(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】肌の色素を除くための、モクレン、ビャクシン、またはスミレから抽出したアブソリュートの化粧品としての使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9761 20170101AFI20230529BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230529BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
A61K8/9761
A61K8/9789
A61Q19/02
(21)【出願番号】P 2020523725
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 FR2018053455
(87)【国際公開番号】W WO2019122748
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-21
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506377259
【氏名又は名称】ロベルテ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペガール アントニー
(72)【発明者】
【氏名】コーマン カリン
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2008-0104760(KR,A)
【文献】特開2012-171960(JP,A)
【文献】特開2013-166713(JP,A)
【文献】特開2002-003336(JP,A)
【文献】特開2001-048773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/9761
A61K 8/9789
A61Q 19/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌の色素を除くための、モクレンから得られるアブソリュート、ビャクシンから得られるアブソリュート、またはスミレから得られるアブソリュートから選択される少なくとも2つのアブソリュートの化粧品としての使用
であって、
モクレンから得られる前記アブソリュートは、モクレンの樹皮から得られるアブソリュート、ビャクシンから得られる前記アブソリュートは、ビャクシンの果実から得られるアブソリュート、及び、スミレから得られる前記アブソリュートは、スミレの葉から得られるアブソリュートである、使用。
【請求項2】
請求項
1に記載の使用であって、モクレンから得られる前記アブソリュートは、Magnolia officinalisの樹皮から得られる
、使用。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の使用であって、ビャクシンから得られる前記アブソリュートは、Juniperus communisの果実から得られる
、使用。
【請求項4】
請求項
1から請求項3までのいずれか1項に記載の使用であって、スミレから得られる前記アブソリュートは、Viola odorataの葉から得られる、使用。
【請求項5】
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の使用であ
って、モクレンから得られる前記アブソリュートと、ビャクシンから得られる前記アブソリュートを組み合わせる、使用。
【請求項6】
請求項1
、請求項
2及び請求項
4のいずれか1項に記載の使用であ
って、モクレンから得られる前記アブソリュートと、スミレから得られる前記アブソリュートを組み合わせる、使用。
【請求項7】
請求項1、請求項
3及び請求項
4のいずれか1項に記載の使用であ
って、ビャクシンから得られる前記アブソリュートと、スミレから得られる前記アブソリュートを組み合わせる、使用。
【請求項8】
請求項1から請求項
7までのいずれか1項に記載の使用であ
って、モクレンから得られる前記アブソリュートに、ビャクシンから得られる前記アブソリュート及びスミレから得られる前記アブソリュートを組み合わせる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の色素を除くための、モクレン、ビャクシン、またはスミレから得られる1つ又は複数のアブソリュートの、化粧品としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肌の色素沈着は、基本的には、メラニン色素における含有量に起因する。メラニンは表皮の根底においてメラニン形成細胞により生産され、その後ケラチン生成細胞へと移送され、表皮の最上層へと到達する。
【0003】
メラニン形成における2つのステップのうちの、最初のステップにおける鍵となる酵素は、チロシナーゼ(モノフェノール,L-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA):酸素酸化還元酵素EC1.14.18.1)である。この酵素は、L-チロシンをL-DOPA(o-ジフェノール生産物)へとヒドロキシル化させることを可能とし、そしてこれはその後、酸化されてドーパキノンとなる。
【0004】
内在的な因子(ホルモン、転写因子)、および外在的な因子(UV)により制御されているものの、メラニン形成の崩壊は生じ得る。そのため、色素沈着の消失(白斑、眼皮膚白皮症)が生じたり、或いは反対に、褐色斑(妊娠黒皮症)又は黒子(染み)などの高色素沈着が生じたりする。
【0005】
これらの美容上において望ましくない高色素沈着を除くために、美白化合物を探すべく数多くの研究がなされきた。美白化合物には、メラニンに対して有害な物質、メラニンのケラチン生成細胞への移送を阻害する物質、チロシナーゼ阻害物質などが含まれる。しかしながら、見つけられた化合物は、アレルギーを起こしたり、突然変異の発生率を高めたり、発癌性を有していたり、生殖毒性を有していたりなど、有害であることが分かった。これは例えば、色素を除くための物質として用いられる、コウジ酸、すなわち銅キレート化によるチロシナーゼ阻害物の場合の話である。異論のあるところだが、コウジ酸の禁止は、日本では既に発効されており、ヨーロッパでも現在のところ議論がされているところである。
【0006】
研究には、真菌であるツクリタケ由来の精製した酵素が一般的に用いられるが、ヒト由来のチロシナーゼと比して、非常に異なる結果を招くこともあるだろう。
【0007】
そのため、肌の色素を除くことが可能な、化粧品における有効成分を探求している状況下において、チロシンからメラニンが生成されるのを誘発しているチロシナーゼを阻害することにより、メラニン生成を阻害することが可能な生産物であって、かつ、上述の欠点のいずれをも特色として持っていないような生産物を、特定する試みは、興味深いものである。
【0008】
植物由来の抽出物、特にコウブツからの抽出物、より特定的にはオオヤマレンゲ由来の又はマルノリアオフィシナリス由来の抽出物を、化粧品として使用して、肌を美白化することが知られている。化粧品に使用される植物由来の抽出物は、従来、極性溶媒を用いた抽出によって得られ、それにより水に対する親和性を有する分子が得られていた。とりわけ、精油は一般的に、水蒸気蒸留によって得られていた。
【0009】
アブソリュートは、一般的には、植物材料から得られる抽出物であり、香水産業において広く使われる。化粧品において一般的に用いられる植物抽出物とは大きく異なって、アブソリュートは、1つの抽出物(蝋成分)をアルコール変換することにより得られ、蝋成分それ自体も,揮発性有機溶媒から抽出することにより得られる。アブソリュートには、通常の化粧品用の植物抽出物に含まれる物とは異なる分子が含まれている。より具体的には、アブソリュートは蝋成分から得られ、蝋成分は一般的に、新鮮な植物(花、根、葉、樹皮、果実、その他)を炭化水素揮発性有機溶媒中で浸漬することにより調整される。炭化水素揮発性有機溶媒とは、例えば、ヘキサン若しくは石油エーテル、又はヘキサン/酢酸エチル、ヘキサン/酢酸イソプロピル、ヘキサン/イソプロピルアルコール、シクロヘキサン/酢酸エチル、シクロヘキサン/酢酸イソプロピル、シクロヘキサン/イソプロピルアルコールなどのような双溶媒混合物、又は、直鎖状の若しくは炭素数6の環状炭化水素と、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、若しくはイソプロピルアルコールとを、臨界超過状態のCO2に合わせた、若しくはブタンまたは1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC―134a)などの液化したガス(若しくは複数の液化したガスの混合物)に合わせた、混合物である。その後、溶媒は蒸発されてそれにより蝋成分と呼ばれるペーストが生産される。この蝋成分には、植物の、芳香性の化合物、ワックス(蝋)、および油性化合物が含まれる。
【0010】
蝋成分は、溶液の濁りの原因となる蝋を含み、香水中において蝋を僅かに溶解可能とするが、そのような性質のため、アルコール性の香水には用いることができない。一方、石鹸には用いることができる。
【0011】
したがって、蝋成分の、少なくとも一部の除去が、必要である。この除去は、フロスティングおよび濾過の過程により達成される。蝋成分にアルコールを添加した後、得られたアルコール溶液は、約30℃~60℃の温度の下で強く攪拌されて均質化される。そしてその後、-5℃~-18℃の間にまで冷却される。それにより、蝋成分から外へ出された蝋は、沈殿および濾過によって除去することができる。その後、アブソリュートを得るために、アルコールが蒸発される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、モクレン、ビャクシン、またはスミレのアブソリュートを、香水に使用することが知られている。しかしながら、これらのアブソリュートを化粧品に用いること、とりわけ肌の色素を除くために用いることは、未だに報告されていないし、示唆もされていない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
しかし、驚くべきことに、モクレン、ビャクシン、またはスミレから得られるアブソリュートが、とりわけ興味深いチロシナーゼ阻害特性を有することが分かってきた。この特性により、肌の色素を除くため(又は肌を美白するため)の化粧品としての使用が可能である。
【0014】
上述のように、本発明の目的は、モクレン、ビャクシン、またはスミレから抽出した1つ又は複数のアブソリュートの、肌の色素を除くための化粧品としての使用である。
【0015】
本発明の観点では、「アブソリュート」とは、植物材料のあらゆる抽出物を指すと理解されるべきである。アブソリュートは、当該技術分野の当業者によって知られるあらゆる方法(例えば、Girard L「Etat actuel de la question des concretes et des absolues de concretes」Industries de la parfumerie, Vol. 2,1947年1月1日、第183-262頁)により、とりわけ以下の方法により、得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、(A)コントロールとしてのマウス由来の細胞B16-F10の写真と、(B)モクレンのアブソリュート/ビャクシンのアブソリュート/スミレのアブソリュート(1/1/1)を入れて培養した場合の前記細胞の写真と、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[ペースト状の蝋成分の調整]
・新鮮な植物材料を炭化水素揮発性有機溶媒中で浸漬することにより調整される。炭化水素揮発性有機溶媒とは、例えば、ヘキサン若しくは石油エーテル、又はヘキサン/酢酸エチル、ヘキサン/酢酸イソプロピル、ヘキサン/イソプロピルアルコール、シクロヘキサン/酢酸エチル、シクロヘキサン/酢酸イソプロピル、シクロヘキサン/イソプロピルアルコールなどのような双溶媒混合物、又は、直鎖状の若しくは炭素数6の環状炭化水素と、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、若しくはイソプロピルアルコールとを、臨界超過状態のCO2に合わせた、若しくはブタンまたはHFC134aなどの液化したガス(若しくは複数の液化したガスの混合物)に合わせた、混合物である。
【0018】
・その後、溶媒または溶媒混合物が蒸発される。
【0019】
[アブソリュートを得るために、蝋成分に含まれる蝋の少なくとも一部を除去することは、以下のようにして行われる。]
・アルコールを添加する。
【0020】
・約30℃~60℃の温度で強く攪拌することにより、溶液を均質化する。
【0021】
・溶液を-5℃~-18℃の間にまで冷却し、沈殿および濾過により、蝋成分から外へ出された蝋を除去する。
【0022】
・アルコールを蒸発させる。
【0023】
アブソリュートを生産する方法には、必要な場合には以下のステップが続く。すなわち、当該技術分野の当業者にとって公知のあらゆる技術により、アブソリュートを精製するステップである。精製は、特に、分子蒸留を用いて、或いはイオン交換樹脂を用いて行われる。
【0024】
アブソリュートは、植物の考えられるあらゆる部分、すなわち例えば、芽、実、針状葉、花、根、樹液、樹皮、果実、茎、又は葉などより得られる。
【0025】
加えて、本発明の観点では、以下のように理解される。
【0026】
「モクレン」という場合には、モクレン科、とりわけMagnolia officinalisを指すものと理解される。
【0027】
「ビャクシン」という場合には、ビャクシン科、とりわけJuniperus communisを指すものと理解される。
【0028】
「スミレ」という場合には、スミレ科、とりわけViola odorataを指すものと理解される。
【0029】
「肌の色素を除くための化粧品としての使用」という場合には、肌の美白化及び/又は肌のトーンの均質化を実現するための、生産物のあらゆる治療的でない使用を指すと理解される。
【0030】
最後に、本発明の観点では、他の意味をなすことが示唆されていない限り、%で表現される比率は、考えられる存在の全体的な重量に対する重量%に相当する。
【0031】
したがって、本発明の目的は、肌の色素を除くための、モクレン、ビャクシン、またはスミレから抽出した1つまたは複数のアブソリュートの化粧品としての使用である。
【0032】
好ましくは、前記アブソリュートは、次に掲げる特徴の全部又は一部を有する。
【0033】
モクレンから得られるアブソリュートは、モクレンの樹皮から得られ、より好ましくはMagnolia officinalisの樹皮から得られ、
ビャクシンから得られるアブソリュートは、ビャクシンの果実から得られ、より好ましくはJuniperus communisの果実から得られ、そして/又は
スミレから得られるアブソリュートは、スミレの葉から得られ、より好ましくはViola odorataの葉から得られる。
【0034】
また、好ましくは、本発明の観点で用いられるアブソリュートは、蝋成分から得られ、蝋成分それ自体がヘキサンでの抽出により得られるものである。
本発明の観点では、前記のアブソリュートはそれ単独で用いられてもよく、あるいは組み合わせとして用いられてもよい。なお、前記のアブソリュートのうちの複数を組み合わせた場合に、相乗作用が観察されている。上述のように、本発明の好ましい目的は、肌の色素を除くための、アブソリュートの以下に掲げる組み合わせのいずれか1つの、化粧品としての使用である。
【0035】
既に定義したとおりのモクレンから得られるアブソリュートと、既に定義したとおりのビャクシンから得られるアブソリュートと、の組み合わせ。
【0036】
既に定義したとおりのモクレンから得られるアブソリュートと、既に定義したとおりのスミレから得られるアブソリュートと、の組み合わせ。
【0037】
既に定義したとおりのビャクシンから得られるアブソリュートと、既に定義したとおりのスミレから得られるアブソリュートと、の組み合わせ。
【0038】
既に定義したとおりのモクレンから得られるアブソリュートと、既に定義したとおりのビャクシンから得られるアブソリュートと、スミレから得られるアブソリュートと、の組み合わせ。
【0039】
したがって、本発明の観点により示されたアブソリュートは、色素を除く効果を有するために、化粧品として使用される。この目的のために、これらのアブソリュートは、処理に適した、特に肌への(局所的な)適用に適した、あらゆる生薬の形で、形成される化粧品の成分として組み込まれる。
【0040】
本発明の観点で用いられる抽出物を含む化粧品の混合物は、液体、ペースト、又は固体状に形成されていてもよく、より特定的には、軟膏、クリーム、ミルク、ポマード、粉、濡れた綿球(濡れナプキン)、溶液、ゲル、スプレー、フォーム、懸濁液、又はスティック状に形成されていてもよい。あるいは、制御された解放を可能とするような、脂質の若しくは重合体の小胞、又は、重合体の若しくはゲル化したパッチの、マイクロスフェア又はナノスフェアの懸濁液として形成されていてもよい。或いは、シャワーゲルや入浴剤(ソルト、泡など)のような洗い流される製品として形成されていてもよい。
【0041】
これらの化粧品の混合物は、本発明の観点で用いられるアブソリュートを、混合物全体の重量に対して0.0001%~10%の含有量で含み、より好ましくは、混合物全体の重量に対して0.001%~1%の含有量で含む。
【0042】
これらの混合物を調製する際には、本発明の観点で用いられるアブソリュートは、化粧品分野において従来用いられている賦形剤と共に混合される。
【0043】
本発明の観点で用いられるアブソリュートを含む混合物は、例えばActiscent(登録商標)の範囲の組成のような、化粧品活性を有する付香組成物の形をとるものとしてもよい。
【0044】
本発明の観点で用いられるアブソリュートを含む化粧品の混合物は、クリームの形をとってもよく、上述の少量のアブソリュートが、化粧品学において一般的に用いられる賦形剤と結合されるとしてもよい。
【0045】
これらの混合物は、例えばセルロースエステルやその他のゲル化剤(例えば、ポリアクリル酸、セピーノ(ポリアクリレート)又はグアーガム)のような好適な賦形剤の中においてゲルの形をとっていてもよい。
【0046】
これらの混合物はローション又は溶液の形をとるものとし、本発明の観点で用いられる抽出物は、カプセルで包まれた態様で用いられるものとしてもよい。例えば、マイクロスフェアは脂質、寒天、および水で構成されていてもよい。本発明の観点で用いられる抽出物は、リポソーム、グリコスフェア、シクロデキストリンのようなベクターに組み込まれてもよいし、カイロミクロンに組み込まれてもよいし、マクロ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、或いはマクロカプセル、マイクロカウプセル、ナノカプセルなどに組み込まれてもよいし、粉状の有機ポリマー、滑石、ベントナイト、およびその他の鉱物支持体に吸収されるものとしてもよい。
【0047】
これらのエマルジョンは、高い安定性を有し、使用されるまでの必要な期間のあいだ、組成分の沈殿や相の分離などを生じることなく、0~50℃の温度で保存しておくことが可能である。
【0048】
また、本発明の観点で用いられるアブソリュートを含む化粧品の混合物は、化粧品学において一般的である添加物や補助剤を含むとしてもよい。添加物や補助剤としては、例えば、抗生物質又は芳香物質などが挙げられるが、その他にも、抽出された又は合成された脂質、ゲル化/粘着化ポリマー、界面活性剤、乳化剤、水溶性の若しくは脂質溶解性の活性物質、植物の抽出物、組織抽出物、海洋抽出物、合成活性物質などとしてもよい。
【0049】
本発明の観点で用いられるアブソリュートを含む化粧品の混合物は、効果によって選択される他の補足的な活性物質をも含んでいてもよい。ここでの効果としては、例えば、痩身効果、抗脂肪沈着効果、引き締め効果、保湿効果、老化防止効果、抗菌性効果、抗酸化効果、抗急進効果、癒やし効果、引き締め効果、皺防止効果、キレート効果、金属イオン錯化および封止化効果、緩和効果、くすみ防止効果、赤み防止効果、軟化硬化、毛細管ほぐし効果、ふけ防止効果、毛髪再生促進効果、毛髪脱落阻害効果、毛細管被覆効果、脱毛効果、毛髪再生制限効果、細胞再生促進効果、炎症応答緩和効果、顔の輪郭維持効果だけではなく、日焼け防止、抗刺激性効果、細胞栄養、細胞呼吸、抗脂漏処理、皮膚の緊張状態、毛髪保護などが挙げられる。
【0050】
本発明の観点で用いられる抽出物が含まれる化粧品の混合物が、補足的な活性物質を含有する場合、これらの物質は、その活性を発揮できる程度に十分に高い濃度で、組成物中に含有される。
【0051】
本発明の観点で用いられるアブソリュートが含まれる化粧品の混合物は、好ましくは日常的に用いられ、1日につき1回又は複数回用いられる。これらは、色素を除くことが求められる全ての領域、特に、顔、頭、脚、手、胴、腕、又は背中に適用することができる。
【0052】
最後に、他の観点では、本発明の他の1つの目的は、肌の色素沈着を減少させる方法であり、色素沈着の減少が求められる肌の領域を選択することと、モクレン、ビャクシン、またはスミレから得られるアブソリュートの中から選択される少なくとも1つのアブソリュートを、十分な量だけ前記領域に適用して、前記色素沈着を減少させることと、を含む方法である。
【0053】
本発明は、以下の実施例によって、制限的でない方法により示される。
【0054】
(実施例1-本発明の混合物のインビボでの有効性)
モクレンのアブソリュートの調製
20リットルの化学反応炉において、3kgの破壊されたモクレンの樹皮が、5容積のヘキサンを用いて、環境温度の下で、1時間30分にわたって機械的に攪拌されることにより、抽出された。全量が沈殿するまで30分間放置され、その後、プリーツ型フィルタによって濾過された。濾過した後の樹皮は、5容積のヘキサンを用いて、上で示したのと同様の条件で再度、抽出が行われた。
【0055】
抽出により得られた2つの濾液は、一緒に合わせられ、回転蒸発装置(40℃、30mbarの下)によって減圧濃縮された。
【0056】
186.3gの、緑がかった茶色の、粘性のある液体(固定)が得られた。すなわち、収率は6.2%であった。
【0057】
機械的攪拌を伴う4リットルの化学反応炉で、上述のようにして得られた固体(186.3g)が、6容積の変性アルコールに溶解され、45℃の下で1時間にわたって攪拌された。
【0058】
それから、全量が氷で覆われるまで、冷凍庫で12時間放置された。
【0059】
溶液は、セライトベッドが設けられたシンターにより濾過された。こうして、第1の濾液(S1)が回収された。
【0060】
シンターに残っていた残余の蝋状の物質は、2容積の冷却した変性アルコールによって再び洗浄された。このようにして、第2の濾液(S2)が回収された。
【0061】
2つの濾液は個別に、回転蒸発装置(50℃、30mbarの下)によって減圧濃縮された。10%アルコールの溶液に溶かしたときに不溶物が無いことを確かめるために、個々の濃縮した濾液に対して、溶解度試験が行われた。
【0062】
その後、2つの濃縮した濾液が一緒に混合され、114.3gのオレンジがかった茶色の液体が得られた。すなわち、収率は61.3%であった(モクレンのアブソリュート)。
【0063】
ビャクシンおよびスミレのアブソリュートの調製
これまでに示したのと同様の方法により、以下のアブソリュートを得ることができた。
【0064】
≪ビャクシンのアブソリュート≫
Juniperus communisの果実から得られるアブソリュートに対応する。
【0065】
≪スミレのアブソリュート≫
Viola odorataの葉から得られる。
【0066】
実験プロトコール
以下のプロトコールにより、単独で又は組み合わせて用いられる、異なるアブソリュートにおける、最大半減阻害濃度(IC50)を決定することができた。IC50は、与えられた化合物が、ある生物学的又は生化学的な作用を、どの程度の有効性で阻害できるかを測定したものである。この例では、IC50は、コントロールに対する、変換の最大速度Vmaxにおける条件の、基質の生産物への変換の最大速度についての比率が50%となるときの、濃度に対応している。
【0067】
メラニン生産細胞のインビボでのモデル試験では、マウス由来のメラニン細胞B16-F10が必要であった。そして、無細胞毒性の濃度に保つことにより細胞の生存を維持させながら、細胞内のメラニン濃度の減少に関連付けられる、細胞内のチロシナーゼ活性の減少について、調査された。この目的のために、B16-F10細胞は、24ウェルプレートのウェルのそれぞれに載せられ、選択された原材料を様々に変えて、濃度も様々に異ならせて、37℃で24時間培養された。また、比較対象の生産物として、コウジ酸も用いられた。その後、細胞は溶解され、遠心分離機にかけられた。
【0068】
上澄みにはチロシナーゼが含まれ、これが96ウェルプレートの各ウェルに分注され、それぞれにL-DOPA基質が添加された。その後、490nmでの吸光度が、10分おきに1時間にわたって測定された。(その条件の最大速度)/(陰性コントールにおける最大速度)の比率により、その条件における阻害速度が得られ、それぞれの原材料におけるIC50を推定することが可能となる。
【0069】
次に、細胞ペレットは1NのNaOH溶液に溶解され、70℃で1時間培養され、その後、96ウェルプレートの各ウェルに分注され、405nmに設定された分光光度計に入れられた。その後、標準的なメラニンの吸収波長範囲における吸光度を比較することにより、各条件における細胞内のメラニン濃度を決定することができ、また、種々の原材料におけるメラニン形成の阻害効果を確かめることができる。
【0070】
テトラゾリウムMTT塩(3-(4,5―ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)中における細胞の生存テストが行われた。この目的のために、細胞は、1mg/mlのMTTを含む培養液で37℃の下で3時間培養され、その後、形成されたホルマザンの結晶がDMSOにより可溶化され、570nmでの吸光度が測定された。細胞の生存率は、陰性コントロールに対するパーセントとして示されている。
【0071】
結果
得られた結果は、以下の表1~表2、および
図1に示してある。
図1は、(A)コントロールとしてのマウス由来の細胞B16-F10の写真と、(B)モクレンのアブソリュート/ビャクシンのアブソリュート/スミレのアブソリュート(1/1/1)を入れて培養した場合の前記細胞の写真と、を示している。
【0072】
【0073】
【0074】
結果
得られた結果により、試験がされた各アブソリュートが、チロシナーゼを阻害する性質を有すること、および、細胞内のメラニンの生成を阻害する性質を有することが、確かめられ、またそれにより、これらアブソリュートが、肌の色素を除くものとして化粧品として有効であることが確かめられた。
【0075】
さらに、これらの結果は、異なるアブソリュートの間における作用の相乗効果が存在することを浮き彫りにしている。この相乗効果は、2つ又は3つのアブソリュートを組み合わせたときに観察された。