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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】容量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/18 20060101AFI20230529BHJP
【FI】
F04B27/18 A
F04B27/18 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020530183
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2019027071
(87)【国際公開番号】W WO2020013154
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018132687
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】葉山 真弘
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
(72)【発明者】
【氏名】江島 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大千
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】白藤 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040385(JP,A)
【文献】特開平05-306679(JP,A)
【文献】特開平06-200875(JP,A)
【文献】特許第5167121(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、ソレノイドにより駆動されるロッドと、主弁座と主弁体とにより構成され前記ロッドの移動により前記吐出ポートと前記制御ポートとの連通を開閉する主弁と、を備える容量制御弁であって、
前記ロッドの移動により、前記制御ポートと前記吸入ポートとの連通を開閉するCS弁と、
前記主弁体と前記ロッドとを互いに反対方向に付勢する付勢手段と、を備え、
前記主弁体と前記ロッドは、軸方向に相対移動可能に配置されており、
前記吸入圧力により開閉する圧力駆動弁を備え、
前記ロッドには、前記圧力駆動弁の開閉により前記制御ポートと前記吸入ポートとを連通させることが可能な中空連通路が形成されていることを特徴とする容量制御弁。
【請求項2】
前記主弁体は、前記ロッドの軸方向への相対移動に対する係止部を有している請求項1に記載の容量制御弁。
【請求項3】
前記CS弁は、スプール弁構造である請求項1または2に記載の容量制御弁。
【請求項4】
前記主弁体と前記ロッドには、軸方向に当接する当接部がそれぞれ設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項5】
前記主弁体は、内周が前記ロッドに摺動するとともに、外周が前記バルブハウジングに摺動するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項6】
前記ロッドには、前記付勢手段の一端が当接するバネ受け部が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の容量制御弁。
【請求項7】
前記制御ポートは第1制御ポートと第2制御ポートからなり、前記ソレノイド側から、前記吸入ポート、前記第2制御ポート、前記吐出ポート、前記第1制御ポートの順に配置されている請求項1ないしのいずれかに記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の容量を可変制御する容量制御弁に関し、例えば、自動車の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機の吐出量を圧力に応じて制御する容量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機は、エンジンにより回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御するものである。この斜板の傾斜角度は、電磁力により開閉駆動される容量制御弁を用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0003】
容量可変型圧縮機の連続駆動時(以下、単に「連続駆動時」と表記することもある)において、容量制御弁は、制御コンピュータにより通電制御され、ソレノイドで発生する電磁力により弁体を軸方向に移動させ、主弁を開閉して容量可変型圧縮機の制御室の制御圧力Pcを調整する通常制御を行っている。
【0004】
容量制御弁の通常制御時においては、容量可変型圧縮機における制御室の圧力が適宜制御されており、回転軸に対する斜板の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて吐出室に対する流体の吐出量を制御し、空調システムが所望の冷却能力となるように調整している。また、容量可変型圧縮機を最大容量で駆動する場合には、容量制御弁の主弁を閉塞して制御室の圧力を低くすることで、斜板の傾斜角度を最大とするようになっている。
【0005】
また、容量制御弁の制御ポートと吸入ポートとの間を連通させる補助連通路を形成し、起動時に容量可変型圧縮機の制御室の冷媒を制御ポート、補助連通路、吸入ポートを通して容量可変型圧縮機の吸入室へ排出するようにして、起動時に制御室の圧力を迅速に低下させることで、容量可変型圧縮機の応答性が向上されるものも知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5167121号公報(第7頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にあっては、起動時に流体排出機能に優れるものの、容量可変型圧縮機の連続駆動時において、補助連通路が連通しており制御ポートから吸入ポートに冷媒が流れ込むことから、制御室の圧力の制御性が悪く、容量可変型圧縮機の運転効率が下がってしまう虞があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、起動時の流体排出機能を有しつつ運転効率が良い容量制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の容量制御弁は、
吐出圧力の吐出流体が通過する吐出ポート、吸入圧力の吸入流体が通過する吸入ポートおよび制御圧力の制御流体が通過する制御ポートが形成されたバルブハウジングと、ソレノイドにより駆動されるロッドと、主弁座と主弁体とにより構成され前記ロッドの移動により前記吐出ポートと前記制御ポートとの連通を開閉する主弁と、を備える容量制御弁であって、
前記ロッドの移動により、前記制御ポートと前記吸入ポートとの連通を開閉するCS弁と、
前記主弁体と前記ロッドとを互いに反対方向に付勢する付勢手段と、を備え、
前記主弁体と前記ロッドは、軸方向に相対移動可能に配置されている。
これによれば、主弁体はロッドに対して相対移動可能に配置されているから、CS弁を閉塞した状態で主弁を制御することができる。また、起動時および最大通電状態で主弁が閉じた際においてロッドがCS弁を開放し制御ポートと吸入ポートを連通させることにより、制御圧力と吸入圧力を均圧(同圧)に維持することができる。一方、通電状態で主弁を制御する際においてCS弁を閉塞し制御ポートと吸入ポートを遮断させることにより、吸入流体が導入された領域への制御流体の流れ込みを防ぐことができる。このようにして、容量可変型圧縮機の起動時の液冷媒の排出および運転効率を高めることができる。
【0010】
前記主弁体は、前記ロッドの軸方向への相対移動に対する係止部を有していてもよい。
これによれば、係止部によりロッドに対する弁体の軸方向の位置決めを正確に行うことができる。
【0011】
前記CS弁は、スプール弁構造であってもよい。
これによれば、スプール弁構造であるから、ロッドが軸方向に所定量以上のストロークではCS弁の閉塞状態となり、CS弁を確実に閉塞できる。
【0012】
前記主弁体と前記ロッドとは、軸方向に当接する当接部がそれぞれ設けられていてもよい。
これによれば、CS弁の最大開度を調整することができる。
【0013】
前記主弁体は、内周が前記ロッドに摺動するとともに、外周が前記バルブハウジングに摺動してもよい。
これによれば、主弁体とロッドとの軸方向の相対移動を安定させることができる。
【0014】
前記ロッドには、前記付勢手段の一端が当接するバネ受け部が設けられていてもよい。
これによれば、ロッドに対する主弁体のスライド構造を簡素にすることができる。
【0015】
前記吸入圧力により開閉する圧力駆動弁を備え、
前記ロッドには、前記圧力駆動弁の開閉により前記制御ポートと前記吸入ポートとを連通させることが可能な中空連通路が形成されてもよい。
これによれば、起動時において、圧力駆動弁によっても冷媒を排出できるから冷媒排出を迅速に行うことができる。
【0016】
前記制御ポートは第1制御ポートと第2制御ポートからなり、前記ソレノイド側から、前記吸入ポート、前記第2制御ポート、前記吐出ポート、前記第1制御ポートの順に配置されていてもよい。
これによれば、吸入ポートと第2制御ポートが隣り合うため、CS弁を有する容量制御弁は簡素な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る実施例の容量制御弁が組み込まれる斜板式容量可変型圧縮機を示す概略構成図である。
図2】実施例の容量制御弁の非通電状態において主弁が開放され、CS弁が閉塞された様子を示す断面図である。
図3】実施例の容量制御弁の非通電状態において主弁が開放され、CS弁が閉塞された様子を示す図2の拡大断面図である。
図4】実施例の容量制御弁の通電状態(通常制御時)において主弁が閉塞され、CS弁が閉塞された様子を示す断面図である。
図5】実施例の容量制御弁の通電状態(通常制御時)において主弁が閉塞され、CS弁が閉塞された様子を示す図4の拡大断面図である。
図6】実施例の容量制御弁の通電状態(起動時)および最大通電状態の制御時において主弁が閉塞され、CS弁が開放された様子を示す断面図である。
図7】実施例の容量制御弁の通電状態(起動時)および最大通電状態の制御時において主弁が閉塞され、CS弁が開放された様子を示す図6の拡大断面図である。
図8】本実施例の変形例の容量制御弁の非通電状態において主弁が開放され、CS弁が閉塞された様子を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る容量制御弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0019】
実施例に係る容量制御弁につき、図1から図7を参照して説明する。以下、図2の正面側から見て左右側を容量制御弁の左右側として説明する。
【0020】
本発明の容量制御弁Vは、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機Mに組み込まれ、冷媒である作動流体(以下、単に「流体」と表記する)の圧力を可変制御することにより、容量可変型圧縮機Mの吐出量を制御し空調システムを所望の冷却能力となるように調整している。
【0021】
先ず、容量可変型圧縮機Mについて説明する。図1に示されるように、容量可変型圧縮機Mは、吐出室2と、吸入室3と、制御室4と、複数のシリンダ4aと、を備えるケーシング1を有している。尚、容量可変型圧縮機Mには、制御室4と吸入室3とを直接連通する図示しない連通路が設けられており、この連通路には吸入室3と制御室4との圧力を平衡調整させるための固定オリフィスが設けられている。
【0022】
また、容量可変型圧縮機Mは、ケーシング1の外部に設置される図示しないエンジンにより回転駆動される回転軸5と、制御室4内において回転軸5に対してヒンジ機構8により偏心状態で連結される斜板6と、斜板6に連結され各々のシリンダ4a内において往復動自在に嵌合された複数のピストン7と、を備え、電磁力により開閉駆動される容量制御弁Vを用いて、流体を吸入する吸入室3の吸入圧力Ps、ピストン7により加圧された流体を吐出する吐出室2の吐出圧力Pd、斜板6を収容した制御室4の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室4内の圧力を適宜制御することで斜板6の傾斜角度を連続的に変化させることにより、ピストン7のストローク量を変化させて流体の吐出量を制御している。尚、説明の便宜上、図1においては、容量可変型圧縮機Mに組み込まれる容量制御弁Vの図示を省略している。
【0023】
具体的には、制御室4内の制御圧力Pcが高圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は小さくなりピストン7のストローク量が減少するが、一定以上の圧力となると、回転軸5に対して斜板6が略垂直状態、すなわち垂直よりわずかに傾斜した状態となる。このとき、ピストン7のストローク量は最小となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧が最小となることで、吐出室2への流体の吐出量が減少し、空調システムの冷却能力は最小となる。一方で、制御室4内の制御圧力Pcが低圧であるほど、回転軸5に対する斜板6の傾斜角度は大きくなりピストン7のストローク量が増加するが、一定以下の圧力となると、回転軸5に対して斜板6が最大傾斜角度となる。このとき、ピストン7のストローク量は最大となり、ピストン7によるシリンダ4a内の流体に対する加圧が最大となることで、吐出室2への流体の吐出量が増加し、空調システムの冷却能力は最大となる。
【0024】
図2に示されるように、容量可変型圧縮機Mに組み込まれる容量制御弁Vは、ソレノイド80を構成するコイル86に通電する電流を調整し、容量制御弁Vにおける主弁50、副弁55、CS弁56の開閉制御を行うとともに、中空連通路としての中間連通路57における吸入圧力Psにより感圧体61を動作させて圧力駆動弁としての感圧弁53の開閉制御を行い、制御室4内に流入する、または制御室4から流出する流体を制御することで制御室4内の制御圧力Pcを可変制御している。
【0025】
本実施例において、主弁50は、主弁体51とバルブハウジング10の内周面に形成された主弁座10aとにより構成されており、主弁体51の軸方向左端51aが主弁座10aに接離することで、主弁50が開閉するようになっている。感圧弁53は、感圧体61を構成するキャップ70とロッドとしての感圧弁部材52の軸方向左端に形成される感圧弁座52aとにより構成されており、キャップ70の軸方向右端の外径側に形成されるシール面70aが感圧弁座52aに接離することで、感圧弁53が開閉するようになっている。副弁55は、ロッドとしての副弁体54と固定鉄心82の開口端面、すなわち軸方向左端面に形成される副弁座82aとにより構成されており、副弁体54の軸方向右端54aが副弁座82aに接離することで、副弁55が開閉するようになっている。CS弁56は、スプール弁構造であって、副弁体54の外周面に形成された環状凸部54cとバルブハウジング10の内径側に延びる環状突条の内周面に形成されたCS弁座10cとにより構成されており、副弁体54の環状凸部54cがCS弁座10cに接離することで、CS弁56が開閉するようになっている。
【0026】
次いで、容量制御弁Vの構造について説明する。図2に示されるように、容量制御弁Vは、金属材料または樹脂材料により形成されたバルブハウジング10と、バルブハウジング10内に軸方向に往復動自在に配置された主弁体51、感圧弁部材52、副弁体54と、中間連通路57における吸入圧力Psに応じて感圧弁部材52および副弁体54に軸方向右方への付勢力を付与する感圧体61と、バルブハウジング10に接続され主弁体51、感圧弁部材52、副弁体54に駆動力を及ぼすソレノイド80と、から主に構成されている。
【0027】
図2に示されるように、ソレノイド80は、軸方向左方に開放する開口部81aを有するケーシング81と、ケーシング81の開口部81aに対して軸方向左方から挿入されケーシング81の内径側に固定される略円筒形状の固定鉄心82と、固定鉄心82の内径側において軸方向に往復動自在、かつその軸方向左端部が副弁体54と接続固定される駆動ロッド83と、駆動ロッド83の軸方向右端部に固着される可動鉄心84と、固定鉄心82と可動鉄心84との間に設けられ可動鉄心84を軸方向右方に付勢するコイルスプリング85と、固定鉄心82の外側にボビンを介して巻き付けられた励磁用のコイル86と、から主に構成されている。
【0028】
ケーシング81には、軸方向左端の内径側が軸方向右方に凹む凹部81bが形成されており、この凹部81bに対してバルブハウジング10の軸方向右端部が略密封状に挿嵌・固定されている。
【0029】
固定鉄心82は、鉄やケイ素鋼等の磁性材料である剛体から形成され、軸方向に延び駆動ロッド83が挿通される挿通孔82cが形成される円筒部82bと、円筒部82bの軸方向左端部の外周面から外径方向に延びる環状のフランジ部82dとを備え、円筒部82bの軸方向左端面に副弁座82aが形成されている。
【0030】
図2に示されるように、バルブハウジング10には、容量可変型圧縮機Mの吐出室2と連通する吐出ポートとしてのPdポート12と、容量可変型圧縮機Mの制御室4と連通する制御ポートおよび第1制御ポートとしての第1Pcポート13と、Pdポート12の軸方向右方に隣接し容量可変型圧縮機Mの制御室4とを連通する制御ポートおよび第2制御ポートとしての第2Pcポート14と、容量可変型圧縮機Mの吸入室3と連通する吸入ポートとしてのPsポート15と、が形成されている。
【0031】
また、バルブハウジング10は、その軸方向左端部に仕切調整部材11が略密封状に圧入されることにより有底略円筒形状を成している。尚、仕切調整部材11は、バルブハウジング10の軸方向における設置位置を調整することで、感圧体61の付勢力を調整できるようになっている。
【0032】
バルブハウジング10の内部には、主弁体51、感圧弁部材52、副弁体54が軸方向に往復動自在に配置され、バルブハウジング10の内周面の一部には、主弁体51の外周面が略密封状態で摺接可能な小径のガイド面10bが形成されるとともに、副弁体54の環状凸部54cが接離可能な小径のCS弁座10cが形成されている。
【0033】
また、バルブハウジング10の内部には、Pdポート12と連通され主弁体51の軸方向左端51a側が配置される第1弁室20と、第2Pcポート14と連通され主弁体51の軸方向右端51f側および副弁体54の軸方向左端54g側が配置される第2弁室30と、第1Pcポート13と連通され感圧弁部材52の感圧弁座52a側、すなわち軸方向左側が配置される感圧室60と、Psポート15と連通され副弁体54の軸方向右端54a側が配置される第3弁室40と、が形成されている。尚、第2弁室30は、主弁体51および副弁体54の外周面と、バルブハウジング10のガイド面10bよりも軸方向右側かつCS弁座10cよりも軸方向左側の内周面とにより画成されている。また、第3弁室40は、副弁体54の外周面と、固定鉄心82の軸方向左端面と、バルブハウジング10のCS弁座10cよりも軸方向右側の内周面とにより画成されている。
【0034】
図2に示されるように、感圧体61は、コイルスプリング63が内蔵されるベローズコア62と、ベローズコア62の軸方向右端に設けられる円板状のキャップ70と、から主に構成され、ベローズコア62の軸方向左端は、仕切調整部材11に固定されている。
【0035】
また、感圧体61は、感圧室60内に配置されており、コイルスプリング63とベローズコア62によりキャップ70を軸方向右方に移動させる付勢力によりキャップ70のシール面70aを感圧弁部材52の感圧弁座52aに着座させるようになっている。また、キャップ70は、中間連通路57における吸入圧力Psに応じてキャップ70を軸方向左方に移動させる力が付与されるようになっている。
【0036】
図3に示されるように、主弁体51は、付勢手段としてのコイルスプリング91の軸方向左端部が外嵌される取付部51bと、取付部51bの軸方向左端から外径方向に延びる環状面51cと、環状面51cの外径側から軸方向左方に延び取付部51bよりも大径に形成されバルブハウジング10の主弁座10aと接離する軸方向左端51aが形成される円筒部51dと、を有する段付き円筒形状に構成されている。尚、円筒部51dの外周面とバルブハウジング10のガイド面10bとの間は、径方向に僅かに離間することにより微小な隙間が形成されており、主弁体51は、バルブハウジング10に対して摺動して軸方向に円滑に相対移動可能となっている。
【0037】
また、主弁体51は、その内側が取付部51b側、すなわち軸方向右側よりも円筒部51d側、すなわち軸方向左側の内径の寸法が大きい段付き円筒状に構成され、取付部51bの環状面51cよりも軸方向略右側において、取付部51bの内周面の軸方向左端から外径方向に延び直交して連なる環状面51eが形成されている。すなわち、取付部51bには、軸方向右側に内径方向に突出する鉤状の係止部51gが形成されている。
【0038】
図3に示されるように、感圧弁部材52は、主弁体51が外嵌される円筒部52bと、円筒部52bの軸方向左側において円筒部52bよりも大径に形成され感圧体61を構成するキャップ70のシール面70aと接離する感圧弁座52aが形成される当接部52cと、を有する略円筒形状かつ側面視略砲台形状に構成されている。
【0039】
また、感圧弁部材52の円筒部52bの軸方向右端部には、円筒部52bよりも僅かに小径の挿嵌部52dが形成されることにより、挿嵌部52dの軸方向左端から外径方向に延びる環状面52eが形成されている。尚、主弁体51の係止部51gの内周面と感圧弁部材52の挿嵌部52dの外周面との間は、径方向に僅かに離間することにより微小な隙間が形成されており、主弁体51と感圧弁部材52とは摺動により、軸方向に円滑に相対移動可能となっている。
【0040】
図3に示されるように、副弁体54は、軸方向右端54aが形成される円筒部54bと、円筒部54bの軸方向左側において外径方向に突出する環状凸部54cと、環状凸部54cの軸方向左側においてコイルスプリング91の軸方向右端部が外嵌され円筒部54bよりも小径に形成される取付部54dと、を有するフランジ付き略円筒形状に構成されている。尚、副弁体54の取付部54dの外径は、主弁体51の取付部51bの外径と略同一に構成されている。
【0041】
また、副弁体54の取付部54dには、軸方向左端の内径側が軸方向右方に凹む凹部54eが形成され、感圧弁部材52の挿嵌部52dが軸方向左方から挿嵌されることにより、感圧弁部材52と副弁体54とが一体に接続固定されている。尚、副弁体54の軸方向右端部には、駆動ロッド83が接続固定されることにより、感圧弁部材52、副弁体54、駆動ロッド83は一体に軸方向に移動するようになっている。さらに、感圧弁部材52および副弁体54の内部には、中空孔が接続されることにより軸方向に亘って貫通する中間連通路57が形成されている。尚、中間連通路57は、駆動ロッド83の軸方向左端部に形成される連通孔83aを介して第3弁室40と連通可能となっている。尚、説明の便宜上、図示を省略するが、容量可変型圧縮機Mが停止状態で長時間放置されることにより制御室4で高圧となった流体が液化することがあるが、容量可変型圧縮機Mを起動するとともに容量制御弁Vを通電状態とすることにより、主弁50が閉塞されるとともに副弁55が開放され、さらに中間連通路57における高い吸入圧力Psにより、感圧体61が収縮して感圧弁53が開弁されることにより、制御室4の液冷媒を中間連通路57を介して吸入室3に短時間で排出できるようになっている。
【0042】
さらに、副弁体54の環状凸部54cは、軸方向に往復動することにより、バルブハウジング10の内周面に形成されるCS弁座10cとの径方向視の重畳量を変化させ、第2Pcポート14を通過した制御流体とPsポート15を通過した吸入流体との連通を開閉するCS弁56を構成している。CS弁56は、環状凸部54cとCS弁座10cとが径方向視で重畳する位置において、閉塞されるようになっている(図2図5参照)。尚、CS弁56の閉塞状態においては、制御流体は吸入流体側に僅かに漏れている。
【0043】
図3に示されるように、コイルスプリング91の軸方向左端は、主弁体51の環状面51cに当接し、コイルスプリング91の軸方向右端は、副弁体54の環状凸部54cの軸方向左側のバネ受け部としての側面54fに当接している。すなわち、主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54とは、コイルスプリング91により互いに軸方向の反対方向に付勢されている。尚、コイルスプリング91は圧縮バネであり、その外周はバルブハウジング10の内周面とは径方向に離間している。
【0044】
また、感圧弁部材52の円筒部52bおよび挿嵌部52dに主弁体51が外嵌された状態で、感圧弁部材52の挿嵌部52dに副弁体54が一体に接続固定されることにより、環状の凹溝58が形成されている。凹溝58は、感圧弁部材52の挿嵌部52dの外周面と、感圧弁部材52の環状面52eと、副弁体54の当接部としての軸方向左端54gとにより形成され、凹溝58により、感圧弁部材52および副弁体54に対する主弁体51の軸方向位置が規制されており、非通電状態において主弁50を開放するとともに、通電状態において主弁50を閉塞可能かつCS弁56の開度調整可能となっている。
【0045】
詳しくは、通電状態において主弁体51の軸方向左端51aが主弁座10aに当接することにより主弁50が閉塞し、かつ副弁体54の環状凸部54cによりCS弁56が開放された状態(図6および図7参照)において、主弁体51の当接部としての軸方向右端51fには、凹溝58を構成する副弁体54の軸方向左端54gが当接することにより、環状凸部54cによるCS弁56の開放時における主弁体51に対する感圧弁部材52および副弁体54の軸方向位置が決められている。すなわち、CS弁56の開度を調整することができるとともに、最大開度を決めることができる。
【0046】
また、凹溝58の軸方向寸法L58と、主弁体51の係止部51gの軸方向寸法L51gとの差は、主弁体51の軸方向右端51fと副弁体54の軸方向左端54gとの隙間の軸方向寸法である軸方向の離間寸法Aとなっている(L58-L51g=A,図3参照)。すなわち、主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54は、軸方向左方に一体に移動して主弁50を閉塞した後に、主弁体51に対して感圧弁部材52および副弁体54が離間寸法Aだけさらに軸方向に移動可能となっている(図6および図7参照)。
【0047】
次いで、容量制御弁Vの動作、主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54の軸方向移動によるCS弁56の開閉機構の動作について通常制御時、起動時および最大通電状態の制御時の順に説明する。
【0048】
先ず、容量制御弁Vの通常制御時について説明する。容量制御弁Vは、通常制御時、いわゆるデューティ制御時においては、主弁50の開度や開放時間を調整してPdポート12から第1Pcポート13への吐出流体の流量を制御している。このとき、副弁体54の環状凸部54cの軸方向右側がバルブハウジング10のCS弁座10cの軸方向左側に径方向視で重畳し第2Pcポート14を通過した制御流体とPsポート15を通過した吸入流体との連通がCS弁56により閉塞された状態が維持されている。このように、通常制御時において、CS弁56が閉塞されることにより、第2Pcポート14とPsポート15を結ぶ流路における流量が絞られ、第2Pcポート14を通過した制御流体のPsポート15への流れ込みが防止されるため、制御室4の制御圧力Pcの制御性に優れ、容量可変型圧縮機Mの運転効率を高めることができる(図4および図5参照)。言い換えれば、CS弁56を閉塞した状態で主弁50の開閉を制御することができる。
【0049】
次に、起動時および最大通電状態の制御時について説明する。容量可変型圧縮機Mを使用せずに長時間放置した後には、吐出圧力Pd、制御圧力Pc、吸入圧力Psは略均衡している。図2および図3に示されるように、容量制御弁Vは、非通電状態において、感圧弁部材52および副弁体54が感圧体61を構成するコイルスプリング63の付勢力により軸方向右方へと押圧されることで、副弁体54の軸方向右端54aが固定鉄心82の副弁座82aに着座し副弁55が閉塞されるとともに、主弁体51の軸方向左端51aがバルブハウジング10の内周面に形成された主弁座10aから離間し、主弁50が開放されている。このとき、副弁体54の環状凸部54cがバルブハウジング10のCS弁座10cに径方向視で重畳し第2Pcポート14を通過した制御流体とPsポート15を通過した吸入流体との連通がCS弁56により閉塞されている。
【0050】
容量可変型圧縮機Mを起動するとともに、容量制御弁Vを通電状態とすることにより、主弁50が閉塞され副弁55が開放される。また、起動時には、容量制御弁Vを最大デューティの通電状態、すなわち最大通電状態とすることにより、図6および図7に示されるように、主弁体51に対して感圧弁部材52および副弁体54が離間寸法A(図5参照)だけさらに軸方向左方に移動するから、CS弁56が開放され、第2Pcポート14からPsポート15へ流体を排出するための流路が形成されており、制御室4の液化した流体を短時間で排出して起動時の応答性を高めることができる。
【0051】
また、容量可変型圧縮機Mを最大容量で駆動する場合には、起動時と同様に、容量制御弁Vを最大デューティの通電状態、すなわち最大通電状態とすることにより、主弁50が閉塞されるとともに、CS弁56を開放し第2Pcポート14とPsポート15とを連通させることができるため、制御圧力Pcを十分に低下させ、制御圧力Pcと吸入圧力Psを均圧(同圧)の状態に維持しやすい。そのため、制御室4のシリンダ4a内におけるピストン7のストロークを安定させ、最大容量の状態を維持して運転効率を高めることができる。
【0052】
また、主弁体51は、感圧弁部材52の環状面52eに係止部51gの環状面51eを係止させることにより、感圧弁部材52および副弁体54に対する主弁体51の軸方向の位置決めを正確に行うことができる。さらに、感圧弁部材52に対する主弁体51の取付け精度を高めることができる。
【0053】
また、CS弁56は、副弁体54の環状凸部54cとバルブハウジング10の内周面に形成されるCS弁座10cとによりスプール弁構造に構成されるため、感圧弁部材52および副弁体54が軸方向に所定量以上ストロークすることによりCS弁56が閉塞状態となり、CS弁56を確実に閉塞できる。さらに、例えば通常制御時において、振動等の外乱によって感圧弁部材52および副弁体54が僅かに軸方向移動してもCS弁56が閉塞された状態に維持されるため、容量制御弁Vは、外乱に強く、制御精度に優れる。
【0054】
また、主弁体51は、係止部51gの内周面と感圧弁部材52の挿嵌部52dの外周面とが感圧弁部材52に摺動するとともに、円筒部51dの外周面とバルブハウジング10のガイド面10bとが摺動するため、主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54との軸方向の相対移動を安定させることができる。
【0055】
また、副弁体54には、コイルスプリング91の軸方向右端が当接する環状凸部54cの軸方向左側の側面54fが設けられているため、主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54とのスライド構造を簡素にすることができる。
【0056】
また、主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54とは別体であって、副弁体54の軸方向左端54gにより主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54との軸方向の相対移動が規制されるため、主弁体51と感圧弁部材52および副弁体54とのスライド構造を簡素にすることができる。
【0057】
また、バルブハウジング10には、感圧弁53に対応して感圧室60に配置された第1Pcポート13と、CS弁56に対応して第2弁室30に配置された第2Pcポート14が形成されることにより、バルブハウジング10の内部で制御流体を取り回す流路を形成する必要がなく、簡素な構造にできる。
【0058】
また、異常等により吸入圧力Psが高圧になった際には、副弁体54は吸入圧力Psによって左方に押圧されてCS弁56を開放し、高圧の吸入圧力を第2Pcポート14から逃がすことができるようになっている。
【0059】
また、CS弁56が副弁体54の環状凸部54cとバルブハウジング10の環状突条の内周面のCS弁座10cにより構成される例について説明したが、図8に示されるように、バルブハウジング10の内周面に突条を設けることなく該内周面をCS弁座110cとして、副弁体54の環状凸部154cを第2Pcポート14に径方向視一部重畳するように配置してもよい。このようにすることでバルブハウジング10の製造が簡単であり、かつ傾荷重等によって副弁体54が傾いて副弁体54の環状凸部154cとバルブハウジング10の環状突条とが係合することもない。
【0060】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0061】
例えば、前記実施例では、CS弁56が閉塞されることにより、第2Pcポート14からPsポート15への流路が絞られる態様について説明したが、これに限らず、CS弁56が閉塞されることにより、第2Pcポート14からPsポート15への流路を略遮断できるように、副弁体54の環状凸部54cとバルブハウジング10のCS弁座10cとの径寸法を設定してもよい。
【0062】
また、感圧弁部材52と副弁体54とを別体で構成する例について説明したが、両者は一体に形成されていてもよい。
【0063】
また、容量可変型圧縮機Mの制御室4と吸入室3とを直接連通する連通路および固定オリフィスは設けなくてもよい。
【0064】
また、前記実施例では、副弁は設けなくともよく、副弁体の軸方向右端は、軸方向の荷重を受ける支持部材として機能すればよく、必ずしも密閉機能は必要ではない。
【0065】
また、コイルスプリング91は、圧縮バネに限らず、引張バネでもよく、コイル形状以外であってもよい。
【0066】
また、CS弁56は、バルブハウジング10と副弁体54自体に構成されている例について説明したが、バルブハウジング10や副弁体54に別部材を取付けて構成するものであってもよい。
【0067】
また、感圧体61は、内部にコイルスプリングを使用しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 ケーシング
2 吐出室
3 吸入室
4 制御室
10 バルブハウジング
10a 主弁座
10b ガイド面
10c CS弁座
11 仕切調整部材
12 Pdポート(吐出ポート)
13 第1Pcポート(制御ポート,第1制御ポート)
14 第2Pcポート(制御ポート,第2制御ポート)
15 Psポート(吸入ポート)
20 第1弁室
30 第2弁室
40 第3弁室
50 主弁
51 主弁体
51a 軸方向左端
51b 取付部
51c 環状面
51d 円筒部
51e 環状面
51f 軸方向右端(当接部)
51g 係止部
52 感圧弁部材(ロッド)
52a 感圧弁座
52b 円筒部
52c 当接部
52d 挿嵌部
52e 環状面
53 感圧弁(圧力駆動弁)
54 副弁体(ロッド)
54a 軸方向右端
54b 円筒部
54c 環状凸部
54d 取付部
54e 凹部
54f 側面(バネ受け部)
54g 軸方向左端(当接部)
55 副弁
56 CS弁
57 中間連通路(中空連通路)
58 凹溝
60 感圧室
61 感圧体
62 ベローズコア
63 コイルスプリング
70 キャップ
70a シール面
80 ソレノイド
82 固定鉄心
82a 副弁座
83 駆動ロッド
91 コイルスプリング(付勢手段)
Pc 制御圧力
Pd 吐出圧力
Ps 吸入圧力
V 容量制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8