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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】IgE介在アレルギー性疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230529BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61P37/08 ZMD
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020543683
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 CN2018112714
(87)【国際公開番号】W WO2019085902
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】62/579,416
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520149124
【氏名又は名称】ワンネス バイオテック カンパニー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ルー カン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ニエン-イー
(72)【発明者】
【氏名】チョン ティエン-ティエン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0086558(US,A1)
【文献】特表2013-520396(JP,A)
【文献】WALLING, H.W. et al.,Clin Cosmet Investig Dermatol,2010年,Vol. 3,pp. 99-117
【文献】BOGUNIEWICZ, M. et al.,J Allergy Clin Immunol,2003年,Vol. 112, No. 6, Suppl.,pp. S140-S150
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 9/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンE(IgE)に関連する障害を治療する方法における使用のための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、膜結合IgEのCεmxドメインに結合する抗体を含み、そして前記方法は、
(i)前記治療を必要とする被験体に、前記抗体の1回目の投与量を投与すること、および
(ii)前記被験体に前記抗体の2回目の投与量を投与すること、を含み、
ここで、2回目の投与量は1回目の投与量の少なくとも8週間後に投与され
ここで、前記抗体は、(a)重鎖相補性決定領域(CDR)1、重鎖CDR2、および重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、ならびに(b)軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、および軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含み;そして
ここで
前記重鎖CDR1は、配列番号2の残基26~36のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖CDR2は、配列番号2の残基51~66のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖CDR3は、配列番号2の残基98~106のアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖CDR1は、配列番号3の残基24~39のアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖CDR2は、配列番号3の残基55~61のアミノ酸配列を含み、そして
前記軽鎖CDR3は、配列番号3の残基94~102のアミノ酸配列を含む、
上記医薬組成物。
【請求項2】
前記2回目の投与量が、前記1回目の投与量の少なくとも3ヶ月後に投与される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記2回目の投与量が、前記1回目の投与量の約12週間~約6ヶ月後に投与される、請求項2に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記1回目の投与量、2回目の投与量、又はその両方が、0.5mg/kg~15mg/kgの範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記1回目の投与量、前記2回目の投与量、又はその両方が、1mg/kg~8mg/kgの範囲である、請求項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
アトピー性皮膚炎を治療する方法における使用のための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、膜結合IgEのCεmxドメインに結合する抗体を含み、そして前記方法は、前記抗体の1回目の投与量を、前記治療を必要とする被験体に投与することを含み、前記1回目の投与量は約1mg/kg~10mg/kgであり、
ここで、前記方法は、前記1回目の投与の約8週間後に、前記被験体に前記抗体の2回目の投与量を投与することをさらに含み、ここで、前記2回目の投与時に、前記1回目の投与前の総IgEレベルからの前記被験体における総IgEレベルの変化が50%未満であり、
ここで、前記抗体は、(a)重鎖相補性決定領域(CDR)1、重鎖CDR2、および重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、ならびに(b)軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、および軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含み;そして
ここで
前記重鎖CDR1は、配列番号2の残基26~36のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖CDR2は、配列番号2の残基51~66のアミノ酸配列を含み、
前記重鎖CDR3は、配列番号2の残基98~106のアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖CDR1は、配列番号3の残基24~39のアミノ酸配列を含み、
前記軽鎖CDR2は、配列番号3の残基55~61のアミノ酸配列を含み、そして
前記軽鎖CDR3は、配列番号3の残基94~102のアミノ酸配列を含む、
上記医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体の1回目の投与量が5mg/kgである、請求項6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体の2回目の投与が前記1回目の投与の約3ヶ月後である、請求項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記2回目の投与量が5mg/kgである、請求項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記1回目の投与量、前記2回目の投与量、又はその両方が、静脈内注射により投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体がヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記抗体が完全長抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記抗体が、IgG1分子である、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記被験体が、ヒト患者である、請求項1~1のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記ヒト患者が、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、又は高IgE症候群を有する、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記ヒト患者が、寒冷じんま疹、慢性じんま疹、コリン作動性じんま疹、慢性副鼻腔炎、全身性肥満細胞症、皮膚肥満細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管浮腫、及び間質性膀胱炎、好酸球関連胃腸障害、食物アレルギー、又は薬物アレルギーを有する、請求項15に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記1回目の投与の前に、前記被験体に保湿剤が少なくとも連続7日間、少なくとも1日2回適用される、請求項1~17のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
前記被験体に局所コルチコステロイドを投与することをさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
前記局所コルチコステロイドが活動性病変に毎日適用され、前記局所コルチコステロイドが0.05%プロピオン酸フルチカゾンクリーム、0.1%フロ酸モネタゾンクリーム、0.06%吉草酸ベタメタゾン、又は1%ヒドロコルチゾン軟膏である、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
前記局所コルチコステロイドが、0.05%フルオシノニドクリーム、0.25%デソキシメタゾン軟膏、又は0.05%プロピオン酸クロベタゾール軟膏である、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
前記被験体が、局所タクロリムス治療、局所ピメクロリムス治療、全身性コルチコステロイド治療、ロイコトリエン阻害剤治療、アレルゲン免疫療法、免疫抑制剤又は免疫調節剤を含む治療、ワクチン治療、伝統的な漢方医学を含む治療、外科手術、紫外線治療、又はタンニングを受けていない、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
前記抗体が、前記抗体、緩衝液、塩、及び非イオン性界面活性剤を含む医薬組成物中に配合される、請求項1~22のいずれか1項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物が、5~8のpHを有する水溶液である、請求項23に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
前記緩衝液がヒスチジン緩衝液であり、前記塩が塩化ナトリウムであり、及び/又は前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート80である、請求項23又は請求項24に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項26】
前記医薬組成物中の抗体が約10mg/ml~30mg/mlであり、前記ヒスチジン緩衝液が約10~30mMの濃度であり、前記塩化ナトリウムが約120~160mMの濃度であり、及び前記ポリソルベート80が約0.01~0.03%の濃度である、請求項25に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2017年10月31日に出願された米国仮出願第62/579,416号(参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)の出願日の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
IgEは、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を引き起こす原因となるI型過敏症反応の仲介において中心的な役割を果たす。アレルギー反応は、チリダニ、木や草の花粉、特定の食品や薬物などの無害な環境物質、及びハチやヒアリの噛み傷に対する免疫系の応答である。このような反応では、好塩基球や肥満細胞の表面でのIgEへのアレルゲンの結合は、IgEの架橋と、IgE.Fcの基礎となる受容体であるI型IgE.Fc受容体又はFcεRIの凝集を引き起こす。この受容体の凝集は次にシグナル伝達経路を活性化し、顆粒球のエキソサイトーシスとヒスタミン、ロイコトリエン、トリプターゼ、サイトカイン、ケモカインなどの薬理学的メディエーターの放出につながる。肥満細胞及び好塩基球からのこれらのメディエーターの放出は、アレルギーの様々な病理学的症状を引き起こす。
【0003】
IgE分子には、遊離(又は可溶性)IgEと膜結合IgE(mIgE)の2種類がある。遊離IgE分子は血液及び間質液中を循環する。mIgEはBリンパ芽球と記憶B細胞の表面に発現される。mIgEを標的とすることは、抗原特異的IgEの産生を阻害し、従ってIgE介在免疫応答を抑制するのに有効であると考えられている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ヒトBリンパ球上のmIgEのCεmXドメインを標的とする抗体であるFB825の単回投与が、ヒト被験体における総IgEのレベルを、少なくとも3ヶ月間低下させることに成功したという予測外の発見に基づく。
【0005】
従って、本開示の1つの態様は、IgEに関連する障害を治療する方法を提供し、この方法は、前記治療を必要とする被験体に、膜結合IgEのCεmxドメインに結合する抗体の1回目の投与量を投与し、そして被験体に2回目の投与量の抗体を投与することを含む。2回目の投与は、1回目の投与の少なくとも8週間後(例えば少なくとも10週間、12週間、又は3ヶ月後)に投与される。
【0006】
本明細書に記載の方法のいずれにおいても、1回目の投与量、2回目の投与量、又はその両方は、0.5mg/kg~15mg/kg(例えば1mg/kg~15mg/kg)の範囲であり得る。例えば1回目の投与量、2回目の投与量、又はその両方は、1mg/kg~8mg/kg(例えば1.5mg/kg~10mg/kg)の範囲である。1回目の投与量、2回目の投与量、又はその両方は、静脈内注射により投与することができる。
【0007】
本明細書に記載の方法により治療される被験体は、IgEに関連する障害、例えばアレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、高IgE症候群、又はアトピー性皮膚炎を有するか又は有することが疑われるヒト患者であり得る。いくつかの実施態様において、障害は、寒冷じんま疹、慢性じんま疹、コリン作動性じんま疹、慢性副鼻腔炎、全身性肥満細胞症、皮膚肥満細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管性浮腫、及び間質性膀胱炎、好酸球関連胃腸障害、食物アレルギー、又は薬物アレルギーである。
【0008】
別の態様において本開示は、アトピー性皮膚炎を治療する方法を提供し、この方法は、膜結合IgEのCεmxドメインに結合する抗体の1回目の投与量を、前記治療を必要とする被験体に投与することを含み、ここで、1回目の投与量は約1mg/kg~10mg/kg(例えば3mg/kg~8mg/kg、例えば5mg/kg)である。この方法は、2回目の投与時に、被験体における1回目の投与前の総IgEレベルからの総IgEレベルの変化が50%未満であるなら、1回目の投与の約3か月後に、被験体に2回目の抗体投与を行うことをさらに含む。いくつかの例において、2回目の投与量は1回目の投与量と同一、例えば5mg/kgであり得る。抗体の1回目の投与量、抗体の2回目の投与量、又はその両方は、静脈内注入により投与されてもよい。
【0009】
上記のいずれの方法においても、1回目の投与前の少なくとも連続7日間、少なくとも1日2回、保湿剤が被験体に適用される。あるいは、又はさらに、この方法は、被験体に局所コルチコステロイドを投与することをさらに含み得る。いくつかの例では、局所コルチコステロイドは活動性病変に毎日適用される。このような局所コルチコステロイドは、0.05%プロピオン酸フルチカゾンクリーム、0.1%フロ酸モネタゾンクリーム、0.06%吉草酸ベタメタゾン、又は1%ヒドロコルチゾン軟膏でもよい。他の例では、局所コルチコステロイドは、0.05%フルオシノニドクリーム、0.25%デソキシメタゾン軟膏、又は0.05%プロピオン酸クロベタゾール軟膏でもよい。
【0010】
いくつかの実施態様において、被験体は、局所タクロリムス治療、局所ピメクロリムス治療、全身性コルチコステロイド治療、ロイコトリエン阻害剤治療、アレルゲン免疫療法、免疫抑制剤又は免疫調節剤を含む治療、ワクチン治療、伝統的な漢方医学を含む治療、外科手術、紫外線治療、又はタンニングを受けていない。
【0011】
本明細書に記載されるいずれの治療方法においても、本明細書に記載される抗CεmX抗体は、mIgE断片GLAGGSAQSQRAPDRVL(配列番号1)又はmIgE断片GLAGGSAQSQRA(配列番号7)に結合し得る。いくつかの例では、抗体は抗体4B12(FB825)と同じエピトープに結合するか、又は膜結合IgEのCεmxドメインへの結合に対して抗体FB825と競合する。いくつかの例において抗体は、抗体FB825と同じ重鎖相補性決定領域、及び/又は抗体FB825と同じ軽鎖相補性決定領域を含む。そのような抗体は、4B12のヒト化抗体、例えばFB825であり得る。抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域、及び/又は配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み得る。本明細書に記載の方法で使用されるいずれの抗体も、完全長抗体又はその抗原結合断片であり得る。抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は1本鎖抗体であり得る。
【0012】
本明細書に記載のいずれの方法においても、抗CεmX抗体は、抗体、緩衝液(例えばヒスチジンなどのアミノ酸を含む緩衝液)、塩(例えば塩化ナトリウム)、及び非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート80)を含む医薬組成物中に配合され得る。いくつかの実施態様において医薬組成物は、5~8のpHを有する水溶液である。いくつかの例において、医薬組成物中の抗体は約10mg/ml~30mg/ml(例えば約20mg/ml)であり、ヒスチジン緩衝液は約10~30mM(例えば約20mM)の濃度であり、塩化ナトリウムは約120~160mM(例えば約140mM)の濃度であり、ポリソルベート80は、約0.01~0.03%(例えば約0.02%)の濃度である。本明細書に記載される医薬組成物のいずれもまた、本開示の範囲内である。
【0013】
別の態様において、約10mg/ml~30mg/mlの濃度の本明細書に記載の任意の抗CεmX抗体(例えばFB825又はその機能的変種)、約10~30mMの濃度のアミノ酸(例えばヒスチジン)を含む緩衝液、約120~160mMの濃度の塩(例えば塩化ナトリウム)、及び約0.01~0.03%の濃度の非イオン性界面活性剤(例えばポリソルベート80)を含む水性製剤が本明細書に提供され、ここで水性製剤は約5~8のpHを有する。1つの例において水性製剤は、約20mg/mlの濃度の抗体、約20mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約140mMの濃度の塩化ナトリウム、及び約0.02%の濃度のポリソルベート80を含み、水性製剤は約6.5のpHを有する。
【0014】
また本開示の範囲内には、(i)本明細書に記載のIgEに関連する障害の治療に使用するための医薬組成物であり、ここで、医薬組成物は抗CεmX抗体及び医薬的に許容し得る担体を含み、そして医薬組成物は治療が必要な被験体に、少なくとも8週間(例えば少なくとも10週間、12週間、又は3ヶ月の間隔で、又は12週間~6ヶ月の間隔で)である少なくとも2回の投与が行われる、上記組成物と;(ii)IgEに関連する障害の治療に使用するための医薬の製造における抗CεmX抗体の使用であり、ここで、医薬は治療が必要な被験体に、少なくとも3ヶ月離れて少なくとも2回の投与が行われ得る、上記使用が含まれる。
【0015】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細は、以下の記載で説明される。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施態様の詳細な説明から明らかになり、また添付の特許請求の範囲を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、FB825の単回投与で治療されたヒト被験体における、総IgEのベースラインからの経時的な平均(±SD)の変化を示す。総IgEは血液試料から測定された。ベースラインは、試験薬投与前の最後の欠失のない評価(繰り返しの及び予定外の評価を含む)として定義される。
図2図2は、FB825の単回投与で治療されたヒト被験体における、総IgEのベースラインからの経時的な平均(±SD)割合の変化を示す。ヒト被験体から得られた血液試料中の総IgEレベルが測定された。ベースラインは、試験薬投与前の最後の欠失のない評価(繰り返しの及び予定外の評価を含む)として定義される。
図3図3は、FB825の単回投与で治療されたヒト被験体における、抗薬物抗体(ADA)のベースラインからの経時的な平均(±SD)変化を示す。被験体から得られた血液試料中のADAが測定された。ベースラインは、試験薬投与前の最後の欠失のない評価(繰り返しの及び予定外の評価を含む)として定義される。
図4図4は、モノクローナル抗体4B12とモノクローナル抗体FB825(ヒト化4B12抗体である)の、VH及びVLのアミノ酸配列の整列を示す。2つの抗体間の差異が強調表示されている。VH及びVL相補性決定領域(CDR)は太字で下線が引かれている。4B12のVH:配列番号4。4B12のVL:配列番号5。FB825のVH:配列番号2。FB825のVL:配列番号3。
図5図5は、アトピー性皮膚炎を有する成人のFB825の安全性と有効性を評価するためのオープンラベル探索的試験における、8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の、湿疹面積と重症度指数(EASI)のベースラインからの変化パーセントを示す図である。
図6図6は、アトピー性皮膚炎を有する成人のFB825の安全性と有効性を評価するためのオープンラベル探索的試験における、8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の、治験責任医師の総合的評価(IGA)のベースラインからの変化パーセントを示す図である。
図7図7は、アトピー性皮膚炎を有する成人のFB825の安全性と有効性を評価するためのオープンラベル探索的試験における、8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の、アトピー性皮膚炎の重症度スコアリング指数(SCORAD)のベースラインからの変化パーセントを示す図である。
図8図8は、アトピー性皮膚炎を有する成人のFB825の安全性と有効性を評価するためのオープンラベル探索的試験における、8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の、掻痒視覚アナログスケール(VAS)のベースラインからの変化パーセントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
アレルギーを発症するリスクが高いアトピーの人では、循環系のIgE濃度が正常レベルの10倍以上に達することがある。アレルゲン特異的IgE抗体の濃度は臨床症状と密接に関連しており、アレルギー性疾患の患者では健常者よりも1000倍以上高い場合がある。免疫グロブリンEは、好塩基球、肥満細胞、活性化好酸球などのエフェクター細胞を、それらが発現する高親和性IgE受容体であるFcεRIを占有することにより感作する。I型過敏症では、アレルゲンはFcεRIにより結合されたIgE分子を架橋し、続いてエフェクター細胞の脱顆粒を引き起こして、ヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症促進性メディエーターを放出する。IgEを介するアレルギー経路は、メディエーター関連のアレルギー症状を引き起こし、局所的又は全身的に免疫活動を開始させる。好塩基球及び肥満細胞はまた、広範な炎症性サイトカイン及びケモカインも放出し、これらは、臨床症状を直接引き起こすだけでなく、様々なタイプの細胞を活性化及び動員して、炎症状態を増強する。従って抗IgE療法は、IgEを介する経路と炎症状態の両方を弱めることができる。
【0018】
本明細書に記載されているのは、総IgEレベルを低下させ、こうしてIgE介在障害を治療する際に使用するための抗CεmX抗体である。そのような抗体は、治療を必要とする被験体に、少なくとも8週間(例えば10週間、12週間、又は3ヶ月)離れていてもよい少なくとも2回の投与で行うことができる。
【0019】
膜結合IgEのCεmXドメインに結合できる抗体
CεmXは、ヒト膜結合ε鎖(mε)のCH4ドメインとC末端膜アンカリングセグメントの間に位置する52アミノ酸のセグメントである。ヒトmIgEの例示的なCεmX断片のアミノ酸配列を以下に提供する(配列番号6):
GLAGGSAQSQ RAPDRVLCHS GQQQGLPRAA GGSVPHPRCH CGAGRADWPG PP
【0020】
本明細書に記載される抗体は、mIgE、例えばB細胞の表面に発現されるmIgEのCεmXドメインに結合することができる。そのような抗体は、例えば抗体依存性細胞障害及び/又は細胞アポトーシスを介して、mIgEを発現するB細胞の細胞死を誘発し、こうしてB細胞を排除し、これが遊離IgEの産生の減少をもたらす。従って本明細書に記載される抗CεmX抗体は、この抗体で治療されている被験体(例えばヒト患者)における総IgEのレベルを低下させることができる。
【0021】
抗体(複数の形態と同義に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される「抗体」という用語は、無傷の(すなわち完全長の)ポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2 、Fvなど)、1本鎖(scFv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、線状抗体、1本鎖抗体、多重特異性抗体(例えば2重特異性抗体)、及びその他の修飾構成の免疫グロブリン分子(これは、抗体のグリコシル化変種、抗体のアミノ酸配列変種、及び共有的に修飾された抗体を含む、必要な特異性の抗原認識部位を含む)を包含する。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、又はIgM(又はそれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体は特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、そしてこれらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分類できる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、ミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造と3次元配置はよく知られている。
【0022】
本明細書に記載される方法で使用される抗体は、マウス、ラット、ヒト、又は任意の他の起源(キメラ又はヒト化抗体を含む)であり得る。
本明細書に記載される抗体のいずれも、モノクローナル又はポリクローナルのいずれかであり得る。「モノクローナル抗体」は同種の抗体集団を指し、「ポリクローナル抗体」は異種の抗体集団を指す。これらの2つの用語は、抗体の供給源や抗体の作成方法を制限するものではない。
【0023】
1つの例において、本明細書に記載の方法で使用される抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその抗原結合断片である非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を指す。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、受容者の相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基で置換されたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらにヒト化抗体は、受容者抗体にもインポートされたCDR又はフレームワーク配列中にも見られないが、抗体の性能をさらに改良及び最適化するために含まれる残基を含み得る。一般にヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最適には免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も含む。抗体は、国際公開第99/58572号に記載されているように改変されたFc領域を有し得る。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体の1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも呼ばれる、元の抗体に対して改変されている1つ以上(1、2、3、4、5、6)のCDRを有する。ヒト化抗体はまた、親和性成熟を含み得る。
【0024】
別の例において本明細書に記載される抗体は、ヒト抗体由来の重定常領域及び軽定常領域を含み得るキメラ抗体である。キメラ抗体とは、第1の種からの可変領域又は可変領域の一部と、第2の種からの定常領域とを有する抗体を指す。通常これらのキメラ抗体では、軽鎖と重鎖の両方の可変領域が、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ラットなどの非ヒト哺乳動物)の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣し、定常部分はヒトなどの別の哺乳動物に由来する抗体中の配列と相同的である。いくつかの実施態様において、可変領域及び/又は定常領域でアミノ酸修飾を行うことができる。
【0025】
いくつかの例において、本明細書に開示される抗体は、B細胞の表面で発現され得る膜結合IgEのCεmxドメインに特異的に結合する。標的又はエピトープに「特異的に結合する」(本明細書では互換的に使用される)抗体は、当技術分野でよく理解されている用語であり、そのような特異的結合を決定する方法も当技術分野でよく知られている。分子は、別の標的に対するよりも、より頻繁に、より迅速に、より長時間、及び/又はより高い親和性で特定の標的抗原に反応又は会合する場合、「特異的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、より高い親和性、結合力で、より迅速に、及び/又はより長時間、標的抗原に「特異的に結合」する。例えば、CεmXドメインエピトープに特異的(又は優先的に)結合する抗体は、他のCεmXドメインエピトープ又は非CεmXドメインエピトープに結合するよりも、より高い親和性、結合力で、より迅速に、及び/又はより長時間、このCεmXドメインエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことにより、例えば第1の標的抗原に特異的に結合する抗体は、第2の標的抗原に特異的又は優先的に結合してもしなくてもよいことも理解される。従って「特異的結合」又は「優先的結合」は、排他的結合を(含むことができるが)必ずしも含む必要はない。一般に、必須ではないが、結合への言及は優先的な結合を意味する。
【0026】
本明細書に記載の抗CεmX抗体の結合親和性は、約100nM未満、例えば約50nM未満、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、又は約50pM~約2pMであり得る。結合親和性はKD 又は解離定数で表すことができ、結合親和性の増加はKD の減少に対応する。CεmXに対する抗体の結合親和性を決定する1つの方法は、抗体の単官能性Fab断片の結合親和性を測定することである。単官能性のFab断片を得るために、抗体(例えばIgG)をパパインで切断するか、組換え法により発現させることができる。抗体の抗CεmX Fab断片の親和性は、表面プラズモン共鳴(BIAcore3000TM表面プラズモン共鳴(SPR)システム、BIAcore, INC, Piscaway N.J.)により決定できる。速度論的会合速度(kon)と解離速度(koff)(一般に25℃で測定)が得られ、平衡解離定数(KD )値はkoff/konとして計算される。
【0027】
いくつかの実施態様において、抗体はヒトIgEのCεmXドメインに結合し、別の哺乳動物種からのIgEには顕著には結合しない。いくつかの実施態様において、抗体は、ヒトIgEならびに別の哺乳動物種由来の1つ以上のIgEに結合する。抗体が結合するエピトープは、連続的又は不連続的であり得る。
【0028】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗CεmX抗体は、CεmXドメインのN末端部分、例えばGLAGGSAQSQRAPDRVL(配列番号1)又はGLAGGSAQSQRA(配列番号7)に結合する。そのような抗体は、図4に記載されている抗体4B12/FB825と同じ重鎖及び/又は軽鎖CDRを有することができる。また米国特許第8,460,664号も参照されたい(その関連する開示内容は参照により本明細書に取り込まれる)。抗CεmX抗体は、4B12のヒト化抗体(例えばFB825)であり得る。いくつかの例では、本明細書に記載の方法で使用するための抗CεmX抗体は、4B12でのヒト化抗体であるFB825(図4)、又はその機能的変種である。また米国特許第8,460,664号も参照されたい(その関連する開示内容は参照により本明細書に取り込まれる)。
【0029】
FB825の機能的変種(同等物)は、本質的にFB825と同じエピトープ結合特異性を有し、FB825と実質的に同様の生物活性(被験体におけるmIgEを発現するB細胞を排除し、総IgEのレベルを下げる活性を含む)を示す。いくつかの実施態様において、FB825の機能的変種は、CDR又はCDR全体における同じ特異性決定残基などの、抗原結合に関与するFB825と同じ領域/残基を含む。他の実施態様においてFB825の機能的変種は、FB825の対応するVHCDRと少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、又は98%)同一のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含むVH鎖、及びFB825の対応するVHCDRと少なくとも75%(例えば、80%、85%、90%、95%、又は98%)同一のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含むVL鎖を含む。例えばFB825の機能的変種は、mAb7EのVHCDRと比較して、VHCDR領域(全部でVHCDR1、CDR2、及び/又はCDR3)に最大5(例えば1、2、3、4、又は5)のアミノ酸残基の変化、及び/又はmAb7EのVHCDRと比較して、VLCDR領域(全部でVLCDR1、CDR2、及び/又はCDR3)に最大5(例えば1、2、3、4、又は5)のアミノ酸残基の変化を含み得る。
【0030】
あるいは、FB825の機能的変種は、FB825のVH鎖と少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、又は98%)同一のVH鎖、及びFB825のVL鎖と少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、又は98%)同一のVL鎖を含む。アミノ酸配列の変化は、VH及び/又はVLフレームワーク領域の1つ以上でのみ発生する可能性がある。
【0031】
2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993 により修飾された Karlin and Altschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990 のアルゴリズムを使用して決定される。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990 のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。目的のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて、BLASTタンパク質検索を実行することができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402, 1997 に記載されているように、ギャップ付きBLASTプログラムを使用することができる。BLAST及びギャップ付きBLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。
【0032】
抗体の調製
本明細書に記載の膜結合IgEのCεmXドメインに結合することができる抗体は、当技術分野で公知の任意の方法により作製することができる。例えばHarlow and Lane, (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York を参照されたい。
【0033】
いくつかの実施態様において、標的抗原(例えばヒトmIgEなどのmIgEのCεmXドメイン)に特異的な抗体は、従来のハイブリドーマ技術により作製することができる。任意選択的にKLHなどの担体タンパク質に結合した完全長の標的抗原又はその断片は、その抗原に結合する抗体を生成するために、宿主動物を免疫するために使用することができる。本明細書にさらに記載されるように、宿主動物の免疫化の経路及びスケジュールは、一般に抗体刺激及び産生のための確立された従来の技術と一致している。マウス抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体を作製するための一般的な技術は、当技術分野で知られており、本明細書に記載されている。ヒト含む任意の哺乳動物被験体又はそれに由来する抗体産生細胞を操作して、ヒトハイブリドーマ細胞株を含む哺乳動物の産生の基礎として機能させることができると考えられる。典型的には宿主動物は、本明細書に記載されるものを含むある量の免疫原が、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内、及び/又は皮内に接種される。
【0034】
ハイブリドーマは、Kohler, B. and Milstein, C. (1975) Nature 256:495-497 の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を使用して、又は Buck, D. W., et al., In Vitro, 18:377-381 (1982) により修正された方法を使用して、リンパ球及び不死化骨髄腫細胞から調製することができる。特に限定されるものではないが、X63-Ag8.653を含む入手可能な骨髄腫株やSalk Institute, Cell Distribution Center, San Diego, Calif., USA から入手できるものを、ハイブリダイゼーションに使用することができる。一般にこの技術は、ポリエチレングリコールなどの融合剤を使用して又は当業者に公知の電気的手段により、骨髄腫細胞とリンパ系細胞を融合することを含む。融合後、細胞を融合培地から分離し、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの選択的増殖培地で増殖させて、ハイブリダイズしていない親細胞が排除される。本明細書に記載されている血清を補足した又は補足していない培地はいずれも、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用することができる。細胞融合技術の別の代替法として、EBV不死化B細胞を使用して、本発明の抗CεmXモノクローナル抗体を産生することができる。ハイブリドーマは拡張され、必要に応じてサブクローニングされ、上清が従来のイムノアッセイ手順(例えば、放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイ、又は蛍光免疫アッセイ)により抗免疫原活性についてアッセイされる。
【0035】
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、CεmXドメインに結合することができるモノクローナル抗体を産生する親ハイブリドーマの、全ての誘導体、子孫細胞を包含する。そのような抗体を産生するハイブリドーマは、既知の方法を使用してインビトロ又はインビボで増殖させることができる。モノクローナル抗体は、必要に応じて、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、及び限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製方法により、培養液又は体液から単離することができる。望ましくない活性は、存在する場合、例えば固相に付着した免疫原でできた吸着剤に調製物をかけ、免疫原から所望の抗体を溶出又は放出することにより除去することができる。免疫する種において免疫原性であるタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシン阻害剤)に結合した標的アミノ酸配列を含む標的抗原又は断片を用いて、二官能性又は誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はR1N=C=NR(R及びR1は異なるアルキル基である)を使用して宿主動物を免疫化することは、抗体(例えばモノクローナル抗体)の集団を与えることができる。
【0036】
所望であれば、目的の(例えばハイブリドーマにより産生される)抗体(モノクローナル又はポリクローナル)を配列決定し、次にポリヌクレオチド配列を発現又は増殖のためにベクターにクローニングすることができる。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞内のベクターで維持することができ、その後、宿主細胞を将来の使用のために拡張及び凍結することができる。代替として、ポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に使用して、抗体を「ヒト化」するか、又は抗体の親和性(親和性成熟)、又は他の特性を改善することができる。例えば抗体がヒトの臨床試験及び治療に使用される場合の免疫応答を回避するために、定常領域をヒト定常領域にさらに類似するように操作することができる。抗体配列を遺伝子操作して、標的抗原に対する親和性を高め、総IgEを低下させる有効性を高めることが望ましい場合がある。当業者には、1つ以上のポリヌクレオチドの変更を抗体に加えても、それでも標的抗原に対するその結合特異性を維持できることが明らかであろう。
【0037】
他の実施態様において、完全なヒト抗体は、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することにより得ることができる。より望ましい(例えば完全ヒト抗体)又はより強固な免疫応答を生じるように計画されたトランスジェニック動物もまた、ヒト化抗体又はヒト抗体の生成に使用され得る。そのような技術の例は、Amgen, Inc. (Fremont, Calif.) の XenomouseRTM と Medarex, Inc. (Princeton, N.J.) の HuMAb-MouseRTM 及び TC MouseTM である。別の代替法では、抗体は、ファージディスプレイ技術により組換えにより作製され得る。例えば米国特許第 5,565,332号;5,580,717号;5,733,743号;及び6,265,150号;及び Winter et al., (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:433-455 を参照されたい。あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-553)を使用して、免疫化されていないドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体及び抗体断片をインビトロで生成することができる。
【0038】
無傷の抗体(完全長抗体)の抗原結合断片は、通常の方法で調製することができる。例えばF(ab’)2断片は、抗体分子のペプシン消化により生成することができ、Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成することができる。
【0039】
ヒト化抗体、キメラ抗体、1本鎖抗体、及び2重特異性抗体などの遺伝子操作された抗体は、例えば従来の組換え技術を介して生成することができる。1つの例において、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の方法を使用して(例えばモノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及び配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。いったん単離されると、DNAは1つ以上の発現ベクター中に配置することができ、これは次に、本来は免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が得られる。例えばPCT公開番号WO87/04462を参照されたい。次に、例えば相同的マウス配列の代わりに、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を使用することにより(Morrison et al., (1984) Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851)、又は非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合させることにより、DNAを修飾することができる。こうして、標的抗原の結合特異性を有する「キメラ」抗体又は「ハイブリッド」抗体などの遺伝子操作された抗体を調製することができる。
【0040】
「キメラ抗体」の産生のために開発された技術は、当技術分野でよく知られている。例えばMorrison et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851; Neuberger et al. (1984) Nature 312, 604、及び Takeda et al. (1984) Nature 314:452 を参照されたい。
【0041】
ヒト化抗体を構築するための方法もまた、当該分野で公知である。例えばQueen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:10029-10033 (1989) を参照されたい。1つの例において、親の非ヒト抗体のVH及びVLの可変領域は、当技術分野で公知の方法に従って3次元分子モデル化分析に供される。次に、同じ分子モデル化分析を使用して、正しいCDR構造の形成に重要であると予測されるフレームワークのアミノ酸残基が特定される。並行して、親の非ヒト抗体のアミノ酸配列と相同的なアミノ酸配列を有するヒトVH及びVL鎖は、親VH及びVL配列を検索用語として使用して、任意の抗体遺伝子データベースから特定される。次に、ヒトVH及びVLアクセプター遺伝子が選択される。
【0042】
選択されたヒトアクセプター遺伝子内のCDR領域は、親の非ヒト抗体又はその機能的変種からのCDR領域で置き換えることができる。必要に応じて、CDR領域との相互作用に重要であると予測される親鎖のフレームワーク領域内の残基(上記の説明を参照)を使用して、ヒトアクセプター遺伝子内の対応する残基を置換することができる。
【0043】
1本鎖抗体は、組換え技術を介して、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列と軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することにより調製することができる。好ましくは、2つの可変領域の間に柔軟なリンカーが組み込まれる。あるいは、1本鎖抗体の製造について記載された技術(米国特許第4,946,778号及び4,704,692号)を改変して、ファージscFvライブラリーを製造することができ、IgEに特異的なscFvクローンを、通常の方法に従ってライブラリーから同定することができる。
【0044】
当技術分野で既知であり本明細書に記載の方法に従って得られる抗体は、当技術分野で公知の方法を使用して特徴付けることができる。例えば1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること、すなわち「エピトープマッピング」である。例えば Harlow and Lane, Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999 の第11章に記載されているように、抗体-抗原複合体の結晶構造の解消、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、及び合成ペプチドベースのアッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピング及び特徴付けるための多くの方法が、当該分野で公知である。追加の例では、エピトープマッピングを使用して、抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープは、直線状のエピトープ、すなわち単一のストレッチのアミノ酸に含まれる線状エピトープか、又は必ずしも単一のストレッチ(一次構造の直線配列)に含まれているとは限らないアミノ酸の3次元相互作用により形成される立体配座エピトープでもよい。様々な長さ(例えば、少なくとも4~6アミノ酸長)のペプチドを単離又は合成(例えば、組み換え)して、抗体との結合アッセイに使用することができる。別の例では、抗体が結合するエピトープは、体系的なスクリーニングで、標的抗原配列に由来する重複ペプチドを使用し、抗体による結合を測定することにより決定することができる。遺伝子断片発現アッセイによれば、標的抗原をコードする読みとり枠は、ランダムに又は特定の遺伝子構築により断片化され、抗原の発現断片と試験される抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えばPCRにより産生され、次に転写され、インビトロで放射性アミノ酸の存在下でタンパク質に翻訳されてもよい。放射性標識された抗原断片への抗体の結合は、免疫沈降とゲル電気泳動により決定される。特定のエピトープは、ファージ粒子の表面に表示されたランダムなペプチド配列の大きなライブラリー(ファージライブラリー)を使用して同定することもすることができる。あるいは、重複するペプチド断片の定義されたライブラリーを、単純な結合アッセイで試験抗体への結合について試験することができる。さらなる例では、抗原結合ドメインの突然変異誘発、ドメインスワップ実験、及びアラニン走査突然変異誘発を行って、エピトープ結合に要求される、十分な、及び/又は必要な残基を同定することができる。例えば、IgEポリペプチドの様々な断片が、密接に関連しているが抗原的には異なるタンパク質(免疫グロブリンタンパク質ファミリーの別のメンバーなど)の配列で置き換えられた(スワップされた)標的抗原の変異体を使用して、ドメインスワップ実験を行うことができる。変異免疫グロブリンへの抗体の結合を評価することにより、抗体結合に対する特定の抗原断片の重要性を評価することができる。
【0045】
あるいは、同じ抗原に結合することが知られている他の抗体を使用して競合アッセイを行って、抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定することができる。競合アッセイは当業者によく知られている。
【0046】
医薬組成物
上記の抗CεmX抗体の1つ以上を、緩衝液を含む医薬的に許容し得る担体(賦形剤)と混合して、IgEに関連する障害の治療に使用するための医薬組成物を形成することができる。「許容し得る」とは、担体が組成物の有効成分と適合しなければならず(そして好ましくは、有効成分を安定化することができなければならない)、かつ治療される被験体に有害であってはならないことを意味する。緩衝液を含む医薬的に許容し得る賦形剤(担体)は当技術分野でよく知られている。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover を参照されたい。1つの例において、医薬組成物は、標的抗原の異なるエピトープを認識する2つ以上の抗CεmX抗体を含む。
【0047】
本発明の方法で使用される医薬組成物は、凍結乾燥配合又は水溶液の形態で、医薬的に許容し得る担体、賦形剤、又は安定剤を含むことができる。Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover。許容し得る担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度で受容者に対して無毒であり、緩衝液、例えばリン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸及びメチオニン;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、デキストランを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトール;ナトリウムなどの塩を形成する対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)を含んでよい。医薬的に許容し得る賦形剤は、本明細書でさらに説明される。
【0048】
いくつかの例では、本明細書に記載の医薬組成物は、抗CεmX抗体を含有するリポソームを含み、これは、 Epstein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688 (1985); Hwang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030 (1980); and U.S. Pat. Nos. 4,485,045 と米国特許第4,485,045号及び4,544,545号に記載されているような、当該分野で公知の方法により調製することができる。循環時間が拡張されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法により生成することができる。リポソームは、所定の孔径のフィルターを通して押し出され、所望の直径を有するリポソームが得られる。
【0049】
抗CεmX抗体はまた、例えばコアセルベーション技術により、又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、それぞれコロイド状薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、及びナノカプセル)、又はマクロエマルション中に捕獲され得る。このような技術は当技術分野で知られており、例えばRemington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000) を参照されたい。
【0050】
他の例では、本明細書に記載される医薬組成物は、徐放性形態で処方することができる。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは、例えばフィルム又はマイクロカプセルなどの成形品の形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7エチル-L-グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸共重合体、例えば LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸共重合体と酢酸ロイプロリドで構成された注射用ミクロスフェア)、ショ糖酢酸イソ酪酸、ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0051】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗CεmX抗体で、例えば本明細書に同様に記載されるFB825、又はその機能的変種を含む医薬組成物は、緩衝液(これはヒスチジン又はアルギニンなどのアミノ酸をさらに含み得る)、塩(例えば塩化ナトリウム)、及び/又は非イオン性界面活性剤などの界面活性剤をさらに含み得る水性製剤であり得る。例えば水性製剤は、約10~30mg/mlの濃度の抗体、約10~30mMの濃度のアミノ酸(例えばヒスチジン又はアルギニン)を含む緩衝液、約0.01~0.03%の濃度のポリソルベート80などの界面活性剤、及び/又は約120~160mMの濃度の塩化ナトリウムを含み得る。このような水性製剤は、約5~8のpHを有し得る。1つの具体例において、水性製剤は、約20mg/mlの濃度の抗体FB825、約20mMの濃度のL-ヒスチジン、約140mMの濃度の塩化ナトリウム、約0.02%の濃度のポリソルベート80、及び約6.5のpHを含み得る。
【0052】
用語「約(about)」及び「約(approximately)」は、当業者により決定される具体的な値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるか、すなわち測定系の限界に依存する。例えば「約」は、当技術分野の慣行に従って、許容可能な標準偏差内を意味し得る。あるいは「約」は、所定の値の最大±20%、好ましくは最大±10%、より好ましくは最大±5%、さらに好ましくは最大±1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物系又はプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは2倍以内を意味し得る。具体的な値が本出願及び特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、「約」という用語は暗示的であり、この文脈では、具体的な値の許容誤差範囲内を意味する。
【0053】
インビボ投与に使用される医薬組成物は無菌でなければならない。これは、例えば滅菌濾過膜を介する濾過により容易に達成される。治療用抗体組成物は、一般に無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルに入れられる。
【0054】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口、又は直腸投与、又は吸入若しくは吹送による投与用に、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、液剤、懸濁液、又は坐剤などの単位剤形であり得る。
【0055】
錠剤などの固形組成物を調製するために、主要な有効成分は、医薬担体、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム又はガムなどの医薬担体、及び他の医薬希釈剤、例えば水と混合して、本発明の化合物又はその無毒の医薬的に許容し得る塩の均質な混合物を含む固体予備配合組成物を形成することができる。これらの予備配合組成物を均質と呼ぶ場合、有効成分が組成物全体に均一に分散されているため、組成物を錠剤、丸薬、及びカプセルなどの等しく有効な単位剤形に容易に細分することができることを意味する。次にこの固体予備配合組成物は、0.1~約500mgの本発明の有効成分を含有する上記のタイプの単位剤形に細分される。新規組成物の錠剤又は丸剤は、コーティングされるか、そうでなければ配合されて、長期作用の利点を与える剤形を提供することができる。例えば錠剤又は丸剤は、内部投与成分及び外部投与成分を含むことができ、後者は前者を覆うエンベロープの形態である。これらの2つの成分は、胃での崩壊に抵抗するように働き、内部成分が無傷で十二指腸に通過するか、又は放出が遅延することを可能にする腸溶性層により分離することができる。このような腸溶層又は腸溶性コーティングには、多くの高分子酸及び高分子酸とシェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースなどの物質との混合物を含む様々な物質を使用することができる。
【0056】
適切な界面活性剤には、特に非イオン性薬剤、例えばポリオキシエチレンソルビタン(例えばTween(商標)20、40、60、80、又は85)及び他のソルビタン(例えばSpan(商標)220、40、60、80、又は85)が含まれる。界面活性剤を含む組成物は、好都合には0.05~5%の界面活性剤を含み、0.1~2.5%であり得る。必要に応じて、他の成分、例えばマンニトール又は他の医薬的に許容し得るビヒクルを加えてもよいことは理解されるであろう。
【0057】
適切なエマルジョンは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)、及び Lipiphysan(商標)などの市販の脂肪エマルジョンを使用して調製することができる。有効成分は、予備混合されたエマルジョン組成物に溶解するか、又は油(例えば大豆油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油、又はアーモンド油)に溶解され、及びリン脂質(例えば卵のリン脂質、大豆のリン脂質、又は大豆のレシチン)と水に混合時に形成されるエマルジョンに溶解することができる。エマルションの張度を調整するために、他の成分、例えばグリセロール又はグルコースを加えてもよいことが理解されるであろう。適切なエマルションは、典型的には20%までの、例えば5~20%の油を含むであろう。
【0058】
エマルション組成物は、抗CεmX抗体をIntralipid(商標)又はその成分(大豆油、卵リン脂質、グリセロール、及び水)と混合することにより調製されたものでもよい。
【0059】
吸入又は吹送のための医薬組成物には、医薬上許容し得る水性若しくは有機溶媒、又はそれらの混合物中の溶液及び懸濁液、ならびに粉末が含まれる。液体又は固体組成物は、上記の適切な医薬的に許容し得る賦形剤を含み得る。いくつかの実施態様において、組成物は、局所的又は全身的作用のために経口又は経鼻呼吸経路により投与される。
【0060】
好ましくは無菌の医薬的に許容し得る溶媒中の組成物は、ガスの使用により噴霧され得る。噴霧される溶液は、噴霧装置から直接吹き付けられてもよく、又は噴霧装置は、フェイスマスク、テント、又は間欠的陽圧吹きつけ器に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液、又は粉末組成物は、適切な方法で製剤を送達する装置から、好ましくは経口的又は経鼻的に投与することができる。
【0061】
IgEに関連する障害を治療するための抗CεmX抗体の使用
本明細書に開示される方法を実施するために、有効量の上記医薬組成物を、治療を必要とする被験体(例えばヒト)に、又は静脈内投与などの適切な経路を介して、例えばボーラスとして、又は一定期間にわたる持続注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、経口、吸入、又は局所経路により投与することができる。ジェットネブライザー及び超音波ネブライザーを含む液体製剤用の市販のネブライザーは、投与に有用である。液体製剤は直接噴霧することができ、凍結乾燥粉末は復元後に噴霧することができる。あるいは抗CemX抗体は、フルオロカーボン製剤及び定量吸入器を使用してエアロゾル化するか、又は凍結乾燥及び粉砕粉末として吸入することができる。
【0062】
本明細書に記載の方法により治療される被験体は、哺乳動物、より好ましくはヒトであり得る。哺乳動物には、特に限定されるものではないが、家畜、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットが含まれる。治療を必要とするヒト被験体は、IgEに関連する障害(例えばアレルギー性喘息、ならびに当技術分野で公知の及び/又は本明細書に開示されている他の障害)を有するか、その危険性があるか、又は疑われるヒト患者であり得る。アレルギー性喘息などのIgEに関連する障害を有する被験体は、通常の医学的検査、例えば臨床検査により特定することができる。IgEに関連する障害を有する疑いのある被験体は、IgEレベルの上昇、及び/又はアレルゲン及び/又は抗原に対する反応亢進などの疾患の1つ以上の症状を示す可能性がある。障害の危険性がある被験体は、その障害の危険因子の1つ以上を有する被験体であり得る。
【0063】
例示的なIgEに関連する障害には、特に限定されるものではないが、喘息、アレルギー性鼻炎、高IgE症候群、アトピー性皮膚炎、寒冷じんま疹、慢性じんま疹、コリン作動性じんま疹、慢性鼻副鼻腔炎、全身性肥満細胞症、皮膚肥満細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管浮腫、間質性膀胱炎、好酸球関連の胃腸障害、食物アレルギー、又は薬物アレルギーが含まれる。
【0064】
本明細書で使用される「有効量」は、単独で、又は1種以上の他の活性物質と組み合わせた、被験体に治療効果を与えるのに必要な各活性物質の量を指す。有効量は、当業者により認識されるように、治療される特定の状態、状態の重症度、個々の患者パラメーター(年齢、身体状態、サイズ、性別、及び体重を含む)、治療期間、併用療法の性質(存在する場合)、特定の投与経路、及び医療従事者の知識と専門知識内の同様の要因に依存して変動する。これらの要因は当業者によく知られており、通常の実験で対処することができる。個々の成分又はそれらの組み合わせの最大投与量、すなわち健全な医学的判断による最も安全な投与量を使用することが一般に好ましい。しかしながら、患者は、医学的理由、心理的理由、又は事実上任意の他の理由のために、より低い投与量又は許容投与量を主張し得ることは、当業者により理解されるであろう。
【0065】
半減期などの経験的考慮事項は、一般に投与量の決定に寄与する。例えばヒト化抗体又は完全ヒト抗体などのヒト免疫系と適合性のある抗体を使用して、抗体の半減期を延長し、抗体が宿主の免疫系により攻撃されるのを防ぐことができる。投与の頻度は、治療の過程で決定及び調整することができ、一般にIgEに関連する障害の治療及び/又は抑制及び/又は改善及び/又は遅延に基づいているが、必ずしもそうである必要はない。あるいは、抗CεmX抗体の持続的連続放出製剤が適切であるかもしれない。徐放性を達成するための様々な製剤及び装置が当技術分野で知られている。
【0066】
1つの例において、本明細書に記載される抗CεmX抗体の投与量は、抗CεmX抗体を1回以上投与された個体において経験的に決定され得る。個体には、抗CεmX抗体の漸増投与量が与えられる。抗CεmX抗体の有効性を評価するために、IgEに関連する障害の指標(IgEレベルなど)を追跡することができる。
【0067】
本開示の目的のために、抗CεmX抗体の適切な投与量は、使用される特定の抗CεmX抗体(又はその組成物)、IgEに関連する障害のタイプ及び重症度、抗体投与が予防目的か又は治療目的か、以前の治療、患者の病歴、及び抗体に対する反応、主治医の裁量に依存するであろう。典型的には医師は、所望の結果を達成する投与量に到達するまで、FB825などの抗CεmX抗体を投与する。抗CεmX抗体の投与は、例えば受容者の生理学的状態、投与の目的が治療的であるか予防的であるか、及び当業者に既知の他の要因に応じて、継続的又は断続的であり得る。
【0068】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗CεmX抗体(例えばFB825)は、総IgEレベルを少なくとも20%(例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上)減少させるのに十分な量で、治療を必要とする被験体に投与される。
【0069】
本明細書で使用される「治療する」という用語は、障害、疾患の症状、又は疾患に対する素因を治療、治癒、緩和、軽減、変更、治療、改善、改良、又は影響を与えることを目的とする、IgEに関連する疾患、IgEに関連する疾患の症状、又は疾患に対する素因を有する被験体への、1つ以上の活性物質を含む組成物の適用又は投与を指す。
【0070】
IgEに関連する疾患の緩和には、疾患の発症又は進行の遅延、又は疾患の重症度の軽減が含まれる。病気を緩和することは、必ずしも治癒的な結果を必要としない。本明細書で使用される場合、疾患(IgEに関連する疾患など)の発症を「遅らせる」とは、疾患の進行を延期、妨害、遅延(slow)、遅延(retard)、安定化、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、疾患の履歴及び/又は治療されている個体に応じて、様々な長さの時間であり得る。疾患の発症を「遅らせる」又は緩和する、又は疾患の発症を遅延させる方法は、方法を使用しない場合と比較した場合、所定の時間枠で疾患の1種以上の症状が発症する確率を低下させる、及び/又は所定の時間枠で症状の程度を軽減する方法である。このような比較は通常、統計的に有意な結果を得るのに十分な数の被験体を使用した臨床研究に基づく。
【0071】
疾患の「発症」又は「進行」とは、疾患の最初の出現及び/又はその後の進行を意味する。疾患の発症は、当技術分野で公知の標準的な臨床技術を使用して検出可能であり、評価可能である。ただし発症とは、検出できない進行も指す。この開示の目的のために、発症又は進行は症状の生物学的経過を指す。「発症」には、発生、再発、発症が含まれる。本明細書中で使用される場合、IgEに関連する疾患の「発症」又は「発生」は、最初の発症及び/又は再発を含む。
【0072】
本明細書に記載の方法を実施するために、FB825などの任意の抗Cεmx抗体を、適切な経路を介して、例えば静脈内注入又は皮下注射により、単回投与又は複数回投与して、治療を必要とする被験体(例えばヒト患者)に与えることができる。各投与の抗Cεmx抗体の投与量は、本明細書に記載のものを含む種々の要因に応じて、約0.5mg/kg~約25mg/kg(例えば約1mg/kg~約20mg/kg、約5mg/kg~約15mg/kg、又は約10mg/kg~約20mg/kg)の範囲であり得る。数日以上の反復投与の場合、状態に応じて、症状の所望の抑制が起こるまで、又はIgEに関連する障害又はその症状を緩和するのに十分な治療レベルが達成されるまで、治療は持続される。
【0073】
抗CεmX抗体(例えばFB825)の投与は、基本的に予め選択された期間にわたる連続的投与であるか、又はIgEに関連する障害を発症する前、その間、又は後に、一連の間隔を空けた投与であり得る。例示的な投与処方は、治療を必要とする被験体に、抗Cemx抗体の1回目の投与量(例えば3mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、又は25mg/kg)を投与し、その後、1回目の投与の少なくとも3か月後(例えば、4か月、5か月、又は6か月後)に抗体の2回目の投与が行われる。2回目の投与の投与量は、1回目の投与よりも多くても、同じでも、少なくてもよい。医師が達成したいと望む薬物動態学的崩壊のパターンに応じて、他の投与処方が有用である可能性がある。
【0074】
いくつかの実施態様において、治療を必要とする被験体は、適切な量(例えば3mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、又は25mg/kg)で)の抗体の1回目の投与量を与えられ得る。次に、被験体は、IgEに関連する障害を示す症状、例えばアレルギー反応及び/又は総IgEレベルの上昇を示す症状について定期的に追跡される。そのような症状が観察された場合、被験体に抗体の2回目の投与を行われる。
【0075】
また、本開示の範囲内には、そのような障害の発生のリスクを低減するための、任意の抗Cεmx抗体によるIgEに関連する障害の予防的治療がある。そのような予防的治療に適した被験体は、IgEに関連する障害の病歴及び/又はIgEに関連する障害の家族歴を有するヒト患者であり得る。
【0076】
医学分野の当業者に知られている従来の方法を使用して、治療される疾患の種類又は疾患の部位に応じて、医薬組成物を被験体に投与することができる。この組成物はまた、他の従来の経路を介して、例えば経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、経膣的に、又は埋め込まれたリザーバーを介して投与され得る。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内、及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。さらにこれは、1、3、又は6ヶ月のデポー注射可能又は生分解性の材料及び方法を使用するなど、注射可能なデポー投与経路を介して被験体に投与することができる。
【0077】
注射可能な組成物は、様々な担体、例えば植物油、ジメチルアクタミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)を含み得る。静脈内注射の場合、水溶性抗体を点滴法により投与することができ、それにより抗体及び生理学的に許容し得る賦形剤を含む医薬製剤が注入される。生理学的に許容し得る賦形剤には、例えば5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンゲル液、又は他の適切な賦形剤が含まれ得る。筋肉内調製物、例えば抗体の適切な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水、又は5%グルコース溶液などの医薬賦形剤に溶解して投与することができる。
【0078】
1つの実施態様において、抗CεmX抗体は、部位特異的又は標的化された局所送達技術により投与される。部位特異的又は標的化された局所送達技術の例には、抗CεmX抗体の様々な移植可能なデポ源又は局所送達カテーテル、例えば注入カテーテル、留置カテーテル、又は針カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャント及びステント、又は他の埋め込み型装置、部位特異的担体、直接注射、又は直接塗布が含まれる。例えばPCT公開番号WO00/53211及び米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0079】
アンチセンスポリヌクレオチド、発現ベクター、又はサブゲノムポリヌクレオチドを含む治療用組成物の標的化送達もまた使用され得る。受容体媒介DNA送達技術は、例えば Findeis et al., Trends Biotechnol. (1993) 11:202; Chiou et al., Gene Therapeutics: Methods And Applications Of Direct Gene Transfer (J. A. Wolff, ed.) (1994); Wu et al., J. Biol. Chem. (1988) 263:621; Wu et al., J. Biol. Chem. (1994) 269:542; Zenke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87:3655; Wu et al., J. Biol. Chem. (1991) 266:338 に記載されている。ポリヌクレオチドを含む治療用組成物は、遺伝子治療プロトコールでの局所投与のために、約100ng~約200mgの範囲のDNAで投与される。いくつかの実施態様において、約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μg、及び約20μg~約100μgのDNA、又はそれ以上の濃度範囲のDNAもまた、遺伝子治療プロトコール中に使用することができる。
【0080】
本明細書に記載される治療用ポリヌクレオチド及びポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達され得る。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源又は非ウイルス起源であり得る(一般的に、Jolly, Cancer Gene Therapy (1994) 1:51; Kimura, Human Gene Therapy (1994) 5:845; Connelly, Human Gene Therapy (1995) 1:185; 及び Kaplitt, Nature Genetics (1994) 6:148を参照)。そのようなコード配列の発現は、内因性の哺乳動物又は異種のプロモーター及び/又はエンハンサーを使用して誘導することができる。コード配列の発現は、構成的又は調節されたものでもよい。
【0081】
所望のポリヌクレオチドの送達及び所望の細胞における発現のためのウイルスベースのベクターは、当該分野で公知である。例示的なウイルスベースのビヒクルには、特に限定されるものではないが、組換えレトロウイルス(例えばPCT公開番号WO90/07936、WO94/03622、WO93/25698、WO93/25234、WO93/11230、WO93/10218、WO91/02805;米国特許第5,219,740号及び第4,777,127号;GB特許第2,200,651号;及びEP特許第0345242号を参照)、アルファウイルスベースのベクター(例えばシンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67;ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373;ATCC VR-1246)、及びベネズエラ馬脳炎ウイルス(ATCC VR-923;ATCC VR-1250;ATCC VR-1249;ATCC VR-532)、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えばPCT公開番号WO94/12649、WO93/03769、WO93/19191、WO94/28938、WO95/11984、及びWO95/00655を参照)が含まれる。Curiel, Hum. Gene Ther. (1992) 3:147 に記載されているように、死滅したアデノウイルスに連結されたDNAの投与も使用することができる。
【0082】
非ウイルス送達ビヒクル及び方法もまた用いることができ、これには、特に限定されるものではないが、死滅したアデノウイルスのみに連結されているか又は連結されていないポリカチオン性凝縮DNA(例えばCuriel, Hum. Gene Ther. (1992) 3:147を参照);リガンド結合DNA(例えば、Wu, J. Biol. Chem. (1989) 264:16985を参照);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば米国特許第5,814,482号;PCT公開番号WO95/07994;WO96/17072;WO95/30763;及びWO97/42338を参照)、及び核酸電荷中和、又は細胞膜との融合が含まれる。裸のDNAも使用することができる。例示的な裸のDNA導入法は、PCT公開番号WO90/11092、及び米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用することができるリポソームは、米国特許第5,422,120号;PCT公開番号WO95/13796;WO94/23697;WO91/14445;及びEP特許第0524968号に記載されている。追加のアプローチは、Philip, Mol. Cell. Biol. (1994) 14:2411、及び Woffendin, Proc. Natl. Acad. Sci. (1994) 91:1581 に記載されている。
【0083】
本明細書に記載のタンパク質ベースの抗CεmX抗体(例えばFB825)のいずれかの発現を指令するために、発現ベクターを使用することができることも明らかである。例えばCεmX及び/又はIgEに結合することができる他の抗CεmX抗体断片は、当技術分野で知られている。
【0084】
本明細書に記載の方法で使用される具体的な投与処方、すなわち投与量、タイミング、及び繰り返しは、具体的な被験体及びその被験体の病歴に依存する。本明細書に記載の抗Cmex抗体はいずれも、薬剤の有効性を増強及び/又は補完する働きをする他の薬剤(例えばIgEに関連する障害を治療するための他の薬剤)と組み合わせて使用することができる。
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗CεmX抗体、例えばFB825は、以下のようにアトピー性皮膚炎を治療するために使用される。アトピー性皮膚炎は湿疹としても知られており、発赤やかゆみを特徴とする慢性的な皮膚疾患である。これは子供によく見られるが、どの年齢でも起きる。治療が必要な患者は、乾燥肌、かゆみ、赤から茶色がかった灰色の斑点、小さな隆起した隆起(これは、引っかいたときに体液が漏れ、かさぶたになる可能性がある)、厚みのある、ひびの入った、うろこ状の皮膚、及び/又は傷つきによる生の敏感な腫れた皮膚を含むアトピー性皮膚炎の1つ以上の症状を有することで、日常的な診療で特定することができる。いくつかの例では、候補被験体の総IgEレベル及びアレルゲン特異的IgEのレベルを、日常的な診療で検査することができる。候補被験体のIgEレベル(例えば、総IgE、アレルゲン特異的IgE、又はその両方)は、正常なレベル(アトピー性皮膚炎又はIgEに関連するアレルギー障害の無い同じ種、例えばヒトの被験体の平均IgEレベルを表す)より高い。
【0086】
治療を必要とするヒト患者には、本明細書に記載される従来の経路を介して、3mg/kg~8mg/kgの範囲の抗体の1回目の投与量が与えられ得る。いくつかの例では、1回目の投与量は5mg/kgである。1回目の投与後、患者の総IgEレベルを追跡することができる。1回目の投与から3~4週間後のIgEレベルの低下が50%未満の場合は、1回目の投与から3~4週間後に患者に2回目の抗体投与を行うことができる。2回目の投与量は、1回目の投与量と同じであっても1回目の投与量よりも少なくてもよい。いくつかの例では、1回目の投与量と2回目の投与量の両方が5mg/kgであり、1~2時間でIV注入により投与される。有効性及び/又は安全性を示す他のバイオマーカーも、治療の経過中に追跡することができる。そのようなバイオマーカーには、特に限定されるものではないが、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン-3、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、ペリオスチン、IL-1a、IL-4、IL-5、IL-13、IL-16、IL-31、M-CSF、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0087】
上記の治療を受けるヒト患者は、例えば Hannifin and Rajka の Eishenfield 改訂基準により定義され、アレルゲン特異的IgE陽性により裏付けられる通常の医療行為により診断された場合、少なくとも3年間慢性アトピー性皮膚炎を患う可能性がある。患者は次の特徴の1つ以上を有する可能性がある:(i)湿疹面積と重症度指数(EASI)スコアが14を超える、(ii)治験責任医師の総合評価(IGA)スコアが3を超える(5ポイントスケール)、(iii)体表面積(BSA)が10%を超える、(iv)治療前の少なくとも1か月又は少なくとも3か月間の局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤の安定した処方に対する不十分な応答の病歴。さらにヒト患者は、治療前の少なくとも7日間、皮膚軟化剤の安定した投与を1日2回与えられてもよい。
【0088】
いくつかの例では、本明細書に記載の抗CεmX抗体(例えばFB825)は、保湿剤(例えば少なくとも1日2回などの安定した投与)及び/又は局所コルチコステロイド(TCS)と併用することができる。中程度の有効性のTCSは、病変が活発な領域に適用され、病変が制御された後に低有効性のTCSに切り替えることができる。病変が再発した場合、有効性が中程度のTCSによる治療を、ステップダウンアプローチで再開することができる。中程度の有効性のTCSで毎日治療した後も病変が持続又は悪化している場合は、安全でないと見なされない限り、高又は超高有効性のTCSを使用することができる。低有効性TCSは、薄い皮膚の領域(顔、首、四肢間、性器領域、皮膚萎縮の領域など)、又は中有効性TCSの継続使用が安全ではないと見なされる部位で使用することができる。
【0089】
低、中、高、又は超高有効性を有するTCSは、当技術分野でよく知られている。例示的な中有効性のTCSには、0.05%プロピオン酸フルチカゾンクリーム、0.1%フロ酸モメタゾンクリーム、又は0.06%吉草酸ベタメタゾンクリームが含まれる。例示的な低有効性のTCSには、1%のヒドロコルチゾン軟膏が含まれる。例示的な高有効性のTCSは、0.05%のフルオシノニドクリーム又は0.25%のデソミメタゾン軟膏であり得る。例示的な超高有効性のTCSは、0.05%のプロピオン酸クロベタゾール軟膏であり得る。
【0090】
いくつかの例では、本明細書に記載の治療を受ける患者は、以下の治療の1つ以上を受けていない:(i)局所タクロリムス及びピメクロリムス、(ii)コルチコステロイドの全身治療、(iii)ロイコトリエン阻害剤、(iv)アレルゲン免疫療法、(v)免疫抑制剤又は免疫調節剤の全身治療(例えば、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、IFN-γ、アザチオプリン、メトトレキサート、又は生物製剤)、(vi)生(例えば、弱毒化)ワクチン、及び/又は(vii)伝統的漢方医学。患者はまた、いかなる外科的処置及び/又はUV処置も受けていなくてもよい。
【0091】
本明細書に記載のいずれの方法も、初回投与後の被験体におけるヘモグロビン、上気道感染、尿路感染の低下、又はそれらの組み合わせの存在を評価することをさらに含み得る。1つ以上の存在が観察される場合、2回目の投与の抗Cemx抗体(例えばFB825)の量は減少させることができる。あるいは、治療を中止してもよい。
【0092】
IgEに関連する障害の治療に使用されるキット
本開示はまた、IgEに関連する障害の治療において使用するためのキットを提供する。そのようなキットは、本明細書に記載の抗Cεmx抗体(例えばFB825)を含む1つ以上の容器を含むことができる。
【0093】
いくつかの実施態様において、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従って使用するための説明書を含むことができる。含まれる説明書は、本明細書に記載の方法のいずれかに従って、IgEに関連する障害を治療、発症遅延、又は緩和するための抗Cεmx抗体の投与の説明を含むことができる。キットはさらに、その個体が障害を有するか、有する疑いがあるか、又は障害のリスクがあるかどうかの特定に基づいて、治療に適した個体を選択するための説明を含み得る。さらに他の実施態様において説明書は、IgEに関連する障害を発症するリスクを低減するための治療を必要とする被験体に、抗Cεmx抗体を投与するための説明を含む。
【0094】
抗Cεmx抗体の使用に関する指示には、一般に、目的の治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報が含まれている。容器は、単位投与量、バルクパッケージ(例えば複数回投与パッケージ)、又はサブユニット投与量であり得る。本発明のキットで提供される指示は、通常、ラベル又は添付文書(例えばキットに含まれる紙シート)に書かれた指示であるが、機械可読指示(例えば磁気又は光学記憶ディスク上の指示)も許容し得る。
【0095】
ラベル又は添付文書は、組成物がIgEに関連する障害の治療、発症遅延、及び/又は緩和に使用されることを示す。本明細書に記載される方法のいずれかを実施するための指示が提供され得る。
【0096】
本開示のキットは、適切なパッケージに入っている。適切なパッケージには、特に限定されるものではないが、バイアル、瓶、ジャー、可撓性パッケージ(例えば密封されたマイラーバッグ又はプラスチックバッグ)などが含まれる。また吸入器、経鼻投与装置(例えばアトマイザー)などの特定の装置、又はミニポンプなどの注入装置と組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば容器は、静脈内溶液バッグ、又は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。容器はまた、無菌アクセスポートを有し得る(例えば容器は、静脈内溶液バッグ、又は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性物質は、FB825などの抗Cεmx抗体である。
【0097】
キットは、任意選択的に緩衝剤や解釈情報などの追加成分を提供することができる。キットは、通常、容器と容器上又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。いくつかの実施態様において、本開示は上記キットの内容物を含む製品を提供する。
【0098】
一般的な技術
本発明の実施は、他に示さない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を使用し、これらは当業者の技術範囲内である。そのような技術は、例えば Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 (Sambrook, et al., 1989) Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J. E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R. I. Freshney, ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J. P. Mather and P. E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J. B. Griffiths, and D. G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller and M. P. Calos, eds., 1987); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel, et al., eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis, et al., eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (C. A. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J. D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)などの文献で詳細に説明されている。
【0099】
さらに詳述しなくても、当業者は、上記の説明に基づいて本発明を最大限に利用することができると考えられる。従って、以下の特定の実施態様は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる形であっても本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される全ての出版物は、本明細書で参照される目的又は主題のために参照により本明細書に取り込まれる。
【実施例
【0100】
実施例1
カニクイザル(Cynomolgus Monkey)におけるFB825の毒性試験
材料及び方法
臨床検査
血液学的検査、凝固検査、血清化学検査(肝機能検査を含む)、甲状腺機能検査、及び尿検査のための血液及び尿試料を採取し、日常的な臨床検査について分析した。
【0101】
異常な臨床検査値は、各臨床検査パラメーターの基準範囲に基づいて、高い又は低い(又は正常若しくは異常)とフラグを立てた。臨床的重要性は、医学的関連性があり、医療(例えば、能動的観察、診断手段、又は治療手段)の変更をもたらした可能性のある結果の任意の変化として定義された。スクリーニングにより臨床的に重要な変化が認められた場合、臨床的に重要な値と臨床的重要性の理由が記録された。治療中のカニクイザルは、値が基準範囲又はスクリーニング時の値に達するまで、又は追跡調査が医学的に必要でなくなるまで、追加の評価を行って追跡を続けた。
【0102】
薬力学的評価
総IgE及び抗薬物抗体(ADA)を測定するための血液試料は、Vince and Associates Clinical Research が提供する3.5mL採血管(BD Vacutainer(登録商標)SST(商標)血清分離管)を使用して採取した。採血管のサイズごとに最小の血液量を目標にして、1つの試料を採取した。各時点で1.0mLの最少量の血清を採取した。血液試料を採取後、採血管を5回逆さまにして、血液を周囲温度(19℃~24℃)で30分間凝固させた。スイングバケット型遠心分離機で、試料を室温で約2200rpmで10分間遠心分離した。ほぼ等量(アリコートあたり少なくとも500μL)の2つの同じ血清アリコートを、標準的な実験室技術を使用して、Vince and Associates Clinical Research が提供する適切にラベルが付けられた2本の保存管(2mLポリプロピレンクリオバイアル)に移した。
ADA測定用の免疫原性試料は、検証済みのELISAを使用して分析した。
【0103】
血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ及びアラニンアミノトランスフェラーゼ
FB825で治療したカニクイザルの肝機能を、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを測定することにより追跡した。これら2つの酵素の活性は、リットルあたりの単位(U/L)で表された。
【0104】
結果
カニクイザルにおけるFB825の単回投与試験
FB825の単回投与毒性を、カニクイザルで行った非GLP単回投与毒性試験で評価した。最初の試験では、FB825の10分間の単回IV注入を行ったカニクイザルで、治療に関連する影響を測定した。2回目の試験では、FB825の単回皮下注射を行ったカニクイザルで、治療に関連する影響を測定した。
【0105】
IV注射の投与量範囲設定試験では、FB825の10分間の単回IV注入は、30、100、及び300mg/kgで、雄及び雌のカニクイザルで十分に許容された。臨床パラメーター、摂食量、体重、又は死亡率に対する治療関連の影響はなかった。少なくとも100mg/kgのFB825を投与した動物では、FB825関連の影響は、57日目までに回復していたALT及びASTの最小限の増加と、投与後6時間及び/又は1時間でのインターロイキン6及びインターロイキン10の最小限の増加に限定された。これらの結果に基づいて、有害作用のないレベル(NOAEL)は300mg/kgと考えられた。
【0106】
別の単回投与毒性試験では、単回皮下注射によるFB825の投与は、カニクイザルでは300mg/kgで十分に許容された。体重又は臨床病理学パラメーター(血液学、凝固、臨床化学)へのFB825関連の臨床的徴候又は影響は観察されなかった。
【0107】
カニクイザルにおけるFB825の反復投与試験
FB825の反復投与毒性をカニクイザルで評価した。単回のFB825の10分間のIV注入を週1回で合計4回行ったカニクイザルで、治療に関連する影響を調べた。
【0108】
FB825の10分間のIV注入で週1回、合計4回の投与は、30、100、及び300mg/kgでカニクイザルに十分に許容された。この試験では、以下のパラメーターとエンドポイントを評価した:臨床徴候、体重、摂食量、眼科検査、心電図、臨床病理学パラメーター(血液学的検査、凝固検査、臨床化学検査)、生物分析と毒物動態学的評価、抗治療抗体分析、フローサイトメトリー、IgE分析、甲状腺ホルモンレベル、肉眼的剖検所見、臓器重量、及び組織病理学的検査。
【0109】
体重、摂餌量、眼科検査及び心電図検査、凝固パラメーター、甲状腺ホルモンレベルに対するFB825関連の臨床徴候又は影響は、300mg/kgまでの投与量で両方の性の動物に観察されなかった。さらに300mg/kg以下の投与量では、FB825関連の顕著な肉眼的所見はなかった。
【0110】
FB825関連の影響は、100mg/kg以上のFB825投与量でのALTの可逆的な顕著な増加、300mg/kgのFB825投与量でのASTの可逆的な穏やかな増加、アルブミンレベルと対応するアルブミン:グロブリン比の部分的で可逆的な最小の減少、及び単球数の可逆的な最小の増加に限定されていた。300mg/kgでのALT及びASTレベルの増加の大きさは、有害であると見なされた。標的臓器への影響は、30mg/kg以上のレベルで観察され、甲状腺の無害な濾胞性コロイドの枯渇と甲状腺重量の低下から構成された。しかし、甲状腺重量の低下は、既存の対照サルで観察された範囲内であった。コロイド染色パターンの変動、甲状腺濾胞サイズの変動、及び液胞変性がカニクイザルの自発的所見として報告(Ishida 2000; Hatakeyama 2011)されており、サイロキシン及び甲状腺刺激ホルモンのレベルに対する試験品関連の影響がなかったため、甲状腺の所見は、この試験の条件下では無害であると見なされた。
【0111】
300mg/kgでのALT及びASTレベルの増加に基づいて、NOAELは100mg/kgであると考えられた(雄ではCmaxが5330μg/mL、AUC(0-168h)が520mg・hr/mLで、及び雌ではCmaxが5220μg/mL、AUC(0-168h)が487mg・hr/mL)。
【0112】
実施例2
ヒトの臨床試験
この試験の主な目的は、正常で健康な被験者におけるFB825増加投与量の単回IV投与の安全性と許容性を評価することであった。この試験の第2の目的には、FB825増加投与量の単回IV投与のPKプロフィールの測定、FB825増加投与量の単回IV投与後の総IgEへの影響の調査、及びFB825増加投与量の単回IV投与後の抗FB825抗体の出現の調査が含まれた。
【0113】
試験計画
これは、FB825増加投与量の単回IV投与の安全性、許容性、薬物動態、及び免疫原性を評価するための、第1相(FIH)のヒトで初めての(first-in-human:FIH)無作為化2重盲検プラセボ対照試験であった。FB825ヒト臨床試験中に行った事象のスケジュールの概要を表1に示す。試験への登録基準を満たした被験者に現在の投与量コホートに割り当て、ランダムにFB825又はプラセボ(ビヒクル)に割り当てた。FB825の全ての投与量は、1時間のIV注入として投与された。
【0114】
次の最も高い投与量コホートに進む前に、各投与量コホートの安全性データを見直した。次の最も高い投与量コホートへの投与は、安全性を確認した後にのみ許可された。投与量レベルは、必要に応じて調整され又は繰り返されている。盲検のPKデータは、盲検の安全性データと同時に見直した。
【0115】
この試験には、6つのコホートと合計約54人の正常な健康被験者が含まれた(コホートAとBではそれぞれ7人の被験者[アクティブ4人:プラセボ3人]、及びコホートC、D、E、Fでそれぞれ10人の被験者[アクティブ7人:プラセボ3人])。FB825の出発投与量は0.003mg/kgIVで、その後のコホートでは計画的に0.03、0.3、1.5、5、及び10mg/kgIVに増加させた。試験は、スクリーニング期間(-28日目から-2日目)、チェックイン(-1日目)、治療/追跡期間(1日目から140日目)、及び試験終了時の訪問(140日目)で構成された。
【0116】
被験者は-1日目にクリニックにチェックインし、チェックイン手続きを行った。手続きが重複し、同じ時間に行われるようにスケジュールされていた場合、手続きの順序はバイタルサイン測定、心電図、そして薬物動態学用の採血であった。
【0117】
被験者は、1日目にアクティブ又はプラセボの試験薬物を投与された。最低投与量の2つのコホート(コホートAとB)の最初の2人の被験者には、プラセボ又はFB825が投与された(すなわち、プラセボとアクティブな治験薬の両方を示す必要があった)。これらのコホートの残りの被験者は、最初の2人の被験者が投与された48時間後に投与された。4つの最高投与量コホートの全ての被験者は同時に投薬された。コホートの最後の被験者の投与の間から、次のコホートの投与を続行することを決定するまでに、最低14日間があった。各投与量コホートの安全性データを盲検で再検討した後、次の高投与量コホートに進んだ。安全性が確認された後にのみ、次の最も高い投与量コホートへの投与が許可された。盲検PKデータは、盲検安全性データと同時に再検討した。
【0118】
PK評価用の血液試料を、1日目の注入開始の30分前(±5分);注入開始の30分後(±2分);注入開始の1、1.25、及び2時間後(±2分);注入開始の4及び8時間(±5分)後;注入開始の24及び48時間後(±10分)に採取した。さらに、注入後、5、14、29、85、及び140日目に1つの血液試料を採取した。免疫原性評価のための血液試料は、1日目(注入開始前30分[±5分])、及び5、14、29、85、及び140日目に採取した。
【0119】
被験者は、-1日目から3日目(投与後48時間)の退院までクリニック内に閉じ込められ、外来訪問のために5日目、14日目、29日目、85日目、及び140日目にクリニックに戻った。スクリーニングを除く試験期間は約140日間であった。
【0120】
患者集団
健康な男性と女性の被験者(18~55歳、両端を含む)の体重は50kg以上で、肥満指数(body mass index)は18.0~30.0kg/m2(両端を含む)であり、インフォームドコンセントを提出した。合計54人の被験者が登録され、41人(75.9%)が試験を完了し、13人(24.1%)は中止された。7人の被験者(13.0%)は被験者の希望により中止され、0.3、1.5、5、及び10mg/kgのFB825治療群にそれぞれ1人の被験者と、プラセボ治療群に3人の被験者が含まれていた。6人の被験者(11.1%)はフォローアップに失敗し、0.003、0.3、及び1.5mg/kgのFB825治療群とプラセボ治療群にそれぞれ1人の被験者と、10mg/kgのFB825治療群に2人の被験者が含まれていた。
【表1】
【0121】
FB825投与
被験者は、1日目に約1時間にわたって、FB825(0.003、0.03、0.3、1.5、5、又は10mg/kg)又はプラセボの単回IV注入を受けた。
【0122】
全ての投与量は、予定された投与日(1日目)の朝に、約2時間の絶食後、単回の約1時間のIV注入として投与された。投薬の2時間以上前に、軽い朝食が許可された。投与の1時間前と1時間後を除き、水分はいつでも許可された。FB825溶液は投与前に希釈された。
【0123】
1日目の0時間に、FB825又はプラセボの約1時間の単回静脈内注入を行った。次の投与量レベルに進むか否かは、安全審査チームの承認に依存していた。最低投与量の2つのコホート(コホートA及びB)の最初の2人の被験者は、プラセボ又はFB825を投与された(すなわち、プラセボとアクティブの両方を示す必要があった)。これらのコホートの残りの被験者には、最初の2人の被験者が投与された48時間後に投与された。4つの最高投与量コホートの全ての被験者に同時に投与した。
【0124】
薬物動態(PK)評価
全ての被験者からFB825のPK分析用の血液試料を次の時点で採取した:1日目、注入開始の30分前(±5分);注入開始の30分後(±2分);注入開始の1、1.25、及び2時間後(投与後30分~2時間について±2分);注入開始の4時間及び8時間後(投与後4~8時間について±5分);及び注入開始の24時間及び48時間(投与後24~48時間について±10分)後。さらに、注入の5、14(±1日)、29(±2日)、85(±3日)、及び140(±5日)日後に1つの血液試料を採取した。
【0125】
以下の単回投与のPKパラメーターは、FB825について非コンパートメント法を使用して各被験者の血清濃度データから計算した:
AUC0-t:線形台形規則を使用して計算された、時間0から最後の定量可能な濃度までの血清濃度-時間曲線(AUC)下の面積、
AUC0-inf:式AUC0-inf=AUC0-t+Ct/Kelに従って計算された、時間0から無限第まで外挿されたAUC(ここで、Ctは最後の測定可能な血清濃度であり、Kelは最終消失速度定数である)。外挿された領域(Ct/Kel)がAUC0-infの20%より大きい場合、AUC0-infとそれに関連するパラメーター(CL及びVd)が存在しないものとした、
%AUCex:AUC0-infの計算のために外挿された面積の割合、
max:観察された最大血清濃度、
max:観察された最大血清濃度の時間、
el:最終消失速度定数(ここでKelは、終末期の対数濃度対時間プロフィールの線形回帰の傾きの大きさである。R2≧0.80の場合、Kelは保持され、終末期の3点はCmaxを含まかった)、
1/2:(ln)2/Kelとして計算された最終半減期(可能な場合)、
MRT:AUMC/AUCとして計算された平均滞留時間、
CL:投与量/AUC0-infとして計算された見かけのクリアランス、
d:投与量/(AUC0-inf×Kel)として計算された見かけの分布体積。
【0126】
薬物動態用血液試料
FB825を分析するための血液試料は、Vince and Associates Clinical Research が提供する3.5mL採血管(BD Vacutainer(登録商標)SST(商標)血清分離管)を使用して採取した。採血管のサイズごとに最小の血液量を目標にして、1つの試料を採取した。各時点で少なくとも1.0mLの血清を採取した。血液試料を採取後、採血管を5回逆さにして、血液を周囲温度(19℃~24℃)で30分間凝固させた。スイングバケット型遠心分離機で、試料を室温で約2200rpmで10分間遠心分離した。ほぼ等量(アリコートあたり少なくとも500μL)の2本の同じ血清アリコートを、標準的な実験室技術を使用して、Vince and Associates Clinical Research が提供する適切にラベルが付けられた2本の保存管(2mLポリプロピレンクリオバイアル)に移した。各保存管にはラベルが貼付されており、次の情報が記載されていた。
【0127】
試料タイプ:ヒト血清
アッセイタイプ:PK
プロトコール:FB825CLCT01
被験者番号:ランダム化番号
時点:プロトコールを参照
血清アリコート:1又は2
採取後90分以内に、両方の試料を直立させて-70°C±10℃で保存した。検証済みのELISAを使用して、FB825の薬物動態学測定を行った。
【0128】
薬力学的評価
総IgE及び抗薬物抗体(ADA)を測定するための血液試料は、1日目の注入開始の30分前(±5分)に、及び注入開始後、5、14(±1日)、29(±2日)、85(±3日)、及び140日目(±5日)に、又は早期終了時に採取した。
【0129】
ADAレベルの分析用の血液試料は、Vince and Associates Clinical Research が提供する3.5mL採血管(BD Vacutainer(登録商標)SST(商標)血清分離管)を使用して採取した。採血管のサイズごとに最小の血液量を目標にして、1つの試料を採取した。各時点で少なくとも1.0mLの血清を採取した。血液試料を採取後、採血管を5回逆さまにして、血液を周囲温度(19℃~24℃)で30分間凝固させた。スイングバケット型遠心分離機で、試料を室温で約2200rpmで10分間遠心分離した。ほぼ等量(アリコートあたり少なくとも500μL)の2本の同じ血清アリコートを、標準の実験室技術を使用して、適切にラベルが付けられた2本の保存管(2mLポリプロピレンクリオバイアル)に移した。ADAの測定用の免疫原性試料は、検証済みのELISAを使用して分析した。
【0130】
安全性評価
安全性と許容性は、AE、臨床検査結果(血液学的検査、凝固検査、肝機能検査、甲状腺機能検査を含む血清化学検査、及び尿検査)、バイタルサイン測定、12誘導ECG結果、心臓テレメトリー測定データ、及び健康診断所見の追跡と記録により評価された。
【0131】
臨床検査
血液学検査、凝固検査、血清化学検査(肝機能検査を含む)、甲状腺機能検査、尿検査、及び薬物スクリーニング検査のための血液及び尿試料を、事象のスケジュール(表1)に示された時点で、絶食条件下(約2時間以上の絶食)で採取した。臨床検査(血液学的検査、凝固検査、血清化学検査[肝機能検査を含む]、及び尿検査)を、スクリーニング時、チェックイン時、注入開始の1日前、及び注入開始の1時間(注入終了)後、8時間、及び24時間(±15分)後、及び3日目(投与後最大48時間目まで±15分)、5、14、29、85、及び140日目の単一の時点で行った。
【0132】
これらの試料は、血液学的検査、凝固検査、血清化学検査、甲状腺機能、尿検査などの臨床検査に使用された。
血清妊娠検査(β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、スクリーニング時、チェックイン時、3日目(投与後48時間)、及び試験終了時の訪問時(140日目)に全ての女性被験者に対して行った。閉経後の女性被験者は、スクリーニング時に血清FSH検査をした。
B型肝炎表面抗原、C型肝炎ウイルス抗体、及びヒト免疫不全症ウイルス(タイプ1又は2)抗体は、スクリーニング時に評価された。
【0133】
尿中薬物スクリーニングは、スクリーニング時及び-1日目に、アルコール、アンフェタミン、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、コカイン代謝物、コチニン、メチレンジオキシメタンフェタミン、アヘン、フェンシクリジン、プロポキシフェン、テトラヒドロカンナビノールについて行った。
【0134】
異常な臨床検査値は、各臨床検査パラメーターの基準範囲に基づいて、高い又は低い(又は正常若しくは異常)とフラグを立てた。臨床的重要性は、医学的関連性があり、医療(例えば、能動的観察、診断手段、又は治療手段)の変更をもたらした可能性のある結果の任意の変化として定義された。スクリーニングにより臨床的に重要な変化が認められた場合、臨床的に重要な値と臨床的重要性の理由がeCRF(電子症例報告書)のAE(有害作用)ページに記録された。被験者は、値が基準範囲又はスクリーニング時の値に到達するまで、又は医学的に追跡が必要でなくなるまで、追加の評価で継続的に追跡された。
【0135】
バイタルサイン測定
バイタルサイン測定値は、収縮期血圧と拡張期血圧、心拍数、呼吸数、及び口腔体温を含んだ。被験者は5分間座った後、起立性の評価を除いて、全ての測定値を得た。被験者が座った状態で全ての測定値を得た後、起立性評価の時点で、被験者を5分間仰向けにした後、血圧と心拍数値を得た。次に被験者が1分間起ち上がった後、再度血圧と心拍数値を得た。
事象のスケジュール(表1)に示された時点でバイタルサインを測定した。
【0136】
バイタルサイン測定値(収縮期血圧と拡張期血圧、心拍数、呼吸数、及び口腔体温)を、スクリーニング時:チェックイン時;注入開始前の1日目、及び注入開始後の1時間(注入終了)、2時間と4時間(±15分)、及び8時間と24時間目(±30分);3日目(投与後最大48時間について±15分)、5、14、29、85、及び140日目に得た。注入中、バイタルサイン測定値は15分ごと(±5分)に得た。起立性評価を、チェックイン時;注入開始の1日前、及び注入開始後2、4、8、及び24時間目(±15分);そして5日目に得た。
【0137】
臨床的重要性は、医学的関連性があり、医療(例えば、能動的観察、診断手段、又は治療手段)の変更をもたらした可能性のある結果の任意の変化として定義された。スクリーニングにより臨床的に重要な変化が認められた場合、臨床的に重要な値と臨床的重要性の理由は被験者のeCRFのAEページに記録された。被験者は、値が基準範囲又はスクリーニング時の値に到達するまで、又は医学的に追跡が必要でなくなるまで、追加の評価で継続的に追跡された。
【0138】
12誘導心電図
事象のスケジュール(表1)に示された時点で、被験者が少なくとも5分間仰臥位になっていた後、1つの12誘導ECGを得た。12誘導心電図は、スクリーニング時;チェックイン時;1日目の注入開始前2時間以内、及び注入開始後の1時間目(注入終了)、8時間目、及び24時間目(±15分);及び3日目(投与後最大48時間まで±15分)、5日目、14日目、及び140日目に、得た。
【0139】
心電図評価には、トレースが正常か異常か、ならびに律動、不整脈又は伝導障害の存在、形態、心筋梗塞の証拠、STセグメント、T波、及びU波の異常に関するコメントが含まれた。さらに、以下の間隔が測定され報告された:RR間隔、PR間隔、QRS幅、QT間隔、及びQTcF。
【0140】
臨床的重要性は、医学的関連性があり、医療(例えば、能動的観察、診断手段、又は治療手段)の変更をもたらした可能性のある結果の任意の変化として定義された。スクリーニングにより臨床的に重要な変化が認められた場合、臨床的に重要な値と臨床的重要性の理由が被験者のeCRFのAEページに記録された。被験者は、値が基準範囲又はスクリーニング時の値に到達するまで、又は医学的に追跡が必要でなくなるまで、追加の評価で継続的に追跡された。
【0141】
心臓テレメトリー
心臓テレメトリーは、事象のスケジュール(表1)に示された時点で行った。心臓テレメトリーのモニタリングは1日目に開始(注入開始の約30分前に開始)し、注入終了後4時間継続した。
【0142】
臨床的重要性は、医学的関連性があり、医療(例えば、能動的観察、診断手段、又は治療手段)の変更をもたらした可能性のある結果の任意の変化として定義された。1日目の最初のテレメトリー(注入開始の約30分前)の所見からの臨床的に重要な変化が認められた場合、臨床的に重要な値と臨床的重要性の理由が被験者のeCRFのAEページに記録された。被験者は、医学的に追跡が必要でなくなるまで、追加の評価で継続的に追跡された。
【0143】
健康診断
事象のスケジュール(表1)に示された時点で、詳細な健康診断と簡単な健康診断を行った。詳細な健康診断(皮膚紅斑の評価を含む)は、スクリーニング時と3日目、14日目、140日目に行った。簡単な健康診断(皮膚紅斑の評価を含む)は、チェックイン時(-1日目)と、5日目、29日目、85日目に行った。健康診断は、スクリーニング時の身長と体重、その他の日のみの体重を含んだ。
【0144】
詳細な健康診断は、皮膚(皮膚紅斑の兆候を含む)、頭、耳、目、鼻、喉、首、甲状腺、肺、心臓、心血管系、腹部、リンパ節、及び筋骨格系/四肢の評価を含んだ。AE又は臨床検査異常を評価するために、中間の健康診断を行う予定であった。
【0145】
簡単な健康診断は、皮膚(皮膚紅斑の兆候を含む)、肺、心血管系、及び腹部(肝臓、脾臓)の評価を含んだ。
身長と体重を測定し、スクリーニング時にのみ肥満指数を算出した。体重は、事象のスケジュールに示された他の全ての健康診断の時点で測定した。
【0146】
ヒトの試験のための投与量選択
この第1相FIH試験の開始投与量は0.003mg/kgであり、これは、ヒトに最も近く最も関連するモデルである非ヒト霊長類において4週間の反復投与毒性試験からのNOAELを使用して、及び適切な安全係数を適用して、並びにインビトロ及びインビボの薬理学的データと毒性動態データに基づくFB825の最小予測生物学的作用レベル(MABEL)の計算から、決定された。
【0147】
カニクイザルの4週間の反復投与毒性試験におけるFB825のNOAELは、100mg/kgと見なされた。食品医薬品局(FDA)のGuidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers (July 2005) に従って計算された同等のヒトの投与量は38.8mg/kgであり、これに適切な安全係数(すなわち100倍)を適用した後、ヒト被験者の最大推奨開始投与量は約0.39mg/kgになるであろう。
【0148】
FB825のMABELは0.1μg/mLと推定された。ヒトの被験者に0.003mg/kgの単回IV投与量は、0.06μg/mL~0.09μg/mLの範囲のFB825の全身曝露になると推定された。従って、試験中にMABELを超えることはないはずである。この範囲のより高い数値をとると、この開始投与量でのFB825の予測最大循環濃度は、FB825の単回IV投与を行ったカニクイザル(試験20031008)のNOAEL(100mg/kg/日)投与量レベルのFB825のCmax より約4.4×104倍低くなるであろう。これにより、NOAEL(300mg/kg)でのヒトの等価投与量111.6mg/kgより高い、mg/kgベースで3.7×104倍の安全マージンが得られる。
【0149】
結果
この試験では、健常成人被験者における無作為化プラセボ対照2重盲検試験において、IV注射によるFB825増加投与量の単回投与の安全性、許容性、薬物動態、及び免疫原性を評価した。計画されたヒト初回投与(FIH)第1相臨床試験の試験母集団の計画と選択は、将来の臨床試験でFB825の初期安全性、許容性、PK、及び免疫学的結果を得る必要性に基づいていた。データは、表1に示す事象のスケジュールに従って得られた。
【0150】
FB825はヒト被験者に安全に投与された
臨床試験において0.003、0.03、0.3、1.5、5、及び10mg/kgの投与量でのFB825の単回の1時間のIV注入は安全で、健常者により十分に許容された。治療による緊急有害事象(TEAE)による、死亡はなく、試験を中止した被験者はいなかった。ヘモグロビンの減少、上気道感染症、尿路感染症、銃創を例外として、全てのTEAEは試験の終わりまでに解決された。
臨床検査室試験結果、バイタルサイン測定値、12誘導ECG結果、又は健康診断の所見には、治療関連又は投与量関連の明らかな傾向はなかった。
【0151】
FB825の投与により総IgEが低下
総IgEは、1.5及び10mg/kgのFB825治療群の投与後の全ての時点で減少した。他の投与量(0.003、0.03、0.3、及び5mg/kgのFB825)及びプラセボ治療群では、総IgEは投与後のいくつかの時点で減少したが、全体的な傾向はなかった(図1及び図2)。
【0152】
検出可能なADAがあったのは4人の被験者(0.03、0.3、及び5mg/kgのFB825とプラセボ治療群にそれぞれ1人)だけで、0.03mg/kgのFB825治療群の1人の被験者だけが反応性ADAを持っていた(図3)。
【0153】
実施例3
アトピー性皮膚炎を有する成人におけるFB825の安全性と有効性を評価するためのオープンラベル探索的試験
本試験は、FB825のIV投与後のアトピー性皮膚炎患者における、総IgE及びアレルゲン特異的IgEのベースラインからの変化を評価し、これらの患者の臨床的有効性を評価するように計画される。本試験はまた、こうして治療を受けた患者におけるFB825の安全性を評価し、FB825のIV投与後の臨床血液学的変化を追跡し、FB825のIV投与後のバイオマーカー(例えば、胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン-3、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、ペリオスチン、IL-1a、IL-4、IL-5、IL-13、IL-16、IL-31、及びM-CSF)のベースラインからの変化を探索することも目的としている。
【0154】
FB825は、膜結合型免疫IgE(mIgE)を発現するヒトBリンパ球細胞上のCεmXドメインを標的とするヒト化モノクローナル免疫グロブリンG1(IgG1)である。FB825は、IgE合成の生物学的経路を遮断することができ、こうしてIgEを介したアレルギー性疾患の治療に役立つ。FB825は水溶液中で配合され、5mg/kgで1時間のIV注入により患者に投与される。
【0155】
試験手順
これは、アトピー性皮膚炎(AD)を有する成人におけるFB825の安全性と有効性を評価するためのオープンラベル探索的試験である。試験参加基準を満たす約12人のアトピー性皮膚炎(AD)のヒト患者が試験に登録された。全ての適格患者は、5mg/kgのFB825を1日目と85日目に1時間のIV注入により投与された(表2)。被験者は、1日目と85日目にFB825を投与後に入院し、安全性観察のために翌日退院した(少なくとも12時間)。患者は、安全性と有効性、及びバイオマーカーの評価のために、8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目に試験場所に戻った(表2)。
【0156】
ある例では、患者は採血のために78日目に試験場所を訪れるように求められる場合がある。採血の目的は、総IgEを測定して、被験者がFB825の2回目の投与を必要とするかどうかを判断するためである。78日目に総IgEのベースラインからの変化が50%未満の被験者は、FB825の2回目の投与(5mg/kg)を受ける可能性がある。78日目に総IgEベースラインから変化が50%の被験者は、85日目が最後の試験場所訪問になり、その後試験を完了することができる。FB825の2回目の投与を受けた患者の場合、2回目の投与で採取されたデータを分析して、初回投与時に採取したものと同様に要約することができる。一部の例では患者は、85日目に1時間のIV注入により5mg/kgのFB825の2回目の投与を受けた。そのような患者は、85日目に入院後FB825を投与され、翌日、安全性観察のために退院した(少なくとも12時間)。患者は、安全性と有効性の評価のために、92日、99日、113日、141日、及び169日目に試験場所に戻った。
【0157】
予定された訪問時に血清総IgEと抗原特異的IgEが測定、評価され、5mg/kgのFB825のIV投与後のベースラインからの変化が調べられた。
患者は、予定された訪問時に、臨床有効性評価活動[掻痒視覚アナログスケール(VAS)、湿疹面積と重症度指数(EASI)、アトピー性皮膚炎の重症度スコアリング指数(SCORAD)、治験責任医師によるADの総合評価(IGA)、及びAD症状に関与する体表面積(BSA)を含む]について検査された。
AEや臨床検査を含む安全性データは、PIにより再検討された。試験への被験者の参加期間は約24週間であった。
【0158】
試験集団の選択
男性又は女性のアトピー性皮膚炎の被験者は、1つの試験場所に登録された。合計で約15人が登録され、少なくとも12の評価可能な被験者が得られた。
【0159】
選択基準
(i)主な包含基準
・ 20~65歳(両端を含む)の男性又は女性の被験者。
・ 被験者は、Hannifin and Rajka の Eichenfield 改訂基準により定義され、スクリーニング訪問時のアレルゲン特異的IgE陽性により支持される症状の3年間の履歴に基づく慢性アトピー性皮膚炎の、医師により確認された診断を受けている。
・ スクリーニング及びベースライン訪問時の湿疹面積及び重症度指数(EASI)スコアが14以上。
・ スクリーニング及びベースライン訪問時の治験責任医師の総合評価(IGA)スコアが3以上(5ポイントスケール)。
・ スクリーニング及びベースライン訪問時のAD関与の体表面積(BSA)≧10%。
・ スクリーニング訪問前の3か月以内のADの治療としての、局所コルチコステロイド又はカルシニューリン阻害剤の安定した(1か月)処方に対する不十分な応答の履歴。(少なくとも28日間又は製品処方情報で推奨されている最大期間適用される局所コルチコステロイドの処方は、中~高有効性を意味する。)
・ 患者は、アトピー性皮膚炎のために提供されている皮膚軟化剤の安定投与量を、ベースライン訪問前の少なくとも7日間、1日2回適用していなければならない。
【0160】
・ 妊娠可能性を有する女性被験者は、少なくとも2種類の避妊を使用する必要がある。1つはバリア防御(すなわち、コンドーム又は女性用コンドーム)である必要があり、もう1つは、試験全体を通して許容可能な避妊方法(すなわち、ペッサリー、子宮内避妊器具、ホルモン避妊薬、又は禁欲)のうちの1つである。不妊手術(子宮摘出術、両側卵管結紮術、又は両側卵巣摘出術)又は閉経(12か月連続の無月経があり、記録された血清中卵胞刺激ホルモンのレベルが40mU/mLを超えると定義される)後の被験者は、妊娠の可能性がないと見なされる。全ての女性被験者は、投与前に血清妊娠検査が陰性でなければならない。被験者は、試験期間中、及びFB825の最後の投与後の16週間又は5半減期中は、上記の避妊方法を使用する必要がある。
【0161】
・ 被験者のスクリーニング時の体重は約40kg以上で、肥満指数は18.0~30.0kg/m2(両端を含む)である。
・ 被験者は、治験責任医師により決定された以下の正常な心臓伝導パラメーターを有する12誘導心電図(ECG)を有する:
- 45~100bpmの心拍数、
- Fridericia補正QT間隔(QTcF)≦450ミリ秒(男性)、又は≦470ミリ秒(女性)、及び
- 120ミリ秒未満のQRS間隔。
・ 被験者は、治験責任医師の決定により、スクリーニング時に行った臨床検査結果に基づいて、アトピー性疾患を除き健康である。結果が正常基準範囲外のとき、治験責任医師が異常又は異常からの乖離が臨床的に重要ではないと判断した場合にのみ、被験者を含めることができる。この決定は、被験者の原資料に記録され、治験責任医師が行わなければならない。これは、除外基準(Division of Microbiology and Infectious Diseaseの基準を使用)にリストされている臨床検査値の異常には適用されない。
・ 被験者は、書面によるインフォームドコンセントを提出することができる。
・ 被験者は、全てのプロトコール要件に従うことに同意する。
【0162】
(ii)主な除外基準
・ 妊娠中又は授乳中の女性被験者。
・ 被験者はダイエット中又は摂食量が少ない。
・ 被験者は不整脈(臨床的に関連する全てのもの)の病歴を有する。
・ スクリーニング時に、被験者のB型肝炎表面抗原、C型肝炎ウイルス抗体、又はヒト免疫不全症ウイルス抗体の検査結果が陽性である。
・ 治験責任医師の意見では、被験者はアルコール又は薬物乱用の既往があり、試験への患者の完全な参加を損なうか又は参加が危険である可能性がある。
・ 被験者は司法の監督下又は管理下にある。
【0163】
・ 被験者は、臨床的に重要な、現在活動性の又は根底にある消化器循環器疾患、神経系疾患、精神医学疾患、代謝疾患、腎疾患、肝疾患、呼吸系疾患(合併症のないアレルギー性鼻炎を除く)、炎症性疾患、免疫疾患、内分泌疾患、糖尿病、又は感染症を有し、治験責任医師により試験に参加することは不適格であると判断される。
・ 被験者は、アナフィラキシー反応の既往歴がある。
・ 被験者は、治験責任医師の意見では、試験若しくは被験者の健康を損なうか、又は被験者が試験要件を満たすか若しくは実行することを妨げる何らかの条件を有する。
・ 被験者は、投与前3か月以内に免疫グロブリン製剤又は血液製剤を投与された。
・ 被験者は生物学的製剤を投与された:
- 被験者は、投与前6か月間、又はリンパ球数が正常に戻るまでの期間のいずれか長い期間内に、細胞枯渇剤(リツキシマブに限定されない)を投与された、
-被験者は、5半減期(既知の場合)又は投与前の16週間(投与前の、いずれか長い方)以内に他の生物製剤を投与された。
【0164】
・ 被験者は、スクリーニング時に Division of Microbiology and Infectious Diseases Adult Toxicity Table, 2007 に定義されている以下の検査異常を1つ以上を有する[臨床検査値は同等の標準単位に変換することができる。除外につながる可能性のある異常な臨床検査値の再検査は1回許可される(治験依頼者の事前承認なし)。再検査は、スクリーニング期(ベースラインの前)の予定外の訪問中に行われる]:
- アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(正常値の上限[ULN]の2倍を超える)、
- 総ビリルビンがULNの1.5倍以上、
- 血清クレアチニンがULNの1.6倍以上、
- IgEレベル、好酸球数、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、及び上記の臨床検査値を除いて、等級2以上に高いその他の臨床検査値の異常。
【0165】
臨床検査値は同等の標準単位に変換することができる。除外につながる可能性のある異常な臨床検査値の再検査は1回許可される(治験依頼者の事前承認なし)。再検査は、スクリーニング期(ベースラインの前)の予定外の訪問中に行われる。
【0166】
・ 被験者は、過去3か月以内に承認済み又は未承認の(すなわち、治験中の)免疫療法治療を受けたことがある。
・ 被験者は、以下のクラスの薬物を使用している(処方薬又は市販薬):
- 投与前30日以内に鼻腔内コルチコステロイド(例えば、プロピオン酸フルチカゾン)、
- 投与前30日以内に全身性コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン)、
- 投与前30日以内にロイコトリエン修飾剤(例えば、モンテルカスト)、
- 投与前の過去30日以内に免疫抑制剤(例えば、金塩、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリン)、
- 投与前の過去30日以内に免疫調節剤(例えば、IFN-γ)、
- 投与前の過去1年以内に抗IgE(例えば、オマリズマブ)、
- 投与前の過去1年以内にアレルゲン免疫療法、
- 投与前の過去30日以内に経口吸入コルチコステロイド(例えば、ブデソニド)。
【0167】
・ 被験者は投与前4週間以内に光線療法を受けた。
・ 被験者は投与前12週間以内に生ワクチンを投与された。
・ 被験者は、治験責任医師の判断により、日和見感染症(例えばTB)の病歴を含む免疫抑制の病歴がわかっているか疑われている。
・ 被験者は、スクリーニング期間前の5年以内に悪性腫瘍の病歴がある。
・ 寄生虫感染のリスクが高い。寄生虫症の危険因子(流行地域に住んでいる、慢性的な消化器症状、過去6か月以内に寄生虫感染症が流行している地域への旅行、及び/又は慢性的な免疫抑制)、及び卵及び寄生虫についての便評価による寄生虫コロニー形成又は感染の証拠。糞便の卵と寄生虫の評価は、危険因子を有し好酸球数が正常な被験者の上限の2倍を超える患者でのみ行われる。
【0168】
試験治療
(i)試験治療の投与方法及びIV投与
5mg/kg投与量のFB825を2回、アトピー性皮膚炎の被験者に投与した。被験者は、1日目と85日目の朝に1時間のIV注入によりFB825を投与された。いくつかの例では、少なくとも2時間の絶食が必要であった。投与前の1時間以内と投与後の1時間以内は水を摂取できない。FB825の投与量は、被験者の体重に基づいて調整することができ、適量の製剤は250mLの0.9%塩化ナトリウム溶液で希釈した。FB825は、IV経路で1時間かけて、プログラム可能な容量注入装置を使用して投与された。復元後、0.9%塩化ナトリウムで最終的に希釈された製品は、復元後できるだけ早く使用する必要があり、8時間で使用する必要がある。復元したFB825は、使用前に2℃~25℃で最大8時間保管することができる。
【0169】
(ii)以前の併用薬及び禁止された薬剤
・ 以前の薬剤と治療
被験者がインフォームドコンセントを提出する前の30日以内に被験者が服用投与された以前の薬剤に関する情報は、被験者のCRFに記録された。
・ 治療前/同時に行われる投薬と手順
ICFの署名時から最後の試験訪問までに行われた治療(栄養補助食品を含む)又は手順は同時であると見なされ、CRFに記録された。これには、同意の時に進行中の許可された薬物療法が含まれる。
下記の試験中のAD基礎療法:
- 全ての患者は、投薬前に少なくとも7日間連続で、少なくとも1日2回保湿剤を塗布し、試験期間を通して治療を継続する必要がある。全てのタイプの保湿剤が許可されているが、患者は、スクリーニング期間中又は試験中に、処方保湿剤又は添加剤を含む保湿剤による治療を開始することはできない、
- スクリーニング時訪問の前に開始される場合、患者は処方保湿剤又は添加剤を含む保湿剤の安定投与量を継続して使用することができる。1日目(ベースライン)から開始して、全ての患者は、以下のガイドラインに従って標準化された処方を使用して、局所コルチコステロイド(TCS)による治療を開始する必要がある。
【0170】
- 中程度有効性のTCSを活性病変のある部位に毎日適用する。低有効性TCSは、薄い皮膚の領域(顔、首、間擦部位、生殖器部位、皮膚萎縮領域など)、又は中有効性のTCSによる継続的な治療が安全ではないと見なされる領域に使用すべきである、
- 病変がコントロールされた(明確又はほぼ明確)後、中有効性から低有効性TCSに切り替え、7日間毎日治療し、その後中止する、
- 病変が再発した場合は、中有効性のTCSで治療を再開し、病変の消失時に上記のステップダウンアプローチを使用する、
- 中有効性TCSによる毎日の治療で病変が持続又は悪化する場合、より有効性の高いTCSが危険であると見なされない限り、患者は高有効性又は超高有効性のTCSで治療(救済)することができる、
- 局所又は全身のTCS毒性の兆候について患者を追跡し、必要に応じて治療をステップダウンするか又は中止する。
【0171】
- 試験中に使用される局所適用製品の種類と量が記録された。使用するTCSの量は、訪問ごとにチューブの重量を測定することにより決定した(詳細については、試験のリファレンスマニュアルを参照されたい)、
- 患者は、中有効性のTCSとしてプロピオン酸フルチカゾン0.05%クリーム、フロ酸モメタゾン0.1%クリーム、吉草酸ベタメタゾン0.06%クリームを、及び低有効性TCSとしてはヒドロコルチゾン1%軟膏を使用することが推奨される、
- TCSによる救済が必要な場合、患者はフルオシノニド0.05%クリーム、デソキシメタゾン0.25%軟膏を高有効性TCSとして使用し、プロピオン酸クロベタゾール0.05%軟膏を超高有効性TCSに使用することが推奨される、
- 同じ日に、保湿剤とTCSを同じ部位に同時に使用してはならない。TCSで治療されていない部位では、保湿剤が1日に2回、朝と夕方に塗布される。
【0172】
治療前の投薬/手順:投与前に行われていた薬物療法又は手順。
併用薬物療法/手順:EOS訪問を通して試験薬のIV投与後に行った薬物療法又は手順。
・ 禁止されている併用薬:
- 局所的タクロリムスとピメクロリムス、
- 被験者が救済薬物療法を受けていない限り、全身性コルチコステロイド、
- ロイコトリエン阻害剤、
- アレルゲン免疫療法、
- 免疫抑制剤/免疫調節剤(特に限定されるものではないが、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、IFN-γ、アザチオプリン、メトトレキサート、又は生物製剤を含む)によるADの全身性治療、
- 生(弱毒化)ワクチンによる治療、
- 伝統的な漢方薬。
【0173】
・ 禁止されている併用手順:
- 外科治療、
- 併用紫外線(UV)手順(光線療法[NBUVB、UVB、UVA1、又はPUVA])、
- 試験中、ベッド/ブースでの日焼けは許可されない、
- 患者は、試験参加中、週に2回を超える漂白浴は許可されない。
【0174】
(iii)注入関連又はアレルギー反応の取り扱い
試験薬のIV投与は、熟練した医療スタッフの監督下で、及びアレルギー反応を扱う設備が利用可能な場所で行う必要がある。被験者が注入に関連する反応を経験した場合、被験者は対症療法として、支持療法、さらなるモニタリング、及び必要に応じて抗ヒスタミン薬やコルチコステロイドを含む可能性のある適切な薬物療法で治療されなければならない。試験注入は中止されてもよく、被験者は試験の終わりまで追跡されるであろう。注入された量は記録された。被験者がアレルギー反応に典型的な症状(例えば、息切れ、アナフィラキシー、じんま疹、血管浮腫)を経験した場合、試験薬のIV投与は直ちにかつ永久に中止されるべきである。
【0175】
アナフィラキシーの疑いは、付録12-2に記載されている国立アレルギー感染症研究所(the National Institute of Allergy and Infectious Diseases)により概説されている臨床診断基準に従って評価する必要がある。
これら及びその他の状況では、被験者は治験責任医師の裁量で適切な医学的治療を受けることができる。
【0176】
アレルギー反応の場合、患者は、耐えられないAD症状を治療するために、禁止された薬物又は手順で救済され得る。
- 医学的に必要な場合(すなわち、耐え難いAD症状を抑制するために)、1mg/kg/日未満の投与量のプレドニゾロンで3日間までADの全身性コルチコステロイド投与で救済治療を行い、2週目以降に患者を試験することができる、
- 救済治療を行う直前に、患者に有効性と安全性の評価(例えば、疾患の重症度スコア、安全性検査室)を行った。
【0177】
試験手順と評価方法
以下のセクションでは、試験手順と採取するデータについて説明する。可能な限り、被験者は同じ治験責任医師又は現場担当者により評価された。スケジュールと評価を表2に示す。ベースライン特性を表3に示す。
【0178】
(i)エンドポイント:
・ 主要エンドポイント:
- 試験の85日目及び169日目/終了時(EOS)の総IgEのベースラインからの変化。
・ 85日目と169日目/EOSのアレルゲン特異的IgEのベースラインからの変化。
・ バイオマーカーのエンドポイント:
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の総IgEのベースラインからの変化、
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目のアレルゲン特異的IgEのベースラインからの変化。8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の、FB825のIV投与後の、バイオマーカー(胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン3、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、ペリオスチン、IL-1a、IL-4、IL-5、IL-13、IL-16、IL-31、及びM-CSFを含む)のベースラインからの変化。
【0179】
・ 有効性エンドポイント:
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の掻痒視覚アナログスケール(VAS)のベースラインからの変化、
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目の湿疹面積と重症度指数(EASI)のベースラインからの変化、
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目のアトピー性皮膚炎指数の重症度スコア(SCORAD)のベースラインからの変化、
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目のアトピー性皮膚炎に対する治験責任医師の総合的評価(IGA)のベースラインからの変化、
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目のアトピー性皮膚炎に関連する体表面積(BSA)のベースラインからの変化、
- 8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日目のFB825のIV投与後の、バイオマーカー(胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン-3、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、ペリオスチン、IL-1a、IL-4、IL-5、IL-13、IL-16、IL-31、及びM-CSFを含む)のベースラインからの変化、
- 安全性は、有害事象(AE)と重篤な有害事象(SAE);健康診断所見及びバイタルサイン測定値(収縮期血圧及び拡張期血圧、心拍数、呼吸数、体温)、臨床検査結果(血液学的検査、凝固検査、血清化学検査[肝機能検査、血糖値を含む]、及び尿検査);12誘導ECG結果の追跡と記録により評価された。
【0180】
(ii)バイオマーカー評価
総アレルゲン特異的IgE、胸腺、活性化調節ケモカイン(TARC)、エオタキシン-3、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)、ペリオスチン、IL-1a、IL-4、IL-5、IL-13、IL-16、IL-31、及びM-CSFの測定用の血液試料を、別の報告書に記載されている方法に従って分析した。
【0181】
血液試料を採取した。実際の試料採取時間及びサンプリング問題(ある場合)はCRFに記録された。1試料あたり約5mLの静脈血を以下の時点で採取した:
・ 総免疫グロブリン/アレルゲン特異的IgE:
- スクリーニング期間:任意の時間、
- 1日目及び85日目:(注入開始の2時間前)、
- 8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目のFB825のIV投与後の任意の時間。
・ TARC、エオタキシン-3、TSLP、ペリオスチン、IL-1a、IL-4、IL-5、IL-13、IL-16、IL-31、及びM-CSF:
- 1日目と85日目の注入開始の2時間前、及び8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目の任意の時間。
【0182】
(iii)臨床的有効性の評価
・ 掻痒視覚アナログスケール(VAS)
掻痒の測定にはSCORADの掻痒視覚アナログスケール(VAS)を適用した。患者は、症状の強さを表す数値スコアを0~10のスケールで割り当てるように求められ、ここで0は症状がないことを示し、10は最も重度の症状があることを示す、た。被験者は、スクリーニング時、1日目と85日目の投与前、2日目と86日目の退院前、そして8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目の任意の時間に測定することを求められた。
【0183】
・ アトピー性皮膚炎の重症度スコアリング指数(SCORAD)
SCORAD(指数)は、アトピー性皮膚炎(AD)で検証されているスコアリングシステムである。ADの程度を測定するために、患者の炎症性病変の前面/背面図に9の法則が適用される。程度は0~100に等級付けすることができる。SCORADの強度の部分は、紅斑、浮腫/丘疹、擦傷、苔癬化、浸出/痂皮、乾燥の6つの項目で構成される。各項目は、0(存在しない)から3(重度)までのスケールで評価することができる。主観的な項目には、毎日の掻痒と不眠が含まれる。SCORAD指数の式は、A/5+7B/2+Cである。この式では、Aは範囲(0~100)、Bは強度(0~18)、Cは自覚症状(0~20)として定義される。SCORAD指数の最大スコアは103である。被験者は、スクリーニング時、1日目と85日目の投与前、2日目と86日目の退院前、そして8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目の任意の時間に測定することを求められた。
【0184】
・ 湿疹の面積と重症度指数(EASI)
EASIスコアリングシステムは定義済みのプロセスを使用して、湿疹の兆候の重症度と影響を受ける範囲を等級付けする。湿疹の兆候の範囲と重症度は4つの身体領域で評価され、合計スコアは乗数で調整された4つの領域スコアの合計である。EASIスコアの範囲は0~72である。被験者は、1日目と85日目の投与前、2日目と86日目の退院前、そして8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目の任意の時間に測定することを求められた。
【0185】
・ 治験責任医師によるADの総合評価(IGA)
IGAにより、治験責任医師は特定の時点で全体的な疾患の重症度を評価することができ、これは、明確な疾患から非常に重篤な疾患までの5ポイントの重症度スケールで構成される(0=明確、1=ほぼ明確、2=軽度の疾患、3=中程度の疾患、及び4=重度の疾患)。被験者は、1日目と85日目の投与前、2日目と86日目の退院前、そして8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目の任意の時間に測定することを求められた。
【0186】
・ AD症状に関与するBSA
これは、SCORADのパートA(範囲)として測定された。被験者は、1日目と85日目の投与前、2日目と86日目の退院前、そして8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目の任意の時間に測定することを求められた。
【0187】
(iv)安全性評価
安全性は、有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)、健康診断所見、及びバイタルサイン測定値(収縮期血圧と拡張期血圧、心拍数、呼吸数、及び口腔体温)、臨床検査結果(血液学的検査、凝固検査、血清化学検査[肝機能検査を含む]、及び尿検査)、及び12誘導ECG結果のモニタリングと記録により評価された。15~168日間の治療期間-SAFを通して有害事象を有する患者数の全体的な概要を表4に示す。
【0188】
・ 有害事象
有害事象のセクション(セクション7)は、試験中に収集された「有害事象」(AE)、「重篤な有害事象」(SAE)、及び「特に注目すべき有害事象」を記載する。
【0189】
・ 健康診断
事象のスケジュールに示された時点で、詳細な健康診断を行った。
詳細な健康診断は、皮膚(皮膚紅斑の兆候を含む)、頭、耳、目、鼻、喉、首、甲状腺、肺、心臓、心血管系、腹部、リンパ節、筋骨格系/四肢の評価を含む。必要に応じて、治験担当医師の裁量で暫定的な健康診断を実施し、AE又は臨床検査異常を評価した。身長と体重を測定し、スクリーニング時にのみ肥満指数が算出される。体重は、試験の事象のスケジュールに示された他の全ての健康診断の時点で測定した。体重はキログラム(kg)単位で、室内着衣(コートと靴はなし)の状態で小数点第1位まで記録され、身長(靴なし)は、小数点以下なしのセンチメートル(cm)で測定した。
【0190】
・ バイタルサイン測定値
バイタルサインの測定値には、収縮期血圧と拡張期血圧、心拍数、呼吸数、体温が含まれる。被験者が少なくとも5分間着席していた後、全ての測定を行った。バイタルサインは、事象のスケジュールに示された時点で測定した。
手順が重複して同じ時点で行われる場合、手順の順序は、バイタルサインの測定、次にECGの順でなければならない。
【0191】
治験責任医師は、任意のバイタルサイン測定値が臨床的に重要であるか又は臨床的に重要ではないかを判断することができる。臨床的重要性は、医学的関連性があり、医療(例えば、能動的観察、診断手段、又は治療手段)の変更をもたらす可能性のある結果の任意の変化として定義される。スクリーニングにより臨床的に重要な変化が認められた場合、臨床的に重要な値と臨床的重要性の理由が被験者のCRFのAEページに記録された。治験責任医師は、値が基準範囲又はスクリーニング時の値に達するまで、又は治験責任医師が追跡調査がもはや医学的に不要であると判断するまで、追加の評価で被験者を追跡し続けることができる。
【0192】
・ 臨床検査
臨床検査は現地で行った。事象のスケジュールに示された時点で、絶食条件下(約2時間以上の絶食)で血液と尿を採取した。
【0193】
以下の血液学的検査、凝固検査、血清化学検査(肝機能及び甲状腺機能検査を含む)、尿検査の評価を行った:
- 血液学:ヘマトクリット(Hct)、ヘモグロビン(Hb)、平均血球ヘモグロビン(MCH)、平均血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均血球体積(MCV)、血小板数、赤血球(RBC)数、WBC、及び血球分画(絶対値と割合)、
- 凝固:国際標準化比(INR)、部分的トロンボプラスチン時間(PTT)、及びプロトロンビン時間(PT)、
- 血清化学:ALT、アルブミン、アルカリ性ホスファターゼ、アミラーゼ、アニオンギャップ、AST、重炭酸塩、ビリルビン(総ビリルビン及び直接ビリルビン)、血中尿素窒素(BUN)、カルシウム、二酸化炭素、塩化物、コレステロール(総、高密度リポタンパク質、及び算出された低密度リポタンパク質)、クレアチンホスホキナーゼ、クレアチニン、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)、グロブリン、グルコース、乳酸脱水素酵素(LDH)、リパーゼ、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、総タンパク質、トリグリセリド、トロポニンI又はT、及び尿酸、
- 甲状腺機能:フリーT4と甲状腺刺激ホルモン、
- 尿検査:外観、ビリルビン、色、グルコース、ケトン、白血球エステラーゼ、顕微鏡検査(ディップスティックが陽性の場合に行われる;細菌、尿円柱、結晶、上皮細胞、赤血球、白血球が含まれる)、亜硝酸塩、潜血、pH、タンパク質、比重、濁度、ウロビリノーゲン。
【0194】
血清妊娠検査(β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン)は、スクリーニング時に、妊娠の可能性のある全ての女性被験者に対して行われ、投与前に結果が確認される。尿妊娠検査は、8、15、29、57、85、92、99、113、141、及び169日に行われた。閉経後の女性被験者については、スクリーニング時に、血清卵胞刺激ホルモン検査が行われた。
B型肝炎表面抗原、C型肝炎ウイルス抗体、及びヒト免疫不全症ウイルス抗体は、スクリーニング時に評価される。
【0195】
異常な臨床検査値は、各実験室パラメーターの基準範囲に基づいて、高い又は低い(又は、正常又は異常)とフラグを立てた。治験責任医師は、異常に高いか又は低い結果が臨床的に重要であるか、又は臨床的に重要ではないかを判断することができる。臨床的重要性は、医学的関連性があり、医療(例えば、能動的観察、診断手段、又は治療手段)の変更をもたらす可能性のある結果の任意の変化として定義される。スクリーニング値からの臨床的に重要な変化が認められた場合、臨床的に重要な値と臨床的重要性の理由は、CRFのAEページに記録される。治験責任医師は、値が基準範囲又はスクリーニング時の値に到達するまで、又は治験責任医師が追跡調査がもはや医学的に不要であると判断するまで、追加の評価で被験者を追跡し続けることができる。
個々の被験者の臨床的に重要な検査値がリストされた。任意の時点で臨床的に重要な検査値を有する被験者の数と割合の要約が提示された。
【0196】
・ 心電図
事象のスケジュールに示された時点で、被験者が少なくとも5分間仰臥位になった後に、1つの12誘導ECGを得た。心電図評価には、トレースが正常か異常か、ならびに律動、不整脈又は伝導障害の存在、形態、心筋梗塞の証拠、又はSTセグメント、T波、U波の異常に関するコメントが含まれた。さらに、以下の間隔が測定され報告される:RR間隔、PR間隔、QRS幅、QT間隔、及びQTcF。
【0197】
有害事象
15~168日間の治療期間-SAFを通して有害事象が発生した患者数の全体的な要約を表4に示す。
【0198】
(i)定義
・ 有害事象(AE)
AEは、薬物関連と考えられるかどうかにかかわらず、ヒトでの薬物の使用に関連する好ましくない医学的出来事として定義される。被験者は、試験期間中に何らかの症状が発現した場合は、いつでも治験責任医師に連絡するように指示される。
TEAEとは、試験薬への暴露前には存在しなかった事象、又は暴露後に強度又は頻度が悪化する事象として定義される。
副作用は、薬物により引き起こされる任意のAEである。副作用は、薬物がその事象を引き起こしたと結論する理由がある全ての疑わしい副作用のサブセットである。
【0199】
疑わしい副作用は、試験薬がAEを引き起こしたという合理的な可能性があるAEである。治験薬の安全性報告の目的で「合理的な可能性」とは、試験薬とAEとの因果関係を示唆する証拠があることを意味する。疑わしい副作用は、副作用より因果関係についての確実性の程度が低いことを意味し、これは、試験薬により引き起こされるAEを意味する。
【0200】
AE又は疑わしい副作用は、IBにリストされていない場合、又は試験中の試験薬で観察された特異性又は重症度でリストされていない場合、又は、IBが必要でないか又は利用できない場合、一般的な調査計画又は本出願の他の場所で説明されているリスク情報と一致しない場合、AE又は疑わしい副作用は「予測されていない」と見なされる。例えばこの定義では、IBが肝酵素の上昇又は肝炎のみに言及した場合、肝壊死は(重症度が高いため)予期しないものとなる。同様に、IBが脳血管事故のみを記載している場合、脳血栓塞栓症及び脳血管炎は(より大きな特異性のために)「予測されていない」。この定義で使用される「予期されていない」とは、あるクラスの薬物で発生するか、又は薬物の薬理学的特性から予測されるとIBで言及されているが、特に試験中の特定の薬物で起きていると特に言及されていないAE又は疑わしい副作用を指す。
【0201】
・ 重篤な有害事象(SAE)
治験責任医師又は治験依頼者のいずれかから見て、以下のいずれかの結果が生じた場合、AE又は副作用の疑いはSAEと見なされる:
- 死亡、
- 生命を脅かすAE、
- 入院又は既存入院の長期化、
- 通常の生活機能を実行する能力の永続的又は重大な無能力又は実質的な混乱、
- 先天異常又は先天性欠損症。
【0202】
死に至ることなく、生命を脅かすことなく、入院を必要としたりしない重要な医療事象は、これらが、適切な医学的判断に基づいて、被験者を危険にさらす可能性があり、定義にリストされた結果の1つを防ぐために医療又は外科的介入を必要とする場合、これらは深刻であると見なされる。このような医療事象の例には、緊急治療室又は自宅で集中治療を必要とするアレルギー性気管支痙攣、入院には至らない血液疾患若しくは痙攣、又は薬物依存症若しくは薬物乱用の発症が含まれる。
【0203】
治験責任医師又は治験依頼者のいずれかから見た場合に、AE又はその疑いのある副作用の発生が被験者を直ちに死亡のリスクにさらると、AE又はその疑いのある副作用は、「生命を脅かす」と見なされる。それは、それがより深刻な形で起こった場合、死を引き起こしたかもしれないAE又は疑わしい副作用を含まない。
【0204】
・ 特に注目すべき有害事象
特に注目すべき有害事象には、以下の事象が含まれる:
- 被験者はアナフィラキシーの治療下で発現したAE(TEAE)を経験する、
- 被験者はSAEを経験する(セクション7.1.2)、
- 被験者は、少なくとも30分間持続するQT延長(ベースラインから500ミリ秒を超えるか、又は60ミリ秒以上の変化)、又は繰り返されるECGの虚血性変化、又は持続する症候性不整脈を経験する、
- アナフィラキシー、甲状腺異常、皮膚紅斑、血小板減少症、貧血、溶血、好中球減少症、肝毒性、腎毒性を含む過敏反応、
- 以下の実験室パラメータが、個々の被験者で発生する:
- ALT又はAST≧5×ULN
- ビリルビン≧2×ULN
- 血小板数等級1≦99.999*109/L
- ヘモグロビン≦105g/L
- 好中球の絶対数等級1≦1.5*109/L
- 血中尿素窒素又はクレアチニンが>2×ULNに上昇。
【0205】
(ii)有害事象の誘発
治験責任医師は、全てのAE及びSAEがCRFに記録され、Fountainに報告されるようにする責任がある。有害事象は、スクリーニング期間の時点から全ての試験手順の完了と試験からの解放まで評価された。
試験での訪問又は評価のたびに、被験者は標準的な質問を受けて、健康に関連する医学関連の変化を引き出された。被験者はまた、入院していたか、事故があったか、新しい薬を使用したか、併用薬の処方を変更したか(処方薬と市販薬の両方)も尋ねられた。
被験者の観察に加えて、CRFのAEページで収集された任意のデータ(例えば、臨床検査値、健康診断の所見、ECGの変化)から、又は被験者の安全に関連するその他の書類から、AEが文書化された。
【0206】
重症度の評価 「有害事象共通用語基準」(Common Terminology Criteria for Adverse Events:CTCAE)を使用したAEの重症度(又は強度)を、輸液反応の重症度の等級付けに使用した。
- 等級1 軽度:一過性又は軽度の不快感(<48時間);医学的介入/治療は必要ない、
- 等級2 中程度:活動の軽度から中程度の制限 - いくらかの支援が必要;医学的介入/治療が必要ないか又は最小限に必要、
- 等級3 重度:活動に著しい制限、通常はいくらかの支援が必要;医学的介入/治療が必要、入院があり得る、
- 等級4 生命を脅かす:活動の極端な制限、かなりの支援が必要;かなりの医学的介入/治療が必要、入院又はホスピスケアの可能性が高い。
【0207】
AEの重症度の変化を文書化して、各強度レベルでの事象の持続を評価することを可能にする必要がある。断続的と特徴付けられるAEは、各エピソードの開始と持続期間の文書化を必要とする。
【0208】
・ 7.3.2 因果関係の評価
AEと試験薬の関係に関する治験責任医師の評価は文書化プロセスの一部であるが、試験で何を報告して何を報告しないかを決定する要因ではない。
治験責任医師は、全てのAE及びSAEの因果関係(すなわち、試験薬が事象を引き起こしたという合理的な可能性があるかどうか)を評価した。その関係は、次の分類を使用して特徴付けられた:
【0209】
- 無関係:この関係は、試験薬と報告された事象との間に関連がないことを示唆している、
- 低い可能性:この関係は、試験薬とAEとの因果関係を示唆する証拠に基づいており、すなわち、薬物が事象を引き起こした合理的な可能性がある。事象は、薬物のIV投与時から妥当な時系列に従うか、試験薬に対する既知の応答パターンに従うが、他の要因により引き起こされる可能性もある、
- 高い可能性:この関係は、薬物の既知の薬理作用、薬物又は薬物のクラスに対する既知又は以前に報告された副作用、又は治験責任医師の臨床経験に基づく判断に基づいて、薬物のIV投与による事象の合理的な時系列が存在することを示唆し、事象と試験薬との関連性は高いと思われる、
- 明確:この関係は、薬物のIV投与とAEとの間に明確な因果関係が存在することを示唆し、他の条件(併発疾患、病状の進行/発現、又は併用薬による反応)では、事象を説明できないと考えられる。
【0210】
統計解析
(i)一般的統計量
全ての統計解析の詳細は、統計解析計画に記載された。採取された全てのデータは、データリストに提示された。分析母集団から除外された被験者からのデータはデータリストに提示されたが、概要統計量の計算には含まれなかった。
カテゴリー変数については、頻度と割合が提示された。記述変数(被験者数、平均、中央値、SD、最小値、最大値)を使用して、連続変数を要約した。
【0211】
ベースラインのデモグラフィック変数及びバックグラウンド変数は、投与量で、及び全体的に全ての被験者について要約した。試験に登録した被験者の数と、試験を完了した被験者の数、及び割合が提示された。試験を中止又は中断した被験者の頻度と割合、及び中止又は中断の理由も要約された。この試験の解析は、各期間及び各群の記述統計で証明された。有意差検定は適用されなかった。
統計解析計画(SAP)が作成して、統計解析作業を詳細に行った。最後の患者が試験を完了して、全てのデータを摺り合わせた(すなわち、「きれいにした」)後に、臨床データベースのロックが行われる場合がある。
【0212】
(ii)試料サイズの計算
この試験には、合計で約12人の評価可能な被験者が計画された。この試験の試料サイズは、臨床的及び現実的な考慮に基づいており、正式な統計的検出力の算出には基づいていない。
(iii)分析セット
完全分析セット(FAS)は、試験薬を少なくとも1回投与された被験者として定義される。全ての有効性評価はFAS集団で行われる。
安全性母集団は、試験薬を少なくとも1回投与された被験者として定義される。全ての安全性評価は安全母集団について行われる。
(iv)統計解析
・ バイオマーカー解析
エンドポイントとしてリストされた総IgE及びアレルゲン特異的IgEとバイオマーカーの濃度とベースラインからの変化を、訪問ごとにまとめグラフで示した。総IgE及びアレルゲン特異的IgEのベースラインからの変化は、ベースラインの総IgE濃度(血清IgE>1500IU/mL又は血清IgE≦1500IU/mL)により要約し、FB825(1回投与又は2回投与)を投与した。
FB825の2回目の投与を受けた被験者では、2回目の投与で採取されたデータが分析され、1回目の投与で採取されたものと同様に要約された。
【0213】
・ 臨床効果の分析
評価指標は、各被験者の全ての訪問中にPI又は共同PIにより評価された。臨床的エンドポイントは、記述統計量(EASI、SCORAD、IGA、VAS、BSAの平均;SD、CV、被験者数)を使用して、訪問時点ごとに分析され、FB825(1回投与又は2回投与)が投与された。
予定された訪問時間プロフィールに対する平均指数の変化がグラフで表示された。
FB825の2回目の投与を受けた被験者では、2回目の投与で採取されたデータが分析され、1回目の投与で採取されたものと同様に要約された。
【0214】
・ 安全性分析
有害事象は、医薬品規制用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)を使用して、優先用語及びシステム臓器クラスによりコード化され、治療、投与量レベル、及び全体別に要約された。有害事象はまた、重症度、試験薬との関係、SAE、及び試験薬の中止につながるAE別に要約された。
【0215】
臨床検査結果、バイタルサイン測定値、及び12誘導ECG結果の実際の値とベースラインからの変化を、記述統計量(被験者数、平均、SD、中央値、最小値、最大値)を使用して、各時点での治療と投与量ごとに要約した。臨床検査結果のシフトテーブルを作成した。臨床検査データ、バイタルサイン測定値、12誘導ECG結果、及び健康診断所見は、データリストに表示された。
【0216】
(v)欠失データの処理
定量限界を下回る濃度(BLQ)は、記述統計ではゼロとして扱った。平均BLQ濃度はBLQとして表示し、SD及びCVは該当しないと報告した。欠失している濃度は計算から除外される。
欠落データを処理するために、最終観察繰越法(Last observation carry forward:LOCF)を適用した。安全性データの補完はない。
【0217】
(vi)データ品質保証
試験の全ての側面は、現在の国際調和会議(ICH)の統一された3部ガイドラインE6(R1): GCPと現在の標準作業手順書(International Conference on Harmonisation (ICH) harmonized tripartite guideline E6 (R1): Good Clinical Practice and current standard operating procedures)に関して該当する政府規制を順守して追跡した。データの内部品質再審査と臨床モニターによる追加の審査があり得る。

【表2】
【表3】
【表4】
【0218】
結果
これは、アトピー性皮膚炎(AD)の成人におけるFB825の安全性と有効性を評価するためのオープンラベル探索的試験である。ADを有する適格な12人のヒト患者が試験に登録され、1日目と85日目に1時間のIV注入により5mg/kgのFB825を投与された。患者は、安全性と有効性の評価のために、表2に提示された事象のスケジュールに従って試験施設に戻るようにスケジュールされた。
【0219】
FB825はADを有するヒト患者に安全に投与された
FB825は5mg/kgで、1日目と85日目にIV注入により1時間かけて患者に投与された。治療による緊急有害事象(TEAE)又は治療による重篤な緊急有害事象(TE SAE)に起因する死亡はなく、被験者の中断もなかった。6人の被験者がTEAEを発症し、そのうち3人は薬物に関連している可能性がある。5人の被験者が上気道感染を発症し、2人の被験者がヘルペスウイルス感染症を発症した。1人の被験者のみが以下の1つ発症したと報告された:結膜炎、鼻漏、喘息発作、発熱、咳、又はQTC延長。(表4)
臨床検査結果、バイタルサイン測定値、12誘導ECG結果、又は健康診断の所見には、明らかな治療又は投与量関連の傾向はなかった。
【0220】
有効性
FB825の有効性は、1日目と85日目の投与前、2日目と86日目の退院前、及び8、15、29、57、92、99、113、141、及び169日目の任意の時間に、湿疹面積と重症度指数(EASI)、治験責任医師の総合評価(IGA)、アトピー性皮膚炎指数の重症度スコア(SCORAD)、及び掻痒視覚アナログスケール(VAS)のベースラインからの変化を記録することにより決定した。ベースラインのデモグラフィック変数及びバックグラウンド変数は、表3の投与量と被験者全体により要約される。
【0221】
(i)EASIはFB825によりベースラインと比較して低下した
被験者は、FB825投与後1日目から約55日目まで、EASIの漸進的な低下を示した(約65%低下)。EASIスコアは、55日目から85日目の2回目のFB825投与まで上昇し始めたが、それでもベースラインと比較して約40%低かった。被験者は、113日目の約70%低下までのEASIのさらなる低下を示し、試験終了(EOS)までこのレベルを維持した(図5)。
【0222】
(ii)IGAはFB825によりベースラインと比較して低下した
被験者は、FB825投与後1日目から約55日目まで、IGAの漸進的な低下を示した(約30%低下)。IGAスコアは、55日目から85日目の2回目のFB825投与まで上昇し始めたが、それでもベースラインと比較して約15%低かった。被験者は、113日目の最低で約45%低下までのIGAのさらなる低下を示し、試験終了(EOS)までベースラインと比較して35%の低下レベルを維持した(図6)。
【0223】
(iii)SCORADはFB825によりベースラインと比較して低下した
被験者は、FB825投与後1日目から約55日目まで、SCORADの漸進的な低下を示した(約45%低下)。SCORADスコアは、55日目から85日目の2回目のFB825投与まで上昇し始めたが、それでもベースラインと比較して約30%低かった。被験者は、113日目の約55%低下までのSCORADのさらなる低下を示し、試験終了(EOS)までこのレベルを維持した(図7)。
【0224】
(iv)VASはFB825によりベースラインと比較して低下した
被験者は、FB825投与後1日目から約15日目まで、VASの漸進的な低下を示した(約45%低下)。VASスコアは、15日後に上昇し始め、85日目の2回目のFB825投与までベースラインと比較して25%低下を維持した。被験者はさらにVAS低下を示し、113日目の約55%低下までのVASのさらなる低下し、試験終了(EOS)までこのレベルを維持した(図8)。
【0225】
他の実施態様
本明細書に開示されている全ての特徴は、任意に組み合わせることができる。本明細書に開示されている各特徴は、同じか、同等か、又は同様の目的を果たす代替の特徴により置き換えることができる。すなわち、特に他に明記されない限り、開示された各特徴は、一般的な一連の同等又は類似の特徴の例にすぎない。
上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神と範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変更及び修正を加えて、様々な使用法及び条件に適合させることができる。従って、他の実施態様も特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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