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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】無線信号分析に基づく存在検出
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20230529BHJP
   G01S 13/46 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
G01V3/12 A
G01S13/46
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020547404
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 CA2018051114
(87)【国際公開番号】W WO2019183708
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】15/935,972
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318010214
【氏名又は名称】コグニティヴ システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】クラヴェッツ オレクシー
(72)【発明者】
【氏名】ピャオ ユンフェン
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/013760(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0319819(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0113647(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-15/00;99/00
G01S 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
存在検出方法であって、
無線通信プロトコルに従う無線通信ネットワーク内の第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との間の無線通信リンク上で第1の期間に空間を通じて送信された無線信号に基づく第1の信号の組を前記空間内の動きについて分析することによって、前記空間内の物体の動きを検出するステップと、
前記無線通信プロトコルに従う前記無線通信ネットワーク内の前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置との間の前記無線通信リンク上でその後の第2の期間に前記空間を通じて送信された無線信号に基づく第2の信号の組を前記空間内の動きについて分析することによって、前記空間内の動きの欠如を検出するステップと、
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することによって、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したかどうかを検出するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、
記憶信号のデータベースであって、前記記憶信号の各々を前記空間の占有状態又は前記空間の非占有状態に関連付けるデータベースにアクセスすることと、
前記第2の信号の組を前記記憶信号と比較することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在しなかったことを検出するステップを含み、前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、それぞれが前記空間の非占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第1のサブセットのうちの1つに前記第2の信号の組が一致すると判定することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したことを検出するステップを含み、前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、それぞれが前記空間の非占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第1のサブセットのうちのいずれにも前記第2の信号の組が一致しないと判定することを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、それぞれが前記空間の占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第2のサブセットのうちの1つに前記第2の信号の組が一致すると判定することを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、前記空間内の存在に関連する特徴を有する一定時間にわたる変動について前記第2の信号の組を分析することをさらに含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ユーザ装置からのフィードバックに基づいて、前記第2の期間中に前記空間が占有されていなかったと判定するステップと、
前記データベースを、前記第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むように更新するステップと、
を含み、前記データベースは、前記新たな記憶信号を前記空間の非占有状態に関連付ける、
請求項2に記載の方法。
【請求項8】
閾値継続時間よりも長く持続する前記動きの欠如に基づいて、前記第2の期間中に前記空間が占有されていなかったと判定するステップと、
前記データベースを、前記第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むように更新するステップと、
を含み、前記データベースは、前記新たな記憶信号を前記空間の非占有状態に関連付ける、
請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記記憶信号は、
前記空間の教師あり動き検出トレーニング期間中に取得された記憶信号、又は、
前記空間の教師なしトレーニング期間中に取得された記憶信号、
のうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の無線信号の組及び前記第2の無線信号の組は、前記無線通信プロトコルに従って前記第1の無線通信装置から前記第2の無線通信装置にアドレス指定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
データ処理装置によって実行された時に動作を実行する命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体であって、前記動作は、
無線通信プロトコルに従う無線通信ネットワーク内の第1の無線通信装置と第2の無線通信装置との間の無線通信リンク上で第1の期間に空間を通じて送信された無線信号に基づく第1の信号の組を前記空間内の動きについて分析することによって、前記空間内の物体の動きを検出するステップと、
前記無線通信プロトコルに従う前記無線通信ネットワーク内の前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置との間の前記無線通信リンク上でその後の第2の期間に前記空間を通じて送信された無線信号に基づく第2の信号の組を前記空間内の動きについて分析することによって、前記空間内の動きの欠如を検出するステップと、
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することによって、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したかどうかを検出するステップと、
を含む、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、
記憶信号のデータベースであって、前記記憶信号の各々を前記空間の占有状態又は前記空間の非占有状態に関連付けるデータベースにアクセスすることと、
前記第2の信号の組を前記記憶信号と比較することと、
を含む、請求項11に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
前記動作は、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在しなかったことを検出するステップを含み、前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、それぞれが前記空間の非占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第1のサブセットのうちの1つに前記第2の信号の組が一致すると判定することを含む、
請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
前記動作は、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したことを検出するステップを含み、前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、それぞれが前記空間の非占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第1のサブセットのうちのいずれにも前記第2の信号の組が一致しないと判定することを含む、
請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、それぞれが前記空間の占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第2のサブセットのうちの1つに前記第2の信号の組が一致すると判定することを含む、
請求項14に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、前記空間内の存在に関連する特徴を有する一定時間にわたる変動について前記第2の信号の組を分析することをさらに含む、
請求項14に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記動作は、
ユーザ装置からのフィードバックに基づいて、前記第2の期間中に前記空間が占有されていなかったと判定するステップと、
前記データベースを、前記第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むように更新するステップと、
を含み、前記データベースは、前記新たな記憶信号を前記空間の非占有状態に関連付ける、
請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記動作は、
閾値継続時間よりも長く持続する前記動きの欠如に基づいて、前記第2の期間中に前記空間が占有されていなかったと判定するステップと、
前記データベースを、前記第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むように更新するステップと、
を含み、前記データベースは、前記新たな記憶信号を前記空間の非占有状態に関連付ける、
請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前記記憶信号は、
前記空間の教師あり動き検出トレーニング期間中に取得された記憶信号、又は、
前記空間の教師なしトレーニング期間中に取得された記憶信号、
のうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項12に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
モニタリングシステムであって、
無線通信プロトコルに従う無線通信ネットワーク内の無線通信リンク上で空間を通じて無線信号を送信するように構成された、第1の無線通信装置及び第2の無線通信装置を含む無線通信装置と、
1又は2以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、
を備え、前記命令は、前記1又は2以上のプロセッサによって実行された時に、
前記無線通信プロトコルに従う前記無線通信ネットワーク内の前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置との間の無線通信リンク上で第1の期間に前記空間を通じて送信された無線信号に基づく第1の信号の組を前記空間内の動きについて分析することによって、前記空間内の物体の動きを検出し、
前記無線通信プロトコルに従う前記無線通信ネットワーク内の前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置との間の前記無線通信リンク上でその後の第2の期間に前記空間を通じて送信された無線信号に基づく第2の信号の組を前記空間内の動きについて分析することによって、前記空間内の動きの欠如を検出し、
前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することによって、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したかどうかを検出する、
ことを前記モニタリングシステムに行わせる、
ことを特徴とするモニタリングシステム。
【請求項21】
記憶信号を含むデータベースであって、前記記憶信号の各々を前記空間の占有状態又は前記空間の非占有状態に関連付けるデータベースをさらに備え、前記第2の信号の組を前記空間内の存在について分析することは、前記第2の信号の組を前記記憶信号と比較することを含む、
請求項20に記載のモニタリングシステム。
【請求項22】
前記命令は、前記1又は2以上のプロセッサによって実行された時に、それぞれが前記空間の非占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第1のサブセットのうちの1つに前記第2の信号の組が一致する場合に、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在しなかったことを検出することを前記モニタリングシステムに行わせる、
請求項21に記載のモニタリングシステム。
【請求項23】
前記命令は、前記1又は2以上のプロセッサによって実行された時に、それぞれが前記空間の非占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第1のサブセットのいずれにも前記第2の信号の組が一致しない場合に、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したことを検出することを前記モニタリングシステムに行わせる、
請求項21に記載のモニタリングシステム。
【請求項24】
前記命令は、前記1又は2以上のプロセッサによって実行された時に、それぞれが前記空間の占有状態に関連付けられた前記記憶信号の第2のサブセットのいずれかに前記第2の信号の組が一致する場合に、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したことを検出することを前記モニタリングシステムに行わせる、
請求項23に記載のモニタリングシステム。
【請求項25】
前記命令は、前記1又は2以上のプロセッサによって実行された時に、前記第2の信号の組の分析が前記空間内の存在に関連する特徴を有する変動を示す場合に、前記第2の期間中に前記空間内に前記物体が存在したことを検出することを前記モニタリングシステムに行わせる、
請求項21に記載のモニタリングシステム。
【請求項26】
前記命令は、前記1又は2以上のプロセッサによって実行された時に、
ユーザ装置からのフィードバックに基づいて、前記第2の期間中に前記空間が占有されていなかったと判定し、
前記データベースを、前記第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むように更新する、
ことを前記モニタリングシステムに行わせ、前記データベースは、前記新たな記憶信号を前記空間の非占有状態に関連付ける、
請求項21に記載のモニタリングシステム。
【請求項27】
前記命令は、前記1又は2以上のプロセッサによって実行された時に、
閾値継続時間よりも長く持続する前記動きの欠如に基づいて、前記第2の期間中に前記空間が占有されていなかったと判定し、
前記データベースを、前記第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むように更新する、
ことを前記モニタリングシステムに行わせ、前記データベースは、前記新たな記憶信号を前記空間の非占有状態に関連付ける、
請求項21に記載のモニタリングシステム。
【請求項28】
前記記憶信号は、
前記空間の教師あり動き検出トレーニング期間中に取得された記憶信号、又は、
前記空間の教師なしトレーニング期間中に取得された記憶信号、
のうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項21に記載のモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2018年3月26日に出願された「無線信号分析に基づく存在検出(Detecting Presence Based on Wireless Signal Analysis)」という名称の米国特許出願公開第15/935,972号に対する優先権を主張するものであり、この文献の内容は引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
以下の説明は、無線信号に基づいて空間内の物体の存在を検出することに関する。
【0003】
例えば、室内又は屋外領域における物体の動きを検出するために動き検出システムが使用される。動き検出システム例には、赤外線センサ又は光学センサを用いてセンサの視野内の物体の動きを検出するものもある。動き検出システムは、セキュリティシステム、自動制御システム及びその他のタイプのシステムで使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】無線通信システム例を示す図である。
図2A】モニタリングシステムにおける無線通信装置間の無線信号通信例を示す図である。
図2B】モニタリングシステムにおける無線通信装置間の無線信号通信例を示す図である。
図2C】モニタリングシステムにおける無線通信装置間の無線信号通信例を示す図である。
図2D】モニタリングシステムにおける無線通信装置間の無線信号通信例を示す図である。
図3A】非占有空間における無線信号例を示す図である。
図3B】占有空間における無線信号例を示す図である。
図4】無線通信装置間の無線信号通信に基づくチャネル状態の例を示すブロック図である。
図5】無線信号に基づいて空間内の物体の存在を検出するプロセス例を示すフロー図である。
図6】無線通信装置例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
概説として、モニタリングシステムを、通信チャネルを介して空間を通じて送信された無線信号の変化に基づいて空間内の動きを検出するように構成することができる。例えば、ある人物が空間内に入り、又は空間を通って歩くと、モニタリングシステムは、無線信号の変化に基づいてその人物の動きを検出することができる。その後、モニタリングシステムは、無線信号が変化せず、又は動きを示すのに十分なほど変化せず、例えば動きの欠如を検出した時などに、その人物の動きの検出を停止することができる。たとえモニタリングシステムの動き検出面によって物体の動きが検出可能でない時であっても、空間内の人物などの物体の存在を判定することによって空間が占有されているかどうかを判定できるモニタリングシステムの存在検出面を有することも有利である。人物などの物体がもはや空間内に存在しないかどうかを判定することも有利である。例えば、警報システム、動き検出システム、保護システム、個人モニタリングシステムなどのモニタリングシステムが、家の中に侵入者が存在するかどうか、誰かが倒れて助けを必要としているかどうかを判定することも有利であると思われる。場合によっては、他のいくつかの状況において、企業などが建物又は不動産物件の電力管理などのために、部屋、建物又はその他の空間の占有状態を別様に判定することも有利であると思われる。例えば、人が存在しない建物部分の照明、空調、温度などを調整することができる。
【0006】
いくつかの事例では、本開示の態様がさらなる利点をもたらすことができる。例えば、空間内で動きの欠如が検出された時の物体の存在又は不在を、装置間の見通し線を必要とすることなく無線信号に基づいて判定することができる。場合によっては、既存の無線通信装置及びネットワークの特徴を使用して、動きが検出されない時の物体の存在又は不在を判定することができる。本開示の態様による動きが検出されない時の物体の存在又は不在は、モニタリング及び警報システムが発生の評価においてさらに正確かつ有用なものとなり、占有又は非占有などの空間の状態を正確に判定するように、これらのシステムの動作をさらに改善するとともに、モニタリング及び警報システムの動作に他の技術的改善を提供することもできる。
【0007】
ここで説明する内容のいくつかの態様では、動きの欠如が検出された時の空間内の物体の存在又は不在、例えば空間が占有されているか否かを、空間内で通信する複数の無線通信装置からの情報を使用して検出することができる。
【0008】
例えば、無線通信ネットワーク内の各無線通信装置において受け取られた無線信号を分析して、ネットワーク内の(ネットワーク内のそれぞれの無線通信装置の対間の)異なる通信リンクのチャネル情報を特定することができる。チャネル情報は、空間を横切る無線信号に伝達関数を適用する物理的媒体を表すことができる。いくつかの例では、チャネル情報がチャネル応答情報を含む。チャネル応答情報は、通信リンクの既知のチャネル特性を意味することができ、例えば送信機と受信機との間の空間内の散乱、フェージング及び電力減衰の複合効果を表す、無線信号が送信機から受信機にどのように伝播するかを示すことができる。いくつかの例では、チャネル情報がビームフォーミング状態情報を含む。ビームフォーミング(又は空間フィルタリング)は、指向性信号送信又は受信のためのマルチアンテナ(複数入力/複数出力(MIMO))無線システムにおいて使用される信号処理技術を意味することができる。ビームフォーミングは、特定の角度の信号が建設的干渉を受けて他の信号が相殺的干渉を受けるようにアンテナアレイ内の素子を組み合わせることによって達成することができる。ビームフォーミングは、空間的選択性を達成するために送信側及び受信側の両方で使用することができる。(例えば、IEEE 802.11ac標準などの)いくつかの例では、送信機がビームフォーミングステアリングマトリクス(beamforming steering matrix)を使用する。ビームフォーミングステアリングマトリクスは、アンテナアレイがその個々のアンテナ素子の各々をどのように使用して送信のための空間経路を選択すべきかについての数学的記述を含むことができる。本明細書では、チャネル応答情報に関していくつかの態様を説明するが、説明する態様では、ビーム状態情報又はビームフォーマステアリングマトリクス状態(beamformer steering matrix state)を同様に使用することもできる。
【0009】
(例えば、ネットワーク内のハブ装置又は他の装置、或いはネットワークに通信可能に結合された遠隔装置が)各通信リンクのチャネル情報を分析して、空間内で動きが発生したかどうか、検出された動きの相対的位置、又はこれらの両方を検出することができる。いくつかの態様では、例えば空間内で動きが検出されない時に、各通信リンクのチャネル情報を分析して物体が存在するか否かを検出することができる。
【0010】
いくつかの実装では、無線通信ネットワークが無線メッシュネットワークを含むことができる。無線メッシュネットワークは、ノード(例えば、無線通信装置)が中央アクセスポイント、基地局又はネットワークコントローラを使用せずにポイントツーポイント方式で直接通信する分散型無線ネットワークを意味することができる。無線メッシュネットワークは、メッシュクライアント、メッシュルータ又はメッシュゲートウェイを含むことができる。いくつかの例では、無線メッシュネットワークがIEEE 802.11標準に基づく。いくつかの例では、無線メッシュネットワークがWi-Fiアドホック又は別の標準化技術に基づく。
【0011】
図1に、無線通信システム100の例を示す。無線通信システム例100は、第1の無線通信装置102A、第2の無線通信装置102B及び第3の無線通信装置102Cという3つの無線通信装置を含む。無線通信システム例100は、さらなる無線通信装置102及び/又は他のコンポーネント(例えば、1又は2以上のネットワークサーバ、ネットワークルータ、ネットワークスイッチ、ケーブル、又はその他の通信リンクなど)を含むこともできる。
【0012】
無線通信装置例102A、102B、102Cは、例えば無線ネットワーク標準又は別のタイプの無線通信プロトコルに従って無線ネットワーク内で動作することができる。例えば、無線ネットワークは、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、又は別のタイプの無線ネットワークとして動作するように構成することができる。WLANの例としては、IEEEによって開発された標準である802.11ファミリのうちの1つ又は2つ以上(例えば、Wi-Fiネットワーク)などに従って動作するように構成されたネットワークが挙げられる。PANの例としては、近距離通信標準(例えば、BLUETOOTH(登録商標)、近距離無線通信(NFC)、Zigbee)、及びミリ波通信などに従って動作するネットワークが挙げられる。
【0013】
いくつかの実装では、無線通信装置102A、102B、102Cを、例えばセルラネットワーク標準に従ってセルラネットワーク内で通信するように構成することができる。セルラネットワークの例としては、グローバル・システム・フォー・モバイル(GSM)及びGSM進化型高速データレート(EDGE)又はEGPRSなどの2G標準、符号分割多元接続(CDMA)、広帯域符号分割多元接続(WCDMA)、ユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーション・システム(UMTS)及び時分割同期符号分割多元接続(TD-SCDMA)などの3G標準、ロング・ターム・エボリューション(LTE)及びLTE-Advanced(LTE-A)などの4G標準、及び5G標準などに従って構成されたネットワークが挙げられる。図1に示す例では、無線通信装置102A、102B、102Cが標準的な無線ネットワークコンポーネントであり、或いは標準的な無線ネットワークコンポーネンを含むことができる。例えば、無線通信装置102A、102B、102Cは、市販のWi-Fi装置とすることができる。
【0014】
いくつかの例では、無線通信装置102A、102B、102Cを、Wi-Fiアクセスポイント又は別のタイプの無線アクセスポイント(WAP)とすることができる。無線通信装置102A、102B、102Cは、無線通信装置上に命令(例えば、ソフトウェア又はファームウェア)として埋め込まれた、本明細書で説明するような1又は2以上の動作を実行するように構成することができる。いくつかの例では、無線通信装置102A、102B、102Cを、例えば市販のメッシュネットワークシステム(例えば、GOOGLE Wi-Fi)などの無線メッシュネットワークのノードとすることができる。いくつかの例では、別のタイプの標準的な又は従来のWi-Fiトランシーバ装置を使用することもできる。無線通信装置102A、102B、102Cは、Wi-Fiコンポーネントを伴わずに実装することもでき、例えば標準的なものであるか、それとも非標準的なものであるかにかかわらず、無線通信のための他のタイプの無線プロトコルを動き検出に使用することもできる。
【0015】
図1に示す例では、例えば102A、102Bなどの無線通信装置が、(例えば、無線ネットワーク標準、動き検出プロトコル、存在検出プロトコル、或いはその他の標準的又は非標準的なプロトコルに従って)通信チャネルを介して無線信号を送信する。例えば、無線通信装置は、空間を探査して物体の動き又は存在を検出するための動き探査信号を生成して送信することができる。いくつかの実装では、動き探査信号が、チャネルサウンディング(例えば、IEEE 802.11ac-2013標準に従うビームフォーミングのためのチャネルサウンディング)で使用される標準的なパイロット信号を含む標準的なシグナリング又は通信フレームを含むことができる。いくつかの例では、動き探査信号が、ネットワーク内の全ての装置に知られている基準信号を含む。いくつかの例では、無線通信装置のうちの1つ又は2つ以上が、空間を通じて送信された動き探査信号に基づいて受け取られた信号である動き検出信号を処理することができる。例えば、これらの動き検出信号を分析して、通信チャネルにおいて検出された変化(又はその欠如)に基づいて空間内の物体の動き、空間内の動きの欠如、又は動きの欠如が検出された時の空間内の物体の存在又は不在を検出することができる。
【0016】
102A、102Bなどの動き探査信号を送信する無線通信装置は、ソースデバイスと呼ぶことができる。いくつかの例では、無線通信装置102A、102Bが、(例えば、上述した)無線動き探査信号を一斉送信することができる。他の例では、無線通信装置102A、102Bが、他の無線通信装置102C及び他の装置(例えば、ユーザ装置、クライアント装置、サーバなど)にアドレス指定された無線信号を送信することができる。無線通信装置102C及びその他の装置(図示せず)は、無線通信装置102A、102Bによって送信された無線信号を受け取ることができる。いくつかの例では、無線通信装置102A、102Bによって送信される無線信号が、例えば無線通信標準に従って又は別様に定期的に繰り返される。
【0017】
いくつかの例では、センサデバイスと呼ぶことができる無線通信装置102Cが、無線通信装置102A、102Bから受け取られた無線信号を処理して、無線信号によってアクセスされた空間内の物体の動き又は動きの欠如を検出する。いくつかの例では、無線通信装置102Cが無線通信装置102A、102Bから受け取った無線信号を別の装置又はコンピュータシステムが処理して、無線信号によってアクセスされた空間内の物体の動き又は動きの欠如を検出する。いくつかの例では、無線通信装置102C(或いは別のシステム又は装置)が無線信号を処理して、動きの欠如が検出された時の空間内の物体の存在又は不在を検出する。いくつかの例では、無線通信装置102C(或いは別のシステム又は装置)が、図4に関して後述するような、又は図5に関して説明するプロセス例における1又は2以上の動作、或いは動き、動きの欠如、又は動きの欠如が検出された時の物体の存在又は不在を検出する別のタイプのプロセスを実行することができる。他の例では、例えば無線通信システム100を、無線通信装置102Cが例えばソースデバイスとして無線信号を送信し、無線通信装置102A、102Bが例えばセンサデバイスとして無線通信装置102Cからの無線信号を処理して、動き、動きの欠如、又は動きが検出されない時の存在を検出できるように修正することができる。すなわち、いくつかの例では、無線通信装置102A、102B、102Cの各々を、ソースデバイス、センサデバイス、又はこれらの両方として構成することができる。
【0018】
動き及び/又は存在検出に使用される無線信号は、例えばビーコン信号(例えば、Bluetoothビーコン、Wi-Fiビーコン、他の無線ビーコン信号)、パイロット信号(例えば、802.11ac-2013標準に従うビームフォーミング用途などのチャネルサウンディングに使用されるパイロット信号)、又は無線ネットワーク標準に従って他の目的で生成された別の標準的な信号、或いは動き及び/又は存在検出又はその他の目的で生成された非標準的な信号(例えば、ランダム信号、基準信号など)を含むことができる。いくつかの例では、動き及び/又は存在検出のための無線信号がネットワーク内の全ての装置に知られている。
【0019】
いくつかの例では、無線信号が、移動物体と相互作用する前又は後に物体(例えば、壁)を通じて伝播することができ、これによって移動物体と送信又は受信ハードウェアとの間の光学的見通し線を伴わずに移動物体の動きの検出を可能にすることができる。いくつかの例では、無線信号が、102Cなどの無線通信装置によって受け取られた時に、例えば空間内で物体が動いていないこと、又はもはや動いていないことなどの、空間内の動きの欠如を示すことができる。いくつかの例では、無線信号が、102Cなどの無線通信装置によって受け取られた時に、動きの欠如が検出された時の空間内の物体の存在を示すことができる。これとは逆に、無線信号は、動きの欠如が検出された時の空間内の物体の不在を示すこともできる。例えば、第3の無線通信装置102Cは、受け取った無線信号に基づいて、動きデータ、存在データ、又はこれらの両方を生成することができる。いくつかの例では、第3の無線通信装置102Cが、部屋、建物、屋外領域などの空間内の動きをモニタするための管理センターを含むことができるセキュリティシステムなどの別の装置又はシステムに動き検出及び/又は存在データを伝えることができる。
【0020】
いくつかの実装では、無線通信装置102A、102Bを、無線ネットワークトラフィック信号とは異なる無線通信チャネル(例えば、周波数チャネル又は符号化チャネル)上で(例えば、上述したような)動き探査信号を送信するように構成することができる。例えば、第3の無線通信装置102Cは、動き探査信号のペイロードに適用される変調及びペイロード内のデータのタイプ又はデータ構造を知ることができ、これによって第3の無線通信装置102Cが動き及び存在検出のために実行する処理の量を低減することができる。ヘッダは、例えば動き又は動きの欠如が通信システム100内の別の装置によって検出されたかどうかの指示、物体の存在が通信システム100内の別の装置によって検出されたかどうかの指示、変調タイプの指示、信号を送信した装置の識別などの追加情報を含むことができる。
【0021】
図1に示す例では、無線通信システム100を、各それぞれの無線通信装置102間の無線通信リンクを含む無線メッシュネットワークとして示す。図示の例では、第3の無線通信装置102Cと第1の無線通信装置102Aとの間の無線通信リンクを使用して第1の動き検出ゾーン110Aを探査することができ、第3の無線通信装置102Cと第2の無線通信装置102Bとの間の無線通信リンクを使用して第2の動き検出ゾーン110Bを探査することができ、第1の無線通信装置102Aと第2の無線通信装置102Bとの間の無線通信リンクを使用して第3の動き検出ゾーン110Cを探査することができる。いくつかの例では、各無線通信装置102を、自機が動き検出ゾーン110を通じて送信した無線信号に基づく受信信号を処理することによって、アクセス先の各動き検出ゾーン110内の動き、動きの欠如、及び/又は動きが検出されない時の物体の存在又は不在を検出するように構成することができる。例えば、図1に示す人物106が第1の動き検出ゾーン110A及び第3の動き検出ゾーン110C内で動いた場合、無線通信装置102は、それぞれの動き検出ゾーン110を通じて送信された無線信号に基づく受信信号に基づいて動きを検出することができる。例えば、第1の無線通信装置102Aは、第1及び第3の動き検出ゾーン110A、110Cの両方における人物の動きを検出することができ、第2の無線通信装置102Bは、第3の動き検出ゾーン110Cにおける人物106の動きを検出することができ、第3の通信装置102Cは、第1の動き検出ゾーン110Aにおける人物106の動きを検出することができる。いくつかの例では、動き検出ゾーン110A、110B、110Cの各々において人物による動きの欠如を、他の例では人物が動いているものとして検出されなかった時のその人物の存在を検出することができる。
【0022】
いくつかの例では、動き検出ゾーン110が、例えば空気、固体材料、液体、又は無線電磁信号が伝播できる別の媒体を含むことができる。図1に示す例では、第1の動き検出ゾーン110Aが、通信装置102Aと第3の無線通信装置102Cの間の無線通信チャネルを提供し、第2の動き検出ゾーン110Bが、第2の無線通信装置102Bと第3の無線通信装置102Cの間の無線通信チャネルを提供し、第3の動き検出ゾーン110が、第1の無線通信装置102Aと第2の無線通信装置102Bの間の無線通信チャネルを提供する。いくつかの動作態様では、(ネットワークトラフィックのための無線通信チャネルとは別の、又は共通の)無線通信チャネル上で送信された無線信号を使用して空間内の物体の動き又は動きの欠如を検出し、この無線信号を使用して、動きの欠如が検出された時の空間内の物体の存在(又は不在)を検出することができる。これらの物体は、あらゆるタイプの静止物体又は可動物体とすることができ、生物又は無生物とすることができる。例えば、この物体は、人間(例えば、図1に示す人物106)、動物、無生物、或いは別のデバイス、装置又はアセンブリ、空間の境界の全部又は一部を定める物体(例えば、壁、ドア、窓など)、又は別のタイプの物体とすることができる。いくつかの実装では、無線通信装置からの動き情報が、物体の動きが検出されない時の物体の存在又は不在を判定するためのさらなる分析を引き起こすことができる。
【0023】
いくつかの実装では、無線通信システム100がモニタリングシステムであり、又はモニタリングシステムを含むことができる。モニタリングシステムは、無線通信装置102A、102B、102Cのうちの1つ又は2つ以上と、場合によっては他のコンポーネントとを含むことができる。モニタリングシステム内の1又は2以上の無線通信装置102A、102B、102Cは、(後述する)動き検出、存在検出、又はこれらの両方を行うように構成することができる。モニタリングシステムは、信号を記憶するデータベースを含むことができる。記憶信号(stored singals)は、各受信信号のそれぞれの測定値又はメトリック(例えば、チャネル応答情報、ビーム状態情報又はその他のチャネル情報)を含むことができ、例えば動き、動きの欠如などのチャネル状態に関連することができる。モニタリングシステムの無線通信装置102A、102B、102Cのうちの1つは、受信信号及びその他の情報を処理して動き及び/又は存在を検出する中心ハブ又はサーバを含むことができる。動き検出を行うように構成された無線通信装置102は、空間内の動きを検出するプロセスを実行するとともに、存在検出器に空間に対するさらなる分析を実行するように要求することができる。存在検出を行うように構成された無線通信装置102は、空間内で動きが検出されない時の空間内の物体の存在(又は不在)を検出するプロセスを実行することができる。データベースなどにおけるデータの記憶、及び/又は動き、動きの欠如(例えば、定常状態)の判定又は存在検出は、センサデバイス又はWAP装置(例えば、ゲートウェイ装置)のいずれかとして構成された無線通信装置102上で行うことも、或いはいくつかの例ではクラウド上で行うこともできる。
【0024】
図2A図2B図2C及び図2Dは、無線通信装置204A、204B、204C間で通信される無線信号例を示す図である。無線通信装置204A、204B、204Cは、例えば図1に示す無線通信装置102A、102B、102Cとすることも、或いは他のタイプの無線通信装置とすることもできる。他のタイプの無線装置の例には、無線メッシュ装置、固定無線クライアント装置、モバイル無線クライアント装置などがある。
【0025】
いくつかの例では、無線通信装置204A、204B、204Cのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせが専用モニタリングシステムを形成し、又はこれらを専用モニタリングシステムの一部とすることができる。例えば、無線通信装置204A、204B、204Cのうちの1つ又は2つ以上は、専用モニタリングシステムの一部としてモニタリングシステム内で動き検出、存在検出又はこれらの両方を行うように構成することができる。いくつかの例では、無線通信装置204A、204B、204Cのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせをアドホックモニタリングシステム又はその一部とすることができる。
【0026】
無線通信装置例204A、204B、204Cは、空間200を通じて無線信号を送信及び/又は受信することができる。空間例200は、空間200の1又は2以上の境界が完全に又は部分的に取り囲まれたものとすることも、或いは開放されたものとすることもできる。空間200は、部屋、複数の部屋、建物、屋内領域又は屋外領域などの内部とすることができ、又はこれらを含むことができる。図示の例では、第1の壁202A、第2の壁202B及び第3の壁202Cが、空間200を少なくとも部分的に取り囲む。
【0027】
図2A及び図2Bに示す例では、第1の無線通信装置204Aが、例えばソースデバイスとして無線動き探査信号を(例えば、周期的に、断続的に、計画的に、非計画的に、又は不定期に、など)繰り返し送信する。第2及び第3の無線通信装置204B、204Cは、例えばセンサデバイスとしての無線通信装置204Aによって送信された動き探査信号に基づく信号を受信する。動き探査信号は、上述したようにフォーマットすることができる。例えば、いくつかの実装では、動き探査信号が、チャネルサウンディング(例えば、IEEE 802.11ac-2013標準に従うビームフォーミングのためのチャネルサウンディング)において使用される標準的なパイロット信号を含む標準的なシグナリング又は通信フレームを含む。無線通信装置204B、204Cの各々は、受け取った動き検出信号を処理して空間200内の物体の動き又は動きの欠如を検出するように構成されたインターフェイス、モデム、プロセッサ、又はその他のコンポーネントを有する。いくつかの例では、無線通信装置204B、204Cの各々が、動きの欠如が検出された時の空間200内の物体の存在又は不在、例えば空間が占有されているか否かを検出するように構成されたインターフェイス、モデム、プロセッサ、又はその他のコンポーネントを有することができる。
【0028】
図示のように、図2Aでは初期時点t=0において物体が第1の位置214Aに存在し、図2Bではその後の時点t=1において物体が第2の位置214Bに移動している。図2A及び図2Bでは、空間200内の移動物体を人間として示しているが、移動物体は別のタイプの物体とすることもできる。例えば、移動物体は、動物、無生物(例えば、システム、デバイス、装置又はアセンブリ)、空間200の境界の全部又は一部を定める物体(例えば、壁、ドア、窓など)、又は別のタイプの物体とすることができる。この例では、物体214の動きの表現が、時点t=0と時点t=1との間で空間200内で物体の位置が変化したことを示しているにすぎない。さらに、図2A図2Dにおける物体214の表現は、物体214がその位置を変更する際に取ることができたいずれかの特定の方向又は経路における物体214の動きに起因する位置の変化を表すように意図するものではない。
【0029】
図2A及び図2Bには、第1の無線通信装置204Aから送信された無線信号の複数の経路例を破線で示す。第1の信号経路216に沿った無線信号は、第1の無線通信装置204Aから送信され、第1の壁202Aから第2の無線通信装置204Bに向かって反射する。第2の信号経路218に沿った無線信号は、第1の無線通信装置204Aから送信され、第2の壁202B及び第1の壁202Aから第3の無線通信装置204Cに向かって反射する。第3の信号経路220に沿った無線信号は、第1の無線通信装置204Aから送信され、第2の壁202Bから第3の無線通信装置204Cに向って反射する。第4の信号経路220に沿った無線信号は、第1の無線通信装置204Aから送信され、第3の壁202Cから第2の無線通信装置204Bに向かって反射する。
【0030】
図2Aでは、第5の信号経路224Aに沿った無線信号が第1の無線通信装置204Aから送信され、第1の位置214Aの物体から第3の無線通信装置204Cに向かって反射する。物体の表面は、図2Aの時点t=0と図2Bの時点t=1との間で空間200内の第1の位置214Aから(例えば、第1の位置214Aから一定距離だけ離れた)第2の位置214Bに移動している。図2Bでは、第6の信号経路224Bに沿った無線信号が第1の無線通信装置204Aから送信され、第2の位置214Bの物体から第3の無線通信装置204Cに向かって反射する。図2Bに示す第6の信号経路224Bは、物体が第1の位置214Aから第2の位置214Bに移動したことによって図2Aに示す第5の信号経路224Aよりも長い。いくつかの例では、空間内の物体の動きに起因して、信号経路を追加、削除又は別様に修正することもできる。
【0031】
図2A及び図2Bに示す無線信号例は、それぞれの経路を通じて減衰、周波数シフト、位相シフト又はその他の影響を受け、例えば壁202A、202B及び202Cを通じて別の方向に伝播する部分を有することができる。いくつかの例では、無線信号が無線周波数(RF)信号である。無線信号は、他のタイプの信号を含むこともできる。
【0032】
図2A及び図2Bに示す例では、第1の無線通信装置204Aがソースデバイスとして構成され、無線信号を繰り返し送信することができる。例えば、図2Aには、第1の時点t=0中に第1の無線通信装置204Aから無線信号が送信されることを示す。送信信号は、連続的に、周期的に、不定期に、又は断続的に、或いはこれらの組み合わせなどで送信することができる。例えば、送信信号は、時点t=0と図2Bに示すその後の時点t=1又は他のいずれかのその後の時点との間に1回又は2回以上送信することができる。送信信号は、1つの周波数帯域幅内に複数の周波数成分を有することができる。送信信号は、第1の無線通信装置204Aから全方向的に、指向的に、又は別様に送信することができる。図示の例では、無線信号が空間200内の複数のそれぞれの経路をたどり、各経路に沿った信号が経路損失、散乱又は反射などによって減衰し、位相又は周波数オフセットを有することができる。
【0033】
図2A及び図2Bに示すように、様々な経路216、218、220、222、224A及び224Bからの信号は、第3の無線通信装置204C及び第2の無線通信装置204Bにおいて組み合わさって受信信号を形成する。空間200内の複数の経路が送信信号に影響するため、空間200は、送信信号が入力されて受信信号が出力される伝達関数(例えば、フィルタ)として表すことができる。空間200内で物体が動くと、信号経路内の信号に影響を与えていた減衰又は位相オフセットが変化し、従って空間200の伝達関数が変化することができる。第1の無線通信装置204Aから同じ無線信号が送信されると仮定すると、空間200の伝達関数が変化すれば、この伝達関数の出力、すなわち受信信号も変化する。この受信信号の変化を使用して物体の動きを検出することができる。これとは逆に、いくつかの例では、空間の伝達関数が変化しない場合、伝達関数の出力である受信信号も変化しない。受信信号に変化がないこと(例えば、定常状態)は、空間200内の動きの欠如を示すことができる。いくつかの例では、受信信号が動きの欠如を示す場合、例えば空間200内に物体214が存在するが物体の動きが検出されない場合、さらなる分析によって物体の存在を検出することができる。
【0034】
数学的に言えば、第1の無線通信装置204Aから送信される送信信号f(t)は以下の式(1)に従って表すことができ、
【数1】
ここでのωnは、送信信号のn番目の周波数成分の周波数を表し、Cnは、n番目の周波数成分の複素係数を表し、tは時間を表す。送信信号f(t)が第1の無線通信装置204Aから送信されている場合、経路kからの出力信号rk(t)は以下の式(2)に従って表すことができ、
【数2】
ここでのαn,kは、経路kに沿ったn番目の周波数成分の減衰係数(例えば、散乱、反射及び経路損失などに起因するチャネル応答)を表し、φn,kは、経路kに沿ったn番目の周波数成分の信号の位相を表す。この時、無線通信装置における受信信号Rは、無線通信装置への全ての経路からの全ての出力信号rk(t)の総和として以下の式(3)に示すように表すことができる。
【数3】
式(2)を式(3)に代入すると、以下の式(4)が得られる。
【数4】
【0035】
次に、無線通信装置における受信信号Rを分析することができる。無線通信装置における受信信号Rは、例えば高速フーリエ変換(FFT)又は別のタイプのアルゴリズムを使用して周波数領域に変換することができる。この変換信号は、(n個の周波数ωnにおける)それぞれの周波数成分の各々に1つの値が対応する一連のn個の複素数値としての受信信号Rを表すことができる。周波数ωnにおける周波数成分については、複素数値Ynを以下の式(5)のように表すことができる。
【数5】
【0036】
所与の周波数成分ωnの複素数値Ynは、その周波数成分ωnにおける受信信号の相対的大きさ及び位相オフセットを示す。物体が空間内で移動すると、空間変化のチャネル応答αn,kに起因して複素数値Ynが変化する。従って、検出されたチャネル応答の変化(従って複素数値Yn)は、通信チャネル内における物体の動きを示すことができる。これとは逆に、例えばチャネル応答(又は複素数値Yn)の変化が全く又はわずかしか検出されない時などの安定したチャネル応答(又は「定常状態」)は、動きの欠如を示す。従って、いくつかの実装では、無線メッシュネットワーク内の複数の装置の各々の複素数値Ynを分析して、送信信号f(t)が横切った空間内で動きが発生したかどうか、又は動きの欠如が存在するかどうかを検出することができる。いくつかの例では、動きの欠如が検出された場合、チャネル応答に対してさらなる分析を実行して、空間内に物体が存在するが動いていないかどうかを判定することができる。
【0037】
図2A及び図2Bの別の態様では、1又は複数の特定の方向への送信ビーム/信号を成形するために送信機装置によって適用される1又は2以上のステアリング特性(例えば、ステアリングマトリクス)を生成するために使用できる通信チャネルの何らかの知識に基づいて(例えば、受信機によって生成されたフィードバック特性を通じて)、装置間でビームフォーミングを実行することができる。従って、ビームフォーミングプロセスで使用されるステアリング又はフィードバック特性の変化は、本明細書で説明するような無線通信システムによってアクセスされた空間内の移動物体に起因し得る変化を示す。例えば、チャネル応答、或いはステアリング又はフィードバック特性、又はこれらのいずれかの組み合わせなどによって一定期間にわたって示されるような通信チャネルの大きな変化によって動きを検出することができる。
【0038】
例えば、いくつかの実装では、チャネルサウンディングに基づいて受信機装置(ビームフォーミング受信側)が提供したフィードバックマトリクスに基づいて、送信機装置(ビームフォーミング送信側)においてステアリングマトリクスを生成することができる。ステアリング及びフィードバックマトリクスはチャネルの伝播特性に関連するので、チャネル内で物体が動くとこれらのマトリクスが変化する。従って、これらのマトリクスにチャンネル特性の変化が反映され、マトリクスを分析することによって動きを検出することができ、検出された動きの異なる特性を決定することができる。いくつかの実装では、1又は2以上のビームフォーミングマトリクスに基づいて空間マップを生成することができる。空間マップは、無線通信装置に対する空間内の物体の一般的方向を示すことができる。いくつかの例では、ビームフォーミングマトリクス(例えば、フィードバックマトリクス又はステアリングマトリクス)の「モード」を使用して空間マップを生成することができる。この空間マップを使用して空間内の動きの存在を検出し、又は検出された動きの位置を検出することができる。
【0039】
図2C及び図2Dは、その後の時点t=2及びt=3…nにおける空間200をそれぞれ示す図である(ここでのnは、さらにその後の時点を表す)。例えば、図2Cでは、モニタリングシステムが、チャネル応答などのチャネル情報内で検出された物体214Cに起因する変化に基づいて物体214Cの動きを検出することができる。例えば、時点t=2に無線装置204Aから信号経路224C上で送信された無線信号のチャネル情報の分析は、例えば図2Bの時点t=1、又は場合によっては図2Aの時点t=0などの最後の時点から物体214Cが動いた又は動いていることを示すことができる。いくつかの例では、例えば空間ビームフォーマの状態などの他のタイプのチャネル情報の変化(又は変化の欠如)によって物体214Cの動き(又は動きの欠如)を検出することができる。図2Dでは、時点t=3において空間内に物体214Dが存在し、場合によっては時点t=3以降にも依然として存在するが、動いているものとして検出されない。例えば、物体214は、時点t=3においても時点t=2に存在していた位置と同じ位置に存在し、204B及び204Cにおける受信信号は、同じ期間にわたって変化していない。この例では、その後の時点t=3に信号経路224D上で送信された無線信号に基づくチャネル情報の分析が、以前の時点t=2からの物体214Dの動きの欠如を示す。この動きの欠如は、チャネル情報の定常状態を識別することに基づいて検出することができる。この例では、物体214Dが、空間200内で動いてはいないが空間内に存在する(又は空間を占有している)。いくつかの例では、チャネル情報にさらなる分析を行って、空間内に物体が存在する(又は空間を占有している)かどうかを判定することができる。
【0040】
モニタリングシステムとして構成された、又はモニタリングシステムを含む無線通信システムは、空間内の特定のゾーン(例えば、カバーゾーン)をカバーするように構成することができる。いくつかの例では、動き検出及び存在検出を行うように構成された1又は2以上の無線通信装置(例えば、動き検出器及び存在検出器)を、空間内の異なるゾーンに展開することができる。動き検出及び/又は存在検出を行うように構成された無線通信装置は、本明細書で説明する実施形態による動き検出及び/又は存在検出プロセスを実行するための(例えば、ソフトウェア又はファームウェアでの)命令を含むことができる。例えば、存在検出を行うように構成された無線通信装置102は、無線信号を受け取り、例えばそのカバーゾーンを通じて送信された無線信号に基づくチャネル応答(又は他のチャネル情報)を計算し、いくつかのチャネル状態を測定値に関連付けることができる。ある例では、存在検出中に取得されたチャネル情報又はその他のメトリックを、カバーゾーン内に移動中又は静止中の物体が存在しないことを示すチャネル状態に関連付けることができる。チャネルメトリックと対応するチャネル状態との間の関連性は、様々な方法で確立することができる。1つの例では、ユーザ支援及び/又は教師あり機械学習を使用して関連性を確立することができる。例えば、ユーザは、カバーゾーンが占有されていないことを示す存在検出器に、カバーゾーン内の測定値に効果的にラベル付けして測定値と「非占有」などの特定のチャネル状態との間の関連性を確立する情報を、モバイル又はウェブアプリケーションインターフェイス(API)を介して遠隔的に提供することができる。別の例では、教師なし機械学習を使用して関連性を確立することもできる。例えば、存在検出は、定常状態(例えば、安定したチャネル応答又は安定した空間ビームフォーマ状態)に関連する測定値を絶えずモニタして、そのカバーゾーンがいつ占有されているか、又は占有されていないかに関する統計的仮説を立てることができる。例えば、通常の業務時間中に数分間又は数時間などのかなりの期間にわたってチャネル情報の変化が検出されない場合、存在検出器は、そのカバーゾーンが占有されていないと判定することができる。いくつかの例では、存在検出器が、上記の方法の一部又は全部の組み合わせに基づいて関連性を確立する。
【0041】
いくつかの例では、数時間、数日、数週などのさらに長い期間にわたって非占有環境の変化が起り得る。例えば、典型的な住宅では、居住者がドア又は窓を開閉し、家具を移動させ、又はカバーゾーンのチャネル情報を変化させるのに十分な他の大幅な調整を空間に対して行うことがある。1つの例では、存在検出器が、規定の時間ウィンドウにわたって定常状態を再測定して、カバーゾーンが「非占有」状態であることを示す新たなメトリック(例えば、新たな定常状態チャネル情報)が存在すると結論付けることができる。この場合、存在検出器は、新たなメトリックと「非占有」を示すチャネル状態との間の新たな関連性を確立することができる。いくつかの例では、存在検出器が、以前に検出された全てのチャネル状態のデータベース、及びその「非占有」状態に対応する関連するメトリックを維持して、新たなメトリック及びその関連するチャネル状態をデータベースに追加することができる。
【0042】
いくつかの例では、存在検出器が、動き検出器から定常状態指示及び関連するメトリックを受け取ることができる。いくつかの例では、存在検出器が、非占有空間の信頼性できるメトリックを確立する。他の例では、存在検出プロセスが、以前に記録されたメトリックを非占有空間のメトリックとして使用することができる。ある例では、存在検出器が、その選択された非占有空間を示すメトリックを動き検出器から受け取られた新たな定常状態メトリックと比較することができる。いくつかの例では、存在検出器が、この比較に基づいて、測定ゾーン内に依然として物体が存在するかどうかを判定することができる。
【0043】
図3A及び図3Bに、動きが検出されない非占有空間及び占有空間の例を示す。いくつかの例では、モニタリングシステムによる信号の分析に基づいて、空間300を非占有状態又は占有状態であると判定することができる。いくつかの例では、1又は2以上のWi-Fi存在検出器が、受け取った無線信号を測定して関連するチャネル情報を分析することができる。モニタリングシステムは、この分析に基づいて、図3Aに示すように空間内に物体が存在しないと判定し、又は図3Bに示すように空間内に1又は2以上の物体が存在すると判定することができる。いくつかの例では、図3A図3Bに示す空間300を、例えば図2A図2Dに示す空間200とすることができる。
【0044】
図3Aに示す例では、空間を空きスペースとして示している。この場合、無線通信装置304Aは、空間300を通じて信号経路310A、312A及び314上で1又は2以上の無線信号を送信する。この場合、経路310A、312A及び314を介して受け取られる無線信号は、無線通信装置304Bによって時間領域及び/又は周波数領域で分析された時に、空間が占有されていないことを示すチャネル形状330Aを有することができる。チャネル形状330Aに対応するチャネル情報又は他のタイプの信号、及びその関連する「非占有」状態は、トレーニング中に又はその他の時点でデータベース340に記憶することができる。例えば、データベース340は、データをデータベクトルとして記憶することができる。いくつかの例では、データベース340を様々な複雑度で実装することができる。例えば、いくつかの例では、データベース340を無線通信装置304Bなどのセンサデバイス上の単純なプログラマブルルックアップテーブルとして実装することができ、或いは他の例では、データベース340をより複雑なデータベース構成とすることができ、いくつかの例では、データベース340が、例えば完全なデータベースエンジン(full database engine)を含むことができる。
【0045】
例えば、典型的な一連の人間の動きでは、例えば物体306などの人間被験者が空間300などのカバーゾーンに進入して、カバーゾーン内を動いている間にチャネル情報の持続的変化を引き起こすことができる。何らかの時点で、被験者は、カバーゾーン内に存在しながら停止して、(例えば、チャネル情報が定常状態にある)チャネル情報の安定化を引き起こすことができる。この例では、動き検出器が、もはやカバーゾーン内で動きが発生しておらず、例えば動きの欠如と結論付けることができる。いくつかの例では、動き検出器が、カバーゾーン内の被験者のさらなる調査のために、新たな定常状態とその関連する動きの欠如に関するメトリックとを存在検出器に提供することができる。
【0046】
図3Bに示す例では、モニタリングシステムが、空間300が占有されていると判定することができる。例えば、空間内には人間被験者として示す物体306が存在するが動いておらず、例えば物体は静止している。いくつかの例では、人間被験者が、動き検出器によって検出されるほど十分に大きくない動きを行うことができる。例えば、物体306が行ったわずかな動きに起因するチャネル情報の変化は、動き検出器が被験者の動きを検出できるほど十分なものでない場合もあり、さらに、物体306が依然として空間内に存在するかどうかを動き検出器では検出できないこともある。いくつかの例では、カバーゾーン300内の物体306の存在が、呼吸などの呼吸器活動又は軽い揺れなどのわずかな体の動きによって他の微妙な環境の変化を引き起こすことがある。いくつかの例では、存在検出器が、物体の動きが検出されない時の空間内の物体306の存在を判定するために、他の場合には測定物体の動きの検出を誘発しないこともあるこれらのタイプのチャネル情報の変化を分析することができる。いくつかの例では、存在検出器がこれらのチャネル情報の変化を検出することができる。いくつかの例では、チャネルの変化を規定の限度内(within defined margins)で検出することができる。いくつかの例では、存在検出器が、他の場合にはチャネルの変化が動きを示さない時に、規定の限度内でチャネルの変化を検出して測定空間内の物体の存在を判定することができる。
【0047】
図3Bでは、無線通信装置304Aが、空間300を通じて信号経路310B、312B及び316上で1又は2以上の無線信号を送信する。この場合、経路310B、312B及び316を介して受け取られる無線信号は、無線通信装置304Bによって時間領域及び/又は周波数領域で分析された時に、空間が占有されていることを示す、非占有空間のチャネル形状330Aとは異なるチャネル形状330Bを有することができる。いくつかの例では、チャネル形状330Bに対応するチャネル情報又は他のタイプの信号、及びその関連する「占有」状態を、モニタリングシステムのトレーニング中にデータベース340に記憶することができる。
【0048】
いくつかの例では、被験者の存在を示すチャネル情報の変化が規定の限度内で検出されたものの、被験者による動きが検出されない場合、存在検出器は、これに応じてチャネル情報にマーク付け又はフラグ立てを行うことができる。例えば、チャネル情報に、「動きはないが肯定的な存在検出」を示すものとしてマーク付けすることができる。いくつかの例では、定常状態からの反復的又は周期的逸脱が、測定ゾーン内に測定物体が存在する信頼度を高める。
【0049】
いくつかの例では、存在検出器が、その検出結果(findings)を動き検出器などのモニタリングシステムに、またいくつかの例ではユーザ装置のユーザアプリケーションインターフェイスに報告することができる。いくつかの例では、測定物体が動いていないが依然として測定ゾーン内に存在する旨が報告される。いくつかの例では、動き検出システムが、存在検出分析の検出結果を記憶することができる。いくつかの例では、これらの検出結果をさらに高度な分析収集に使用することができる。
【0050】
図4は、例えば図2図2Dに関して上述したような無線通信装置間の無線信号通信に基づくチャネル状態の例を示すブロック図400である。これらのチャネル状態は、例えば動き検出器及び/又は存在検出器として構成された1又は2以上の無線通信装置102などの、動き検出及び/又は存在検出を行うように構成されたモニタリングシステムが使用又は決定して、空間の動き又は占有に関する測定空間の状態を示すことができる。いくつかの例では、チャネル情報を、例えば図3A図3Bに関して上述したような「非占有」402状態又は「占有(動きなし)」406状態を示す定常状態にあると判定することができる。いくつかの例では、チャネル情報を、時間と共に変化していると判定することができる。チャネル情報の変化は、例えば「動き検出」404状態を示す動きによって生じることができる。特定のチャネル状態にある間は、チャネル情報に影響を与える1又は2以上の事象が、チャネル状態を別のチャネル状態に遷移させることができる。
【0051】
1つの例では、チャネル情報が、空間が占有されておらず、例えば「非占有」402状態にあることを示す。このようなチャネル情報は、チャネル情報(例えば、チャネル応答、又は空間ビームフォーマの状態)が動きを示すほど、又はいくつかの例では存在を示すほど十分に変化していないので、定常状態とみなすことができる。このチャネル情報(例えば、時間又は周波数領域でのチャネル形状)は、例えば図3Aに示すような非占有空間を示すものとしてマーク付けされたチャネル情報に対応するので、モニタリングシステムは、空間が占有されていないと判定することができる。チャネル情報は、時間と共に変化(422)して空間内で物体が動いていることを示すことができるまでこの定常状態に留まることができる。「非占有」402状態にある間に動きが検出されると、チャネル状態は「動き検出」404状態に変化することができる。「動き検出」404状態にある間、チャネル情報は変化を停止し(420)、モニタリングシステムは、空間内に物体が残っていることを検出することができる。この場合、チャネル状態は、再び「非占有」402状態に変化することができる。しかしながら、その他の場合、モニタリングシステムは、物体が動きを停止しており(426)、又はいくつかの例では物体が動き検出器によって検出される動きを行っていないと判定することができる。この場合、チャネル状態は、「動き検出」404状態から「占有(動きなし)」406状態に変化することができる。モニタリングシステムが、チャネル情報が時間と共に変化して(424)物体が動いていることを検出した場合、チャネル状態は、「動き検出」404状態に変化するようになる。
【0052】
いくつかの例では、チャネル状態が「占有(動きなし)」406状態ある間にさらなる分析を実行して、たとえ動きが検出されなくても依然として物体が空間内に存在するかどうかを判定することができる。例えば、モニタリングシステムの存在検出器は、チャネル情報を一定時間にわたって分析して、物体の存在を示すいずれかのチャネル情報の変化を検出することができる。いくつかの例では、これらの変化が、動き検出を誘発するほど十分なものではない。例えば、存在検出面によって検出された変化は、空間のチャネル状態を「動き検出」404に変化させるほど十分なものではない場合がある。1つの例では、検出された変化が、存在を示して動きを示さない規定の限度内に存在することがある。この限度は、モニタリングシステムが予め定めておくことができる。1つの例では、存在検出面によって検出できる変化が、例えば呼吸などの呼吸器活動、或いは腕又は脚などの軽い揺れなどのわずかな体の動きによる微妙な環境の変化によって生じることがある。モニタリングシステムは、チャネル変動指示動作(channel variations indicating motion)よりも小さくチャネル変動指示動作よりも時間的にゆっくりと発生する、従って動き検出を誘発するほど十分なものではないこれらのタイプのチャネル変動を検出することができる。いくつかの例では、特にチャネル情報が規定の限度内で変化し、チャネル状態が依然として「占有(動きなし)」406状態として分類される場合、モニタリングシステムが、チャネル情報の些細な変化を考慮して存在を判定することができる。いくつかの例では、これらのタイプのチャネル情報の変動がモニタリングシステムの存在検出面によって検出される限り、チャネル状態は「占有(動きなし)」406状態を示すようになる。さらに、このような既知の定常状態からのわずかな周期的偏差の測定及び検出により、空間内に物体が存在する信頼度が高まる。いくつかの例では、「占有(動きなし)」406に対応するものとして新たに識別されたチャネル形状(又は他のチャネル情報)が、例えば図3Bに示すような「占有」チャネル形状のデータベースに追加される。ある例では、存在を示すチャネル変動が、予め定めた一定期間にわたってモニタリングシステムによって検出されない場合、モニタリングシステムは、空間が占有されていないと判定することができる(430)。別の例では、モニタリングシステムが、測定空間が占有されていないことを示すユーザフィードバックに基づいて空間が占有されていないと判定することができる(430)。これらのいずれの場合においても、モニタリングシステムは、空間内の存在の誤検出(408)が発生して空間が占有されていないと判定することができる。この場合、チャネル状態は、「非占有」402状態に変化することができる。
【0053】
モニタリングシステムは、その空間の存在又は占有に関する検出結果を、記憶又はさらに高度な分析収集のために、クラウド内に存在できる別のシステム又はプロセスに報告することができる。検出結果は、ユーザ装置のユーザアプリケーションインターフェイスに報告することもできる。いくつかの例では、検出結果が、物体が動いてはいないものの依然としてカバーゾーンなどの空間内に存在することを示すことができる。
【0054】
図5は、チャネル情報に基づいて空間内の物体の存在を検出するプロセス例500を示すフローチャートである。このプロセス例500は、例えば無線通信システム100などのモニタリングシステム、又は動き検出及び/又は存在検出を行うように構成された別のタイプの無線システムにおいて実行することができる。いくつかの実装では、図5に示すプロセスを、図1に示す装置102A、102B、102C、又は他のタイプの装置又はコンポーネントが実行することができる。プロセス例500は、さらなる又は異なる動作を含むこともでき、動作は、図示の順序又は別の順序で実行することもできる。いくつかの例では、図5に示す1又は2以上の動作が、複数の動作を含むプロセス、他のタイプのルーチンのためのサブプロセスとして実装される。いくつかの例では、動作を組み合わせ、別の順序で実行し、並行して実行し、反復又は別様に繰り返し、或いは別の方法で実行することもできる。
【0055】
510において、第1の信号の組を空間内の動きについて分析することによって空間内の物体の動きを検出する。いくつかの例では、第1の信号の組が、例えば図2A及び図2Bに示すような第1の期間内に無線通信装置によって空間を通じて送信された無線信号に基づく。520において、第2の信号の組を空間内の動きについて分析することによって空間内の動きの欠如を検出する。いくつかの例では、第2の信号の組が、例えば図2C及び図2Dに示すようなその後の第2の期間に無線通信装置によって空間を通じて送信された無線信号に基づく。
【0056】
530において、第2の信号の組を空間内の存在について分析することによって、第2の期間中に空間内に物体が存在したかどうかを検出する。いくつかの例では、第2の信号の組を存在について分析することが、記憶信号のデータベースにアクセスすることを含む。1つの例では、第2の信号の組を記憶信号と比較することができる。いくつかの例では、データベースが、各記憶信号を空間の占有状態又は空間の非占有状態に関連付ける。記憶信号は、例えばチャネル形状(例えば、図3A図3Bに示すチャネル形状例330A、330B)、或いは他のタイプのチャネルの測定値又はメトリックとすることができ、又はこれらに基づくことができる。
【0057】
いくつかの例では、プロセス500が、第2の期間中に空間内に物体が存在したことを検出することができる。例えば、1つの例では、第2の信号の組が空間の非占有状態に関連する記憶信号の第1のサブセットに一致する時に、物体が存在すると判定される。別の例では、プロセス500が、第2の期間中に空間内に物体が存在しなかったことを検出することができる。例えば、物体は、第2の信号の組が空間の非占有状態に関連する記憶信号の第1のサブセットのいずれにも一致しない時に存在しないと判定することができる。別の例では、物体が存在することを検出した時に、第2の信号の組が、空間の占有状態に関連する記憶信号の第2のサブセットに一致することができる。
【0058】
いくつかの例では、第2の信号の組が、一定時間にわたる変動について分析される。いくつかの例では、この変動が、空間内の存在に関連する特徴を有する。例えば、この特徴は、図2A及び図2Bに例示するような時間領域又は周波数領域でのチャネル形状として示すことができるチャネルの変化、或いは空間の占有又は非占有を示すユーザラベルとすることができる。いくつかの例では、プロセス500が、閾値継続時間よりも長く持続する動きの欠如に基づいて、第2の期間中に空間が占有されていなかったと判定することができる。いくつかの例では、第2の信号の組に基づいて、空間の非占有状態に関連する新たな記憶信号を含むようにデータベースを更新することができる。いくつかの例では、記憶される信号を、空間の教師あり動き検出トレーニング期間中に取得することができる。他の例では、これらの信号が、空間の教師なしトレーニング期間中に取得される。
【0059】
図6は、無線通信装置例600を示すブロック図である。図6に示すように、無線通信装置例600は、送受信インターフェイス630と、プロセッサ610と、メモリ620と、電源ユニット640とを含む。例えば、図1に示す無線通信システム100内の無線通信装置102A、102B、102Cは、いずれも同じ、さらなる、又は異なるコンポーネントを含むことができ、これらのコンポーネントは、図1に示すように、又は別の形で動作するように構成することができる。いくつかの実装では、無線通信装置のインターフェイス630、プロセッサ610、メモリ620及び電源ユニット640が、共に共通ハウジング又は他のアセンブリに収容される。いくつかの実装では、無線通信装置の1又は2以上のコンポーネントを、例えば別個のハウジング又は他のアセンブリに別々に収容することができる。
【0060】
インターフェイス例630は、無線信号の通信(受信、送信、又はこれらの両方)を行うことができる。例えば、インターフェイス630は、無線通信標準(例えば、Wi-Fi又はBluetooth)に従ってフォーマットされた無線周波数(RF)信号を通信するように構成することができる。インターフェイス630は、図示の無線インターフェイス例として実装することも、或いは他のタイプのコンポーネント又はサブシステムなどと共に別の形で実装することもできる。いくつかの例では、インターフェイス例630をモデムとして実装することができる。いくつかの実装では、インターフェイス例630が、無線サブシステム又はベースバンドサブシステムを含む。いくつかの例では、ベースバンドサブシステム及び無線サブシステムを、共通チップ又はチップセット上、或いはカード又は別のタイプの組み立て装置内に実装することができる。ベースバンドサブシステムは、例えばリード線、ピン、ワイヤ、又は他のタイプの接続部によって無線サブシステムに結合することができる。
【0061】
いくつかの例では、インターフェイス630内の無線サブシステムが、1又は2以上のアンテナと、無線周波数回路とを含むことができる。無線周波数回路は、例えばアナログ信号をフィルタ処理、増幅又は別様に調整する回路、ベースバンド信号をRF信号にアップコンバートする回路、RF信号をベースバンド信号にダウンコンバートする回路などを含むことができる。このような回路は、例えばフィルタ、増幅器、ミキサ、局部発振器などを含むことができる。無線サブシステムは、無線通信チャネル上で無線周波数無線信号を通信するように構成することができる。一例として、無線サブシステムは、無線チップと、RFフロントエンドと、1又は2以上のアンテナとを含むことができる。無線サブシステムは、さらなる又は異なるコンポーネントを含むこともできる。無線サブシステムは、いくつかの実装では、例えばWi-Fiモデム、ピコ基地局モデムなどの従来のモデムからの無線電子機器(例えば、RFフロントエンド、無線チップ又は同様のコンポーネント)とすることができ、或いはこれらを含むことができる。いくつかの実装では、アンテナが複数のアンテナを含む。
【0062】
いくつかの例では、インターフェイス630内のベースバンドサブシステムが、例えばデジタルベースバンドデータを処理するように構成されたデジタル電子機器を含むことができる。一例として、ベースバンドサブシステムは、ベースバンドチップを含むことができる。ベースバンドサブシステムは、さらなる又は異なるコンポーネントを含むこともできる。いくつかの例では、ベースバンドサブシステムが、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)装置又は別のタイプのプロセッサ装置を含むことができる。いくつかの例では、ベースバンドシステムが、無線サブシステムを動作させ、無線サブシステムを介して無線ネットワークトラフィックを伝達し、無線サブシステムを介して受け取った動き検出信号に基づいて動きを検出し、又はその他のタイプの処理を実行するデジタル処理ロジックを含む。例えば、ベースバンドサブシステムは、信号を符号化して符号化信号を送信のために無線サブシステムに供給するように構成された、或いは無線サブシステムからの信号内に符号化されたデータを(例えば、無線通信規格に従って信号を復号することによって、動き検出処理に従って信号を処理することによって、又はそれ以外の方法で)識別して分析するように構成された1又は2以上のチップ、チップセット又は他のタイプのデバイスを含むことができる。
【0063】
いくつかの例では、インターフェイス例630内の無線サブシステムが、ベースバンドサブシステムからベースバンド信号を受信し、ベースバンド信号を無線周波数(RF)信号にアップコンバートし、(例えば、アンテナを介して)無線周波数信号を無線で送信する。いくつかの例では、インターフェイス例630内の無線サブシステムが、(例えば、アンテナを介して)無線周波数信号を無線で受信し、無線周波数信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、ベースバンド信号をベースバンドサブシステムに送信する。無線サブシステムとベースバンドサブシステムとの間で交換される信号は、デジタル信号又はアナログ信号とすることができる。いくつかの例では、ベースバンドサブシステムが変換回路(例えば、デジタル-アナログ変換器、アナログ-デジタル変換器)を含み、無線サブシステムとの間でアナログ信号を交換する。いくつかの例では、無線サブシステムが変換回路(例えば、デジタル-アナログ変換器、アナログ-デジタル変換器)を含み、ベースバンドサブシステムとの間でデジタル信号を交換する。
【0064】
いくつかの例では、インターフェイス例630のベースバンドサブシステムが、1又は2以上のネットワークトラフィックチャネル上で無線サブシステムを介して無線通信ネットワーク内で無線ネットワークトラフィック(例えば、データパケット)を通信することができる。モデム112のベースバンドサブシステムは、動き検出チャネル上で無線サブシステムを通じて信号(例えば、動き探査信号)の送信又は受信(又はこれらの両方)を行うこともできる。いくつかの例では、ベースバンドサブシステムが、例えば空間を探査して動き又は動きの欠如を検出するために、動き探査信号を生成して送信する。いくつかの実装では、動き探査信号が、チャネルサウンディング(例えば、IEEE 802.11ac-2013標準に従うビームフォーミングのためのチャネルサウンディング)で使用される標準的なパイロット信号を含む標準的なシグナリング又は通信フレームを含む。いくつかの例では、動き探査信号が、ネットワーク内の全ての装置に知られている基準信号を含む。いくつかの例では、ベースバンドサブシステムが、受信信号を処理して、例えば空間内の物体の動き、空間内の動きの欠如、或いは動きの欠如が検出された時の空間内の物体の存在又は不在を検出することができる。例えば、ベースバンドサブシステムは、標準的なシグナリングプロトコルの側面(例えば、生成されたステアリング又はその他のマトリクスなどに基づく、IEEE 802.11ac-2013標準に従うビームフォーミングのためのチャネルサウンディング)を分析して、空間内の動きの結果としてのチャネルの変化を検出することができる。
【0065】
プロセッサ例610は、例えばデータ入力に基づいて出力データを生成するための命令を実行することができる。これらの命令は、データベース340などのメモリ620に記憶されたプログラム、コード、スクリプト、モジュール、又は他のタイプのデータを含むことができる。これに加えて、又はこれとは別に、これらの命令は、予めプログラムされた又は再プログラム可能な論理回路、論理ゲート、或いは他のタイプのハードウェアコンポーネント又はファームウェアコンポーネント又はモジュールとして符号化することもできる。プロセッサ610は、特殊なコプロセッサ又は別のタイプのデータ処理装置としての汎用マイクロプロセッサとすることができ、又はこのような汎用マイクロプロセッサを含むことができる。いくつかの例では、プロセッサ610が、無線通信装置600の高水準動作を実行する。例えば、プロセッサ610は、メモリ620に記憶されたソフトウェア、スクリプト、プログラム、関数、実行ファイル又はその他のモジュールを実行又は解釈するように構成することができる。いくつかの実装では、プロセッサ610がインターフェイス630に含まれる。
【0066】
メモリ例620は、例えば揮発性メモリデバイス、不揮発性メモリデバイス又はこれらの両方などのコンピュータ可読記憶媒体を含むことができる。メモリ620は、1又は2以上のリードオンリメモリデバイス、ランダムアクセスメモリデバイス、バッファメモリデバイス、又はこれらの及びその他のタイプのメモリデバイスの組み合わせを含むことができる。いくつかの例では、メモリの1又は2以上のコンポーネントを無線通信装置600の別のコンポーネントと一体化し、又は別様に関連付けることができる。メモリ620は、プロセッサ610が実行できる命令を記憶することができる。例えば、これらの命令は、図4で説明したような又は図5に示すプロセス例500における動作のうちの1つ又は2つ以上などを通じて、チャネル情報を分析して空間内の物体の動き、空間内の動きの欠如、及び動きが検出されない時の物体の存在又は不在を検出するための命令を含むことができる。いくつかの例では、メモリ620が、動き及び動きの欠如を検出するための動き検出命令622と、動きが検出されない時の物体の存在又は不在を検出するための存在検出命令624とを含むことができる。
【0067】
電源ユニット例640は、無線通信装置600の他のコンポーネントに電力を供給する。例えば、他のコンポーネントは、電源ユニット640が電圧バス又はその他の接続部を介して供給する電力に基づいて動作することができる。いくつかの実装では、電源ユニット640が、例えば充電式バッテリなどのバッテリ又はバッテリシステムを含む。いくつかの実装では、電源ユニット640が、(外部信号源から)外部電力信号を受け取って無線通信装置600のコンポーネントのために調整された内部電力信号に変換するアダプタ(例えば、ACアダプタ)を含む。電源ユニット620は、他のコンポーネントを含むことも、又は別の形で動作することもできる。
【0068】
本明細書で説明した主題及び動作の一部は、デジタル電子回路で実装することも、或いは本明細書で開示した構造及びこれらの構造的同等物、或いはこれらの1又は2以上の組み合わせを含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア又はハードウェアで実装することもできる。本明細書で説明した主題及び動作の一部は、1又は2以上のコンピュータプログラムとして、すなわちデータ処理装置によって実行される、又はデータ処理装置の動作を制御する、コンピュータ記憶媒体上に符号化されたコンピュータプログラム命令の1又は2以上のモジュールとして実装することができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読記憶装置、コンピュータ可読記憶基板、ランダム又はシリアルアクセスメモリアレイ又はデバイス、或いはこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせとすることができ、又はこれらに含めることができる。さらに、コンピュータ記憶媒体は伝搬信号ではなく、人工的に生成された伝搬信号の形で符号化されたコンピュータプログラム命令の発信元又は宛先とすることもできる。コンピュータ記憶媒体は、1又は2以上の別個の物理的コンポーネント又は媒体(例えば、複数のCD、ディスク又はその他の記憶装置)とすることができ、或いはこれらに含めることができる。
【0069】
本明細書で説明した動作の一部は、1又は2以上のコンピュータ可読記憶装置に記憶された、又は他のソースから受け取られたデータに対してデータ処理装置が実行する動作として実装することができる。
【0070】
「データ処理装置」という用語は、データを処理する全ての種類の装置、デバイス及び機械を含み、一例としてプログラマブルプロセッサ、コンピュータ、システムオンチップ、又は複数のシステムオンチップ、又はこれらの組み合わせを含む。この装置は、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路を含むこともできる。この装置は、ハードウェアに加えて、例えばプロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース340などのデータベース管理システム、オペレーティングシステム、クロスプラットフォームランタイム環境、仮想マシン、又はこれらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを構成するコードなどの、対象とするコンピュータプログラムの実行環境を形成するコードを含むこともできる。
【0071】
(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト又はコードとしても知られている)コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語、宣言型言語又は手続き型言語を含むあらゆる形のプログラミング言語で書くことができ、スタンドアロンプログラム、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、又はコンピュータ環境で使用するのに適した他のユニットとしての形を含むあらゆる形で展開することができる。コンピュータプログラムは、必須ではないが、ファイルシステム内のファイルに対応することができる。プログラムは、プログラム専用の単一のファイル内の、又は複数の連動するファイル(例えば、1又は2以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部を記憶するファイル)内の、他のプログラム又はデータ(例えば、マークアップ言語リソースに記憶された1又は2以上のスクリプト)を保持するファイルの一部に記憶することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように展開することも、或いは1つのサイトに位置する、又は複数のサイトに分散して通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することもできる。
【0072】
本明細書で説明したプロセス及びロジックフローの一部は、1又は2以上のコンピュータプログラムを実行する1又は2以上のプログラマブルプロセッサにより、入力データに作用して出力を生成することによって動作を行うように実行することができる。プロセス及びロジックフローは、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)などの専用論理回路によって実行することもでき、また装置をこのような専用論理回路として実装することもできる。
【0073】
コンピュータプログラムを実行するのに適したプロセッサとしては、一例として、汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの両方、並びにあらゆる種類のデジタルコンピュータのプロセッサが挙げられる。一般に、プロセッサは、リードオンリメモリ又はランダムアクセスメモリ、或いはこれらの両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの要素は、命令に従って動作を実行するプロセッサと、命令及びデータを記憶する1又は2以上のメモリデバイスとを含むことができる。コンピュータは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光学ディスクなどの、データを記憶する1又は2以上の大容量記憶装置を含むこともでき、或いはこのような記憶装置との間でのデータの受け取り及びデータの転送、又はこれらの両方を行うように動作可能に結合することもできる。しかしながら、コンピュータは、このような装置を有していなくてもよい。さらに、コンピュータは、例えば電話機、電子機器、モバイルオーディオプレーヤ又はビデオプレーヤ、ゲーム機、全地球測位システム(GPS)受信機、又はポータブル記憶装置(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブ)などの別の装置に組み込むこともできる。コンピュータプログラム命令及びデータの記憶に適した装置としては、一例として、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイスなど)、磁気ディスク(例えば、内部ハードディスク又はリムーバブルディスクなど)、磁気光学ディスク、並びにCD ROM及びDVD-ROMディスクを含む全ての形態の不揮発性メモリ、媒体及びメモリデバイスが挙げられる。いくつかの例では、プロセッサ及びメモリを専用論理回路によって補完することも、又は専用論理回路に組み込むこともできる。
【0074】
動作は、ユーザとの相互作用をもたらすために、ディスプレイ装置(例えば、モニタ、又は別のタイプのディスプレイ装置)と、ユーザがコンピュータに入力を提供できるようにするキーボード及びポインティングデバイス(例えば、マウス、トラックボール、タブレット、タッチセンサ式画面、又は別のタイプのポインティングデバイス)とを有するコンピュータ上で実行することができる。他の種類の装置を使用してユーザとの相互作用をもたらすこともでき、例えばユーザに提供されるフィードバックは、視覚的フィードバック、聴覚的フィードバック又は触覚的フィードバックなどのあらゆる形の感覚的フィードバックとすることができ、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力又は触覚入力を含むあらゆる形で受け取ることができる。また、コンピュータは、例えばウェブブラウザから受け取られた要求に応答してユーザのクライアント装置上のウェブブラウザにウェブページを送信することなどの、ユーザが使用する装置との間で文書を送受信することによってユーザと相互作用することもできる。
【0075】
コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含むことも、或いは互いに近接して、又は一般的には離れて動作して、通常は通信ネットワークを通じて相互作用する複数のコンピュータを含むこともできる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットワーク(例えば、インターネット)、衛星リンクを含むネットワーク、及びピアツーピアネットワーク(例えば、アドホックピアツーピアネットワーク)が挙げられる。クライアントとサーバとの関係は、それぞれのコンピュータ上で動作して互いにクライアント-サーバの関係を有するコンピュータプログラムによって生じることができる。
【0076】
ここで説明した実施例の一般的態様では、モニタリングシステムが、例えば動きが検出されない時の空間内の物体の存在を検出する。
【0077】
第1の実施例では、モニタリングシステムが、第1の信号の組を空間内の動きについて分析することによって空間内の物体の動きを検出する。第1の信号の組は、第1の期間に無線通信装置によって空間を通じて送信された無線信号に基づく。第2の信号の組を空間内の動きについて分析することによって、空間内の動きの欠如が検出される。第2の信号の組は、その後の第2の期間に無線通信装置によって空間を通じて送信された無線信号に基づく。第2の信号の組を空間内の存在について分析することによって、第2の期間中に空間内に物体が存在したかどうかが検出される。
【0078】
第1、第2及び第3の実施例の実装は、以下の特徴のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。記憶信号のデータベースにアクセスすることができる。データベースは、各記憶信号を空間の占有状態又は空間の非占有状態に関連付ける。第2の信号の組を記憶信号と比較する。第2の信号の組を空間内の存在について分析して、それぞれが非占有状態空間に関連付けられた記憶信号の第1のサブセットのうちの1つに第2の信号の組が一致すると判定することにより、第2の期間中に空間内に物体が存在しなかったことが検出される。第2の信号の組を空間内の存在について分析して、それぞれが空間の非占有状態に関連付けられた記憶信号の第1のサブセットのいずれにも第2の信号の組が一致しないと判定することにより、第2の期間中に空間内に物体が存在したことが検出される。第2の信号の組は、各信号が空間の占有状態に関連付けられた記憶信号の第2のサブセットのうちの1つに第2の信号の組が一致すると判定することによって、空間内の存在について分析することができる。第2の信号の組は、空間内の存在に関連する特徴を有する一定時間にわたる変動について第2の信号の組を分析することによって、空間内の存在について分析することができる。ユーザ装置からのフィードバックに基づいて、第2の期間中に空間が占有されていなかったと判定することができ、空間の非占有状態に関連付けられた、第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むようにデータベースを更新することができる。閾値継続時間よりも長く持続する動きの欠如に基づいて、第2の期間中に空間が占有されていなかったと判定することができ、空間の非占有状態に関連付けられた、第2の信号の組に基づく新たな記憶信号を含むようにデータベースを更新することができる。記憶信号は、空間の教師あり動き検出トレーニング期間中、又は空間の教師なしトレーニング期間中に取得することができる。
【0079】
第2の実施例では、コンピュータ記憶可読媒体が、データ処理装置によって実行された時に第1の実施例の1又は2以上の動作を実行する命令を記憶する。
【0080】
第3の実施例では、モニタリングシステムが、1又は2以上のプロセッサと、1又は2以上のプロセッサによって実行された時に第1の実施例の1又は2以上の動作を実行する命令を記憶するメモリとを含む。
【0081】
本明細書は多くの詳細を含んでいるが、これらの詳細は、特許請求できる内容の範囲に対する限定ではなく、むしろ特定の例に固有の特徴の説明として理解されたい。本明細書において別個の実装の文脈で説明し又は図面に示したいくつかの特徴は、組み合わせることもできる。これとは逆に、単一の実装の文脈で説明又は図示した様々な特徴は、複数の実施形態において単独で実装することも、或いはあらゆる好適な部分的組み合わせで実装することもできる。
【0082】
同様に、図面には特定の順序で動作を示しているが、これについて、望ましい結果を達成するためにこのような動作を図示の特定の順序又は順番で実施し、又は図示の動作を全て実施する必要があると理解すべきではない。状況によっては、マルチタスク及び並行処理が有利な場合もある。さらに、上述した実装において様々なシステムコンポーネントを分離していても、このような分離が全ての実装において必要であると理解すべきではなく、説明したプログラムコンポーネント及びシステムを単一の製品に一般的に統合し、又は複数の製品にパッケージ化することもできると理解されたい。
【0083】
複数の実施形態について説明した。それでもなお、様々な修正を行うことができると理解されるであろう。従って、以下の特許請求の範囲には、他の実施形態も含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6