を配置した後に、最終的に、クランプされる支持構造が提供される。導管内の支持構造の位置決めは、好ましくは、その各側で、導管のそれぞれの端を封止するために支持構造に対して導管内にシーリング層を塗布(適用)するために、空間が利用可能なままであるような位置決めである。非常に安定的な支持構造がひとたび得られると、導管のそれぞれの端を封止するために、シール材層が支持構造に対して塗布(適用)される。
【0056】
本開示に従った導管の例は、軸方向において15~17cmの範囲内の長さを有する。好ましくは、これらの導管は、16cmの長さを有する。
【0057】
本開示に従った導管の例は、複数のケーブル又は複数のパイプに適しているのみならず、パイプ及びケーブルの混合物、並びにプラスチック及び金属のような異なる材料のパイプ及び/又はケーブルにも適していることが更に指摘される。
【0058】
本開示は、図及び図面に基づいて上述した例のいずれにも限定されない。多くの修正が可能である。
【0059】
特に、ゴム要素4は、図示したもの及び議論したものとは異なる形状を有してよい。多数の管状要素を一緒にクランプすることによって得られるような所定の構造のブロックを提供し、導管内への挿入に適した大きさのセグメントにされたそのようなブロックを切り出すことが可能である。そのような変形の全てが添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の枠組み内に入ることが理解されよう。
【0060】
導管は、金属又は金属合金で作られてよい。その場合、熱は、導管材料を介して導管内にも伝達される。代替的に、導管は、コンクリート壁又は天井にある貫通穴を含んでよい。その場合には、より少ない熱が導管内に伝達される。導管は、熱を遮断する断熱材料内に形成されるか或いはそのような断熱材料で作られてよい。導管は、好ましくは、難燃性コーティングで被覆された、水和性フィロ珪酸塩ミネラル材料(hydrous phyllosilicate mineral material)を含む、内壁を有してよい。代替的に又は追加的に、導管がガラス充填硬質エンジニアリングプラスチック(glass-filled hard engineering plastic)を含む内壁を有することも可能である。これらは、しばしば大きなフランジを有するプレハブ導管であり、軽量であり、例えば、フランジと壁との間に耐火性シール材を用いて接着することによって、適用が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【文献】国際公開第2006/097290号
【文献】国際公開第2008/104237A1号
【文献】国際公開第03/067136号
【文献】欧州特許出願公開第2116280A1号明細書
図1
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図3
図4
図5
図6
図7
図8